JP4285627B2 - 色素増感型太陽電池用光活性電極及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光電変換素子である色素増感型太陽電池用光活性電極とその製造方法、及び色素増感型太陽電池に関する
【0002】
【従来の技術】
色素増感型太陽電池の原型は、1991年にロザーンヌ工科大学のグレッツエル等によって最初に報告された光電変換素子あるいは太陽電池であり(M. Graezel, Nature, 353. 737 (1991))、一般的には色素増感型太陽電池、湿式太陽電池、あるいはグレッツエル型太陽電池と呼ばれる。この光電変換素子の特徴は、アモルファスシリコン型太陽電池並の高い光電変換効率を有することとその製造コストをより安くできることである。
【0003】
図1は標準的な色素増感型太陽電池の概略断面図である。この色素増感型太陽電池は、色素電極11、電解層5、及び対極12の3つの部分からなる。ここで、色素電極11は、基材1とその上に形成された導電膜2とからなるシート状電極9の上に、多孔質の金属酸化物膜3を形成した電極(あわせて光活性電極10という。)上に、増感色素4を担持した構造を有する。一方、対極12は、導電膜7を有する電極基材8からなるシート状電極12とその上に触媒層6を形成した構造を有する。ここで、触媒とは電池の作動状態で電解液中の電解質を還元反応を促進する役割をし、一般的には白金あるいはカーボンブラックやグラファイトが用いられる。電解層5は、一般には電解質を溶解した溶液からなり、色素電極と対極との間に充填され、両者と電気化学的に接している。この太陽電池においては、光を色素電極11側から照射することで、色素電極側の導電膜を通じて電子を外部回路に取り出すことが可能となる。
【0004】
次に、色素増感型太陽電池において、光電変換が起こる機構を説明する。
まず、外部より注入された光のエネルギーは色素電極11上に担持された増感色素4に吸収されることで増感色素上に電子と正孔とを発生する。発生した電子は金属酸化物膜3を通じて導電膜2に到達し、これを通じて外部系へと取り出される。一方、発生した正電荷は、電解液5を通じて対極12へと運ばれ、導電膜7を通じて供給された電子と再び結合する。
【0005】
光電変換機構から推測できるように、色素増感型太陽電池の光電変換効率は、光活性電極の性能に大きく依存する。中でも特に、金属酸化物膜の構造及びその組成が重要である。具体的には、色素増感型太陽電池の光電変換効率を高めるためには金属酸化物膜を多孔質にすることが有効とされる。この理由は、膜を多孔質にすることによってその単位体積あたり表面積が増加する結果、増感色素の担持量を増すことができるからである。これによって、外部から光電変換素子に注入された光を有効に光電変化に利用することができる。また、金属酸化物を多孔質化する別の理由は、電解層が金属酸化物膜の細部にまで拡散することが可能となり、その結果、増感色素上で発生した正孔を効率よく輸送できるようにすることである。
【0006】
従来の製造方法では光活性電極を製造するために、金属酸化物微粒子と加熱によって焼失する有機物(バインダー)、具体的には、ポリエチレングリコールあるいはポリプロピレングリコールを主鎖にもつ高分子化合物との混合物からなる金属酸化物分散液をスクリーン印刷法、ドクターブレディング法、あるいはスピンコート法などによってシート状電極上に塗布し、乾燥させた後に、400℃以上の高温で熱処理する方法が用いられる。この方法によると、有機物が焼失した空間が金属酸化物膜中に多数残存することによって金属酸化物膜が多孔質となる。また、これらの有機物あるいはそれから選ばれる界面活性剤は、金属酸化物膜から溶剤が蒸発する過程で生じる膜収縮に起因する膜のひび割れ、あるいは基材からの剥離を防止する効果があり(例えば、Srikanthほか、Solar Energy Materials and Solar Cells, 2001, vol.65, 171)、良好な光活性電極を作製するために、金属酸化物分散液に添加する必要がある。つまり、従来の技術では、色素電極の作製工程において、シート状電極上に塗布した金属酸化物膜を有機物が焼失する温度で熱処理する工程が不可欠であった。
【0007】
他方、光電変換効率向上させる手段として、増感色素の光吸収効率を高める目的で、金属酸化物膜中に光散乱材を混在させるという方法が広く用いられている。この場合、金属酸化物膜内に光散乱を促進するという目的で可視光波長の半分前後、つまり、150〜500nmの粒径を有する粒子からなる光散乱材分散させた光活性電極を用いる。この光活性電極を用いて作製した色素電極では、入射光が光散乱材を介して複数回屈折するために、入射光が金属酸化物内を進む見かけ上の距離が大きくなる結果、光が増感色素に吸収される割合が高くなる。ここで光散乱促進に用いられる粒子は、通常、金属酸化物と同種のものが用いられる。従って、従来の製造方法によると、前記の金属酸化物分散液に光散乱材を添加したものを用いて、前述した方法で、シート状電極上に形成する。しかしながら、この方法で得られた色素電極では、入射光の一部が、色素電極のシート状電極との界面付近で反射するために、増感色素に吸収されずに色素電極の外へと逃げる結果、入射光を完全に吸収した場合の光電変換効率と比較して、実際に達成できる光電変換効率が低いという問題がある。この問題を解決するためには、色素電極中の光散乱材の金属酸化物に対する割合を入射光側、つまり、シート状電極に近い部分では少なくし、ここから対極に近づくにつれて光散乱材の量を多くした光活性電極を用いる必要がある。この場合、光活性電極中の光散乱材の割合が、シート状電極側から対極側にかけて増加するように構成された2層以上の層からなるいわゆる多層型、あるいは連続的に組成が変化する傾斜型の光活性電極がより有効と考えられる。
