JP4278562B2 - アレルゲン抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、スギなどの草木の花粉、ダニ、室内の塵などのアレルゲンが特異抗体と反応するのを抑制するアレルゲン抑制剤に関する。
近年、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの多くのアレルギー疾患が問題となってきている。このアレルギー疾患の主な原因としては、住居内に生息するダニ類、特に、室内塵中に多く存在するヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)や、主に春季に多量に空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Crij1、Crij2)などのアレルゲンが生活空間内に増加してきているためである。
そして、ヒョウヒダニのアレルゲンは、ヒョウヒダニを駆除しても、ヒョウヒダニの死骸がアレルゲンとなるために、アレルギー疾患の根本的な解決にはならない。又、スギ花粉アレルゲンであるCrij1は分子量が約40kDaの糖タンパク質であり、Crij2は分子量が約37kDaの糖タンパク質である。そして、スギ花粉アレルゲンは、鼻粘膜などに付着すると生体外異物として認識されて炎症反応を引き起こす。
従って、アレルギー疾患の症状を軽減し或いは新たなアレルギー症状を防止するためには、生活空間からアレルゲンを完全に取り除くか、アレルゲンを変性させるなどして不活性化させることが必要となる。
アレルゲンは蛋白質である。従って、アレルゲンを熱、強酸又は強アルカリ等で変性させると、アレルゲンはアレルゲン性を失うと考えられる。しかしながら、アレルゲンは非常に安定性が高く、家庭で安全に使用できる酸化剤、還元剤、熱、アルカリ、酸では容易に変性されない(非特許文献1)。
アレルゲンを変性させようとすると、アレルゲンの汚染場所である生活用品、例えば、畳、絨毯、床、家具(ソファー、布ばり椅子、テーブル)、寝具(ベッド、布団、シーツ)、車内用品(シート、チャイルドシート)、キッチン用品、ベビー用品、カーテン、壁紙、タオル、衣類、ぬいぐるみ、その他の繊維製品、空気清浄機(本体及びフィルター)などが条件によっては破損してしまう可能性があった。
このため、アレルゲンの分子表面を比較的温和な条件で化学的に変性する方法が考えられてきた。例えば、生皮などのなめし(タンニング)などに用いられているタンニン酸を用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献1)、茶抽出物などを用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献2)、ヒドロキシ安息香酸系化合物又はその塩を用いてアレルゲンを抑制する方法(特許文献3)等が提案され、アレルゲン抑制効果も確認されている。
しかしながら、これらのほとんどはポリフェノールの一種であることから着色しており、上記生活用品を着色してしまうといった問題点があった。又、特許文献4には、芳香族ヒドロキシ化合物などからなるアレルゲン低減剤が提案されているが、充分なアレルゲン抑制効果を発現させる量のアレルゲン低減剤を繊維などに処理すると風合いが悪くなると言う問題点があった。
The Journal of Immunology Vol.144:1353-1360 特開昭61−44821号公報 特開平6−279273号公報 特開平11−292714号公報 特開2003−81727号公報
本発明は、アレルゲンが付着した生活用品の表面を殆ど汚染したり破損することなく、アレルゲンを効果的に抑制することができるアレルゲン抑制剤を提供する。
本発明のアレルゲン抑制剤は、下記式(1)又は式(2)で表されるフェノール樹脂からなる。
Figure 0004278562

(Rは、メチル基又はエチル基である。)
Figure 0004278562
なお、式(1)で表されるフェノール樹脂は、液状ポリブタジエンとフェノールとを原料に用いて合成することができ、例えば、新日本石油社から商品名「PPシリーズ」で市販されており、式(2)で表されるフェノール樹脂は、ジシクロペンタジエンとフェノールとを原料に用いて合成することができ、例えば、新日本石油社から商品名「DPPシリーズ」「DPAシリーズ」で市販されている。
更に、上記アレルゲン抑制剤に親水性高分子を含有させてもよい。このような親水性高分子としては、空気中の水分子を集めることによってアレルゲン抑制剤との相互作用を起こし得る反応場を形成し得るものであるものが好ましい。
