以下、本発明に係る船外機の一実施の形態を図1ないし図22によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る船外機の側面図、図2は同じく平面図、図3はアッパーケーシング上部の断面図、図4は図3におけるアッパーケーシング上部のIV−IV線断面図、図5はアッパーケーシング下部とロアケーシングの断面図、図6は図5におけるVI−VI線断面図、図7は図5におけるVII−VII線断面図、図8は図5におけるVIII−VIII線断面図である。
図9はスイベルブラケットの断面図、図10は図9におけるX−X線断面図、図11は図9におけるXI−XI線断面図、図12は取付部材を船体左側の側部に取付けた状態を示す断面図、図13はスイベルブラケットをクランプブラケットに対して回動させた状態を示す断面図、図14は図9におけるXIV−XIV線断面図、図15は図9におけるXV−XV線断面図である。図16〜図18はスラストブラケットの動作を説明するための断面図、図19は航走中に推進装置に衝撃が加えられたときの状態を示す断面図である。図20は本発明に係る船外機を取付ける位置を説明するための平面図、図21はスイベルブラケットの別の実施の形態を示すためのXI−XI線断面相当の断面図、図22は船尾板に船外機を取付けた形態を示す平面図である。
これらの図において、符号1で示すものは本発明に係る船外機である。この船外機1は、エンジン2によってプロペラ3を駆動する構成の推進装置4と、この推進装置4を船体5に取付けるための取付部材6とから構成されている。前記エンジン2が本発明でいう動力ユニットを構成している。
前記推進装置4は、後述する取付部材6に支持されたアッパーケーシング11と、このアッパーケーシング11の上に搭載された前記エンジン2と、このエンジン2を覆うカウリング12と、前記アッパーケーシング11の下端部に取付けられたロアケーシング13と、このロアケーシング13に回転自在に支持された前記プロペラ3などによって構成されている。
前記アッパーケーシング11は、アルミニウム合金を材料として鋳造によって形成されており、図3〜図5に示すように、エンジン2を支持する上端部14と、この上端部14から下方に延びる円筒状を呈する軸部15と、この軸部15の下端から下方に延びる平坦部16とが一体に形成されている。前記平坦部16は、図7および図8に示すように、前後方向の中央部の幅が両端部より広くなるとともに相対的に前後方向に長くなる断面翼状を呈するように形成されている。この平坦部16の前端部と後端部は、それぞれ先端側に向かうにしたがって幅が漸次狭くなるように形成されている。これにより、アッパーケーシング11内部に十分な断面積の中空部17を形成できるとともに、航走時水没される部分の水抵抗を小さくできる。この平坦部16には、従来の船外機に設けられているような、アッパーケーシングから後方プロペラ上方まで延びてプロペラ3に水面から空気が巻き込まれるのを防ぐ、いわゆるキャビテーションプレートは形成されていない。
また、この中空部17はマフラーとして機能する。詳述すると、前記中空部17は、アッパーケーシング11の上端部に取付けられたエンジン2によって上端部の開口が閉塞され、下端部にロアケーシング13が接続されることによってロアケーシング13の排気通路18に連通されている。前記エンジン2は、排気口2a(図3,9参照)が前記中空部17内に向かって開口するように形成されている。ロアケーシング13の排気通路18は、プロペラ3の下方に突設されたプロテクタ19の内部に船外機前側を通過した後曲がり後側へ延びるように形成され、このプロテクタ19の後端部に後方へ向けて開口している。
また、前記中空部17内には、エンジン2の動力を前記プロペラ3に伝達するためのドライブシャフト20と、ロアケーシング13内の冷却水ポンプ21(図5および図6参照)から冷却水をエンジン2に導くための冷却水用パイプ22とが上下方向に貫通するように設けられている。前記ドライブシャフト20は、上端部がエンジン2のクランク軸(図示せず)に接続され、下端部が軸受23,24(図5参照)によってアッパーケーシング11とロアケーシング13とに回転自在に支持されている。前記軸受23は、アッパーケーシング11とロアケーシング13との間に介装された隔壁25に取付けられている。この隔壁25は、下記するベベルギヤ37が収容されるオイル室13b(図5参照)を水密に形成するためのものである。
前記エンジン2は、水冷式4サイクル単気筒エンジンで、図示していないクランク軸の軸線が上下方向を指向する状態で前記アッパーケーシング11の上端部14に搭載されている。この実施の形態によるエンジン2は、図3および図4に示すように、下端部に設けられたオイルパン2bが前記上端部14に載置されるとともに、この時クランク軸の下端部が前記ドライブシャフト20に接続される。なお、オイルパン2bに前記排気口2aが形成されている。
また、このエンジン2は、図1に示すように、アッパーケーシング11に搭載された状態でカウリング12によって覆われている。このカウリング12は、従来からよく知られているように、前記上端部14に固定されたボトムカウル12aと、このボトムカウル12aの上端部に着脱可能に取付けられたアッパーカウル12bとによって構成されている。
