JP4296797B2 - 玉払出し装置およびパチンコ玉ホッパー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばパチンコ遊技機の入賞玉の払出しや貸玉装置の貸玉の払出しに用いられるような玉払出し装置に関し、さらに詳しくは玉払出し部分の玉詰りを回避する通路構造を備えた玉払出し装置およびパチンコ玉ホッパーに関する。
【0002】
【従来の技術】
以下、パチンコ遊技機を例にとって説明する。
一般に、特許文献1に開示されるようなパチンコ遊技機は、パチンコ玉(以下、玉と称す)を遊技媒体として、パチンコ台の背面側からパチンコ台の前面側に玉を供給している。この玉の供給に際しては、パチンコ遊技機の背面上部に多数個の玉を貯留する貯留タンク(景品玉タンク)を設置し、この貯留タンクへは上方の図示しない補給機構から玉を補給させて貯留し、これより貯留した玉を下方に払出すようにしている。この玉の払出し時に、貯留タンクから玉を整列する玉整列装置を介して、下方の玉払出し装置(入賞玉処理装置)に導き、ここで指定された玉数を払出して、パチンコ遊技機の前面下部に位置する上皿または下皿に払出している。
【0003】
このように、上流側の貯留タンクから供給された玉が玉整列装置を介して下流側の玉払出し装置へと導かれるが、この間の通路(樋)は玉が玉詰まりすることなくスムーズに下流へ転動していくように比較的緩やかな傾斜をしている。また、玉整列装置は不規則に貯留された集合状態の玉を2列に整列させて玉払出し装置へと供給していくため、整列する通路の距離を長く必要としていた。
【0004】
このため、貯留タンク、玉整列装置および玉払出し装置をパチンコ台の背面側に設けようとすると、貯留タンクから玉払出し装置までの一連の通路がS字状やL字状などの折り返し通路になってしまう。このため、貯留タンク、玉整列装置および玉払出し装置のそれぞれを高さ方向に積み重ねる形で配置しなければならず、それゆえ高さ方向の寸法が大きくなってしまい遊技台背面側の多くのスペースを占有してしまっていた。この結果、パチンコ遊技機毎に備えられる多くの取付け部品の取付け位置や大きさが制限されていた。
【0005】
特に、上述の玉払出し装置では玉の自重を利用して上方から下方へと真下に降下させて導いた玉を回転円盤で1個ずつ受止めながら回転送りして下方に払出す縦方向に長い払出し構造を有している。このような払出し構造のために玉払出し装置が大型化し、パチンコ台背面側に搭載するときの縦方向の配設スペースが大きくなり、該遊技機の他部品を搭載制限させる一因になっていた。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−208064号公報。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このため、玉払出し装置を小型化して組込むことが考えられる。例えば、玉払出し装置を直線的で緩やかな傾斜通路上に組込めば、縦方向に短い傾斜通路上で払出し動作が完了するため玉払出し装置の小型化を図ることができる。
【0008】
しかし、このように構成した場合は、図9に示すように、傾斜通路91上に配設した玉払出し装置92のスプロケット93が回転して払出し動作するとき、該スプロケット93の爪部94が、ここに転動して導かれた玉95を払出すときに、その接触対応するタイミングによっては該爪部94と通路底面96との上下に対向する対向面間で玉95を挟み込んでしまい、玉95をロックした状態になる。
【0009】
このロック状態は、スプロケット93の回転力を受けた爪部94からの力P0が、玉95の重心G0を通って通路底面96と直交した向きのときに起こる。このときの力の作用は、上方の爪部94から下向きにかかる力P0と、下方の通路底面96から上向きにかかる反力Rとがバランスを保ってしまい、玉95への逃げ力がかからなくなるためである。
【0010】
このようなロック現象が発生した時には、スプロケット93が回動不能になって玉詰りを発生させる。そして、この玉詰りが発生する度に、係員による玉のロック解除操作を要して、遊技の中断や遊技機の稼動率が低下する問題を有していた。
