JP4278067B2 - 炭化水素のアルキル化法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素のアルキル化法に関し、特に、水素添加性成分および固体酸成分を含む触媒の存在下で脂肪族炭化水素をアルキル化するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の構成内においてアルキル化という語は、飽和炭化水素、一般には分岐した飽和炭化水素とオレフィンとを反応させて分子量がより高い、高次に分岐した飽和炭化水素を得ることを意味する。特に、この反応は、イソブタンを炭素数2〜6のオレフィンでアルキル化することにより、オクタン価が高くかつガソリン範囲で沸騰するアルキレートを得ることを可能にするので、興味深い。減圧軽油および常圧残油などの比較的重い石油画分をクラッキングすることによって得られるガソリンと違って、アルキル化によって得られるガソリンは、硫黄および窒素などの汚染物質を実質的に含まず、従ってクリーンな燃焼特性を有する。その高いアンチノック特性は、高いオクタン価によって表され、鉛などの環境上有害なアンチノック剤を添加する必要性を減少させる。また、ナフサの改質または比較的重い石油画分のクラッキングによって得られるガソリンと違って、アルキレートは、芳香族またはオレフィンを含むとしても少量であり、このことは、環境上さらに有利であると言える。
【0003】
アルキル化反応は酸によって触媒される。現在、市販のアルキル化装置では、硫酸およびフッ化水素などの液体の酸触媒が使用される。かかる触媒の使用には、幅広い問題が付随する。例えば、硫酸およびフッ化水素は腐食性が高く、その結果、使用される装置は高品質要件を満たさなければならない。得られる燃料に腐食性の高い物質が存在することは問題となり得るので、残存する酸はアルキレートから除去されなければならない。また、相分離を行わなければならないため、プロセスは複雑化し、従って高価である。その他に、フッ化水素などの毒性の物質が放出される危険が常にある。
【0004】
これらの問題を防ぐために、ゼオライト含有触媒などの固体の酸触媒をアルキル化反応で使用することが長年の研究課題となっている。これらの触媒をアルキル化において使用する場合の重要な問題は、触媒の不活性化が非常に急速に起こることであり、これは、ポリアルキレートが形成され、これが転化されてコークスになるためであると考えられる。
【0005】
固体の酸触媒を再生するための多くの方法が開発されているが、これらの方法はいずれも、固体の酸触媒の商業規模での使用を可能にするのに十分有効かつ簡単なものではない。
【0006】
このように、不活性化したゼオライト含有触媒を高温、例えば200〜400℃で水素を用いて気相で再生することは公知である。この再生法は、触媒の活性をその最初のレベルに回復させることができる。しかし、この再生法を用いる場合、反応体および生成物は反応器から取り出されなければならず、反応器は加熱されなければならず、水素ガスは高温の反応器の中を通されなければならず、反応器は再生後に再び冷却されなければならず、水素の供給は停止されなければならず、反応器は反応体で再度充填されなければならない。触媒を不活性化のたびにこの方法で再生しなければならない工業的方法は、商業規模での使用には魅力的でない。
【0007】
あるいは、米国特許第3,549,557号は、オレフインを用いてイソブタンをアルキル化する方法を記載しており、該方法では、オレフィンの不存在下、所望により加熱しながらイソブタンで洗浄することによりゼオライト含有触媒を再生している。触媒がかなりコークスになってきた場合は、酸素の存在下で加熱することにより再生される。この特許では、ポリアルキレートの形成は、触媒をイソブタンで繰り返し洗浄することにより防止され得ることが提出されている。これによれば、より長い触媒サイクルが得られる。しかし、この特許に記載されている実験は、この方法により触媒不活性化の前の総反応時間が10時間から14時間に増加され得るに過ぎないことを示している。この再生法は、従って、工業的操作には十分ではない。
【0008】
米国特許第3,815,004号は、VIII族の水素添加性金属とゼオライトとを含む触媒の存在下でオレフィンをアルキル化され得る有機化合物と反応させる炭化水素のアルキル化法を記載している。触媒の活性が許容されないレベルに低下すると、触媒は、オレフィンの不存在下、アルカン中の水素の溶液と接触させることにより再生される。実験では、触媒の活性が許容されないレベルに低下したとき、すなわち、オレフィンが反応器から出る生成物中に認められた後に触媒をこの方法で再生することにより、許容されない結果が得られる前の2、3サイクルのみに使用可能な方法が得られることを示している。さらに、反応収率が低いことが分かった。実施例では、オレフィンに基づいて計算して、133〜136重量%の収率が得られている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、品質が良好なアルキレートを商業的に興味深い方法で長期間にわたって高収率で製造することを可能にする炭化水素のアルキル化法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る方法では、アルキル化され得る有機化合物を、水素添加性成分および固体酸成分を含む触媒の存在下でアルキル化剤と反応させてアルキレートを形成し、触媒は、飽和炭化水素および水素を含む液体供給物と接触されることにより断続的に再生工程に付され、該再生は、触媒の活性サイクルの35%以下の時点でかつ触媒含有反応器区域を出る生成物中にアルキル化剤が認められる時点よりも前であるところのアルキル化剤の漏出前に行われる。触媒の活性サイクルは、アルキル化剤の供給開始から、触媒含有反応器区域の入口の濃度に対して20%のアルキル化剤が、転化されることなく(分子内での異性化を計算に入れない)触媒含有反応器区域を出るときまでの時間として定義される。
【0011】
【発明の効果】
