JP4272418B2 - 熱処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体ウェハーやガラス基板等(以下、単に「基板」と称する)に閃光を照射することにより基板を加熱する熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、イオン注入後の半導体ウェハーのイオン活性化工程においては、ハロゲンランプを使用したランプアニール装置等の熱処理装置が使用されている。このような熱処理装置においては、半導体ウェハーを、例えば、1000℃ないし1100℃程度の温度に加熱(アニール)することにより、半導体ウェハーのイオン活性化を実行している。そして、このような熱処理装置においては、ハロゲンランプより照射される光のエネルギーを利用することにより、毎秒数百度程度の速度で基板を昇温する構成となっている。
【0003】
しかしながら、毎秒数百度程度の速度で基板を昇温する熱処理装置を使用して半導体ウェハーのイオン活性化を実行した場合においても、半導体ウェハーに打ち込まれたイオンのプロファイルがなまる、すなわち、熱によりイオンが拡散してしまうという現象が生ずることが判明した。このような現象が発生した場合においては、半導体ウェハーの表面にイオンを高濃度で注入しても、注入後のイオンが拡散してしまうことから、イオンを必要以上に注入しなければならないという問題が生じていた。
【0004】
上述した問題を解決するため、キセノンフラッシュランプ等を使用して半導体ウェハーの表面に閃光を照射することにより、イオンが注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリセカンド以下)に昇温させる技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、イオンが拡散するための十分な時間がないため、半導体ウェハーに打ち込まれたイオンのプロファイルをなまらせることなく、イオン活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
【特許文献1】
特開昭59−169125号公報
【特許文献2】
特開昭63−166219号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、キセノンフラッシュランプは極めて高いエネルギーを有する光を瞬間的に半導体ウェハーに照射するため、一瞬で半導体ウェハーの表面温度が急速に上昇し、照射する光のエネルギーがある閾値を超えると急速な表面の熱膨張によって半導体ウェハーが高い確率で割れることとなる。このため、実際に熱処理を行うときには、上記閾値未満のある程度余裕(プロセスマージン)を持たせたエネルギーの光を照射するようにしている。
【0007】
しかしながら、サセプタに半導体ウェハーを保持させた状態にてキセノンフラッシュランプからの閃光照射によって該ウェハーを加熱したときには、上記閾値未満のエネルギーの閃光を照射したとしても、半導体ウェハーが割れることがあった。これは、一瞬の閃光照射によってウェハー表面が急激に熱膨張して半導体ウェハーが凸状に反ろうとしたときに、ウェハー端部がサセプタのポケット縁や位置決めピンに接触していたりすると、その接触部に大きな力が加わる一方で、そのような応力を緩和すべくウェハーがサセプタ上を滑って移動する時間的余裕がないためである。その結果、上記閾値未満のエネルギーの閃光を照射したときであっても、半導体ウェハーの端部が何かに接触していると瞬間的な熱膨張時にそこから受ける応力によってウェハーが割れることとなっていたのである。
【0008】
また、複数のキセノンフラッシュランプを同時に使用した一括露光により半導体ウェハーを加熱すると、大電流が瞬間的に流れることによって大きなノイズが生じるとともに、複数のキセノンフラッシュランプが同時に発光するため大きな音が発生するという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱処理時の基板の割れを防止することができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に対して閃光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を保持するサセプタと、前記サセプタに保持された基板の一方面側に配置され、当該基板に向けて閃光を照射する複数のフラッシュランプと、前記複数のフラッシュランプの発光タイミングを制御する発光制御手段と、を備え、前記複数のフラッシュランプを複数のランプ群に分割するとともに、前記発光制御手段に前記複数のランプ群が所定間隔にて順次に発光するように前記複数のフラッシュランプの発光タイミングを制御させている。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明にかかる熱処理装置において、前記複数のランプ群のそれぞれに含まれるフラッシュランプを順次繰り返して配列している。
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明にかかる熱処理装置において、前記発光制御手段に、前記複数のフラッシュランプのそれぞれの発光タイミングを制御させている。
【0011】