そして、上記アレルゲン抑制剤に親水性高分子を含有させることによって、通常の湿度条件下、例えば、絶対湿度50g/m3 以下の雰囲気下において、アレルゲン抑制剤はアレルゲンを更に効果的に抑制することができる。
なお、「空気中の水分子を集めることによってアレルゲン抑制剤との相互作用を起こしうる反応場」とは、アレルゲンが抗原性を発揮する部分(エピトープ)の抗原性を抑制するために何らかの化学的相互作用を及ぼすための反応場のことであり、例えば、イオン化状態などの電気化学的遷移状態を安定化させ、化学反応の遷移状態の障壁エネルギーを下げることにより、自然な化学反応の進行が起こりうるような反応場のことをいう。
そして、通常、化学反応を起こすために越えなければならない遷移状態のエネルギー障壁を下げるためには液体状態の水を必要とするが、本発明のアレルゲン抑制剤は、作為的に湿度を挙げるなどの操作を要することなく、空気中の水分を集めることによって上述の反応場を形成することができ、更に、上述のように、親水性高分子を含有させておくことによって上記反応場をより確実に形成することができる。
上記親水性高分子としては、特に限定されず、例えば、主鎖中にエーテル結合及び/又はアミド結合を有する高分子、側鎖に極性基を有する高分子、主鎖中にエーテル結合及び/又はアミド結合を有し且つ側鎖に極性基を有する高分子などが挙げられる。なお、上記極性基としては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミン等のアミン基、アンモニウム塩基などのカチオン性基;硫酸エステルやリン酸エステルなどのエステル基、カルボキシル基、スルホン基などのアニオン性基、ヒドロキシ基、アミド基などのノニオン性基などが挙げられる。
上記親水性高分子としては、例えば、でんぷん、セルロース、タンニン、ニグニン、アルギン酸やアラビアゴムなどの多糖などの天然系化合物、ポリビニルアルコール、ブチラールなどのポリアルコール、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなどのポリエーテル、ポリアクリル酸などのポリマー酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリマー塩、ポリアリルアミンなどのポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、アクリル樹脂などの合成系化合物が挙げられ、通常の室内条件下で潮解性を示さないという点から合成系高分子が好ましく、吸湿性のみならず保水性が高いことから、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンが好ましい。なお、親水性高分子は単独でも2種類以上のものを併用してもよいが、異なる分子構造を有する2種類以上の親水性高分子を組み合わせることが好ましい。
異なる分子構造を有する2種類以上の親水性高分子の組合せとしては、ポリエーテルとポリマー塩との組合せ、ポリエーテルとポリアルコールとの組合せが好ましく、ポリオキシエチレンとポリアクリル酸ナトリウムとの組合せ、ポリオキシエチレンとポリビニルアルコールとの組合せがより好ましい。
上記親水性高分子の融点は、低いと、アレルゲン抑制剤の使用雰囲気下にて液体状となる場合があり、アレルゲン抑制剤で処理した生活用品がべとつくなどの風合いを損なう虞れがあるので、40℃以上が好ましく、水と接する機会の多い雰囲気下にてアレルゲン抑制剤が用いられる場合にはアレルゲンの抑制効果を持続させるために、50℃以上がより好ましい。
そして、上記親水性高分子の含有量は、少ないと、空気中の水分子を十分に集められないため、アレルゲンとの相互作用を起こしうるに十分な反応場を形成することができず、アレルゲン抑制剤が十分なアレルゲンの抑制効果を発揮することができないことがある一方、多いと、アレルゲン抑制剤の量が相対的に少なくなってしまい、アレルゲン抑制剤におけるアレルゲンの抑制効果が低下することがあるので、アレルゲン抑制剤100重量部に対して40〜1000重量部が好ましく、50〜1000重量部がより好ましく、50〜1000重量部が特に好ましい。
