JP4284780B2 - 横置き搭載エンジンの遮音構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に横置き搭載されたエンジンからの放射音を遮断するための遮音構造に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば実開平1―66439号公報に示されるように、車両に搭載されるエンジンのシリンダヘッドカバー(動弁室カバー)の上面に遮音カバーを取付固定し、この遮音カバーによってエンジンからの放射音を低減するようにしたものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ディーゼルエンジンにおいては、そのエンジンにより駆動される燃料噴射ポンプ(燃料噴射ポンプ)が付設されており、この燃料噴射ポンプがエンジンのクランク軸の回転に同期して作動されることで、エンジンの各気筒毎の噴射ノズルに高圧の燃料が供給されるようになっている。
【0004】
しかし、気筒内燃焼室に燃料を直接噴射するいわゆる直噴ディーゼルエンジンでは、副室に燃料を噴射する副室式ディーゼルエンジンに比べ、その燃料噴射圧が高いので、燃料噴射ポンプ自体が発する音(例えばスピルバルブの着座音等)も大きくなり、このポンプの作動音が騒音として車室内に侵入したり、車外に漏れたりするという問題がある。
【0005】
また、前記直噴ディーゼルエンジンにおいて、気筒内燃焼室に臨むようにインジェクタを設け、このインジェクタに対しコモンレールに蓄えた高圧の燃料を供給するいわゆる蓄圧式燃料供給系を備えたものでは、インジェクタの芯弁の着座音等がコモンレールを介して放射されるため、騒音がさらに大きくなる虞れがある。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前記のようにエンジンを車両に横置き搭載する場合に、騒音の放射源となる燃料供給系やその放射音を遮断するための遮音カバーの配置構成に工夫を凝らすことで、簡易かつ低コストでありながら、車室内に侵入したり車外に漏れたりする騒音を効果的に低減できる遮音構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成すべく、この発明では、横置き搭載エンジンの車体前後方向の一側には、通常、ラジエータが配置されていることに着目し、このラジエータとエンジンとを接続する冷却水ホースを有効利用して、主に燃料供給系から放射される騒音の遮断を図るようにした。
【0008】
具体的に、請求項1の発明では、車両における車室前方のエンジンルームに、出力軸が車幅方向に延びるようにエンジンを横置き搭載し、このエンジンに対し車体前後方向の一側にラジエータを配置するとともに、少なくともエンジン上部を覆うように遮音カバーを配設したエンジンの遮音構造を前提とする。そして、前記エンジンとラジエータとの間に、該エンジンへ高圧の燃料を供給する燃料供給系を配置し、前記エンジン内の冷却水通路と前記ラジエータとを接続する弾性部材からなる冷却水ホースを、前記燃料供給系のラジエータ側に隣接して設けるとともに、前記遮音カバーは、樹脂製の外側カバー部材と、該外側カバー部材の内側に固定されたウレタン製の内側遮音部材とからなるものとし、前記燃料供給系の上方も覆うように設けるとともに、前記外側カバー部材及び内側遮音部材のうち、少なくとも内側遮音部材の周縁部を、前記冷却水ホースにより当接状態で支持させ、さらに、前記内側遮音部材の周縁部には、前記冷却水ホースとの当接部位よりもラジエータ側において該冷却水ホースよりも下方まで延びて、前記燃料供給系の少なくとも一部をラジエータからの熱風から遮蔽するように壁部を設ける構成とする。
【0009】