本発明に係る方法の核心は、触媒活性の実質的な減少がある前に触媒が再生されるということにある。この結果、高品質のアルキレートが非常に長時間にわたって高収率で製造でき、一方、再生は容易に行われる方法が得られることが見出された。
【0012】
【発明の実施の形態】
触媒が飽和炭化水素および水素を含む供給物によって再生されるので、該方法は、液相から気相への移行およびその逆を行う必要なく本質的に連続的に行うことができ、これは、高められた温度で水素ガスを用いる再生とは対照区別される。反応器を加熱および冷却する必要がないので、該方法はエネルギーをあまり必要としない。さらに、触媒は、液体の酸/固体担体の場合のように揮発性または緩く結合した成分を何ら含まないので、本発明に係る方法に付随する環境上の危険は他の方法よりも少ない。
【0013】
さらに、本発明に係る方法は順応性がある。環境のために触媒がプロセス中に許容されない程度に不活性化する場合、触媒は、気相中、高温で水素と接触させることにより通常の方法で再生して最初の活性を取り戻すことができる。触媒は次いで、本発明に係る方法において再び使用することができ、飽和炭化水素および水素を含む供給物を用いた断続的再生が行われる。高温での再生は少なくとも175℃の温度、好ましくは175〜600℃の範囲、より好ましくは200〜400℃の範囲で行われる。商業的規模で長時間のプロセスを行うためには、例えば、かかる高温での再生を、飽和炭化水素および水素を用いた再生を50回行う毎に、好ましくは100回行う毎に行うことができる。パイロットプラント実験は、飽和炭化水素および水素を用いた再生を200〜400回行う毎に高温での再生に付すと、長時間のプロセスを行うことが可能であることを示した。この値は、商業的規模での正確なプロセス変数に応じて、実際はより高くても低くてもよい。
【0014】
本発明に係る方法は、組成がほぼ一定の物質を高収率で与える。先行技術に係る方法では、オレフィンが漏出した後、すなわち反応器を出る生成物中にオレフィンが認められた後まで触媒を再生しないと、C5+アルキレートの収率は漏出後にかなり低下し、一方、望ましくないC9+副生物の量は増加する。オレフィンの漏出前に再生することにより、高オクタン価のC5+のアルキレートの収率を高く保持し、一方、C9+の量は制限することができる。従って、本発明に係る方法を用いると、品質が低く、それ故に経済的価値の低下した物質はほとんど製造されないであろう。
【0015】
本発明に係る方法で使用される触媒は、水素添加性成分および固体酸成分を含む。適切な水素添加性成分の例としては、周期表のVIII族の金属などの遷移金属の要素またはそれらの混合物が挙げられる。これらの中では、周期表のVIII族の貴金属が好ましい。白金、パラジウムおよびそれらの混合物が特に好ましい。水素添加性成分の量は、その性質に依存する。水素添加性成分が周期表のVIII族の貴金属である場合、触媒は一般に、金属として計算して、0.01〜2重量%、好ましくは0.1〜1重量%の範囲の金属を含む。固体酸成分の例としては、Y−ゼオライトなどのゼオライト、例えば、H−Y−ゼオライトおよびUSY−ゼオライト、ゼオライトベータ、MCM−22およびMCM−36など;シリカ−アルミナなどのゼオライトでない固体の酸;ジルコニウム、チタンまたはスズの硫酸化酸化物、ジルコニウム、モリブデン、タングステンなどの硫酸化混合酸化物などの硫酸化酸化物;および塩素化アルミニウム酸化物が挙げられる。本発明の好ましい固体酸成分は、ゼオライト(例えばY−ゼオライトおよびゼオライト ベータなど)、硫酸化酸化物および塩素化アルミニウム酸化物である。固体酸成分の混合物も使用することができる。
【0016】
驚いたことに、本発明方法で使用される触媒がマトリックス物質を含むと好ましいことが分かった。触媒反応の技術では、触媒粒子にマトリックスを混入すると、活性成分、例えば固体酸成分のみを含む触媒粒子と比較して触媒の活性は低下することが一般に予想される。これは、マトリックスが活性成分を「希釈する」からである。触媒の選択性は、アルミナなどの比較的不活性なマトリックス物質を触媒粒子に混入しても、実質的に同じままであると予想される。しかし、本発明の場合、驚いたことに、触媒組成物にマトリックス成分を混入すると、リサーチ法オクタン価(RON)が増加することが明らかになった。RONの増加は、高RONを有する化合物に関する選択性の増加を意味する。従って、本発明方法で使用される触媒は、好ましくは、担体上に水素添加性成分を含み、該担体は、担体に基づいて計算して2〜98重量%の固体酸成分および98〜2重量%のマトリックス物質を含む。好ましくは、担体は、10〜90重量%のマトリックス物質および90〜10重量%の固体酸成分を含む。より好ましくは、担体は、20〜80重量%のマトリックス物質および残部の固体酸成分を含む。特に好ましいのは、担体が20〜50重量%のマトリックス物質および残部の固体酸成分を含む触媒である。
【0017】
本明細書において、マトリックス物質という語は、触媒に存在する、固体酸成分および水素添加性金属成分以外の全ての成分を包含する。適するマトリックス物質の例としては、アルミナ、シリカ、粘土およびそれらの混合物が挙げられる。アルミナを含むマトリックス物質が一般に好ましい。現時点では、本質的にアルミナから成るマトリックス物質が最も好ましいと考えられる。
【0018】
また、再度驚いたことに、触媒粒子の粒径が増加すると、本発明方法で使用される触媒の選択性および安定性が増加することも分かった。液相で高酸性触媒を用いたアルキル化反応などの拡散制限反応を扱う場合、触媒技術に熟練した人であれば、触媒粒子の大きさが増加すると触媒の有効体積活性は減少すると一般には予想するであろう。この背景にある推論は次の通りである。触媒粒子の大きさが増加すると、反応体が触媒粒子の全ての活性部位に到達するのに要する時間が長くなる。この結果、触媒の活性は減少するであろう。さらに、触媒粒子の大きさが増加すると、反応生成物が触媒粒子を離れるのに要する時間が長くなり、これは副反応の危険を増加させ、従って選択性の低下を招く。このような副反応によって生成した二次生成物も触媒を離れるのに要する時間が長くなるので、これらの物質がコークスに転化される危険も増加する。コークスの形成は触媒の安定性を低下させる。アルキル化技術では、このような考察から、この分野に携わる人々は、比較的小さい触媒粒子が使用されるスラリー型プロセスの開発を行っている。