又、上記アレルゲン抑制剤をエポキシ樹脂などを用いて高分子量化することによって、水などの溶剤に対するアレルゲン抑制剤の溶解性を低下させて耐溶剤性を向上させ、アレルゲン抑制剤のアレルゲン抑制効果を長期間に亘って持続させることができる。例えば、アレルゲン抑制剤で処理した生活用品に水がかかったり或いは洗濯した場合にあっても、アレルゲン抑制剤が水に溶解して消失するのを抑制することができ、アレルゲン抑制剤のアレルゲン抑制効果を長期間に亘って持続させることができる。
本発明のアレルゲン抑制剤には、アレルゲン抑制効果の有効性を阻害しない範囲において、分散剤、乳化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの製剤用補助剤が配合されていてもよく、また、殺ダニ剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤などが含有されていてもよい。
次に、上記アレルゲン抑制剤の使用要領について説明する。上記アレルゲン抑制剤は、スプレー型、エアゾール型、燻煙型、加熱蒸散型などの汎用の使用方法を用いることができる。上記アレルゲン抑制剤を溶媒に溶解或いは分散させてアレルゲン抑制剤溶液とし、このアレルゲン抑制剤溶液に水溶剤、油剤、乳剤、懸濁剤等を配合することによって、アレルゲン抑制剤をスプレー型とすることができる。なお、スプレー型とは、常圧下にあるアレルゲン抑制剤溶液に圧力を加えてアレルゲン抑制剤を霧状に噴霧する使用方法をいう。
なお、上記溶媒としては、例えば、水(好ましくは、イオン交換水)、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなど)、炭化水素類(トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミドなど)が挙げられる。
そして、上記スプレー型のアレルゲン抑制剤に、固体担体(タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、シリカ、バーミュライト、パーライトなど)を添加することにより、アレルゲン抑制剤をエアゾール型とすることができる。
ここで、エアゾール型とは、容器内にアレルゲン抑制剤溶液を噴射剤と共に該噴射剤が圧縮された状態に封入しておき、噴射剤の圧力によってアレルゲン抑制剤を霧状に噴霧させる使用方法をいう。なお、噴射剤としては、例えば、窒素、炭酸ガス、ジメチルエーテル、LPGなどが挙げられる。
そして、上記スプレー型のアレルゲン抑制剤に、酸素供給剤(過塩素酸カリウム、硝酸カリウム、塩素酸カリウムなど)、燃焼剤(糖類、澱粉など)、発熱調整剤(硝酸グアニジン、ニトログアニジン、リン酸グアニル尿素など)、酸素供給剤分解用助剤(塩化カリウム、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、活性炭など)などを添加することにより、アレルゲン抑制剤を燻煙型することができる。なお、燻煙型とは、アレルゲン抑制剤を微粒子化して煙状とし、分散させる使用方法をいう。
そして、上記アレルゲン抑制剤を、各種使用方法に応じて、生活用品などのような、アレルゲンが存在する対象物、即ち、アレルゲンを抑制したい対象物(以下、「アレルゲン対象物」という)に噴霧、分散、塗布又は固着させることによって供給することにより、アレルゲンを抑制することができる。なお、上記アレルゲン抑制剤は、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
なお、「アレルゲンを抑制する」とは、ヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)、空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Crij1、Crij2)、犬や猫に起因するアレルゲン(Can f1、Fel d1)などのアレルゲンを変性し或いは吸着し、アレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制することをいう。
又、上記アレルゲン対象物としては、生活空間においてアレルゲンの温床となる生活用品などが挙げられる。この生活用品としては、例えば、畳、絨毯、床、家具(ソファー、布ばり椅子、テーブル)、寝具(ベッド、布団、シーツ)、車内用品(シート、チャイルドシート)、キッチン用品、ベビー用品、カーテン、壁紙、タオル、衣類、ぬいぐるみ、繊維製品、空気清浄機(本体及びフィルター)などが挙げられる。更に、上記アレルゲン抑制剤は、上述以外に、洗剤や柔軟仕上げ剤などに添加することによってもアレルゲン抑制効果を発揮することができる。
