JP4291965B2 - 電子放出表示装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体材料を用いた電子放出素子を有する電子放出表示装置の製造方法に関するものである。また、この電子放出表示装置は、平面発光装置やディスプレイ装置などに利用されるものである。
【0002】
【従来技術】
従来、導電性基板上にシリコンからなる半導体材料を形成し、陽極酸化法により多孔質シリコン層(強電界ドリフト層)とし、その表面に金属薄膜からなる薄膜電極を形成した平面型の電子放出素子が提案されている。また、この電子放出素子と対向する位置に、蛍光体とコレクタ電極を備えたガラス基板を配置したディスプレイ装置が提案されている。
特許第3076561号、特許第3084280号、特開平9−259795号公報には電子放射型電子源を利用したディスプレイ装置が開示されている。
図1(e)にこのディスプレイ装置の構成を示すと、絶縁性基板1の表面にストライプ状にパターニングされた裏面電極2が形成され、その表面に陽極酸化法によるポリシリコンで作製された強電界ドリフト層4、更にその表面に薄膜電極5が裏面電極2と直行するようにストライプ状に形成され、対向配置されるガラス基板9にはコレクタ電極7と電子線によって可視光を発光する蛍光体8が形成されている。
【0003】
このディスプレイ装置は、薄膜電極5を裏面電極2に対して正極として直流電圧を印加すると共に、薄膜電極5を陰極としてコレクタ電極7との間に直流電圧を印加することにより薄膜電極5表面から電子を放出させ蛍光体を発光させるものである。
この種のディスプレイ装置では、裏面電極2と薄膜電極5をストライプ状に形成すると共に互いに直交して配置し、裏面電極2と薄膜電極5のそれぞれ選択された部分に電圧を印加することにより、電子が放出又は加速されて選択された蛍光体(両電極の交差する部分)を発光させる。
また、別の構成のものでは、薄膜電極5及びコレクタ電極7をストライプ状に形成すると共に互いに直行して配置し、薄膜電極5とコレクタ電極7のそれぞれ選択された部分に電圧を印加することにより、電子が選択された部分(両電極の交差する部分)から放出されて対向配置された蛍光体を発光させる。
【0004】
従来の電子放出表示装置の製造方法の一例を図1により説明する。
図1(a)に示すように、絶縁性基板1の表面にストライプ状の導電体層からなる裏面電極2を形成する。
次に図1(b)に示すように、表面に数μmのポリシリコン層3を形成する。
次に図1(c)に示すように、陽極酸化処理を行うことによりポリシリコン層3を多孔質ポリシリコン層4(強電界ドリフト層)とする。より詳しくは、50%のフッ酸水溶液とエタノールの混合液を電界溶液とし、白金電極を負極、裏面電極2を正極として、ポリシリコン層3に光を照射しながら定電流で陽極化し、更に急速熱酸化(RTO)法を用いてポリシリコン層3を熱酸化することにより多孔質ポリシリコン層4(強電界ドリフト層)とする。
この場合、多孔質ポリシリコン層4は裏面電極2のストライプ通りの形状となる。
次に図1(d)に示すように、マスクデポジション法により表面に薄膜電極5をストライプ状に形成し、続いてマスクデポジション法により薄膜電極5と電気的に接続された薄膜電極配線6を形成することで電子放出部が完成する。
更に、ガラス基板上に透明電極からなるコレクタ電極7と蛍光体8を設けた部材を、上記のようにして作製した電子放出素子と対向させて配置することにより表示素子が完成する。
【0005】
しかし、裏面電極2のパターニング後にポリシリコン層3を成膜する際、LP−CVD法(減圧化学気相析出法)を用いると、成膜温度が600〜650℃と高いため、金属とポリシリコンが反応して膜厚変動や抵抗値変動が発生するという不具合がある。
また、輝度を上げるためには基板電流(Ips)を上げて電子放出量を増やす必要があるが、基板電流(Ips)を上げると強電界ドリフト層4での発熱による素子劣化が懸念される。
