JP4273805B2 - 電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、過電流保護機能を備えた電源装置に係わる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、過電流保護機能を備えた電源装置は知られている。ここで、過電流保護機能とは、過電流が検出されたときに、電源装置の出力を制限したり、電源装置の動作を停止することにより、電源装置自体および/または負荷を保護する機能をいう。(例えば、特許文献1参照。)
特許文献1に記載の電源装置では、過電流が発生すると、スイッチング素子が強制的にオフ状態に制御される。これにより、出力電圧が徐々に低下していく。そして、一定時間経過後、上記スイッチング素子のスイッチング動作を再開させる。これにより、スイッチング素子に過電流が流れ続けることが回避され、発熱や素子の破壊を防ぐようにしている。
【0003】
また、出力電圧を基準信号に追従させるフィードバック制御を行う電源装置において、出力電流や出力電圧をモニタしながらその基準信号を修正する方式は、従来から知られている。この方式によれば、出力電流が大きくなると、フィードバック制御により上記基準信号が修正され、その修正された基準信号に追従するように出力が制御されるので、スイッチング素子等に流れる電流が制限される。(例えば、特許文献2参照。)
他方、出力電圧をモニタすることにより過電流の発生を推定し、その推定結果に基づいて電源装置の動作を制御する方式も知られている。(例えば、特許文献3参照。)
特許文献3に記載の安定化電源においては、出力電圧が第2限界電圧よりも低下すると、過電流が発生したものとみなし、制御を一時的に停止した後に再開させる動作が行われる。また、出力電圧が上記第2限界電圧よりもさらに低い第1限界電圧をも下回ると、さらに大きな過電流が発生したものとみなし、制御が完全に停止される。
【0004】
なお、交流出力電源の出力電圧をモニタすることにより出力電流を推定するためには、例えば、その出力電圧を全波整流した後にローパスフィルタを用いて平均化し、その平均化された電圧値が基準電圧値と比較されていた。(例えば、特許文献4参照。)
【0005】
【特許文献1】
特許第2878029号公報(図4、段落0006〜0008など)
【0006】
【特許文献2】
特許第3040767号公報(要約など)
【0007】
【特許文献3】
特開平8−234852号公報(図1、図2、段落0020〜0024など)
【0008】
【特許文献4】
特許第2737311号公報(図1、第3ページなど)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電源装置から電力の供給を受ける負荷の中には、一時的に(特に、その起動時に)大きな電力を必要とするものがある。しかし、従来の電源装置では、過電流保護機能を働かせながら、このような負荷を効率的に駆動することができなかった。
【0010】
例えば、特許文献1、3に記載の電源装置では、起動時に大きな電力を必要とする負荷を駆動しようとすると、「過電流の発生」→「動作停止」→「再開」→「過電流の発生」を繰り返すこととなり、通常動作状態に入るまでに長い時間を要したり、場合によっては、負荷を立ち上げることができなかった。すなわち、負荷起動性が悪かった。なお、負荷起動性の問題は、過電流の発生により動作を停止したときからその動作を再開するまでの期間を短くすることにより解決可能であるが、この場合、結局、スイッチング素子に大きな電流が流れることとなってしまい、損失の増大、発熱量の増加を引き起こしてしまう。
【0011】
また、特許文献2に記載の方式では、過電流の検出に伴って基準信号が徐々に修正されていくので、制御が間に合わず、過電流によるスイッチング素子の発熱や破壊が懸念される。
さらに、特許文献4に記載の電源装置では、ローパスフィルタの時定数を長くすると、負荷起動性が高くなる一方で過電流時にスイッチング素子を保護できないおそれがあり、その時定数を短くすると、保護機能が高くなる一方で負荷起動性が低くなってしまう。
【0012】
このように、従来の電源装置においては、確実な過電流保護機能および良好な負荷起動性の双方を高次元で実現することはできなかった。
