JP4283395B2 - し尿処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、処理水を便器の洗浄水として再利用できる循環型のし尿処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
イベント会場、建築現場等に設置する水洗式の仮設トイレは、洗浄水の確保や処理水の廃棄が困難な場合が多いため、処理水を洗浄水として再利用できる循環型のし尿処理装置を利用するのが有効である。
【0003】
上記循環型のし尿処理装置は、処理水が人目に触れる形で再利用されるので、処理水に不快な臭いが残存するものは不適当である。よって、上記循環型のし尿処理装置では、し尿中の有機物を分解除去する性能は、一般に高度なものが求められる。
【0004】
しかし、イベント会場や建築現場等では、設置スペースに制限のあることも多いので、上記し尿処理装置は、大掛かりな構成のものは採用し難い。また、イベント会場や建築現場等では、薬液化学処理を用いると、化学物質によって周辺環境を汚染するおそれがあるので、微生物処理を用いたし尿処理装置を用いるのが一般的である。
【0005】
そこで、従来、処理液を曝気して、処理液中の有機物を好気性微生物の代謝作用によって分解する曝気法と、濾材を充填した反応槽中に処理液を散水し、生物学的処理によって有機物を分解する散水濾床法を組み合わせ、各処理方法の利点を生かすように構成したし尿処理装置が提案されている。以下、この従来のし尿処理装置について簡単に説明する。
【0006】
図14は、上記従来のし尿処理装置の一例を示す模式図である。従来のし尿処理装置101は、例えば、水洗式の便器102と、この水洗式の便器102よりし尿を導入し下方から曝気する曝気槽103と、この曝気槽103からポンプ104の作用により処理液を導入し生物学的処理を行う反応槽105と、この反応槽105を通過して得られる処理水をポンプ106の作用により導入し貯溜しておく貯水槽107よりなり、この貯水槽107に溜めておいた処理水を、ポンプ108の作用により便器102の洗浄水を溜めておく水槽109へと循環させるものである。
【0007】
この従来のし尿処理装置101では、曝気槽103の底部には、曝気装置103aが設けられている。すなわち、曝気装置103aは、ブロアー103bから空気を送り込むことにより、曝気槽103を下方から曝気できるものである。この曝気装置103aより曝気される空気とし尿が十分に接触することにより、曝気槽103内は、好気性微生物が活発に活動できる環境となる。
【0008】
反応槽105の内部の上方には、ポンプ104の作用により処理液が導入される散水器105aが取付けられている。この散水器105aには固定式のノズル105bが複数取付けられていて、その長さ及び内径は均一である。そして、散水器105aの下方には、例えば合成樹脂製のチップ等で形成される濾材105cが充填されている。この濾材105cには生物膜が付着し、散水器105aより散水される処理液と接触して、生物学的処理が行われるのである。
【0009】
また、従来、曝気法と、嫌気性の微生物の代謝作用により有機物を分解する嫌気性処理とを組み合わせ、各処理方法の利点を生かすように構成したし尿処理装置も開示されている。
【0010】
例えば、特開平9−1171号公報では、便器からのし尿を含んだ排水を生物学的に処理する一またはそれ以上の生物学的分解手段と、該生物学的分解手段によって処理された処理水を循環させて前記便器の洗浄水として再利用する手段とを備えてなる循環浄化装置であって、前記一またはそれ以上の生物学的分解手段において、好気性処理と嫌気性処理とが行われる排水循環浄化装置が公開されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のし尿処理装置101では、曝気槽において、曝気装置103aより曝気された空気がし尿中をすぐに上昇してしまうので、空気と処理液の接触時間が短く、好気性微生物の代謝作用による有機物の分解性能を十分に引き出せないという問題があった。
