JP4283425B2 - 高温強度および磁気特性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

高温強度および磁気特性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビのブラウン管サポートフレーム材などに用いられる、高温強度および磁気特性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
テレビのブラウン管サポートフレーム材などに用いられるフェライト系ステンレス鋼板は地磁気等の影響を防ぐため、磁気特性、すなわち透磁率の高い材料が求められる。このため、例えば特開昭63−45350号公報には、フェライト系ステンレス鋼にSi、Alを添加する技術が開示されている。この技術により磁気特性は向上するが、Siの過度の添加は鋼板の加工性を劣化させ、サポートフレーム用に曲げ加工する際に割れが生じ易くなる。またAlの添加はブラウン管内部に封入されるガスと反応し、シールド特性を損なう問題がある。
【0003】
他の観点から磁気特性を高める技術として、特開平2−182834号公報には、フェライト系ステンレス鋼の最終焼鈍を第1段600〜800℃、第2段850〜1200℃の温度範囲で行うことにより、ゴス方位({110}<001>)を発達させる方法が開示されている。しかしながら2段階の温度範囲で最終焼鈍を行うことは操業上非常に困難であり、さらに製造コストが増大するという問題がある。
【0004】
さらに、テレビのブラウン管サイズが大型化するのに伴い、サポートフレーム材には高温強度が要求されてきているが、これらの先行技術はこの要求を満足するものでない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題を解決するものであり、高温強度および磁気特性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高温強度および磁気特性に及ぼすフェライト系ステンレス鋼の鋼成分、製造方法を詳細に検討した。その結果、鋼成分を適正に規定し、さらに熱間圧延での板厚、巻取温度、焼鈍条件、冷間圧延率を適正範囲とすることで、高温強度および磁気特性が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、
Cr:11〜14%、 C ≦0.08%、
Si≦1.0%、 Mn≦1.0%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼を熱間圧延後、鋼板を650℃以上で巻取り、さらに巻取後の鋼板を650〜800℃の温度範囲で10分間以上焼鈍し、その後、圧下率5〜20%の冷間圧延を施すことを特徴とする高温強度および磁気特性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。および
(2)質量%で、
Cr:11〜14%、 C ≦0.08%、
Si≦1.0%、 Mn≦1.0%、
Ni≦0.5%、 N ≦0.025%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼を熱間圧延後、鋼板を650℃以上で巻取り、さらに巻取後の鋼板を650〜800℃の温度範囲で10分間以上焼鈍し、その後、圧下率5〜20%の冷間圧延を施すことを特徴とする高温強度および磁気特性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、サポートフレーム材の高温強度を確保する手段として、合金成分の適正化と共に、軽圧下の冷間圧延を行うことで、加工歪による強度向上を図るものである。
以下に本発明を詳細に説明する。
まず本発明の成分限定理由を説明する。成分含有量は質量%である。
Cr:11〜14%とする必要がある。優れた耐食性、耐熱性を得るために11%以上の含有が必要である。しかしながら、14%を超えて含有してもこれらの効果は飽和し、また磁気特性が劣化するため好ましくない。
【0009】
C:0.08%以下とする必要がある。0.08%を超えて含有すると、形成される炭化物が磁気特性を劣化させるため、上限を0.08%とした。
【0010】
Si:1.0%以下とする必要がある。脱酸材として有効であると共に磁気特性を向上させる元素であるが、1.0%を超えて含有すると加工性を劣化させるため、上限を1.0%とした。
【0011】
Mn:1.0%以下とする必要がある。脱酸材として有効であるが、1.0%を超えて含有すると耐食性が劣化するため、上限を1.0%とした。
【0012】
Ni:特に優れた高温強度が要求される場合には0.5%以下の範囲で含有することが有効である。ただし0.5%を超えて含有してもその効果は飽和し、またCrと同様に磁気特性の劣化をもたらすため好ましくない。。