前記ボトムカウル12aは、後端部にキャリングハンドル26が設けられるとともに、前端部にステアリングハンドル27が設けられている。このステアリングハンドル27は、図2に示すように、船外機11の左右方向の中央部に位置付けられている。また、このステアリングハンドル27は、図1に示すように、ボトムカウル12a側のブラケット12cに支軸28を介して上下方向に揺動可能に取付けられており、図1に示す航走状態(推進装置4が鉛直方向に対して傾斜する状態)で略水平に前方へ延ばすことができるように構成されている。このステアリングハンドル27の先端部には、スロットルグリップ27aが設けられている。このステアリングハンドル27によって、本発明でいうステアリングユニットが構成されている。
また、前記ブラケット12cの下面にはクッションゴム29が取付けられている。このクッションゴム29は、前記航走状態から推進装置4の傾斜する角度がさらに増大したときに後述する取付部材6に当接し、推進装置4の傾斜角度が必要以上に増大することを規制するとともに、ロアケーシング13が流木に衝突した場合の衝撃を緩和するためのものである。
前記アッパーカウル12bは、図1および図2に示すように、前端部にスタータハンドル30とチョークノブ31とが設けられている。図1および図2において、アッパーカウル12bの上端部に位置する符号32で示すものは燃料タンク用キャップである。
前記ロアケーシング13は、前記アッパーケーシング11と同様にアルミニウム合金を材料として鋳造によって形成されている。この実施の形態によるロアケーシング13は、アッパーケーシング11の前記平坦部16を下方へ延長したような形状、すなわち断面翼状を呈する形状に形成されており、下端部に板状を呈するプロテクタ19が下方へ突出するように設けられている。
また、このロアケーシング13は、図5に示すように、上端部であって船外機後側(図において左側)の端部にプロペラ3が回転自在に設けられ、このプロペラ3の前方であって上下方向の中央部に冷却水ポンプ21が設けられている。
前記プロペラ3は、プロペラ軸34に脱着可能に取付けられる。前記プロペラ軸34は、ロアケーシング13のボス13aに固定された筒状軸受部材35に軸受36によって回転自在に支持され、内端部がベベルギヤ37を介して前記ドライブシャフト20に接続されている。すなわち、このプロペラ軸34は、図5に示すように、ドライブシャフト20が鉛直方向に延びる状態で後方に向かうにしたがって漸次低くなるように傾斜している。
前記冷却水ポンプ21は、遠心ポンプからなり、図5および図6に示すように、前記ドライブシャフト20の下端部に接続されている。詳述すると、この冷却水ポンプ21のロータ21aは、ドライブシャフト20の下端面にドライブシャフト20と同一軸線上に位置するように固定されている。前記ロータ21aを収容するハウジング21bは、図6に示すように、左右方向の両端部がロアケーシング13から側方へ突出するように形成され、ロアケーシング13に固定されている。このハウジング21bは、前記突出部分に冷却水取入口38(図1参照)が形成され、船外機前側の上端部に冷却水吐出口39(図5参照)が形成されている。この冷却水吐出口39は、ロアケーシング13に穿設された冷却水通路40を介して前記冷却水用パイプ22に接続されている。なお、図5において、23a,24aはドライブシャフト20の外周を、36aはプロペラ軸34の外周をそれぞれ軸方向に水密にするオイルシールであり、25aはロアケーシング13と隔壁25との間を水密にするガスケットであり、オイル室13b内の潤滑オイルに外水が浸入しないようにしている。ロアーケーシング13には不図示の潤滑オイル注入口と排出口が設けられ、脱着可能な密栓が取付けられている。
前記取付部材6は、図1に示すように、船体5の舷板5aに取付けられるクランプブラケット41と、このクランプブラケット41の船体外側の端部に前記推進装置4を取付けるためのスイベルブラケット42とから構成されている。この実施の形態による船外機1を搭載する船体5は、船首と船尾の両方が尖り、中・低速走航時の船体抵抗が少なく且つ引き波を起こし難い、いわゆるダブル・エンダー型のものである。
前記クランプブラケット41は、図9〜図11および図16に示すように、船体5の右舷側の舷板5aを挟むことによって舷板5aに固定される前側のクランプ43および後側のクランプ44と、これらの前後のクランプ43,44が船体5の前後方向に互いに離間する状態で両クランプ43,44どうしを互いに接続する上側ロッド45(図10参照)および下側ロッド46(図1参照)と、前記両クランプ43,44の上端部どうしの間に介装されて両クランプ43,44に上側取付用ボルト47と下側取付用ボルト48とによって取付けられた取付用プレート49とから構成されている。前記クランプ43およびクランプ44にはそれぞれ、舷板5aを挟むための押圧用のパッド41a、クランプ43,44にネジ嵌合する押圧スクリュウ41b、押圧スクリュウ41bを回動させる押圧用のハンドル41cが設けられている。なお、クランプ43,44は、図12に示すようにクランプブラケット41が左舷側の舷板5bに固定される場合は、後ろ前となる。
前記取付用プレート49は、図10に示すように、前後方向(図10においては左右方向)の中央部が平面視において船体内側に向けて凸になる円弧状を呈するように形成され、この湾曲部分における船体から遠ざかる外方側に後述するスイベルブラケット42が2本の固定用ボルト50によって固定されている。
前側の前記クランプ43に取付用プレート49を固定する2本の取付用ボルト47,48は、互いに上下方向に離間する状態でそれぞれ船体前側から略水平にクランプ43を貫通して取付用プレート49に螺着し、後側のクランプ44に取付用プレート49を固定する2本の取付用ボルト47,48は、互いに上下方向に離間する状態でそれぞれ船体後側から略水平にクランプ44を貫通して取付用プレート49に螺着している。