本発明の目的は、確実な過電流保護機能を提供するとともに、良好な負荷起動性が得られる電源装置を提案することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の電源装置は、起動時にのみ大きな電流を必要とする負荷に電力を供給するものであり、電力変換回路と、上記電力変換回路の出力のための基準信号を生成する制御手段と、上記電力変換回路の出力を上記基準信号に追従させるための制御信号を生成するフィードバック回路と、過電流の発生を検出する過電流検出手段と、過電流が検出されると第1の状態に設定され解除信号を受信すると第2の状態に設定されるラッチ回路と、上記ラッチ回路が上記第1の状態に設定されている期間に上記電力変換回路を停止すると共に、上記ラッチ回路が上記第2の状態に設定されている期間に上記制御信号に基づいて上記電力変換回路を駆動する駆動回路、を有する。そして、上記制御手段は、過電流が検出される頻度に応じて上記基準信号を調整すると共に、上記負荷の起動時には、過電流が検出されたときから第1の期間が経過したときに上記解除信号を生成し、その後は、過電流が検出されたときから上記第1の期間よりも長い第2の期間が経過したときに上記解除信号を生成する。
【0014】
この電源装置においては、過電流が検出されると、ラッチ回路が第1の状態に設定されて電力変換回路が停止する。よって、負荷が短絡するような大電流が発生しても、当該電源装置は保護される。また、過電流が検出される頻度に応じて上記基準信号が調整される。ここで、出力電圧は、この基準信号に追従する。よって、過電流が検出されたときに出力電圧を低下させることができ、損失が抑えられる。
また、この電源装置においては、負荷の起動時には、過電流状態であっても、電力変換回路が強制的に停止させられる期間が短くなり、負荷に大きな電流を供給できる。すなわち、負荷起動性が高くなる。一方、負荷が通常動作に移った後は、過電流が検出されたときに電力変換回路が強制的に停止させられる期間が長くなるので、平均電流の上限値が抑制される。よって、負荷が要求する電流が継続的に大きくなるような場合であっても、損失が抑えられる。
【0015】
上記電源装置において、上記制御手段は、過電流状態が継続している期間は、予め決められた下限値に達するまで上記基準信号を段階的に低下させていくようにしてもよい。あるいは、上記制御手段は、過電流が検出されない期間は、予め決められた上限値に達するまで上記基準信号を段階的に上昇させていくようにしてもよい。このような制御とすれば、出力電圧の急激な変動を回避できる。
【0018】
本発明のさらに他の態様の電源装置は、電力変換回路と、上記電力変換回路の出力のための基準信号を生成する制御手段と、上記電力変換回路の出力を上記基準信号に追従させるための制御信号を生成するフィードバック回路と、上記制御信号に基づいて上記電力変換回路を駆動する駆動回路、を有する。そして、上記制御手段は、出力電圧が第1の基準値を第1の期間継続して下回ったときに、又は、出力電圧が上記第1の基準値よりも低い第2の基準値を上記第1の期間よりも短い第2の期間継続して下回ったときに、上記駆動回路を強制的に停止する。
【0019】
この電源装置においては、負荷から比較的大きな電流が要求された場合であっても、それが第1の期間よりも短い期間であれば、電力変換回路を停止することなく供給する。よって、負荷起動性は高い。一方、より大きな電流は要求された場合は、それが第1の期間よりも短い期間であっても、第2の期間継続すれば、電力変換回路は停止される。よって、負荷が短絡に近い状態になっても当該電源装置は保護される。
【0020】
上記電源装置において、上記電力変換回路が所定周波数の正弦波交流電力を生成し、上記制御手段は、上記交流電力の半周期分の電圧をモニタすることによってその電圧実効値を算出し、算出した電圧実効値と上記第1および第2の基準値とを比較することにより上記駆動回路を強制的に停止するか否かの判断をするようにしてもよい。この構成によれば、交流電圧の実効値を利用することにより過負荷に対する保護の精度が高くなり、また、制御遅延が小さくなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態の電源装置の構成図である。ここでは、電源装置の一例として、直流電力を交流電力に変換して出力するインバータ装置を採り上げて説明する。
