JPH08138531A - 電子放出素子及びその製造方法 - Google Patents

電子放出素子及びその製造方法

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JPH08138531A
JPH08138531A JP9428695A JP9428695A JPH08138531A JP H08138531 A JPH08138531 A JP H08138531A JP 9428695 A JP9428695 A JP 9428695A JP 9428695 A JP9428695 A JP 9428695A JP H08138531 A JPH08138531 A JP H08138531A
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electron
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emitting device
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Shusuke Gamo
秀典 蒲生
Masatake Kanamaru
正剛 金丸
Junji Ito
順司 伊藤
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ゲート電極に対して傾斜したエミッタ電極が
高い位置精度で再現性よく形成されており、フォトリソ
グラフ法のデザインルールに制限されることなく極めて
小さい間隙幅でゲート電極がエミッタ電極に対して自己
整合的に配設された電子放出素子を提供する。 【構成】 基板1、絶縁層2及びゲート電極3が順次積
層され、ゲート電極3と絶縁層2とには該基板に達する
開孔部Aが設けられ、その開孔部A内の基板1上にエミ
ッタ電極4がゲート電極3に接触しないように積層され
てなる電界放射型電子放出素子において、基板1に逆錐
体形状の凹部1aを形成し、その凹部1aの斜面に沿っ
てエミッタ電極4を形成する。その際、エミッタ電極4
の周縁部4aが基板の凹部1aの上縁部から突き出るよ
うにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強電界によって電子を
放出する電界放射型の電子放出素子及びその製造方法に
関する。より詳しくは、光プリンタ、電子顕微鏡、電子
ビーム露光装置などの電子発生源や電子銃として、ある
いは照明ランプの超小型照明源として、特に、平面ディ
スプレイを構成するアレイ状のFEA(Field E
mitter Array)の電子発生源として有用な
電子放出素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子ディスプレイデバイスと
して陰極線管が広く用いられているが、陰極線管は、電
子銃のカソードから熱電子を放出させるためにエネルギ
ー消費量が大きく、また、構造的に大きな容積を必要と
するなどの問題があった。
【0003】このため、熱電子ではなく冷電子を利用で
きるようにして、全体としてエネルギー消費量を低減さ
せ、しかも、デバイス自体を小形化した平面型のディス
プレイが求められ、更に、近年では、そのような平面型
ディスプレイに高速応答性と高解像度とを実現すること
も強く求められている。
【0004】このような冷電子を利用する平面型ディス
プレイの構造としては、高真空の平板セル中に、微小な
電子放出素子をアレイ状に配したものが有望視されてい
る。そして、そのために使用する電子放出素子として、
電界放射現象を利用した電界放射型の電子放出素子が注
目されている。この電界放射型の電子放出素子は、物質
に印加する電界の強度を上げると、その強度に応じて物
質表面のエネルギー障壁の幅が次第に狭まり、電界強度
が107V/cm以上の強電界となると、物質中の電子
がトンネル効果によりそのエネルギー障壁を突破できる
ようになり、そのため物質から電子が放出されるという
現象を利用している。この場合、電場がポアッソンの方
程式に従うために、電子を放出する部材(エミッタ電
極)に電界が集中する部分を形成すると、比較的低い引
き出し電圧で効率的に冷電子の放出を行うことができ
る。
【0005】このような電界放射型の電子放出素子の一
般的なものとしては、図7(a)に示すように、先端が
尖ったコーン型の電子放出素子を例示することができ
る。この素子においては、導電層71上に絶縁層72及
びゲート電極73が順次積層されており、その絶縁層7
2及びゲート電極73には、導電層71に達する開口部
74が形成されている。そして、その開口部74内の導
電層71上には、少なくともゲート電極73に接触しな
いように、点状突起Poを有する円錐形状(コーン型)
のエミッタ電極75が形成されている。この場合、電子
放出効率を更に向上させるために、ゲート電極73の表
面が、コーン型のエミッタ電極75の点状突起Poより
高い位置にくるようになっている。このような電子放出
素子においては、エミッタ電極75に印加された電圧
は、その点状突起Poに効率よく集中するので、比較的
低い印加電圧で冷電子を放出することができる。
【0006】しかしながら、図7(a)に示すようなコ
ーン型エミッタ電極を有する電子放出素子を大面積の平
面型ディスプレイに使用するFEAに応用しようとした
場合、径1μm以下の開口部74の中に、数百nm以下
の曲率半径の点状突起Poを有するエミッタ電極75の
多数個を、ゲート電極73との相対的位置関係を一定に
保持したままバラツキなく均一に形成することが望まれ
るが、実際上、そのように形成することは非常に困難で
あるという問題がある。
【0007】このため、図7(b)に示すように、エミ
ッタ電極をコーン型とせずに、均一加工性の良好なディ
スク型のエミッタ電極(ディスク型エミッタ電極)75
とすることが提案されている。このディスク型エミッタ
電極75においては、エミッタ電極表面75aとエミッ