前記の構成により、燃料供給系の上方が、エンジン上部からラジエータ側に延びる遮音カバーにより覆われるとともに、該燃料供給系のラジエータ側に隣接するように冷却水ホースが配設され、この冷却水ホースによって、前記遮音カバーの周縁部が当接状態で保持されている。すなわち、騒音の放射源である燃料供給系を遮音カバーと冷却水ホースとによって、上方から側方に亘って包み込むような構造になっているので、燃料供給系から放射される騒音を効果的に減衰遮断することができる。
【0010】
しかも、冷却水ホースは弾性部材からなるものなので、この冷却水ホースに遮音カバーを押し付けることで、該遮音カバーを安定して保持するとともに、走行風等による遮音カバーの振動を抑えて、びびり音の発生を防止することができる。また、そのように、特別の部材を別途に用いることなく、既存の冷却水パイプを遮音カバーの保持部材として有効利用するとともに、その冷却水ホース自体によっても騒音を減衰遮断するようにしているので、前記の作用効果を容易にかつ低コストで実現できる。
【0011】
さらに、遮音カバーを、樹脂製の外側カバー部材と、該外側カバー部材の内側に固定されたウレタン製の内側遮音部材とからなるものとし、該外側カバー部材及び内側遮音部材のうち、少なくとも内側遮音部材の周縁部を冷却水ホースに当接させているので、ウレタン製の内側遮音部材により騒音を極めて効果的に減衰遮断することができるとともに、内側遮音部材を冷却水ホースに当接させることで、遮音カバー保持性能の向上が図られ、かつ冷却水ホースまでを含めた騒音の減衰遮断性能もさらに高まる。
【0012】
加えて、内側遮音部材の周縁部には、冷却水ホースとの当接部位よりもラジエータ側において該冷却水ホースよりも下方にまで延びる壁部を設けて、燃料供給系の少なくとも一部をラジエータからの熱風から遮蔽するようにしているので、燃料噴射系の温度上昇を抑制することもできる。
【0013】
請求項2の発明では、燃料供給系は高圧燃料噴射ポンプを有するものであり、冷却水ホースは前記高圧燃料噴射ポンプの近傍に配置するとともに、該高圧燃料噴射ポンプの少なくとも上方を内側遮音部材で覆う構成とする。この構成により、高圧燃料噴射ポンプから発せられる大きな作動音を効果的に減衰遮断することができる。
【0014】
請求項3の発明では、エンジンは、気筒内燃焼室に燃料を直接、噴射供給する高圧インジェクタを備えた直噴ディーゼルエンジンであり、燃料供給系は、前記高圧インジェクタに接続されたコモンレールを有するものとする。そして、冷却水ホースを前記コモンレールの近傍に配置するとともに、該コモンレールの少なくとも上方を内側遮音部材で覆う構成とする。この構成により、高圧インジェクタの芯弁の着座音等がコモンレールから放射されても、この放射騒音を効果的に減衰遮断することができる。
【0015】
請求項4の発明では、請求項1における遮音カバーをエンジンに固定するためのマウント部材を設け、該マウント部材を、遮音カバーの外側カバー部材及び内側遮音部材を重ねて貫通するカラーと、このカラーに内挿されかつエンジンに締結される締結ボルトとを有するものとし、前記カラーの外側を前記外側カバー部材の貫通孔に内嵌合させる一方、内側端部に内側遮音部材を外側カバー部材に対し保持する保持部を設ける構成とする。
【0016】
この構成によれば、遮音カバーをエンジンに固定するためのマウント部材を利用して、遮音カバーの外側カバー部材と内側遮音部材とを接着しなくても、該内側遮音部材を外側カバー部材に対して保持させることができる。このため、遮音カバーを廃棄するときには、材質の異なる外側カバー部材と内側吸音部材とを容易に分離させて、別々に処理することができるので、廃棄処分における作業性を向上させて、廃棄コストを低減できる。また、内側吸音部材だけが先に劣化したとしても、その劣化した内側吸音部材だけの交換が容易に行える。