JP4273629B2 - 濾過フィルター装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体、感熱転写材、電気絶縁材料、離型材、包装材料等の用途に有効に用いられる熱可塑性樹脂フィルムを製造するための濾過フィルター装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂フィルムは従来から磁気記録媒体、感熱転写材、電気絶縁材料、離型材、包装材料などの分野に広く用いられている。熱可塑性樹脂フィルムはコーティング、蒸着、印刷などの工程を経てこれら最終製品となるが、この加工工程での加工性、最終製品として使用時の特性を良好とするために、良好な滑り性を付与することを目的に不活性粒子が添加されている。不活性粒子の粒径、添加量は必要に応じて調整されるものの、添加される不活性粒子の中には必要のない粗大なものが含まれていたり、また、溶融押し出し工程で粒子同士が凝集し、粗大凝集粒子となる場合もある。
【0003】
このような粗大粒子が樹脂中に含まれると次のような問題が生じる。すなわち、製膜工程でフィルムを延伸しようとするときに、特にフィルムが数μmという極薄い場合、延伸時に発生する応力が粗大粒子に集中し、その部分に穴が空いたり、場合によってはフィルム破れが発生する。また、最終製品の特性にも影響し、例えば磁性材、インクなどをコーティングしても粗大粒子の部分だけ塗布抜けが起こったり、電気絶縁材料の場合には粗大粒子が絶縁不良の原因になる場合がある。
【0004】
粗大粒子を除去するには押し出し機で溶融混練された樹脂が口金から吐出される前にフィルターで濾過する方法が用いられる。フィルターは濾材として金属繊維や金属粉末を焼結したものを用いた、円盤形のリーフディスクフィルターと呼ばれるものが用いられる。金属繊維焼結体の場合、濾過精度は高いものの、フィルターの長期使用により発生する樹脂の変性物を除去・分散する能力が無いため、長期間使用していると樹脂変性物起因の欠点が発生して短期間でフィルターを交換する必要が生じ、フィルムの製造費用の上昇につながってしまう。また、金属粉末焼結体の場合は樹脂変性物の除去・分散能力はすぐれるものの、金属粉末の粒径が大きく、濾過精度の高いフィルターを作ることは難しい。
【0005】
図2は代表的な従来の金属繊維濾材のフィルターの断面図である。フィルターは金属繊維焼結体からなる濾材1、フィルター内部空間を保持するための金網等からなる支持体(リテーナー)2、濾材の変形を防ぐための金属多孔板3、濾材を通過した樹脂の流路である穴の空いたハブリング4からなる。各部材は溶接5により組み立てられている。樹脂は6の通り、濾材を通過した後リテーナー2の間を流れ、ハブリングの穴を通過してフィルターの外に流れる。このようなフィルターの場合、例えば金属多孔板の穴の空いていない部分は樹脂が流れないため、滞留して変性し、これが流れ出すと欠点となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来のフィルターの問題を解消し、高い濾過精度と樹脂変性物の発生を抑えたフィルターを用いて、異物が少なく、高い品質のフィルムを長期間フィルター交換をすることなく製造することが可能な熱可塑性樹脂フィルムを製造ための濾過フィルター装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、熱可塑性樹脂を押出機で溶融し、押し出し成形する熱可塑性樹脂フィルム製造用の濾過フィルター装置であって、濾過フィルターは濾過精度および空隙率の異なる2層以上の濾材からなり、第1層目の濾材の濾過精度が0.5〜15μmおよび空隙率が60%以上80%以下であり、該濾材の樹脂流れ方向最下流の濾材の濾過精度が20μm以下および空隙率が20%以上50%以下であり、該樹脂流れ方向最下流の濾材とフィルター内部の支持体が直接接触しているリーフディスクフィルターを用いることを特徴とする濾過フィルター装置を骨子とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について説明する。本発明における熱可塑性樹脂としてはポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられ、これらの中でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル系樹脂が好ましい。また本発明の熱可塑性樹脂は先に挙げたものの中の1種類の単独でも、2種以上の樹脂の共重合体や、2種以上の樹脂の混合体であってもかまわない。また必要に応じて各種添加剤が添加されていてもかまわない。
【0009】
特に限定されないが本発明の熱可塑性樹脂に含有される不活性粒子の平均粒径は、0.05μm以上2μm以下、好ましくは0.05μm以上1.5μm以下であるとフィルム表面の平滑性と滑り性を共に良好とするのに適している。
【0010】
また、不活性粒子の種類としては無機粒子、有機粒子いずれでも良く、無機粒子としては、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタンなど、有機粒子としてはエチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン等が挙げられる。これら不活性粒子は単独、あるいは種類又は粒子径の異なる2種以上の粒子を組み合わせて用いられる。樹脂中の含有量としては限定はされないが、0.001重量%以上5重量%以下、好ましくは0.005重量%以上3重量%以下が適当である。