【0008】
さらに、光活性電極を多層型あるいは傾斜型にする別の目的として、色素電極内の電解液の拡散を促進することもある。つまり、シート状電極近傍の金属酸化物膜は、密にすることで色素担持量を大きくして光吸収効率を高める一方、光が殆ど届かない対極に近い側の金属酸化物は、電解質の移動がスムーズに進行するように疎になるようにすることで、光を有効に吸収しつつ、電解質が効率的に色素電極と対極間を行き来することで、色素増感型太陽電池の効率を高めることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法では、光活性電極上の金属酸化物膜を作製する際に熱処理を必要とすることがら、有機物の燃焼に伴うガスの発生、発生ガスあるいは残留物による金属酸化物膜の汚染等の問題点があった。
また、従来の方法によると、金属酸化物膜が多層型、あるいはデザインを配した色素電極を作製する場合には、一層ごとに、それぞれ組成の異なる金属酸化物分散液を用いて前述の方法によって金属酸化物層を塗り重ねる必要があるため、製造工程が多くなりコストが高くなるという問題点があった。また、傾斜型の色素電極を作製することは従来の技術では困難であった。
【0010】
さらに、太陽電池は、人目につく場所に設置される場合も多いため、性能と共にデザイン性も要求される。色素増感型太陽電池については、例えば、特開2001-176565に示されるように、複数種類の増感色素を所定のパターン(文字、記号、図形、イラスト)様に配置することで、デザイン性を付与することができる。しかしながら、この方法では、色素電極が無色透明に近い必要があるために、性能低下が大きく損なわれ、また所定のパターン様に配する設備・工程が必要という問題があった。
本発明は以上の問題点を解決する色素増感型太陽電池用光活性電極とその製造方法、及びその光活性電極を用いた色素増感型太陽電池を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、金属酸化物微粒子を溶剤に分散させた金属酸化物分散液を噴霧装置を用いてシート状電極上に塗布することにより、加熱により消失する有機物を使用することなく多孔質な金属酸化物膜を形成できること、また、噴霧装置に供給する金属酸化物分散液の組成を断続的あるいは連続的に変化させることによって、断続的に組成が変化した多層型あるいは連続的に組成が変化した傾斜型の金属酸化物膜を有する光活性電極を作製できることを見出し本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は以下の色素増感型太陽電池用光活性電極とその製造方法、及び色素増感型太陽電池を提供するものである。
1.金属酸化物微粒子と溶媒を必須成分とする金属酸化物分散液をシート状電極上に噴霧して塗布し、乾燥して金属酸化物の多孔質膜を形成することを特徴とする色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
2.エアースプレー装置、インクジェット装置、あるいは超音波噴霧装置のいずれかの噴霧装置を用いて金属酸化物分散液を噴霧する前項1記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
3.金属酸化物分散液をシート状電極上に塗布する工程と、これに続く乾燥工程とを交互に2回以上繰り返す前項1記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
4.金属酸化物分散液をシート状電極上に塗布しながら、同時に塗膜を乾燥する前項1または3記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
5.金属酸化物分散液の組成を連続的あるいは不連続的に変化させつつシート状電極上に塗布する前項1記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
6.前記噴霧装置の噴霧口をシート状電極面に対して二次元に平行に移動させながら金属酸化物を噴霧して、シート状電極上に所定のパターンに象った金属酸化物膜を形成する前項2記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
7.所定のパターンが、図形、文字、絵あるいは記号である前項6記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