つまり、遮音カバーの環境性能の向上が図られる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1〜図4において、1は本発明の実施形態に係る4気筒直噴型ディーゼルエンジンであって、このエンジン1は4つの気筒2,2,…を有するシリンダブロック3と、その上に組み付けられたシリンダヘッド4と、該シリンダヘッド4上面に組み付けられたシリンダヘッドカバー5と、シリンダブロック3の下面に組み付けられたオイルパン6とを有する。各気筒2内には、燃焼室を区画しかつクランク軸7に連結されるピストン8が往復動可能に嵌挿され、この気筒2内の燃焼室に燃料噴射ノズル9から燃料がダイレクトに噴射供給されるようになっている。尚、図1における符号10は吸気弁を示し、また、符号11は排気弁を示している。
【0018】
そして、このエンジン1は、車両における車室前方のエンジンルーム(いずれも図示せず)に、クランク軸7(出力軸)が車幅方向に延びるように横置きに搭載され、その車体前側(図1及び図2における右側)にはエンジン1の各気筒2内の燃焼室に吸気を供給する吸気マニホルド13と、エンジン1の各気筒2毎の燃料噴射ノズル9に高圧配管15(図3及び図4のみに示す)を介して高圧の燃料を圧送供給する燃料噴射ポンプ14とが配設されている。一方、エンジン1の車体後側(図1及び図2における左側)には、気筒2内の燃焼室から排気ガスを排出するための排気マニホルド16が配設されている。
【0019】
前記クランク軸7の一端部には、図2に示すように、歯付プーリからなるクランクプーリ19が回転一体に取付固定されている。このクランクプーリ19と、エンジン1に内蔵したウォータポンプ(図示せず)の回転軸20aに取付けた歯付プーリからなるウォータポンププーリ20と、エンジン1のカム軸21の一端部に取付けた歯付プーリからなるカムプーリ22と、前記燃料噴射ポンプ14の回転軸14aに取付けた歯付プーリからなる燃料噴射ポンププーリ23との間に、歯付ベルト24(タイミングベルト)が巻き掛けられており、クランク軸7の駆動によりウォータポンプ、カム軸21及び燃料噴射ポンプ14をそれぞれ同期して回転させるようになっている。
【0020】
また、エンジン1の車体前側には、発電用のオルタネータ26と空調機用のコンプレッサ(本体は図示せず)とが上側から下側に向かって順に配置され、オルタネータ26の回転軸26aにはVプーリからなるプーリ28が、またコンプレッサの回転軸27には同様のプーリ29がそれぞれ回転一体に取付固定されている。これら両プーリ28,29と、クランク軸7の一端部において前記クランクプーリ19よりも外側に取付けられた駆動プーリ30との間にはVベルトからなる駆動ベルト31が巻き掛けられており、オルタネータ26及びコンプレッサ等の補機類を駆動するようになっている。
【0021】
図3及び図4に示す如く、エンジン1よりも車体前方(両図の下方)の車両前端部には、ラジエータ33が配設されている。このラジエータ33とエンジン1とは、冷却水パイプ34及びアッパーホース35(冷却水ホース)並びにロアホース36によってそれぞれ接続されており、エンジン1のウォータジャケット内の高温の冷却水が前記冷却水パイプ34及びアッパーホース35によって、ラジエータ33に排出される一方、ウォータポンプの動作により、ラジエータ33で冷やされた低温の冷却水が前記ロワホース36によってエンジン1のウォータジャケットに戻されるようになっている。
【0022】