【0012】
また、上記従来のし尿処理装置101では、反応槽105において、散水された処理液が、反応槽105の内周面を伝って濾材105cと十分に接触せずに下方に流出してしまうことがあるため、反応槽105における生物学的処理の効率が悪いという問題もあった。
【0013】
さらに、反応槽105において、散水器105aのノズル105bの長さ及び内径が均一に構成されているので、ノズル105bの先端から濾材105cに散水される処理液の沁み込み範囲に重複が生じたり、処理液が沁み込まない箇所が生じて、処理効率が悪いという問題もあった。
【0014】
上記の問題点は、何れも処理液と微生物と空気、あるいは処理液と微生物の接触時間を十分に確保できないことに起因するものであり、微生物処理を用いたし尿処理装置において、微生物が本来有している有機物の分解性能を十分に引き出せていないという点で共通する課題である。
【0015】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、処理液と微生物と空気、あるいは処理液と微生物の接触時間を十分に確保でき、し尿中の有機物の分解性能を可及的に向上できるし尿処理装置を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明に係るし尿処理装置は、曝気槽において、曝気口より曝気される空気が上昇する位置に、この空気と接触する面が空気の上昇方向に対して斜め向きに配置された板部材を取付け、この板部材の上方には、空気と接触する面が空気の上昇方向に対して直下の板部材とは逆向きの斜め方向に配置された板部材を少なくとも一以上取付け、さらに、前記板部材は、曝気口より曝気される空気と接触する面が前記空気の上昇方向に対して斜め向きに配置された誘導部と、前記空気と接触する面が前記空気の上昇方向に対して平行に配置された仕切部からなり、この仕切部の下端の位置は、直下の板部材の誘導部の上端よりも曝気槽の内周面寄りでかつ下方となるようにしている。そして、このようにすることで、本発明に係るし尿処理装置では、処理液と微生物と空気の接触時間を十分に確保できるので、有機物の分解性能は可及的に向上する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係るし尿処理装置は、曝気槽内において、曝気口より曝気される空気が上昇する位置に、この空気と接触する面が空気の上昇方向に対して斜め向きに配置された板部材を取付け、この板部材の上方には、空気と接触する面が空気の上昇方向に対して直下の板部材とは逆向きの斜め方向に配置された板部材を少なくとも一以上取付け、さらに、前記板部材は、曝気口より曝気される空気と接触する面が前記空気の上昇方向に対して斜め向きに配置された誘導部と、前記空気と接触する面が前記空気の上昇方向に対して平行に配置された仕切部からなり、この仕切部の下端の位置は、直下の板部材の誘導部の上端よりも曝気槽の内周面寄りでかつ下方となるように構成したものである。
【0018】
ここで、曝気槽内に取付ける板部材の形状、取付け位置、取付け枚数は特に限定されない。但し、板部材の形状は、曝気口より曝気される空気と接触する面が空気の上昇方向に対して斜め向きに配置された誘導部と、空気と接触する面が空気の上昇方向に対して平行に配置された仕切部で構成し、両部材は、仕切部の下端の位置が直下の板部材の誘導部の上端よりも曝気槽の内周面寄りでかつ下方となるように配置する。上記のように構成し配置しておけば、直下の板部材の誘導部の上端から上昇する空気を仕切部によって確実に受けとめ、次の板部材に引き継ぐことができるからである。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を添付図面に示す一実施例に基いて説明する。図1及び図4は、本実施例の嫌気性分解槽及び曝気槽の部分断面図、図2は、図1を平面から見た状態の説明図、図3は、図1を左側面から見た状態の部分断面図、図5は、図4を左側面から見た状態の部分断面図、図6は、本実施例の反応槽の部分断面図、図7は、本実施例の反応槽及び散水器の断面図、図8は、本実施例の散水器の説明図、図9は、本実施例を正面から見た状態の断面図、図10は、本実施例を平面から見た状態の断面図、図11は、本実施例を左側面から見た状態の断面図、図12は、本実施例を右側面から見た状態の断面図、図13は、本実施例の模式図である。