タ電極周面75bとの境界線であるエミッタ電極75の
輪線状の周縁Peに電界が集中し、そこから冷電子が放
出される。なお、エミッタ電極75と導電層71との間
には、エミッタ電極下地層76を形成しておくことが一
般的に行なわれている。このようなエミッタ電極下地層
76は、ディスク状のエミッタ電極75の周縁Peに電
界が集中しやすくなるように、エミッタ電極75の径よ
りも小さい径とすることが好ましいとされ、そのために
エミッタ電極下地層76は通常エミッタ電極75よりも
エッチングされやすい材料から形成されている。
【0008】しかしながら、図7(b)に示すようなデ
ィスク型エミッタ電極を有する電子放出素子の場合、電
界の集中する輪線状の周縁Peは、それがゲート電極7
3の主面に平行なエミッタ電極表面75aと、基板71
の垂直方向に平行なエミッタ電極周面75bとから形成
されているために、図7(c)に示すように、Peの向
きxは、基板71の垂直方向及びゲート電極73の主面
方向に対し、それぞれ45°傾いている。そのために次
に説明するような問題がある。
【0009】即ち、エミッタ電極から放射された電子を
電子放出素子として利用できるようにするためにはゲー
ト電極に捕捉されないようにする必要がある。そのため
は、輪線状の周縁Peの向きxを基板の垂直方向に近づ
けることが望まれる。しかしながら、図7(b)に示す
ような素子の場合、エミッタ電極75から電子がゲート
電極73の主面方向に対し45°の向きで放射されるた
めに、ゲート電極73に捕捉される電子の割合が多くな
り、相対的に素子内部から外部へ放射される電子の割合
(分配率)が低くなるので、電子発生源としての機能が
不十分であるという問題がある。
【0010】この問題を解決すべく、ディスク型エミッ
タ電極の輪線状周縁Peの向きを基板の垂直方向へ近づ
ける技術として、特開平4−87135号公報あるいは
特開平4−206123号公報に開示されたものがあ
る。
【0011】特開平4−87135号公報によれば、ま
ず、図8(a)に示すように、導電層71上に、周縁部
がオーバーハング状態となるようにディスク状エミッタ
電極75を形成し、その周囲に絶縁層72及びゲート電
極73を100℃以上の雰囲気温度下で形成する。次い
で、雰囲気温度を常温に戻す。すると、導電層71とエ
ミッタ電極75との間の熱膨脹率の相違により、エミッ
タ電極75の周縁部75cが自然にめくれあがる(図8
(b))。この現象を利用することにより、図8(c)
に示すように、エミッタ電極75の輪線状の周縁Peの
向きxを導電層71の垂直方向に近づけることができ
る。
【0012】また、特開平4−206123号公報によ
れば、まず、図9(a)に示すように、絶縁性基板77
上に部分的に導電層71を形成し、さらにその周囲にテ
ーパーをつけて絶縁層72を形成し、更に、全面にゲー
ト電極及びエミッタ電極用の金属材料薄膜層78を積層
する。次に、金属材料薄膜層78のゲート電極とエミッ
タ電極とに相当する部分に選択的にレジスト層79を形
成し、そのレジスト層をマスクとして金属材料薄膜層7
8をエッチングし、更に絶縁層72をオーバーエッチン
グする(図9(b))。これにより、周縁部75cがゲ
ート電極73の方向へせりあがったエミッタ電極75が
形成される。よって、図9(c)に示すように、エミッ
タ電極75の輪線状の周縁Peの向きxを基板77の垂
直方向に近づけることができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図8の
場合、エミッタ電極75の周縁部75cのめくれあがり
は、導電層71とエミッタ電極75との間の熱膨脹率の
相違に依存しているために、めくれあがりの程度の再現
性が極めて乏しく、電界集中部分の幾何的な位置精度を
向上させることができないという問題があった。従っ
て、特開平4−87135号公報に記載の技術を、一定
の特性のエミッタ電極を有する電子放出素子を多数個集
積形成する場合に適用することは実際上不可能であっ
た。
【0014】また、図9の電子放出素子の構造では、エ
ミッタ電極75を位置的に確定的に形成し、それに対し
てゲート電極73を自己整合的に形成することができな
いという問題があった。即ち、図9の電子放出素子のゲ
ート電極73とエミッタ電極75とは、金属材料薄膜層
78にレジスト層79を選択的に形成し、そのレジスト
層をエッチングマスクとして使用して金属材料薄膜層7
8をエッチングすることにより同時に形成されるため
に、ゲート電極73とエミッタ電極75との相対的位置
精度には、レジスト層パターニング精度(マスク精度、
露光精度、レジスト層の除去精度等)やエッチング精度
などの累積の精度誤差が含まれるという問題があった。
このため、ゲート電極73とエミッタ電極75との間の
ギャップ(間隙)が一定せず、しかもそのギャップ長
(間隙幅)がフォトリソグラフ法のデザインルールに依
存せざるを得ず、ギャップ長をデザインルールよりも小
さくして素子の機能を向上させることが困難であるとい
う問題があった。
【0015】従って、図8や図9の電子放出素子は、F
EAに使用するような超微細な電子放出素子としては不
向きであった。
【0016】本発明は、以上のような従来技術の問題点
を解決しようとするものであり、エミッタ電極の輪線状
の周縁の向きが基板の垂直方向により近づくようにエミ
ッタ電極がゲート電極に対して高い位置精度で再現性よ
く傾斜して形成されており、しかもフォトリソグラフ法
のデザインルールに制限されることなく極めて小さい間
隙幅(ギャップ長)を有し、且つゲート電極をエミッタ
電極に対して自己整合的に配設できる構造を有する電子
放出素子を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者は、(1)基板
に逆円錐体や逆正四角錐体などの逆錐体形状の凹部を形
成し、その凹部に沿ってエミッタ電極を形成することに
より、ゲート電極に対して高い位置精度で再現性よく傾