8.シート状電極の面に、所定のパターンにを象った開口部を有するマスクを重ね合わせた状態で金属酸化物分散液を塗布して、シート状電極上に所定のパターンを象った金属酸化物膜を形成する前項1記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
9.所定のパターンが、図形、文字、絵あるいは記号である前項8記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
10.シート状電極として、前項6または8記載の所定のパターンを象った金属酸化物膜を有する電極を使用する前項1乃至5のいずれか記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
11.前項1乃至10のいずれか記載の方法で得られる色素増感型太陽電池用光活性電極。
12.前項11記載の光活性電極を用いた色素増感型太陽電池。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明は、金属酸化物分散液をシート状電極上に噴霧して塗布し、乾燥して金属酸化物の多孔質膜を形成する色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法に関する。
ここで、金属酸化物分散液とは、金属酸化物微粒子を水等の溶剤に分散させたもの、あるいはこの分散液に光散乱促進を目的とした微粒子を添加したものである。金属酸化物微粒子としては、色素増感型太陽電池に使用可能なもの、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムの単体あるいは2種類以上の混合物が挙げられる。粒径は5〜500ナノメートル(nm)のものが好ましく、10〜50nmのものがさらに好ましい。金属酸化物微粒子の使用量は金属酸化物分散液中5〜60質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
【0014】
分散液に使用する溶剤としては、金属酸化物と親和性のある揮発性液体であれば制限なく使用できる。具体的には、水、アルコール類、カルボン酸類、アミン類などが好ましい。光散乱を促進する微粒子とは、可視光に対して光散乱能を有するものであり、通常光の波長の1/2前後、具体的には直径が150〜500nmの粒子であればあれば、制限なく使用できる。具体的には、前記の金属酸化物微粒子と同種類、つまり、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウムの単体あるいは2種類以上の混合物が好ましい。この添加量は、金属酸化物微粒子100質量部に対して0.1〜70質量部が好ましく、10〜40質量部がさらに好ましい。
【0015】
金属酸化物を溶剤に分散させる方法は、ペイントコンディショナー、ホモジナイザー、超音波撹拌装置、乳鉢などを用いて行う。金属酸化物分散液には、その粒径が噴霧装置の作動に支障をきたさない大きさ、具体的には、1μm以下であれば、金属酸化物以外の化合物、例えば、界面活性剤、ゲル状樹脂などを添加することが可能である。
【0016】
シート状電極の上に形成される金属酸化物膜の厚さは、0.1〜100μmが好ましく、1〜20μmがさらに好ましい。ここでいうシート状電極とは電気抵抗が2000Ω/□(スクエアー)以下を有するもの、かつ可視光に対する光透過性が30%以上のものであれば使用可能である。具体的には、導電体としてインジウム酸化スズ(ITO)、酸化亜鉛、フッ素ドープ型酸化スズ(FTO)などを表面に有するガラスや樹脂が好ましい。シート状電極上に金属酸化物膜を形成したものは、その状態で色素増感型太陽電池の光活性電極として使用可能であるが、これを400〜500℃で5〜60分熱処理すると、金属酸化物膜に機械的強度と経時安定性とが備わるのでより好ましい。
【0017】
噴霧装置は、金属酸化物分散液を200μm以下の霧状にすることのできる装置であれば制限なく使用できる。噴霧装置としてはエアースプレー装置、インクジェット装置、あるいは超音波噴霧装置などが使用可能である。
【0018】
ここでエアースプレー装置とは、圧縮気体の膨張で生じる気圧差を利用して、液体を一定方向に飛散させる装置であり、スプレーガン、エアーブラシ等一般的に用いられているものが使用可能である。装置の性能は、噴霧する液体の粒径が200μm以下、さらに好ましくは50μm以下であることが望ましい。また、インクジェット装置は、噴霧する液体を満たした微細なノズルを体積収縮あるいは昇温させることによって、液体を微細な粒として放出する装置であり、具体的にはこの方式の市販のプリンターが利用できる。
超音波噴霧装置とは、液体に超音波を照射することによって、液体を霧状に飛散させる装置のことである。
これらの噴霧装置において、金属腐食性を有する金属酸化物を使用する場合には、ノズル及び液体供給部分に防食処理を施すことが好ましい。
【0019】