詳しくは、前記冷却水パイプ34の後端部はエンジン1のシリンダヘッド4の一端部に固定される一方、前端側は燃料噴射ポンプ14の車体前側まで延びて、燃料噴射ポンプ14に沿うように車体左側に向かって湾曲している。そして、該湾曲部34aに近い冷却水パイプ34の前端部にアッパーホース35の後端部が接続されていて、このアッパーホース35は前記燃料噴射ポンプ14の車体前側に隣接するように車幅方向に向かって延び、途中から車体前方に向かって湾曲して、前端部がラジエータ33に接続されている。言い換えると、前記冷却水パイプ34及びアッパーホース35は、燃料噴射ポンプ14の車体右側及び車体前側を取り囲むように配置されている。また、その冷却水パイプ34における湾曲部34aの外側側面には外方に向かって突出するブラケット連結部37が、また湾曲部34aの内側側面には上側に突出するカバー連結部39(図1参照)がそれぞれ一体に形成され、この各連結部37,39にはそれぞれ上下方向に貫通する取付孔38,40が形成されている。
【0023】
さらに、前記燃料噴射ポンプ14は、図4にも示すように、エンジン1の車体前側面における車体右側寄りの位置にシリンダブロック3及びシリンダヘッド4に亘って、例えば鋳鉄製のポンプブラケット42により取付固定されている。この燃料噴射ポンプ14には、エンジン1の各気筒2毎の噴射噴射ノズル9に高圧の燃料を分配供給する4本の高圧配管15,15,…が接続されるとともに、図外の燃料タンクと連通する燃料供給管16及び燃料戻し管17が接続されている。また、前記ポンプブラケット42の上部には、車体前方に向かって延びる延長部が設けられ、該延長部の上面に、前記冷却水パイプ34における湾曲部34aのブラケット連結部37の貫通孔38に対応して、ボルト孔43が形成されている。そして、このボルト孔43と冷却水パイプ34のブラケット連結部37の貫通孔38とを上下に一致させて、この両者に図2に示すように締結ボルト44を挿通螺合することで、ポンプブラケット42と冷却水パイプ34とを一体的に連結するようにしている。
【0024】
本発明の特徴部分として、図3に示す如く上方から見て、エンジン1のシリンダヘッドカバー5上方から車体前方の燃料噴射ポンプ14上方にかけての範囲全体を覆うように、該燃料噴射ポンプ14の運転音やエンジン1の燃焼音等を遮断しかつ吸収するための遮音カバー46が配設されている。この遮音カバー46は、車体前後方の向略中央部において、2つの支持部47,47にてエンジン1のシリンダヘッドカバー5に取付けられている一方、遮音カバー46の前部は、図1や図5にも示すように、車体前側でかつ右側寄りの1つの支持部48にて前記冷却水パイプ34の湾曲部34a内側にあるカバー連結部39に取付けられている。
【0025】
この各支持部47,48は、図6にも示すように、いずれも下側に凹陥する有底筒状のもので、その各々の底部にはそれぞれゴムブッシュ49及びカラー部材50を嵌め込んだボルト孔51が形成されている。そして、図1や図5に示すように、このボルト孔51と、シリンダヘッドカバー5の取付孔5a、又は冷却水パイプ34の湾曲部34a内側のカバー連結部39における貫通孔40とを一致させて、両者に前記カラー部材50を通して締結ボルト52を挿通螺合することで、遮音カバー46がシリンダヘッドカバー5及び冷却水パイプ34に対し取付け固定されている。前記ゴムブッシュ49,カラー部材50及び締結ボルト52により、遮音カバー46をエンジン1に固定するためのマウント部材が構成されている。
【0026】
また、遮音カバー46は、図1、図5〜図7に示すように、樹脂製の外側カバー部材54とウレタン製の内側遮音部材55とからなるもので、外側カバー部材54の周縁部には下側に垂れ下がったフランジが設けられていて、このフランジに囲まれるように、外側カバー部材54の内側面に内側遮音部材55が重ね合されている。この内側遮音部材55は、特に1〜10キロヘルツの騒音の透過を効果的に遮断する高密度のウレタンゴムからなり、車体後側の後半部分がシリンダヘッドカバー5の上面に密着して放射音を減衰遮断するとともに、このシリンダヘッドカバー5の振動自体を抑える制振機能も発揮する。
【0027】