【0019】
しかし、本発明方法の場合は、驚いたことに、触媒粒子の粒径が例えば約0.5mmの値から約0.75mmの値に増加するならば、RONの増加によって示されるように、生成するC8−アルキレートの品質が改善されることが見出された。さらに、時間と共に生成するC9+アルキレートの量は減少するのが分かる。C9+アルキレートはコークスにも導く可能性のある反応経路に沿って製造されるので、C9+アルキレートの生成の減少は、触媒の安定性の増加を示す。
【0020】
従って、本発明方法で使用される触媒は、好ましくは、少なくとも0.75mmの粒径を有する。好ましくは、粒径が少なくとも1.5mm、より好ましくは少なくとも2.5mmである。粒径の上限は好ましくは15mmであり、より好ましくは10mm、さらに好ましくは8mmである。本明細書において、粒径という語は、触媒の固体部分の平均直径として定義され、これは当業者には明らかである。
【0021】
触媒は、該産業で一般的な方法によって製造することができる。これらは、例えば、固体酸成分をマトリックス物質と混合した後に成形して粒子を形成し、次いで該粒子を焼成することを含む。水素添加性成分は、例えば、担体粒子に水素添加性金属成分の溶液を含浸させることによって触媒組成物に混入させることができる。
【0022】
特定の方法での活性サイクル値およびアルキレート収率は触媒の性質および特性に依存するが、プロセス条件にも依存する。上記したように、所与の触媒および所与のプロセス条件に関する活性サイクルは、アルキル化剤の供給開始から、触媒含有反応器区域の入口と比較して20%のアルキル化剤が転化されることなく(分子内での異性化を計算に入れない)触媒含有反応器区域を出るときまでの時間として定義される。C5+アルキレートの収率は、生成したC5+アルキレートの重量を消費されたオレフィンの総重量で割ったものとして定義される。この数値は、しばしばパーセント(%)で表される。
【0023】
本発明に係る方法は、炭素数4〜10のイソアルカン、例えばイソブタン、イソペンタンもしくはイソヘキサンまたはそれらの混合物などを、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜6、より好ましくは炭素数3〜5のオレフィンでアルキル化するために使用されるのが特に適している。イソブタンをブテンまたはブテンの混合物を用いてアルキル化することは、本発明に係る方法の魅力的な態様を形成する。
【0024】
当業者には明らかであるように、本発明に係る方法は、流動床法、スラリー法および固定床法などの適切な形態で適用することができ、固定床法が好ましい。該方法は、各々にオレフィンが別々に添加される多数の床で行うことができる。そのような場合、本発明方法は、別々の各床で行うことができる。
【0025】
アルキル化法は、アルキル化剤およびアルキル化され得る化合物の少なくとも一部が液相または超臨界相にあるような条件下で行われる。一般に、本発明に係る方法は、−40〜250℃の範囲の温度、好ましくは50〜150℃の範囲、より好ましくは75〜95℃の範囲の温度、および1〜100バールの圧力、好ましくは10〜40バール、より好ましくは15〜30バールの圧力で行われる。反応器中の総供給物におけるアルキル化され得る化合物とアルキル化剤とのモル比は、好ましくは5:1より高く、より好ましくは50:1より高い。モル比が高い方が、性能の理由から好ましいと考えられる。というのは、その方が一般にオクタン価および安定性の増加が得られるからである。この比の上限は、適用されるプロセスの型およびプロセス経済によって決定される。それは重要ではなく、5000:1と高くてもよい。一般には、例えば1000:1以下の数字が好ましい。現在は、アルキル化され得る化合物とアルキル化剤とのモル比が150〜750:1であるのが最も好ましいと考えられる。アルキル化剤の供給速度(WHSV)は一般に、1時間当たりの触媒1gに対するアルキル化剤の量として、0.01〜5gの範囲、好ましくは0.05〜0.5gの範囲、より好ましくは0.1〜0.3gの範囲である。アルキル化され得る飽和炭化水素のWHSVは、好ましくは、0.1〜500h-1の範囲である。
【0026】
明らかなように、アルキル化反応中の反応媒体に存在する必須成分は、アルキル化され得る有機化合物およびアルキル化剤である。もちろん、反応媒体は生成した反応生成物も含む。反応は、反応媒体中に他の成分が実質的に存在しない中で行うことができる。しかし、反応媒体は、アルキル化反応に有害な影響を及ぼさない限り、他の成分を一般には少量含んでもよい。特に、反応媒体は、例えば再生工程からの残留物としての水素を少量含んでもよい。あまりにも多すぎる量の水素は、アルキル化剤との反応によってアルキル化反応を妨害するだろうから、回避されるべきである。にもかかわらず、痕跡量の水素は許容可能であり、場合によっては有益であるかもしれない。
【0027】
触媒は、水素と飽和炭化水素との混合物と接触させることにより再生される。水素と飽和炭化水素との混合物は一般に、炭化水素中の水素の溶液の形を取る。好ましくは、該容液は水素の飽和濃度の少なくとも10%を含み、該飽和濃度は、再生温度および圧力で飽和炭化水素に溶解可能な水素の最大量として定義される。より好ましくは、溶液が飽和濃度の少なくとも50%を含み、より好ましくは少なくとも85%である。水素の再生作用のために、飽和炭化水素中の水素の溶液はできるだけ飽和されるのが好ましい。というのは、こうすると、再生時間が短縮されるだろうからである。
【0028】
再生工程で使用される飽和炭化水素の性質に関しては、以下のことが言及される。原則として、再生温度および圧力で液体であるかまたは超臨界条件にある、直鎖の、分岐鎖の、または環式の飽和炭化水素であればいずれも使用できる。実際には、一般に、アルキル化され得る化合物を再生での飽和炭化水素として使用するのが好ましい。なぜならば、その場合、その系に追加の成分を添加する必要がないからである。その場合のさらに別の利点は、再生工程からの流出液を正規のアルキレート流に加えることができることである。