【0013】
N:特に優れた磁気特性が要求される場合には、0.025%以下とすることが有効である。0.025%を超えて含有すると、形成される窒化物が磁気特性を劣化させるため、上限を0.025%とした。
【0014】
以上の成分を有する鋼を鋳造して鋼片とした後、熱間圧延を施す。熱間圧延後の鋼板は650℃以上で巻取る必要がある。巻取温度が650℃未満では再結晶、粒成長が十分に伸展せず、磁気特性が劣化するため下限を650℃とした。
【0015】
巻取後の鋼板を、650〜800℃の温度範囲で10分間以上焼鈍する必要がある。焼鈍温度が650℃未満では再結晶、粒成長が十分に進行せず、磁気特性が劣化するため、下限を650℃とした。また焼鈍温度が800℃を超えると鋼中のオーステナイト相分率が増加し、焼鈍後の冷却中にマルテンサイト相が生成し、磁気特性が劣化するため、上限を800℃とした。また焼鈍時間が10分間未満では再結晶、粒成長が十分に進行せず磁気特性が劣化するため、下限を10分間とした。
【0016】
焼鈍後に圧延率5〜20%の軽圧下による冷間圧延を施す必要がある。圧延率5%以上の冷間圧延を施すことで、導入される加工歪、すなわち結晶の転位が、高温保持時にも完全には開放されず、変形に伴う転位の移動を妨げ、その結果、高温強度が向上すると考えられる。しかしながら5%未満の圧延率ではこの効果が現れないため、下限を5%とした。また20%を超える圧延率では磁気特性が劣化するため、上限を20%とした。
【0017】
【実施例】
表1に示すフェライト系ステンレス鋼A、Bを溶製し、連続鋳造で250mm厚の鋳片とした。この鋳片を1200℃に加熱し、表2に示す板厚、巻取温度で熱間圧延した後、表2に示す条件で焼鈍し、さらに表2に示す圧下率で冷間圧延した。得られた鋼板の高温強度として300℃での降伏強度測定結果を表2に示す。また得られた鋼板から30mm×300mmのエプスタイン試験片を、その長辺が圧延方向と平行になるように切出し、水素75%−窒素25%雰囲気中で550℃で15分間保持の歪取り焼鈍を施し、直流磁化測定装置を用いて磁気特性を測定した。最大比透磁率の測定結果を表2に示す。
【0018】
本発明法に従うNo.1、2、3、10、11、12は、高温強度および磁気特性がともに優れている。鋼AよりもNi量を増やしN量を低減した鋼Bの方が高温強度が高くなり、磁気特性が良好である。
一方、熱間圧延での巻取温度が本発明範囲よりも低いNo.4、13については磁気特性が劣っている。また巻取後の焼鈍条件が本発明範囲から外れているNo.5、6、7、14、15、16についても、磁気特性が劣っている。さらに冷間圧延の圧下率が本発明範囲よりも小さいか、冷間圧延を施さないNo.8、9、17、18については、高温強度が劣っている。
【0019】
【表1】
Figure 0004283425
【0020】
【表2】
Figure 0004283425
【0021】
【発明の効果】
以上に説明した通り、本発明により高温強度および磁気特性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造が可能になる。本発明は、製造者のみならず本鋼板を利用する者にとっても多大な利益を得ることができ、産業上の価値は極めて高い。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    Cr:11〜14%、
    C ≦0.08%、
    Si≦1.0%、
    Mn≦1.0%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼を熱間圧延後、鋼板を650℃以上で巻取り、さらに巻取後の鋼板を650〜800℃の温度範囲で10分間以上焼鈍し、その後、圧下率5〜20%の冷間圧延を施すことを特徴とする高温強度および磁気特性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  2. 質量%で、
    Cr:11〜14%、
    C ≦0.08%、
    Si≦1.0%、
    Mn≦1.0%、
    Ni≦0.5%、
    N ≦0.025%
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼を熱間圧延後、鋼板を650℃以上で巻取り、さらに巻取後の鋼板を650〜800℃の温度範囲で10分間以上焼鈍し、その後、圧下率5〜20%の冷間圧延を施すことを特徴とする高温強度および磁気特性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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