【0022】
インバータ部(電力変換回路)1は、駆動回路7からの駆動信号に従って、直流電力を交流電力に変換して出力する。ここで、駆動信号に従って生成される交流電力の周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzである。また、インバータ部1は、例えば、図2に示す回路構成である。そして、スイッチング素子M1〜M4に適切な駆動信号が与えられることにより、交流電力を生成する。
【0023】
マイコン(制御手段)2は、インバータ部1により生成されるべき交流電圧を指示する基準正弦波(基準信号)を生成する。なお、基準正弦波の周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzである。また、基準正弦波の振幅は、基本的には予め固定的に決められているが、過電流発生時には、必要に応じて調整される。さらに、マイコン2は、後述する解除信号を生成してラッチ回路15へ送る。なお、マイコン2の動作については、後で詳しく説明する。
【0024】
差動増幅回路4は、マイコン2により生成される基準信号と、減衰回路3を介して与えられるインバータ部1の出力電圧との差分を増幅する。PWM制御回路5は、差動増幅回路4の出力をゼロにするようなPWM信号(制御信号)を生成する。なお、PWM信号は、所定周波数(例えば、数キロ〜数10キロHz)のパルス信号であって、そのパルス幅またはデューティは差動増幅回路4の出力に基づいて決定される。
【0025】
駆動回路7は、PWM制御回路5により生成されるPWM信号に従って、インバータ部1を駆動する。すなわち、減衰回路3、差動増幅回路4、PWM制御回路5は、フォードバック回路6を構成する。
このように、このインバータ装置は、フィードバック制御により、マイコン2が生成する基準正弦波に出力電圧を追従させるように動作する。すなわち、マイコン2は、出力を低下させる場合には基準正弦波の振幅を小さくし、出力を上昇させる場合には基準正弦波の振幅を大きくすればよい。
【0026】
実施形態の電源装置は、過電流保護機能を備える。ここで、過電流保護とは、過電流が検出されたときに、電源装置の出力を停止または制限することにより、電源装置自体および/または負荷を保護する動作を含む概念である。
過電流検出回路(過電流検出手段)11は、電流検出部12、増幅回路13、判定回路14を備え、過電流の発生を検出すると、その旨をラッチ回路15に通知する。ここで、電流検出部12は、インバータ部1の出力電流を検出する。増幅回路13は、電流検出部12に出力を増幅する。判定回路14は、増幅回路13の出力が予め設定されている閾値電圧を越えた場合に、過電流が発生した旨を表す信号を出力する。
【0027】
ラッチ回路15は、当該電源装置が通常動作をしているときは「通常状態(第2の状態)」に設定されている。そして、過電流が発生した旨の通知を過電流検出回路11から受け取ると、ラッチ回路15は「過電流状態(第1の状態)」に設定されるようになる。このとき、ラッチ回路15の状態が「通常状態」から「過電流状態」に更新されると、過電流が発生した旨の通知(以下、過電流通知)がラッチ回路15からマイコン2へ送られる。なお、ラッチ回路15は、例えば、フリップフロップ回路により実現することができる。この場合、「通常状態/過電流状態」は、1ビットの情報により表すことができる。
【0028】
マイコン2は、過電流通知を受け取ると、所定時間経過後に、解除信号をラッチ回路15へ送る。そして、ラッチ回路15は、解除信号を受け取ると、「過電流状態」から「通常状態」に更新される。
駆動回路7は、ラッチ回路15が「通常状態」に設定されている期間は、フィードバック回路6により生成されるPWM信号に従ってインバータ部1を駆動する。一方、ラッチ回路15が「過電流状態」に設定されている期間は、インバータ部1を駆動する動作を停止する。
【0029】
図3は、図1に示す電源装置の動作を説明する図である。ここでは、時刻T1以前は、ラッチ回路15は「通常状態」に設定されているものとする。また、マイコン2は、過電流通知の発生回数をカウントするカウンタを備えているものとする。
【0030】