【0011】
本発明の濾過フィルターとしては金属繊維および/または金属粉末の焼結体などを濾材として用い、金属の金網などの支持体を上下から濾材で挟み込んだリーフディスクタイプのものが用いられる。
【0012】
また、本発明の濾過フィルターが濾過精度および空隙率の異なる2層以上の濾材からなるものであるが、樹脂流れ方向最下流の濾材は支持体と直接接触していることが重要である。支持体と濾材が直接接触せず濾材と支持体の間に金属多孔板などが用いられていると、その部分が滞留箇所となり樹脂変性物が発生しやすくなり本発明の効果を阻害する。
【0013】
リーフディスクフィルターの内部の空間体積に占める支持体の体積の割合は下限が20%、好ましくは25%、上限が50%、好ましくは45%、更に好ましくは40%である支持体の割合が上記範囲未満の場合、濾材を支持する能力が不十分なため、樹脂通過時の圧力によりフィルターが変形・破損し、また、上記範囲を超えると樹脂がフィルター内部を通過するときの抵抗が大きくなるため、樹脂通過時の圧力が高くなるため実用上問題となる。
【0014】
樹脂流れ方向最下流の濾材の濾過精度は2μm以上20μm以下、好ましくは3μm以上16μm以下、更に好ましくは5μm以上16μm以下であると本発明の効果を得るのに好ましい。濾過精度が上記範囲未満の場合、濾材の抵抗が大きく、フィルターの圧力損失が高くなるため好ましくない。上記範囲を超えた場合は本発明の効果の一つである樹脂変性物の除去が十分に行えないため好ましくない。
【0015】
濾材の材質としては、ステンレス、ブロンズ、銅などの金属が適する。特に限定はされないが、樹脂との反応性、耐腐食性の点でステンレスが好ましい。ステンレスの中でもSUS304、SUS316、SUS316L、SUS430などが特に好適である。また、濾材以外の支持体、溶接などの材質についても同様である。
【0016】
濾材のうち金属繊維焼結体は、直径数μmから数10μm程度の繊維を重ね合わせて焼結したものであるが、金属繊維の径は1種類でも、2種類以上でもかまわなく、数種の異なる径の繊維を混合して焼結したものでも、また、直径の異なる繊維を個々に重ね合わせて焼結したものでも良い。金属繊維焼結体の濾過精度は0.5μm以上15μm以下、好ましくは1μm以上10μm以下、空隙率は40%以上80%以下好ましくは50%以上80%以下のものが好ましく用いられる。
【0017】
金属粉末焼結体は数10μmから数100μmの金属粉末を焼結したもので、用いる粉末の径は1種類でも2種類以上でもかまわない。濾過精度は限定はされないが5μm以上30μ以下、空隙率としては20%以上50%以下、好ましくは25%以上45%以下が一般的である。
【0018】
濾材の構成としては、濾過精度および空隙率の異なる2種類以上の濾材を用いて、2層以上の構成とするものである。樹脂流れ方向上流側の濾材は、濾過精度が高く、空隙率の高い濾材を用い、樹脂流れ方向下流側の濾材は濾過精度が若干低くても空隙率の低い濾材とすることが異物、樹脂変性物の分散、除去をする上で好ましい。
【0019】
具体的には1層目は濾過精度0.5μm以上15μm以下、空隙率60%以上80%以下で好ましくは金属繊維焼結体を用い、この層で不必要な大きさの不活性粒子や異物を除去することが好ましい。
【0020】
最下流の層は空隙率を20%以上50%以下とすると強度が高く、樹脂通過時の圧力による変形・破損を回避できるので好ましい。また濾過精度は20μm以下、好ましくは5μm以上16μm以下とするものであり、上記範囲を越える場合には樹脂変性物の除去・分散の十分な効果が得られず、上記範囲未満の場合にはフィルターの圧力損失が大きくなり、使用上問題となる。
【0021】
押出機から口金までの工程概略は次の通りである。押出機は必要とする吐出量に応じて、単軸スクリュー、2軸スクリューいずれのものでもかまわない。押出機で溶融された樹脂は必要に応じて濾過精度の低い金網フィルター等で予備濾過され、ギアポンプ等で計量後メイン濾過装置へ導かれる。メイン濾過装置には先に述べた、濾材構成のリーフディスクタイプのフィルターが必要に応じて数枚から数100枚組み込まれている。メイン濾過装置を通過後、樹脂は口金に導かれ吐出され、キャスティングドラム上で冷却固化され、非晶状態のフィルムとなる。このフィルムを必要に応じて縦延伸装置および/または横延伸装置、同時2軸延伸装置などを用いて一軸または二軸に延伸する。
【0022】
図1に従い、本発明のフィルターの一例を説明する。1層目の濾材7は金属繊維焼結体からなり、2層目(樹脂流れ方向最下流)の濾材8は金属粉末焼結体からなる。2層目の濾材8である金属粉末焼結体が1層目の濾材7である金属繊維焼結体の変形を防ぐ役割も持つため従来のフィルターのような金属多孔板等の補強は必要なく、従来フィルターのような不要な滞留部分は存在しない。9(リテーナー)、10(ハブリング)、11(溶接部)は従来フィルター同様である。樹脂は1層目の濾材で不必要な異物を除去し、2層目の濾材でフィルターよりも上流側で発生した変性物を捕捉・分散されリテーナーで保持された内部空間を通ってハブリングの穴から流出する。