斜したエミッタ電極が形成できること、(2)そのエミ
ッタ電極をマスクとして基板を等方的にエッチングする
ことによりエッチングの周縁部を凹部から突き出させる
ことができ、その上に絶縁層とゲート電極とを蒸着法な
どにより順次積層し、エミッタ電極上に積層した両層を
リフトオフすると、ゲート電極をエミッタ電極と接触さ
せずに極めて小さい均一なギャップ長でその周囲に積層
できること、(3)この場合、全体が傾斜したエミッタ
電極上に積層された絶縁層は、平坦な基板上に積層され
た絶縁層に比べてリフトオフしやすいこと、及び(4)
これらを組み合わせることにより上述の目的が達成でき
ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】即ち、本発明は、基板、絶縁層及びゲート
電極が順次積層され、該ゲート電極と絶縁層とには該基
板に達する開孔部が設けられ、その開孔部内の基板上に
エミッタ電極が、該ゲート電極に接触しないように形成
されてなる電界放射型の電子放出素子において、基板に
逆錐体形状の凹部が形成され、その凹部の斜面に沿って
エミッタ電極が形成されており、且つエミッタ電極の周
縁部が基板の凹部の上縁部から突き出ていることを特徴
とする電子放出素子を提供する。
【0019】また、本発明は、上述の電子放出素子の製
造方法であって、 (a)基板上に絶縁層を形成し、その上にレジスト層を
形成し、そのレジスト層をパターニングする工程; (b)パターニングされたレジスト層をマスクとして絶
縁層を、基板が露出するまでエッチングする工程; (c)レジスト層を除去し、更に絶縁層をマスクとして
基板をエッチングし、逆錐体形状の凹部を基板に形成す
る工程; (d)基板の凹部の斜面に沿ってエミッタ電極が形成さ
れるように、基板の凹部側にエミッタ電極用材料の薄膜
層を形成する工程; (e)絶縁層を、その上に形成されたエミッタ電極用材
料の薄膜層とともにリフトオフしてエミッタ電極を形成
する工程; (f)エミッタ電極はエッチングしないが、露出した基
板をエッチングできるエッチャントを使用して、エミッ
タ電極の周縁部が基板の凹部の上縁部から突き出るよう
に基板をエッチングする工程; (g)基板の凹部側に新たに絶縁層を積層し、更に、ゲ
ート電極用材料薄膜を積層する工程;及び (h)エミッタ電極上の新たに形成された絶縁層を、そ
の上のゲート電極用材料薄膜層ともにリフトオフして、
エミッタ電極に接触することなくそれを囲むゲート電極
を形成する工程を含んでなることを特徴とする製造方法
を提供する。
【0020】以下、本発明を図面に従って詳細に説明す
る。
【0021】まず、本発明の電子放出素子の断面図を図
1(a)に示す。同図に示されるように、本発明の電子
放出素子においては、基板1、絶縁層2及びゲート電極
3が順次積層され、ゲート電極3と絶縁層2とには基板
1に達する開孔部Aが設けられ、その開孔部A内の基板
1に逆錐体形状の凹部1aが形成され、そしてその凹部
1aの斜面に沿ってエミッタ電極4がゲート電極3に接
触しないように形成され、しかもエミッタ電極4の周縁
部4aが基板1の凹部1aの上縁部1bから突き出るよ
うに積層されている。
【0022】本発明において基板1は、電子放出素子の
支持体として機能している。このような基板1として
は、逆円錐や逆正四角錐といった逆錐体形状の凹部1a
を形成することができる限り特に制限はないが、中で
も、(100)面方位の主面の単結晶シリコン基板を使
用することが特に好ましい。この理由は、このような単
結晶シリコン基板は水酸化アルカリ金属水溶液で異方性
エッチングでき、その結果、(111)面方位の斜面か
らなる逆正四角錐形状の凹部を形成することができるた
めである。この場合の凹部1aの中心角を2θとすると
角度θは約35°とすることができる。一方、エミッタ
電極4の周側面4bは基板1の垂直方向となっているた
め、エミッタ電極4の周縁Peの向きxは基板1の垂直
方向から17.5°(=35°/2)傾斜した向きとな
る。よって、エミッタ電極4の周縁Peから放射された
電子が、ゲート電極3に捕捉される割合を低減させるこ
とができる。
【0023】絶縁層2は、基板1とゲート電極3とを電
気的に絶縁するための層であり、ゲート電極3とエミッ
タ電極4との間隙の幅(ギャップ幅)を規定する層でも
ある。絶縁層2がそのギャップ幅を規定する理由は、エ
ミッタ電極4とゲート電極3との間隙の幅が、後述する
ように絶縁層2とゲート電極3とを形成するための材料
を蒸着法により堆積する際に、基板と平行な方向への堆
積膜の広がりにより決定されるからである。
【0024】このような絶縁層2としては、電子放出素
子の絶縁層として用いられている公知の材料から形成す
ることができるが、特に、緩衝フッ酸により容易にリフ
トオフすることができるという点からシリコン酸化膜が
好ましい。また、絶縁層2の厚みとしては、エミッタ電
極4とゲート電極3との好ましい相対的位置関係を実現
する厚みとすればよく、例えば、0.2〜2μm、好ま
しくは0.5〜1μmとする。
【0025】ゲート電極3は、エミッタ電極4に強電界
を集中させるための電極である。ゲート電極3の材料と
しては、金属、その窒化物又は炭化物、半導体、半導体
の金属化合物、例えば、Cr、Zr、Hf、Cu、W、
Mn、Fe、Ni、Nd、Mo、Ta、Nb、Tiなど
の単体、それらのケイ素化合物、窒化物あるいは炭化物
等の中から適宜選択することができるが、耐電流性の点
から高融点金属、特に、Cr、W、Mo、Ta、Nbを
好ましく例示することができる。中でも、Nbを使用す
ることが好ましい。
【0026】ゲート電極3の厚みは、必要に応じて適宜
決定することができるが、約0.1〜0.2μmとする
ことが好ましい。
【0027】エミッタ電極4は、その表面から電子を直
接的に放出する部材として機能している。このようなエ
ミッタ電極4の材料としては、仕事関数が小さく電子放
出特性が良好で、強電圧耐性があり、高い融点を有する
ものを使用する。このような材料としては、基本的にゲ