また、請求項の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明にかかる熱処理装置において、前記所定間隔を1ミリセカンド以上10ミリセカンド以下としている。
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明にかかる熱処理装置において、前記発光制御手段に、前記複数のランプ群のうちの先に発光したランプ群によって昇温した基板の温度が低下する前に、後続のランプ群を発光させている。
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明にかかる熱処理装置において、前記複数のフラッシュランプが発光する前に、基板を所定の予備加熱温度にまで予備加熱するアシスト加熱手段をさらに備える。
また、請求項7の発明は、請求項6の発明にかかる熱処理装置において、前記アシスト加熱手段を、内部にヒータを有する加熱プレートとしている。
【0012】
また、請求項の発明は、請求項1の発明にかかる熱処理装置において、前記複数のフラッシュランプを第1ランプ群と第2ランプ群とに2分割するとともに、前記発光制御手段に、前記第1ランプ群が発光してから前記所定間隔の後に前記第2ランプ群が発光するように前記複数のフラッシュランプのそれぞれの発光タイミングを制御させている。
【0013】
また、請求項の発明は、請求項の発明にかかる熱処理装置において、前記第1ランプ群に含まれるフラッシュランプと前記第2ランプ群に含まれるフラッシュランプとを交互に配列している。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1および図2は本発明にかかる熱処理装置の構成を示す側断面図である。また、図3は複数のキセノンフラッシュランプの配列と半導体ウェハーとの位置関係を示す図である。この熱処理装置は、キセノンフラッシュランプからの閃光によって円形の半導体ウェハー等の基板の熱処理を行う装置である。
【0016】
この熱処理装置は、透光板61、底板62および一対の側板63、64からなり、その内部に半導体ウェハーWを収納して熱処理するためのチャンバー65を備える。チャンバー65の上部を構成する透光板61は、例えば、石英等の赤外線透過性を有する材料から構成されており、光源5から出射された光を透過してチャンバー65内に導くチャンバー窓として機能している。また、チャンバー65を構成する底板62には、後述するサセプタ73および加熱プレート74を貫通して半導体ウェハーWをその下面から支持するための支持ピン70が立設されている。
【0017】
また、チャンバー65を構成する側板64には、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための開口部66が形成されている。開口部66は、軸67を中心に回動するゲートバルブ68により開閉可能となっている。半導体ウェハーWは、開口部66が開放された状態で、図示しない搬送ロボットによりチャンバー65内に搬入される。また、チャンバー65内にて半導体ウェハーWの熱処理が行われるときには、ゲートバルブ68により開口部66が閉鎖される。
【0018】
チャンバー65は光源5の下方に設けられている。光源5は、複数(本実施形態においては27本)のキセノンフラッシュランプFL(以下、単に「フラッシュランプFL」とも称する)と、リフレクタ71とを備える。複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が水平方向に沿うようにして互いに平行に列設されている。リフレクタ71は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれらの全体を被うように配設されている。
【0019】
図4は、キセノンフラッシュランプFLの発光回路を示す図である。キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサー93に接続された陽極および陰極が配設されたガラス管92と、該ガラス管92の外局部に付設されたトリガー電極91とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。
【0020】
しかしながら、トリガースイッチSWをON状態からOFF状態にしてトリガー電極91に高電圧を印加した場合には、コンデンサー93に蓄えられた電気がトリガ線に沿ってガラス管92内に瞬時に流れ、光が放出される。つまり、キセノンフラッシュランプFLの発光タイミングはトリガースイッチSWをON状態からOFF状態に切り換えるタイミングで定まる。このキセノンフラッシュランプFLにおいては、予め蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし10ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。なお、キセノンフラッシュランプFLの発光時間はコイル94のインダクタンスとコンデンサー93のコンデンサ値によって定まる。また、トリガースイッチSWとしては例えばサイリスター等の電気的なスイッチ素子を用いてもよい。
【0021】
図1,2に戻り、光源5と透光板61との間には、光拡散板72が配設されている。この光拡散板72は、赤外線透過材料としての石英ガラスの表面に光拡散加工を施したものが使用される。