本発明のアレルゲン抑制剤でアレルゲン対象物に対する使用量としては、少ないと、
レルゲン抑制剤のアレルゲン抑制効果が発現しないことがある一方、多いと、アレルゲン対象物を痛めることがあるので、アレルゲン対象物100重量部に対して0.1〜300重量部が好ましく、0.2〜100重量部がより好ましく、0.5〜50重量部が特に好ましい。
本発明のアレルゲン抑制剤が対象とするアレルゲンとしては、動物性アレルゲン、花粉などの植物性アレルゲンが挙げられる。特に効果のある動物アレルゲンとしては、ダニ類のアレルゲン(ダニ類、節足動物一蛛形綱−ダニ目の生物で、主に7つの亜目に分かれている。アシナガダニに代表される背気門、カタダニに代表される四気門、ヤマトマダニ、ツバメヒメダニに代表される後気門、イエダニ、スズメサシダニ代表される中気門、クワガタツメダニ、ナミホコリダニに代表される前気門、コナヒョウヒダニなどのヒョウヒダニ類、ケナガコナダニに代表される無気門、イエササラダニ、カザリヒワダニに代表される隠気門など)のいずれの種類でも対象となり得るが、室内塵中、特に寝具類に多く、アレルギー疾患の原因となるヒョウヒダニ類に特に効果がある。
上述のアレルゲン抑制剤の使用要領によれば、アレルゲン対象物に必要に応じてアレルゲン抑制剤を供給することによって、アレルゲン対象物に存在するアレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制するものであった。
上記アレルゲン抑制剤を繊維に含有させてアレルゲン抑制繊維とし、繊維自体にアレルゲン抑制効果を付与してもよい。このアレルゲン抑制繊維を用いて上記生活用品を作製することによって、生活用品にアレルゲン抑制効果を予め付与しておくことができる。
アレルゲン抑制剤を繊維に含有させる方法としては、繊維にアレルゲン抑制剤を化学的に結合させたり或いは物理的に固着させる方法が挙げられる。そして、繊維としては、アレルゲン抑制剤を含有させることができるものであれば、特に限定されず、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維などの合成繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、キュプラ、レーヨンなどの再生繊維、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、又は、これら各種繊維の複合化繊維、混綿などが挙げられる。
上記アレルゲン抑制剤を繊維に化学的に結合させる要領としては、グラフト化反応により繊維にアレルゲン抑制剤を化学的に結合させる方法が挙げられる。グラフト化反応としては、特に限定されず、例えば、(1) 繊維となる幹ポリマーに重合開始点をつくり、アレルゲン抑制剤を枝ポリマーとして重合させるグラフト重合方法、(2) アレルゲン抑制剤を高分子反応によって繊維に化学的に結合させる高分子反応法などが挙げられる。
グラフト重合方法としては、例えば、(1) 繊維への連鎖移動反応を利用し、ラジカルを生成し重合する方法、(2) 第2セリウム塩や硫酸銀塩などをアルコール、チオール、アミンのような還元性物質を作用させて酸化還元系(レドックス系)を形成し、繊維にフリーラジカルを生成して重合を行う方法、(3) 繊維と、アレルゲン抑制剤の原料となる単量体とを共存させた状態で、繊維にγ線や加速電子線を照射する方法、(4) γ線や加速電子線を繊維だけに照射し、その後にアレルゲン抑制剤の原料となる単量体を加えて重合を行う方法、(5) 繊維を構成する高分子を酸化してペルオキシ基を導入し或いは側鎖のアミノ基からジアゾ基を導入して、これを重合開始点として重合する方法、(6) ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基などの側鎖の活性基によるエポキシ、ラクタム、極性ビニルモノマーなどの重合開始反応を利用する方法などが挙げられる。
更に、グラフト重合方法を具体的に列挙する。a)アレルゲン抑制剤の原料となる単量体中でセルロースを磨砕することによってフリーラジカルを生成させてグラフト重合を行う方法。b)アレルゲン抑制剤の原料となる単量体と、繊維として連鎖移動を受けやすい