図11〜図13に示すように、前後の取付用ボルト47,47がネジ嵌合する前後のネジ孔47a,47aは、取付用プレート49に互いに同軸に形成され、前後の取付用ボルト48,48がネジ嵌合する前後のネジ孔48a,48aも同様に、取付用プレート49に互いに同軸に形成される。上側取付用ボルト47が貫通する両クランプ43,44のネジ貫通孔47b,47bはそれぞれ真円に形成され、下側取付用ボルト48を挿通する前後両クランプ43,44のネジ貫通穴48b,48bは、図16に示すように、上側取付用ボルト47を中心とする仮想円弧に沿うような長穴によって形成されている。このため、取付用プレート49は、前記4本の取付用ボルト47,48を緩めた状態では上側取付用ボルト47を中心にして下端部を船体5の左右方向へ揺動させることができ、舷板5aに対する角度を前記長穴48aの長さに相当する角度だけ調整することができる。
前記スイベルブラケット42は、図11に示すように、前記取付用プレート49に2本の固定用ボルト50によって取付けられたスイベルブラケット本体51と、このスイベルブラケット本体51に水平なチルト軸52(図10参照)を介して上下方向に回動自在に支持されたピボットブラケット53の複数部品によって構成されている。なお、チルト軸52は、水平面に対して角度が、0°(水平面と平行)から30°程度までの間の、推進装置4が船体5と干渉することなく、チルト軸回りに上下方向に回動できるような任意の角度(例えば、5°、10°、15°、20°、25°等あるいはこれらの中間角度)となるように傾斜させてスイベルブラケット本体51に取付けてもよい。これにより、跳ね上がり時の軌跡を船体から遠ざけて流木衝突時などでピボットブラケットが破損しても推進装置4が確実に船外外側に飛散するようにできる(図10でチルト軸52の船外外方側の端部を水面方向に下げる場合)か、跳ね上がり時の軌跡を船体に近付けて、船体内からプロペラの交換等の作業をし易くできる(図10でチルト軸52の船内側の端部を水面方向に下げる場合)。
前記スイベルブラケット本体51は、横断面C字状を呈するように形成された支持用ブロック54と、この支持用ブロック54の上端部であって左右方向の両端部から上方へ突出するチルト軸支持用のボス55(図1および図10参照)と、前記支持用ブロック54の下端部であって左右方向の両端部から下方へ延びるストッパー56(図15および図16参照)とから形成されている。この実施の形態においては、スイベルブラケット本体51は、アルミニウム合金を材料として鋳造によって前記支持用ブロック54、チルト軸支持用ボス55およびストッパー56が一体に形成されている。
前記チルト軸支持用のボス55には、図10に示すように、前記チルト軸52が横架され固着されている。この実施の形態では、両方のボス55にチルト軸52が嵌合する大径孔55aと、一方のボス55にチルト軸52を抜き出すための工具穴となる小径孔55bと、他方のボス55の大径孔55a口元のめねじが形成され、チルト軸52の抜け止めをする埋栓55cが装着されている。
前記支持用ブロック54は、図11に示すように、外周部が前記取付用プレート49の外側部に嵌合する曲率となるように形成され、外周部に前記2本の固定用ボルト50が螺着するねじ孔57が周方向に間隔をおいて複数形成されている。
この支持用ブロック54と前記取付用プレート49との嵌合部は、図16に示すように、支持用ブロック54の上下方向の中央部に形成された凸部54aが取付用プレート49の凹部49aに嵌合することによって、これら両部材の一方の他方に対する上下方向への移動が規制されるように形成されている。
前記支持用ブロック54に形成された前記複数のねじ孔57は、前記取付用プレート49に対して支持用ブロック54を水平方向に回動させてその取付角度を変えることができるように、支持用ブロック54の周方向に所定間隔おいて並ぶ状態で形成されている。前記支持用ブロック54は、前記チルト軸52と後述するピボットブラケット53とを介して推進装置4を支持する部材であるから、上述したように支持用ブロック54の取付用プレート49への取付角度を変えることによって、推進装置4のクランプブラケット41に対する角度(位置)を変えることができる。
例えば、図20中に実線で示すように、クランプブラケット41が船体右側の舷板5aの前後方向の中央部に取付けられる場合には、図10および図11に示すように、支持用ブロック54は、後述するストッパー56の下端部の後方延在部56bが船体後方に向けて延びる状態で、ストッパー56側から見て左側側面が取付用プレート49に固定される。この支持用ブロック54の取付位置を以下においては右側取付位置という。この右側取付位置では、図10に示す平面視において、舷板5aに沿って前後方向に延びる仮想線Lとチルト軸52の軸線とが略直交するようになる。
また、図20中に(A)で示すように、クランプブラケット41を船体左側の舷板5bの前後方向の中央部に取付ける場合には、図12に示すように、支持用ブロック54は、ストッパー56の下端部の後方延在部56bが船体後方に向けて延びる状態で、船体後方から見て右側側面が取付用プレート49に固定される。この支持用ブロック54の取付位置を以下においては左側取付位置という。この左側取付位置では、前記右側取付位置に対して左右方向の反対側が取付用プレート49に固定されることになり、この状態では、舷板5bに沿って前後方向に延びる仮想線Lとチルト軸52の軸線とが略直交するようになる。
さらに、図20中に(B)で示すように、クランプブラケット41を船体右側の舷板5aの後側に取付ける場合には、図13に示すように、支持用ブロック54は、前記右側取付位置に対して反時計方向に回動した状態で左側端部が取付用プレート49に固定される。この取付位置を以下においては中間位置という。この中間位置では、船体5の前後方向に対して平面視において傾斜するような部位に取付けられた場合であっても、舷板5aに沿って前後方向に延びる仮想線Lに対してチルト軸52の軸線が交差するようになる。