【0011】
そこでこの発明は、スプロケットの爪部と傾斜通路との間に玉が介在しても、その玉への加圧方向を玉詰り回避方向に変換することにより、玉詰り現象を完全に解消することができ、しかも縦方向に短い傾斜通路への組込みを可能にして小型化した玉払出し装置およびパチンコ玉ホッパーを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、玉を転動させて通過させる傾斜通路を設け、該傾斜通路に対設したスプロケットを駆動して、ここに導かれた玉を定められた数だけ払出す玉払出し装置であって、前記傾斜通路を転動する玉の上面高さの軌跡に、前記スプロケットの外周に備えられた爪部の回転方向の軌跡が重なる両軌跡交差領域と対応する前記傾斜通路の底面位置に玉詰り回避用の突部を形成したことを特徴とする。
【0013】
前記突部とは、傾斜通路の底面より突出し、該傾斜通路上を転動してきた玉を、この突部の位置で若干上動させるように突出させたものである。
【0014】
前記両軌跡交差領域とは、傾斜通路を転動する玉の上面高さの軌跡と、爪部の回転方向の軌跡との両軌跡が重なる領域である。この両軌跡交差領域はスプロケットの位置に導かれた玉の送り開始位置側で爪部の力の方向が底面に直交する方向になって玉詰りが発生する恐れがある。このため、この両軌跡交差領域に対してのみ玉詰り回避手段を施せば、的確に玉詰りを回避することが考えられる。
【0015】
この発明によれば、傾斜通路を転動してきた玉が、仮に玉詰りタイミングでスプロケットに接触し始めようとしても、その対応位置で該傾斜通路の底面より突出する突部によって玉は一時的に上動して転動する。このとき、突部の高さの分だけ玉は上動し、これに伴いスプロケットと玉とが接触する高さ位置も上がり、玉に接触するスプロケットの加圧力の向きがずれる。このため、スプロケットが回転して最初に加圧接触する方向が、玉詰りの発生方向を避ける向きとなる。このため、ここに導かれた玉をスプロケットと通路との間で挟み込まなくなり、玉詰りを完全に回避した払出し動作が得られる。
【0016】
このように玉の上面高さの軌跡と、スプロケットの爪部の回転方向の軌跡とが重なる両軌跡交差領域に対応させて突部を設けるだけで、玉詰りを回避した玉払出し動作が得られる。また、傾斜通路に沿って玉払出し装置を組込めば、縦方向を短縮した小型化が図れる。
【0017】
この発明の他の形態として、玉が転動過程で前記スプロケットの外周に備えられた爪部と最初に接触対応したとき、その爪部の回転方向にかかる力の向きが、前記玉を介して前記傾斜通路の底面に直交しない向きになる突出形状または突出高さとなる突部に形成したことを特徴とする。
【0018】
前記爪部は、スプロケットの回転に伴って玉を1個ずつ個別送りするものである。この爪部と玉との接触タイミングを考察してみた場合、上方の爪部と下方の傾斜通路との上下の対向面間で玉を挟み込むと、該スプロケットが回転不能になる玉詰りが発生してしまう。この玉詰り発生現象は、爪部の加圧力の方向が、対向する傾斜通路の底面に直交したとき、その力が逃げる方向がなくなるためである。したがって、爪部の加圧力の向きが玉を介して傾斜通路の底面に直交しない他方向の向きにすれば玉詰りは発生しない。
【0019】
そこで、傾斜通路の底面に突部を設ければ、その突部を乗り越えるときの玉の通過軌跡は傾斜方向に平行していた軌跡から一時的に大きく通過する角度が異なる。このため、玉にかかる力は通路底面に直交しなくなり、前記両軌跡交差領域においては玉詰り方向に対して逃げる力が作用する。
【0020】
ことに、突部に乗り上げた玉に爪部の加圧力が加わったときは、爪部の力の方向が大きく変位し、さらに玉が突部の傾斜面に対応したときは滑りが生じやすくなり、玉詰りを極力回避する働きが得られる。
【0021】
前記突出形状とは、突部により玉を傾斜通路の底面より僅かに上動させたときに、爪部の加圧力の向きを変える突出形状であればよく、同様の理由で突出高さも、玉を傾斜通路の底面より僅かに上動させる突出高さであればよい。具体的には、爪部と最初に対向する通路底面の位置を突部の頂点として、例えば通路方向に沿って山形状になだらかに突出させればよい。このほかにも必要な高さの突部を局部的に突出させてもよい。
