JP4293324B2 - セメント混和材及びセメント組成物 - Google Patents

セメント混和材及びセメント組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、土木・建築分野において使用されるセメント混和材及びセメント組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、カルシウムアルミネートを含有したセメント混和材として、CaO−Al2O3系の他に、CaO−Al2O3−Na2O系の焼成物又は溶融物に、硫酸カルシウム、及びアルカリ金属塩を使用したものが提案されている(特開平4-55351号公報)。しかしながら、Na2Oを含有するカルシウムアルミネートは、アルカリ骨材反応を起こす恐れが懸念されていた。本発明者らは、アルカリ骨材反応を起こさないセメント混和材として、Li2O含有量が1〜15重量%であるカルシウムアルミネートを含有する、セメント混和材を先に提案した(特開平8-217502号公報、特開平8-217503号公報)。この材料は、従来のカルシウムアルミネートと比較し、優れた強度発現性を示し、道路補修工事における短時間での交通解放を目的とする、超速硬セメント用等の混和材として有用なものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Li2O原料は工業原料として高価なため、Li2Oを含有するカルシウムアルミネートの普及が妨げられていた。そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、1重量%未満のLi2O含有量で、特定の組成範囲にあるカルシウムアルミネートを含有してなるセメント混和材を開発することにより、十分な可使時間と優れた強度発現性を有するセメント組成物を得ることができる、との知見を得て本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、Li2O含有量0.1〜1重量%未満、SiO2含有量1〜5重量%、CaO/Al2O3モル比1.5〜2.0のカルシウムアルミネートと無機硫酸塩と炭酸カリウム及びクエン酸の凝結遅延剤とを含有してなるセメント混和材であり、更にセメントと該セメント混和材を含有してなるセメント組成物である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0006】
本発明のセメント混和材に使用されるカルシウムアルミネートは、Li2O含有量が0.1〜1重量%未満、SiO2含有量が0.5〜7重量%で、Li2O含有量が0.25〜0.9重量%がより好ましく、SiO2含有量が1〜5重量%がより好ましい。又、カルシウムアルミネート中のCaOとAl2O3の割合は、CaO/Al2O3モル比(以下、C/Aモル比という)で1.5〜2.0の範囲であり、C/Aモル比が前記の範囲外では、十分な可使時間及び強度発現性が得られない。
【0007】
本発明のカルシウムアルミネートは、結晶質又は非晶質の何れでもよく、CaO原料、Al2O3原料、Li2O原料及びSiO2原料等の混合物を熱処理して得られる。原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、CaO原料に消石灰や石灰石粉末等、Al2O3原料にボーキサイトやアルミ残灰等、Li2O原料にLi2CO3質やLiOH質等のリチウム塩及びSiO2原料に珪石や粘土等が、それぞれ使用される。熱処理方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ロータリーキルンや電気炉等を使用する方法がある。熱処理条件(温度、時間)は、材料組成により異なるが、通常、熱処理温度は、1500〜1800℃程度である。熱処理物の冷却は、水や高圧空気等による急冷法や、自然放冷による徐冷法等何れの方法でもよい。又、他の成分あるいは不純物として、例えば、Na2O、K2O、MgO、TiO2、Fe2O3、B2O3、P2O5、SO3及びF2等の混入が予想されるが、これらは焼成物又は溶融物の融点を下げたり、活性を高めたりする効果があり、好ましい面もあるため、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲であれば、問題にならない。
【0008】
カルシウムアルミネートの粒度は、特に限定されるものではないが、ブレーン比表面積値(以下、ブレーン値という)で1500〜8000cm2/g程度が好ましい。1500cm2/g未満では十分な強度発現性が得られない場合があり、8000 cm2/gを超えても更なる効果の向上が期待できないだけでなく、コンクリートの流動性が低下する場合がある。
【0009】
カルシウムアルミネートの配合量は、特に限定されるものではないが、セメント混和材100重量部中、25〜85重量部が好ましく、35〜75重量部がより好ましい。25重量部未満では十分な急硬性や耐久性が得られない場合があり、85重量部を超えると十分な可使時間や強度発現性が得られない場合がある。
【0010】