この実施の形態おいては、図20中(C)で示すように、船体左側の舷板5bの後部にクランプブラケット41を取付けたり、同図中に(B)に示すように、船体右側の舷板5aの後部などにもクランプブラケット41を取付けることができるように、支持用ブロック54に複数のねじ孔57が形成されている。これらのねじ孔57は、支持用ブロック54を前記右側取付位置と前記左側取付位置との間の7箇所の中間位置に位置付けることができるように配設されている。なお、図11において舷板5aと直角方向且つ船体外方に向けてストッパー56が延びる状態で取付用プレート49に支持用ブロック54を固定することもできる。この状態では、図22に示すように、従来の船外機と同様に、船尾において船体の左右方向配置とされる船尾板5cにクランプブラケット41を取付けることができる。本実施の形態では、船外機1の船体5への取付位置の自由度を増加できる。
なおまた、図21に示す実施の形態においては、取付用プレート49の固定用ボルト50の貫通孔49aを、円筒状の支持用ブロック54外周面の円筒中心線に垂直な方向(=水平方向)の長穴としている。固定用ボルト50が貫通する符号50aで示すものはワッシャである。図21に図示された状態から、固定用ボルト50を緩めて支持用ブロック54を上面視右方向に所定角旋回させた位置で固定用ボルト50を締め上げて、取付用プレート49に支持用ブロック54を固定した状態で、船体右側の舷板5aの前部にクランプブラケット41を取付けることができる。これが図20中(D)として図示されている。同様に、固定用ボルト50を長穴の貫通孔49aを貫通させて図21で下側となるネジ孔57に取付けるようにし、かつ固定用ボルト50を貫通孔49aの長穴中央より左回りさせた側に位置させるようにして、取付用プレート49に支持用ブロック54を固定した状態で、船体右側の舷板5aの前部にクランプブラケット41を取付けることができる。これが図20中(E)として図示されている。
この図21に示す実施の形態においては、貫通孔49aを長穴にすることで、旋回方向両端のネジ孔57のなす角以上に、取付用プレート49に対する支持用ブロック54の取り付け可能角度範囲を増加することができる。また、取付用プレート49に対する支持用ブロック54の取付角度の調整性を増すことができる。さらに、隣り合うネジ孔57のなす角より、長穴内で固定用ボルト50の取り得る角度範囲の方が大きくすることで、180°以上の取り付け可能角度範囲の任意の相対角度で取付用プレート49に支持用ブロック54を固定することができ、船外機1の船体5への取付位置の自由度をより一層増加できる。
なお、アッパーケーシング11の回動中心P1とスイベルブラケット42の回動中心P2との位置関係についての別の実施例として、アッパーケーシング11の回動中心P1をスイベルブラケット42の回動中心P2に一致させるか、プロペラ3の前進前方方向に変位させるようにしてもよい。これによりアッパーケーシング11と干渉しないよう回動中心P1より前方に位置するチルト軸52は図9および図10より分かる通り、より一層前方に位置させることになるので、スイベルブラケット42を回動させて、チルト軸52を舷板5aと交差するようにした状態で、推進装置4をチルトアップさせると、エンジン2の部分が船体5の方に近づき、エンジン2の保守点検性が向上する。なお、このエンジン2の保守点検性を向上させるためには、チルト軸52を上下方向において舷板5a上端より上方の位置とするとよい。これにより、チルトアップ時推進装置4の舷板5a上側への干渉を避けることができる。
前記ストッパー56は、後述するスラストストッパー58の一部を構成するもので、図1に示すように、前記支持用ブロック54の左右方向の両端部からそれぞれ下方に延びる上下方向延在部56aと、この上下方向延在部56aの下端から後方に延びる後方延在部56bとによって形成されている。
前記後方延在部56bは、前記チルト軸52を中心とする円弧状を呈するように形成され、図15に示すように、船外機内側で互いに向き合う側部に後述するスラストストッパー58の係合用ピン59が係入する係合溝60が形成されている。この係合溝60は、図16に示すように、チルト軸52を中心とする円弧に沿って延びる連通部60aと、この連通部60aから前記円弧の径方向の外側へ延びる係合部60bとによって構成されている。この係合部60bは、前記円弧に沿う方向に間隔をおいて複数形成されている。
前記ピボットブラケット53は、図10に示すように、前記二つのチルト軸支持用のボス55どうしの間に挿入されて前記チルト軸52に上下方向に回動自在に支持された第1のピボットブラケット53aと、この第1のピボットブラケット53aの回動端部(後側端部)に固定用ボルト61によって固定された第2のピボットブラケット53bとから構成されている。これらの第1および第2のピボットブラケット53a,53bは、前記アッパーケーシング11の前記軸部15を回動自在に支持している。すなわち、このピボットブラケット53は、前記チルト軸52に上下方向に回動自在に支持されるとともに、前記アッパーケーシング11を水平方向に回動自在に支持している。