【0022】
フラッシュランプFLから放射された光の一部は直接に光拡散板72および透光板61を透過してチャンバー65内へと向かう。また、フラッシュランプFLから放射された光の他の一部は一旦リフレクタ71によって反射されてから光拡散板72および透光板61を透過してチャンバー65内へと向かう。
【0023】
チャンバー65内には、加熱プレート74とサセプタ73とが設けられている。サセプタ73は加熱プレート74の上面に貼着されている。また、サセプタ73の表面には、半導体ウェハーWの位置ずれ防止ピン75が付設されている。チャンバー65内にて半導体ウェハーWは直接にはサセプタ73によって略水平姿勢にて保持される。
【0024】
加熱プレート74は、半導体ウェハーWを予備加熱(アシスト加熱)するためのものである。この加熱プレート74は、窒化アルミニウムにて構成され、その内部にヒータと該ヒータを制御するためのセンサとを収納した構成を有する。一方、サセプタ73は、半導体ウェハーWを位置決めして保持するとともに、加熱プレート74からの熱エネルギーを拡散して半導体ウェハーWを均一に予備加熱するためのものである。このサセプタ73の材質としては、窒化アルミニウムや石英等の比較的熱伝導率が小さいものが採用される。
【0025】
サセプタ73および加熱プレート74は、モータ40の駆動により、図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置と図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置との間を昇降する構成となっている。
【0026】
すなわち、加熱プレート74は、筒状体41を介して移動板42に連結されている。この移動板42は、チャンバー65の底板62に釣支されたガイド部材43により案内されて昇降可能となっている。また、ガイド部材43の下端部には、固定板44が固定されており、この固定板44の中央部にはボールネジ45を回転駆動するモータ40が配設されている。そして、このボールネジ45は、移動板42と連結部材46、47を介して連結されたナット48と螺合している。このため、サセプタ73および加熱プレート74は、モータ40の駆動により、図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置と図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置との間を昇降することができる。
【0027】
図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置は、図示しない搬送ロボットを使用して開口部66から搬入した半導体ウェハーWを支持ピン70上に載置し、あるいは、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWを開口部66から搬出することができるように、サセプタ73および加熱プレート74が下降した位置である。すなわち、昇降自在のサセプタ73および加熱プレート74には貫通孔が形成されており、底板62に固定して立設された支持ピン70がサセプタ73および加熱プレート74に対して挿通自在とされている。そして、サセプタ73および加熱プレート74が上記搬入・搬出位置まで下降すると、図1に示す如く支持ピン70の上端部がサセプタ73の上面から突き出て半導体ウェハーWを載置することができる状態となる。
【0028】
一方、図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置は、半導体ウェハーWに対して熱処理を行うために、サセプタ73および加熱プレート74が支持ピン70の上端より上方に上昇した位置である。サセプタ73および加熱プレート74が上記熱処理位置まで上昇すると、図2に示す如く支持ピン70の上端部がサセプタ73の上面よりも低くなり、支持ピン70に載置されていた半導体ウェハーWはサセプタ73に受け取られる。すなわち、モータ40は、支持ピン70の上端部がサセプタ73の上面よりも低くなる位置と、サセプタ73の上面よりも突き出てサセプタ73に保持された半導体ウェハーWを支持する位置との間にて、支持ピン70をサセプタ73に対して相対的に昇降させているのである。
【0029】
サセプタ73および加熱プレート74が図2の熱処理位置から図1の搬入・搬出位置に下降する過程においては、サセプタ73に支持された半導体ウェハーWは支持ピン70に受け渡される。逆に、サセプタ73および加熱プレート74が図1の搬入・搬出位置から図2の熱処理位置に上昇する過程においては、支持ピン70に載置された半導体ウェハーWがサセプタ73によって受け取られ、その下面をサセプタ73の表面に支持されて上昇し、チャンバー65内の透光板61に近接した位置に水平姿勢にて保持される。
【0030】
半導体ウェハーWを支持するサセプタ73および加熱プレート74が熱処理位置に上昇した状態においては、それらに保持された半導体ウェハーWと光源5との間に透光板61が位置することとなる。なお、このときのサセプタ73と光源5との間の距離についてはモータ40の回転量を制御することにより任意の値に調整することが可能である。
【0031】