【0020】
最初に、本実施例の全体構成を図9〜12を用いて説明する。本実施例のし尿処理装置Sは、トイレ部T及び分解処理部Bよりなり、トイレ部Tを収容する筐体7a内には水洗式の便器1と汚水槽2が、分解処理部Bを収容する筐体7b内には嫌気性分解槽3a〜3d、曝気槽4a〜4d、反応槽5、貯水槽6が設置されている。なお、11は、トイレ部Bの出入り口に設けたドアを示している。
【0021】
汚水槽2は、便器1より導入されるし尿が一時的に貯溜される槽であり、その底部には汚水ポンプ8aへと繋がる流出口21が設けられている。図9〜11に示すように、汚水槽2は、し尿が流出口21の方向に流れるように、流出口21に向けて勾配を有するように形成されている。
【0022】
反応槽5は、円筒形の槽であり、図10に示すように、分解処理部Bにおいて最も容積を占めている。嫌気性分解槽3a〜3d及び曝気槽4a〜4dは、反応槽5と筐体7bの四隅との間に設置されている。嫌気性分解槽3a〜3d及び曝気槽4a〜4dは、図9及び図12に示すような搭状の槽であって、この内3aと4a、3bと4b、3cと4c、3dと4dは一側面が接合しており一体に形成されている。貯水槽6は、図9〜10及び図12に示すように、反応槽5の下部に設置された方形の槽である。
【0023】
嫌気性分解槽3a〜3dは、曝気槽4a〜4dよりも幅及び奥行きが小さい槽である。本実施例では、嫌気性分解槽3a〜3d及び曝気槽4a〜4dは、図10に示すように、嫌気性分解槽3a〜3dが取付けられている面を筐体7bの四隅の方向に向けるように配置している。このような配置とした理由は、イベント会場や建築現場等に設置される仮設トイレでは、設置スペースに制限のあることも多いので、分解処理部Bのスペースを有効に使うことにより、装置の小型化を図るためである。
【0024】
各部の寸法を詳述すると、筐体7a及び7bを合わせた全体の寸法は、幅260cm×高さ280cm×奥行き130cmであり、この内、トイレ部Tの筐体7aは幅110cmを、分解処理部Bの筐体7bは幅150cmを占めている。また、曝気槽4a〜4dの寸法は、幅30cm×奥行き20cm×高さ200cm、嫌気性分解槽3a〜3dの幅及び奥行きは10cmであり、貯水槽6の寸法は、幅85cm×奥行き100cm×高さ40cmである。
【0025】
次に、本実施例におけるし尿処理の流れを図13を用いて説明する。し尿は、水洗式の便器1より汚水槽2に導入され、ここで一時的に貯溜される。汚水槽2と嫌気性分解槽3aは連結管9aで繋がっており、汚水槽2に貯溜されたし尿は連結管9aの途中に設けた汚水ポンプ8aの作用によって嫌気性分解槽3aに導入される。なお、10は、嫌気性分解槽3aが満杯の場合に、し尿を汚水槽2の方へ戻すために設けた流量調整器を示している。
【0026】
嫌気性分解槽3a〜3d及び曝気槽4a〜4dには、それぞれ流入口又は流出口が設けられており、図13に示すように、連結管9b〜9dにより勾配を設けて連結されている。よって、嫌気性分解槽3aに導入された処理液は、重力の作用によって各槽を順に通過する。
【0027】
嫌気性分解槽3a〜3dは、導入されたし尿又は処理液が空気と接触しない密閉された構造であり、嫌気性微生物が活発に活動できる環境となっている。したがって、導入されたし尿又は処理液中の蛋白質、脂肪、炭水化物等の有機物は、嫌気性微生物の代謝作用により、低級脂肪酸、アルコール等の中間生成物に分解される。
【0028】