このようにピボットブラケット53に回動自在に支持されるアッパーケーシング11の回動中心P1は、図10中にドライブシャフト20が位置する部位であり、ピボットブラケット53を有するスイベルブラケット42の回動中心P2とは離間する位置に位置付けられている。図10および図11に示すように、支持用ブロック54が前記右側取付位置に位置している場合は、スイベルブラケット42の回動中心P2より船体後側にアッパーケーシング11の回動中心P1が位置し、図13に示すような中間位置に支持用ブロック54が位置している場合には、アッパーケーシング11の回動中心P1はスイベルブラケット42の回動中心P2より船体外側に位置するようになる。
前記ピボットブラケット53におけるアッパーケーシング11を回動自在に支持する部分には、図10に示すように、ベルト状のフリクションプレート62が介装されている。このフリクションプレート62は、同図中に符号63で示す蝶ねじを締めたり緩めたりすることによって、アッパーケーシング11がピボットブラケット53に対して回動するときの摺動抵抗を増減させることができるように形成されている。
前記第1のピボットブラケット53aにおけるチルト軸52が貫通する部位の左右方向(チルト軸52の軸線方向)の中央部分には、図9および図15に示すように、後述するスラストストッパー58の上端部を収容するための凹陥部53cが下方に向けて開口するように形成されている。
前記スラストストッパー58は、前記推進装置4のチルト角度を規制するとともに推進装置4の推力を受けるためのもので、推力は一部が前記ストッパー56となるスイベルブラケット本体51、取付用プレート49およびクランプブラケット41を介して船体5に伝えられる。このスラストストッパー58は、図9、図14〜図18に示すように、前記チルト軸52に回動自在に支持されたスラストブラケット64と、このスラストブラケット64に上下方向に移動自在に支持された前記ピン59によって構成されている。
前記スラストブラケット64は、前記チルト軸52から下方に延びる支持用ステー65と、この支持用ステー65の下端部に固定された受圧ブロック66とから構成されている。前記支持用ステー65は、パイプからなり、図15〜図18に示すように、下端において後述する係合用ピン59がネジ結合される駆動用ロッド67が上下方向に移動自在に嵌挿されている。
前記受圧ブロック66は、図14に示すように、前記アッパーケーシング11の軸部15が円周方向に摺動可能に嵌合する半割りの筒状内周面を有するプレート状の受圧部66aが推力受けとして船外機後側に形成されるとともに、係合用ピン59が嵌合する凹溝66b(図15参照)が形成されている。この凹溝66bは、図15および図17に示すように、受圧ブロック66を左右方向に貫通するように形成され、下方に向けて開放している。
前記係合用ピン59は、図14および図15に示すように、チルト軸52と平行とされるとともに前記受圧ブロック66の左右方向(図14においては上下方向)の長さより長くなるように形成され前記凹溝66b内に収容されており、この受圧ブロック66から突出した両端部が前記ストッパー56の係合溝60に係入されている。この係合用ピン59によって、本発明でいう係合部材が構成されている。この係合用ピン59は、前記係合溝60の連通部60a内に位置する状態で受圧ブロック66がチルト軸回りに回動することによって前記回動方向の位置が変えられ、複数の係合部60bの中から選択された一つの係合部60bに係合される。
前記係合用ピン59の長手方向の中央部には、このピンを前記凹溝内で上下方向に移動させるための駆動用ロッド67が立設されている。この駆動用ロッド67は、前記受圧ブロック66を貫通して上方に突出し、前記支持用ステー65に下方から挿入されている。また、この駆動用ロッド67における前記係合用ピン59と受圧ブロック66の上壁との間には、係合用ピン59を下方に付勢するための圧縮コイルばね68が弾装されている。さらに、前記駆動用ロッド67における前記支持用ステー65に嵌挿される部位には、操作用ワイヤ69が接続されている。パイプ状の支持用ステー65に開口する上下方向の長穴を貫通して操作用ワイヤ69のインナーケーブル用の支持ブラケット1,100が駆動用ロッド67にねじ込まれ、前記支持ブラケット1,100の上方で、操作用ワイヤ69のアウターケーブル用の支持ブラケット2,101が支持用ステー65に固定されている。この操作用ワイヤ69の他端部は、図1に示すように、クランプブラケット41に取付けられた操作用レバー70に接続されている。なお、この操作用レバー70としては、図15に示すように、ステアリングハンドル27に取付けることもできる。
この実施の形態による前記係合用ピン59は、前記操作用レバー70が操作されていない状態では、前記圧縮コイルばね68の弾発力によって下方に付勢され、両端部が前記係合溝60の係合部60bに係入する。このように係合用ピン59が係合部60bに係合することによって、受圧ブロック66の位置(航走時のアッパーケーシング11の位置)が決められ、スラストブラケット64のチルト軸回りの回動が規制される。例えば、図16に示すように、ストッパー56に複数形成された係合部60bのうち、最も船外機前側(図16においては右側)に位置する係合部60bに係合用ピン59が係合することによって、受圧ブロック66が最も船外機前側に位置する状態でスラストブラケット64の前記回動が規制される。この状態では、図1中に二点鎖線で示すように、推進装置4のアッパーケーシング11の軸線C(ドライブシャフト20の軸線と平行な軸線)が鉛直方向を指向するようになる。
