JP4288732B2 - 発光素子を製造するための転写体の製造方法 - Google Patents

発光素子を製造するための転写体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と記載)の製造に好適な、発光素子を製造するための転写体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
所定の光を発光する発光素子の中には、電圧を印加することにより内部に電子と正孔が再結合して発光する有機エレクトロルミネッセンス層(以下、有機EL層と記載)と、有機EL層を挟むアノード電極並びにカソード電極とを有する有機EL素子がある。
有機EL層は、例えば正孔輸送層、電子輸送層等の複数の有機材料からなる薄膜で構成され、無機EL層より薄く成膜することができるので、素子自体を薄くかつ軽量にすることができる。
【0003】
これらの各構成要素を形成する一般的な方法は、メタルマスクを併用した真空蒸着法である。すなわち、アノード電極をパターン形成した基板に、正孔輸送層と、電子輸送層とを同じパターンに形成し、さらに、カソード電極を別のパターンに形成する。
また、特開平9−167684号に開示された方法によれば、予めインクシート上に正孔輸送層の材料,有機EL層の材料,電子輸送層の材料をそれぞれ別個に形成し、これら各材料を、予めアノード電極をパターン形成した基板に、順次昇華転写した後に、カソード電極をメタルマスクを用いた真空蒸着法により形成することにより、有機EL素子の発光部を形成する。
さらに、特開平9−7763号に開示された方法によれば、アノード電極と正孔輸送層を一方の基板上に形成し、有機EL層と電子輸送層を他方の基板上に形成し、前記一方の基板と前記他方の基板とを貼り合わせることにより、有機EL素子の発光部を形成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した方法を用いて前記複数の薄膜を所定のパターンに形成するには、真空中においてメタルマスクを用いる必要があった。
すなわち、通常の真空蒸着法においては、有機EL層や正孔輸送層、電子輸送層、カソード電極を形成する際に、基板にメタルマスクを用いる必要があった。
また、特開平9−167684や特開平9−7763においても、アノード電極およびカソード電極の双方を形成する際にはメタルマスクを用いる必要があった。
このため、従来の方法においては、一つの層を所定のパターンに形成する度に、メタルマスクの位置合わせや基板の移動を高精度に行う必要があり、スループットが低かった。
さらに、これらの各層の積層工程では、積層する度に、通常減圧された炉内に蒸着装置が配置された蒸着炉から減圧炉を介し次の蒸着炉に基板を移送して行われる。したがって、各層の成膜毎に一旦減圧炉に基板を移送しなければならずスループットが低いという問題があった。従って、生産装置一つあたりの単位時間あたりの生産量、すなわちスループットを上げてコストを削減することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、スループットの良好な発光素子を製造するための転写体の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、請求項1記載の発明は、
基板上にカソード電極と、アノード電極と、前記カソード電極及び前記アノード電極間に設けられた発光層と、備えた発光部を有する発光素子を製造するための転写体の製造方法において、
前記発光部は、前記カソード電極を含む第1層と、前記発光層を含む第2層と、前記アノード電極を含む他の層と、を有する複数の層により構成され、
内部に前記発光部の複数の層のうちの第1層を蒸着する第1蒸着装置及び前記発光部の複数の層のうちの第2層を蒸着する第2蒸着装置を配置し、前記第1蒸着装置及び第2蒸着装置の上方に支持体を配置した蒸着炉を設け、
前記支持体の下面に前記第1蒸着装置により前記第1層を蒸着する第1層形成工程と、
前記第1層が形成された前記支持体を移動する移動工程と、
前記第1層が形成された前記支持体の移動後又は移動中に、引き続き前記支持体の下面に前記第1層を連続して蒸着する第1層連続形成工程と、
第1層連続形成工程中に、前記第1層形成工程で形成された前記第1層に前記第2蒸着装置により第2層を蒸着する第2層形成工程と、