また、チャンバー65の底板62と移動板42との間には筒状体41の周囲を取り囲むようにしてチャンバー65を気密状体に維持するための伸縮自在の蛇腹77が配設されている。サセプタ73および加熱プレート74が熱処理位置まで上昇したときには蛇腹77が収縮し、サセプタ73および加熱プレート74が搬入・搬出位置まで下降したときには蛇腹77が伸長してチャンバー65内の雰囲気と外部雰囲気とを遮断する。
【0032】
チャンバー65における開口部66と反対側の側板63には、開閉弁80に連通接続された導入路78が形成されている。この導入路78は、チャンバー65内に処理に必要なガス、例えば不活性な窒素ガスを導入するためのものである。一方、側板64における開口部66には、開閉弁81に連通接続された排出路79が形成されている。この排出路79は、チャンバー65内の気体を排出するためのものであり、開閉弁81を介して図示しない排気手段と接続されている。
【0033】
また、上記熱処理装置は、モータ40等の各機構部を制御するためのコントローラ10を備えている。図5は、コントローラ10の構成を示すブロック図である。コントローラ10のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、コントローラ10は、各種演算処理を行うCPU11、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM12、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM13および制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク14をバスライン19に接続して構成されている。
【0034】
また、バスライン19には、熱処理装置のモータ40やトリガー制御回路18が電気的に接続されている。トリガー制御回路18は、複数のフラッシュランプFLのそれぞれのトリガースイッチSWと接続されており、各トリガースイッチSWのON/OFFを制御する。コントローラ10のCPU11は、磁気ディスク14に格納された制御用ソフトウェアを実行することにより、モータ40を制御してサセプタ73および加熱プレート74の高さ位置を調整するとともに、複数のフラッシュランプFLのそれぞれが所定のタイミングにて発光するように、つまり所定のタイミングにてトリガースイッチSWがON/OFF状態となるようにトリガー制御回路18を制御する。なお、複数のフラッシュランプFLのそれぞれの発光タイミングについては後に詳述する。
【0035】
さらに、バスライン19には、表示部21および入力部22が電気的に接続されている。表示部21は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やレシピ内容等の種々の情報を表示する。入力部22は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。装置のオペレータは、表示部21に表示された内容を確認しつつ入力部22からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、表示部21と入力部22とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
【0036】
次に、本発明にかかる熱処理装置による半導体ウェハーWの熱処理動作について説明する。この熱処理装置において処理対象となる半導体ウェハーWは、イオン注入後の半導体ウェハーである。また、以下の処理はコントローラ10の指示に従ってモータ40等の各機構部が駆動することにより実行されるものである。
【0037】
この熱処理装置においては、サセプタ73および加熱プレート74が図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置に配置された状態にて、図示しない搬送ロボットにより開口部66を介して半導体ウェハーWが搬入され、支持ピン70上に載置される。半導体ウェハーWの搬入が完了すれば、開口部66がゲートバルブ68により閉鎖される。しかる後、サセプタ73および加熱プレート74がモータ40の駆動により図2に示す半導体ウェハーWの熱処理位置まで上昇し、半導体ウェハーWを水平姿勢にて保持する。また、開閉弁80および開閉弁81を開いてチャンバー65内に窒素ガスの気流を形成する。
【0038】
サセプタ73および加熱プレート74は、加熱プレート74に内蔵されたヒータの作用により予め所定温度に加熱されている。このため、サセプタ73および加熱プレート74が半導体ウェハーWの熱処理位置まで上昇した状態においては、半導体ウェハーWが加熱状態にあるサセプタ73と接触することにより予備加熱され、半導体ウェハーWの温度が次第に上昇する。
【0039】
この状態においては、半導体ウェハーWはサセプタ73により継続して加熱される。そして、半導体ウェハーWの温度上昇時には、図示しない温度センサにより、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1に到達したか否かを常に監視する。
【0040】
なお、この予備加熱温度T1は、例えば200℃ないし600℃程度の温度である。半導体ウェハーWをこの程度の予備加熱温度T1まで加熱したとしても、半導体ウェハーWに打ち込まれたイオンが拡散してしまうことはない。