推進装置4のチルト角度を変えるためには、先ず、前記操作用レバー70を操作して前記ワイヤ69を引き、前記駆動用ロッド67と係合用ピン59とを上側へ移動させる。この操作により、係合用ピン59の両端部が前記係合部60bから連通部60aに入り、スラストブラケット64をチルト軸回りに回動させることができるようになる。次に、図17に示すように、操作用レバー70を継続して操作しながら推進装置4とスラストブラケット64とをチルト軸回りに同図において時計方向に所望のチルト角度に達するまで回動させ(チルトアップさせ)、操作用レバー70を放す。このようにチルトアップさせた状態で操作用レバー70を放すことにより、前記圧縮コイルばね68の弾発力によって係合用ピン59が押され、その両端部が係合部60bに係入する。このとき、例えばチルト角度が最大となる位置まで推進装置4とスラストブラケット64とをチルトアップさせた場合には、図18に示すように、複数形成された係合部60bのうち最も船外機後側に位置する係合部60bに係合用ピン59が係合する。
この実施の形態による船外機1は、このようにチルト角度が最大となるように推進装置4をチルトアップさせることによって、図1に示すように、プロペラ3の軸線が略水平となるように構成されている。なお、チルトダウンさせるときは、チルトアップ時と同様に操作用レバー70を操作して係合用ピン59とストッパー56との係合を解除し、この状態で推進装置4とスラストブラケット64とを回動させることによって行う。なお、一端がボルト102で支持用ブロック54に固定され、コイル部を介した他端が受圧ブロック66に当接するトーショナルスプリング103が配設されている。これにより、スラストブラケット64はチルトアップ方向に付勢されており、チルトアップ操作時推進装置4のみをチルトアップさせるだけでよい。また、チルトダウン時は推進装置4の自重でトーショナルスプリング103が変位するので、スラストブラケット64に手を掛ける必要はない。この構成を採ることにより、チルトアップまたはチルトダウン時にスラストブラケット64が推進装置4に追従して回動するようになり、スラストブラケット64を支える必要がなくなって操作性が向上する。
上述したように構成された船外機1は、図1に示すように、プロペラ3の軸線が略水平になるような最大トリムアップ位置と、同図中に二点鎖線で示すように推進装置4が起立するチルトダウン位置との間で前記係合部60bの位置に対応するようにチルト角度(なお、最大トリムアップ位置とチルトダウン位置の間においては、トリム角ともいう)を変えることができ、いずれのチルト位置(同じく、最大トリムアップ位置とチルトダウン位置の間においては、トリム位置ともいう)でもプロペラ3がエンジン2の動力により回転することによって前進する。前進時の推力は、アッパーケーシング11からピボットブラケット53とチルト軸52とを介してスイベルブラケット本体51に伝達されるとともに、アッパーケーシング11から受圧ブロック66と係合用ピン59とを介して前記スイベルブラケット本体51に伝達され、このスイベルブラケット本体51から取付用プレート49およびクランプブラケット41を介して船体5に伝達される。航走時の操舵は、ステアリングハンドル27を水平方向に操舵させ、推進装置4をピボットブラケット53に対して水平方向に回動させることによって行う。
一方、この船外機1を搭載した船体5を後退させる場合は、先ず、推進装置4を図1中に二点鎖線で示すチルトダウン位置までチルトダウンさせる。そして、この状態でステアリングハンドル27が後方を指向するように推進装置4をピボットブラケット53に対して水平方向に回動させ、推力で進む方向を後方に向けることによって行う。回動させることで、アッパーケーシング11に円弧状に突設したフック15aを受圧ブロック66の下端部に一体に形成した円弧状の係合部66cに係合させて行う。後退させる場合も、スラストストッパー58により推進装置4の推力を受け、後進推力はスイベルブラケット42、取付用プレート49およびクランプブラケット41を介して船体5に伝達される。なお、上述した実施の形態では示していないが、この船外機1は、従来からよく知られているような爪付きの回動式レバーと、このレバーが係合するピンとを有するリバースロック装置を装備することもできる。
上述したように構成された船外機1は、下端部にプロペラ3を配した推進装置4を船体5に着脱可能に取付けるクランプブラケット41と、このクランプブラケット41を取付けた船体外面に沿う面に略平行且つ略水平な支軸(上側取付用ボルト47)回りで傾動可能に前記クランプブラケット41に取付けた傾動部材(取付用プレート49、スイベルブラケット42)と、この傾動部材に船体5の前後方向に延びる仮想線とは交差する略水平なチルト軸52とを設け、このチルト軸回りに推進装置4を上下方向に回動自在に設けるとともに、チルト軸52から下方に離間した位置において、前記傾動部材と推進装置4の間に介装され、推進装置を支持してプロペラ3により推進装置4に作用する推力を傾動部材に伝達するとともに、チルト軸52まわりの傾動部材に対する推進装置の支持角度を可変とするスラストストッパー58を配設したため、図22に示すように、船尾板5cに船外機1を取付けた状態で傾動部材をクランプブラケット41に対して傾動させることにより、スラストストッパー58を使用することなくトリム角度を変えることができる。
したがって、推進装置4のトリム角度をスラストストッパー58によって設定したうえで傾動部材の傾動によって微調整することができるから、図22に示す船外機1は、従来の船外機に較べてトリム角の調整をより一層細かく行うことができる。また、この船外機1は、推進装置4の下端部を僅かにトリムアップして走航することが可能となり、船体5の傾斜を修正できるようにトリム角度を設定することができるから、十分な航走性能が得られる。例えば浅瀬を航走するときにトリムアップさせて推進装置4のプロペラ3の位置を川底、海底あるいは異物との接触を避けるために上側に変えることができる。しかも、この船外機1は、トリム角度を変えることによって、プロペラ3の推力を上方または下方にも作用させて船体5の前後方向の傾斜を修正することができる。