本発明によれば、金属酸化物分散液をシート状電極上に噴霧、塗布する工程と、続いてこれを乾燥する工程とを交互に2回以上繰り返すことによって光活性電極を製造することができる。ここで乾燥とは、シート状電極上に塗布されら金属酸化物分散液から溶剤を蒸発させる操作をいう。従って、乾燥する工程については、塗膜が乾く操作であれば制限なく使用できる。例を挙げれば、塗膜にドライヤー等で温風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、シート状電極を昇温する方法、塗膜に乾燥空気を吹き付けることが短時間で処理が行えるために好ましい。
【0020】
金属酸化物分散液を塗布しこれを乾燥する操作回数は、目的とする光活性電極の金属酸化物膜の厚さを、一回の操作で形成できる金属酸化膜の厚さで割った回数となる。つまり、厚さXミクロンの金属酸化物膜を有する光活性電極を作製する場合、一回の操作で作製できる金属酸化物層の厚さがYミクロンである場合、操作回数はX/Y・回となる。光活性電極の性能はこの操作回数が多いほど多孔質になるために好ましいが、一方、操作回数が多くなると作製に要する時間が長くなるために生産性が低下する。一回の塗工乾燥操作で形成する金属酸化物膜の厚さは、平均0.05〜2μmが好ましく、平均0.1〜1μmがさらに好ましい。
【0021】
一回の塗工乾燥操作で形成する金属酸化物膜の厚さの調節は、下記(1)〜(3)の経験的方法によって行うことができる。
(1)噴霧装置の一定時間の噴出量と塗布時間とを制御した状態で塗膜を作製し、この一回の操作で作製した金属酸化物膜の平均厚みを測定する。
(2)次に噴出量と塗布時間と変えて、同様の測定を行う。
(3)(1)と(2)の操作を繰り返すことによって、目的とする膜厚が得られる条件を見付け出す。
【0022】
この一連の操作によって金属酸化物膜を多孔質にすることができる理由は次のように推察できる。噴霧装置より放出された金属酸化物分散液が半球の状態でシート状電極上に付着し、この形状を維持したまま溶剤が蒸発することで、多数の半球状の金属酸化物膜を形成する。この際、金属酸化物膜の表面には、溶剤の蒸散に伴う体積収集によって、表面から内部にかけて複数のひび割れも生じる。さらに、この上に塗布操作を繰り返すことによって、半球状金属酸化物膜上に順々に金属酸化物層が形成される。この場合、各金属酸化物膜層は、半球状の金属酸化物の集合体を形成するために、空隙が形成されるとともに、膜に生じた複数のひび割れも保持される。これによって、金属酸化物膜を微視的に見ると最密充填されず、全体として見た場合、多孔質構造となる。一方、ドクターブレード法のような従来の方法によって塗膜を作製した場合、シート状電極上に塗布した直後の金属酸化物分散液は連続かつ均一なために、この状態で乾燥させても多孔質にはならない。さらに、塗布した金属酸化物分散液は連続かつ均一なことに加えて、膜厚が大きいために、溶剤蒸発に伴う体積収縮の応力が膜表面全体に加わる結果、膜は大きなひび割れが数少なく発生したり、あるいは透明電極から剥離することになり、良好な膜が得ることが困難となる。従って、従来法により塗膜を多孔質で、かつワレや基材からの剥離を発生させないためには有機物を分散液に溶解し、乾燥後焼成することが必要となる。
【0023】
また、本発明によれば、金属酸化物分散液をシート状電極上に塗布しながら、同時に塗膜を乾燥することによって色素増感型太陽電池用光活性電極を製造することもできる。この方法は塗布、乾燥工程を同時に行うことにより前述した多孔質な金属酸化物膜を作製するものである。従って、ここでいう乾燥は、前述と同じ意味であり、前述した方法が使用できる。また、シート状電極上に付着した金属酸化物分散液が、次に飛来してくる金属酸化物分散液に接触する前に乾燥している必要があることから、塗膜の乾燥を短時間に行うことのできる手法が好ましい。具体的には、塗膜にドライヤー等で温風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、シート状電極を昇温する方法、乾燥空気を吹き付ける方法が好ましい。
【0024】
次に、本発明によれば、金属酸化物分散液をシート状電極上に塗布する工程において、金属酸化物分散液の組成を連続あるいは不連続に変化させることにより色素増感型太陽電池用光活性電極を製造することができる。この方法を用いることによって、金属酸化物膜の組成をシート状電極側から電解質側にかけて、連続的あるいは不連続的(断続的)に変化させることが可能となる。ここで、金属酸化物分散液の組成を連続あるいは不連続に変化させることは、噴霧装置に供給する金属酸化物分散液の組成を連続あるいは不連続に変化させることにより行う。具体的には、噴霧装置の塗布液供給口の手前に噴霧液の切り替えバルブあるいは2個以上の定量供給装置を設置することで噴霧装置に供給する金属酸化物の組成を変化させる方法、あるいは供給する金属酸化物分散液の異なる2台以上の噴霧装置を使用して、個々のノズルから同時に吹き付けを行い、その際に個々の装置の噴霧量を連続的あるいは不連続に変化させる方法などがある。これらの方法によると、金属酸化物分散液の組成、特に金属酸化物微粒子及び/または光散乱促進剤の濃度は任意に変化させることが可能であるが、色素増感型太陽電池用の光活性電極に用いる場合、深層すなわちシート状電極界面から浅層すなわち金属酸化物膜表面にかけて、塗布に使用する金属酸化物分散液中の光散乱促進剤の濃度を連続的あるいは不連続的に増やすことが好ましい。光散乱促進材を使用する場合、その使用量は金属酸化物微粒子の10質量%から100質量%(全量)を置換して使用することが好ましい。