時刻T1において過電流が検出されると、ラッチ回路15が「通常状態」から「過電流状態」に更新され、過電流通知が生成される。このとき、上記カウンタは「0」から「1」にインクリメントされる。また、ラッチ回路15が「過電流状態」に設定されると、駆動回路7はインバータ部1の駆動を停止するので、出力電流はいったん逆方向に流れた後、徐々にゼロに収束していく。
【0031】
マイコン2は、過電流通知を受け取った時から時間Dが経過すると、時刻T2において解除信号を生成する。これにより、ラッチ回路15が「過電流状態」から「通常状態」に更新されると、以降、駆動回路7は、PWM信号に従ってインバータ部1を駆動する。従って、出力電流は上昇していく。
【0032】
続いて、時刻T3において再び過電流が検出されると、同様の動作が繰り返される。ただし、今回は、上記カウンタは「1」から「2」にインクリメントされる。そして、以降、過電流の発生が検出される毎に、カウンタがインクリメントされていく。
【0033】
このように、実施形態の電源装置では、過電流が発生すると、いったん即座にインバータ部1を停止させた後、所定時間Dが経過した時点でインバータ部1を復帰させる制御が行われる。すなわち、過電流が発生すると、インバータ部1が時間D1だけ停止され、電流が減少していく。したがって、インバータ部1のスイッチング素子や負荷は、過電流から保護される。
【0034】
ところで、負荷の中には、図4に示すように、起動時にのみ大きな電流を必要とするものがある。この種の負荷としては、例えば、テレビ等の容量性負荷や、ハロゲンヒータ等のように低温時のインピーダンスが高温時のそれよりも低い発熱体等が該当する。
【0035】
実施形態の電源装置は、この種の負荷を短時間で立ち上げるために、負荷の起動時には、その負荷が通常動作をしている期間と比較して、過電流の発生に起因してインバータ部1の動作を強制的に停止する時間D(過電流通知が生成されてから解除信号を出力するまでの時間D:図3参照;以下、「復帰時間」と呼ぶ)を短く設定する。これにより、負荷の起動時には、インバータ部1が強制的に停止させられる期間が短くなるので、その負荷に対してより多くの電流を供給することができる。すなわち、負荷起動性が向上する。
【0036】
図5は、解除信号を生成する処理を示すフローチャートである。なお、この処理は、マイコン2により実行される。また、この処理は、過電流検出回路11により過電流が検出されてラッチ回路15により過電流通知が生成される毎に実行される。
【0037】
ステップS1では、過電流通知を検知する。なお、ラッチ回路15はこの時点で「過電流状態」に設定され、また、駆動回路7はインバータ部1の動作を停止する。ステップS2では、過電流通知の回数を計数するためのカウンタをインクリメントする。
【0038】
ステップS3では、上記カウンタのカウント値に基づいて復帰時間Dを決定する。この場合、例えば、カウント値が所定値以下であれば、負荷が起動段階であるものとみなし、或いは負荷に対してまだ十分な電荷が供給されていないものとみなし、復帰時間Dとして、インバータ部1を駆動する駆動信号のキャリア周波数の1周期に相当する時間を設定する。一方、カウント値が所定値を越えていれば、負荷が既に通常動作に移ったものとみなし、或いは負荷に対して既に十分な電荷が供給されたものとみなし、復帰時間Dとして、インバータ部1を駆動する駆動信号のキャリア周波数の2周期に相当する時間を設定する。ここで、キャリア周波数を、例えば、10kHzとすると、復帰時間Dとして、カウント値が所定値以下であれば「0.1m秒」が設定され、カウント値が所定値を越えていれば「0.2m秒」が設定される。
【0039】
ステップS4〜S5では、タイマを設定する。なお、設定されるタイマ値は、ステップS3で決定された復帰時間Dである。そして、タイマが満了すると、ステップS6において、ラッチ回路15に対して解除信号を出力する。なお、この解除信号によりラッチ回路15は「過電流状態」から「通常状態」に更新され、駆動回路7はインバータ部1を駆動する動作を再開する。
【0040】
このように、実施形態の電源装置によれば、負荷の起動時の復帰時間は、通常動作時の復帰時間と比べて短くなっている。このため、負荷の起動時の平均電流を大きくすることができ、負荷起動性が高くなる。なお、電流を大きくすると、インバータ部1のスイッチング素子における発熱量が増加するが、このような大きな電流が許容される期間は負荷の起動時のみであり、比較的短い期間である。したがって、スイッチング素子における損失(すなわち、温度上昇)はさほどでもない。一方、通常動作時に何らかの理由で過電流状態が継続したとしても、その段階では長い復帰時間が設定されているので、負荷に供給すべき平均電流は所定値以下に抑えられる。したがって、この場合も、スイッチング素子における損失はさほどでもない。