【0029】
一般に、再生工程は、−40〜250℃の範囲の温度、1〜100バールの圧力および0.1〜500h-1の範囲の飽和炭化水素のWHSVで行われる。再生で使用される飽和炭化水素が、アルキル化され得る化合物である場合、再生条件は、反応条件とできるだけ相違しないのが好ましい。こうすると、反応の遂行が促進される。その場合、再生温度は、反応温度と50%以下だけ、より好ましくは20%以下だけ、さらにより好ましくは10%以下だけ異なる(単位:℃)のが好ましく、再生圧力は、反応圧力と50%以下だけ、より好ましくは20%以下だけ、さらにより好ましくは10%以下だけ異なり、そして特に固定床法の場合は、再生−WHSVが反応−WHSVと50%以下だけ、より好ましくは20%以下だけ、さらにより好ましくは10%以下だけ異なるのが好ましい。さらにより好ましくは、再生中の温度、圧力および特に固定床法の場合の飽和炭化水素のWHSVが反応中の温度、圧力および飽和炭化水素のWHSVと本質的に同じである。こうすると、プロセスの遂行が全体として経済的に促進される。しかし、場合によっては、反応工程よりも高い温度または圧力で再生を行うのが魅力的であるかもしれない。あるいは、再生を超臨界条件下で行ってもよい。しかし、再生工程および反応工程を異なる条件下で行うことは、工程から工程への、制御があまり容易でない切換をいつも伴うであろう。再生工程の時間は、多数の条件、例えば触媒の性質、反応工程の時間、反応条件、再生条件および再生工程中に存在する水素の量に依存する。一般に、反応工程の時間が短いほど、再生工程が短くなり、良好であると考えられる。また、再生回数が多いほどより有効な再生が得られる。さらに、再生工程は、飽和炭化水素中の水素の再生溶液がより多くの水素を含むほど、短縮され得る。一般に、再生工程の時間は反応工程の時間の0.1〜10倍の範囲であり、好ましくは反応工程の時間の0.5〜2倍の範囲である。再生工程ごとに消費されるH2の量は、特に、再生工程の時間および飽和炭化水素中のH2濃度に依存する。一般には、1回の再生につき触媒1g当たり0.001〜0.25モルのH2である。
【0030】
反応工程と再生工程との間、再生工程と反応工程との間または両方の場合に洗浄工程を導入するのが好ましく、洗浄工程では、触媒を、アルキル化剤および水素を本質的に含まない飽和炭化水素で洗浄する。再生工程に関しては、原則として、洗浄条件下で液体であるか超臨界条件にある、直鎖の、分岐鎖の、または環式の飽和炭化水素であればいずれも使用可能である。実際には、洗浄工程の場合も、アルキル化され得る化合物を飽和炭化水素として使用するのが一般に好ましい。なぜならば、こうすると、その系に追加の成分を添加することが回避されるからである。洗浄工程は、アルキル化され得る化合物とアルキル化剤との混合物が供給される反応工程から、飽和炭化水素、好ましくはアルキル化され得る化合物、と水素との混合物が供給される再生工程への切換を容易にするために行われる。洗浄工程を導入すると、オレフィン性アルキル化剤が水素と接触するのが防止される。かかる接触は、一般に、オレフィンと水素との間に反応を招き、アルカンを形成する。一般に、洗浄工程は−40℃〜250℃の範囲の温度、1〜100バールの圧力、および0.1〜500h-1の範囲の飽和炭化水素のWHSVで行われる。洗浄工程中に使用される飽和炭化水素がアルキル化され得る化合物である場合、洗浄条件と反応条件との間の相違はできるだけ少ないのが好ましい。こうすると、プロセスの遂行が促進される。その場合、洗浄温度は反応温度と50%以下だけ、より好ましくは20%以下だけ、さらにより好ましくは10%以下だけ異なる(単位:℃)のが好ましく、洗浄圧力は反応圧力と50%以下だけ、より好ましくは20%以下だけ、さらにより好ましくは10%以下だけ異なり、そして特に固定床法の場合は、洗浄−WHSVが反応−WHSVと50%以下だけ、より好ましくは20%以下だけ、さらにより好ましくは10%以下だけ異なるのが好ましい。より好ましくは、洗浄工程中の温度、圧力および特に固定床法の場合の飽和炭化水素のWHSVが、再生工程中と同様に、反応中の温度、圧力および飽和炭化水素のWHSVと本質的に同じである。反応条件が再生条件と異なる場合、反応が行われる条件と再生が行われる条件との中間の条件を洗浄工程のために選択するのが好ましい。あるいは、洗浄工程の温度および圧力などの条件を、反応工程の条件から再生工程中の優勢な条件へ、またはその逆に徐々に移行させることも可能である。これは全て、適切なプロセス制御を可能にする。洗浄工程の時間は、オレフィンおよび水素が互いに本質的に分離したままであるであるように選択される。一般に、洗浄工程の時間は、長くても再生工程と同じである。洗浄工程の時間は、好ましくは、再生工程の時間の0.01〜1倍の長さである。
【0031】
プロセスの運転開始に関するいくつかの用語は適切であると考えられる。プロセスが行われる温度よりも低い温度でプロセスを運転開始させるのが有利であり得ることが分かった。この手法の利点は、運転開始中、低温で使用されることにより、触媒がわずかに不活性化されることである。この結果、望ましくない副反応はあまり生じないと考えられる。
【0032】
再生は、触媒の活性サイクルの90%以下の時点、好ましくは60%以下、より好ましくは35%以下、さらにより好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下の時点で行われる。一般には、触媒再生を頻繁に行うのが好ましい。なぜならば、こうすると生成される物質の品質に有利であり、再生時間の短縮が可能になるからである。再生手順はプロセスに容易に含められるので、定期的な再生が実行可能である。特定の場合の再生の最適な回数は、触媒の性質およびプロセス条件に依存し、当業者であれば容易に決定することができる。
【0033】