【0022】
この場合は、仮に玉詰りタイミングで玉がスプロケットの位置に導かれても、突部によって該スプロケットの爪部と玉の球面との最初に接触対応する加圧方向が、玉を介して通路底面に直交しない向きになるため、玉詰り方向と異ならせて玉詰りを完全に回避することができる。
【0023】
別の発明では、多数個のパチンコ玉を上流側で貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留されたパチンコ玉を自重により傾斜通路上を転動させながら下流側に導いて整列する整列部と、前記整列部の傾斜下流側に、該傾斜通路上を転動してきたパチンコ玉を1個ずつスプロケットで回転送りして定められた玉数を払出す払出し部とを備えたパチンコ玉ホッパーであって、前記傾斜通路を転動する玉の上面高さの軌跡に、前記スプロケットの外周に備えられた爪部の回転方向の軌跡が重なる両軌跡交差領域と対応する前記傾斜通路の底面位置に玉詰り回避用の突部を形成したことを特徴とする。
【0024】
ここで貯留部とは、パチンコ遊技機に遊技利用される玉の多数個を貯留し、これより下方に玉を供給するものである。
【0025】
前記整列部とは、貯留部の下流側に連設され、前記貯留部より供給された玉を1列あるいは複数列の整列通路に導いて、下流側の払出し部に玉を安定供給できるように整列流下させるものである。
【0026】
前記払出し部とは、整列部の下流側に連設され、ここに整列して導かれた玉を払出し指定された数だけ下流側の受皿へと払出すものである。
【0027】
この場合は、払出し部に玉詰り回避用の突部を備えてスプロケットによる玉詰りの恐れがないため、このスプロケットを用いた払出し部を傾斜通路上にコンパクトに組込むことができる。
【0028】
さらに、傾斜通路上に貯留部と整列部と払出し部とを直列状態に組込めば、縦方向が短い小型のパチンコ玉ホッパーを構築できる。従って、この場合はパチンコ台背面側に搭載するときの縦方向の配設スペースが小さくなり、他部品の搭載制限を緩和することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施の形態を以下図面に基づいて説明する。
図1はパチンコ遊技機のパチンコ台11Aの背面側に装備されるパチンコ玉ホッパー11を示す。このパチンコ玉ホッパー11は、図2にも示すように、上流側の貯留タンク12と下流側の玉払出し装置13とを一体化して構成され、これらは横長に設置した大きな貯留タンク12の台端側に小さな玉払出し装置13を連結して小型化した単体構成をとっている。
【0030】
上述の貯留タンク12は、図3に示すように、上面を開放した先細の凹形状を有し、この上面開放部に対して上方の図示しない補給機構から玉が補給され、ここで多数個の玉を貯留許容している。この貯留タンク12に貯留された玉は自重により転動して上流側から下流側の玉払出し装置13へと導くように構成している。
【0031】
この場合、玉を上流側から下流側に円滑に通過させるために玉払出し装置13の前段には整列通路14を形成している。この整列通路14は、図4に示すように、貯留タンク12と一体に構成され、この貯留タンク12の先端部に細長い整列通路14を突出させて備えている。
【0032】
ところで、上流側の貯留タンク12内のタンク底面から下流側の玉払出し装置13の玉を払出す底面にかけては、同一傾斜方向に緩やかに傾斜させて直進する長い同一傾斜通路Lを設けている。
【0033】
この同一傾斜通路Lは、貯留タンク12と整列通路14と玉払出し装置13との順に玉を転動させて通過させる各通路の底面を、同一傾斜方向の緩やかな傾斜角度に設定して接続した通路である。このため、玉が自重により上流側から下流側へと緩やかに転動する。またこの場合は、同一傾斜方向に直進する通路であるため、玉流下時の落差や方向変換がなくなり、玉の流下に適した滑らかな直進移動によって流下する。
【0034】
