JP4339992B2 - し尿処理装置用の蒸発反応槽 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、し尿浄化処理をした処理水を便器の洗浄水として再利用することが可能な循環型のし尿処理装置に用いる蒸発反応槽に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
観光地、イベント会場、高速道路のサービスエリア、建築現場等に設置する水洗式のトイレは、洗浄水の確保や処理水の廃棄が困難な場合が多いため、処理水を洗浄水として再利用できる循環型のし尿処理装置を利用するのが有効である。また、上記のような場所では、薬液化学処理を用いると、化学物質によって周辺環境を汚染するおそれがあるので、微生物処理を用いたし尿処理装置を用いるのが望ましいと考えられている。
【0003】
そこで、従来、処理液を曝気して、処理液中の有機物を好気性微生物の代謝作用によって分解する曝気法と、濾材を充填した反応槽中に処理液を散水し、生物学的処理によって有機物を分解する散水濾床法を組み合わせ、各処理方法の利点を生かすように構成したし尿処理装置が提案されている。
【0004】
このうち、本発明者が出願した特願平11−322192号では、散水濾床法において、散水された処理液が、反応槽の内周面を伝って濾材と十分に接触せずに下方に流出してしまう問題点(以下、「短絡現象」という。)を解決することを目的とした反応槽が開示されている。すなわち、図5は、特願平11−322192号のし尿処理装置の反応槽を側面から見た状態の部分断面図、図6は、同出願に係るし尿処理装置の反応槽を平面から見た状態の断面図であるが、上記発明では、反応槽100の内周面に斜め下方向に突出した水切りガイド101を周設するようにしたので、散水器102より散水された処理液が反応槽100の内周面を伝って落下しようとしたときは、水切りガイド101の作用によって、処理液を反応槽100の中心方向に誘導し、反応槽100に充填された濾材103と再び接触させることが可能になっている。
【0005】
したがって、上記発明では、散水された処理液が反応槽100の内周面を伝って濾材103と十分接触することなく下方に流出してしまう短絡現象によって、反応槽100における生物学的処理の処理能力が低下することは回避できるという効果が得られる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特願平11−322192号のし尿処理装置は、反応槽100の壁材を特定していないものであるが、反応槽100内の生物学的処理の処理能力を向上するには空気が必要であるので、反応槽の壁材は、通気性を考慮すると、表面に多数の孔が開けられたパンチング材を用いるのが望ましい。なお、以下、壁材にパンチング材を用いた反応槽のことを、通常の反応槽と区別して、「蒸発反応槽」と言うものとする。
【0007】
ところが、この蒸発反応槽を用いた場合、トイレを利用する利用者の数が一時的に急増し、蒸発反応槽における生物学的処理が過負荷状態となると、処理液が濾材103の中を通過する速度が次第に低下し、やがて、処理液は、パンチング材の孔から蒸発反応槽の外側に流出し、蒸発反応槽の外周面を伝って落下してしまうという新たなトラブルを生じることがあった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、壁材がパンチング材で構成された蒸発反応槽において、トイレを利用する利用者の数が一時的に急増した場合でも、上記トラブルを回避することが可能なし尿処理装置用の蒸発反応槽を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明では、壁材がパンチング材で構成されており、かつ、内周面に斜め下方向に突出するように水切りガイドが周設されたし尿処理装置用の蒸発反応槽において、この蒸発反応槽の外周面に、前記水切りガイドを周設した位置から斜め上方向に突出するように水受けガイドを周設するようにしたのである。
【0010】
このようにすることで、本発明に係る蒸発反応槽では、トイレを利用する利用者の数が一時的に急増し、蒸発反応槽における生物学的処理が過負荷状態となって、処理液がパンチング材の孔から蒸発反応槽の外周面に流出してきた場合でも、流出した処理液は、蒸発反応槽の外周面に斜め上方向に突出するように周設した水受けガイドによって受け止められ、この水受けガイドの作用によって、再び反応槽の中へ誘導されるから、上記した従来の問題点を回避することが可能になっている。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係るし尿処理装置用の蒸発反応槽の壁材は、表面に多数の孔が開けられたパンチング材で構成されており、その材質は、例えば、ステンレス製のものを用いることができる。また、水切りガイド及び水受けガイドの材質は、特に限定をするものではないが、パンチング材と同じ材質のものを用いて構成しても差し支えはない。