また、表示を高精細化するためには、裏面電極2と薄膜電極5のストライプ幅を狭くすることにより1ビット当りの電子放出面積を小さくする必要があるが、電子放出面積が小さくなると放出電子が少なくなるためその分だけ輝度が低下する。
更に、薄膜電極配線6は主にAlからなり、陽極酸化時のフッ酸水溶液及び急速熱酸化時の高温(約900℃)に耐えられないので、多孔質シリコン層4を形成した後に成膜する必要がある。しかし、金属を全面蒸着した後でパターニングすると、エッチング液が多孔質シリコン層4の内部に浸透して電気特性に影響を与えるという不具合が発生する。そして、それを避けるため、メタルマスクによるマスクデポジション法を採用すると正確なアライメントが出来ず、かつメタルマスクの微小な浮きによる線太りが発生するので微細な加工は不可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高精細な表示素子を高輝度で実現できると共に、劣化が少なく安定して製造可能な電子放出表示装置の製造方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、次の1)の発明によって解決される。
1) 少なくとも基板/裏面電極/強電界ドリフト層/薄膜電極を具備する電子放出素子からの電子放出現象により真空中に電子を放出させて蛍光体を発光させる電子放出表示装置であって、前記電子放出素子の表面に複数の凹凸を有し、前記強電界ドリフト層が凹面全面又は凸面全面に形成され、前記薄膜電極と接した薄膜電極配線を有する電子放出表示装置を製造するに際し、前記裏面電極上にポリシリコン層を形成し、その上に前記薄膜電極配線をシリサイドで形成した後、該薄膜電極配線をマスクとして選択的に前記ポリシリコン層の陽極酸化を行い、前記強電界ドリフト層を作製することを特徴とする電子放出表示装置の製造方法。
【0008】
以下、上記本発明の実施の態様について詳しく説明する。
本発明は、単位面積当りの電子放出面積を大きくすること(開口率拡大)を目的としている。
図2は本発明に係る電子放出表示装置の一実施態様を説明するためのものである。
本発明では、絶縁性基板1の表面に凹凸が形成され、裏面電極2と強電界ドリフト層4が凹面全面に形成されており、その表面には薄膜電極5が形成され、薄膜電極5に接して複数の薄膜電極配線6が形成されている。なお、7はコレクタ電極、8は蛍光体、9はガラス基板である。
図2からも分かるように、基板1の表面に凹凸を形成することによりチップサイズを変えずに表面積を大きくすることが出来、その凹面又は凸面に強電界ドリフト層4を形成することにより強電界ドリフト層4の表面積(開口率)が増えることになる。単純に考えると、段差の側壁部分の面積が増え、その全てを強電界ドリフト層4として使用できることになる。
強電界ドリフト層4は、Siの陽極酸化により作製することが出来、ポーラス(多孔質)シリコン(PS)と呼ばれている。陽極酸化は、ランプ照射しながらフッ酸(HF)+エタノール溶液中で裏面電極2と対向電極(Ptワイヤ:図示せず)に電圧を印加して、電流を制御することにより行う。
なお、酸化は、酸素雰囲気中でランプ加熱を行う急速熱酸化(RTO)や、暗所において硫酸+水溶液中で陽極酸化と同様に裏面電極2と対向電極(Ptワイヤ:図示せず)に一定電流を流すことによって行う化学的な酸化がある。
【0009】
この電子放出表示装置の動作について説明すると、素子に印加された電圧(Vps)により、電子が強電界ドリフト層4内部で加速されてホットエレクトロンとなり、トンネル効果により薄膜電極5を通過して真空中に放出され、バイアス(Vb)によりコレクタ電極7に向かって加速され、蛍光体8に衝突することにより発光する。