【0041】
やがて、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1に到達すると、フラッシュランプ69を点灯してフラッシュ加熱を行う。このフラッシュ加熱工程におけるフラッシュランプ69の発光時間は、0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度の時間である。このように、フラッシュランプ69においては、予め蓄えられていた静電エネルギーがこのように極めて短い光パルスに変換されることから、極めて強い閃光が照射されることになる。
【0042】
ここで、本実施形態においては、27本のフラッシュランプFLを2つのランプ群に2分割するとともに、それら2つのランプ群の発光タイミングをわずかにずらしている。すなわち、図3に示すように27本のフラッシュランプFLを図面左端から順に番号付けしてフラッシュランプFL(1),FL(2),FL(3),・・・,FL(26),FL(27)としたときに、奇数番のランプ群(フラッシュランプFL(1),FL(3),FL(5),・・・,FL(25),FL(27))と偶数番のランプ群(フラッシュランプFL(2),FL(4),FL(6),・・・,FL(24),FL(26))とに2分割している。なお、本明細書においては、個々のキセノンフラッシュランプを区別する必要のあるときはFL(1),FL(2)と表記し、特に区別する必要のないときには単にフラッシュランプFLと表記する。また、図5において、トリガースイッチSW(1),SW(2),・・・と表記しているのはそれぞれフラッシュランプFL(1),FL(2),・・・に対応するトリガースイッチであり、特に区別する必要のないときには単にトリガースイッチSWと表記する。
【0043】
上記のように27本のフラッシュランプFLを奇数番のランプ群と偶数番のランプ群とに2分割すれば、奇数番のランプ群に含まれるフラッシュランプFLと偶数番のランプ群に含まれるフラッシュランプFLとが交互に配列されることとなる。そして、本実施形態では、奇数番のランプ群が発光してから3ミリセカンド経過後に偶数番のランプ群が発光するようにコントローラ10がトリガー制御回路18を制御している。
【0044】
このように、27本のフラッシュランプFLを2つのランプ群に2分割して発光タイミングをわずかにずらしたとしても、必要な熱処理温度を得ることができる。これについて図6および図7を参照して説明する。図6はフラッシュランプFLが発光を開始してからの経過時間と半導体ウェハーWに与える照射エネルギーとの相関を示す図であり、図7はフラッシュランプFLが発光を開始してからの経過時間と半導体ウェハーWの表面温度との相関を示す図である。両図において、実線は本実施形態の分割露光を示し、点線は従来の一括露光を示している。
【0045】
図6に示すように、2分割の分割露光を行うことによって奇数番のランプ群および偶数番のランプ群それぞれの照射エネルギーは一括露光時の約半分となる。一方、半導体ウェハーWの表面温度の昇温はフラッシュランプFLからの閃光照射よりもやや遅れる。つまり、照射エネルギーのピークよりも半導体ウェハーWの表面温度のピークの方がやや後になる。このため、奇数番のランプ群の発光タイミングと偶数番のランプ群の発光タイミングとをわずかにずらしたとしても、先に発光した奇数番のランプ群の照射エネルギーによって半導体ウェハーWが昇温している過程で偶数番のランプ群が発光することとなり、半導体ウェハーWの昇温は奇数番のランプ群によるものと偶数番のランプ群によるものとが連続して加算的に行われることとなる。その結果、分割露光では一括露光と比較してピーク温度に到達するまでの時間はやや長くなるものの、最終的に必要な熱処理温度を得ることは可能である。
【0046】
そして、このような分割露光を行うことによって、一回の露光によるウェハー表面の熱膨張の程度が低減されるため、半導体ウェハーWの端部がサセプタ73の端部等に接触していたとしてもウェハー割れを防止することができる。つまり、最終的に必要な熱処理温度を得つつも熱処理時の半導体ウェハーWの割れを防止することができるのである。
【0047】
また、分割露光を行うことによって一回の露光時に瞬間的に流れる電流が少なくなってノイズが低減するとともに、発生する音の最大音量をも低減することができる。
【0048】
また、奇数番のランプ群に含まれるフラッシュランプFLと偶数番のランプ群に含まれるフラッシュランプFLとが交互に配列されているため、各ランプ群から照射される閃光の照度分布はほぼ等しいものとなる。
【0049】
以上のような分割露光を行うときに、奇数番のランプ群の発光と偶数番のランプ群の発光との間隔は1ミリセカンド以上10ミリセカンド以下とする必要がある。発光間隔が1ミリセカンド未満であれば、一括露光と同程度のウェハー表面の熱膨張が生じることとなり、ウェハー割れを十分に防止することができなくなるとともに、ノイズ低減効果や音量低減効果も十分に得られない。また、発光間隔が10ミリセカンドを超えると、先に発光した奇数番のランプ群によって昇温した半導体ウェハーWの温度が低下した後に、偶数番のランプ群が発光することとなり、必要な熱処理温度が得られなくなる。このため、奇数番のランプ群の発光と偶数番のランプ群の発光との間隔を1ミリセカンド以上10ミリセカンド以下としており、この範囲であれば最終的に必要な熱処理温度を得つつも熱処理時の半導体ウェハーWの割れを防止することができ、しかも瞬間的なノイズおよび音量をも低減することができる。