本発明に係る船外機1は、クランプブラケット41を船体側部に装着した状態で、支軸(上側取付用ボルト47)に対してチルト軸52を略直交且つ略水平とすることで、船体5の前後方向に延びる仮想線とは交差する略水平としたものである。この船外機1によれば、船体5の側部に取付けた状態で、傾動部材をクランプブラケット41に対して傾動させることによって、舷板5a,5bの傾きによらず、この舷板に対するプロペラ3の横方向位置を調整することができる。このため、船体5によって横方向に押し流される水がプロペラ3に影響しないようにでき、プロペラ3によって発生する推力を安定させることができる。しかも、水面に対する水中のプロペラ3の軸角(トリム角)を調整することができる。このため、この船外機1は、船体側部に取付けた状態で推進装置4の下端部を僅かにトリムアップして航走することが可能となり、船体5の傾斜を修正できるようにトリム角度を設定することができるから、十分な航走性能が得られる。
この実施の形態による船外機1は、傾動部材をクランプブラケット41に連結される取付用プレート49と、この取付用プレート49に固定されチルト軸52が設けられるスイベルブラケット本体51と、このスイベルブラケット本体51にチルト軸回りに回動可能に取付けられるとともに、推進装置4を回動可能に支持するピボットブラケット53とによって構成したため、推進装置4をピボットブラケット53に対して回動させることによって、プロペラ3の推力が作用する方向が左右方向に変わり、操舵することができるから、旋回航行を行うことができる。
この実施の形態による船外機1は、スラストストッパー58をスイベルブラケット本体51と推進装置4の間に介装したため、ピボットブラケット53にスラストストッパー58との接続部分を形成する必要がなく、ピボットブラケット53は専ら推進装置4を回動自在に支持するためだけの構造とすることができる。このため、ピボットブラケット53をコンパクトに形成することができる。
この実施の形態による船外機1は、チルト軸52の回りに回動可能なスラストブラケット64を設け、このスラストブラケット64をスイベルブラケット本体51と推進装置4の間に介装し、チルト軸まわりのスイベルブラケット本体51に対するスラストブラケット64の支持角度を可変とすることで、チルト軸まわりの傾動部材に対する推進装置4の支持角度を可変としたため、操舵時の推進装置4の推力はピボットブラケット53からスイベルブラケット本体51に伝達されるから、スラストブラケット64には大きな横荷重が作用することはない。この横荷重とは、推力による押圧力に摩擦係数を乗じたものである。したがって、この船外機1によれば、スラストブラケット64の耐久性を向上させることができる。
この船外機1の別の実施の形態として、スラストストッパー58をスイベルブラケット本体51とピボットブラケット53の間に介装する構成を採ることができる。この構成を採る船外機によって、本発明に係る請求項3に記載した船外機が構成される。この構成を採ることにより、操舵時の推進装置4の推力はピボットブラケット53からスイベルブラケット本体51に伝達されるようになり、スラストストッパー58に大きな横荷重(=推力による押圧力×摩擦係数)が作用することを防ぐことができる。したがって、スラストストッパー58の耐久性を向上させることができる。
この実施の形態による船外機1は、プロペラ3による推力より大きく逆方向の力が推進装置4に作用するとき、スラストストッパー58と推進装置4が離間するように、スラストストッパー58を構成したため、航走中に推進装置4の下端部に異物が衝突したときには、推進装置4がスラストストッパー58から離間するようにチルト軸回りに回動することによって、衝撃力が緩和される。このため、異物が衝突しても破損し難い船外機1を提供することができる。
この実施の形態による船外機1は、図2や図10に示すように、船体5の側部に取付部材6によって取付けられた状態でチルト軸52の軸線が船体5の左右方向を指向するから、ダブル・エンダー型の船体5の舷板5a,5bに何ら改造することなく容易に取付けることができる。また、この船外機1は、上述したように船体5の側部に取付けられた状態で前進し、例えば下端部のプロテクタ19に川底、海底や杭、流木などの異物が当たった場合には、図19に示すように、推進装置4がチルト軸52を中心にして最大トリム角度位置より大きくチルトアップする。このチルトアップ動作により、前記衝突により船体5側に伝達される衝撃力が緩和される。したがって、この船外機1は、船体5の側部に搭載されるにもかかわらず、異物が当たったとしても破損し難いものとなる。なお、推進装置4が跳ね上がるように大きくチルトアップした場合には、前記ボトムカウル12aの前記ブラケット12cに設けられたクッションゴム29がスイベルブラケット本体51の支持用ブロック54に当接することによって、衝撃が緩和される。
さらに、この実施の形態による船外機1は、ステアリングハンドル27により推進装置4を回動させることによって推力の作用する方向を変えることができるから、船体5の舷板5a,5bに取付けた状態でも操船を容易に行うことができる。特に、この船外機1は、推進装置4の回動位置を変えることによって進行方向を360°何れの方向へも変えることができるから、舷板5a,5bに取付けた状態で操船をより一層容易に行うことができるようになる。