ート電極3として使用できる材料群の中から適宜選択す
ることができるが、後述するようにエミッタ電極の形成
時のリフトオフ条件に対する耐性や耐電流性の点からC
r、W、Mo、Ta、Nbを好ましく例示することがで
きる。中でもCrを使用することが好ましい。
【0028】エミッタ電極4の厚みは、必要に応じて適
宜決定することができるが、通常0.05〜0.5μm
とすることが好ましい。
【0029】本発明においては、エミッタ電極の周縁部
4aが、基板1の凹部1aの上縁部1bから突き出るよ
うに形成され、これにより、周縁部4aに電界をより集
中させ、より低電圧で電子放出を行うことができるよう
になる。この形成方法については、後述の本発明の製造
方法の説明において詳説する。
【0030】なお、本発明の電子放出素子においては、
エミッションを開始させるゲート電圧(引き出し電圧)
を引き下げるために、図1(b)に示すように、エミッ
タ電極4の少なくとも上面に、通常2〜100nm厚、
好ましくは5〜50nmの導電性のエミッタ被膜10を
形成することが好ましい。このようなエミッタ被膜の材
料としては耐電流性を有するものを使用することができ
る。例えば、ゲート電極材料として挙げた金属、その窒
化物、炭化物などを使用することができる。中でも、C
rやMoなどの高融点金属を使用することができる。こ
の場合、エミッタ電極材料とエミッタ被膜材料とは同じ
でもよい。
【0031】また、エミッタ電極4の断面形状は、図1
に示した通りであるが、平面図へ投影した形状が点対称
形状、例えば円形、正方形などとすることが、安定した
電子放出特性を得る上で好ましい。
【0032】特に、エミッタ電極の平面投影形状を円形
とすると、エミッタ電極4の周縁Peに過度に尖鋭なエ
ッジ部が形成されることを防止し、素子の動作安定性を
向上させることができるので好ましい。このようなエミ
ッタ電極としては、例えば、逆正四角錐形状の凹部に形
成されたエミッタ電極であって、その平面図投影形状
が、図2(a)に示すように円形であり且つその斜視形
状が、図2(b)に示すように4つの花弁の集合体形状
となるものを挙げることができる。
【0033】一方、本発明においては、必要に応じて、
エミッタ電極の周縁部に尖鋭なエッジ部を設けることが
できる。この場合には、そのエッジ部に効率的に電界集
中させることができるので、電子放出素子の動作電圧を
低減させることができる。このようなエミッタ電極とし
ては、例えば、逆正四角錐形状の凹部に形成されたエミ
ッタ電極であって、その平面図投影形状が、図2(c)
に示すように正方形であり且つその斜視形状が、図2
(d)に示すように星型となるものを挙げることができ
る。
【0034】なお、エミッタ電極4の周縁部4aの上端
(周縁Pe)のレベルに関し、電子放出素子のエミッシ
ョン特性、特にエミッションを開始させるゲート電圧を
引き下げるという観点と分配率(アノード電流/エミッ
タ電流)を向上させるという観点から、その上端レベル
をゲート電極3の上面レベルを超えないようにすること
が好ましく、なかでもゲート電極3の厚みの範囲内とす
ることがより好ましい。
【0035】また、エミッタ電極4とゲート電極3との
間の間隙の幅に関し、電子放出素子のエミッション特
性、特にエミッションが開始させるゲート電圧を引き下
げるという観点から、間隙の最短幅を0.5μm以下と
することが好ましい。この場合、エミッタ電極4が円形
ディスク形状を有する場合には、エミッタ電極4の周縁
部4aの上端(周縁Pe)とゲート電極3との間の間隙
の幅は周縁部のどの部分でも実質的に同一であり、した
がって最短幅と最大幅は同じとなるが、尖鋭なエッジ部
を有する場合には、そのエッジ部とゲート電極3との間
の間隙が最短幅となる。
【0036】次に、本発明の電子放出素子の製造方法
を、基板として主面が(100)面方位の単結晶シリコ
ン基板を使用し、その基板に逆正四角錐形状の凹部を形
成し、更に、エミッタ電極を平面図投影形状が円形とな
るように形成する場合を例にとり、図3及び図4に従っ
て詳細に説明する。
【0037】工程(a) まず、図3(a)に示すように、基板1上に絶縁層5を
形成し、その上にレジストを塗布し、パターニングする
ことによりレジスト層6を形成する。この場合には絶縁
層5としては熱酸化法により形成されるシリコン酸化膜
を好ましく使用することができる。
【0038】レジスト層6の材料やそのパターニング方
法としては、公知のレジスト材料やパターニング方法を
適用することができ、例えば図3(a)の平面図に示す
ように円形の開孔部Aを有するレジスト層6は、通常の
フォトリソグラフ法により形成することができる。
【0039】工程(b) 次にパターニングされたレジスト層6をマスクとして絶
縁層5を、基板1が円形に露出するまでエッチングする
(図3(b))。この場合、絶縁層5としてシリコン酸
化膜を使用する場合には、緩衝フッ酸(BHF)をエッ
チャントとして好ましく使用することができる。
【0040】工程(c) 次に、レジスト層6を除去し、更に、絶縁層5をマスク
として基板1をエッチングし凹部1aを基板1に形成す
る(図3(c))。この場合、基板1として主面が(1
00)面方位の単結晶シリコン基板を使用した場合に
は、エッチャントとしてKOHやNaOHなどの水酸化
アルカリ金属水溶液を使用することにより、絶縁層5
(エッチングマスク)の平面形状に因らず(111)面
でエッチングを停止させることができ、その結果、図3
(c)に示すように、逆四角錐(逆ピラミッド)形状の
凹部1aを形成することができる。この凹部1aの内側
面の傾き2θは、エッチャントとして水酸化アルカリ金
属水溶液を使用した場合、常に約70°となり、従って
凹部1aは常に一定の形状となり、よって、その凹部1
aの斜面に形成されるエミッタ電極も、再現性よく一定
の傾斜となる。
【0041】工程(d) 次に、基板1の凹部1a側の全面にエミッタ電極用材料
を真空蒸着法やスパッタ法などの通常の蒸着方法により