【0041】
なお、上述の例では、2種類の「復帰時間」が利用されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、3種類以上の「復帰時間」を用意しておき、負荷の起動時からその「復帰時間」を徐々に短くしていくようにしてもよい。
【0042】
また、上述の例では、過電流通知の回数が所定値を越えるか否かにより「復帰時間」が切り替えられるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、負荷の起動時からの経過時間が所定時間を越えた時点で「復帰時間」が切り替えられるようにしてもよい。
【0043】
実施形態の電源装置は、上述のようにして「復帰時間」を切り替える機能に加え、過電流の発生頻度に応じて基準正弦波を調整する機能も併せ持っている。すなわち、マイコン2は、所定値以上の頻度で過電流通知を受信すると、基準正弦波の振幅を小さくすることにより出力電圧を低下させる。そして、過電流状態が継続した場合は、この動作を繰り返すことにより出力電圧を徐々に低下させていく。これにより、スイッチング素子における損失を抑えることができる。また、マイコン2は、過電流通知を一定期間受信しなかった場合は、基準正弦波の振幅を大きくすることにより出力電圧を上昇させる。そして、過電流が発生しない状態が継続すると、この動作が繰り返され、出力電圧は元のレベルにまで徐々に上昇していくことになる。
【0044】
なお、過電流の発生頻度をモニタする期間は、例えば、当該電源装置が生成する交流電力の1周期に相当する時間とする。即ち、生成される交流が50Hzであるものとすると、1モニタ時間は、20m秒になる。また、マイコン2は、例えば、各モニタ時間内に受信した過電流通知の回数が「10回」を越えた場合には基準正弦波の振幅を1ステップだけ小さくし、その回数が「0回」であった場合には基準正弦波の振幅を1ステップだけ大きくし、その回数が「1〜9回」であった場合は基準正弦波の振幅をそのまま維持する。ここで、基準正弦波の振幅は、それぞれ上限値および下限値が決められているものとする。
【0045】
図6は、過電流の発生頻度に応じて基準正弦波を調整する動作を説明する図である。図6(a)に示す例では、第1番目および第2番目のモニタ時間における過電流状態の発生回数が閾値(ここでは、10回)を越えている。このため、基準正弦波の振幅は、徐々に小さくなっていく。この後、第3番目以降の各モニタ時間における過電流状態の発生回数が閾値よりも小さくなると、基準正弦波の振幅はそのまま維持されるようになる。
【0046】
一方、図6(b)に示す例では、各モニタ時間においてそれぞれ過電流が全く検出されていない。この場合、基準正弦波の振幅は徐々に大きくなっていく。そして、基準正弦波の振幅が予め決められている上限値に達すると、以降は、そのレベルを保持する。
【0047】
このように、基準正弦波の振幅は、過電流の発生頻度が高くなると小さくなっていき、過電流が検出されない状態では大きくなっていく。ここで、電源装置の出力電圧は、フィードバック制御により、この基準正弦波に追従するようになっている。したがって、電源装置の出力電圧は、過電流の発生頻度が高くなると低下し、過電流が検出されない状態では上昇するように制御されることとなる。すなわち、過負荷状態が継続する場合には、出力電圧を低下させることにより負荷に供給すべき電力を小さくすることができ、この結果、スイッチング素子における損失の低下が図れる。
【0048】
図7は、基準正弦波を調整する処理を示すフローチャートである。なお、この処理は、マイコン2により、モニタ時間ごとに実行される。
ステップS11では、当該モニタ時間内に通知された過電流通知の回数を検出する。ステップS12では、検出された回数と予め設定されている閾値(ここでは、10回)とが比較される。
【0049】