裏面電極2と薄膜電極5はストライプ状で、互いに直行するように配置されており、それぞれ選択された部分に電圧を印加することにより、電子は両電極の交差する部分から放出され、対向配置された蛍光体を発光させる。
【0010】
一例として、裏面電極2のストライプ幅を32μm、凹部の一辺を30μm、深さを15μm、薄膜電極配線6の線幅を5μmとすれば、1ビットの占有面積は約1600μm2(40×40μm)となるが、強電界ドリフト層4の表面積は2700μm2となるので開口率は約170%である。
これは、平面に作製した場合(開口部面積:30μm×30μm=900μm2)と比べて強電界ドリフト層4の面積が3倍広くなっている。つまり、平面型の3倍の明るさを実現できることになる。
凹凸形状は前記したものに限らず、側壁を傾斜させたものでも良い。
また、強電界ドリフト層4を凸表面に形成し、薄膜電極配線6を凹底面に配置しても良い。
【0011】
本発明における薄膜電極配線6はシリサイドで形成する。
薄膜電極配線6は、通常、強電界ドリフト層4、薄膜電極5を形成した後に蒸着法又はスパッタ法により主にAl等で形成するが、Alのパターニング時のエッチング液による素子劣化が懸念されるため、一般的にはメタルマスクによるマスクデポジション法が採用される。
Alのエッチングは、H3PO4+HNO3+CH3COOH+H2Oからなる混合液をエッチング液として40℃前後に温めて行うが、薄膜電極5は厚さ約10nmと薄いので、エッチング液に晒されると剥離することがあり、強電界ドリフト層4はポーラス(多孔質)構造となっているため容易にエッチング液が浸透し、残留や化学的変化を起こすという不具合が発生する。
また、メタルマスクによるマスクデポジションは、アライメントの精度を出し難く、かつマスクの微小な浮きによりAlラインの太りが発生するため、微細な構成の電子放出素子の作製や大量生産には向かない。
このような問題に対して、シリサイドは、低抵抗かつ耐熱性、耐薬品性に優れ、陽極酸化工程に耐えられるので好適である。
【0012】
薄膜電極配線6をシリサイドにより形成すると、陽極酸化工程前に薄膜電極配線6を形成することが可能となる。つまり、フォトリソグラフィ工程による高精細な配線形成ができるため、微細な電子放出素子の作製や生産性に優れている。
前記本発明の説明で一例として示した電子放出表示装置の薄膜電極配線6は線幅が5μmであるが、フォトリソグラフィ法によるパターニングは容易であり、かつ配線の位置精度や線幅の精度が高く、このようなことはメタルマスクによるマスクデポジション法では実現できない。
また、エッチング時には強電界ドリフト層4となる部分はまだポリシリコンの状態であるためエッチング液が浸透せず、素子特性の劣化を気にすることなくプロセスを進められる。
薄膜電極配線6をシリサイドで形成すると、シリサイドは陽極酸化工程においても薬液や熱に対して十分な耐性を有するため、膜減りや断線のない良好な薄膜電極配線6を作製することができる。
【0013】
本発明では、裏面電極をシリサイドで形成してもよい。
裏面電極2に求められる物性としては、低抵抗でポリシリコンとのエッチング選択比が高いことが挙げられる。
ポリシリコンとのエッチング選択比が重要な理由は、裏面電極2の配線を表面から取出すためにポリシリコンをエッチングしてコンタクトホールを開ける必要があり、ポリシリコンエッチング液に対して耐性のない膜(例えば、ドーピングしたポリシリコン)であれば裏面電極2もエッチングされてしまうからである。
これに対し、シリサイドは低抵抗で、耐熱性、耐薬品性に優れるため、裏面電極2に適している。また、裏面電極2をシリサイドとすることにより強電界ドリフト層4の放熱性が向上するというメリットもある。
【0014】
本発明におけるシリサイドとしては、Pd、Pt、Mo、W、Zrの何れかの金属とのシリサイドが好ましい。
薄膜電極配線6と裏面電極2をシリサイドによって形成する場合、シリサイド膜は、低抵抗で陽極酸化処理時の薬品に不溶であり、急速熱酸化の熱に耐え得るものでなければならない。