により、前記支持体と、前記支持体の下面の前記第1層と、前記第1層の下面の前記第2層と、を有する転写体を製造することを特徴とする。
【0007】
この請求項1に記載の発明によれば、発光素子の発光部を構成する複数の層のうち、第1層及び第2層を蒸着炉内で支持体に連続して形成することができるので、各層の蒸着工程毎に、蒸着工程の前工程である減圧炉での減圧工程を行わなくて良い。
従って、発光素子を製造するための転写体の製造において、スループットを高くできる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発光素子を製造するための転写体の製造方法において、前記請求項1記載の発光素子を製造するための転写体の製造方法によって製造された前記転写体を、前記複数の層のうちの前記他の層を積層した基板に、前記第1層及び第2層が前記他の層の上に積層するように重ねた後に、前記支持体の所定箇所を加熱及び押圧することにより、前記第1層及び第2層の所定箇所を前記他の層の上に転写する工程を含むこと、を特徴とする。
【0009】
ここで、前記他の層としては、単層であっても複層であってもよい。
【0010】
この請求項2記載の発明によれば、前記第1層及び第2層は、前記支持体の上にパターンを有さない膜として連続して積層されることができるため、メタルマスクを用いない真空プロセスにて製造することができる。また、前記第1層及び第2層は、パターンとして必要な箇所を押圧することにより、ある程度パターンを形成して前記基板の他の層の上に積層することができる。従って、発光素子の製造工程において、メタルマスクを用いる回数は減少するため、高精度な位置合わせを行う回数は減少も減少する。従って、生産装置一つあたりの単位時間あたりの生産量、すなわちスループットは従来と比べて大幅に向上するため、発光素子の製造コストは下がる。
また、転写工程では、例えばサーマルヘッドで前記支持体への加熱圧着する場合は、該サーマルヘッドの形状に合わせて基板上に第1及び第2層をパターニングできる。また、この場合、前記支持体のサーマルヘッドとの接触面に耐熱潤滑層を設けると、熱が前記支持体に与える影響は緩和されるため、前記所定箇所への加熱は容易となる。
さらに、例えば液晶表示装置のバックライトなど、微細構造を有さない発光素子の発光部を作製する場合は、前記他の層は印刷によって作製可能であるため、メタルマスクを全く用いずに発光部を作製することもできる。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、請求項2に記載の発光素子を製造するための転写体の製造方法において、前記他の層は、接着樹脂を含む層間絶縁膜を有することを特徴とする。
【0014】
ここで、前記接着樹脂としては、熱軟化性樹脂が好適である。
【0015】
この請求項記載の発明によれば、前記支持体と前記基板とを貼り合わせる際に、例えば加圧や加熱などにより前記接着樹脂は接着性を発揮するので、前記第1層及び第2層と前記他の層および前記基板とは該接着樹脂により接着される。従って、より確実に前記他の層は前記第1層及び第2層上に接合される。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発光素子を製造するための転写体の製造方法において、前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする。
【0017】
この請求項記載の発明によれば、有機EL素子の製造方法において、一つの装置あたりのスループットは向上するので、有機EL素子の製造コストは下がる。
【0018】
また、請求項5記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発光素子を製造するための転写体の製造方法において、
前記移動工程は、前記支持体が巻かれた第1ロールと、前記支持体を巻き取る第2ロールと、を回転して前記支持体を移動することを特徴とする。
【0019】
この請求項に記載の発明によれば、蒸着炉内における支持体及び第1層及び第2層が形成された支持体の専有体積を最小限にすることができる。