【0050】
このような分割露光を用いたフラッシュ加熱により、半導体ウェハーWの表面温度は瞬間的に温度T2に到達する。この温度T2は、1000℃ないし1100℃程度の半導体ウェハーWのイオン活性化処理に必要な温度である。半導体ウェハーWの表面がこのような処理温度T2にまで昇温されることにより、半導体ウェハーW中に打ち込まれたイオンが活性化される。
【0051】
このとき、半導体ウェハーWの表面温度が極めて短い時間で処理温度T2まで昇温されることから、半導体ウェハーW中のイオン活性化は短時間で完了する。従って、半導体ウェハーWに打ち込まれたイオンが拡散することはなく、半導体ウェハーWに打ち込まれたイオンのプロファイルがなまるという現象の発生を防止することが可能となる。なお、イオン活性化に必要な時間はイオンの拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、フラッシュ加熱による拡散が生じない短時間であってもイオン活性化は完了する。
【0052】
また、フラッシュランプFLを点灯して半導体ウェハーWを加熱する前に、加熱プレート74を使用して半導体ウェハーWの表面温度を200℃ないし600℃程度の予備加熱温度T1まで加熱していることから、フラッシュランプFLにより半導体ウェハーWを1000℃ないし1100℃程度の処理温度T2まで速やかに昇温させることが可能となる。
【0053】
フラッシュ加熱工程が終了した後に、サセプタ73および加熱プレート74がモータ40の駆動により図1に示す半導体ウェハーWの搬入・搬出位置まで下降するとともに、ゲートバルブ68により閉鎖されていた開口部66が開放される。サセプタ73および加熱プレート74が下降することにより、サセプタ73から支持ピン70に半導体ウェハーWが受け渡される。そして、支持ピン70上に載置された半導体ウェハーWが図示しない搬送ロボットにより搬出される。以上のようにして、一連の熱処理動作が完了する。
【0054】
以上のように、27本のフラッシュランプFLを奇数番のランプ群と偶数番のランプ群とに2分割するとともに、奇数番のランプ群が発光してから1ミリセカンド以上10ミリセカンド以下が経過した後に偶数番のランプ群が発光するようにコントローラ10が27本のフラッシュランプFLのそれぞれの発光タイミングを制御すれば、最終的に必要な熱処理温度を得つつも熱処理時の半導体ウェハーWの割れを防止することができ、しかも瞬間的なノイズおよび音量をも低減することができる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記の例に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては光源5に27本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されずフラッシュランプFLの本数は任意のものとすることができる。また、分割露光の回数も2分割に限定されるものではなく、3分割以上としても良い。例えば、3本のフラッシュランプFLを3つのランプ群に3分割するようにしても良い。この場合、各ランプ群は1本のフラッシュランプFLを有することとなる。
【0056】
複数のフラッシュランプFLを3つ以上のランプ群に分割した場合であっても、それら複数のランプ群が1ミリセカンド以上10ミリセカンド以下の間隔にて順次に発光するようにコントローラ10が複数のフラッシュランプFLのそれぞれの発光タイミングを制御する。このようにすることにより、上記実施形態と同様に、最終的に必要な熱処理温度を得つつも熱処理時の半導体ウェハーWの割れを防止することができ、しかも瞬間的なノイズおよび音量をも低減することができる。
【0057】
なお、3つ以上のランプ群に分割した場合であっても、各ランプ群から照射される閃光の照度分布を均一にするために、各ランプ群に含まれるフラッシュランプFLを順次繰り返して配列するのが好ましい。また、3つ以上のランプ群に分割した場合であっても、必要な熱処理温度を確実に得るために最初に発光するランプ群から最後に発光するランプ群までの発光間隔を20ミリセカンド以下にするのが好ましい。
【0058】
また、上記実施形態においては、半導体ウェハーに光を照射してイオン活性化処理を行うようにしていたが、本発明にかかる熱処理装置による処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではない。例えば、窒化シリコン膜や多結晶シリコン膜等の種々のシリコン膜が形成されたガラス基板に対して本発明にかかる熱処理装置による処理を行っても良い。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、基板の一方面側に配置された複数のフラッシュランプを複数のランプ群に分割するとともに、複数のランプ群が所定間隔にて順次に発光するように複数のフラッシュランプの発光タイミングを制御するため、各ランプ群の発光タイミングをずらして最終的に必要な熱処理温度を得つつも熱処理時の基板の割れを防止することができ、しかも瞬間的なノイズおよび音量をも低減することができる。
