JP4271769B2 - エンジンの吸気装置 - Google Patents

エンジンの吸気装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4271769B2
JP4271769B2 JP09817899A JP9817899A JP4271769B2 JP 4271769 B2 JP4271769 B2 JP 4271769B2 JP 09817899 A JP09817899 A JP 09817899A JP 9817899 A JP9817899 A JP 9817899A JP 4271769 B2 JP4271769 B2 JP 4271769B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
intake
passage
throttle valve
air
valve
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP09817899A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000145467A (ja
Inventor
義治 井坂
貞英 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yamaha Motor Co Ltd
Original Assignee
Yamaha Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yamaha Motor Co Ltd filed Critical Yamaha Motor Co Ltd
Priority to JP09817899A priority Critical patent/JP4271769B2/ja
Publication of JP2000145467A publication Critical patent/JP2000145467A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4271769B2 publication Critical patent/JP4271769B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F02COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
    • F02BINTERNAL-COMBUSTION PISTON ENGINES; COMBUSTION ENGINES IN GENERAL
    • F02B2275/00Other engines, components or details, not provided for in other groups of this subclass
    • F02B2275/48Tumble motion in gas movement in cylinder
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/10Internal combustion engine [ICE] based vehicles
    • Y02T10/12Improving ICE efficiencies

Landscapes

  • Combustion Methods Of Internal-Combustion Engines (AREA)
  • Cylinder Crankcases Of Internal Combustion Engines (AREA)
  • Control Of Throttle Valves Provided In The Intake System Or In The Exhaust System (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダ内にタンブルを発生させるエンジンの吸気装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、4サイクルエンジンの吸気装置としては、燃費の向上を図るために希薄な混合気をエンジンに供給し、混合気が希薄でも低負荷運転時に燃焼が安定するように、シリンダ内にタンブルを発生させる構造のものがある。
【0003】
タンブルを発生させるためには、吸気ポートに吸気制御弁などの混合気が流れる方向を制御する部材を設ける構造を採っている。前記吸気制御弁は、吸気ポートのシリンダボディ側に配設し、低負荷運転時に吸気通路のシリンダボディ側を塞ぐように構成している。すなわち、この吸気制御弁を有する吸気装置を使用すると、低負荷運転時に混合気が吸気ポート内の吸気通路を動弁カム室側(シリンダボディとは反対側)に偏って流れ、吸気ポートの燃焼室側の開口から燃焼室内におけるシリンダ軸線を挾んで反対側(排気弁側)へ斜めに流入し、シリンダ内にタンブルが発生する。このため、負荷運転時に燃焼が安定するようになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
発明者らは、混合気を希薄にして燃費向上を図りながら、高負荷運転時のエンジン出力を高くすることを考えている。
しかるに、上述したように吸気制御弁を使用する吸気装置では、燃費向上と高出力化とを両立させることはできなかった。
【0005】
これは、シリンダヘッドに吸気制御弁を収容する空間を形成する分だけ吸気ポートを形成する部分が狭くなり、吸気ポートの通路断面積を大きくとることができないからである。すなわち、高負荷運転時に混合気の供給量が不足するからである。また、吸気制御弁のようないわゆる可変機構を設けると、コストアップになるという問題もある。
【0006】
本発明は上述した問題点を解消するためになされたもので、特別な可変機構を用いることなく、混合気が希薄でもタンブルによって低負荷運転時の燃焼の安定化を図るとともに、吸気ポートの通路断面積の増大化と吸気抵抗低減を図って高負荷運転時の出力向上を図ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明に係るエンジンの吸気装置は、シリンダヘッドに点火プラグを吸気の流れ方向から見て一方に偏る位置に配設し、このシリンダヘッドの吸気ポートにスライド式スロットル弁を有する気化器から混合気を供給する構造とし、この気化器に、スロットル弁下流側の吸気通路をスロットル弁開側とスロットル弁閉側とに画成する隔壁を形成し、前記スロットル弁開側を吸気管の高負荷用通路を介して前記吸気ポートの上流側端部におけるシリンダボディ側に接続するとともに、前記スロットル弁閉側を吸気管の低負荷用通路を介して吸気ポートの上流側端部における動弁カム室側であって点火プラグ側の部位に接続し、この吸気ポートの上流側端部における動弁カム室側であって他方の部位を、スロットル弁の開動作に連動して少なくともスロットル弁の低開度域では開口面積が増大する構造の制御弁を有する補助空気通路を介して大気に連通させたものである。
【0008】
本発明によれば、低負荷運転時には混合気が狭い低負荷用通路から吸気ポートの動弁カム室側に供給される。この混合気は、吸気ポートの動弁カム室側の壁面に沿って流れ、吸気出口の点火プラグ側から燃焼室内におけるシリンダ軸線を挾んで反対側に高速で斜めに流入する。
一方、吸気出口における点火プラグから離間する部位からは、スロットル弁の開度に対応する流量をもって補助空気通路に吸込まれた空気が流入する。この空気も前記混合気と同様に吸気ポート内を動弁カム室側の壁面に沿って高速で流れ、吸気出口から燃焼室内におけるシリンダ軸線を挾んで反対側に斜めに流入する。
【0009】
このため、吸気出口からシリンダ内に流入した混合気と空気とによって、シリンダ内にタンブルが発生する。このタンブルを構成する二つの旋回流、すなわち混合気の旋回流と、空気の旋回流とは、狭い低負荷用通路を高速で流れ、方向性をもって燃焼室に流入するため、ピストンの上昇行程になっても互いに混ざり合うことがなく、点火プラグ近傍には濃い混合気が存在する。この結果、混合気が希薄でも低負荷運転時において着火・燃焼が確実に起こるようになる。