ここで、前記支持体としては、例えばロール状に巻くことが可能なPETフィルムが好適である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態例である有機EL発光部1の製造方法について、図1〜図3を用いて詳細に説明する。
ここで、有機EL発光部1は、例えばバックライトなどに用いられるラフパターンとする。
図1は、支持体15の一面に、カソード電極11(第1層),電子輸送層12(第2層),発光層13,正孔輸送層14を形成する薄膜連続形成装置2(蒸着炉)の構成および動作を説明する概略図である。ここで、カソード電極11,電子輸送層12,発光層13は、それぞれ、単層である場合と複数の層から形成される場合とがある。
図2は、支持体15の表部に形成された、カソード電極11,電子輸送層12,発光層13,正孔輸送層14を、アノード電極101(他の層)及び層間絶縁膜102(他の層)を有する基板10の上に転写する方法を説明する概略図である。
図3は、有機EL発光部1の積層構造を説明する概略図である。
【0021】
まず、薄膜連続形成装置2の構成について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、連続薄膜形成装置2は、減圧された真空チャンバー100の中に、カソード電極蒸着装置111と、電子輸送層蒸着装置121と、発光層蒸着装置131と、正孔輸送層蒸着装置141と、ロール状に巻かれた支持体15をカソード電極蒸着装置111,電子輸送層蒸着装置121,発光層蒸着装置131,正孔輸送層蒸着装置141上に支持するとともに所定方向に移動させるロール16,16と、を設けた構成とする。
なお、カソード電極蒸着装置111と電子輸送層蒸着装置121の間と、電子輸送層蒸着装置121と発光層蒸着装置131の間と、発光層蒸着装置131と正孔輸送層蒸着装置141との間には、それぞれの蒸着源の侵入を防ぐための隔壁17,17,17が、それぞれ設けられる。さらに、真空チャンバー100は配管(図示省略)を介して真空排気系(図示省略)に接続されている。
【0022】
カソード電極蒸着装置111は、カソード電極11を構成するカソード電極材料を適量入れることができ、上方に開口部を有する坩堝と、カソード電極材料を蒸発させるために坩堝を所定の温度に加熱することができる加熱手段と、により構成される。すなわち、通常の真空蒸着に用いられる薄膜源と概略同じ構成である。
カソード電極蒸着装置111の坩堝内にはカソード電極材料がAl−Li合金が入れられている。カソード電極材料としては他に、例えばAl−Li合金の他にMg、MgAg、MgIn、Alが適用可能な場合もある。
【0023】
同様に、電子輸送層蒸着装置121は、電子輸送層12を構成する電子輸送層材料を適量入れることができ、上方に開口部を有する坩堝と、電子輸送層材料を蒸発させるために坩堝を所定の温度に加熱することができる加熱手段と、により構成される。
電子輸送層蒸着装置121の坩堝内にはトリス(8-キノリノレート)アルミニウム錯体(以下、Alq3)が入れられている。
【0024】
発光層蒸着装置131は、発光層13を構成する発光層材料を適量入れることができ、上方に開口部を有する坩堝と、発光層材料を蒸発させるために坩堝を所定の温度に加熱することができる加熱手段と、により構成される。
発光層蒸着装置131の坩堝内には4,4'-ビス(2,2-ジフェニルビニレン)ビフェニル(以下、DPVBi)96wt%と4,4'-ビス(2-カルバゾールビニレン)ビフェニル(以下、BCzVBi)4wt%の混合物が入れられている。
【0025】
正孔輸送層蒸着装置141は、正孔輸送層14を構成する正孔輸送層材料を適量入れることができ、上方に開口部を有する坩堝と、正孔輸送層材料を蒸発させるために坩堝を所定の温度に加熱することができる加熱手段と、により構成される。
正孔輸送層蒸着装置141の坩堝内にはN,N'-ジ(α-ナフチル)-N,N'-ジフェニル-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(以下、α−NPD)が入れられている。
【0026】
ロール16は、真空チャンバー100外部に設けられたモータなどの駆動源(図示省略)から伝達される動力により、ロール状に巻かれた支持体15をカソード電極蒸着装置111,電子輸送層蒸着装置121,発光層蒸着装置131,正孔輸送層蒸着装置141の上方にさらした後に再びロール状に巻き取る。