積層してエミッタ電極4を形成する(図3(d))。こ
のとき、凹部1a周辺の絶縁層5上にもエミッタ電極用
材料薄膜層7が形成されるが、このエミッタ電極用材料
層7あるいはエミッタ電極層4の厚みは、基板1の凹部
1aの内側面上に形成されるエミッタ電極4との間が連
続せずに段切れの状態となる厚み、例えば0.2μm程
度の厚みとする。このように段切れの状態とする理由
は、次工程において絶縁層5を容易にリフトオフできる
ようにするためである。
【0042】工程(e) 次に絶縁層5を、その上に形成されたエミッタ電極用材
料薄膜層7とともにリフトオフし、基板1の凹部1aの
斜面に沿ったエミッタ電極4を残存させる(図4
(e))。絶縁層5がシリコン酸化膜である場合には、
緩衝フッ酸により容易にリフトオフすることができる。
【0043】工程(f) 次にエミッタ電極4はエッチングしないが、露出した基
板1をエッチングできるエッチャントを使用して基板1
を異方性エッチングする(図4(f))。このとき、エ
ミッタ電極4の周縁部4aの下方に位置する基板1がサ
イドエッチングされるようにする。すると、基板1の凹
部1aの上縁部1bから、エミッタ電極4の周縁部4a
が突き出た構造となる。この場合のエッチング方法とし
ては、基板1としてシリコン基板を使用し、エミッタ電
極4としてCrを用いた場合には、SF6ガスをエッチ
ャントとする反応性イオンエッチングを好ましく行うこ
とができる。
【0044】なお、電子放出素子のエミッション特性を
向上させるために、エミッタ電極4の周縁部4aの上端
(周縁Pe)のレベルを、ゲート電極3の上面レベルを
超えないようにしたり、あるいはゲート電極の厚みの範
囲内とすることが望まれるが、この場合には基板1のエ
ッチング深さをコントロールすればよい。
【0045】工程(g) 次に、基板1の凹部1a側に新たに絶縁層8を積層し、
更に、ゲート電極用材料薄膜9を常法により積層してゲ
ート電極3を形成する。これにより、エミッタ電極4と
微小な間隙を保持しながら、その周囲に絶縁層2とゲー
ト電極3とを自己整合的に積層することができる(図4
(g))。従って、マスクパターン形成技術やフォトリ
ソグラフ技術の累積誤差の影響を受けることがなく、エ
ミッタ電極4とゲート電極3との間の相対位置を高精度
で制御できることになり、とくに多数個の素子を一度に
集積形成した場合にも各素子おけるエミッタ電極4とゲ
ート電極3との間の位置精度をほぼ同様とすることがで
きる。
【0046】なお、電子放出素子のエミッション特性を
向上させるために、エミッタ電極4とゲート電極3との
間の間隙の最短幅を0.5μm以下とすることが望まれ
るが、この場合には絶縁層8の層厚を変えることにより
コントロールすることができる。
【0047】工程(h) 最後に、エミッタ電極4上の絶縁層8を、その上のゲー
ト電極用材料薄膜9とともにリフトオフして、エミッタ
電極3に接触せずにそれを囲むようにゲート電極3を形
成する。これにより図4(h)に示す電子放出素子が得
られる。
【0048】なお、この工程のリフトオフ方法として
は、例えば、基材1としてシリコン基板を使用し、絶縁
層2としてシリコン酸化膜を使用した場合には、緩衝フ
ッ酸で軽くエッチングすることにより、Crなどの耐緩
衝フッ酸性のエミッタ電極4上の絶縁層8をその上のゲ
ート電極用材料薄膜9とともにリフトオフする方法を挙
げることができる。これは、斜面に蒸着されたシリコン
酸化膜が、平面に蒸着されたシリコン酸化膜よりもエッ
チングされやすい性質を利用したものである。
【0049】工程(i) このようにして得られた電子放出素子は、必要応じ更
に、ゲート電極エミッタ電極上に導電性エミッタ被膜を
形成する。これにより、エミッション開始電圧が低下し
た電子放出素子が得られる(図1(b))。
【0050】その後は、必要に応じ、工程(h)後、も
しくは工程(i)の後で、ゲート電極3をエミッタ電極
4を取り囲む実効ゲート部分と、当該実効ゲート部分に
対し外部電源からの電気的接続を取るための配線部分と
にパターニングすればよい。
【0051】なお、図3及び図4は、レジスト層6の形
状を円形開孔パターンとして、絶縁層5をエッチング
し、その絶縁層5を蒸着マスクとして使用することによ
り、図2(b)に示すような花弁状のエミッタ電極4を
形成した例であるが、図6に示すように、当該レジスト
層6の開孔パターンAをシリコン基板の(011)面方
向に平行な辺を持つ正方形とすれば、図2(d)に示す
ような星型状のエミッタ電極4を形成することができ
る。このように、レジスト層6の開孔パターンに応じ
て、エミッタ電極4の周縁部に電界集中点となるエッジ
を多数個作製することが可能となる。
【0052】
【作用】本発明の電子放出素子においては、基板の逆錐
体形状の凹部の斜面に沿ってエミッタ電極が配設され、
しかもエミッタ電極がその下地の基板よりも上部斜方に
突き出した形状となっている。そして、そのような形状
のエミッタ電極は僅かな間隙を持ってゲート電極により
囲まれている。従って、ゲート電極に対してエミッタ電
極が傾斜した構造となっており、エミッタ電極の周縁P
eの方向xが基板の垂直方向に近づいたものとなる。こ
のため、ゲート電極電圧によってエミッタ電極から放出
される電子が、ゲート電極にトラップされる確率を非常
に小さくし、素子外部へ放出される電子の分配率を大幅
に向上させることが可能となる。
【0053】特に、本発明において、基板として、主面
が(100)面方位の単結晶シリコン基板を使用した場
合には、絶縁層としてシリコン酸化膜を容易に形成する
ことができ、このシリコン酸化膜をエッチングマスクと
した水酸化アルカリ金属水溶液による異方性エッチング
により、そのエッチングマスクの形状に関わらず、マス
クの開孔パターン形状が外接する矩形(長方形または正
方形)を底辺とする逆四角錘の凹部が得られるので好ま
しい。
【0054】なお、このとき、エミッタ電極はこのシリ
コン酸化膜からなるエッチングマスクを蒸着マスクとし