触媒がより頻繁に再生されるので、得られる物質はC9+アルキレートをあまり含まない。C9+アルキレートは、コークスの形成を招く可能性もある反応経路に沿って製造される。従って、より多くの量のC9+アルキレートは触媒の不活性化を伴う可能性がある。本発明に係る方法を使用して得られるC5+アルキレートは、好ましくは、30重量%未満のC9+含量を有し、より好ましくは20重量%未満、最も好ましくは10重量%未満である。触媒の頻繁な再生は、C9+の生成を比較的低レベルに制御することを可能にする。また、本発明に係る方法では、再生頻度に応じて、高いC5+アルキレート収率が得られる。本発明に係る方法は、消費されたオレフィンの重量に基づいて計算して200%より多く、好ましくは204%またはそれ以上より多くのC5+アルキレート収率を得ることを可能にする。
【0034】
本発明に係る方法で得られるアルキレート生成物の品質は、生成物のRONによって測定することができる。RONは、ガソリンおよび/またはガソリン成分のアンチノック性の尺度である。RONが高いほどガソリンのアンチノック性は好ましいであろう。エンジンの機能に関して言えば、ガソリンエンジンの種類に応じて、一般的にアンチノック性が高い方が好ましい。本発明に係る方法で得られる物質は、好ましくは90以上のRON、より好ましくは92以上、最も好ましくは94以上のRONを有する。RONは、物質中の各種炭化水素の体積%を例えばガスクロマトグラフィーによって測定することにより得られる。次いで、体積%にRON寄与率を掛け、合計する。炭化水素供給物の異なる成分のRON寄与率を下記表に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
品質に関連するパラメーターは、生成したトリメチルペンタン(TMP)の量と生成したジメチルヘキサン(DMH)の量との比である。トリメチルペンタンは約100〜110のRONを有する。ジメチルヘキサンは、約60〜70のRONを有する。その結果、高オクタン価のアルキレートを得るためには、可能な最も高いTMP/DMH比が望ましい。本発明に係る方法によれば、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、より好ましくは少なくとも4のTMP/DMH比を有する物質を得ることが可能である。
【0037】
【実施例】
比較例1
本比較例では、オレフィン漏出後に適用された各種再生の効果を例示する。アルキル化反応を評価するために、固定床再循環反応器を使用した。この種の反応器は、当業者には公知である。その機能原理は、固定床反応器の大部分の流出液が反応器入口に戻されるということである。ここで、流出液流は、反応体の供給と一緒にされる。以下の実施例では、反応器流出液の約90%が反応器に戻された。約10%は、生成物の性質を調べるために主要流から分離された。
【0038】
直径2cmの反応器に18gの触媒(0.4〜0.6mmのふるい画分)とカーボランダム粒子(60メッシュ)との1:1体積/体積混合物を充填した。触媒は、固体酸成分としてのUSY−ゼオライトおよび水素添加性成分としての0.5重量%の白金を含んでいた。反応器管の中央には、直径6mmの熱電対を配置した。反応器は、30分間窒素でフラッシュした(100NI/時)。次いで、高められた圧力での系の漏れを試験した後、圧力を21バールに上げ、窒素を水素で置き換えた(100NI/時)。次いで、反応器温度を1℃/分の速度で200℃に上げた。200℃で1時間後、温度を11℃/分の速度で540℃に上げた。540℃で1時間後、反応器温度を、反応温度である90℃に下げた。
【0039】
水素流は、反応温度の達成と同時に停止された。イソブタンを約880g/時の速度で反応器に供給した。イソブタンの90%が反応器に戻された。10%は、分析のために排出された。かかる量のイソブタンを反応器に供給することにより、系に一定量の液体を確保した。系が確立されると、0.13h-1のシス−2−ブテン−WHSVが得られるようにかかる量のシス−2−ブテンを添加した。系の液体の全体の流速は、約880g/時で維持された。イソブタンとシス−2−ブテンとのモル比は約364:1であった。反応器の圧力は21バールになった。
【0040】
触媒の活性サイクルは、供給されたブテンの少なくとも20%が生成物中に認められるまで上記条件下でプロセスを行うことにより測定された。次に補間法を使用して触媒の活性サイクルを決定した。すなわち、オレフィン供給開始から、触媒含有反応器区域の入口での濃度に対して20%のアルキル化剤が転化されることなく(分子内での異性化を計算に入れない)触媒含有反応器区域を出る時までにどのくらい時間が経過したかを確認した。
【0041】
多数の実験を行って、触媒の活性サイクルに対する再生法の効果を調べた。全ての場合において、触媒は20%以上のオレフィンが漏出した後に再生された。
【0042】
【表2】
【0043】
上記表の実験1、1aおよび1bは、20%以上のオレフイン漏出を有する程度に不活性化された触媒が、250℃での水素ガスによる再生により、最初の活性まで回復可能であることを示す。この再生法は、触媒の多サイクル使用を可能にする。しかし、この再生法が使用され得るときはいつも、アルキレートおよびC9+が系から洗い流されなければならず、イソアルカンは反応器から除去されなければならず、反応器は加熱されなければならず、水素ガスは高温の反応器に通されなければならず、反応器は再生後に再び冷却されなければならず、水素の供給は停止されなければならず、反応器はイソアルカンで再度充填されなければならない。かかる再生法は、商業規模での使用には魅力的でない。
【0044】
実験2および3では、より温和な再生法が使用された。触媒は、特定の期間、水素のイソブタン溶液と接触させた。選択された期間は、触媒の適切な再生が生じたと予想されるほど長かったが、触媒の活性サイクルの長さは、新鮮な触媒および250℃で水素により再生された触媒と比較すると、かなり減少していたことが分かった。すなわち、これらの温和な再生法は、触媒の多サイクル使用を可能にしない。
【0045】
実施例1