これらの条件を満たすのは、Pd、Pt、Mo、W、Zr等の金属のシリサイド化された膜である。
【0015】
本発明に係る電子放出表示装置は、基板をシリコンで形成し、該シリコン基板の表面に異方性エッチングにより凹凸を形成してもよい。
シリコンの異方性エッチングは、単結晶シリコンの結晶面で決まる正確な立体構造、特に面方位性の違いによりエッチングレートが違う性質を利用して加工する方法で、例えば<100>シリコン単結晶基板にマスキングを施しKOH溶液でエッチングすることにより、図5(a)、(b)のような形状を作製することができる。ここで、(b)は(a)のX−X′断面図である。また、この時の角度θは54.7°で、この面は<111>面である。
マスクの大きさとエッチング時間を調節することにより図5(c)、(d)のような形状も作製できるので、電子放出表示装置に利用することが可能となる。ここで、(d)は(c)のY−Y′断面図である。
【0016】
その製造方法は、まず図6(a)に示すように、シリコン基板1の表面にマスキング材13を形成した後、フォトリソグラフィ工程によりパターニングする。マスキング材13は、KOH溶液に不溶で絶縁性の膜であれば良く、SiO2、SiON、SiN、Ta2O5等が挙げられ、これらはスパッタ法により成膜できるものである。
表面のパターニングの一例を示すと、四角形マスクの一辺を30μmとし、隣のパターンとの間隔を10μmとすることにより40μmピッチのマトリクスを形成し、四角形マスクの一辺をシリコンウエハーのオリフラとの角度が45°となるように配置することにより前記の異方性エッチングを行うことが出来る。しかし、上記寸法は一例に過ぎず、これに限られるものではない。
次に、KOH溶液を約90℃に加熱してシリコン基板を深さ15μmとなるようにエッチングすることにより、図6(a)に示すような形状が得られる。
この形状では、平面で作製する場合の約1.4倍の開口率が得られる。
【0017】
次に、一例として、シリコン表面に絶縁膜14を厚さ1μm形成し、裏面電極2を前記したようにストライプ状に成膜し、ポリシリコン層3をCVD法により厚さ1.5μm成膜する。ポリシリコン層3の膜厚はあくまで一例であってこれに限らず自由に設計してよい。
更に、薄膜電極配線6を前記したのと同様にシリサイドで形成することにより、図6(b)のようになる。絶縁膜14の素材としてはSiO2、SiN、SiON等が挙げられ、熱酸化法、CVD法又はスパッタ法により形成できる。
次に、ポリシリコン層3をパターニングすることによって、裏面電極2を表面に露出させ、前記したのと同様にして陽極酸化を行いポリシリコン層3を強電界ドリフト層4とし、薄膜電極5を形成して図6(c)に示すような電子放出素子が完成する。
図示していないが、前記したのと同様、ガラス基板上にコレクタ電極7と蛍光体8を設けた部材を、電子放出素子と対向させて配置し、空間を真空にすることにより電子放出表示装置が完成する。
薄膜電極5は、Au、Al、Pt等の金属を用いて、マスクデポジション法により裏面電極2と直交し厚さ約10nmとなるように蒸着又はスパッタ法で形成する。
このように異方性エッチングを用いて凹凸を作製すると、より正確により微細な形状の凹凸を形成することが可能となる。
【0018】
本発明に係る電子放出表示装置は、基板をガラスで形成し、該ガラス基板の表面に凹凸を形成し、強電界ドリフト層4はポリシリコン層3を陽極酸化することにより形成してもよい。
ガラス基板表面の凹凸形成はドライエッチングにより行う。ドライエッチングは、高密度プラズマエッチング装置(アルバック社製、型番:NLD−800)を用いて、例えば真空度0.3Pa、アンテナパワー1kW、バイアス400Wの条件でCF4ガスにより行う。この時のエッチングレートは1μm/minであり、凹形状の側壁はほぼ垂直に形成することができる。