基を持つセルロース誘導体(例えば、メルカプトエチルセルロースなど)を用いてグラフト重合を行う方法。c)オゾンや過酸化物を酸化し、ラジカルを生成させる方法でグラフト重合を行う方法。d)アリルエーテル、ビニルエーテルまたはメタクリル酸エステルなどの二重結合を、セルロースの側鎖に導入してグラフト重合を行う方法。e)アントラキノン−2,7−ジスルホン酸ナトリウムなどを光増感剤として用い、繊維に紫外線を照射してグラフト重合を行う方法。f)カソードの周りに繊維を巻き、希硫酸中に、アレルゲン抑制剤の原料となる単量体を加えて外部電圧を加えることにより電気化学的にグラフト重合を行う方法。
繊維へのグラフト重合であることを勘案すれば、下記方法が好ましい。g)メタクリル酸グリシジル(GMA)と過酸化ベンゾイルを塗った繊維を、アレルゲン抑制剤の原料となる単量体溶液中で加熱することによりグラフト重合する方法。h)過酸化ベンゾイル、界面活性剤(非イオン界面活性剤又は陰イオン界面活性剤)及びモノクロロベンゼンを水へ分散させた分散液に、アレルゲン抑制剤の原料となる単量体を加え、繊維として、例えばポリエステル系繊維を浸漬して、加熱してグラフト重合を行う方法。
上記高分子反応法としては、汎用の方法が使用でき、例えば、(1) C−Hに対する連鎖移動反応、酸化反応、置換反応、(2) 二重結合に対する付加反応、酸化反応、(3) ヒドロキシル基のエステル化、エーテル化、アセタール化、エステル基やアミド基に対する置換反応、付加反応、加水分解反応、ハロゲン基に対する置換反応、脱離反応、(4) 芳香環
に対する置換反応(ハロゲン化、ニトロ化、スルホン化、クロルメチル化)などが挙げられる。
次に、アレルゲン抑制剤を繊維に物理的に固着させる方法について説明する。アレルゲン抑制剤を繊維に物理的に固着させる方法としては、例えば、(1) アレルゲン抑制剤を溶剤中に溶解或いは分散させ、このアレルゲン抑制剤溶液中に繊維を含浸させて、繊維にアレルゲン抑制剤溶液を含浸させる方法、(2) 上記アレルゲン抑制剤溶液を繊維表面に塗布する方法、(3) 上記アレルゲン抑制剤を溶解或いは分散させてなるバインダー中に浸漬させて、アレルゲン抑制剤をバインダーによって繊維に固着させる方法、(4) 上記アレルゲン抑制剤を溶解或いは分散させてなるバインダーを繊維表面に塗布し、アレルゲン抑制剤をバインダーによって繊維に固着させる方法などが挙げられる。なお、上記(1) (2) の方法において、アレルゲン抑制剤溶液中に下記バインダーを含有させてもよい。
上記溶剤としては、特に限定されず、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール類;トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類などが挙げられる。
上記バインダーとしては、アレルゲン抑制剤を繊維表面に固着できるものであれば、特に限定されず、例えば、合成樹脂からなるバインダーとしては、一液型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂などのウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂などが挙げられ、ウレタン系樹脂が好ましい。
又、上記では、アレルゲン抑制剤を別途製造された繊維に化学的に結合させ或いは物理的に固着させることによって、繊維にアレルゲン抑制剤を含有させる要領を説明したが、アレルゲン抑制剤を化学的に結合させた繊維原料を紡糸して繊維を作製してもよい。
アレルゲン抑制剤を化学的に結合させた繊維原料の作製要領としては、特に限定されず、例えば、アレルゲン抑制剤を置換基として有する重合性単量体と、一般の繊維原料となる重合性単量体とを共重合させて繊維原料を作製する方法が挙げられる。
又、アレルゲン抑制剤に親水性高分子を含有させることを説明したが、アレルゲン抑制剤及び親水性高分子を置換基として有する重合性単量体を用いることによって、アレルゲン抑制剤及び親水性高分子を化学的に結合させた繊維原料を作製し、この繊維原料を紡糸することによって、アレルゲン抑制剤及び親水性高分子を含有させた繊維を作製することができる。
本発明のアレルゲン抑制剤は、上述の構成を有していることから、アレルゲン抑制剤をアレルゲン対象物に供給することによって日常生活における通常の湿度下においてアレルゲン対象物にアレルゲン抑制効果を付与することができる。
しかも、本発明のアレルゲン抑制剤は、アレルゲン対象物の風合いを損ねることなく、アレルゲン対象物に存在するアレルゲンを抑制することができることから、アレルゲン対象物の色彩にかかわらずアレルゲン対象物の外観を損なうことなく、アレルゲン対象物合物にアレルゲン抑制効果を付与することができる。
(実施例1〜3、比較例1)