【0027】
次に、有機EL発光部1の製造方法について、順を追って説明する。なお、ここで用いる支持体15としては、裏面に耐熱滑性層15aを有するPET(polyethylene terephthalate)フィルムが、好適に用いられる。
【0028】
まず、以下のように、薄膜連続形成装置2を用いて、支持体15の、先端部と終端部を除いた表面全面に、カソード電極11,電子輸送層12,発光層13,正孔輸送層14を連続的に積層させる。
【0029】
すなわち、ロール16を用いて、支持体15を図1の矢印に示す方向に動かす。このため、支持体15は、下面をカソード電極蒸着装置111,電子輸送層蒸着装置121,発光層蒸着装置131,正孔輸送層蒸着装置141に、この順序の通りにさらされる。
【0030】
ここで、支持体15のうち、下方にカソード電極蒸着装置111が配置される箇所には、カソード電極蒸着装置111より蒸発したカソード電極材料を表面にそれぞれ捕捉する。従って、支持体15の表部にはカソード電極11が一定厚さほど堆積する。蒸着の間、支持体15はロール16、16により図1中の矢印方向に進行しても良いし、停止していてもよい。
【0031】
この間、支持体15のうち、カソード電極蒸着装置111により既にカソード電極11が蒸着された箇所は、電子輸送層蒸着装置121上に位置し、電子輸送層蒸着装置121上から蒸発した電子輸送層材料をカソード電極11の表面にそれぞれ捕捉し、電子輸送層12が所定の厚さに堆積する。
【0032】
またこの間、支持体15のうち、電子輸送層蒸着装置121により既に電子輸送層12が蒸着された箇所は、発光層蒸着装置131上に位置し、発光層蒸着装置131から蒸発した発光層材料を電子輸送層12の表面にそれぞれ捕捉し、発光層13が所定の厚さに堆積する。
【0033】
さらにこの間、支持体15のうち、発光層蒸着装置131により既に発光層13が蒸着された箇所は、正孔輸送層蒸着装置141上に位置し、正孔輸送層蒸着装置141から蒸発した発光層材料を発光層13の表面にそれぞれ捕捉し、正孔輸送層14が所定の厚さに堆積する。
【0034】
上述した工程によりカソード電極蒸着装置111,電子輸送層蒸着装置121,発光層蒸着装置131,及び正孔輸送層蒸着装置141が、それぞれカソード電極11,電子輸送層12,発光層13,正孔輸送層14をそれぞれ所定の厚さに成膜し終えれば、ロール16、16により支持体15は矢印方向に移動し、支持体15には、カソード電極11,電子輸送層12,発光層13,及び正孔輸送層14が連続して成膜される。
【0035】
このように、1つの支持体15に連続してカソード電極蒸着装置111,電子輸送層蒸着装置121,発光層蒸着装置131,及び正孔輸送層蒸着装置141で同時に蒸着することにより、従来のように各蒸着装置で、別々の期間に蒸着する製造方法に比べてスループットを向上することができる。
【0036】
本実施形態では、支持体15が、カソード電極蒸着装置111,電子輸送層蒸着装置121,発光層蒸着装置131,及び正孔輸送層蒸着装置141の上方をロール16、16により移動する速度は同じであるため、蒸着の間に支持体15を移動している場合は、蒸着する材料の蒸着速度に応じてカソード電極蒸着装置111,電子輸送層蒸着装置121,発光層蒸着装置131,正孔輸送層蒸着装置141のそれぞれの蒸着面の矢印方向の距離を設定すればよい。
例えばカソード電極蒸着装置111がカソード電極11を所定の膜厚にするための蒸着速度が、電子輸送層蒸着装置121が電子輸送層12を所定の膜厚にするための蒸着速度の半分の場合は、カソード電極蒸着装置111の支持体15への蒸着面の矢印方向の距離を電子輸送層蒸着装置121の支持体15への蒸着面の矢印方向の距離の二倍にすれば、カソード電極11及び電子輸送層12をそれぞれ最適の厚さに成膜することができる。
【0037】
なお、基板10の通過速度はすべての箇所で一定であるため、カソード電極蒸着装置111,電子輸送層蒸着装置121,発光層蒸着装置131,正孔輸送層蒸着装置141の各加熱手段の出力を調節することにより坩堝の厚さを制御してカソード電極11,電子輸送層12,発光層13,正孔輸送層14はそれぞれ所定の厚さに堆積してもよい。
【0038】
次に、以下の方法に従って、支持体15上の各層を基板10上に転写する。
【0039】