【0023】
次に本発明の実施に必要な測定項目、効果の評価法等について説明する。
(1)フィルターの濾過精度
試験粉体としてACFTD(アリゾナサンド、中位径7μm)を用いて定圧濾過試験を行い、フィルター濾材通過前後の粒子数を例えばHIAC PC−320等によりカウントし次式により捕集効率を算出する。
【0024】
捕集効率(%)={(nA−nB)/nA}×100
各粒子径の範囲で捕集効率を計算し、グラフ上に各粒子径に対する捕集効率をプロットし捕集効率曲線を作成し、捕集効率95%の粒子径を濾過精度とする。
(2)フィルム表面の粗大突起個数
フィルター単位面積あたりの樹脂通過量20トン/m2 のときに得たフィルム2枚を静電気を印加させて密着させる。波長0.54μmの光源の多重干渉式顕微鏡により、密着させたフィルムの10cm×10cmの面積を観察する。フィルム表面に粗大突起がある場合、フィルム−フィルム間に隙間ができ、その隙間の高さに応じて干渉縞が発生するので、フィルム上に存在する2次以上の干渉縞の数をカウントする。その後、透過式の顕微鏡で観察しながらフィルムの粗大突起と表面付着物を分別し、粗大突起のみの数をカウントする。
(3)濾材の空隙率
濾材の容積と使用した材料の量および比重より空間部分の容積を求め百分率で表す。
(4)欠点
フィルター単位面積あたりの樹脂通過量20トン/m2 のときに得たフィルムを透過光で50m2観察し、目視で確認できるものを欠点とした。
(5)不活性粒子の平均粒径
熱可塑性樹脂フィルムをプラズマ法によって表面の熱可塑性樹脂を取り除き、走査型電子顕微鏡写真を撮り、粒子の面積を求め、同じ面積を有する円の直径として1000個の粒子について測定し、平均径を求める。
(6)リーフディスクフィルターの内部の空間体積に占める支持体の体積の割合
図1における内部の空間13の体積(Va)と支持体9の体積(Vb)から算出する。
【0025】
支持体の体積の割合(%)=(Vb/Va)×100
【0026】
【実施例】
本発明を実施例に基づいて説明する。
実施例1
公知の方法により得られた、平均粒径0.7μmの不活性粒子を含有するポリエチレンテレフタレート(PET)のペレットを180℃、真空中で4時間乾燥後、公知の押出機に供給し285℃の温度で溶融し、表1のフィルターが設置された濾過装置を通過させた後口金より押出した。次いで、静電印加法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラム上で冷却固化し非晶状態の未延伸PETフィルムを得た。このフィルムを公知の延伸装置により95℃で縦延伸、100℃で横延伸後、220℃で3秒間熱固定を行いフィルムを製膜した。このフィルムの粗大突起数を測定すると3個/10cm2 、欠点は0個/50m2 といずれも良好であった(表1参照)。
参考例1〜4、比較例1〜6
添加する不活性粒子の粒径、平均滞留時間、フィルターの濾過精度を変更した以外は実施例1と同様の方法でフィルムを製膜した(表1参照)。不活性粒子の平均粒径と濾過フィルター内の平均滞留時間が本発明の請求範囲内の場合は粗大突起数は少なく良好であり、濾過寿命も十分長い日数であった。しかし、不活性粒子の平均粒径と濾過フィルター内の平均滞留時間が本発明の請求範囲から外れる場合は粗大突起数、濾過寿命を両立することはできなかった。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】
本発明は上記の構成とすることにより、高い濾過精度を維持しつつ樹脂変性物の発生を抑えることができる。また、本発明の装置で得られた熱可塑性樹脂フィルムは磁気記録媒体、感熱転写材、電気絶縁材料等に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いるフィルターの一例を示す断面図である。
【図2】代表的な従来のフィルターの断面図である。
【符号の説明】
1:濾材
2:支持体
3:金属多孔板
4:溶接部
5:ハブリング
6:樹脂の流れ
7:一層目の濾材
8:樹脂流れ方向最下流の濾材
9:支持体
10:ハブリング
11:溶接部
12:樹脂の流れ
13:内部の空間
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂を押出機で溶融し、押し出し成形する熱可塑性樹脂フィルム製造用の濾過フィルター装置であって、濾過フィルターは濾過精度および空隙率の異なる2層以上の濾材からなり、第1層目の濾材の濾過精度が0.5〜15μmおよび空隙率が60%以上80%以下であり、該濾材の樹脂流れ方向最下流の濾材の濾過精度が20μm以下および空隙率が20%以上50%以下であり、該樹脂流れ方向最下流の濾材とフィルター内部の支持体が直接接触しているリーフディスクフィルターを用いることを特徴とする濾過フィルター装置。
- リーフディスクフィルターの内部の空間体積に占める支持体の体積の割合が50%以下であることを特徴とする請求項1記載の濾過フィルター装置。
- フィルターの樹脂流れ方向最下流の濾材が金属粉末焼結体であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の濾過フィルター装置。
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