JP4273180B2 - キラルアリーレンで結合されたジカルバゾール誘導体およびその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つまたはそれ自身内部回転異性性の結合軸を持つアリーレン基に2つのN−カルバゾイル基が結合した新規な光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体に関する。特に、前記アリーレン基が1,1'−ビナフチレン−2,2'−ジイル基であることを特徴とする光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体、および光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を製造する方法、特にアミノ基の1つのNと2,2'−ジハロ−1,1'−ビフェニル、2−ハロ−2'−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1'−ビフェニルまたは2,2'−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1'−ビフェニルのハロゲンおよび/またはトリフルオロメタンスルホニルオキシが置換した2つの炭素とで2つのN−C結合を同時に形成させることでN含有ピロール環を形成するという全く新しい反応により前記光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を製造する方法に関する。前記光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体は、有機EL、蛍光材料、有機バッファー層構成材料、CD特性に基づく光スイッチ構成材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
これまでに、9−カルバゾリルを分子構造内に含有する化合物は多く提案されている。例えば、ゼログラフィーにおいは増感剤と組み合わせて有機光半導体材料とし、また電荷移送層の形成材料などとし利用されている。ジカルバゾール誘導体は、例えば、EL材料(再結合型発光)であるジスチリルアリレン誘導体にゲスト色素としてドーピングする材料として提案され、この組み合わせにより高性能の有機発光素子とすることができる可能性があることが報告されている。この高性能化の原理の解析において、分子間のエネルギー転移と分子構造との関係が重要な究明ファクターとなることが示唆されている。
【0003】
また、4,4'−ビスカルバゾールビフェニルを陰極材料のバッファー層形成材料として用いることも報告されている〔「有機EL素子とその工業化最前線」1998年11月30日 (株)エヌ・ティー・エス発行の第2編第2章「電極材料」(第123頁〜第166頁)〕。バッファー層の機能は、駆動電圧を低下させることや発光効率向上であり、電極から、種々機能材料層、例えばEL層への電子またはホール注入性を改善するもので、ホールの注入性を利用する陽極バッファー層と電子の注入特性を利用する陰極バッファー層とがある。特に、有機系の機能材料層への電子の注入を安定にするためのバッファー層形成材料の開発には、金属電極構成材料に安定な金属を使用できるというメリットをもたらすし、定電圧駆動の安定な素子を設計できる点で、技術的に大きな意味がある。
【0004】
Tetrahedron Letters 41(2000)8573-8576、には、p−ジアミノスチルベンが明確な二光子吸収特性(TPA)を示すこと、および該ジアルキルアミノ基をカルバゾール基に変えることにより新規にビスカルバゾール誘導体を合成したこと、該誘導体は二光子吸収係数δの増大、および光安定性をもたらすことについて報告している。更に、該化合物の合成において、ウルマン反応を用い、4,4'−ジブロモスチルベンとカルバゾールから4,4'−ビス(9−カルバゾイル)スチルベンを得る場合、すなわち、ハロゲン化物とカルバゾールとの直接の反応によりビスカルバゾール誘導体を製造する方法は、収率が低いこと。
そこで、新しい合成方法として、9−(4'−ホルミルフェニル)カルバゾールを鍵前駆体として用いる反応を開発したこと、すなわち、乾燥ジオキサン中でTiCl4/Znを用いて反応させることにより前記誘導体が良い収率で得られたことが報告されている。更にトルエン溶液中における蛍光特性、量子収率が記載され、置換基の蛍光特性、量子収率への影響についても示唆している。このような現象は異なる分子間だけでなく、同一分子内における部分構造や部分構造の相対配置との関係が、エネルギー移動、換言すれば全体の電子状態に大きな影響があることを示唆している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記機能性有機材料の特性を改善した新規な化学構造を持つ有機材料、特にカルバゾール環に注目して、N−カルバゾリル基を内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つまたはそれ自身内部回転異性性の結合軸を持つアリーレン基に2個導入した新規な2個のN−カルバゾリル基を持つ光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を提供することであり、更に、前記誘導体を得るための製造方法を提供することである。
【0006】