さらにまた、この実施の形態による船外機1は、平面視において船体5の前後方向に対して大きく傾斜するような舷板5a,5bにクランプブラケット41を取付けた場合でも支持用ブロック54を取付用プレート49に対して回動させることによってチルト軸52を前記前後方向に対して交差するように位置付けることができるから、船体5の形状によって取付ける位置に制約を受けることがない。しかも、この船外機1は、船尾板5cの他に、船体右側の舷板5aと船体左側の舷板5bのいずれにも取付けることができるから、取付ける位置の自由度がより一層高くなる。
加えて、この実施の形態による船外機1は、船体5が後退するように推進装置4を180°回した状態でも左右方向に操舵することができるから、舷板5a,5bに取付けた状態で後退操作を含めて操船をより一層容易に行うことができる。
この実施の形態による船外機1は、アッパーケーシング11およびロアケーシング13が後下がりとなるように傾斜する状態で航走することができるから、水中に浮遊しているポリエチレン袋や浮遊藻などがアッパーケーシング11やロアケーシング13の前縁に付着するようなことがなく、これらの異物を円滑に後方へ流すことができる。このため、冷却水ポンプ21の冷却水取入口38が前記異物によって閉塞されることもない。
この実施の形態による船外機1は、スラストストッパー58の係合状態を解除するに当たって操作用レバー70を操作するだけでよいから、チルト角度を変える操作を容易に行うことができる。
この実施の形態による船外機1は、アッパーケーシング11にキャビテーションプレートが形成されていないから、従来の船外機に較べてアッパーケーシング11の軽量化を図ることができる。
この実施の形態による船外機1は、ロアケーシング13の下端部から排ガスを水中に排出する構成が採られており、従来の船外機に較べて排ガスが浮上するまでの時間が長くなり、排ガスが浮上するまでに船体が前進する距離が長くなるから、船上で聞こえる排気音を低減することができる。
この実施の形態による船外機1は、冷却水ポンプ21と冷却水取入口38がプロペラ3の上縁より下に位置付けられていて、エンジン停止中でも冷却水ポンプ21内に常に水が流入するから、エンジン始動時にドライブシャフト20が回転すると同時に冷却水ポンプ21から冷却水がエンジン2に供給されるようになる。このため、エンジン2を確実に冷却することができる。
この実施の形態による船外機1は、図1に示すように、アッパーケーシング11の平坦部16が断面翼状を呈するように形成され、このアッパーケーシング11が後ろ下がりに傾斜する状態で航走するから、アッパーケーシング11が水を切るようになり、このアッパーケーシング11に当たった水が上方に飛散し難くなる。
上述した実施の形態ではエンジン2によって動力ユニットが構成された船外機1を示したが、本発明は、エンジン2の代わりに電動モータを動力ユニットとして装備した船外機1にも適用することができる。また、上述した実施の形態ではアッパーケーシング11の回動中心P1がスイベルブラケット42の回動中心P2とは離間する位置に位置付けられているが、本発明に係る船外機は、前記回動中心P1と回動中心P2とが同一軸線上に位置するように構成することもできる。この構成を採ることにより、船体5に取付ける位置が変化しても推進装置4と船体5との距離は略一定になるから、船体5に取付ける位置が何れであっても略同じ姿勢で操作することができるようになり、より一層操作が容易になる。さらに、上述した実施の形態では、取付用プレート49を上側取付ボルト47を支軸として傾動するように構成した例を示したが、本発明はこのような限定にとらわれることなく、下側取付ボルト48を支軸として取付プレート49が傾動するように構成することもできる。
なお本願においては、プロペラ3が水中にある状態における角度をトリム角、プロペラが水面より出た状態における角度をチルト角と使い分けているが、支持角度、トリム角およびチルト角は実質的に同じものである。同様にトリムアップはプロペラ3が水中にある状態における推進装置4の上方への回動であり、チルトアップはプロペラ3が水中にある状態における推進装置4の上方への回動、あるいはプロペラ3を水中にある状態から水面上に変化させる推進装置4の上方への回動のことをいう。
ここで、本発明の特許請求の範囲に記載した部材の名称と実施の形態中による部材の名称との対比について説明する。
本発明の特許請求の範囲に記載した推進装置4は、アッパーケーシング11と、エンジン2と、カウリング12と、ロアケーシング13と、プロペラ3などによって構成されている。特許請求の範囲に記載した傾動部材は、取付用プレート49と、スイベルブラケット42(スイベルブラケット本体51およびピボットブラケット53)とによって構成され、推進装置支持部材は、スラストストッパー58(スラストブラケット64とピン59)によって構成されている。
請求項1に記載した支軸は上側取付ボルト47または下側取付ボルト48(他の形態を採る場合)によって構成されている。
請求項2〜請求項5に記載した第1取付ブラケットは取付用プレート49によって構成され、第2取付ブラケットはスイベルブラケット本体51によって構成され、第2傾動部材はピボットブラケット53によって構成されている。
1…船外機、2…エンジン、3…プロペラ、4…推進装置、5…船体、5a,5b…舷板、5c…船尾板、6…取付部材、27…ステアリングハンドル、41…クランプブラケット、42…スイベルブラケット、49…取付用プレート、51…スイベルブラケット本体、52…チルト軸、53…ピボットブラケット、56…ストッパー、58…スラストストッパー、59…係合用ピン、60…係合溝、60b…係合部、64…スラストブラケット、66…受圧ブロック。