本実施例は、本発明に係る方法を例示する。比較例1の方法を、27gの触媒を60メッシュのカーボランダム粒子との1:1体積比で使用することにより繰り返した。反応器の総供給量は約1320g/時であり、オレフィンのWHSVは約0.19h-1であり、オレフィンとイソブテンとの比は約250:1であった。最初に、触媒の活性サイクルを、オレフィンの20%が未転化のまま触媒床を離れるまで系を操作することにより測定した。これらの条件下では、活性サイクルは7時間であることが判った。
【0046】
次に、触媒を、上述したように、250℃の温度で水素により再生して触媒の活性を最初のレベルに戻した。次いで、系を同じ条件下で再び運転開始させたが、反応の1時間後毎に、すなわち活性サイクルの14%で、イソブテンを使用して10分間洗浄し、次いでイソブテン中のH2の1モル%溶液と接触させることにより100分の再生を行い、次いで、イソブタンでさらに10分間洗浄することにより触媒を再生した(洗浄および再生の総時間は2時間)。洗浄工程および再生工程中のプロセス条件は反応工程中のプロセス条件と同じであった。
【0047】
触媒1gにつき製造されるC5+アルキレートの重量を、触媒および再生法の性能の尺度として使用した。この値はその分野ではカテージ(catage)としても知られている。カテージは、次のように計算される。割合として表されるC5+アルキレート収率にオレフィンの空間速度を掛けることによりアルキレート収率(C5+アルキレートのg/時/触媒1g)が得られる。このC5+アルキレート収率に製造時間数を掛けることによりカテージが得られる。分析法に応じて、製造サイクルの種々の時点でのC5+アルキレート収率に関して得られた値を平均することにより計算される平均C5+アルキレート収率を使用してカテージを計算することが望ましいと考えられる。
【0048】
本実施例では、40サイクル後に触媒1gにつき17.4gのC5+アルキレートが製造された。その時、系はオレフィンの漏出の兆候を何ら示さなかったし、生成物の品質および収率は高いままであった。この実験中に得られた平均的な物質の特性は以下の通りであった。
【0049】
【表3】
【0050】
より長時間での比較実験では、70gより多いC5+アルキレート/触媒1gというカテージが得られた。
【0051】
比較例2
本比較例は、イソブタンによる断続的な洗浄では、イソブタンおよびH2による断続的な再生が行われる本発明に係る方法と比較して、安定なプロセスが得られないことを例示する。実施例1のプロセスを同じ条件下で繰り返したが、次の点のみが相違した。すなわち、反応の1時間後毎に、すなわち活性サイクルの14%で、イソブタンを使用して10分間洗浄し、次いでイソブタン中のH2の1モル%溶液と接触させることにより100分の再生を行い、次いで、イソブタンでさらに10分間洗浄することにより触媒を再生する(洗浄および再生の総時間は2時間)代わりに、イソブタンで2時間触媒を洗浄した。
【0052】
11サイクル後にオレフィンの漏出が認められた。これに対して、実施例1に記載したように、匹敵する条件下でイソブタンおよびH2により触媒を再生すると、40サイクル後ですら系はオレフィンの漏出の兆候を示さず、はるかに長く操作することができた。
【0053】
実施例2(参考例)
本実施例は、本発明に係る方法をさらに例示する。実施例1の方法を繰り返したが、この場合、その操作の3時間毎に、すなわち活性サイクルの42%で、最初にイソブタンで10分間洗浄し、次いでイソブタン中のH2の1モル%溶液と接触させることにより340分の再生を行い、次いでイソブタンでさらに10分間洗浄することにより触媒を再生した(洗浄および再生の総時間は6時間)。洗浄および再生工程中のプロセス条件は、反応工程中に優勢である条件と同じであった。このように操作することにより、安定なプロセスを達成することができた。160時間後もなお、オレフィンの漏出は生じなかった。平均的な生成物は、実施例1で得られた物質と実質的に同じ特性を有していた。160時間後に得られた物質の品質はなおも良好であった。
【0054】
実施例3(参考例)
本実施例は、本発明に係る方法をさらに例示する。実施例1の方法を繰り返したが、この場合、その操作の6時間毎に、すなわち活性サイクルの85%で、最初にイソブタンで10分間洗浄し、次いでイソブタン中のH2の1モル%溶液と接触させることにより700分の再生を行い、次いでイソブタンでさらに10分間洗浄することにより触媒を再生した(洗浄および再生の総時間は12時間)。洗浄および再生工程中のプロセス条件は、反応工程中に優勢である条件と同じであった。このように操作することにより、安定なプロセスを達成することは不可能であることが分かった。60時間後に漏出が生じた。この実験は、製造時間が必要な再生時間に影響を及ぼすことを示す。全ての実施例において、製造時間と再生時間との比は1:2であった。実施例1および2は、各々、1時間の製造および2時間の再生、ならびに3時間の製造および6時間の再生を使用して行われたが、該比は、安定なプロセスの続行を可能にした。本実施例では、6時間の製造および12時間の再生を使用したが、1:2の製造時間:再生時間の比では安定なプロセスはもはや得られなかった。これに対して、6時間の製造の場合、製造時間:再生時間の比を1:3に上げると共に、その操作の6時間後毎に、すなわち活性サイクルの85%で、最初にイソブタンで10分間洗浄し、次いでイソブタン中のH2の1モル%溶液と接触させることにより1060分の再生を行い、次いでイソブタンでさらに10分間洗浄することにより触媒を再生すると(洗浄および再生の総時間は18時間)、安定なプロセスが得られた。
【0055】
これらの実施例は、触媒がより早く再生される場合、比較的短い再生時間で十分であることを示す。従って、触媒はできるだけ頻繁に再生されるのが好ましい。
【0056】
実施例4