【0012】
また、本発明に係る蒸発反応槽では、水切りガイド及び水受けガイドを設ける位置や枚数は、特に限定をするものではない。水切りガイド及び水受けガイドを設ける位置や枚数は、蒸発反応槽の形状や大きさに応じて、適宜最適な位置や枚数を決定すれば良い。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を一実施例に基いて説明する。図1は、本実施例の蒸発反応槽を側面から見た状態の部分断面図、図2は、本実施例の蒸発反応槽を平面から見た状態の断面図、図3は、本実施例の蒸発反応槽及びその他の槽の配置を表した平面図、図4は、本実施例のし尿処理の流れを表した模式図である。
【0014】
先ず、図4を用いて、本実施例におけるし尿処理の流れを説明する。し尿は、水洗式の便器51より汚水槽52に導入され、ここで一時的に貯溜される。汚水槽52と嫌気性分解槽53aは連結管55aで繋がっており、汚水槽52に貯溜されたし尿は、連結管55aの途中に設けた汚水ポンプ56の作用によって嫌気性分解槽53aに導入される。
【0015】
嫌気性分解槽53a〜53d及び曝気槽54a〜54dには、それぞれ流入口又は流出口が設けられており、連結管55bによって勾配を設けて連結されている。よって、嫌気性分解槽53aに導入された処理液は、重力の作用によって各槽を順に通過することとなる。
【0016】
嫌気性分解槽53a〜53dは、導入されたし尿又は処理液が空気と接触しない密閉された構造であり、嫌気性微生物が活発に活動できる環境となっている。したがって、導入されたし尿又は処理液中の蛋白質、脂肪、炭水化物等の有機物は、嫌気性微生物の代謝作用により、低級脂肪酸、アルコール等の中間生成物に分解される。
【0017】
曝気槽54a〜54dは、底部に曝気口が設けられており、この曝気口には、曝気ポンプ57から空気が送り込まれる。すなわち、曝気槽54a〜54dは、下方からの曝気により空気が豊富に存在するので、好気性微生物が活発に活動できる環境となっている。よって、導入された処理液中の蛋白質、脂肪、炭水化物等の有機物は、好気性微生物の代謝作用によって、低級脂肪酸、アルコール等の中間生成物や、メタン、二酸化炭素等の生物ガス、水に分解される。
【0018】
曝気槽54dの流出口は、連結管55bを介して、蒸発反応槽1の内部に取付けた散水器2と勾配を設けて連結されている。よって、曝気槽54dの流出口より流出される処理液は、重力の作用によって散水器2へと導入される。なお、3は、蒸発反応槽1の内部に充填された濾材を示しており、本実施例では杉チップが用いられている。また、蒸発反応槽1の壁材は、表面に多数の孔が開けられたパンチング材で構成されている。
【0019】
本発明では、濾材3の材質は特に限定するものではないが、本発明者が試験を行ったところによると、杉チップを用いるのが有効であることが判明している。これは、杉チップの場合、例えば欅等の他の樹木のチップと比較すると多孔質であり、チップ表面に微細な孔が多数存在するので、生物膜が付着し易いためと考えられる。
【0020】
また、杉チップを充填する方法は特に限定するものではないが、本発明者が試験を行ったところによると、チップ径が3mm以下の層と、チップ径が3〜5mmの範囲の層を約10cm毎に交互に積層する方法が、蒸発反応槽の浄化能力を保つ点で有効であることが判明している。これは、チップ径を全て3mm以下のものにすると、処理液中に含まれるトイレットペーパーの屑等が一箇所に堆積して、浄化能力を低下させてしまい、一方、チップ径を全て3〜5mmの範囲のものにすると、処理液の通過速度が速すぎて浄化能力が低下するのに対し、上記のようにチップ径を変化させて積層する方法を採用すると、トイレットペーパーの屑等は一箇所に堆積せずに分散し、しかも、処理液の通過速度を最適な状態に保つことができるためと考えられる。
【0021】
さらに、散水器2の散水口は、充填した杉チップの上方に配置させるよりも、杉チップの中に埋設させる方が、散水された処理液が杉チップの中に染み込まずに蒸発反応槽1の外に流出するトラブルを回避できる点で望ましい。これは、散水器2の散水口を杉チップの上方に配置し、処理液を滴下させる方法だと、杉チップの表面に処理液中に含まれるトイレットペーパーの屑等が堆積し、これが空気と接触して乾燥し、膜を形成して、散水された処理液が杉チップの中に染み込まなくなるトラブルが発生する虞があるのに対し、散水器2の散水口を杉チップの中に埋設する方法だと、処理液中に含まれるトイレットペーパーの屑等は空気と接触せず、乾燥しないので、杉チップの表面に膜が形成されないためと考えられる。
【0022】
そして、散水器2から散水された処理液は、濾材3の表面に付着した生物膜と接触しながら蒸発反応槽1内を下降し、ここで生物学的処理がなされる。蒸発反応槽1を通過した処理水は、貯水槽58に導入され一時的に貯溜される。この貯水槽58と、便器51の洗浄水を溜めておく水槽59は、連結管55cによって繋がっており、貯水槽58に貯溜された処理水は、加圧ポンプ60の作用によって水槽59に送られて、洗浄水として再利用される。