前記N−カルバゾリル基をアリーレンに2個を導入する方法としては、一般的には、例えば前記式1の化合物の場合、2,2'−ジブロモ−1,1'−ビナフチル一分子とカルバゾール二分子をパラジウムまたはニッケルのような触媒を用いてカップリングさせるが、この反応では本発明の化合物を作ることができなかった。したがって、全く新しい発想に基づく合成方法を開発する必要があった。
【0007】
そこで、本発明者は、カルバゾール二分子のN含有環を合成の過程で形成させる、すなわち2,2'−ジブロモ−1,1'−ビナフチル一分子に変えて2,2'−ジアミノ−1,1'−ビナフチル一分子と2,2'−ジハロ−1,1'−ビフェニル、2−ハロ−2'−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1'−ビフェニルまたは2,2'−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1'−ビフェニル二分子を用い前記アミノ基のNと2つのハロゲンまたは/およびトリフルオロメタンスルホニルオキシが置換した2つの炭素とで2つのN−C結合を同時に形成させN−カルバゾリル基のN含有ピロール環を形成させることを考えた。アリールハライド化物のアミノ化によるC−N結合の形成に利用されている、パラジウムなどの金属と嵩高な有機基を持つP配位子化合物の錯体を触媒とし、有機溶媒中で適当なハロゲン化水素受容体などとして機能するtert-ブトキシNaの存在下で反応させることにより前記新規な着想に基づく反応が進行し、前記本発明の目的化合物が得られることを確認し、前記各課題を解決することができた。
【0008】
前記嵩高な有機基を持つP配位子化合物を用いるアミノ化反応の触媒、ハロゲン化水素受容体などとして機能する塩については、例えば、〔文献;J. P. Wolfe, H. Tomori, J. P. Sadighi, J. J. Yin, S. L. Buchwald, J. Org. Chem. vol 65 p.1158 (2000).〕を参考資料として挙げることができる。また、このような技術を、本発明で利用する触媒を支持する根拠として挙げる。ここには、アリールハロゲン化物基質をPd触媒を利用してアミノ化する反応を効率的に進める触媒系を構築するための配位子化合物群が説明され、特に配位子として有機リン化合物を用いること、立体的に嵩高な配位子は、還元的除去反応によるC−N結合の形成を促進することが説明されている(1165頁、Discussionの項参照)。また、利用するPd源、配位子の選択は前記反応を成功させるかどうかの重要な点であり、P結合有機基の嵩高性、高電子密度およびホスフィン類は、アリールクロライドを容易にアニリン誘導体にすると共に、使用できるアリールクロライド化合物の範囲を拡大することができることが説明されている(1158頁左欄。)そして、図1の配位子群Aおよび該配位子の特性などが説明されている。また、前記本発明の反応は、ヨウ化銅、嵩高なジアミン配位子、例えばラセミ トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンおよびtert-ブトキシアルカリ金属(アルカリ金属はLi、NaまたはK)、アルカリ金属の炭酸、またはリン酸塩からなる群から選択されるハロゲン化水素受容体などとして機能する塩、例えば、リン酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムまたはtert-ブトキシNaなどの塩の触媒系を用いて進行させることもできる(この系の触媒については、文献、A. Klapars, J. C. Antilla, X. Huang, S. L. Buchwald J. Am. Chem. Soc. 2001, as soon as possible on the web. を参照)。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、(1)請求項1に記載のものである。
【0010】
本発明の第2は、(2)NH2−Ar−NH2(但し、Arは内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つ非置換の、または置換基としてエステル基、ニトリル基、及びアリール基並びに−OAc、−OSO2CH3及び−OSO2CF3基からなる酸素原子含有基から独立に選択される置換基を、3〜8、3'〜8'位の一部または全部に有する1,1'−ビナフチレン−2,2'−ジイル基である。)で表されるジアミンとメトキシ基、アミノ基、ハロゲン及びアリール基からなる群から独立に選択される置換基を有していても良い2,2'−ジハロ−1,1'−ビフェニル、2−ハロ−2'−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1'−ビフェニルまたは2,2'−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1'−ビフェニルとを触媒MLn(MはPdまたはNi、Lは嵩高な有機P化合物配位子、nは整数である。)およびtert-ブトキシアルカリ金属(アルカリ金属はLi、NaまたはK)、アルカリ金属の炭酸、酢酸またはリン酸塩、有機アミンからなる群から選択されるハロゲン化水素受容体などとして機能する塩の組み合わせ、またはヨウ化銅、嵩高なジアミン配位子およびtert-ブトキシアルカリ金属(アルカリ金属はLi、NaまたはK)、アルカリ金属の炭酸塩、またはリン酸塩からなる群から選択されるハロゲン化水素受容体などとして機能する塩との組み合わせの存在する有機溶媒中で反応させ、2つのカルバゾール環を形成する反応により光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を製造する方法である。