【0010】
また、高負荷運転時には、高負荷用通路にも混合気が流れるようになり、低負荷用通路と高負荷用通路の両方を使用して混合気が吸気ポートの吸気出口からシリンダ内に流入する。この吸気装置は、吸気ポートを形成する部分が吸気制御弁によって狭くなる制約を受けることはないから、高負荷運転時に吸気出口からシリンダ内に混合気を大量に供給することができる。
【0011】
このように吸気出口から混合気がシリンダ内に流入することによって、燃料がシリンダ内の広い範囲にわたって多く、しかも略均等に分布するようになる。このため、空気利用率が高くなり、高負荷運転時に出力向上を図ることができる。
【0012】
請求項2記載の発明に係るエンジンの吸気装置は、吸気弁を気筒当たり2個備えたシリンダヘッドに点火プラグを一方の吸気弁側に偏る位置に配設し、このシリンダヘッドの吸気ポートにスライド式スロットル弁を有する気化器から混合気を供給する構造とし、この気化器に、スロットル弁下流側の吸気通路をスロットル弁開側とスロットル弁閉側とに画成する隔壁を形成し、前記スロットル弁開側を吸気管の高負荷用通路を介して前記吸気ポートの上流側端部におけるシリンダボディ側に接続するとともに、前記スロットル弁閉側を吸気管の低負荷用通路を介して吸気ポートの上流側端部における動弁カム室側であって点火プラグ側の一方の吸気弁に向けて延びる部位に接続し、この吸気ポートの上流側端部における動弁カム室側であって他方の吸気弁に延びる部位を、スロットル弁の開動作に連動して少なくともスロットル弁の低開度域では開口面積が増大する構造の制御弁を有する補助空気通路を介して大気に連通させたものである。
【0013】
この発明によれば、低負荷運転時には混合気が狭い低負荷用通路から吸気ポートの動弁カム室側に供給される。この混合気は、吸気ポートの動弁カム室側の壁面に沿って流れ、点火プラグとの距離が相対的に短い方の吸気弁と吸気出口との間の隙間から燃焼室内におけるシリンダ軸線を挾んで反対側に高速で斜めに流入する。
【0014】
一方、点火プラグとの距離が相対的に大きい方の吸気弁と吸気出口との間の隙間からは、スロットル弁の開度に対応する流量をもって補助空気通路に吸込まれた空気が流入する。この空気も前記混合気と同様に吸気ポート内を動弁カム室側の壁面に沿って高速で流れ、吸気出口から燃焼室内におけるシリンダ軸線を挾んで反対側に斜めに流入する。
【0015】
このため、吸気出口からシリンダ内に流入した混合気と空気とによって、シリンダ内にタンブルが発生する。このタンブルを構成する二つの旋回流、すなわち混合気の旋回流と、空気の旋回流は、狭い低負荷用通路を高速で流れ、方向性をもって燃焼室に流入するため、ピストンの上昇行程になっても互いに混ざり合うことがなく、点火プラグ近傍には濃い混合気が存在する。この結果、混合気が希薄でも低負荷運転時において着火・燃焼が確実に起こるようになる。
【0016】
また、高負荷運転時には、高負荷用通路にも混合気が流れるようになり、低負荷用通路と高負荷用通路の両方を使用して混合気が吸気ポートの二つの吸気出口からシリンダ内に流入する。この吸気装置は、吸気ポートを形成する部分が吸気制御弁によって狭くなる制約を受けることはなく、吸気弁を気筒当たり2個用いて吸気ポートの通路断面積を相対的に大きくすることができる構造を採っているから、高負荷運転時に二つの吸気出口からシリンダ内に混合気を大量に供給することができる。
【0017】
このように二つの吸気出口から混合気がシリンダ内に流入することによって、燃料がシリンダ内の広い範囲にわたって多く、しかも略均等に分布するようになる。このため、空気利用率が高くなり、高負荷運転時に出力向上を図ることができる。
【0018】
請求項3に記載した発明に係るエンジンの吸気装置は、請求項1または請求項2記載のエンジンの吸気装置において、シリンダヘッドに、吸気ポート内を吸気管の高負荷用通路に接続するシリンダボディ側通路と、低負荷用通路・補助空気通路に接続する動弁カム室側通路とに画成する仕切壁を吸気ポート入口から吸気弁貫通部の近傍まで延びるように一体に形成し、前記シリンダボディ側通路を、カム軸の軸線方向から見て吸気ポート出口近傍の屈曲部分から吸気ポート入口まで略直線状に形成したものである。
【0019】
この発明によれば、シリンダボディ側通路の直線状に形成された部分に動弁カム室側通路から吸気が滑らかに合流する。このため、高負荷運転時に吸気管の高負荷用通路から前記シリンダボディ側通路に供給される大量の吸気は、吸気管の低負荷用通路から流入する吸気によって流動が妨げられることが少ない。また、シリンダボディ側通路は吸気抵抗が小さくなるから、高負荷運転時にシリンダボディ側通路に吸気を大量にしかも円滑に流すことができる。
この発明を請求項2記載の発明に係るエンジンの吸気装置に適用すると、気化器で濃淡に分離された混合気が混ざり合うことなくシリンダ内に流入する。
【0020】
さらに、シリンダボディ側通路と動弁カム室側通路との間の仕切壁をシリンダヘッドとは別体に形成する場合に較べて、仕切壁を組付ける作業が不要になる。さらにまた、前記仕切壁にシリンダヘッドの高温部分から伝導によって熱が伝達されるから、この仕切壁に燃料が接触することによって、燃料の気化が促進される。
【0021】
請求項4記載の発明に係るエンジンの吸気装置は、請求項1ないし請求項3の何れか一つのエンジンの吸気装置において、スロットル弁を有底円筒状のピストン弁によって形成し、補助空気通路を、前記スロットル弁の周壁に穿設した空気孔を介してスロットル弁上流側の吸気通路に連通するように形成し、この補助空気通路に介装する制御弁をスロットル弁によって構成したものである。
【0022】
この発明によれば、補助空気通路に吸込まれる空気の流量を制御する制御弁を気化器のスロットル弁によって構成することができるから、専らこの空気の流量を制御するための制御弁が不要である。
【0023】
請求項5記載の発明に係るエンジンの吸気装置は、請求項1ないし請求項4のうち何れか一つのエンジンの吸気装置において、気化器の隔壁にスロットル弁下流側の吸気通路のスロットル弁閉側を燃料噴口と対応する中央部とその両側部とに三分割する分割壁を形成し、前記中央部に点火プラグに近い側の低負荷用通路を接続するとともに、両側部は点火プラグに遠い側の低負荷用通路に接続し、かつ補助空気通路と接続したものである。
【0024】
この発明によれば、燃料の大部分は混合気として点火プラグに近い側の低負荷用通路に流入するため、点火プラグに遠い側の低負荷用通路はきわめて希薄な混合気となっている上に更に補助空気通路からの空気が多く流入するから、気化器のスロットル弁下流側の点火プラグに近い側の低負荷用通路に流入する濃混合気の流量と、点火プラグに遠い側の低負荷用通路に流入する希薄混合気の流量をスロットル弁によって制御することができる。
【0025】
このため、低負荷運転時の濃混合気と希薄混合気との流量制御が容易で、シリンダ内に混合気からなるタンブルと空気からなるタンブルとをバランスよく発生させることが可能である。
【0026】
【発明の実施の形態】
第1の実施の形態
以下、本発明に係るエンジンの吸気装置の一実施の形態を図1ないし図7によって詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明に係るエンジンの吸気装置を示す断面図、図2は要部を拡大して示す断面図、図3はシリンダヘッドをシリンダボディ側から見た状態を示す底面図、図4は図2における気化器および吸気管のIV−IV線断面図である。図5は図2における気化器の吸気通路形成部分のV−V線断面図、図6は図2におけるVI−VI線断面図、図7は図2における吸気管接続用ジョイントのVII−VII線断面図である。
【0028】
これらの図において、符号1で示すものは、この実施の形態による自動二輪車用4サイクル単気筒エンジンである。符号2はこのエンジン1のシリンダヘッドを示し、3はシリンダボディ、4はピストン、Sは燃焼室を示す。
【0029】