この場合、傾斜角度が小さければ玉の転動速度が遅くなり、下流側への玉の供給が滞りやすくなる。これに対し、傾斜角度が大きいと、連なって流下する玉への重力による負荷が過剰になりやすくなるので、例えば5〜8度程度の緩やかな傾斜角度にして転動させるのが適している。このため、ここを転動する玉は速度差が少なくなり安定して流下する。
【0035】
ことに、同一傾斜通路Lは、斜め下向きに長く直進する通路であるため縦(高さ)方向よりも横方向に長く延びることになる。このため、高さ方向の占有場所が少なくて済み、高さ方向の長さを短縮した通路となる。
【0036】
上述の貯留タンク12と整列通路14と玉払出し装置13との3要素については、これらを通路方向に直列して横長に一体に保持板15で保持してなる一体物の水平払出しユニット16を設けている。
【0037】
この水平払出しユニット16の保持板15は、パチンコ台11Aの幅長さよりも短い横長で平板状を有し、この保持板15の一片面に整列通路14を備えた貯留タンク12と玉払出し装置13とを横長に一体に取付けた状態で、他片面をパチンコ台背面側に取付けて、該保持板15の両面を取付け面に有効に利用している。また、この場合は1枚の保持板15を介して取付けるため部品点数が少なくなり、取付けが簡単化する。さらに、パチンコ台11Aの背面側から見て、保持板15の背面側には貯留タンク12と玉払出し装置13とが露出しているため、これら3要素に対しては係員による保守点検が容易になる。
【0038】
また、貯留タンク12と整列通路14と玉払出し装置13との3要素は横長の直列に連設された一体物の水平払出しユニット16として単品で扱うことができるため、パチンコ台への組付け作業が容易になる。
【0039】
さらに、この水平払出しユニット16は横方向に向けて長い緩やかな同一傾斜通路Lを有しているため、全長が横方向に長く、直方体状の一体物となり、該通路Lの高さ方向を短くできる。このため、縦型のパチンコ台背面側の上部位置に横長にして小さく組込むことができる。このため、パチンコ台背面側に取付けられた水平払出しユニット16の下方には他部品の取付けスペースが大きく取れる。また、3要素を直列させることにより、S字形通路のように通路を湾曲させたり、折り返させたりせずに済み、直線的に設けることができる。このため、全通路長さを短縮して小型化している。
【0040】
さらに、水平払出しユニット16からの玉の払出し口17を、該ユニット16の玉払出し装置13の通路終端側に位置する一端面に設けて、該払出し口17より玉を側方に払出すように構成している。このため、該ユニットの側方のスペースを十分に活用できる。ここに、ホース状の玉降下通路18(図1参照)を接続して、これより払出された玉を下方の図示しないパチンコ台前面の受皿へと払出す。
【0041】
上述の同一傾斜通路Lの上流側に位置する貯留タンク12の底面には、タンクスイッチSW1と、玉有無スイッチSW2を配設して、該タンク12内での玉の収容状態を検知している。
【0042】
この貯留タンク12の下流側の先端部には、該タンク12に貯留された玉を少しずつ整列させて流下させるように先端部の左右の両壁を八の字形の先細に絞り、その絞った細長い通路を前方に長く延設し、この延設部分を整列通路14に設けている。
【0043】
この整列通路14は、左右の壁面とその間の仕切板とで2列の凹溝を有する長い通路14a,14bを構成している。これらの2列の通路14a,14bと、その上方に対設される後述する重なり制限ローラ19とで、ここに不規則に導かれた玉を2列に整列させる。
【0044】
上述の重なり制限ローラ19は、整列通路14の上方に玉の重なりを崩して整列する整列部20として対設したものである。この整列部20は、通路方向に直交する上部の片持ち支持軸21を傾動支点に通路方向に回動許容し、該軸21の下部に回転自由な重なり制限ローラ19を吊支している。この重なり制限ローラ19を備えることにより、玉を貯留タンク12から下流側の整列通路14を介して玉払出し装置13へと受渡す場合の玉の重なりを崩して過負荷を抑制することができ、玉の受渡しに適した流下ガイド作用が得られる。上述した重なり制限ローラ19は回転自由に軸支して設けるだけでもよく、崩し力を高めるために回転力を伝達して回転駆動するように構成することもできる。
【0045】