また、請求項2の発明によれば、複数のランプ群のそれぞれに含まれるフラッシュランプを順次繰り返して配列しているため、各ランプ群の照度分布を均一にすることができる。
【0060】
また、請求項の発明によれば、ランプ群が発光する間隔を1ミリセカンド以上10ミリセカンド以下としているため、請求項1の発明による効果を確実に得ることができる。
また、請求項5の発明によれば、複数のランプ群のうちの先に発光したランプ群によって昇温した基板の温度が低下する前に、後続のランプ群を発光させるため、最終的に必要な熱処理温度を得ることができる。
【0061】
また、請求項の発明によれば、複数のフラッシュランプを第1ランプ群と第2ランプ群とに2分割するとともに、第1ランプ群が発光してから所定間隔の後に第2ランプ群が発光するように複数のフラッシュランプのそれぞれの発光タイミングを制御するため、第1,第2ランプ群の発光タイミングをずらして最終的に必要な熱処理温度を得つつも熱処理時の基板の割れを防止することができ、しかも瞬間的なノイズおよび音量をも低減することができる。
【0062】
また、請求項の発明によれば、第1ランプ群に含まれるフラッシュランプと第2ランプ群に含まれるフラッシュランプとを交互に配列しているため、第1ランプ群の照度分布と第2ランプ群の照度分布とを均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる熱処理装置の構成を示す側断面図である。
【図2】本発明にかかる熱処理装置の構成を示す側断面図である。
【図3】複数のキセノンフラッシュランプの配列と半導体ウェハーとの位置関係を示す図である。
【図4】図1の熱処理装置のキセノンフラッシュランプの発光回路を示す図である。
【図5】図1の熱処理装置のコントローラの構成を示すブロック図である。
【図6】フラッシュランプが発光を開始してからの経過時間と半導体ウェハーに与える照射エネルギーとの相関を示す図である。
【図7】フラッシュランプが発光を開始してからの経過時間と半導体ウェハーの表面温度との相関を示す図である。
【符号の説明】
5 光源
10 コントローラ
11 CPU
18 トリガー制御回路
40 モータ
65 チャンバー
70 支持ピン
71 リフレクタ
73 サセプタ
FL フラッシュランプ
SW トリガースイッチ
W 半導体ウェハー

Claims (9)

  1. 基板に対して閃光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
    基板を保持するサセプタと、
    前記サセプタに保持された基板の一方面側に配置され、当該基板に向けて閃光を照射する複数のフラッシュランプと、
    前記複数のフラッシュランプの発光タイミングを制御する発光制御手段と、
    を備え、
    前記複数のフラッシュランプを複数のランプ群に分割するとともに、前記発光制御手段は前記複数のランプ群が所定間隔にて順次に発光するように前記複数のフラッシュランプの発光タイミングを制御することを特徴とする熱処理装置。
  2. 請求項1記載の熱処理装置において、
    前記複数のランプ群のそれぞれに含まれるフラッシュランプを順次繰り返して配列したことを特徴とする熱処理装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の熱処理装置において、
    前記発光制御手段は、前記複数のフラッシュランプのそれぞれの発光タイミングを制御することを特徴とする熱処理装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱処理装置において、
    前記所定間隔は、1ミリセカンド以上10ミリセカンド以下であることを特徴とする熱処理装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱処理装置において、
    前記発光制御手段は、前記複数のランプ群のうちの先に発光したランプ群によって昇温した基板の温度が低下する前に、後続のランプ群を発光させることを特徴とする熱処理装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の熱処理装置において、
    前記複数のフラッシュランプが発光する前に、基板を所定の予備加熱温度にまで予備加熱するアシスト加熱手段をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
  7. 請求項6記載の熱処理装置において、
    前記アシスト加熱手段は、内部にヒータを有する加熱プレートであること特徴とする熱処理装置。
  8. 請求項1に記載の熱処理装置において、
    前記複数のフラッシュランプを第1ランプ群と第2ランプ群とに2分割するとともに、
    前記発光制御手段は、前記第1ランプ群が発光してから前記所定間隔の後に前記第2ランプ群が発光するように前記複数のフラッシュランプのそれぞれの発光タイミングを制御することを特徴とする熱処理装置。
  9. 請求項8記載の熱処理装置において、
    前記第1ランプ群に含まれるフラッシュランプと前記第2ランプ群に含まれるフラッシュランプとを交互に配列したことを特徴とする熱処理装置。
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