このエンジン1は、シリンダボディ3の軸線方向が車体の前方を指向するようにシリンダボディ3を前傾させている。このエンジン1のシリンダボディ3の軸線を図1中に一点鎖線Cで示す。
【0030】
このエンジン1のシリンダヘッド2は、動弁カム室5に収容した1本のカム軸6で2本の吸気弁7と1本の排気弁8を駆動する構造の動弁装置を備え、吸気ポート9の吸気入口が上方を指向するようにシリンダボディ3に取付けている。前記吸気ポート9は、図3に示すように、シリンダヘッド2の上面に開口する吸気入口の近傍で吸気通路が図3において上側に位置する第1の通路10と、下側に位置する第2の通路11とに分岐するように形成している。図3において、前記第1の通路10の吸気出口を開閉する吸気弁7の近傍に設けた符号12で示すものは点火プラグである。すなわち、このシリンダヘッド2は、点火プラグ12をカム軸6の軸線方向(図3の上下方向)において一方(前記第1の通路10の吸気出口を開閉する吸気弁7側)に偏った部位に位置付けている。
【0031】
前記吸気ポート9の吸気入口には、ジョイント13および吸気管14を介して気化器15を接続している。
前記吸気管14は、図1および図2に示すように、シリンダヘッド2の上部から上方へ延在し、気化器15を接続する上流端が車体の前方を指向するように屈曲しており、内部に3種類の吸気通路を形成している。
【0032】
これらの3種類の吸気通路は、吸気ポート9の上流側端部におけるシリンダボディ3側に接続する高負荷用通路16と、吸気ポート9の上流側端部における動弁カム室5側であって点火プラグ12側の一方の吸気弁7に向けて延びる部位に接続するリッチ低負荷用通路17と、吸気ポート9の上流側端部における動弁カム室5側であって他方の吸気弁7に向けて延びる部位に接続するリーン低負荷用通路18である。
【0033】
前記高負荷用通路16およびリッチ低負荷用通路17は、それぞれ吸気管14の上流端に開口する一つの入口と、吸気管の下流端の一つの出口とを連通するように形成し、リーン低負荷用通路18は、図4に示すように、吸気管14の上流端に開口する二つの入口18a,18aと、吸気管14の下流端の一つの出口18cとを連通するように形成している。すなわち、リーン低負荷用通路18は、吸気管14の上流側端部においてリッチ低負荷用通路17の両側に形成した二つの流入部18d,18eが吸気管14内で集合するように形成している。
【0034】
この実施の形態では、シリンダヘッド2と吸気管14との間に介装するジョイント13に通路形成用の延長壁19を一体に形成し、前記リッチ低負荷用通路17およびリーン低負荷用通路18の実質的な下流側端部をシリンダヘッド2内まで延長している。前記延長壁19は、図7に示すように断面T字状に形成し、吸気ポート9の上流側端部の吸気通路をシリンダボディ3側と、動弁カム室5側であって第1の通路10側と、動弁カム室5側であって第2の通路11側とに仕切る構造を採っており、吸気ポート9内の第1の通路10と第2の通路11との間に位置する分岐壁20の近傍まで下流側に延設している。
【0035】
このようにジョイント13に延長壁19を形成することによって、リッチ低負荷用通路17とリーン低負荷用通路18の実質的な下流端を吸気ポート9内の吸気通路の動弁カム室5側であって前記分岐壁20の近傍まで延長することができる。
【0036】
前記気化器15は、一般的なエンジンに使用するものに較べて希薄な混合気を生成する構造を採っている。また、この気化器15は、スロットル弁21を有底円筒状のスライド式ピストン弁によって形成し、スロットル弁21の下流側に、スロットル弁下流側の吸気通路を分割する隔壁22および分割壁23を一体に形成しており、ジョイント24を介して前記吸気管14の上流端に接続している。なお、この気化器15の上流側は、吸気ダクト25および図示していないエアクリーナを介して大気に連通している。
【0037】
前記隔壁22は、図5に示すように、スロットル弁下流側の吸気通路をスロットル弁閉側(図5において下側)とスロットル弁開側とに画成している。また、前記分割壁23は、前記スロットル弁閉側の吸気通路をメイン燃料噴口26a(図2,図4参照)およびパイロット燃料噴口26bと対応する中央部27と両側部28とに三分割している。これらの隔壁22および分割壁23によって画成された吸気通路のうち、前記スロットル弁開側の吸気通路は、吸気管14内の前記高負荷用通路16の上流端を接続し、前記スロットル弁閉側の中央部27の吸気通路は、吸気管14内のリッチ低負荷用通路17の上流端を接続している。また、スロットル弁閉側の両側部28の二つの吸気通路は、吸気管14内のリーン低負荷用通路18の二つの流入部18d,18eの上流端を接続している。なお、気化器15と吸気管14との間に介装したジョイント24は、気化器15を断熱接続するとともに、吸気が気化器15内の前記各吸気通路から吸気管14に流入するときに他の吸気通路に流入するのを阻止するために、前記隔壁22および分割壁23と同じ形状の隔壁24a(図2参照)を形成している。
【0038】
前記リーン低負荷用通路18は、この実施の形態では気化器15の上部が上流側端部になるように構成しており、吸気管14の上流側端部に形成した前記二つの流入部18d,18eのうち図4において上側に位置する流入部18dが気化器15の上部内を介して大気に連通する構造を採っている。
【0039】
気化器15の上部には、スロットル弁上流側の吸気通路29とスロットル弁収容室30とを連通する上流側連通路31を形成するとともに、リーン低負荷用通路18の前記一方の流入部18dと前記スロットル弁収容室30とを連通する下流側連通路32を形成している。この下流側連通路32の上流端、すなわちスロットル弁収容室30側の円形の開口33は、スロットル弁21の周壁に穿設した丸穴からなる空気孔34が接続することによってスロットル弁内側の空間(スロットル弁収容室30内)に連通する。なお、前記開口33および空気孔34は、この実施の形態では穴径が略等しくなるように形成しているが、異なってもよい。
【0040】
前記空気孔34を形成する位置は、図5に示すように、スロットル弁21が全閉状態(アイドリング状態)にあるときに、前記開口33を下流側連通路32の下流側から見た状態でこの開口33と空気孔34とが僅かに重なり合うように設定している。すなわち、このときには図5中に符号35で示す隙間を介して下流側連通路32とスロットル弁収容室30とが連通する。
【0041】
前記開口33の実質的な開口面積は、中央部27とスロットルとの開口面積と、両側部28とスロットルとの開口面積との差異を補正するためにスロットル弁21の開度に対応して増減する。詳述すると、スロットル弁21の下端が図5中に二点鎖線Aで示すように気化器15の前記隔壁22と対応する位置にあるときに開口面積が最大になり、この位置からスロットル弁21が開くことによって、開口面積が除々に小さくなる。そして、空気孔34が前記開口33より上側に位置するようになったときに、前記開口33がスロットル弁21によって閉塞される。このときのスロットル弁21の下端の位置を図5中に二点鎖線Bで示す。
【0042】
気化器15のベンチュリ部下側をボーリング加工するためにスロットル低開度では開口部形状は三日月形となり、中央部27と両側部28との開口面積が異なり、その結果、第1の通路10と第2の通路11とから流入する空気量に違いが生じるのを空気孔34からの流入量が補正している。
【0043】
上述したように気化器上部に上流側連通路31および下流側連通路32を形成し、スロットル弁21に空気孔34を穿設することによって、上流端が大気に連通するリーン低負荷用通路18の上流部にスロットル弁21に対応して開閉する制御孔が構成される。
【0044】
このように構成した吸気装置においては、スロットル弁21が全閉状態になるアイドリングなどの低開度時には、図5に示すように気化器15のスロットル弁下流側の吸気通路はスロットル弁閉側の中央部27のみが僅かに開き、他の部分はスロットル弁21によって閉塞されるから、混合気は前記中央部27の吸気通路からリッチ低負荷用通路17のみに流入する。なお、アイドリングなどの低開度状態で前記中央部27の吸気通路のみが僅かに開くのは、気化器15のスロットル弁下流側の吸気通路はボーリング加工が施され、図5において下側に位置する底壁15aが下方に向けて凸になる断面円弧状に形成され、スロットル弁21の下端が平坦に形成されているからである。