そして、整列された玉はその下流側に位置する玉払出し装置13へと2列に導かれる。この場合、図5に示すように、整列通路14の先端部14cは玉払出し装置13の位置まで延びており、上流側の貯留タンク12と下流側の玉払出し装置13とは整列通路14を介して直線的に同一傾斜通路Lにて接続されている。また、玉払出し装置13は水平払出しユニット16から着脱許容して設け、この玉払出し装置13の内部の保守点検を容易にしている。
【0046】
次に、玉を払出し動作する玉払出し装置13について説明する。
この玉払出し装置13は貯留タンク12の下流側の整列通路14に続く同一傾斜通路L沿って送り部22と検出部23とをこの順に有している。
【0047】
上述の送り部22は、同一傾斜通路Lの終端部上面にスプロケット24を対設し、このスプロケット24と同一傾斜通路Lとの間に導いた玉を払出し回転方向に1個ずつ連続的に送り出すものである。
【0048】
また、上述のスプロケット24と、その下方の同一傾斜通路Lとの上下間に導かれた玉はスプロケット24の回転に伴って1個ずつ送り動作される。このため、連続的に供給される複数個の玉は途切れることなく連続的に払出し動作される。このスプロケット24は図示しない駆動モータおよび駆動機構の出力を受けて回転する。
【0049】
上述の検出部23は、払出された玉を計数する玉の計数センサSとして、例えば近接センサを同一傾斜通路Lの終端位置近くに配設して構成する。そして、玉が同一傾斜通路Lを通って払出されたとき、この計数センサSが通過した払出し直後の玉を計数する。
【0050】
次に、玉払出し装置13の玉詰り回避機能を有する構造を図6に基づいて説明する。
【0051】
先ず、スプロケット24については、外周面に玉送りに適した半円状の凹部25と凸部(爪部)26とを周方向に交互に有している。そして、図示しない駆動モータの駆動力により、スプロケット24を払出しに適した一定速度に回転させる。これにより、ここに導かれた玉Pを該スプロケット24の回転に伴って1個ずつ爪部26で仕切り、凹部25で保持しながら個別送りする。
【0052】
上述のスプロケット24の爪部26と対向する同一傾斜通路L上には、玉詰り回避用の突部27を形成している。この突部27は、同一傾斜通路Lを転動する玉Pの上面高さの軌跡T1(図7参照)に、スプロケットの外周に備えられた爪部26の回転方向の軌跡T2(図7参照)が重なる両軌跡交差領域T3(図7参照)と対応する同一傾斜通路Lの底面位置に山形状に突出させて設けている。この突出形状は、円滑な玉の移動を損なわないように通路方向に沿ってなだらかな山形状に小さな突出高さに突出させている。
【0053】
上述の両軌跡交差領域T3は、同一傾斜通路Lを転動する玉Pの上面高さの軌跡T1と、爪部26の回転方向の軌跡T2との両軌跡T1,T2が重なる領域である。この両軌跡交差領域T3はスプロケット24の位置に導かれた玉の送り開始位置側で爪部26の力の方向が底面に直交する方向になって玉詰りが発生する恐れがある。このため、この両軌跡交差領域T3に対してのみ玉詰り回避対策を施せば、的確に玉詰りを回避することが考えられる。
【0054】
そこで、この突部27を設けることにより、同一傾斜通路Lを転動してきた玉Pが、上方からのスプロケットの爪部26に接触し始めるとき、その対応位置で下方からは該同一傾斜通路Lの底面より突出する突部27によって玉Pは一時的に上動する。このとき、突部27の高さの分だけ玉Pは上方に変位し、これに伴い爪部26と玉Pとが最初に接触する高さ位置も上がり、玉Pに最初に接触する爪部26の加圧力の向きをずらすことができる。このため、爪部26が最初に玉Pの球面に加圧接触する方向を突部27によって、玉詰りの発生方向を避ける向きに設定すればよい。
【0055】
具体的には、図7に示すように、玉Pが転動過程で爪部26と最初に接触したとき、その爪部26の回転方向にかかる最初の加圧力P1の向きが、玉Pを介して同一傾斜通路Lの底面に直交しない向きになるように突部27を形成する。
【0056】
これによって、同一傾斜通路Lを転動する玉Pの上面高さの軌跡T1と、爪部26の回転方向の軌跡T2との両軌跡T1,T2が重なる両軌跡交差領域T3において、玉詰りを発生させないように玉Pと爪部26との接触高さ位置をずらせるものである。