過電流通知の回数が10回以上であれば、ステップS13において、現在の基準正弦波の振幅が下限値レベルであるか否かを調べる。このとき、現在の基準正弦波の振幅が下限値レベルでなければ、ステップS14において、基準正弦波の振幅を「1ステップ」だけ小さくする。そして、ステップS15において、変更された振幅に基づいて基準正弦波を現す基準値マップを更新する。
【0050】
一方、過電流通知の回数がゼロであれば、ステップS16において、現在の基準正弦波の振幅が上限値レベルであるか否かを調べる。このとき、現在の基準正弦波の振幅が上限値レベルでなければ、ステップS17において、基準正弦波の振幅を「1ステップ」だけ大きくし、その後ステップS15の処理を実行する。
【0051】
ステップS18では、ステップS15で更新された基準値マップにより現される基準正弦波を出力する。なお、過電流通知の回数が1〜9回であった場合、および現在の基準正弦波の振幅が上限値レベルまたは下限値レベルであった場合には、前回と同じ基準正弦波を出力する。
【0052】
このように、実施形態の電源装置では、負荷の起動時の復帰時間を短くすることにより負荷起動性の向上が図られ、また、過電流の発生頻度に応じて出力電圧を調整することにより定常的な過負荷が接続された場合の損失の低減が図されている。
【0053】
なお、上述の例では、図5および図7に示すフローチャートの処理がマイコン2を用いて予め記述されたプログラムを実行することにより実現されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ハードウェア回路により実現されるようにしてもよい。
【0054】
図8(a)に示す構成では、ラッチ回路15から出力されるラッチ信号(上述の例では、過電流通知に相当する)がカウンタICおよび単安定マルチバイブレータに与えられる。ここで、カウンタICは、R−2Rラダー抵抗が接続されており、ラッチ信号をカウントする。また、カウンタICのカウント値は、電圧に変換される。そして、タイマICは、カウンタICから出力される電圧に基づいて決まる復帰時間を計時する。そして、この復帰時間が経過すると、ラッチ回路15が解除される。なお、ラッチ信号が一定時間出力されなかった場合は、単安定マルチバイブレータによりカウンタICがリセットされる。
【0055】
図8(b)に示す構成では、ラッチ信号がRC回路に与えられ、そのRC回路の出力がタイマICに与えられる。ここで、このRC回路の出力電圧は、ラッチ信号の出力頻度に応じて決まる。したがって、タイマICにより計時される復帰時間は、ラッチ信号の発生頻度に応じて決まることになる。
【0056】
図9は、本発明の他の実施形態の電源装置の構成図である。なお、インバータ部1、フィードバック回路6、駆動回路7、過電流検出回路11、ラッチ回路15は、図1〜図8を参照しながら説明した通りである。ただし、マイコン2は、出力電圧に応じて駆動回路7を強制的に停止する機能を備えている。
【0057】
この電源装置は、出力電圧の実効値をモニタする。ここで、出力電流の平均値の上限が決められているものとすると、負荷がそれよりも大きな電流を要求した場合、当該電源装置の出力電圧は低下することになる。従って、この実施形態の電源装置では、出力電圧の実効値が閾値以下に低下したときは、過電流状態であるものとみなし、駆動回路7がインバータ部1を駆動する動作を停止させる。したがって、上記閾値を適切に設定すれば、この構成によっても過負荷に対処できる。
【0058】
ところが、起動時等に一時的に大きな電流を必要とした後はさほど大きな電流を必要としない負荷(図4参照)に電力を供給する場合は、その通常動作時に必要となる電流を想定して閾値を設定すると、起動時にインバータ部1が繰り返し停止されることになり、負荷起動性が悪くなる。一方、負荷の起動時に必要となる大きな電流を想定して閾値を設定すると、通常動作時に比較的大きな電流が流れ続ける事態を防ぐことができず、スイッチング素子における損失が大きくなるおそれがある。
【0059】
そこで、この実施形態の電源装置では、2以上の閾値を用意し、大きな電流に相当する閾値ほど不感時間を短くすることにより上述の問題を解決している。なお、「不感時間」とは、出力電圧の実効値が閾値を下回っている状態を無視あるいは許容する期間をいう。
【0060】