【0045】
また、このアイドリングなどの低開度時には、リーン低負荷用通路18の前記制御孔が僅かに開いた状態であるため、リーン低負荷用通路18にスロットル弁上流側の吸気通路29から大気が制御孔の開度に対応する流量をもって流入する。
【0046】
リッチ低負荷用通路17に流入した混合気は、吸気管14内を通って吸気ポート9の動弁カム室5側に供給される。この混合気は、シリンダヘッド2と吸気管14との間に設けたジョイント13の延長壁19によって流れる方向が第1の通路10を指向するように案内され、吸気ポート9の動弁カム室5側の壁面に沿って第1の通路10内を流れる。そして、この混合気は、点火プラグ12との距離が相対的に短い方の吸気弁7と第1の通路10の吸気出口との間の隙間から燃焼室S内におけるシリンダ軸線Cを挾んで反対側に高速で斜めに流入する。
【0047】
一方、リーン低負荷用通路18に流入した空気は、前記延長壁19によって流れる方向が第2の通路11を指向するように案内され、混合気と同様に吸気ポート9の動弁カム室5側の壁面に沿って第2の通路11内を流れる。そして、この空気は、点火プラグ12との距離が相対的に長い方の吸気弁7と第2の通路11の吸気出口との間の隙間から燃焼室S内におけるシリンダ軸線Cを挾んで反対側に高速で斜めに流入する。
【0048】
リッチ低負荷用通路17とリーン低負荷用通路18との合計空気量は、通常の場合より多く、すなわち全体としては希薄混合気が供給されてリッチ低負荷用通路17には通常程度の混合気が流れるが、リーン低負荷用通路17にはこれまで述べてきたように空気のみがまたはきわめて希薄な混合気が流れている。
【0049】
このため、第1の通路10の吸気出口からシリンダ内に流入した混合気と、第2の通路11の吸気出口からシリンダ内に流入した空気とによって、シリンダ内にタンブルT(図1参照)が発生する。このタンブルTは、二つの吸気出口と対応する位置に発生する二つの旋回流、すなわち混合気の旋回流と、空気の旋回流とがタンブルの軸心方向の動きを有しないために互いに混ざり合うことがないように発生する。すなわち、成層化が実現する。
【0050】
シリンダ内に流入する混合気および空気は、狭いリッチ低負荷用通路17およびリーン低負荷用通路18を通ることによって流速が速くなっているので、シリンダ内にはいわゆる強いタンブルが生成される。このため、吸気行程から圧縮行程に移行し、ピストン4が上昇を開始してから点火されるまでの間も混合気の層と空気の層とが互いに分離した状態が維持される。
【0051】
この結果、点火プラグ12の周辺近傍に混合気をタンブルTによって層をなすように存在させることができるから、燃焼室S内で成層化が実現でき、全体として混合気が希薄でも着火・燃焼が確実に起こる。
なお、アイドリング時にはリーン低負荷用通路18に大気が吸込まれるため、リッチ低負荷用通路17のみによって吸気を行う場合に較べてエンジン1のポンピングロスが少なくなり、燃費のよい運転が行える。
【0052】
気化器15のスロットル弁21が前記アイドリング位置から開き、スロットル弁21の下端が図5において二点鎖線Aに示す位置に達するまでの間、すなわちスロットル弁閉側の吸気通路のみを吸気が流れる運転域では、リッチ低負荷用通路17に流入する混合気はスロットル弁21の開度に対応して増大する。また、このときには、スロットル弁下流側に開口するリーン低負荷用通路18の流入部18d,18eにも気化器15から吸気が流入するようになる。この吸気中には、混合気の一部が混入するが、ほとんどはリッチ低負荷用通路17に流れるため、空気のみかまたはきわめてリーンな混合気となっている。
【0053】
さらに、このときには、リーン低負荷用通路18の制御孔が全開状態になり、リーン低負荷用通路18にスロットル弁上流側の吸気通路29から空気が大量に流入する。すなわち、リーン低負荷用通路18には僅かに混合気が流入するにもかかわらず、制御孔を介して空気が大量に流入することによって前記混合気が薄くなるから、リッチ低負荷用通路17を流れる混合気とリーン低負荷用通路18を流れる吸気との濃度の差は大きくなる。このため、アイドリング運転時と同様の濃度差を保った吸気流によるタンブルTがシリンダ内に発生する。
【0054】
したがって、気化器15の隔壁22より下側のスロットル弁閉側の吸気通路を吸気が流れる低負荷運転時においては、点火プラグ12の周辺近傍に混合気を集めることができるから、成層化が実現でき、全体としての混合気が希薄でも燃焼が安定するようになる。
【0055】
また、スロットル弁21の下端が気化器15の隔壁22より上側に位置し、気化器15におけるスロットル弁開側の吸気通路にも吸気が流れる高負荷運転時には、高負荷用通路16にも混合気が流れるようになり、気化器15に接続した全ての通路を使用して混合気が吸気ポート9に流入する。
【0056】
この吸気装置は、吸気ポート9を形成する部分が吸気制御弁によって狭くなる制約を受けることはなく、吸気弁7を気筒当たり2個用いて吸気ポート9の通路断面積を相対的に大きくすることができる構造を採っているから、高負荷運転時に二つの吸気出口からシリンダ内に混合気を大量に供給することができる。
【0057】
また、高負荷運転時であってスロットル弁開度が相対的に大きくなるときには、リーン低負荷用通路18の制御孔は、スロットル弁21の開度が大きくなるにしたがって次第に閉じるため、リーン低負荷用通路18に流入する混合気の量はスロットル弁開度に対応して除々に増大する。このため、高負荷運転時においては、吸気ポート9の二つの吸気出口からシリンダ内に流入する混合気の濃度差が小さくなる。
【0058】
したがって、二つの吸気出口から混合気をシリンダ内に大量に流入させることができるとともに、一方の吸気出口から流入する混合気と他方の吸気出口から流入する混合気の濃度差を小さくすることができるから、燃料がシリンダ内の広い範囲にわたって多く、しかも略均等に分布するようになる。このため、空気利用率が高く得られ、高負荷運転時に出力向上を図ることができる。
【0059】
また、この実施の形態による吸気装置は、リーン低負荷用通路18に吸込まれる空気の流量を制御する制御孔を気化器15のスロットル弁21によって構成しているから、専らこの空気の流量を制御するための制御弁が不要である。
【0060】
さらに、この吸気装置は、低負荷運転時に燃料の大部分が混合気としてリッチ低負荷用通路17に流入し、リーン低負荷用通路18は燃料成分が少ない空気が多く流入するから、気化器15のスロットル弁下流側の吸気通路からリッチ低負荷用通路17に流入する混合気の流量と、リーン低負荷用通路18に流入する空気の流量をスロットル弁21によって制御することができる。
【0061】
このため、低負荷運転時に混合気と空気の流量制御が容易で、シリンダ内に混合気からなるタンブルと空気からなるタンブルとをバランスよく発生させることが可能である。
【0062】
第2の実施の形態
気化器15のスロットル弁下流側の吸気通路は、図8に示すように形成することができる。
図8は他の実施の形態を示す断面図である。同図において、前記図1〜図7で説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0063】
図8に示す気化器15は、隔壁22よりスロットル弁閉側の吸気通路の全域をリッチ低負荷用通路17に接続する構造を採っている。このようにリーン低負荷用通路18をスロットル弁下流側の吸気通路に接続しない構造を採る場合には、気化器15の上部に形成する上流側連通路31および下流側連通路32と、スロットル弁21に形成する空気孔34を、第1の実施の形態を採るときより通路断面積が大きくなるように形成する。なお、下流側連通路32の上流端開口33と、スロットル弁21の空気孔34は、図8に示すように、開口形状が横方向に長い楕円形や長円形になるように形成する。
【0064】