好ましくは、(3)2,2'−ジハロ−1,1'−ビフェニル、2−ハロ−2'−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1'−ビフェニルまたは2,2'−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1'−ビフェニルが5,5'位にメトキシ基、アミノ基、ハロゲン及びアリール基からなる群から独立に選択される置換基を有しても良く、2位および2'位のハロゲン原子はBr、I、またはClから選択され、2,2'−ジハロ−1,1'−ビフェニルの場合それぞれのハロゲン原子は独立に選択されることを特徴とする前記(2)に記載の光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を製造する方法である。
【0011】
本発明の第3は、(4)請求項1に記載の式1光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を用いたバッファー層形成用材料である。本発明の第4は、(5)請求項1に記載の式1の光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を用いた有機エレクトロルミネセンスの発光層形成材料である。
【0012】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.N−カルバゾリル基の導入により内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つアリーレン基またはそれ自体で内部回転異性性の結合軸を持つアリーレン基としては、非置換または電子求引性置換基を有するビアリーレン−ジイル−基、例えば、ナフタレン、アントラセンなどのポリアセン類から導かれる、1,1'−ビアリーレン− 2,2'−ジイル、例えば1,1'−ビナフチレン− 2,2'−ジイル、または9,9'−ビフェナンスリル−10,10'−ジイル基、6、6' 位にアルキル基、アルコキシ基、アシル基、ニトリル基から独立に選択される置換基を有するキラル1,1'−ビフェニレン−2,2'−ジイル基などを挙げることができる。ここで、「内部回転異性性を付与しうる結合軸」とは、結合軸の自由回転を阻害する置換基の導入により「内部回転異性性の結合軸」となることを意味する。
【0013】
置換基としては、1,1'−ビナフチレン−2,2'−ジイルにおいては6,6'−位、6,6'−ジ置換1,1'−ビフェニレン−2,2'−ジイル基においては更に5,5'−位に、また、9,9'−ビフェナンスリル−10,10'−ジイル基においては6,6'−位に、メトキシ基、エステル基、ニトリル基、アミノ基、ハロゲン原子、酸素原子含有基、およびアリール基などから独立に選択される電子吸引性基の置換により、アリーレン部分のアニオンラジカルの安定性が改善されると共に、有機EL、蛍光材料、有機バッファー層構成材料、CD特性に基づく光スイッチ構成が改善される。例えば、3,3',4,4',5,5',6,6',7,7',8,8'−ドデカフルオロ−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイルを用いたものは前記特性が改善される。ここで、酸素原子含有基とは、例えば、−OAc、−OSO2CH3、−OSO2CF3などを意味する。上記説明から明らかなように、反応原料であるNH2−Ar−NH2における、Arには、前記アリーレン基の説明に基づいて選択され、特に、1,1'−ビナフチレン−2,2'−ジイルが選択され用いられる。
【0014】
B. アミノ化反応の基質の2,2'−ジハロ−1,1'−ビフェニル化合物において、ハロゲン原子は同一でも、異なっていても良く、Cl、BrおよびIから選択される。好ましいものとしては、BrとIとを組み合わせた場合、および両ハロゲンがBrの場合を挙げることができる。該ビフェニル化合物において機能性などの改善に有効な置換位置は5,5'位である。5,5'位に置換したメトキシ基、アミノ基、ハロゲンまたはアリール基は本発明の光学活性アリ−レンジN−カルバゾールにおいて窒素上のカチオンラジカルを安定化すると共に、有機EL、蛍光材料、有機バッファー層構成材料、CD特性に基づく光スイッチ構成材料としての特性を改善することができる。アミノ化反応の基質が2−ハロ−2 '−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1'−ビフェニルまたは2,2'−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1'−ビフェニルの場合においても、5,5'位にメトキシ基、アミノ基、ハロゲンまたはアリール基を置換することにより上記特性の改善が見られる。
【0015】