【0025】
この方法で作製した色素増感型太陽電池用光活性電極は金属酸化物膜の組成が膜に平行して連続あるいは不連続に変化しているのが特長である。これは、膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することによって確認できる。
【0026】
次に、本発明によれは、噴霧装置の噴霧口をシート状電極面に対して二次元的に平行に移動させながら金属酸化物を噴霧するか、あるいは、シート状電極の面にマスク、すなわち図形、文字、絵、あるいは記号を象った開口部を有する板状物を重ね合わせた状態で金属酸化物分散液を噴霧することにより、シート状電極上に、図形、文字、絵、あるいは記号を象った金属酸化物膜を形成することができる。噴霧口を二次元的に移動させる方法は、例えば、噴霧口をX−Yステージに取り付け、パーソナルコンピュータで制御することで可能である。この方法によると、噴霧口の移動と共に、噴霧する金属酸化物分散液の量を制御することにより濃淡のあるデザインを形成可能である。また、マスクを使用する場合のマスク基材は、金属酸化物分散液と接触して変形するものでなければ特に制限はないが、薄板状であることが好ましい。具体的には、金属、樹脂、木材、ガラスを厚さ0.01〜5mmの板状に成形したものが挙げられる。図形、文字、絵、あるいは記号を象った孔をあけたマスクを使用することで、その部分に対応する形の金属酸化物膜がシート状電極に形成される。この様にして得られた光活性電極の形は、色素増感型太陽電池に完成させた状態で、色素増感型太陽電池の受光面上にデザインとして認識することができる。さらに、このデザインを象った光活性電極に、さらに別の組成の金属酸化物膜を形成することができる。この方法によると、例えば、デザインを象った金属酸化物膜を光散乱材で構成し、この上に光散乱材を配合しない金属酸化物膜を形成した光活性電極では、色素増感型太陽電池に完成させた状態で、色素増感型太陽電池の受光面上に光散乱材からなるデザインを認識することができる。この方法では、デザイン形成から金属酸化物膜形成までを噴霧装置の追加なしに連続的に仕上げることが可能であり、製造装置の追加を必要とする従来法より低コストである。
【0027】
本発明の噴霧装置により塗布、乾燥された金属酸化物膜は、金属酸化物が多孔質であるために、従来法のように多孔質化する目的では、熱処理の必要はない。但し、熱処理を行わない場合、金属酸化物の膜の強度が低下するために、最終的に得られた色素増感型太陽電池の耐久性が低い場合がある。従って、金属酸化物の膜の機械的強度が低い場合、これを付与する目的で、高温で熱処理することが好ましい。この熱処理により金属酸化物微粒子どうしが焼結し、多孔質の金属酸化物膜の機械強度が増す。本発明では、多孔質化するための有機物(バインダー)が不要であるため、その燃焼に伴うガスの発生、残留物による汚染を防止することが可能となる。熱処理の温度は、金属酸化物が酸化チタンの場合、400〜500℃が好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施形態としての色素増感型太陽電池の実施例を示すが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
<光起電力の測定方法>
作製した色素増感型太陽電池に、光源としてキセノンランプ(山下電装製、SEL033、150Wキセノンランプ使用)を使用し、50mW/cm2(光量はインターナショナルライト社製IL1400Aを用いて定量した)の光を照射し、この時の最大起電力をポテンショスタット(北斗電工製、HAB151)を使用して測定した。
【0029】
参考例1:
酸化チタン(昭和電工製、F6)100gと水300gとを超音波洗浄装置(シャープ製、UT-51N)を用いて分散させて金属酸化物分散液(以下、「金属酸化物分散液−1」と称する。)を得た。これを、スプレー(文房堂製エアーブラシ、ノズル径0.2mm、空気圧2kg/cm2)を用いてガラス電極(日本板硝子製、フッ素ドープ酸化スズ膜付きガラス、CS-4S230)上に塗布した。この時、塗布しながら同時にヘアードライヤーを用いてガラス電極に温風を吹き付けた。次にオーブン中で熱処理(470℃,1時間,空気雰囲気)を行い、膜厚6ミクロンの光活性電極を得た。この電極の断面をSEMで観察し、金属酸化物の多孔質膜が形成されていることを確認した。このようにして得られた光活性電極をルテニウム錯体色素(小島化学製、RuL2(NCS)2)のエタノール溶液に3時間浸して色素電極を得た。色素電極は、その金属酸化物膜の大きさが5×5mmとなるように、余分な部分をカッターナイフを用いて削り取った。一方、前記透明樹脂電極上にスパッタリング装置で厚さ0.1ミクロンの白金を担持した対極と、前記色素電極とをそれぞれの活性面が内側にくるように重ね合わせ、ガラス電極の側面をエポキシ樹脂(コニシ(株)製 ボンドクイック5)で封止した。電解層の厚さ(約40μm)は2枚の電極の両端にテープ状のスペーサーを挟むことで調整した。次にあらかじめガラス電極にあけておいた微小孔により2枚の電極の隙間に電解液(ヨウ化リチウム0.5mol/L、ヨウ素0.05mol/Lのアセトニトリル溶液)を注入し色素増感型太陽電池を得た。注入口は側面と同様にエポキシ樹脂で封止した。この電池の光起電力は4.1mW/cm2であった。