【0057】
底面を平らに形成した場合、上述の爪部26と玉Pとの接触によっては、図7に想像線で示すように、上方の爪部26と下方の同一傾斜通路Lの底面との上下の対向面間で玉Pを挟み込んで、スプロケット24が回転不能になる玉詰り現象が発生してしまう。このときの爪部26の玉詰り発生タイミングの加圧力P2の方向は、下方に対向する同一傾斜通路Lの底面に直交したとき、その力が逃げる方向がなくなるためである。
【0058】
したがって、図7に矢印で示すように、爪部26の加圧力P1の向きが玉Pを介して同一傾斜通路Lの底面に直交しない他方向の向きになるようにすれば玉詰りは発生しない。このため、爪部26と玉Pを介して最初に対向する通路底面との位置に突部27を突出させるものである。その突出高さhは、玉Pを上動させたときに爪部26の加圧方向を変えることができる高さであればよい。
【0059】
ことに、突部27に乗り上げた玉Pに、爪部26の加圧力P1が加わったときは爪部26の力の方向が大きく変位しやすくなる。この爪部26の加圧力P1が突部27の頂部および突部27の傾斜面と対応したときは、玉Pに対する分力が生じやすくなり、加圧力P1の向きが通路方向側へと作用する。このため、加圧力P1の向きは同一傾斜通路Lの底面に直交しなくなり、爪部26と同一傾斜通路Lとの間での玉Pの挟み込みを回避する。さらに、玉Pが突部27の上り傾斜または下り傾斜の傾斜面に対応したときには、滑りが生じやすくなるため玉詰りを極力回避する働きが得られる。
【0060】
この結果、仮に玉詰りタイミングで玉Pがスプロケット24の位置に導かれても、突部27によって該スプロケットの爪部26と玉Pとが最初に接触する加圧方向が、玉を介して通路底面に直交しない向きになるため、玉詰り方向とは異ならせることができ、玉詰りを完全に回避することができる。図中、28は重なり制限レバー、29は異物排除口を示す。
【0061】
このように構成されたパチンコ玉ホッパー11における玉の払出し処理動作を次に説明する。
【0062】
パチンコ台11Aの背面側上部に設置されたパチンコ玉ホッパー11の貯留タンク12には、多数個の玉が払出し待機された状態で貯留されている。
【0063】
この待機状態から、今、パチンコ遊技機の全体を制御するメイン制御部から玉の払出し信号が入力されて駆動モータが駆動されると、この駆動に基づいて上流側の貯留タンク12では玉Pの流下が許可されて自重により転動して、同一傾斜通路Lの上流側の高い位置から、その下流側の低い位置へと導かれる。
【0064】
その後、玉Pは同一傾斜通路Lを通って流下し、整列通路14へと至る。ここで不規則に貯留されている玉が整列された後、該整列通路14から下流側の玉払出し装置13へと導かれる。
【0065】
このとき、玉は同一傾斜通路Lを傾斜方向に直進して流下する。このとき、該通路Lが直進しているため玉は方向変換することがなく、上流側の貯留タンク12から下流側の玉払出し装置13までの短い直線距離を通過して払出し動作される。また、同一傾斜通路Lの中間位置に該当する整列通路14にあっては、払出し毎に玉は2列に順序よく整列された状態で流下し、これより玉払出し装置13へと導かれる。
【0066】
この玉払出し装置13に玉Pが導かれたとき、図8(A)に示すように、仮に玉詰りが発生するタイミングでスプロケット24の爪部26に接触し始めようとしても、その対応位置で同一傾斜通路Lの底面より突出する突部27によって玉Pは一時的に押し上げられた状態で転動する。このとき、図8(B)に示すように、突部27の高さの分だけ玉Pは上動し、これに伴い爪部26と玉Pとが接触する高さ位置も上がり、玉Pに接触する爪部26の加圧力の向きがずれる。このため、スプロケット24が回転して爪部26が最初に玉Pの球面に加圧接触する加圧力P1の方向が、玉詰りの発生方向を避ける向きになる。このため、ここに導かれた玉Pは爪部26と同一傾斜通路Lとの上下間で挟み込まれなくなり、図8(C)に示すように、スプロケット24の回転に伴って凹部25で保持されながら個別送りされる。
【0067】