C.触媒MLn(MはPdまたはNi、Lは嵩高な有機P化合物配位子、nは整数である。)において、配位子Lとして、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、ビス(2−メチルフェニル)(フェニル)ホスフィン、(2−メチルフェニル)ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン類、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィンなどの嵩高のアルキル基を持つトリアルキルホスフィン類、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジ−tert-ブチルホスフィノ)ビフェニルなど有機ホスフィノ基置換ビフェニル類、1位、1位および1'位にフェニル基、嵩高なアルキル基、例えばtert-ブチル基、シクロヘキシル基からなる群から選択2つの有機基(異なるものから選択されても良い)をもつホスフィノ基を有するフェロセン類、その他に、図1の配位子群Aおよび配位子群Bに記載のものを挙げることができる。好ましいものとして、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィンを挙げることができる。
【0016】
D.配位触媒のPd、Niなどの金属前駆体としては、Pd2(dba)3、Pd(dba)2、Pd(OAc)2、PdCl2〔P(メチルフェニル)3〕2、PdCl2(dppf)、Ni(cod)2、NiCl2とMeMgBrの混合物、Ni/C、NiCl2(1,10−フェナンスロリン)とMeMgBrの混合物などを挙げることができる。ここで、dba=トランス、トランス−ジベンジリデン アセトン(trans,trans-dibenzylidene acetone)、OAc=アセチル、dppf=1,1'−(ビスジフェニルホスフィノ)フェロセン〔1,1'-(bisdiphenylphosphino)ferrocene〕、cod=1,5−シクロオクタジエンである。
【0017】
E.前記触媒MLnと組み合わされる、反応中に発生するHX(Xはハロゲン原子)の受容体などとして機能する塩は、tert-ブトキシアルカリ(アルカリとしては、Li、Na、K)、リン酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリアルキルアミンなどを挙げることができる。
【0018】
前記触媒MLnを用いた系と同様に機能する触媒系として、ヨウ化銅、嵩高なジアミン配位子、例えばラセミ トランス−1,2−シクロヘキサンジアミンおよびtert-ブトキシアルカリ金属(アルカリ金属はLi、NaまたはK)、アルカリ金属の炭酸塩、またはリン酸塩からなる群から選択されるハロゲン化水素受容体などとして機能する塩、例えば、リン酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムまたはtert-ブトキシNaなどの塩との組み合わせを有用なものとして挙げることができる。
【0019】
F、反応溶媒としては、トルエン、ベンゼンなどの芳香族類、ヘキサン、エーテル、酢酸エチル、クロロホルム、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライムなどである。好ましくは、トルエン、ベンゼンなどの芳香族類である。
G.反応温度は20〜150℃の範囲であり、好ましくは、80±20℃である。
【0020】
以下に示す実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、請求の範囲に記載に記載された構成の範囲に含まれるものであれば、本実施例に準ずる作用効果を持ち、本発明を限定するものではない。
【実施例】
実施例1
(S)−2,2'−ジ(N−カルバゾリル)−1,1'−ビナフタレンの合成。
(S)−1,1'−ビナフチル−2,2'−ジアミン(284mg,1.00ミリモル)と2−ブロモ−2'−ヨードー1,1'−ビフェニル(862mg、2.40ミリモル)をトルエン(2.9mL)にとかし、金属前駆体としてPd2(dba)3(92mg、0.10モル)と配位子化合物としてトリス(2−メチルフェニル)ホスフィン(122mg、6.40ミリモル)、ハロゲン化水素受容体などとして機能する塩としてtert−ブトキシシNa(423mg、4.40mmol)を加え、80℃で、24時間撹拌した。反応混合物を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、前記目的の化合物 350mg(収率60%)を得た。融点;277.6℃〜278.1℃であった。
【0021】
(S)−2,2'−ジ(N−カルバゾリル)−1,1'−ビナフタレンの特性A;
前記本発明の化合物酸化、還元特性サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry)による測定。参照電極として飽和カロメル電極、作用電極として、ガラス状炭素、対極としてPt、を用いた。測定電解液として、CH3CN、30mL、LiClO4、3mmol、前記本発明の化合物(基質)0.1mmol、対照試料(ブランク)として基質を除いたものを用意した。図2に酸化電位を、図3に還元電位を示す。これらから、酸化電位は、1.09Vで一電子酸化され、1.35Vで二電子めが酸化されている。因みにナフチルカルバゾールでは1.20Vで一電子酸化される。また、還元特性は、図3のチャートには−2.25Vに還元によるピークがあり、還元され易いことを示している。因みにナフチルカルバゾールではこの電位が観測されない。このような特性から、本発明の化合物は二つのカルバゾリル基が効果的に相互作用しており、陽極バッファー層および陰極バッファー層形成材料として、また、有機ELの発光層、またはドーパントとして、換言すれば有機エレクトロルミネセンスの発光層形成材料として有用であることを示している。