て使用して形成されるため、エッチングマスクの形状に
応じて、種々の形状にエミッタ電極が形成可能となる。
【0055】
【実施例】本発明の電子放出素子の製造例を以下の実施
例で具体的に説明する。
【0056】なお、実施例2〜3は、エミッタ電極上に
形成した導電性エミッタ被膜の影響を調べるための実施
例であり、実施例4〜5は、図5に示すように、ゲート
電極3の上面レベルに対するエミッタ電極高さhaの電
子放出素子に及ぼず影響を調べるための実施例であり、
実施例6〜7は、エミッタ電極4とゲート電極3との間
の間隙幅Lの電子放出素子に及ぼず影響を調べるための
実施例である。
【0057】実施例1 図3(a)に示すように、導電性を有する面方位(10
0)のシリコン基板を用意し、このシリコン基板の上
に、熱酸化法により約0.3μm厚シリコン酸化膜(S
iO2膜)を形成した。その上に直径7μmの円形開孔
パターンを有するレジスト層(OFPR8600、東京
応化工業株式会社)をフォトリソグラフ法により形成し
た。
【0058】このパターン化したレジスト層をマスクと
して、緩衝フッ酸(フッ化アンモニウム/フッ酸=9/
1)によりシリコン酸化膜を、図3(b)に示すように
シリコン基板が露出するまでエッチングした。
【0059】その後、レジスト層を除去し、30%水酸
化カリウム(KOH)水溶液によりシリコン基板を異方
性エッチングした。これにより、図3(c)に示すよう
に、逆ピラミッド型の凹部を形成した。
【0060】次に、図3(d)に示すように、基板の凹
部周辺のシリコン酸化膜を残した状態で、エミッタ電極
用材料のCrを約0.2μmの厚さに蒸着した。このと
き、凹部の内側面上に形成されたCr薄膜(エミッタ電
極)と、基板の凹部周辺のシリコン酸化膜上に形成され
たCr薄膜とは段切れし、両者は不連続であった。
【0061】その後、図4(e)に示すように、基板の
凹部周辺のシリコン酸化膜を、その上に形成されたCr
薄膜とともに緩衝フッ酸によってリフトオフした。
【0062】更に、図4(f)に示すように、反応性イ
オンエッチング(導入ガス:SF640sccm/パワ
ー100W/ガス圧4.5Pa)により、基板を約1.
3μm程度エッチング除去した。このとき、エミッタ電
極はエッチングされなかったが、エミッタ電極の下のシ
リコン基板はわずかにサイドエッチされ、その結果、エ
ミッタ電極は基板の凹部の上縁部から少し突き出た状態
となった。
【0063】その後、図4(g)に示すように、絶縁層
として約0.7μm厚のシリコン酸化膜(SiOもしく
はSiO2)を蒸着し、更に、その上にゲート電極用材
料のNbを約0.3μm厚で蒸着した。これにより、エ
ミッタ電極の周囲に位置する絶縁層とNb薄膜(ゲート
電極)とは、エミッタ電極に接触することなくわずかな
間隙をもってエミッタ電極の周囲に形成することができ
た。よって、ゲート電極は、当該ゲート電極に対向する
側面を持つエミッタ電極に対し、自己整合的に形成でき
たことになる。
【0064】次に、エミッタ電極上に付着した絶縁層を
その上のNb薄膜とともに緩衝フッ酸によりリフトオフ
した。この結果、図4(h)に示される電子放出素子を
得た。
【0065】上述の電子放出素子を200個集積したア
レイを試作し以下のように試験・評価した。即ち、各素
子のエミッタ電極−ゲート電極間の距離を約0.3μm
とした構造の素子に対し、蛍光体を塗布した透明電極
(アノード)を有するガラス板部材を距離30mmで対
向させ、エミッタ電極−ゲート電極間にゲート電極側が
正となる極性で引き出し電圧120Vを印加したとこ
ろ、供給エミッタ電流20μAに対し、約10μAのア
ノード電流が流れ、分配率は約50%であった。これら
の値は、図7(b)に示した従来の電子放出素子の代表
的な値に比べて、各電流値及び分配率共に10倍以上の
優れた値であった。
【0066】実施例2〜3 実施例1を繰り返すことにより図4(h)に示す素子を
作製した。更に、この素子のエミッタ電極上に、5nm
厚の導電性エミッタ被膜としてMo(実施例2)又はC
r(実施例3)の薄膜を蒸着法により形成した。これに
より図1(b)に示すような電子放出素子が得られた。
【0067】上述の電子放出素子を200個集積したア
レイを試作し以下のようにエミッション特性を評価し
た。即ち、各素子のエミッタ電極−ゲート電極間の距離
を約0.3μmとした構造の素子に対し、蛍光体を塗布
した透明電極(アノード)を有するガラス板部材を距離
30mmで対向させ、エミッタ電極を110kΩの抵抗
を介して接地し、アノードに500Vを印加した状態
で、エミッタ電極−ゲート電極間にゲート電極側が正と
なる極性で引き出し電圧を可変して印加し、それにとも
なうエミッション電流、アノード電流を測定し、分配率
(アノード電流/エミッション電流)を算出した。代表
的な素子構造における結果を表1にまとめて示す。
【0068】なお、表1に、実施例1の電子放出素子に
ついて得られたデータを参照のために併記する。
【0069】
【表1】 表1から、導電性エミッタ被膜を形成すると、大幅に低
いゲート電圧(引き出し電圧)でエミッションが可能で
あり、しかも高い分配率を達成できることがわかる。
【0070】実施例4〜5 面方位(100)のシリコン基板を、実施例1と同様の
操作により、図3(a)〜図4(e)に示す流れに従っ
て加工した。
【0071】更に、図4(f)に示すように、反応性イ
オンエッチング(導入ガス:SF640sccm/パワ
ー100W/ガス圧4.5Pa)により、シリコン基板
を表2に示す深さ、即ち0.8μm〜1.7μmの範囲
の深さでエッチング除去した。このエッチングにより、
エッチングされたシリコン基板表面とエミッタ電極4の
エッジ先端Peとの距離he(図5参照)は、表2に示
すように0.5μm〜1.4μmの範囲であった。この
とき、エミッタ電極はエッチングされなかったが、エミ
ッタ電極の下のシリコン基板はわずかにサイドエッチさ
れ、その結果、エミッタ電極は基板の凹部の上縁部から