【0030】
参考例2:
参考例1に記載の金属酸化物分散液−1を、予め内部のインクを取り除き洗浄、乾燥したインクジェットプリンター用の黒色インクカートリッジに注入した。このカートリッジをインクジェットプリンター(セイコーエプソン製、PM―700C)に取り付けて、ガラス電極(参考例1と同じ)上にベタ印字を行った。この時、印字はガラス電極の同じ位置に合計40回行った。また、印字操作の各間にヘアードライヤーを用いて約3秒間塗膜の乾燥を行った。次にオーブン中で熱処理(470℃,1時間,空気雰囲気)を行い、膜厚6ミクロンの光活性電極を得た。この光活性電極を用いて、参考例1と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製した。この電池の光起電力は4.0mW/cm2であった。
【0031】
比較例1:
金属酸化物分散液−1をドクターブレード法(40ミクロンアプリケータを使用)を用いてガラス電極(参考例1と同じ)上に塗布後、470℃の空気中に1時間放置して光活性電極を得た。この電極の断面をSEMで観察したところ、緻密な金属酸化物膜が形成されていた。この光活性電極を用いて、参考例1と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製した。この電池の光起電力は2.5mW/cm2であった。
【0032】
比較例2:
金属酸化物分散液−1にポリエチレングリコール(和光純薬製、平均分子量2000)10gを配合したものを用いて、比較例1と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製した。途中、光活性電極の断面をSEMで観察したところ、多孔質な金属酸化物膜が形成されていた。この電池の光起電力は3.9mW/cm2であった。
【0033】
参考例1及び2では、金属酸化物分散液に有機物(バインダー)を添加することなく光活性電極作製時にスプレー及びインクジェットプリンターを使用して金属酸化物膜を多孔質としたが、これを行わなかった比較例1と参考例1を比べると参考例1が優れた性能を示している。参考例1は、有機物を添加した金属酸化物分散液を用いた従来法で金属酸化物を多孔質にした比較例2と同等の性能を示していることから、スプレーを使用して金属酸化物膜を作製することにより、金属酸化物分散液に有機物を添加することなく金属酸化物の多孔質膜が作製できることが分かる。
【0034】
実施例1:
参考例1に記載の金属酸化物分散液−1と、これに光散乱促進剤として酸化チタン(昭和電工製、スーパータイタニアG1)を20g配合した金属酸化物分散液(以下、「金属酸化物分散液−2」と称する。)を作製した。次に、1mLの金属酸化物分散液−1を、参考例1と同様のスプレーに注入した。一方、金属酸化物分散液−2は定量ポンプを使用して、毎分2mLの割合で、このスプレーに供給されるようにした。次に、定量ポンプを作動させると同時に参考例1に示した方法でガラス電極上への金属酸化物分散液の塗布を行った。この工程を2分間で終えた後、参考例1と同様の熱処理を行い、膜厚6ミクロンの光活性電極を得た。この断面をSEMで測定したところ、ガラス電極から表面にかけて、光散乱促進材が連続的に増えていることを確認した。この光活性電極を用いて参考例1と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製した。この電池の光起電力は4.9mW/cm2であった。
【0035】
実施例2:
参考例2で作製した黒色用インクカートリッジをインクジェットプリンター(参考例2と同じ)に取り付けた。また、金属酸化物分散液−2についても、同様の方法で赤色用インクカートリッジに充填後、インクジェットプリンターに取り付けた。次に、参考例2と同様の方法でガラス電極(参考例1と同じ)上に印字を行ったが、この時、1回目の塗布では金属酸化物分散液−1をベタ印字し、他方金属酸化物分散液−2は塗布しなかった。2回目以降から金属酸化物分散液1の噴出量を減らす一方、金属酸化物分散液2の噴出量を増やしていき、最終的に40回目では金属酸化物分散液−1は塗布せずに、金属酸化物分散液2をベタ印字するように噴出量を調節した。この後、参考例1と同様の操作により、膜厚6ミクロンの光活性電極を得た。この断面をSEMで測定したところ、ガラス電極から表面にかけて、光散乱促進材が連続的に増えていることを確認した。この光活性電極を用いて、参考例1と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製した。この光起電力は4.6mW/cm2であった。