一方、前記内側遮音部材55の車体前側の前半部分は、図7に明らかなように、燃料噴射ポンプ14の上方を略完全に覆っていて、この燃料噴射ポンプ14や吸気マニホルド13の上部にまで至る十分な厚みを有し、該燃料噴射ポンプ14の発する作動音を効果的に減衰遮断するようになっている。また、前記内側遮音部材55の車体前側の周縁部55aは外側カバー部材84のフランジよりも下方に向かって延び、アッパーホース35の上半分を覆うように密着状態で当接している。言い換えると、内側遮音部材55の前側周縁部55aは、アッパーホース35により当接状態で弾性的に支持されている。
【0028】
また、前記内側遮音部材55における車体前側かつ車体右側寄りの周縁部55aの前端部には、アッパーホース35よりも下方に延びて燃料噴射ポンプ14の上下方向略中央部の付近に至る舌状の壁部55bが設けられている。そして、この舌状壁部55bは、車体前方のラジエータ33を通過した熱風から燃料噴射ポンプ14を遮蔽して、燃料や燃料噴射ポンプ14自体の温度上昇を抑制するという機能を有する。
【0029】
さらに、前記内側遮音部材55は、遮音カバー46をエンジン1に固定する締結ボルト52のカラー部材50によって、外側カバー部材54に固定されている。すなわち、前記図6に拡大して示すように、カラー部材50は円筒部50aとその下端部に設けられた大径のつば部50bとからなり、前記円筒部50aの上端側が、上述の如く、外側カバー部材54の各支持部47,48の底部に形成されたボルト孔51にゴムブッシュ49を介して嵌合固定される一方、カラー部材50下端のつば部50bは、内側遮音部材55を下方から支えて外側カバー部材54に対して保持する保持部とされている。これにより、外側カバー部材54と内側遮音部材55とを接着しなくても、それらを一体として、エンジン1への組付け時にも容易に取り扱うことができる。
【0030】
したがって、この実施形態においては、直噴ディーゼルエンジン1が車両前部のエンジンルームに横置きに搭載され、この横置きエンジン1の車体前側に高圧の燃料を圧送するための燃料噴射ポンプ14が配置されているので、この燃料噴射ポンプ14をエンジン1の後側に配置する場合よりも車室から遠ざけることができ、大きな作動音を発する直噴ディーゼルエンジン用の燃料噴射ポンプ14であっても、車室内の騒音レベルを下げるとができる。
【0031】
また、前記燃料噴射ポンプ14の上方が遮音カバー46により覆われるとともに、該燃料噴射ポンプ14の車体右側から車体前側にかけてを冷却水パイプ34及びアッパーホース35が取り囲み、かつこのアッパーホース35が燃料噴射ポンプ14の車体前側に隣接するように配置されていて、このアッパーホース35によって遮音カバー46の内側遮音部材55の周縁部55aが当接状態で支持されている。つまり、騒音の放射源である燃料噴射ポンプ14を遮音カバー46の内側遮音部材55やアッパーホース35等によって包み込むような構造になっているので、燃料噴射ポンプ14から発せられる大きな作動音を効果的に減衰遮断することができる。
【0032】
しかも、前記アッパーホース35は適度な弾性を有するゴム製のものなので、前記のようにアッパーホース35に内側遮音部材55の周縁部55aを押し付けて保持させることで、該内側遮音部材55を安定して保持しながら、走行風等による遮音カバー46の振動を抑えて、びびり音の発生を防止することができる。そして、そのように、特別の部材を別途に用いることなく、既存の冷却水パイプ34やアッパーホース35を有効利用することで、前記の作用効果を容易にかつ低コストで実現できる。
【0033】
さらに、前記遮音カバー46の後半部分において、内側遮音部材55がエンジン1のシリンダヘッドカバー5の上面に密着状態で当接されているので、高密度ウレタンゴムからなる内側遮音部材55によりシリンダヘッドカバー5の振動を抑えて、騒音の発生そのものを軽減できる上に、このシリンダヘッドカバー5からの放射音を十分に減衰させて、車室内へ侵入する騒音や車外へ漏れる騒音をさらに低減させることができる。