凹形状は垂直な側壁に限らず、アンテナパワーとバイアスを調整することにより傾斜させた側壁とすることも可能である。
凹形状寸法は、前記本発明の説明で一例として示したのと同様に、開口寸法30μm×30μm、深さ15μm、凹と凹の間隔10μmとすれば、ピッチ40μmのマトリクスを作製することができる。
この後、前記したのと同様にして強電界ドリフト層4、薄膜電極5、薄膜電極配線6等を設けて電子放出素子を作製し、該素子に対向させて、ガラス基板上にコレクタ電極7と蛍光体8を設けた部材を配置することにより電子放出表示装置が完成する。
上記のように、基板をガラスにすると大面積化が容易に行えるため、つなぎ込み精度、実装コスト、又は特性のバラツキなどを抑えることが可能となる。
【0019】
本発明に係る電子放出表示装置は、基板をセラミックスで形成し、該セラミックス基板の表面に凹凸を形成し、強電界ドリフト層4をポリシリコン層3の陽極酸化により形成してもよい。
セラミックスは、材料+バインダーを型で成形し高温で焼成したものであり、プレス成形ができるため大量生産に向いている。表面に凹凸を形成する場合も、数十μmの突起加工が可能であるから、本発明で規定する複数の凹凸を作製することが可能である。
また、ガラスよりも強度があるので基板を薄くでき、ベリリア等は熱伝導率に優れているため強電界ドリフト層の放熱にも有利である。
セラミックスの種類としてはアルミナやベリリア等を用いることができる。
上記のように、基板をセラミックスにすると大面積化が容易に行えるため、つなぎ込み精度を高めることができると共に大量生産に向いている。
【0020】
本発明では、薄膜電極配線6をシリサイドで形成した後に、薄膜電極配線6をマスクとして選択的に陽極酸化を行い、強電界ドリフト層4を作製することを特徴とする。
一例として、図3(a)に示すように、凹凸が形成された絶縁性基板1の上に裏面電極2をストライプ状に厚さ4000Å成膜し、次いでポリシリコン層3を厚さ1.5μm成膜する。
更にPt10を厚さ2000Å成膜した後、Pt10のエッチングマスクとなるSiO211をスパッタ法により厚さ1000Å成膜する。
絶縁性基板1はガラスからなり、このガラス基板の表面に凹凸を形成する。
裏面電極2はシリサイドで形成することが好ましく、シリサイドは幅が32μmのストライプ状とし、凹面の側壁及び底面を覆うよう形成する。
ポリシリコン層3は、LP−CVD法により、真空度10Pa、温度650℃、SiH4ガス80ccmの条件で厚さ1.5μmとなるよう成膜する。
Pt10は、スパッタ法により、真空度0.13Pa、パワー300W、Ar5ccmの条件で成膜する。同じようにPt10のエッチングマスクとなるSiO211もスパッタ法により厚さ1000Å成膜する。
【0021】
次に図3(b)に示すように、フォトリソグラフィー法によりエッチングマスクのSiO211をパターニングし、このSiO211をマスクとしてPt10をエッチングする。Pt10のエッチングは王水によるウエットエッチングと逆スパッタ法のどちらを用いても良い。
Pt10のパターンは、図4に示すようにストライプ状で裏面電極2と直角方向となるように配置し、かつ凹部の両肩にかかるようにすると次工程の陽極酸化時のマスクとすることができる。
Pt10をパターニングした後、SiO211をウエットエッチングにより取り除き、次いで、真空中又はN2中にて400〜600℃で約1時間加熱し、Pt10をシリサイド化して薄膜電極配線6とする。
Pt10のパターニングは、上記の方法とは別に、ポリシリコン層3を成膜した後にSiO211を厚さ1000Å成膜し、フォトリソグラフィー法により薄膜電極配線パターンとなるようにSiO211の窓開けを行い、Pt10を厚さ2000Å成膜した後、真空中又はN2中にて400〜600℃で約1時間加熱してシリサイド化することもできる。この時ポリシリコン層3とPt10が接触している部分だけがシリサイド化されるので、余分なPt10を王水でエッチングした後にSiO211のエッチングを行う。