すなわち、PETなどから作製される基板10には予め、ITO(Indium Tin Oxide)やIn2O3(ZnO)x(x>0)等の可視光に対して十分な透過性を示す材料からなっていて所定のパターンを有するアノード電極101と、熱軟化性樹脂などの樹脂粒を分散させた絶縁物質からなっていてアノード電極101の周縁部上を覆うとともにその一部は基板10と接する層間絶縁膜102と、を設ける。
ここで、有機EL発光部1を液晶表示装置のバックライトに適用する場合は面発光でよいので、有機EL発光部1はラフパターンになり、アノード電極101と層間絶縁膜102とは、メタルマスクを用いた真空プロセスではなく、印刷により形成してもよい。
また、層間絶縁膜102は、アノード電極101とカソード電極11とが短絡することを防ぐための層でもあるため、図3(B)に示すように、後にサーマルヘッド21により該層間絶縁膜102の上に転写されるカソード電極11,電子輸送層12,発光層13,正孔輸送層14より大きく形成される。さらに、層間絶縁膜102には、アノード電極101をリード線などの外部端子と接続するためのアノード電極取り出し孔102aを設ける。
【0040】
次に、支持体15と基板10とを、それぞれの上にすでに形成した各層が対向するように配置する。
次に、支持体15と基板10の所定箇所を、サーマルヘッド21とローラー22との間に挟む。
ここで、支持体15およびカソード電極11はサーマルヘッド21によって加熱されるため、相互に解離しやすくなる。また、正孔輸送層14と層間絶縁膜102とは、サーマルヘッド21とローラー22との間で圧接されるため、層間絶縁膜102中の樹脂粒により接着される。なお、耐熱滑性層15aの存在により、支持体15はサーマルヘッド21には付着しない。
従って、カソード電極11,電子輸送層12,発光層13,正孔輸送層14は、サーマルヘッド21により加熱された部分のみ基板10上に転写される。以上の工程により、有機EL発光部1は完成する。
【0041】
この結果、図3に示すように、有機EL発光部1は、同図(C)に示す基板10上に、同図(B)に示す、アノード電極101と、層間絶縁膜102と、同図(A)に示す支持体15からサーマルヘッド21により加熱されて転写された正孔輸送層14,発光層13,電子輸送層12,カソード電極11と、を積層した構造となる。
【0042】
以上より、本発明の実施の形態例によれば、支持体15の上に、カソード電極11,電子輸送層12,発光層13,正孔輸送層14を、この順序で、メタルマスクを用いない真空蒸着法にて積層する。別途、基板10の上にアノード電極101,層間絶縁膜102を印刷により形成する。続いて、支持体15と基板10とを、それぞれの表部に形成した膜が対向する方向に貼り合わせ、サーマルヘッド21を用いてパターンとして必要な箇所に熱を加えることにより、基板10のアノード電極101,層間絶縁膜102の上に、正孔輸送層14,発光層13,電子輸送層12,カソード電極11を、この順序通りに転写して、有機EL発光部1を作製する。すなわち、有機EL発光部1の作製工程において、メタルマスクを真空中にて用いないため、高精度な位置合わせを行う必要はなく、従って、生産装置一つあたりの単位時間あたりの生産量、すなわちスループットは従来と比べて大幅に向上するため、有機EL素子の製造コストは下がる。
【0043】
さらに、層間絶縁膜102を設けたので、正孔輸送層14,発光層13,電子輸送層12,カソード電極11の転写位置が多少ずれても、アノード電極101とカソード電極11とは短絡しない。
また、サーマルヘッド21に微細パターン加工を施すことにより、微細な構造を有する有機EL発光部の作製できる。
さらに、バックライトの形状によっては、層間絶縁膜102を所定のパターンに形成することにより、アノード電極101を所定のパターンに形成する必要はなくなる場合もある。
また、曲げると割れる可能性のあるITOなどを材料として用いるアノード電極101は、巻き取る必要のない基板10上に堆積したので、支持体15を巻き取る際にアノード電極101が割れる可能性もない。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施の形態例に限定されるものではなく、転写時の層間絶縁膜102と正孔輸送層14との密着性を高めるために、正孔輸送層14の上に、さらに熱接着性層を設けたり、あるいは転写直後にラミネートフィルムを介して再度圧着してもよい。