曝気槽4a〜4dは、底部に曝気口41a〜44dが設けられており、この曝気口41a〜44dには、曝気ポンプ8bから空気が送り込まれる。すなわち、曝気槽4a〜4dは、下方からの曝気により空気が豊富に存在するので、好気性微生物が活発に活動できる環境となっている。よって、導入された処理液中の蛋白質、脂肪、炭水化物等の有機物は、好気性微生物の代謝作用によって、低級脂肪酸、アルコール等の中間生成物や、メタン、二酸化炭素等の生物ガス、水に分解される。
【0029】
曝気槽4dの流出口は、連結管9eを介して、反応槽5の内部に取付けた散水器51と勾配を設けて連結されている。よって、曝気槽4dの流出口より流出される処理液は、重力の作用により散水器51へと導入される。なお、52は、反応槽5の内部に充填された濾材を示しており、本実施例では杉チップが用いられている。
【0030】
本発明では、濾材52の材質は、特に限定するものではないが、本発明者が試験を行ったところによると、本実施例のように杉チップを用いるのが有効であることが判明している。これは、杉チップの場合、例えば欅等の他の樹木のチップと比較すると多孔質であり、チップ表面に微細な孔が多数存在するので、生物膜が付着し易いためと考えられている。
【0031】
なお、本実施例のし尿処理装置Sでは、処理水に不快な臭いが残存することはなく、洗浄水として再利用することについて何ら支障はないが、処理水に杉チップの色素が薄い褐色の色として付着することがある。しかし、濾材52としてボイルされた杉チップを用いた場合には、処理水に色が付着することはなくなり、最も望ましいことが判明している。
【0032】
散水器51から散水された処理液は、濾材52の表面に付着した生物膜と接触しながら反応槽5内を下降し、ここで生物学的処理がなされる。反応槽5を通過した処理水は、貯水槽6に導入され一時的に貯溜される。この貯水槽6と便器1の洗浄水を溜めておく水槽12は、連結管9fにより繋がっており、貯水槽6に貯溜された処理水は、加圧ポンプ8cの作用によって水槽12に送られて、洗浄水として再利用される。
【0033】
なお、反応槽5は生物学的処理がなされる槽であるが、冬期になって気温が低下すると、微生物の活動が低下するおそれがある。この問題点を回避するには、貯水槽6内の処理水をヒーターによって30〜35℃の温度を保つように構成すると共に、反応槽5の周囲に温水コイルを螺旋状に巻き付け、ポンプを用いて貯水槽6内の温められた処理水を温水コイルに循環させ、反応槽5の温度の低下を防ぐ方法が有効である。
【0034】
次に、嫌気性分解槽3a及び曝気槽4aを表した図1〜3を用いて、本発明の主要部である曝気槽4aについて説明する。本実施例の曝気槽4aには、図1に示すように、板部材42a及び43aが取付けられている。板部材42aは、曝気口41aより曝気される空気が上昇する位置に取付けられ、空気と接触する面が空気の上昇方向に対して斜め向きになるように配置されている。また、この板部材42aの上方には、空気と接触する面が空気の上昇方向に対して直下の板部材42a又は43aとは逆向きの斜め方向に配置された板部材43aが、計5枚取付けられている。なお、44aは、外部から処理液の水位を確認するために設けた水位確認器を、45aは、連結管9bを介して曝気槽4bへと繋がる曝気槽4aの流出口を示している。
【0035】
嫌気性分解槽3aは、図2に示すように、曝気槽4aよりも幅及び奥行きが小さい槽であり、その一側面は、図3に示すように、曝気槽4aに接着しており曝気槽4aと一体に構成されている。なお、31aは、連結管9aを介して汚水槽2からし尿が導入される嫌気性分解槽3aの流入口を、32aは、嫌気性分解槽3aと曝気槽4aを繋ぐ接続口を示している。
【0036】
本実施例のし尿処理装置Sは、上記のように構成した板部材42a及び43aを曝気槽4a内に取付けることにより、曝気口41aから曝気される空気が、板部材42a及び43aと接触しながら迂回して上昇するので、空気が処理液と十分に接触せずに上昇してしまうことはなくなる。よって、処理液と微生物と空気の接触時間が十分に確保できるので、好気性微生物の代謝作用による有機物の分解性能は可及的に向上する。