このように構成すると、低負荷運転時には吸気ポート9の第2の通路11の吸気出口からシリンダ内に流入する空気中に燃料が混入することがないので、シリンダ内でタンブルTによって層をなすよう存在する混合気の濃度を相対的に高くすることができ、着火・燃焼がより一層確実になる。
【0065】
また、下流側連通路32の上流端開口33とスロットル弁21の空気孔34を開口形状が横方向に長い楕円形になるように形成することによって、円形に形成する場合に較べてスロットル弁21のストローク量に対して開口面積の増減量が大きく変化するようになる。このため、高負荷運転状態でスロットル弁開度が急速に大きくなるときに、リーン低負荷用通路18からシリンダ内に流入する空気を速く遮断することができるから、出力向上を図ることができる状態に速く移行することができ、エンジンの応答性を高くすることができる。
【0066】
第3の実施の形態
上述した実施の形態では、吸気弁を1気筒当たり2本備えたエンジンに適用する例を示したが、本発明に係る吸気装置は、図9および図10に示すように、吸気弁が1気筒当たり1本のエンジンにも適用することができる。
【0067】
図9は他の実施の形態を示す断面図、図10は低負荷用通路の構成を示す断面図である。これらの図において前記図1ないし図8で説明したものと同一もしくは同等部材については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0068】
図9および図10に示した吸気装置は、吸気弁7を1気筒当たり1本備え、点火プラグ12を吸気の流れ方向から見て一方に偏る位置に配設している。
また、気化器15は、第2の実施の形態を採るときと同様に、隔壁22よりスロットル弁閉側の吸気通路の全域をリッチ低負荷用通路17に接続する構造を採っている。
【0069】
このようにリーン低負荷用通路18をスロットル弁下流側の吸気通路に接続しない構造を採る場合には、気化器15の上部に形成する上流側連通路31および下流側連通路32と、スロットル弁21に形成する空気孔34を、第1の実施の形態を採るときより通路断面積が大きくなるように形成する。なお、下流側連通路32の上流端開口33と、スロットル弁21の空気孔34は、図8に示すように、開口形状が横方向に長い楕円形や長円形になるように形成する。
【0070】
この実施の形態を採るときのリッチ低負荷用通路17は、吸気ポート9における点火プラグ12側に接続し、リーン低負荷用通路18は、リッチ低負荷用通路17とは反対側に位置するように吸気ポート9に接続している。
このように構成しても上述した実施の形態と同等の作用効果を奏する。
【0071】
上述した各実施の形態を採るときに用いる気化器15は、従来の気化器に隔壁22および分割壁23を形成するともに、連通路31,32および空気孔34を形成することによって製造することができるので、本発明の実施が容易であるばかりか、気化器15のベンチュリ形状を変更する場合でも本発明が奏する効果が損なわれることはない。
【0072】
第4の実施の形態
請求項3に記載した発明に係るエンジンの吸気装置の一実施の形態を図11ないし図19によって詳細に説明する。
図11はこの実施の形態による吸気装置を装備した自動二輪車の側面図、図12はこの実施の形態によるエンジンの断面図、図13はシリンダヘッドの要部を拡大して示す断面図、図14は動弁カム室を示すシリンダヘッドの正面図、図15は図12における気化器のXV−XV線断面図、図16は図12における吸気管のXVI−XVI線断面図、図17は図12におけるシリンダヘッドのXVII−XVII線断面図、図18は図12における吸気管のD矢視図、図19は図12におけるシリンダヘッドのXIX−XIX断面図である。これらの図において、前記図1ないし図10で説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0073】
図11において符号41で示すものは、この実施の形態による自動二輪車である。この自動二輪車41は、車体フレーム42にフロントフォーク43を介して前輪44を回転自在かつ操舵自在に支持させるとともに、後輪45を回転自在に支持するリヤアーム46をピボット軸47によって上下方向に揺動自在に支持させている。同図において符号48は操向ハンドルを示し、49はシートを示す。
【0074】
また、この自動二輪車41は、前記前輪44と後輪45との間に空冷式単気筒4サイクルエンジン1をシリンダ軸線が車体の前後方向と平行になるように搭載している。このエンジン1は、クランクケース51を前記車体フレーム42に支持させ、クランクケース51の車体前側の端部にシリンダ52を装着している。シリンダ52は、図12に示すように、シリンダボディ3と、シリンダヘッド2と、ヘッドカバー53とから構成している。
【0075】
前記シリンダヘッド2の上面に吸気管14を介して気化器15を接続するとともに、下面に排気管54(図11参照)を接続している。気化器15は、シリンダヘッド2の上方に配置し、車体の前方に向けて開口する吸気入口15aに吸気ダクト25を介してエアクリーナ55を接続している。この実施の形態による自動二輪車41は、図11に示すように、シリンダ52、気化器15、エアクリーナ55の側方および上方をレッグシールド56および車体カバー57で覆っている。また、シリンダ52の前方にはフロントフェンダー58を配設している。
【0076】
前記気化器15は、スロットル弁下流側の吸気通路を図15に示すように、隔壁22によってスロットル弁開側の吸気通路とスロットル弁閉側の吸気通路とに画成し、前記スロットル弁閉側の吸気通路を分割壁23によって中央部27と両側部28とに画成している。吸気管14は、図16および図18に示すように、高負荷用通路16と、リッチ低負荷用通路17と、リーン低負荷用通路18とを形成している。これらの通路は、第1の実施の形態を採るときと同様に構成している。すなわち、高負荷用通路16は、気化器15の前記スロットル弁開側の吸気通路に接続し、リッチ低負荷用通路17は、気化器15のスロットル弁閉側の吸気通路における中央部27に接続し、リーン低負荷用通路18は、気化器15のスロットル弁閉側の吸気通路における両側部28に接続している。
【0077】
前記シリンダヘッド2の吸気ポート9は、図19に示すように、分岐壁20によって点火プラグP側の第1の通路10と、他方の第2の通路11とに途中から分岐するように形成している。
【0078】
このシリンダヘッド2に設けた動弁装置は、図12に示すように、2本の吸気弁7と1本の排気弁8とを1本のカム軸6および吸気弁用ロッカーアーム60、排気弁用ロッカーアーム61で駆動する構造を採っている。前記カム軸6はシリンダヘッド2に車幅方向に延びるように穿設した軸孔に軸受59を介して回転自在に支持させている。前記両ロッカーアーム60,61を回動自在に支持するロッカーシャフト62は、シリンダヘッド2に車幅方向に延びるように穿設した軸孔(図示せず)に圧入している。
【0079】
前記動弁装置は、シリンダヘッド2に車体の前方に向けて開口するように形成した凹陥部63と、この凹陥部63の開口を閉塞する前記ヘッドカバー53とによって形成された動弁カム室5に収容している。前記ヘッドカバー53は、板状に形成して車体の前方を指向する前面に放熱フィン53aを多数形成し、シリンダヘッド2との間にゴム製のシール部材64を介装した状態でシリンダヘッド2にボルト63a(図14参照)によって固定している。ヘッドカバー53を取付ける位置は、ヘッドカバー53がロッカーアーム60,61に可及的接近するように設定している。なお、ヘッドカバー53をシリンダヘッド2に固定するボルト63aは、軸線方向が車体の前後方向を指向する状態でヘッドカバー53を貫通してシリンダヘッド2に螺着している。
【0080】
このように、前方は開口した凹陥部63をヘッドカバー53で塞ぐ構造を採ることにより、シリンダヘッド単体における加工時にはシリンダヘッド2のバルブスプリング座65やロッカーシャフトボス66(図14参照)の端面の機械加工を前記凹陥部63の開口側から行うことができる。この構造は、燃焼室Sをコンパクトにしてピストン4の頂部を凹にするために吸・排気弁7,8のなす角度、すなわち挟み角を狭く設定することに対して効果的である。