少し突き出た状態となった。
【0072】その後、図4(g)に示すように、絶縁層
として0.7μm厚のシリコン酸化膜(SiOもしくは
SiO2)を蒸着し、更に、その上にゲート電極用材料
のNbを0.3μm厚で蒸着した。これにより、エミッ
タ電極の周囲に位置する絶縁層とNb薄膜(ゲート電
極)とは、エミッタ電極に接触することなく、エミッタ
電極に対してわずかな間隙をもって形成することができ
た。よって、ゲート電極は、当該ゲート電極に対向する
側面を持つエミッタ電極に対し、自己整合的に形成でき
たことになる。
【0073】次に、エミッタ電極上に付着した絶縁層を
その上のNb薄膜とともに緩衝フッ酸によりリフトオフ
した。この結果、表2に示すように、エミッタ電極高さ
a(図5参照)が異なる実施例4〜5の電子放出素子
を得た。
【0074】上述の電子放出素子を200個集積したア
レイを試作し、実施例2〜3と同様にエミッション特性
を評価した。その結果を表2に示す。
【0075】なお、実施例1の電子放出素子について得
られた結果も参照のために表2に併記する。
【0076】
【表2】 エッチンク゛ 距離 エミッタ電極 エミッション 深さ he 高さha 開始電圧 分配率 (μm)(μm) (μm) (V) (%) 実施例4 0.8 0.5 +0.4 95 50 実施例1 1.3 1.0 −0.01 62 >90実施例5 1.7 1.4 −0.5 70 87 表2の結果から、基板のエッチング深さを変えることに
よりエミッタ電極高さhaをコントロールできることが
わかる。
【0077】また、エミッタ電極高さhaが約0の場合
(即ち、エミッタ電極4の上端Peのレベルがゲート電
極3の上面にほぼ一致している場合)には、特に、低い
ゲート電圧(引き出し電圧)でエミッションが得られ、
しかも高い分配率が達成できることがわかる。また、エ
ミッタ電極4の上端Peのレベルがゲート電極3の上面
を超える場合には、エミッションを開始させるゲート電
圧が上昇し、分配率も低下する傾向があることがわか
る。
【0078】なお、実施例4〜5の電子放出素子は、い
ずれもゲート電圧100V以上で50μA程度のエミッ
ション電流が得られることが確認できた。
【0079】実施例6〜7 面方位(100)のシリコン基板を、実施例1と同様の
操作により、図3(a)〜図4(e)に示す流れに従っ
て加工した。
【0080】更に、図4(f)に示すように、反応性イ
オンエッチング(導入ガス:SF640sccm/パワ
ー100W/ガス圧4.5Pa)により、シリコン基板
を1.3μmの深さでエッチング除去した。このエッチ
ングにより、、エッチングされたシリコン基板表面とエ
ミッタ電極のエッジ先端との距離he(図5参照)は1
μmであった。このとき、エミッタ電極はエッチングさ
れなかった。一方、エミッタ電極の下のシリコン基板は
わずかにサイドエッチされ、その結果、エミッタ電極は
基板の凹部の上縁部から少し突き出た状態となった。
【0081】その後、図4(g)に示すように、絶縁層
として表3に示すような厚み、即ち0.7〜1.1μm
厚のシリコン酸化膜(SiOもしくはSiO2)を蒸着
し、更に、その上にゲート電極用材料のNbを0.3μ
m厚で蒸着した。このとき、エミッタ電極とゲート電極
との間の間隙幅Lは、表3に示すように0.3〜0.5
μmの範囲であった。これにより、エミッタ電極の周囲
に位置する絶縁層とNb薄膜(ゲート電極)とは、エミ
ッタ電極に接触することなく、エミッタ電極に対してわ
ずかな間隙をもって形成することができた。よって、ゲ
ート電極は、当該ゲート電極に対向する側面を持つエミ
ッタ電極に対し、自己整合的に形成できたことになる。
【0082】次に、エミッタ電極上に付着した絶縁層を
その上のNb薄膜とともに緩衝フッ酸によりリフトオフ
した。この結果、表3に示すように、エミッタ電極とゲ
ート電極との間の間隙幅Lが異なる実施例6〜7の電子
放出素子を得た。
【0083】上述の電子放出素子、即ち各素子のエミッ
タ電極高さhaをゲート電極の上面とほぼ一致させた構
造の素子を200個集積したアレイを試作し、実施例2
〜3と同様にエミッション特性を評価した。その結果を
表3にまとめて示す。
【0084】なお、実施例1の電子放出素子について得
られたデータも参照のために表3に併記する。
【0085】
【表3】 表3から、シリコン酸化膜の厚みを変えることによりエ
ミッタ電極とゲート電極との間隙幅Lをコントロールで
きることがわかる。
【0086】また、エミッタ電極とゲート電極との間隙
幅Lが短いほど低いゲート電圧(引き出し電圧)でエミ
ッションが達成できることがわかる。なお、実施例1、
6及び7の結果からは、エミッタ電極とゲート電極との
間隙幅Lは分配率に大きく影響を及ぼすことはないこと
がわかる。
【0087】なお、実施例6〜7の電子放出素子は、い
ずれもゲート電圧100V以上で50μA程度のエミッ
ション電流が得られることが確認できた。
【0088】
【発明の効果】本発明の電子放出素子によれば、エミッ
タ電極の周縁の向きが基板の垂直方向に近づくように、
そのエミッタ電極がゲート電極に対して傾斜しており、
しかもその位置精度及び再現性が高い。また、フォトリ
ソグラフ法のデザインルールに制限されることなく極め
て小さいギャップ長でゲート電極がエミッタ電極に対し
て自己整合的に配設されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子放出素子の概略断面図(同図
(a)及び(b))である。
【図2】エミッタ電極の平面図(同図(a)及び
(c))と斜視図(同図(b)及び(d))である。
【図3】本発明の電子放出素子の製造工程図である。
【図4】本発明の電子放出素子の製造工程図である。
【図5】電子放出素子のゲート電極とエミッタ電極との
相対的位置関係を示す部分拡大図である。
【図6】レジスト層の開孔パターンの説明図である。
【図7】従来の電子放出素子の概略断面図である。
【図8】従来の電子放出素子の製造説明図である。