【0036】
比較例3:
金属酸化物分散液−2にポリエチレングリコール(和光純薬製、平均分子量2000)10gを配合したものを用いて、比較例1と同様の方法で色素増感型太陽電池を作製した。途中、光活性電極の断面をSEMで観察したところ、光散乱促進材が金属酸化物膜内に均一に分布していることを確認した。この電池の光起電力は4.1mW/cm2であった
【0037】
光活性電極作製時にスプレー及びインクジェットプリンターからの噴出される金属酸化物の組成を連続あるいは段階的に変化させた実施例1と2では、増感色素がより有効に光を吸収した結果、性能が向上した。これに対し、比較例3は光散乱促進材を使用したことにより性能は向上しているものの、実施例1及び2よりは劣った。この理由は、比較例3では光乱射促進材が金属酸化物膜内に均一に分布しているためと考えられる。従って、金属酸化物膜組成を連続あるいは段階的に変化させたことによる性能向上が確認できた。
【0038】
参考例3:
1Lのポリエチレン容器に、酸化チタン(昭和電工製、F4)100g、水300g、およびガラスビーズ(粒径3mm)300gを添加したものを、振とう機(東京理科機械製、MMS)で24時間撹拌して金属酸化物分散液(以下、「金属酸化物分散液−3」と称する。)を得た。金属酸化物分散液−3を、スプレー(文房堂製エアーブラシ、ノズル径0.3mm、空気圧3kg/cm2)を用いてガラス電極(旭硝子製、フッ素ドープ酸化スズ膜付きガラスA110U80)上に塗布した。この時、ガラス電極上に5×5mmの正方形の開口部を設けた鉄板(厚さ0.2mm)を重ねた状態で塗布を行った。また、塗布しながら同時にヘアードライヤーを用いてガラス電極裏面より温風を吹き付けた。次にオーブン中で熱処理(140℃,10分,空気雰囲気)を行い、膜厚18ミクロンの光活性電極を得た。この電極の断面をSEMで観察し、金属酸化物の多孔質膜が形成されていることを確認した。このようにして得られた光活性電極は、その温度が100℃以上の状態でルテニウム錯体色素(小島化学製、RuL2(NCS)2)のエタノール溶液に浸し、その状態で3時間(60℃)放置して色素電極を得た。この色素電極は、その金属酸化物膜の大きさが5×5mmであった。一方、前記透明樹脂電極上にスパッタリング装置で厚さ0.05ミクロンの白金を担持した対極と、前記色素電極とをそれぞれの活性面が内側にくるように重ね合わせ、ガラス電極の側面を熱可塑性樹脂(太洋電機産業(株)製、ホットスティック)で封止した。電解層の厚さ(約40μm)は2枚の電極の両端にテープ状のスペーサーを挟むことで調整した。次に予めガラス電極にあけておいた微小孔により2枚の電極の隙間に電解液(テトラブチルアンモニウム0.5mol/L、ヨウ化リチウム0.1mol/L、ヨウ素0.05mol/L、tert−ブチルピリジン0.3mol/Lのメトキシアセトニトリル溶液)を注入し色素増感型太陽電池を得た。この電池の光起電力は4.1mW/cm2であった。
【0039】
比較例4:
スクリーン印刷法(75ミクロンメッシュ)により金属酸化物分散液−3をガラス電極上に塗布して厚さ9ミクロンの金属酸化物膜を得た。しかしながら、得られた金属酸化物膜は、肉眼で確認できる大きさのひび割れを生じ、またその大部分がガラス電極上より剥離したために、これを用いて色素増感型太陽電池をすることができなかった。
【0040】
参考例3では、18ミクロンの金属酸化物膜を有する光活性電極を作製したが、この方法で得られた色素増感型太陽電池は、比較例2に示した従来法に従って熱処理した多孔質な金属酸化物を用いて作製した電池に近い性能が得られた。一方、比較例4では、従来法で厚い金属酸化物膜を有する光活性電極の作製を試みたが、性能の評価が可能な電極が得られなかった。この理由は、従来法では、膜厚が大きな金属酸化物の作製時には、緻密な金属酸化物膜から溶剤である水が蒸発する際の体積収縮が、膜厚が薄い場合(例えば、比較例1)より大きくなるために、多数のひび割れおよびガラス電極上からの剥離が発生したと考えられる。このように、噴霧装置を使用することで、10ミクロンを超える厚い金属酸化物膜を、一工程で作製することが可能である。
【0041】
実施例3:
まず、参考例3の方法で、酸化チタンをF3(昭和電工製)に代えた金属酸化物分散液(以下、「金属酸化物分散液−4」と称する。)、および同じく参考例3の方法で、酸化チタンをF1(昭和電工製)に代えた金属酸化物分散液(以下、「金属酸化物分散液−5」と称する。)を得た。次に、参考例3の方法で、金属酸化物分散液−4をシート状電極に塗布し、続いて、スプレーに供給する金属酸化物分散液を金属酸化物分散液−5に切り替えた。この操作により、F3からなる膜厚8ミクロンの金属酸化物膜に重なるF1からなる膜厚2ミクロンの光反射層を有する2層型の光活性電極を作製した。以下参考例3の方法に従って色素増感型太陽電池を得た。この電池の光起電力は4.0mW/cm2であった。
【0042】
比較例5:
実施例3で、金属酸化物分散液−4のみをシート状電極に塗布した光活性電極を作製した。酸化チタンF3からなる膜の厚さは10ミクロンであった。以下参考例3の方法に従って色素増感型太陽電池を得た。この電池の光起電力は3.7mW/cm2であった。
【0043】
実施例3では、光活性電極に光反射層を設け比較例5ではこれを行わなかったが、実施例3では、光反射層を形成したことによって光の利用効率が高まったために性能が向上した。また、実施例3では、一台のスプレーノズルを使用して、連続して2つの異なる酸化チタン層を形成することが可能であった。
【0044】
参考例4:
まず、厚さ0.1mmの真鍮板の中央にカッターナイフを使用して星形を切り抜くことでマスクを作製した。次に、これをシート状電極として、樹脂製導電性フィルム(トービ製、OTEC-110)を使用し、実施例3の方法で、まず金属酸化物分散液−5を、次に金属酸化物分散液−3を塗布することにより、2層からなる光活性電極を作製した。この時、金属酸化物分散液−5を塗布する工程で、シート状電極上にマスクを重ねて配置し、金属酸化物分散液−3を塗布する工程では、それを取り除いた。以下参考例3と同様の方法により色素増感型太陽電池を得た。この電池は、光照射面側に酸化チタンF1からなる白色の星形のデザインが確認できた。この電池の光起電力は3.0mW/cm2であった。
【0045】
参考例4にから明らかなように、一台の噴霧装置を用いて連続的にデザインを配した色素増感型太陽電池が作製できる。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、金属酸化物に有機物を添加せずにシート状電極上に金属酸化物の多孔質膜を形成することが可能であり、従って有機物の燃焼に伴うガスを発生させずに、ワレや基材からの剥離を生じない色素増感型太陽電池用光活性電極の作製が可能である。
また、多層あるいは連続に組成が変化した金属酸化物膜を有する、あるいはデザインを配した光活性電極を1工程で作製することができ、性能の高い光活性電極を安価かつ省工程で作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 標準的な色素増感型太陽電池の構成の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
1 負電極基材
2 導電膜
3 金属酸化物膜
4 増感色素
5 電解層
6 触媒層
7 導電膜
8 正電極基材
9 シート状電極
10 光活性電極
11 色素電極
12 対極
Claims (11)
- 金属酸化物微粒子と溶媒を必須成分とする金属酸化物分散液を、その組成を連続的あるいは不連続的に変化させつつ、シート状電極上に噴霧して塗布し、乾燥して金属酸化物の多孔質膜を形成することを特徴とする色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
- エアースプレー装置、インクジェット装置、あるいは超音波噴霧装置のいずれかの噴霧装置を用いて金属酸化物分散液を噴霧する請求項1記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
- 金属酸化物分散液をシート状電極上に塗布する工程と、これに続く乾燥工程とを交互に2回以上繰り返す請求項1記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
- 金属酸化物分散液をシート状電極上に塗布しながら、同時に塗膜を乾燥する請求項1または3記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
- 前記噴霧装置の噴霧口をシート状電極面に対して二次元に平行に移動させながら金属酸化物を噴霧して、シート状電極上に所定のパターンに象った金属酸化物膜を形成する請求項2記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
- 所定のパターンが、図形、文字、絵あるいは記号である請求項5記載色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
- シート状電極の面に、所定のパターンを象った開口部を有するマスクを重ね合わせた状態で金属酸化物分散液を塗布して、シート状電極上に所定のパターンに象った金属酸化物膜を形成する請求項1記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
- 所定のパターンが、図形、文字、絵あるいは記号である請求項7記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
- シート状電極として、請求項5または7記載の所定のパターンを象った金属酸化物膜を有する電極を使用する請求項1乃至4のいずれか記載の色素増感型太陽電池用光活性電極の製造方法。
- 請求項1乃至9のいずれか記載の方法で得られる色素増感型太陽電池用光活性電極。
- 請求項10記載の光活性電極を用いた色素増感型太陽電池。
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