この結果、両軌跡交差領域T3において、玉詰りを発生させないように玉Pと爪部26との接触高さ位置を異ならせることができるため、玉詰りを完全に回避した払出し動作が得られる。
【0068】
その後、玉払出し装置13からはスプロケット24の回転駆動・停止の制御を受けて、定められた玉数が払出され、払出された玉はパチンコ台前面側の上皿または下皿へと払出される。
【0069】
既述した図6〜図8は玉詰り回避動作を説明するために2列の通路のうち、玉1個を通過させる1列の通路構造の図を例にとって説明した。
【0070】
上述のように、スプロケットと対応する同一傾斜通路の底面に突部を設けるだけで、玉に対する加圧方向を変更させてスプロケット対応時の玉詰りを回避する払出し動作が得られる。
【0071】
この発明の構成と、上述の一実施の形態の構成との対応において、
この発明の傾斜通路は、実施の形態の同一傾斜通路Lに対応し、
以下同様に、
貯留部は、貯留タンク12に対応し、
整列部は、整列通路14に対応し、
払出し部は、玉払出し装置13に対応するも、この発明は請求項に記載される技術思想に基づいて応用することができ、上述の一実施の形態の構成のみに限定されるものではない。
【0072】
例えば、上述の一実施の形態の突部27は、なだらかな山形状に突出して設けたが、これに限らず、半円形状に突出、あるいは台形状に突出させるなど玉詰り回避機能が得られる突出形状であればよい。
【0073】
【発明の効果】
この発明によれば、スプロケットに対応する傾斜通路に突部を設けるだけで、玉詰りを回避する通路を簡単に構成できる。また、傾斜通路上に玉払出し装置を組込むことができるため玉を傾斜方向に払出すことになり、縦方向の寸法を短縮した玉払出し装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のパチンコ玉ホッパーを備えたパチンコ台の要部背面図。
【図2】 この発明のパチンコ玉ホッパーを示す縦断面図。
【図3】 この発明のパチンコ玉ホッパーを示す斜視図。
【図4】 この発明の貯留タンクを示す斜視図。
【図5】 この発明の整列通路の玉整列状態を示す一部分解斜視図。
【図6】 この発明の玉払出し装置を示す要部縦断面図。
【図7】 この発明の玉詰り回避構造を示す要部拡大縦断面図。
【図8】 この発明の玉詰り回避動作を示す説明図。
【図9】 従来の玉払出し装置の玉詰り発生状態を示す要部縦断面図。
【符号の説明】
11…パチンコ玉ホッパー
13…玉払出し装置
24…スプロケット
26…爪部
27…突部
L…同一傾斜通路
P…玉
P1…加圧力
T3…両軌跡交差領域
Claims (3)
- 玉を転動させて通過させる傾斜通路を設け、該傾斜通路に対設したスプロケットを駆動して、上流側より導かれた玉を定められた数だけ払出す玉払出し装置であって、
前記傾斜通路を転動する玉の上面高さの軌跡に、前記スプロケットの外周に備えられた爪部の回転方向の軌跡が重なる両軌跡交差領域と対応する前記傾斜通路の底面位置に玉詰り回避用の突部を形成した
玉払出し装置。 - 前記突部は、玉が転動過程で前記スプロケットの外周に備えられた爪部と最初に接触対応したとき、その爪部の回転方向にかかる力の向きが、前記玉を介して前記傾斜通路の底面に直交しない向きになる突出形状または突出高さに形成した請求項1記載の玉払出し装置。
- 多数個のパチンコ玉を上流側で貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留されたパチンコ玉を自重により傾斜通路上を転動させながら下流側に導いて整列する整列部と、
前記整列部の傾斜下流側に、該傾斜通路上を転動してきたパチンコ玉を1個ずつスプロケットで回転送りして定められた玉数を払出す払出し部とを備えたパチンコ玉ホッパーであって、
前記傾斜通路を転動する玉の上面高さの軌跡に、前記スプロケットの外周に備えられた爪部の回転方向の軌跡が重なる両軌跡交差領域と対応する前記傾斜通路の底面位置に玉詰り回避用の突部を形成した
パチンコ玉ホッパー。
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