【0081】
この実施の形態では、バルブ挟み角を狭く設定してピストン頂部に図12に示すように凹部4aを形成しているから、この凹部4aによって吸気流を反転させて強いタンブルを発生させることができる。
また、前記構造を採ることにより、吸・排気弁7,8の挟み角が狭くても板状のヘッドカバー53をロッカーアーム60,61に可及的接近するように取付けているから、シリンダ52が軸線方向に長くなることはない。
【0082】
例えば、第1の実施の形態で示したエンジン1において吸・排気弁7,8の挟み角を狭くすると、図1中に二点鎖線で示す機械加工用のツール67を挿入する穴68をシリンダ軸線Cに近付けなければならず、この穴68を閉塞するカバー69(図1参照)がエンジン1の前方に大きく突出してしまう。このため、シリンダ軸線方向の長さが長くなってしまい、このエンジン1を搭載する自動二輪車はホイールベースが相対的に長くなる。
【0083】
この実施の形態で示したように動弁カム室5を構成することによって、燃焼室Sをコンパクトにする構造を採りながら、シリンダヘッド2全体の全長が短くなるように形成することができ、狭いバルブ挟み角でも車体のホイールベースを延ばさなくてすむようにすることができる。
また、ヘッドカバー53とシリンダヘッド2との間にゴム製のシール部材64を介装しているから、相対的に面積が大きくなるヘッドカバー53から騒音が発生するのを阻止することができる。しかも、ヘッドカバー53をアルミダイキャスト法で成形することによって、外観品質も向上させることができる。
【0084】
この実施の形態によるシリンダヘッド2は、図13に示すように、吸気ポート9の上流部分をシリンダボディ側通路71と動弁カム室側通路72とに画成する仕切壁73を一体に形成している。この仕切壁73は、吸気ポート入口から吸気バルブガイドボス部の近傍まで延びるとともに、その先端は、吸気ポート9を第1の通路10と第2の通路11とに分ける分岐壁20に対して接続されることにより支持されている。なお、前記分岐壁20は、仕切壁73より動弁カム室5側を吸気ポート入口まで延在しており、図17中に符号74で示すリッチ動弁カム室側通路と、符号75で示すリーン動弁カム室側通路とを仕切る壁として機能する。
【0085】
このため、吸気管14のリッチ低負荷用通路17から吸気ポート9に流入した吸気は、仕切壁73と分岐壁20とによって画成されたリッチ動弁カム室側通路74(図17参照)から点火プラグP側の第1の通路10の特に動弁カム室側の壁面寄りに流入し、吸気管14のリーン低負荷用通路18から吸気ポート9に流入した吸気は、仕切壁73と分岐壁20とによって画成されたリーン動弁カム室側通路75(図17参照)から他方の第2の通路11の特に動弁カム室側の壁面寄りに流入する。なお、吸気管14の高負荷用通路16から吸気ポート9のシリンダボディ側通路71に流入した吸気は、分岐壁20によって第1および第2の通路10,11に略均等に分配される。
【0086】
前記リッチ動弁カム室側通路74とリーン動弁カム室側通路75は、図17に示すように、分岐壁20側の通路断面積が相対的に大きくなるように形成している。通路断面積を大きくするためには、仕切壁73を平坦に形成するとともに、図19に示すようにバルブガイドの間隔を確保できるようにして実施している。
この構造を採ることにより、シリンダボディ側通路71の通路断面積を可及的大きくとりながら、リッチ・リーン両動弁カム室側通路74,75を流れる吸気を分岐壁20寄りに多く流すことができる。すなわち、リッチ・リーン両動弁カム室側通路74,75を流れる吸気は、分岐壁20に沿って吸気の流れ方向で見て(図17参照)シリンダ52内におけるシリンダ軸線C寄りの部位に多く流入する。
【0087】
このため、気化器15のスロットル弁下流側で濃淡に分離された混合気からなる吸気流が、吸気弁7の燃焼室中心側からシリンダ内に高速で流入することにより、シリンダ52内の吸気の流れ方向の寸法が最も大きくなる部位にタンブルTが発生する。このタンブルは、ピストン4の頂部凹形状によって反転する際に減衰することが少なく、ピストン上昇時にも流動が残存する。すなわち、強いタンブルが発生する。この強いタンブルは、指向性が強いから、圧縮行程に移行した後も旋回軸方向へ移動することがない。
【0088】
この結果、シリンダ52内に層状に供給された混合気が相互に混ざり合うことはなく、点火時まで成層状態が保たれる。すなわち、シリンダ52内の混合気の成層化が確実となる。なお、上述したように指向性が強くなる他の理由としては、吸気ポート9のシリンダボディ側通路71から吸気が第1および第2の通路10,11に略均等に分配されることがあげられる。
【0089】
一方、吸気ポート9内のシリンダボディ側通路71は、図12および図13に示すように、カム軸6の軸線方向から見て吸気ポート出口近傍の屈曲部分から吸気ポート入口まで略直線状に形成している。前記屈曲部分を図13中に符号76で示す。
【0090】
この実施の形態によるエンジン1の吸気装置は、リッチ動弁カム室側通路74とリーン動弁カム室側通路75とが分岐壁20で互いに連通することがないように画成されているから、低負荷運転時に気化器15で濃淡に分離された混合気が混ざり合うことなくシリンダ52内に流入する。この結果、シリンダ52内にタンブルが成層状態を保ちながら発生する。
【0091】
また、シリンダボディ側通路71と動弁カム室側通路72との間の仕切壁73をシリンダヘッド2に一体に形成しているから、この仕切壁73をシリンダヘッド2とは別体に形成する場合に較べて、仕切壁73を組付ける作業が不要になる。
さらに、前記仕切壁73にシリンダヘッド2の高温部分から伝導によって熱が伝達されるから、この仕切壁73に燃料が接触することによって、燃料の気化が促進される。このため、燃焼サイクル毎の空燃比が安定するから、トータルの空燃比をリーンに設定しても燃焼が安定するようになる。
【0092】
さらにまた、この実施の形態によるエンジン1の吸気装置は、シリンダボディ側通路71を、カム軸6の軸線方向から見て吸気ポート出口近傍の屈曲部分76から吸気ポート入口まで略直線状に形成しているから、シリンダボディ側通路71の直線状に形成された部分に動弁カム室側通路72から吸気が滑らかに合流する。
【0093】
このため、高負荷運転時に吸気管14の高負荷用通路16から前記シリンダボディ側通路71に供給される大量の吸気は、吸気管14の低負荷用通路17,18から流入する吸気によって流動が妨げられることが少ない。しかも、シリンダボディ側通路71は直線状に形成されていて吸気抵抗が小さくなるから、高負荷運転時にシリンダボディ側通路71に吸気を大量にしかも円滑に流すことができる。
【0094】
加えて、動弁カム室5を1枚の板状のヘッドカバー53で閉塞する構造を採るとともに、ヘッドカバー固定用のボルトを軸線が車体の前後方向を指向する状態でシリンダヘッド2に螺着しているから、ヘッドカバー53を着脱するときに気化器15と干渉するのを阻止することができる。例えば、第1の実施の形態で示したエンジン1において、シリンダヘッド2に取付けた二つのカバー69のうち上側のものを取外す場合には、カバー固定用ボルト69a(図1参照)が気化器15と干渉するのを避けるために気化器15をシリンダヘッド2から上方に離間させなければならないが、板状のヘッドカバー53を用いる形態を採ることによって、気化器15をシリンダヘッド2に近接させることができる。気化器15とシリンダヘッド2との距離が短くなると、その分だけ吸気管14を短く形成することができ、吸気抵抗を低減することができるとともに、エアクリーナ容積を大きくとることが可能となる。
【0095】
第5の実施の形態
シリンダヘッドは図20に示すようにシックネスゲージ挿入用の開口を形成することができる。
図20はシックネスゲージ挿入用開口を形成したシリンダヘッドの断面図である。これらの図において、図1ないし図19で説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0096】