【0037】
本発明では、板部材42a及び43aの形状や配置を特に限定するものではないが、本実施例では、板部材42aは、曝気口41aより曝気される空気と接触する面がこの空気の上昇方向に対して斜め向きに配置された誘導部42a1と、空気と接触する面が空気の上昇方向に対して平行に配置された仕切部42a2で形成している。また、板部材43aも板部材42aと同様に、誘導部43a1と仕切部43a2で形成している。
【0038】
そして、板部材43aは、仕切部43a2の下端の位置が、直下の板部材42aの誘導部42a1、あるいは直下の板部材43aの誘導部43a1の上端の位置よりも、曝気槽4の内周面寄りでかつ下方となるように配置している。
【0039】
板部材42a及び43aを上記のように構成し配置した理由は、直下の板部材42aの誘導部42a1、あるいは直下の板部材43aの誘導部43a1の上端から上昇する空気を、板部材43aの仕切部43a2によって確実に受けとめることができるからである。すなわち、板部材42a及び43a間で空気を引き継ぐ際に、空気が板部材42a及び43aから外れて上昇してしまうことを防ぐことができるので、板部材42a及び板部材43aは、本実施例のように構成し配置するのが望ましい。
【0040】
なお、本実施例では、図1に示すように、板状の部材をくの字状に形成して、誘導部42a1及び43a1と、仕切部42a2及び43a2を一体に構成したものを開示しているが、これらの部材は別体に構成しても良い。
【0041】
本実施例では、板部材42a及び43aを取付ける方法は、図3に示すように仕切部42a2及び43a2を曝気槽4aの奥行き方向に延長し、曝気槽4aの内周面に固定する方法を採用している。また、板部材43aは、板部材42aの上方に計5枚取付ける例を開示している。しかし、板部材42a及び43aの取付け方法や、板部材43aの取付け枚数については、曝気槽4aの形状や大きさ等にも応じて適宜決定すれば良く、特に限定するものではない。
【0042】
また、本実施例では、曝気槽4aにおいて、曝気口41a付近の底部46aの形状は、曝気口41aを頂点とする逆向きの錘状としている。底部46aをこのような形状とした理由は、例えばこの部分を柱状に構成して、その底面に曝気口41aを設けると、曝気口41aの周辺に、空気と処理液が十分に接触しない澱みが生じてヘドロ化し、曝気処理の効率が低下するのを回避するためである。本実施例のように底部46aを曝気口41aを頂点とする逆向きの錘状に構成しておけば、処理液は空気と十分に接触し、曝気槽4aにヘドロが溜まることはないので、曝気処理の効率は向上する。
【0043】
次に、図4〜5を用いて嫌気性分解槽3b及び曝気槽4bについて説明する。図4〜5において、45bは、連結管9bを介して曝気槽4aから処理液が導入される曝気槽4bの流入口を、31bは、連結管9cを介して嫌気性分解槽3cへと繋がる嫌気性分解槽3bの流出口である。図4〜5に示すように、流入口45bを設ける位置は、流出口45aよりも低く、流出口31bよりも高い位置としている。
【0044】
すなわち、嫌気性分解槽3b及び曝気槽4bでは、曝気処理と嫌気性微生物による分解処理の順番を逆転している点が、嫌気性分解槽3a及び曝気槽4aとは異なっている。なお、41bは曝気口を、42bは誘導部42b1と仕切部42b2で形成される板部材を、43bは誘導部43b1と仕切部43b2で形成される板部材を、44bは水位確認器を、46bは曝気槽4bの底部を、32bは嫌気性分解槽3bと曝気槽4bを繋ぐ接続口を示しているが、これらの構成については、既に説明した図1〜3における構成と特に変るところはない。
【0045】
次に、図6〜8を用いて、反応槽5及び散水器51について説明する。本実施例の反応槽5は、図6に示すように、上面の中央には、連結管9eを介して曝気槽4dから処理水が導入される流入口53を有し、この流入口53の下部には散水器51を取付け、反応槽5の内周面には、斜め下方向に突出した水切りガイド54を計4箇所周設した構成である。なお、52は、反応槽5内に充填された濾材を示している。