【0022】
B;蛍光特性 図4に、シクロヘキサン中に前記本発明の化合物を1×10−5モル溶解した溶液に励起光(295nm)を照射した場合の蛍光特性を示す。この分子について分子軌道を計算すると、カルバゾールが酸化され易く、ナフタレンが還元され易いことが予測される(図2,3の説明に対応する。)。したがって、光によって電子が励起された時にも、カルバゾールがプラス、ナフタレンがマイナスに帯電し、分子内電荷分離型錯体を生じていることが予想される。蛍光スペクトルにおける強い発光は、この分子の前記分子内電荷分離型錯体の生成を裏付けるものであり、光電変換素子としての利用の可能性を示唆する。
【0023】
C;円二色(CD)(circular dichromism)特性シクロヘキサン中に前記本発明の化合物を1×10−5モル溶解により測定した。図5から、ビアリール特性吸収帯の波長領域でモル吸収特性が変化しており、円二色(CD)(circular dichromism)特性を観察することできる。したがって、上記の発光または光変換過程にキラリティという情報を付与できる。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明における新しい反応に基づくN−カルバゾリル誘導体の合成原理は、種々のアリーレン基と組み合わせたN−カルバゾリル誘導体を提供できるという優れた効果をもたらし、得られた光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体は、種々のアリーレン基とジN−カルバゾリルとの組み合わせに基づく種々の機能材料、特に有機EL、蛍光材料、有機バッファー層構成材料、CD特性に基づく光スイッチ構成材料として有用な材料を提供できるという優れた効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のMLnの配位子群例
【図2】 実施例1の化合物のサイクリックボルタンメトリーのよる酸化電位
【図3】 実施例1の化合物のサイクリックボルタンメトリーのよる還元電位
【図4】 実施例1の化合物の蛍光特性
【図5】 実施例1の化合物の円二色(CD)(circular dichromism)特性
Claims (5)
- NH2−Ar−NH2(但し、Arは内部回転異性性を付与しうる結合軸を持つ非置換の、または置換基としてエステル基、ニトリル基、及びアリール基並びに−OAc、−OSO2CH3及び−OSO2CF3基からなる酸素原子含有基から独立に選択される置換基を、3〜8、3'〜8'位の一部または全部に有する1,1'−ビナフチレン−2,2'−ジイル基である。)で表されるジアミンとメトキシ基、アミノ基、ハロゲン及びアリール基からなる群から独立に選択される置換基を有していても良い2,2'−ジハロ−1,1'−ビフェニル、2−ハロ−2'−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1'−ビフェニルまたは2,2'−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1'−ビフェニルとを触媒MLn(MはPdまたはNi、Lは嵩高な有機P化合物配位子、nは整数である。)およびtert-ブトキシアルカリ金属(アルカリ金属はLi、NaまたはK)、アルカリ金属の炭酸、酢酸またはリン酸塩、有機アミンからなる群から選択されるハロゲン化水素受容体などとして機能する塩の組み合わせ、またはヨウ化銅、嵩高なジアミン配位子およびtert-ブトキシアルカリ金属(アルカリ金属はLi、NaまたはK)、アルカリ金属の炭酸塩、またはリン酸塩からなる群から選択されるハロゲン化水素受容体などとして機能する塩との組み合わせの存在する有機溶媒中で反応させ、2つのカルバゾール環を形成する反応により光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を製造する方法。
- 2,2'−ジハロ−1,1'−ビフェニル、2−ハロ−2'−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−1,1'−ビフェニルまたは2,2'−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)−1,1'−ビフェニルが5,5'位にメトキシ基、アミノ基、ハロゲン及びアリール基からなる群から独立に選択される置換基を有していても良く、2位および2'位のハロゲン原子はBr、I、またはClから選択され、2,2'−ジハロ−1,1'−ビフェニルの場合それぞれのハロゲン原子は独立に選択されることを特徴とする請求項2に記載の光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を製造する方法。
- 請求項1の光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を用いたバッファー層形成用材料。
- 請求項1の光学活性アリーレンジN−カルバゾリル誘導体を用いた有機エレクトロルミネセンスの発光層形成材料。
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