本発明の無機硫酸塩とは、セッコウ類、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム等のアルカリ金属硫酸塩、亜硫酸アルカリ金属塩及び重亜硫酸アルカリ金属塩等を総称するものであり、特に限定されるものではないが、セッコウ類や硫酸アルミニウムを使用することが、本発明の効果が大であることや経済性の面から好ましい。
セッコウ類とは、無水セッコウ、半水セッコウ及び二水セッコウを総称するものであり、特に限定するものではないが、無水セッコウを使用することが本発明の効果が最も大きいことから好ましい。無水セッコウは、例えば、天然に産出する天然無水セッコウの他、半水セッコウや二水セッコウを熱処理して脱水したものや、工業副産物として発生するもの等の使用が可能である。
硫酸アルミニウムは、無水塩及び含水塩が存在するが、経済性の面から含水塩の使用が好ましい。硫酸アルミニウムの含水塩は、20モル以下の範囲で結晶水を有しており、如何なるものも使用可能である。
【0011】
無機硫酸塩の粒度は、特に限定されるものではないが、ブレーン値で2000〜9000cm2/gが好ましい。2000cm2/g未満では長期耐久性が悪くなる場合があり、9000cm2/gを超えるとコンクリートの流動性が低下する場合がある。
【0012】
無機硫酸塩の配合量は、特に限定されるものではないが、セメント混和材100重量部中、10〜70重量部が好ましく、20〜60重量部がより好ましい。10重量部未満では十分な強度発現性が得られない場合があり、70重量部を超えると長期耐久性が悪くなる場合がある。
【0013】
本発明の凝結遅延剤とは、例えば、クエン酸、酒石酸、グルコン酸及びリンゴ酸等の有機酸又はそれらの塩、りん酸又はその塩、アルカリ金属炭酸塩、並びにホウ酸等が挙げられ、特に限定されるものではないが、有機酸又はそれらの塩とアルカリ金属炭酸塩とを併用することが、強度発現性が良好となり好ましい。凝結遅延剤の配合量は、使用する目的・用途に依存するが、通常、セメント混和材100重量部中、0.5〜10重量部が好ましい。0.5重量部未満では十分な可使時間が得られない場合があり、10重量部を超えて使用すると強度発現性が低下する場合がある。
【0014】
本発明のセメント混和材の粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン値で1500〜8000cm2/g程度が好ましい。1500 cm2/g未満では十分な強度発現性が得られない場合があり、8000cm2/gを超えると十分な可使時間が得られない場合がある。
【0015】
本発明のセメント混和材の配合量は、特に限定されるものではないが、セメントとセメント混和材とを含有してなるセメント組成物100重量部中、10〜50重量部が好ましく、20〜30重量部がより好ましい。10重量部未満では強度発現効果が十分でなく、50重量部を超えると長期耐久性が悪くなる場合がある。
【0016】
本発明のセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、シリカ、フライアッシュ及び高炉スラグ等のポゾラン物質を混合した各種混合セメント、並びにアルミナセメント等が使用可能である。
【0017】
水の配合量は、特に限定されるものではなく、通常の使用範囲が使用され、例えば、水/セメント組成物比25〜100%が好ましく、30〜50%がより好ましい。25%未満では十分な作業性が得られない場合があり、100%を超えると十分な強度発現性が得られない場合がある。本発明のセメント混和材及びセメント組成物を配合した、セメント材料の混練及び養生方法については、特に限定されるものではなく、一般に行われている方法が採用される。
【0018】
本発明のセメント混和材及びセメント組成物の製造時に使用する混合装置としては、既存の如何なる攪拌装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、オムニミキサー、V型ミキサー、ヘンシェルミキサー及びナウターミキサー等が使用可能である。混合方法としては、それぞれの材料を施工時に混合してもよいし、予めその一部又は全部を混合しておいても差し支えない。
【0019】
本発明のセメント混和材及びセメント組成物に、砂や砂利等の骨材の他、補強繊維材、セメント膨張材、減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、水酸化ナトリウム等の可溶性アルカリ塩、酸化カルシウムや水酸化カルシウム等のカルシウム化合物、ベントナイトやモンモリロナイト等の粘土鉱物、ゼオライト、ハイドロタルサイト及びハイドロカルマイト等のイオン交換体を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
【0020】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0021】
実施例1
CaO原料、Al2O3原料、アルカリ金属酸化物(以下、R2Oという)原料及びSiO2原料を所定の配合比で混合したものを、電気炉で1600℃で30分間溶融した後、その溶融物を急冷して得られたクリンカーを粉砕し、ブレーン値4500cm2/gに調製し、表1に示す組成のカルシウムアルミネートを得た。カルシウムアルミネートの組成は、化学分析により測定した。