【0023】
図3を用いて、各槽の配置を説明すると、し尿処理装置はトイレ部T及び分解処理部Bよりなり、トイレ部Tを収容する筐体61内には水洗式の便器51と汚水槽52が、分解処理部Bを収容する筐体62内には嫌気性分解槽53a〜53d、曝気槽54a〜54d、本実施例の蒸発反応槽1、貯水槽58が設置されている。本実施例の蒸発反応槽1は、円筒形の槽であり、図3に示すように、分解処理部Bにおいて最も大きな容積を占めている。
【0024】
次に、図1〜2を用いて、本実施例の蒸発反応槽1の構造について説明する。本実施例の蒸発反応槽1の壁材は、図1〜2に示すように、表面に多数の孔が開けられたパンチング材11で構成されているので、槽内の通気性が確保されている。蒸発反応槽1の上方には、連結管55bを介して曝気槽54dから処理液が導入される流入口14を設け、この流入口14の下部には散水器2を取付けている。そして、蒸発反応槽1の内周面には、斜め下方向に突出した水切りガイド12を計8箇所周設し、蒸発反応槽1の外周面には、上記水切りガイド12を周設した位置から斜め上方向に突出するように水受けガイド13を周設している。なお、図1では図示していないが、蒸発反応槽1の中には、濾材3として杉チップが充填されている。
【0025】
本実施例では、上記のように構成した蒸発反応槽1を採用したので、先ず、散水器2より散水された処理液が、蒸発反応槽1の内周面を伝って落下するときには、水切りガイド12の作用によって、処理液を蒸発反応槽1の中心方向に誘導することができる。
【0026】
そして、トイレを利用する利用者の数が一時的に急増し、処理液がパンチング材の孔から蒸発反応槽1の外周面に流出してきた場合でも、本実施例では、蒸発反応槽1の外周面に水受けガイド13を周設したので、流出した処理液は、蒸発反応槽1の外周面に斜め上方向に突出するように周設された水受けガイド13によって受け止められ、この水受けガイド13の作用によって、再び蒸発反応槽1の中へ誘導される。
【0027】
さらに、水受けガイド13は、水切りガイド12を周設した位置から斜め上方向に突出するように、蒸発反応槽1の外周面に周設したので、水受けガイド13により再び蒸発反応槽1の中に誘導された処理液は、蒸発反応槽1の内周面を短絡することはなく、引き続き水切りガイド12の作用によって、蒸発反応槽1の中心方向へ誘導される。したがって、本実施例の蒸発反応槽1では、上記した何れのケースにおいても、処理液が濾材3と十分接触することなく貯水槽58に流出してしまうことはなくなり、短絡現象によって、蒸発反応槽1における生物学的処理の処理能力が低下するのを回避することができる。
【0028】
なお、本実施例では、図1に示すように、水切りガイド12及び水受けガイド13を等間隔に計8箇所周設した例を開示しているが、水切りガイド12及び水受けガイド13を設ける位置及び枚数は、蒸発反応槽1の形状や大きさ等に応じて適宜決定すれば良く、特に限定するものではない。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、壁材がパンチング材で構成されており、かつ、内周面に斜め下方向に突出するように水切りガイドが周設されたし尿処理装置用の蒸発反応槽において、この蒸発反応槽の外周面に、前記水切りガイドを周設した位置から斜め上方向に突出するように水受けガイドを周設したので、トイレを利用する利用者の数が一時的に急増し、蒸発反応槽における生物学的処理が過負荷状態となって、処理液がパンチング材の孔から蒸発反応槽の外周面に流出してきた場合でも、処理液は、水受けガイドの作用によって、再び反応槽の中へと誘導することができる。したがって、蒸発反応槽を用いた場合に見られた従来の問題点を回避できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の蒸発反応槽を側面から見た状態の部分断面図である。
【図2】本実施例の蒸発反応槽を平面から見た状態の断面図である。
【図3】本実施例の蒸発反応槽及びその他の層の配置を表した平面図である。
【図4】本実施例のし尿処理の流れを表した模式図である。
【図5】特願平11−322192号のし尿処理装置の反応槽を側面から見た状態の部分断面図である。
【図6】特願平11−322192号のし尿処理装置の反応槽を平面から見た状態の断面図である。
【符号の説明】
1 蒸発反応槽
11 パンチング材
12 水切りガイド
13 水受けガイド
Claims (1)
- 壁材がパンチング材で構成されており、かつ、内周面に斜め下方向に突出するように水切りガイドが周設されたし尿処理装置用の蒸発反応槽において、この蒸発反応槽の外周面に、前記水切りガイドを周設した位置から斜め上方向に突出するように水受けガイドを周設したことを特徴とするし尿処理装置用の蒸発反応槽。
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