【0046】
本実施例のし尿処理装置Sでは、上記のように構成した反応槽5を採用したので、散水器51より散水された処理液が反応槽5の内周面を伝って落下することがあるとしても、水切りガイド54の作用によって、処理液を反応槽5の中心方向に誘導することができる。よって、処理液が反応槽5の内周面を伝って、濾材52と十分接触することなく貯水槽6に流出してしまうことはなくなり、反応槽5における生物学的処理の処理効率を可及的に向上することができる。
【0047】
なお、本実施例では、図6に示す位置に水切りガイド54を計4箇所周設した例を開示しているが、水切りガイド54を設ける数及び位置は、反応槽5の形状及び大きさ等にも応じて適宜決定すれば良く、特に限定するものではない。
【0048】
本実施例の散水器51は、図7〜8に示すように、分配部57の底面の周縁付近に大内径ノズル55と小内径ノズル56を各4本ずつ、交互かつ放射状に取付けた構成である。分配部57は、図8に示すような円筒状の部材であり、その底面には、図7に示すように、大内径ノズル55に繋がる流出口57aと、小内径ノズル56に繋がる流出口が57bが開口している。
【0049】
大内径ノズル55のノズルの長さは、図7に示すように、反応槽5の中心と反応槽5の内周面の中間付近から反応槽5の内周面寄りの位置に散水し得る長さである。また、本実施例では、内径100cmの反応槽5に対して、大内径ノズル55の内径は2cmとしている。
【0050】
大内径ノズル55の内径を2cmとした理由は、上記の条件の場合には、大内径ノズル55より散水される処理液が濾材52中に沁み込む範囲は、概ね図7の55aに示す範囲となり、流出口57aから反応槽5の内周面までの距離を直径とする略円形となるからである。但し、大内径ノズル55の内径の最適値は、反応槽5の内径との比率により変るので、大内径ノズル55の内径に応じて最適なものを選択する必要がある。
【0051】
そして、本実施例では、小内径ノズル56の内径は1.5cmとし、そのノズルの長さは、図7に示すように、大内径ノズル55の散水位置よりもさらに反応槽の内周面寄りの位置に散水し得る長さとしている。
【0052】
上記の条件の場合には、小内径ノズル56より散水される処理液が、濾材52中に沁み込む範囲は、概ね図7の56aに示す範囲となり、大内径ノズル55の沁み込み範囲55aと重複することはない。また、大内径ノズル55では処理液を沁み込ませることが出来ない反応槽5の内周面寄りの箇所に、効率的に処理液を染み込ませることができる。このような最適な沁み込み範囲55a及び56aを得るためには、小内径ノズル56の内径は、大内径ノズルの30〜80%の範囲とする必要がある。
【0053】
本実施例のし尿処理装置Sでは、分配部57の底面の周縁付近に上記のように構成した大内径ノズル55と小内径ノズル56を各4本ずつ、交互かつ放射状に取付けた散水器51を採用したので、濾材52に散水される処理液の沁み込み範囲55a及び56aに重複が生じることはなくなり、処理液が浸透しない箇所の面積も減らせるので、反応槽5における生物学的処理の処理効率を可及的に向上することができる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るし尿処理装置は、曝気槽において、曝気口より曝気される空気が上昇する位置に、この空気と接触する面が空気の上昇方向に対して斜め向きに配置された板部材を取付け、この板部材の上方には、空気と接触する面が空気の上昇方向に対して直下の板部材とは逆向きの斜め方向に配置された板部材を少なくとも一以上取付け、さらに、前記板部材は、曝気口より曝気される空気と接触する面が前記空気の上昇方向に対して斜め向きに配置された誘導部と、前記空気と接触する面が前記空気の上昇方向に対して平行に配置された仕切部からなり、この仕切部の下端の位置は、直下の板部材の誘導部の上端よりも曝気槽の内周面寄りでかつ下方となるように配置したので、処理液と微生物と空気の接触時間が十分に確保でき、有機物の分解性能を可及的に向上することができるという効果を有する。