【図9】従来の電子放出素子の製造説明図である。
【符号の説明】
1 基板 2 絶縁層 3 ゲート電極 4 エミッタ電極 5 絶縁層 6 レジスト層 10 導電性エミッタ被膜 ha ゲート電極上面に対するエミッタ電極高さ he シリコン基板とエミッタ電極のエッジ先端との距
離 L エミッタ電極とゲート電極との間の間隙幅
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金丸 正剛 茨城県つくば市梅園1丁目1番4 工業技 術院電子技術総合研究所内 (72)発明者 伊藤 順司 茨城県つくば市梅園1丁目1番4 工業技 術院電子技術総合研究所内

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板、絶縁層及びゲート電極が順次積層
    され、該ゲート電極と絶縁層とには該基板に達する開孔
    部が設けられ、その開孔部内の基板上にエミッタ電極が
    該ゲート電極に接触しないように形成されてなる電界放
    射型の電子放出素子において、基板に逆錐体形状の凹部
    が形成され、その凹部の斜面に沿ってエミッタ電極が形
    成されており、且つエミッタ電極の周縁部が基板の凹部
    の上縁部から突き出ていることを特徴とする電子放出素
    子。
  2. 【請求項2】 該エミッタ電極の周縁部の上端のレベル
    が、ゲート電極の上面レベルを超えない請求項1記載の
    電子放出素子。
  3. 【請求項3】 該エミッタ電極の周縁部の上端のレベル
    が、ゲート電極の厚みの範囲内である請求項2記載の電
    子放出素子。
  4. 【請求項4】 エミッタ電極の平面図に投影した形状が
    円である請求項1〜3のいずれかに記載の電子放出素
    子。
  5. 【請求項5】 エミッタ電極の平面図に形成した形状が
    周縁部に尖ったエッジ部を有する請求項1〜3のいずれ
    かに記載の電子放出素子。
  6. 【請求項6】 該基板が(100)面方位の主面を有す
    る単結晶シリコン基板であり、その基板に形成された凹
    部が(111)面方位の斜面を有する逆正四角錐形状の
    凹部である請求項1〜5のいずれかに記載の電子放出素
    子。
  7. 【請求項7】 エミッタ電極及びゲート電極が、独立的
    にCr、W、Mo、Ta又はNbから形成されている請
    求項1〜6のいずれかに記載の電子放出素子。
  8. 【請求項8】 エミッタ電極がCr薄膜層であり、ゲー
    ト電極がNb薄膜層である請求項7記載の電子放出素
    子。
  9. 【請求項9】 絶縁層が、シリコン酸化膜である請求項
    1〜8のいずれかに記載の電子放出素子。
  10. 【請求項10】 該エミッタ電極と該ゲート電極との間
    の間隙の最短幅が0.5μm以下である請求項1〜9の
    いずれかに記載の電子放出素子。
  11. 【請求項11】 該エミッタ電極の少なくとも上面に、
    導電性エミッタ被膜が形成されている請求項1〜10の
    いずれかに記載の電子放出素子。
  12. 【請求項12】 請求項1に記載の電子放出素子の製造
    方法において、 (a)基板上に絶縁層を形成し、その上にレジスト層を
    形成し、そのレジスト層をパターニングする工程; (b)パターニングされたレジスト層をマスクとして絶
    縁層を、基板が露出するまでエッチングする工程; (c)レジスト層を除去し、更に絶縁層をマスクとして
    基板をエッチングし、逆錐体形状の凹部を基板に形成す
    る工程; (d)基板の凹部の斜面に沿ってエミッタ電極が形成さ
    れるように、基板の凹部側にエミッタ電極用材料の薄膜
    層を形成する工程; (e)絶縁層を、その上に形成されたエミッタ電極用材
    料の薄膜層とともにリフトオフしてエミッタ電極を形成
    する工程; (f)エミッタ電極はエッチングしないが、露出した基
    板をエッチングできるエッチャントを使用して、エミッ
    タ電極の周縁部が基板の凹部の上縁部から突き出るよう
    に基板をエッチングする工程; (g)基板の凹部側に新たに絶縁層を積層し、更に、ゲ
    ート電極用材料薄膜を積層する工程;及び (h)エミッタ電極上の新たに形成された絶縁層を、そ
    の上のゲート電極用材料薄膜層とともにリフトオフし
    て、エミッタ電極に接触することなくそれを囲むゲート
    電極を形成する工程を含んでなることを特徴とする製造
    方法。
  13. 【請求項13】 工程(a)において、レジスト層に円
    形の開孔パターンをパターニングする請求項12記載の
    製造方法。
  14. 【請求項14】 工程(a)において、レジスト層に尖
    ったエッジ部を有する開孔パターンをパターニングする
    請求項12記載の製造方法。
  15. 【請求項15】 基板として、(100)方位の主面を
    有する単結晶シリコン基板を使用する請求項12〜14
    のいずれかに記載の製造方法。
  16. 【請求項16】 工程(c)において、基板に凹部をエ
    ッチングにより形成する際に、エッチャントとして水酸
    化アルカリ金属水溶液を使用する請求項15記載の製造
    方法。
  17. 【請求項17】 工程(a)及び工程(g)において、
    絶縁層としてシリコン酸化膜を形成する請求項12〜1
    6いずれかに記載の製造方法。
  18. 【請求項18】 工程(e)及び工程(h)において、
    絶縁層のリフトオフに緩衝フッ酸を使用する請求項17
    の製造方法。
  19. 【請求項19】 更に、 (i) エミッタ電極上に導電性エミッタ被膜を形成す
    る工程を含む請求項12〜18のいずれかに記載の製造
    方法。
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