各実施例ごとにアレルゲン抑制剤として表1に示したように、フェノール樹脂(1)(新日本石油化学社製 商品名「PP−700−300」)、フェノール樹脂(2)(新日本石油化学社製 商品名「PP−1000−240」)、フェノール樹脂(3)(新日本石油化学社製 商品名「DPP−L」)又はポリ−4−ビニルフェノール(アルドリッチ社製 重量平均分子量:8000)をジメチルホルムアミドに10重量%、1重量%、0.1重量%又は0.01重量%となるように溶解させてアレルゲン抑制剤溶液を作製した。なお、フェノール樹脂(1)(2)は構造式()で、フェノール樹脂(3)は構造式()で示される。
Figure 0004278562

(Rは、メチル基又はエチル基である。)
Figure 0004278562
(実施例4)
アレルゲン抑制剤としてフェノール樹脂(1)5重量部及びポリビニルピロリドン(和
光純薬社製 商品名「K30」、重量平均分子量:40000)4重量部をジメチルホルムアミド100重量部に溶解させてアレルゲン抑制剤溶液を作製した。
このアレルゲン抑制剤溶液を不織布(綿:80重量%、ポリエステル繊維:20重量%、目付:100g/m2 )に20マイクロリットル/cm2 となるように噴霧して50℃で15時間に亘って放置して乾燥させ、アレルゲン抑制不織布を得た。
(実施例5)
アレルゲン抑制剤としてフェノール樹脂(1)3重量部、ポリオキシメチレン(和光純薬社製、重量平均分子量:7500)2重量部及びポリアクリル酸ナトリウム(アルドリッチ社製、重量平均分子量:2100)2重量部をジメチルホルムアミド水溶液(ジメチルホルムアミド:90重量%)100重量部に溶解させてアレルゲン抑制剤溶液を作製した。
このアレルゲン抑制剤溶液を不織布(綿:80重量%、ポリエステル繊維:20重量%、目付:100g/m2 )に20マイクロリットル/cm2 となるように噴霧して50℃で15時間に亘って放置して乾燥させ、アレルゲン抑制不織布を得た。
(実施例6)
ポリビニルピロリドンを用いなかったこと以外は実施例4と同様にしてアレルゲン抑制不織布を得た。
(比較例2)
ジメチルホルムアミドにアレルゲン抑制剤を溶解させることなく用いた。
(比較例3)
実施例4で用いた不織布にアレルゲン抑制剤溶液を噴霧させることなく用いた。
(比較例4)
フェノール樹脂(1)を用いなかったこと以外は実施例4と同様にしてジメチルホルムアミド溶液を作製した。このジメチルホルムアミド溶液を不織布(綿:80重量%、ポリエステル繊維:20重量%、目付:100g/m2 )に20マイクロリットル/cm2 となるように噴霧して50℃で15時間に亘って放置して乾燥させた。
(比較例5)
フェノール樹脂(1)を用いなかったこと以外は実施例5と同様にしてジメチルホルムアミド溶液を作製した。このジメチルホルムアミド溶液を不織布(綿:80重量%、ポリエステル繊維:20重量%、目付:100g/m2 )に20マイクロリットル/cm2 となるように噴霧して50℃で15時間に亘って放置して乾燥させた。
(比較例6)
フェノール樹脂(1)の代わりにポリ4−ビニルフェノール(アルドリッチ社製 重量平均分子量:8000)を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてアレルゲン抑制不織布を得た。
(比較例7)
アレルゲン抑制剤としてポリ4−ビニルフェノール(アルドリッチ社製 重量平均分子量:8000)20重量部及びポリビニルピロリドン(和光純薬社製 商品名「K30」、重量平均分子量:40000)8重量部をジメチルホルムアミド100重量部に溶解させてアレルゲン抑制剤溶液を作製した。このアレルゲン抑制剤溶液を用いて実施例4と同
様の要領でアレルゲン抑制不織布を得た。
実施例1〜3及び比較例1で得られたアレルゲン抑制剤溶液、並びに、比較例2で得られたジメチルホルムアミドのアレルゲン抑制能を下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
更に、実施例4〜6及び比較例3〜7で得られた不織布のダニ及びスギ花粉のアレルゲン抑制率並びに風合いを下記に示した要領で測定し、その結果を表2に示した。
(アレルゲン抑制能)
アレルゲンの冷結乾燥粉末(コスモ・バイオ社製 商品名「Mite Extract-Dp」 )をタンパク量が8ng/ミリリットルになるようにリン酸バッファー(pH7.6)に溶解させてアレルゲン溶液を作製した。