図9において、整流回路21は、インバータ部1の出力電圧を整流する。減衰回路22は、整流回路21の出力を減衰させる。実効値変換回路23は、この電源装置から出力される交流の1周期の半分の時間毎に(すなわち、正弦波の半波毎に)、減衰回路22の出力を実効値に変換する。そして、マイコン2は、出力電圧の実効値に基づいて駆動回路7の動作を停止すべきか否かを判断する。ここで、実効値変換回路23の機能は、マイコン2により実現されるようにしてもよい。
【0061】
なお、出力電圧実効値を正弦波の半波で算出するようにすれば、当該電源装置の異常(例えば、正弦波の半波しか出力されないような障害)を検出することができる。
図10は、図9に示す電源装置の動作を説明する図である。ここでは、出力電圧の実効値をモニタするための閾値として、第1の閾値およびその第1の閾値よりも低い第2の閾値が設定されているものとする。
【0062】
まず、時刻T1において、負荷電流の増加により出力電圧の実効値が第1の閾値よりも小さくなると、マイコン2は計時を開始する。ただし、出力電圧の実効値は、時刻T1から時間E1が経過する前に第1の閾値よりも高いレベルに戻っている。したがって、この場合、マイコン2は、駆動回路7を停止しない。すなわち、時間E1は、出力電圧の実効値が閾値を下回ったことを無視または許容する不感時間として働く。
【0063】
続いて、時刻T2において、出力電圧の実効値が第1の閾値よりも小さくなると、マイコン2は再び計時を開始する。ところが、出力電圧の実効値は、時刻T2から時間E1が経過してもなお第1の閾値よりも低いレベルのままである。したがって、この場合、マイコン2は、駆動回路7を停止する。
【0064】
さらに、時刻T3において、出力電圧の実効値が第2の閾値よりも小さくなると、この場合もマイコン2は計時を開始する。このとき、出力電圧の実効値が第2の閾値を下回った場合は、不感時間として上記時間E1よりも短い時間E2が設定されている。そして、時刻T3から時間E2が経過してもなお第2の閾値よりも低いレベルのままであると、マイコン2は、駆動回路7を停止する。
【0065】
なお、この実施例において、時間E1は、例えば数100m秒〜数秒程度であり、当該電源装置を用いて負荷を起動するために必要な時間等を考慮して設定される。また、時間E2は、例えば数10m秒以下であり、スイッチング素子の定格等を考慮して設定される。したがって、負荷の起動時などに大きな電流が必要となる場合であっても、時間E1を越えない範囲であれば、比較的大きな電流を供給することができるので、短い時間で負荷を立ち上げることができる。一方、負荷が短絡に近い状態になると、出力電圧の実効値が第2の閾値を下回るので、この場合、時間E2が経過した時点で即座にインバータ部1が停止され、スイッチング素子が確実に保護される。
【0066】
図11は、出力電圧に基づいてインバータを停止する処理のフローチャートである。なお、この処理は、出力電圧の実効値が算出される毎にマイコン2により実行される。ここで、出力電圧の実効値は、例えば、当該電源装置から出力される交流の半波ごとに算出されるものとする。
【0067】
ステップS21では、出力電圧の実効値と第1の閾値TH1とを比較する。このとき、出力電圧の実効値が第1の閾値TH1よりも低ければ、ステップS22において、タイマ1がON状態となっているかを調べる。ここで、タイマ1は、出力電圧の実効値が継続的に第1の閾値TH1を下回っていることを検出するためのタイマである。そして、タイマ1が停止していた場合は、ステップS23でそれを起動する。
【0068】
ステップS24では、タイマ1をインクリメントする。続いて、ステップS25において、タイマ1による計時が時間E1を越えているか否かを調べる。そして、タイマ1による計時が時間E1を越えていた場合には、ステップS31において、インバータ部1を停止するための指示を駆動回路7に送る。
【0069】
ステップS26〜S30の処理は、基本的に、上記ステップS21〜S25と同じである。すなわち、出力電圧の実効値が第2の閾値TH2よりも低ければ、タイマ2がインクリメントされる。ここで、タイマ2は、出力電圧の実効値が継続的に第2の閾値TH2を下回っていることを検出するためのタイマである。そして、タイマ2による計時が時間E2を越えていた場合には、ステップS31において、インバータ部1を停止するための指示を駆動回路7に送る。
【0070】