図20に示すシリンダヘッド2は、前記第4の実施の形態で示したシリンダヘッド2と同等の構造の動弁装置を備えている。この実施の形態によるシリンダヘッド2と第4の実施の形態で示したシリンダヘッド2との構造上の相違点は、気化器15側の上壁に動弁カム室5の内外を連通する開口81を形成している点である。
【0097】
前記開口81は、吸気弁7と吸気弁用ロッカーアーム60との間のクリアランスを測定するシックネスゲージ(図示せず)を挿入するために形成してあり、シリンダヘッド2に固定した吸気管14で通常は閉塞されるようにしている。吸気弁7とロッカーアーム60との間のクリアランスを測定するためには、先ず、吸気管14をシリンダヘッド2から取外して前記開口81を露出させ、この開口81から図示していないシックネスゲージを動弁カム室5内に挿入して行う。
【0098】
排気弁8と排気弁用ロッカーアーム61との間のクリアランスは、ヘッドカバー53をシリンダヘッド2から取外して動弁カム室5を解放させ、動弁カム室5を形成する凹陥部63の開口からシックネスゲージを挿入して行う。排気弁8は1本しか設けられておらず、動弁カム室5内の排気弁8側は吸気弁7側に較べて空間が広いから、シリンダヘッド2の下壁に開口を形成しなくても動弁カム室5の開口側から余裕をもって測定することができる。
【0099】
この実施の形態では、シリンダヘッド上壁に形成した開口81を吸気管14で閉塞する構造を採っているから、専ら前記開口81を閉塞するための部材が不要で、部品数の削減を図ることができる。
【0100】
第6の実施の形態
気化器のスロットル弁下流側の吸気通路を複数に画成するためには、図21および図22に示すように、気化器とは別体に形成した通路形成用の隔壁部材を用いることができる。
図21は気化器の吸気管接続部を下流側から見た状態を示す正面図、図22は隔壁部材を示す図で、同図(a)は断面図、同図(b)は側面図である。
【0101】
図21および図22において符号91で示すものは、気化器15内のスロットル弁下流側の吸気通路を複数に画成するための隔壁部材である。この隔壁部材91は、スロットル弁下流側の吸気通路をスロットル弁閉側とスロットル弁開側とに画成する横壁部材92と、前記スロットル弁閉側を中央部27と両側部28とに画成する断面コ字状の縦壁部材93とから構成している。
【0102】
横壁部材92および縦壁部材93は、金属製の板材に曲げ加工を施すことによって所望の形状に形成し、図21および図22において断面下向きコ字状に形成した縦壁部材93の上面に横壁部材92を溶接している。
【0103】
上述したように構成した隔壁部材91の気化器15への取付けは、横壁部材92の両側端部を気化器15の係合溝94に係入するとともに、縦壁部材93の二つの下端部を気化器15の係合溝95に係入させることによって行う。これらの係合溝94,95は、気化器15の吸気通路内壁面に吸気通路の軸線と平行になるように形成している。横壁部材92は、図22(a)において実線で示すように形成し、両側端部および縦壁部材93の下端部を前記係合溝94,95に係入させることによって、同図において二点鎖線で示すように、両側部が下方に偏倚するように弾性変形する構造を採っている。すなわち、隔壁部材91を気化器15に装着した状態では、横壁部材92の弾発力によって縦壁部材93の下端部が係合溝95に押付けられる。
【0104】
このように横壁部材92の弾発力で縦壁部材93の下端部が係合溝95(気化器)に押付けられることによって、横壁部材92と気化器15との間の隙間と、縦壁部材93と気化器15との間の隙間をシール部材などを用いることなくシールすることができる。
【0105】
この実施の形態を採ることにより、気化器15のスロットル弁下流側の吸気通路を複数に画成するに当たって既存の気化器に係合溝94,95を形成して隔壁部材91を装着するだけで実施することができるから、第1の実施の形態で示したように隔壁22、分割壁23を気化器ハウジングに一体に形成する構造に較べてコストダウンを図ることができる。
しかも、隔壁部材91を構成する横壁部材92と縦壁部材93は、気化器ハウジングに鋳造で一体に形成する場合に較べて厚みを薄く形成することができるから、吸気抵抗を小さくすることができる。
【0106】
なお、上述した第1〜第6の実施の形態では、自動二輪車用エンジン1の吸気装置に本発明を適用する例を示したが、本発明の吸気装置は、他の車両のエンジン、例えば自動車用エンジン、自動三輪車用エンジン、雪上車用エンジンなどにも適用することができる。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、低負荷運転時には混合気が狭い低負荷用通路から吸気ポートの動弁カム室側に供給される。この混合気は、吸気ポートの動弁カム室側の壁面に沿って流れ、吸気出口の点火プラグ側から燃焼室内におけるシリンダ軸線を挾んで反対側に高速で斜めに流入する。
一方、吸気出口における点火プラグから離間する部位からは、スロットル弁の開度に対応する流量をもって補助空気通路に吸込まれた空気が流入する。この空気も前記混合気と同様に吸気ポート内を動弁カム室側の壁面に沿って高速で流れ、吸気出口から燃焼室内におけるシリンダ軸線を挾んで反対側に斜めに流入する。
【0108】
このため、吸気出口からシリンダ内に流入した混合気と空気とによって、シリンダ内にタンブルが発生する。このタンブルを構成する二つの旋回流、すなわち混合気の旋回流と、空気の旋回流とは、狭い低負荷用通路を高速で流れ、方向性をもって燃焼室に流入するため、ピストンの上昇行程になっても互いに混ざり合うことがなく、点火プラグ近傍には濃い混合気が存在する。この結果、混合気が希薄でも低負荷運転時において着火・燃焼が確実に起こるようになる。
【0109】
また、高負荷運転時には、高負荷用通路にも混合気が流れるようになり、低負荷用通路と高負荷用通路の両方を使用して混合気が吸気ポートの吸気出口からシリンダ内に流入する。この吸気装置は、吸気ポートを形成する部分が吸気制御弁によって狭くなる制約を受けることはないるから、高負荷運転時に吸気出口からシリンダ内に混合気を大量に供給することができる。
【0110】
このように吸気出口から混合気がシリンダ内に流入することによって、燃料がシリンダ内の広い範囲にわたって多く、しかも略均等に分布するようになる。このため、空気利用率が高くなり、高負荷運転時に出力向上を図ることができる。
【0111】
したがって、混合気が希薄でもタンブルによって低負荷運転時に燃焼を安定させることができ、ポンピングロス低減によって燃費改善が図れるとともに、高負荷運転時に出力向上を図ることができる。
【0112】
また、スロットル弁開度が低開度のときには明確な混合気の成層化が実現され、スロットル弁開度が大きくなるにしたがって成層化の程度が弱められてスロットル弁開度が高開度のときにはシリンダ内に均一に混合気が供給されるため、低負荷運転と高負荷運転との間での運転状態の変化が円滑で、運転性がよい。
【0113】
請求項2記載の発明によれば、低負荷運転時には混合気が狭い低負荷用通路から吸気ポートの動弁カム室側に供給される。この混合気は、吸気ポートの動弁カム室側の壁面に沿って流れ、点火プラグとの距離が相対的に短い方の吸気弁と吸気出口との間の隙間から燃焼室内におけるシリンダ軸線を挾んで反対側に高速で斜めに流入する。
【0114】
一方、点火プラグとの距離が相対的に大きい方の吸気弁と吸気出口との間の隙間からは、スロットル弁の開度に対応する流量をもって補助空気通路に吸込まれた空気が流入する。この空気も前記混合気と同様に吸気ポート内を動弁カム室側の壁面に沿って高速で流れ、吸気出口から燃焼室内におけるシリンダ軸線を挾んで反対側に斜めに流入する。
【0115】
このため、吸気出口からシリンダ内に流入した混合気と空気とによって、シリンダ内にタンブルが発生する。このタンブルを構成する二つの旋回流、すなわち混合気の旋回流と、空気の旋回流は、狭い低負荷用通路を高速で流れ、方向性をもって燃焼室に流入するため、ピストンの上昇行程になっても互いに混ざり合うことがなく、点火プラグ近傍には濃い混合気が存在する。この結果、混合気が希薄でも低負荷運転時において着火・燃焼が確実に起こるようになる。
【0116】