本実施例は、マトリックス物質の存在および触媒粒子の大きさの影響を例示する。この実験では、次のように充填されたマイクロフロー反応器を使用した。400℃で焼成された5gのゼオライトに相当する量の触媒を、内径が2.5cmである50mlのメスシリンダーに入れた。粒子サイズが16メッシュであるカーボランダム粒子を添加して、総体積を30mlとした。触媒およびカーボランダム粒子を注意深く混合する。中央に外径3mmの温度計保護管を備えた、内径が15mmである反応器の底部17cmに直径16メッシュのカーボランダム粒子を充填し、ガラスウールの薄い層で覆った。次いで、触媒とカーボランダム粒子との混合物を施与し、次いで細かいカーボランダム(100メッシュ)を施与して反応器を軽くたたくことにより、触媒床の大きい空間を細かいカーボランダムで充填した。触媒層をガラスウールの薄い層で被覆し、最後に16メッシュのカーボランダム粒子を施与した。反応器を閉じ、窒素でパージした後、反応器を1NI/分のH2流動下に置き、大気圧下で90℃に加熱した。次いで、反応温度を約45分で200℃に上げた。200℃で1時間後、温度を2℃/分の速度で400℃に上げた。400℃で30分後、反応器温度を下げて一夜の間に90℃(反応温度)にした。次いで、圧力を21バールにセットし、イソブタン流、次いでイソブタン中の2%のシス−2−ブテンの混合物流を開始した。触媒の試験を、90℃の温度、21バールの圧力、ゼオライト全体に基づいて計算して0.4h-1のオレフィン重量空間速度、50:1のイソブタンとシス−2−ブテンとの比で行った。
【0057】
断続的再生は、これらのマイクロ反応器試験では適用されなかった。なぜならば、それらの試験は、迅速な触媒スクリーニングのために主に使用されるからである。漏出実験のみを行い、その実験ごとに250℃および21バールでの水素ガスによる触媒の再生を続いて行った。こうすることにより、同じ触媒サンプルを用いて連続した漏出実験を行うことができた。
【0058】
比較実験から、この試験は、他の実施例で使用したサイクル反応器で得られた結果と同じ傾向を示す結果を与えることが分かった。
【0059】
この装置で5種類の触媒が試験された。それらは全て、0.5重量%の白金が充填されたUSYゼオライトおよび、存在する場合はマトリックス成分としてのガンマ−アルミナを含む。5種類の触媒はマトリックス含量および粒子サイズが様々であった。下記表に、試験された触媒成分およびそれを用いて得られた試験結果を示す。
【0060】
【表4】
【0061】
このデータから、触媒Aのアルミナ含量が0から20重量%に増加すると触媒Bが得られ、C5+収率およびC8選択性の減少は伴うが、0.57のRONの増加および0.2のTMP/DMHの増加が得られることが分かる。従って、マトリックス物質の添加は、良好な特性のC8−アルキレートを生じる。触媒Bの粒子サイズが0.4〜0.6mmから1.5mm押出物に増加すると触媒Cが得られ、同様のC5+収量が得られるが、RONの増加は1.16であり、TMP/DMH比の増加は0.6である。C8に関する選択性は、7.3%も増加している。押出物のアルミナ含量が20重量%から35重量%(触媒D)および50重量%(触媒E)にさらに増加しても、性能への実質的な影響はなかった。
【0062】
実施例5
この実施例は、不活性化の前に断続的な触媒再生を使用する方法におけるマトリックス物質の添加および粒子サイズの増加の影響を示す。この実験は、実施例1の記載に従って行われた。触媒の量は、実験ごとに、反応器が27gのゼオライトを含むように選択された。各々の場合に、触媒は60メッシュのカーボランダム粒子と、触媒に関して1:1の体積比で混合された。各場合に、触媒は、400℃での使用の前に焼成され、還元された。
【0063】
シス−2−ブテン−WHSVはゼオライトに関して計算して0.19h-1であった。系の液体の全体の流速は約1320g/hで保持された。イソブタンとシス−2−ブテンとのモル比は約250:1であった。反応器の圧力は21バールになった。反応温度は90℃であった。下記触媒をこの系で試験した。
【0064】
【表5】
【0065】
供給されたブテンの少なくとも20%が生成物に認められるまで、すなわち、20%以上のオレフィン漏出時まで上記条件下でプロセスを行うことにより、触媒Aの活性サイクルを測定した。次に、補間法を使用して触媒の活性サイクルを決定した。上記で要求された条件下では、触媒Aの活性サイクルは7時間であることが判った。触媒C、DおよびFの活性サイクルも同様に測定された。これらの触媒のライフサイクルは触媒Aのライフサイクルと実質的に同じであるようであった。
【0066】
ライフサイクルの長さが決定された後、触媒を、250℃の温度および21バールの圧力で1時間、水素を用いて再生して、触媒の活性を最初のレベルに戻した。次いで、系を同じ条件下で再び運転開始させたが、ただし、反応の1時間後毎に、すなわち活性サイクルの14%で、イソブタンを使用して10分間洗浄し、次いでイソブタン中のH2の1モル%溶液と接触させることにより100分の再生を行い、次いで、イソブタンでさらに10分間洗浄することにより触媒を再生した(洗浄および再生の総時間は2時間)。洗浄工程および再生工程中のプロセス条件は、反応工程中のプロセス条件と同じであった。下記表に、各種触媒を使用して実験中に得られた平均的物質の特性を示す。
【0067】
【表6】
【0068】
表および明細書の以下の部分において、C9+アルキレート、C8およびC5〜C7の重量%は、製造されたC5+アルキレートに基づいて計算される。カテージは、実験中にゼオライト1gにつき製造されたC5+アルキレートのグラム数として計算される。レイド蒸気圧および密度の値は、GC−分析データから求められる。
【0069】
上記表から、粒径が1.5mmであるマトリックス含有触媒を使用すると、マトリックスを含まない、粒径0.4〜0.6mmの触媒よりRONが高い物質が得られる。さらに、C9+アルキレートの重量%が減少した。これは、触媒がより安定であることを示す。粒径がさらに増加して3mmの値になると、RONはさらに増加するが、C9+アルキレートの重量%はさらに減少する。1.5mmの押出物において、担体のマトリックス含量が20重量%から35重量%に増加しても、生成物の品質は実質的に同じままである。
【0070】
実施例6