また、正孔輸送層14,発光層13,電子輸送層12,カソード電極11を十分正確に転写できる場合は、層間絶縁膜102を設ける必要はない。この場合は、アノード電極101の周縁部をなだらかなテーパーを有するように加工するほうが好ましい。
さらに、発光素子は有機ELを用いた素子に限定する必要はなく、当然、積層構造を有する他の発光素子に適用することも可能である。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、有機EL素子を製造するための転写体の製造方法において、スループットは向上するので、有機EL素子の製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態例の一部である、支持体15の表部に、カソード電極11,電子輸送層12,発光層13,正孔輸送層14を形成する、薄膜連続形成装置2の構成および動作を説明する概略図である。
【図2】支持体15上の各層を、基板10上に転写する方法を説明する概略図である。
【図3】有機EL発光部1の積層構造を説明する概略図である。
【符号の説明】
1 有機EL発光部(発光部)
2 薄膜連続形成装置(蒸着炉)
10 基板
11 カソード電極(第1層)
12 電子輸送層(第2層)
13 発光層
14 正孔輸送層
15 支持体
16 ロール
21 サーマルヘッド
22 ローラー
100 真空チャンバー
101 アノード電極(他の層)
102 層間絶縁膜(他の層)
111 カソード電極蒸着装置(第1蒸着装置)
121 電子輸送層蒸着装置(第2蒸着装置)
131 発光層蒸着装置
141 正孔輸送層蒸着装置

Claims (5)

  1. 基板上にカソード電極と、アノード電極と、前記カソード電極及び前記アノード電極間に設けられた発光層と、備えた発光部を有する発光素子を製造するための転写体の製造方法において、
    前記発光部は、前記カソード電極を含む第1層と、前記発光層を含む第2層と、前記アノード電極を含む他の層と、を有する複数の層により構成され、
    内部に前記発光部の複数の層のうちの第1層を蒸着する第1蒸着装置及び前記発光部の複数の層のうちの第2層を蒸着する第2蒸着装置を配置し、前記第1蒸着装置及び第2蒸着装置の上方に支持体を配置した蒸着炉を設け、
    前記支持体の下面に前記第1蒸着装置により前記第1層を蒸着する第1層形成工程と、
    前記第1層が形成された前記支持体を移動する移動工程と、
    前記第1層が形成された前記支持体の移動後又は移動中に、引き続き前記支持体の下面に前記第1層を連続して蒸着する第1層連続形成工程と、
    第1層連続形成工程中に、前記第1層形成工程で形成された前記第1層に前記第2蒸着装置により第2層を蒸着する第2層形成工程と、
    により、前記支持体と、前記支持体の下面の前記第1層と、前記第1層の下面の前記第2層と、を有する転写体を製造することを特徴とする発光素子を製造するための転写体の製造方法。
  2. 前記請求項1記載の発光素子を製造するための転写体の製造方法によって製造された前記転写体を、前記複数の層のうちの前記他の層を積層した基板に、前記第1層及び第2層が前記他の層の上に積層するように重ねた後に、
    前記支持体の所定箇所を加熱及び押圧することにより、前記第1層及び第2層の所定箇所を前記他の層の上に転写する工程を含むこと、
    を特徴とする請求項1記載の発光素子を製造するための転写体の製造方法。
  3. 前記他の層は、接着樹脂を含む層間絶縁膜を有することを特徴とする請求項2に記載の発光素子を製造するための転写体の製造方法。
  4. 前記発光素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発光素子を製造するための転写体の製造方法。
  5. 前記移動工程は、前記支持体が巻かれた第1ロールと、前記支持体を巻き取る第2ロールと、を回転して前記支持体を移動することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発光素子を製造するための転写体の製造方法。
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