なお、出力電圧の実効値が第1の閾値TH1よりも高いときは、ステップS32においてタイマ1およびタイマ2がリセットされる。また、出力電圧の実効値が第1の閾値TH1よりも低いが第2の閾値TH2よりも高い場合には、ステップS33においてタイマ2のみがリセットされる。
【0071】
以上詳述したように、本発明の実施形態の電源装置においては、負荷(特に、一時的に大きな電流を必要とする負荷)の起動性の向上、および継続的に過負荷状態となった場合に当該電源装置を保護する機能の確保、の両立が高次元で図れる。
【0072】
なお、上述の実施例では、インバータ装置を前提として説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、直流電力を生成する電源装置にも適用可能である。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、負荷起動性が高く、かつ、継続的な過負荷に対してスイッチング素子における損失を抑えた電源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の電源装置の構成図である。
【図2】インバータ回路の一例を示す図である。
【図3】図1に示す電源装置の動作を説明する図である。
【図4】負荷が要求する電流の例である。
【図5】解除信号を生成する処理を示すフローチャートである。
【図6】過電流の発生頻度に応じて基準正弦波を調整する動作を説明する図である。
【図7】基準正弦波を調整する処理を示すフローチャートである。
【図8】復帰時間を設定する機能を実現するハードウェア回路の例である。
【図9】本発明の他の実施形態の電源装置の構成図である。
【図10】図9に示す電源装置の動作を説明する図である。
【図11】出力電圧に基づいてインバータを停止する処理のフローチャートである。
【符号の説明】
1 インバータ部(電力変換回路)
2 マイコン(制御手段)
6 フィードバック回路
7 駆動回路
11 過電流検出回路(過電流検出手段)
15 ラッチ回路
Claims (5)
- 起動時にのみ大きな電流を必要とする負荷に電力を供給する電源装置であって、
電力変換回路と、
上記電力変換回路の出力のための基準信号を生成する制御手段と、
上記電力変換回路の出力を上記基準信号に追従させるための制御信号を生成するフィードバック回路と、
過電流の発生を検出する過電流検出手段と、
過電流が検出されると第1の状態に設定され、解除信号を受信すると第2の状態に設定されるラッチ回路と、
上記ラッチ回路が上記第1の状態に設定されている期間に上記電力変換回路を停止すると共に、上記ラッチ回路が上記第2の状態に設定されている期間に上記制御信号に基づいて上記電力変換回路を駆動する駆動回路、を有し、
上記制御手段は、過電流が検出される頻度に応じて上記基準信号を調整すると共に、上記負荷の起動時には、過電流が検出されたときから第1の期間が経過したときに上記解除信号を生成し、その後は、過電流が検出されたときから上記第1の期間よりも長い第2の期間が経過したときに上記解除信号を生成する、
ことを特徴とする電源装置。 - 請求項1に記載の電源装置であって、
上記制御手段は、過電流状態が継続している期間は、予め決められた下限値に達するまで上記基準信号を段階的に低下させていく、
ことを特徴とする電源装置。 - 請求項1に記載の電源装置であって、
上記制御手段は、過電流が検出されない期間は、予め決められた上限値に達するまで上記基準信号を段階的に上昇させていく、
ことを特徴とする電源装置。 - 請求項1に記載の電源装置であって、
上記制御手段は、出力電圧が第1の基準値を第1の期間継続して下回ったときに、または、出力電圧が上記第1の基準値よりも低い第2の基準値を上記第1の期間よりも短い第2の期間継続して下回ったときに、上記駆動回路を強制的に停止する、
ことを特徴とする電源装置。 - 請求項4に記載の電源装置であって、
上記電力変換回路は、所定周波数の正弦波交流電力を生成し、
上記制御手段は、上記交流電力の半周期分の電圧をモニタすることによってその電圧実効値を算出し、算出した電圧実効値と上記第1および第2の基準値とを比較することにより上記駆動回路を強制的に停止するか否かの判断をする、
ことを特徴とする電源装置。
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