【0022】
このカルシウムアルミネート47.5重量部、無機硫酸塩a47.5重量部及び凝結遅延剤イ5重量部を配合し、セメント混和材とした。セメントとセメント混和材とを含有してなるセメント組成物100重量部中、セメント混和材を25重量部配合し、セメント組成物/砂比=1/2、水/セメント組成物比=40%のモルタルを調製し、このモルタルの20℃における、可使時間と各材齢における圧縮強度を測定した。その結果を表1に示す。
<使用材料>
CaO原料:試薬1級炭酸カルシウム
Al2O3原料:試薬1級酸化アルミニウム
SiO2原料:試薬1級二酸化ケイ素
R2O原料(A):試薬1級炭酸リチウム
R2O原料(B):試薬1級炭酸ナトリウム
R2O原料(C):試薬1級炭酸カリウム
セメント:電気化学工業社製普通ポルトランドセメント
無機硫酸塩a:ブレーン値5000cm2/gの天然無水セッコウ
凝結遅延剤イ:炭酸カリウム75重量部とクエン酸25重量部の混合物
砂:JIS標準砂(ISO679準拠)
水:水道水
<測定方法>
可使時間:モルタルの温度上昇を熱電対で測定し、練り上がり温度から1℃上昇した時間を可使時間とした。
圧縮強度:JIS A 1108に準じて測定した。
【0023】
【表1】
Figure 0004293324
【0024】
本発明のセメント混和材を配合したセメント組成物は、良好な可使時間と圧縮強度発現を示した。一方、Li2Oを含有していない比較例(実験No.1-1)、Na2OやK2Oを含有した比較例(実験No.1-7,1-8)、SiO2の含有量が本発明の範囲を外れている比較例(実験No.1-13,1-18)、及びC/Aモル比が本発明の範囲を外れている比較例(実験No.1-9,1-12)では、適切な可使時間が取れておらず、圧縮強度発現性が劣っている。
【0025】
実施例2
実施例1の実験No.1-4のセメント混和材において、セメント組成物100重量部中の配合量を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
Figure 0004293324
【0027】
本発明のセメント混和材を配合したセメント組成物は、良好な可使時間と圧縮強度発現を示した。一方、セメント混和材を配合していない比較例(実験No.2-1)では、可使時間が全く取れず、圧縮強度発現性が著しく劣っている。
【0028】
実施例3
Li2O含有量0.5重量%、SiO2含有量3重量%、C/Aモル比1.71のカルシウムアルミネートと、無機硫酸塩の種類と配合量を表3に示すように変えたセメント混和材を使用したこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表3に示す。
<使用材料>
無機硫酸塩a:ブレーン値5000cm2/gの天然無水セッコウ
無機硫酸塩b:ブレーン値2500cm2/gの試薬1級硫酸アルミニウム18水塩
無機硫酸塩c:ブレーン値4000cm2/gの試薬1級二水セッコウ
無機硫酸塩d:ブレーン値4000cm2/gの試薬1級半水セッコウ
【0029】
【表3】
Figure 0004293324
【0030】
本発明の無機硫酸塩を配合したセメント組成物は、良好な可使時間と圧縮強度発現を示した。一方、無機硫酸塩を配合していない比較例(実験No.3-1)では、可使時間が取れず、圧縮強度発現性が著しく劣っている。
【0031】
実施例4
Li2O含有量0.5重量%、SiO2含有量3重量%、C/Aモル比1.71のカルシウムアルミネートと、無機硫酸塩aを等重量部配合し、凝結遅延剤の種類と配合量を表4に示すように変えたセメント混和材を使用した以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表4に示す。
<使用材料>
凝結遅延剤イ:炭酸カリウム75重量部とクエン酸25重量部の混合物
凝結遅延剤ロ:炭酸カリウム75重量部と酒石酸25重量部の混合物
凝結遅延剤ハ:炭酸カリウム75重量部とグルコン酸ナトリウム25重量部の混 合物
凝結遅延剤ニ:炭酸カリウム75重量部とポリアクリル酸ナトリウム25重量部
の混合物
【0032】
【表4】
Figure 0004293324
【0033】
本発明の凝結遅延剤を配合した実施例では、良好な圧縮強度発現と可使時間を示した。一方、凝結遅延剤を配合していない比較例(実験No.4-1)では、可使時間が全く取れず混練不能である。
【0034】
【発明の効果】
本発明の高価なLi2Oの含有量が低いセメント混和材を使用することにより、十分な可使時間と優れた圧縮強度発現性を有するセメント組成物が得られる。

Claims (2)

  1. Li2O含有量0.1〜1重量%未満、SiO2含有量1〜5重量%、CaO/Al2O3モル比1.5〜2.0のカルシウムアルミネートと無機硫酸塩と炭酸カリウム及びクエン酸の凝結遅延剤とを含有してなるセメント混和材。
  2. セメントと請求項1記載のセメント混和材とを含有してなるセメント組成物。
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