この実施例は、触媒粒子の粒径が増加すると触媒の安定性が改善されることを示す。2種類の触媒、すなわち、粒径が1.5mmである触媒および粒径が3mmである触媒を実施例1の条件下で試験した。直径が1.5mmである触媒は35重量%のアルミナを含んでいたが、直径が3mmである触媒は20重量%のアルミナを含んでいた。実施例4および5に基づくと、更なるマトリックス物質を触媒粒子に存在させても、触媒の特性に有意な影響を及ぼすことは期待されない。なお、反応器中のゼオライトの量は、両方の触媒とも同じであった。従って、これら2つの実験は比較し得ると考えられる。
【0071】
下記表は、各触媒を用いて或るカテージの後に得られた平均的物質を示す。この表から、1.5mmの押出物の場合、平均的物質の品質は、カテージを増加させてプロセスを操作すると、わずかに低下することが分かる。これは、36.5のカテージでのC9+の平均重量%が、19.4のカテージでのC9+の平均重量%と比較して、ほぼ2重量%の増加であることから特に明らかである。これと比較して、3mmの押出物の場合、平均的物質の品質は、カテージを増加させてプロセスを操作しても、平均的物質の品質は低下しなかったことが分かる。これは、19.9のカテージでのC9+の平均重量%と比較して、34.6のカテージでのC9+の平均重量%が0.1重量%だけ増加したことから明らかである。従って、直径3mmの触媒は直径1.5mmの触媒より安定であると結論付けられる。
【0072】
【表7】
【0073】
触媒の安定性は、図1と図2との比較からも明らかである。図1は、1.5mmの押出物の場合に生成したC9+の重量%を実験時間の関数として示す。図2は、3mmの押出物の場合の同様のデータを示す。これらの図から、C9+の形成は、3mmの押出物の方が1.5mmの押出物の場合よりはるかに一定であることが分かり、これは、安定性の増加を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】直径1.5mmの抽出物(触媒)を使用した場合の実験時間とC9+生成量との関係を示すグラフである。
【図2】直径3mmの抽出物(触媒)を使用した場合の実験時間とC9+生成量との関係を示すグラフである。
Claims (23)
- アルキル化され得る有機化合物を、水素添加性成分および固体酸成分を含む触媒の存在下でアルキル化剤と反応させてアルキレートを形成させる炭化水素のアルキル化法であって、触媒は飽和炭化水素および水素を含む液体供給物と接触されることにより断続的に再生工程に付され、該再生は、触媒の活性サイクルの35%以下の時点で行われ、ここで、触媒の活性サイクルは、アルキル化剤の供給開始から、触媒含有反応器区域の入口の濃度と比較して20%のアルキル化剤が、転化されることなく(分子内での異性化を計算に入れない)触媒含有反応器区域を出るときまでの時間として定義される、かつ上記時点が、上記反応器区域を出る生成物中にアルキル化剤が認められる時点よりも前であるところのアルキル化剤の漏出前であるところの方法。
- アルキル化され得る有機化合物がイソブタンであり、アルキル化剤がC3〜C5アルケンを含む、請求項1に記載の方法。
- アルキル化剤がブテンまたはブテンの混合物である、請求項2に記載の方法。
- 再生が触媒の活性サイクルの20%以下の時点で行われる、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
- 触媒が少なくとも0.75mmの粒径を有する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
- 触媒が少なくとも1.5mmの粒径を有する、請求項5に記載の方法。
- 触媒が少なくとも2.5mmの粒径を有する、請求項6に記載の方法。
- 触媒が、2〜98重量%の、アルミナ、シリカ、粘土およびそれらの混合物から選択されるマトリックス物質および残部の固体酸成分を含む担体上に水素添加性成分を含む、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
- 触媒担体が20〜80重量%のマトリックス物質および残部の固体酸成分を含む、請求項8に記載の方法。
- 触媒担体が20〜50重量%のマトリックス物質および残部の固体酸成分を含む、請求項9に記載の方法。
- マトリックス物質がアルミナを含む、請求項8〜10のいずれか一つに記載の方法。
- 固体酸成分がY−ゼオライトまたはゼオライト ベータである、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
- 水素添加性成分が周期表のVIII族の貴金属であり、金属として計算して0.01〜2重量%の量で存在する、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
- 水素添加性成分が白金、パラジウムまたはそれらの混合物である、請求項13に記載の方法。
- 再生で使用される飽和炭化水素がアルキル化され得る有機化合物である、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
- 再生温度および/または再生圧力が各々、反応温度(℃)および反応圧力と50%より多くは相違しない、請求項15に記載の方法。
- 再生温度および/または再生圧力が各々、反応温度(℃)および反応圧力と20%より多くは相違しない、請求項16に記載の方法。
- 再生が反応と同じ温度および/または圧力で行われる、請求項17に記載の方法。
- 再生工程の時間が反応工程の時間の0.1〜10倍である、請求項1〜18のいずれか一つに記載の方法。
- 再生工程の時間が反応工程の時間の0.5〜2倍である、請求項19に記載の方法。
- 再生工程の前に本質的に水素およびアルキル化剤の不存在下で飽和炭化水素を用いた洗浄工程を行い、あるいは再生工程の後に本質的に水素およびアルキル化剤の不存在下で飽和炭化水素を用いた洗浄工程を行い、あるいはその両方を行う、請求項1〜20のいずれか一つに記載の方法。
- 触媒が、気相中での水素を用いた高温再生に周期的に付される、請求項1〜21のいずれか一つに記載の方法。
- 飽和炭化水素および水素を用いた50回の再生毎に、触媒が、気相中での水素を用いた高温再生に付される、請求項22に記載の方法。
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