次に、アレルゲン溶液を試験管ミキサーを用いて攪拌しながら、アレルゲン溶液1ミリリットルにアレルゲン抑制剤溶液又はジメチルホルムアミド溶液100マイクロリットルを添加して37℃で2時間に亘って震とうした。
続いて、アレルゲン溶液のアレルゲン性をアレルゲン測定具(シントーファイン社製 商品名「マイティーチェッカー」)を用いて評価した。そして、アレルゲン測定具の発色度合いを目視観察して下記の通り評価した。
4・・・アレルゲンタンパク濃度:8ng/ミリリットル
3・・・アレルゲンタンパク濃度:4ng/ミリリットル
2・・・アレルゲンタンパク濃度:2ng/ミリリットル
1・・・アレルゲンタンパク濃度:1ng/ミリリットル
(ダニのアレルゲン抑制率)
実施例4〜6及び比較例3〜7で作製された不織布から一辺が10cmの平面正方形状の試験片を各不織布ごとに5枚づつ切り出した。そして、エチルアルコール90重量部及び精製水10重量部を混合してなる液に塵ゴミ(Der p1アレルゲン:10μg/g含有)1重量部を分散させてなるアレルゲン溶液液を作製し、このアレルゲン溶液を各試験片に5ミリリットル振り撒いた後、50℃のオーブンで5分間乾燥させた。
各試験片について、乾燥直後のアレルゲン量(W1 )と、25℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽内に15時間放置した後のアレルゲン量(W2 )を下記の方法により測定し、アレルゲン抑制率を下記式に基づいて算出した。なお、各不織布ごとに、5枚の試験片のアレルゲン抑制率の相加平均値を求め、この相加平均値をアレルゲン抑制率とした。
アレルゲン抑制率(%)=100×(1−W2 /W1
各試験片のアレルゲン量の測定は下記の要領で行った。先ず、アレルゲンを含有させた試験片を15ミリリットルのガラス試験管に丸めて入れ、ガラス試験管に10ミリリットルの抽出液(リン酸バッファー(pH7.35)に1重量%のBSAと0.05重量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを加えたもの)を供給した。
しかる後、ガラス試験管を20分間に亘ってよく振とうした後、直ちに抽出液を採取した。得られた抽出液中のアレルゲン量を、ELISAキット(LCDアレルギー研究所社製)を用いて測定し、1m2 あたりのDer p1量に換算した。
(スギ花粉のアレルゲン抑制率)
実施例4〜6及び比較例3〜7で作製された不織布から一辺が10cmの平面正方形状の試験片を各不織布ごとに5枚づつ切り出した。そして、採取したスギ花粉を0.125Mの重炭酸アンモニウムで抽出し、得られた抽出液のCryj1濃度が40g/ミリリットルとなるように、リン酸バッファー溶液(pH:7.6)で希釈してアレルゲン溶液とした。
このアレルゲン溶液10ミリリットル中に各試験片を丸めて入れ、37℃で1時間に亘って震とうした後、20時間に亘って静かに放置した。そして、アレルゲン溶液から測定液を抽出して、この測定液中のアレルゲン量をELISAキット(LCDアレルギー研究所社製)を用いて測定し、Cryj1量(W3 )(ng/ミリリットル)を求め、アレルゲン抑制率を下記式に基づいて算出した。なお、各不織布ごとに、5枚の試験片のアレルゲン抑制率の相加平均値を求め、この相加平均値をアレルゲン抑制率とした。
アレルゲン抑制率(%)=100×(1−W3/40)
(風合い)
実施例4〜6及び比較例4〜7の不織布を素手で触り、比較例3の不織布の手触りと比較し、下記の基準に基づいて判断した。
4・・・比較例3の不織布と殆ど違いが感じられなかった。
3・・・比較例3の不織布よりも少し硬く感じられた。
2・・・比較例3の不織布より硬く感じられた。
1・・・比較例3の不織布に比して硬過ぎて使用に問題があった。
Figure 0004278562
Figure 0004278562

Claims (3)

  1. 式(1)又は式(2)で表されるフェノール樹脂からなることを特徴とするアレルゲン抑制剤
    Figure 0004278562

    (Rは、メチル基又はエチル基である。)
    Figure 0004278562
  2. アレルゲンがヒョウヒダニ由来であることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン抑制剤
  3. 親水性高分子を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアレルゲン抑制剤
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