【0022】
次に図3(c)に示すように、陽極酸化法によりポリシリコン層3を多孔質化して強電界ドリフト層4を形成する。
その後、メタルマスクによるマスクデポジションを行い、Auを厚さ10nm成膜することにより薄膜電極5を形成して電子放出素子を完成する。
薄膜電極5の材料としてAuを例にとったが、これに限らず、Pt、Al、Ag等を用いてもよい。
続いてガラス基板9上にコレクタ電極7となる透明電極(ITO)を成膜し、更に蛍光体8を塗布したものを前記電子放出素子に対向させた後、スぺーサ12を介して一体化し、内部を10−4〜10−5Pa程度の真空にすることにより電子放出表示装置が完成する。
本発明の製造方法では、薄膜電極配線6をシリサイドで形成しているので陽極酸化工程に耐えることができ、薄膜電極配線6をフォトリソグラフィー法でパターニング出来るので微細な加工が可能となる。
また、薄膜電極配線6をマスクとして陽極酸化が行えるので、強電界ドリフト層4の寸法精度及び位置精度を高めることが出来る。
【0023】
次に裏面電極の形成について説明する。
通常シリサイド化は、基板にポリシリコンを成膜した後、Pt等の金属を蒸着し、パターニングマスクとしてSiO2やSiN膜を成膜する。
SiO2又はSiN膜をパターニングしてPtを逆スパッタ又は王水によりパターニングし、熱工程(400〜600℃で1時間)を経てシリサイド化する。
電子放出素子とするには、SiO2やSiN膜を除去し、更にシリサイド膜上にポリシリコン層を成膜した後、陽極酸化工程を経て強電界ドリフト層を形成する。
このように裏面電極2をシリサイド膜とすることにより、ポリシリコン層を2度成膜する必要があり、工程が増えてしまう。
これに対し、裏面電極をシリサイドで形成した電子放出表示装置の製造に際し、基板に金属を成膜・パターニングした後、強電界ドリフト層4となるポリシリコン層3を成膜すると同時にシリサイド化することが好ましい。
【0024】
その一例を示すと、絶縁性基板1の表面にPtを厚さ2000Å成膜し、パターニングマスクとしてSiO2やSiN膜を厚さ1000Å成膜する。
金属はPtに限らず、Pd、Mo、W、Zrなどの金属でも良く、スパッタ法や蒸着法により成膜することが出来る。
次にSiO2又はSiN膜を裏面電極2の形状にパターニングしてPtエッチングマスクとし、Ptのエッチングを行い裏面電極2とする。
パターニングマスクの形態例としては、ストライプ状(例、幅32μm、スペース8μm)を挙げることが出来る。
Ptのエッチングはバックスパッタ法を用いて行うが、王水で煮沸することによりエッチングすることもできる。
次にPt表面のSiO2又はSiN膜をエッチングにより除去し、ポリシリコン層3を厚さ1.8μm成膜する。このポリシリコン層3はLP−CVD法により真空度10Pa、温度650℃、SiH4ガス80ccmの条件で成膜し、その後反応ガスを止めて温度650℃のまま30分間保持することによりアニールを行う。Pt上にポリシリコン層3を成膜すると同時にシリサイド化が進行するが、ポリシリコン層3の成膜時間との兼ね合いでシリサイド膜はメタルリッチとなっている。
【0025】
最後のアニール工程により、より安定なシリサイド(ジシリサイド)化が起こり、シリサイド膜厚は3000Åとなる。つまり、ポリシリコン層3の膜厚を1.5μmに設計しているので、シリサイド化に必要な膜厚3000Åを余分に成膜しているわけである。
また、裏面電極2のコンタクトをとるために、ポリシリコン層3の一部をウエットエッチングにより除去して、表面に裏面電極2を露出させる。
陽極酸化工程によりポリシリコン層3を強電界ドリフト層4とし、薄膜電極5を形成すれば電子放出素子が完成する。