【0055】
また、反応槽の内周面に水切りガイドを周設したし尿処理装置を用いた場合には、反応槽中に散水された処理液が、反応槽の内周面を伝って、濾材と十分接触することなく貯水槽に流出してしまうことはなくなる。さらに、散水器のノズルを、大内径ノズルと小内径ノズルで構成したし尿処理装置を用いた場合には、濾材に散水される処理液の沁み込み範囲に重複が生じることはなくなり、処理液が浸透しない箇所の面積も減らせるので、有機物の分解性能をさらに向上することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の嫌気性分解槽及び曝気槽の部分断面図である。
【図2】図1を上面から見た状態の説明図である。
【図3】図1を左側面から見た状態の部分断面図である。
【図4】本実施例の曝気槽及び嫌気性分解槽の部分断面図である。
【図5】図4を左側面から見た状態の部分断面図である。
【図6】本実施例の反応槽の部分断面図である。
【図7】本実施例の反応槽及び散水器の断面図である。
【図8】本実施例の散水器の説明図である。
【図9】本実施例を正面から見た状態の断面図である。
【図10】本実施例を平面から見た状態の断面図である。
【図11】本実施例を左側面から見た状態の断面図である。
【図12】本実施例を右側面から見た状態の断面図である。
【図13】本実施例の模式図である。
【図14】従来のし尿処理装置の模式図である。
【符号の説明】
S し尿処理装置
1 便器
2 汚水槽
3a、3b、3c、3d 嫌気性分解槽
4a、4b、4c、4d 曝気槽
41a、41b 曝気口
42a、42b、43a、43b 板部材
42a1、43a1 誘導部
42a2、43a2 仕切部
5 反応槽
51 散水器
52 濾材
54 水切りガイド
55 大内径ノズル
56 小内径ノズル
57 分配部
6 貯水槽
Claims (3)
- 処理水を便器の洗浄水として再利用できる循環型のし尿処理装置であって、水洗式の便器と、し尿を一時的に貯溜する汚水槽と、この汚水槽から導入されるし尿中の有機物を嫌気性微生物の代謝作用により分解する嫌気性分解槽と、この嫌気性分解槽で処理された処理液を導入し下方から曝気して好気性微生物の代謝作用により分解する曝気槽と、この曝気槽で処理された処理液を導入し散水する散水器と、内部には濾材が充填されており前記散水器により上方から散水される処理液と前記濾材とを接触させて生物学的処理を行う反応槽と、この反応槽で処理されて得られる処理水を貯溜しておく貯水槽からなり、前記曝気槽内には、曝気口より曝気される空気が上昇する位置に、この空気と接触する面が前記空気の上昇方向に対して斜め向きに配置された板部材を取付け、この板部材の上方には、前記空気と接触する面が前記空気の上昇方向に対して直下の板部材とは逆向きの斜め方向に配置された板部材を少なくとも一以上取付け、さらに、前記板部材は、曝気口より曝気される空気と接触する面が前記空気の上昇方向に対して斜め向きに配置された誘導部と、前記空気と接触する面が前記空気の上昇方向に対して平行に配置された仕切部からなり、この仕切部の下端の位置は、直下の板部材の誘導部の上端よりも曝気槽の内周面寄りでかつ下方となるように配置したことを特徴とするし尿処理装置。
- 反応槽の内周面に、斜め下方向に突出した水切りガイドを周設したことを特徴とする請求項1記載のし尿処理装置。
- 散水器のノズルは、反応槽の中心と反応槽の内周面の中間付近から反応槽の内周面寄りの位置に散水し得る大内径ノズルと、ノズルの内径を前記大内径ノズルの内径の30〜80%の範囲とし、前記大内径ノズルの散水位置よりもさらに反応槽の内周面寄りの位置に散水し得る小内径ノズルからなり、この小内径ノズルと前記大内径ノズルを分配部に交互かつ放射状に取付けたことを特徴とする請求項1又は2記載のし尿処理装置。
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