【0034】
加えて、前記遮音カバー46を、外側カバー部材54及び内側遮音部材55からなるものとし、かつそれらを接着せずに、エンジン1へのマウント部材の一部を利用して組み付けるようにしている。このため、遮音カバー46のエンジン1への組付け時の作業性を確保しながら、遮音カバー46を廃棄するときには、材質の異なる外側カバー部材54と内側吸音部材55とを容易に分離させて、別々に処理することができ、これにより、廃棄処分のときの作業性を向上させて、廃棄コストを低減できる。また、内側吸音部材55だけが先に劣化したとしても、その劣化した内側吸音部材55のみの交換が容易に行える。つまり、遮音カバー46の環境性能を向上できる。
【0035】
さらにまた、前記のように、外側カバー部材54に対し内側遮音部材55を接着せず、容易に脱着できるようにしているので、その内側遮音部材55として密度や材質の異なる複数種のものを予め準備し、その中から選択して組付けるようにすることが可能になる。また、騒音の遮断には高密度のものが効果的であることを考慮して、前記内側遮音部材55として、密度や材質の異なる複数種の部材を層状に組付けて用いる用にすることも可能になり、このようにすれば、騒音の遮断性能と耐熱性能とを併せて向上できる。
【0036】
尚、本発明は、エンジンの各気筒毎に高圧インジェクタを設け、この高圧インジェクタに対しコモンレールに蓄えた高圧の燃料を供給するようにした蓄圧式燃料供給系を備えたものにも適用可能であり、この場合には、高圧インジェクタの芯弁の着座音等がコモンレールを介して放射されることを考慮して、遮音カバー46の内側遮音部材55により少なくともコモンレールの上方を覆うとともに、冷却水パイプ34やアッパーホース35を、コモンレールの周囲を取り囲むように配置するようにすればよい。
【0037】
【発明の効果】
以上説明した如く、請求項1の発明に係る横置き搭載エンジンの遮音構造によると、車両に、高圧の燃料供給系が設けられたエンジンを横置きに搭載する場合に、該燃料供給系の上方を覆うように遮音カバーを配設するとともに、燃料供給系に隣接するように冷却水ホースを配設し、この冷却水ホースによって前記遮音カバーの周縁部を当接状態で保持するようにしたことにより、騒音の放射源である燃料供給系を遮音カバーと冷却水ホースとによって包み込むような構造として、騒音を効果的に減衰遮断することができる。しかも、弾性部材からなる冷却水ホースに遮音カバーを押し付けて保持させることで、該遮音カバーの振動を抑えて、びびり音の発生を防止することができる。そして、そのようにして既存の冷却水パイプ等を有効利用することにより、前記の効果を容易にかつ低コストで実現できる。
【0038】
また、遮音カバーを、ウレタン製の内側遮音部材を有するものとすることで、騒音を極めて効果的に減衰遮断できる。また、内側遮音部材を冷却水ホースに当接させることで、この冷却水ホースによる遮音カバーの保持性能が向上し、しかも、冷却水ホースまでを含めた騒音の減衰遮断性能をさらに高めることができる。
【0039】
その上さらに、内側遮音部材の周縁部に、冷却水ホースとの当接部位よりもラジエータ側において該冷却水ホースよりも下方にまで延びる壁部を設けて、車体前方のラジエータを通過した熱風から燃料供給系の少なくとも一部を遮蔽することで、燃料供給系の温度上昇を抑制することができる。
【0040】
請求項2の発明によると、燃料供給系の高圧燃料噴射ポンプから発せられる大きな作動音を効果的に減衰遮断できる。
【0041】
請求項3の発明によると、インジェクタの芯弁の着座音等がコモンレールから放射されるような構造であっても、その放射騒音を効果的に減衰遮断できる。
【0042】