更に、ガラス基板9上に透明電極からなるコレクタ電極7と蛍光体8を有する部材を、前記電子放出素子と対向配置することにより電子放出表示装置が完成する。
上記の製造方法では、シリサイド化のためのポリシリコン成膜を1回で済ますことができるため、工程の簡略化が実現できコストを抑えることが可能となる。また、裏面電極2をシリサイドとすることにより強電界ドリフト層4の放熱性が向上するため、素子特性が向上する。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、薄膜電極配線をシリサイドで形成した後に、薄膜電極配線をマスクとして選択的に陽極酸化を行い、強電界ドリフト層を作製する製造方法であるため、プロセスが安定である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の電子放出表示装置の製造方法の一例を示す図。
(a) 絶縁性基板1の表面に裏面電極2を形成する工程。
(b) 表面にポリシリコン層3を形成する工程。
(c) ポリシリコン層3を多孔質ポリシリコン層(強電界ドリフト層)4を形成する
工程。
(d) 薄膜電極5と薄膜電極配線6を形成する工程。
(e) 前記工程により作製した電子放出素子に対向させて、ガラス基板9上にコレク
タ電極7及び蛍光体8を設けた部材を配置させる工程。
【図2】 本発明に係る電子放出表示装置の一実施態様を示す図。
【図3】 本発明の製造方法の一例を示す図。
(a) 凹凸が形成された絶縁性基板1の上に裏面電極2及びポリシリコン層3を形成
し、次いで、Pt10とそのエッチングマスクとなるSiO211を設ける
工程。
(b) SiO211をパターニングし、これをマスクとしてPtをエッチングした後
薄膜電極配線6とする工程。
(c) ポリシリコン層3を強電界ドリフト層4に変え、薄膜電極5を形成し、次いで
ガラス基板9上にコレクタ電極7及び蛍光体8を設けた部材をスペーサ12を
介して一体化し、内部を真空にして電子放出表示装置とする工程。
【図4】 図3に示す製造方法におけるPt10のパターンを示す図。
【図5】 異方性エッチングによるシリコン基板表面の凹凸構造を示す図。
(a) <100>シリコン単結晶基板から得られる形状を示す図。
(b) (a)のX−X′断面図。
(c) (a)においてマスクの大きさとエッチング時間を変えることにより得られる
形状を示す図。
(d) (c)のY−Y′断面図。
【図6】 基板がシリコンで形成された電子放出表示装置の製造方法の一例を示す図。
(a) シリコン基板1の表面をフォトリソグラフィによりパターニングする工程。
(b) 絶縁膜14、裏面電極2、ポリシリコン層3、薄膜電線配線6を設ける工程。
(c) 強電界ドリフト層4、薄膜電極5を設ける工程。
【符号の説明】
1 絶縁性基板
2 裏面電極
3 ポリシリコン層
4 強電界ドリフト層(多孔質ポリシリコン層)
5 薄膜電極
6 薄膜電極配線
7 コレクタ電極
8 蛍光体
9 ガラス基板
10 Pt
11 SiO2
12 スペーサ
13 マスキング材
14 絶縁膜
Vb バイアス
Vps 素子に印加された電圧
Claims (1)
- 少なくとも基板/裏面電極/強電界ドリフト層/薄膜電極を具備する電子放出素子からの電子放出現象により真空中に電子を放出させて蛍光体を発光させる電子放出表示装置であって、前記電子放出素子の表面に複数の凹凸を有し、前記強電界ドリフト層が凹面全面又は凸面全面に形成され、前記薄膜電極と接した薄膜電極配線を有する電子放出表示装置を製造するに際し、前記裏面電極上にポリシリコン層を形成し、その上に前記薄膜電極配線をシリサイドで形成した後、該薄膜電極配線をマスクとして選択的に前記ポリシリコン層の陽極酸化を行い、前記強電界ドリフト層を作製することを特徴とする電子放出表示装置の製造方法。
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