請求項4の発明によると、遮音カバーをエンジンに固定するためのマウント部材を有効利用して、遮音カバーの外側カバー部材と内側遮音部材とを接着せずに、それらを一体的に組付けることができるようにしたので、エンジンへの組付け時の作業性を確保しながら、材質の異なる2つの部材を容易に分離させることができるようになり、よって、遮音カバーの環境性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態においてエンジンに対する燃料噴射ポンプ、冷却水パイプ及び遮音カバーの配置構成を車両の右側から見た状態で示す一部破断側面図である。
【図2】 エンジンを補機類と共に車両の右側から見た状態で示す側面図である。
【図3】 エンジンに対する燃料噴射ポンプ、冷却水パイプ、遮音カバー及びラジエータの配置構成を示す平面図である。
【図4】 燃料噴射ポンプの配置状態を示す拡大平面図である。
【図5】 図3のX−X線断面図である。
【図6】 遮音カバーのマウント部材の構成を示す拡大断面図である。
【図7】 図3のY−Y線断面図である。
【符号の説明】
1 エンジン
7 クランク軸(出力軸)
14 燃料噴射ポンプ
33 ラジエータ
35 アッパーホース(冷却水ホース)
46 遮音カバー
49 ゴムブッシュ
50 カラー部材
50b つば部(保持部)
52 締結ボルト
54 外側カバー部材
55 内側遮音部材
55a 周縁部
Claims (4)
- 車両における車室前方のエンジンルームに、出力軸が車幅方向に延びるようにエンジンを横置き搭載し、このエンジンに対し車体前側にラジエータを配置するとともに、少なくともエンジン上部を覆うように遮音カバーを配設したエンジンの遮音構造において、
前記エンジンとラジエータとの間に、該エンジンへ高圧の燃料を供給する燃料供給系が配置され、
前記エンジン内の冷却水通路と前記ラジエータとを接続する弾性部材からなる冷却水ホースが、前記燃料供給系のラジエータ側に隣接して設けられ、
前記遮音カバーは、樹脂製の外側カバー部材と、該外側カバー部材の内側に固定されたウレタン製の内側遮音部材とからなり、前記燃料供給系の上方も覆うように設けられるとともに、前記外側カバー部材及び内側遮音部材のうち、少なくとも内側遮音部材の周縁部が前記冷却水ホースにより当接状態で支持されており、
さらに、前記内側遮音部材の周縁部には、前記冷却水ホースとの当接部位よりもラジエータ側において該冷却水ホースよりも下方まで延びて、前記燃料供給系の少なくとも一部をラジエータからの熱風から遮蔽するように壁部が設けられていることを特徴とする横置き搭載エンジンの遮音構造。 - 請求項1において、
燃料供給系は高圧燃料噴射ポンプを有し、
冷却水ホースが前記高圧燃料噴射ポンプの近傍に配置されるとともに、該高圧燃料噴射ポンプの少なくとも上方が内側遮音部材で覆われていることを特徴とする横置き搭載エンジンの遮音構造。 - 請求項1において、
エンジンは、気筒内燃焼室に燃料を直接噴射するインジェクタを備えた直噴ディーゼルエンジンであり、
燃料供給系は、前記インジェクタに接続されたコモンレールを有し、
冷却水ホースが前記コモンレールの近傍に配置されるとともに、該コモンレールの少なくとも上方が内側遮音部材で覆われていることを特徴とする横置き搭載エンジンの遮音構造。 - 請求項1又は2のいずれかにおいて、
遮音カバーをエンジンに固定するためのマウント部材が設けられ、
前記マウント部材は、遮音カバーの外側カバー部材及び内側遮音部材を重ねて貫通するカラー部材と、このカラー部材に内挿されかつエンジンに締結される締結ボルトとを有し、
前記カラー部材の一端側が前記外側カバー部材の貫通孔に内嵌合される一方、該カラー部材の他端部には、内側遮音部材を外側カバー部材に対し保持する保持部が設けられていることを特徴とする横置き搭載エンジンの遮音構造。
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