また、高負荷運転時には、高負荷用通路にも混合気が流れるようになり、低負荷用通路と高負荷用通路の両方を使用して混合気が吸気ポートの二つの吸気出口からシリンダ内に流入する。この吸気装置は、吸気ポートを形成する部分が吸気制御弁によって狭くなる制約を受けることはなく、吸気弁を気筒当たり2個用いて吸気ポートの通路断面積を相対的に大きくすることができる構造を採っているから、高負荷運転時に二つの吸気出口からシリンダ内に混合気を大量に供給することができる。
【0117】
このように二つの吸気出口から混合気がシリンダ内に流入することによって、燃料がシリンダ内の広い範囲にわたって多く、しかも略均等に分布するようになる。このため、空気利用率が高くなり、高負荷運転時に出力向上を図ることができる。
【0118】
したがって、混合気が希薄でもタンブルによって低負荷運転時に燃焼を安定させることができ、ポンピングロス低減によって燃費改善が図れるとともに、高負荷運転時に出力向上を図ることができる。
【0119】
また、スロットル弁開度が低開度のときには明確な混合気の成層化が実現され、スロットル弁開度が大きくなるにしたがって成層化の程度が弱められてスロットル弁開度が高開度のときにはシリンダ内に均一に混合気が供給されるため、低負荷運転と高負荷運転との間での運転状態の変化が円滑で、運転性がよい。
【0120】
請求項3記載の発明によれば、シリンダボディ側通路の直線状に形成された部分に動弁カム室側通路から吸気が滑らかに合流するから、高負荷運転時に吸気管の高負荷用通路から前記シリンダボディ側通路に供給される大量の吸気は、吸気管の低負荷用通路から流入する吸気によって流動が妨げられることが少ない。このため、シリンダボディ側通路を直線状に形成することと相俟って、シリンダボディ側通路を流れる吸気の流量係数が向上し、高負荷運転時のエンジン出力をより一層増大させることができる。
【0121】
また、この発明を請求項2記載の発明に係るエンジンの吸気装置に適用すると、気化器で濃淡に分離された混合気が混ざり合うことなくシリンダ内に流入するから、シリンダ内の混合気の成層化をタンブルによって確実に実現することができる。
さらに、シリンダボディ側通路と動弁カム室側通路との間の仕切壁をシリンダヘッドとは別体に形成する場合に較べ、仕切壁を組み付ける作業が不要になるから、安価に吸気装置を提供することができる。
さらにまた、前記仕切壁にシリンダヘッドの高温部分から伝導によって熱が伝達され、この仕切壁に燃料が接触することによって燃料の気化が促進される。このため、燃焼サイクル毎の空燃比が安定するから、空燃比を超リーンに設定しても燃焼が安定する。
【0122】
請求項4記載の発明によれば、補助空気通路に吸込まれる空気の流量を制御する制御弁を気化器のスロットル弁によって構成することができるから、専らこの空気の流量を制御するための制御弁が不要である。
このため、本発明に係る吸気装置を製造するに当たり、部品数を可及的少なく抑えることができ、コスト低減を図ることができる。
【0123】
請求項5記載の発明によれば、燃料の大部分は混合気として点火プラグに近い側の低負荷用通路に流入するため、点火プラグに遠い側の低負荷用通路はきわめて希薄な混合気となっている上に更に補助空気通路からの空気が多く流入するから、気化器のスロットル弁下流側の点火プラグに近い側の低負荷用通路に流入する濃混合気の流量と、点火プラグに遠い側の低負荷用通路に流入する希薄混合気の流量をスロットル弁によって制御することができる。
【0124】
このため、低負荷運転時の濃混合気と希薄混合気との流量制御が容易で、シリンダ内に混合気からなるタンブルと空気からなるタンブルとをバランスよく発生させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るエンジンの吸気装置を示す断面図である。
【図2】 要部を拡大して示す断面図である。
【図3】 シリンダヘッドをシリンダボディ側から見た状態を示す底面図である。
【図4】 図2における気化器および吸気管のIV−IV線断面図である。
【図5】 図2における気化器の吸気通路形成部分のV−V線断面図である。
【図6】 図2におけるVI−VI線断面図である。
【図7】 図2における吸気管接続用ジョイントのVII−VII線断面図である。
【図8】 他の実施の形態を示す断面図である。
【図9】 他の実施の形態を示す断面図である。
【図10】 低負荷用通路の構成を示す断面図である。
【図11】 他の実施の形態による吸気装置を装備した自動二輪車の側面図である。
【図12】 他の実施の形態によるエンジンの断面図である。
【図13】 シリンダヘッドの要部を拡大して示す断面図である。
【図14】 動弁カム室を示すシリンダヘッドの正面図である。
【図15】 図12における気化器のXV−XV線断面図である。
【図16】 図12における吸気管のXVI−XVI線断面図である。
【図17】 図12におけるシリンダヘッドのXVII−XVII線断面図である。
【図18】 図12における吸気管のD矢視図である。
【図19】 図12におけるシリンダヘッドのXIX−XIX断面図である。
【図20】 シックネスゲージ挿入用開口を形成したシリンダヘッドの断面図である。
【図21】 気化器の吸気管接続部を下流側から見た状態を示す正面図である。
【図22】 隔壁部材を示す図である。
【符号の説明】
1…エンジン、2…シリンダヘッド、7…吸気弁、9…吸気ポート、10…第1の通路、11…第2の通路、12…点火プラグ、14…吸気管、15…気化器、16…高負荷用通路、17…低負荷用通路、18…補助空気通路、21…スロットル弁、22…隔壁、23…分割壁、26a…メイン燃料噴口、31…上流側連通路、32…下流側連通路、33…上流端開口、34…空気孔、71…シリンダボディ側通路、74…リッチ動弁カム室側通路、75…リーン動弁カム室側通路、73…仕切壁。

Claims (5)

  1. シリンダヘッドに点火プラグを吸気の流れ方向から見て一方に偏る位置に配設し、このシリンダヘッドの吸気ポートにスライド式スロットル弁を有する気化器から混合気を供給する構造とし、この気化器に、スロットル弁下流側の吸気通路をスロットル弁開側とスロットル弁閉側とに画成する隔壁を形成し、前記スロットル弁開側を吸気管の高負荷用通路を介して前記吸気ポートの上流側端部におけるシリンダボディ側に接続するとともに、前記スロットル弁閉側を吸気管の低負荷用通路を介して吸気ポートの上流側端部における動弁カム室側であって点火プラグ側の部位に接続し、この吸気ポートの上流側端部における動弁カム室側であって他方の部位を、スロットル弁の開動作に連動して少なくともスロットル弁の低開度域では開口面積が増大する構造の制御弁を有する補助空気通路を介して大気に連通させたことを特徴とするエンジンの吸気装置。
  2. 吸気弁を気筒当たり2個備えたシリンダヘッドに点火プラグを一方の吸気弁側に偏る位置に配設し、このシリンダヘッドの吸気ポートにスライド式スロットル弁を有する気化器から混合気を供給する構造とし、この気化器に、スロットル弁下流側の吸気通路をスロットル弁開側とスロットル弁閉側とに画成する隔壁を形成し、前記スロットル弁開側を吸気管の高負荷用通路を介して前記吸気ポートの上流側端部におけるシリンダボディ側に接続するとともに、前記スロットル弁閉側を吸気管の低負荷用通路を介して吸気ポートの上流側端部における動弁カム室側であって点火プラグ側の一方の吸気弁に向けて延びる部位に接続し、この吸気ポートの上流側端部における動弁カム室側であって他方の吸気弁に延びる部位を、スロットル弁の開動作に連動して少なくともスロットル弁の低開度域では開口面積が増大する構造の制御弁を有する補助空気通路を介して大気に連通させたことを特徴とするエンジンの吸気装置。
  3. 請求項1または請求項2記載のエンジンの吸気装置において、シリンダヘッドに、吸気ポート内を吸気管の高負荷用通路に接続するシリンダボディ側通路と、低負荷用通路・補助空気通路に接続する動弁カム室側通路とに画成する仕切壁を吸気ポート入口から吸気弁貫通部の近傍まで延びるように一体に形成し、前記シリンダボディ側通路を、カム軸の軸線方向から見て吸気ポート出口近傍の屈曲部分から吸気ポート入口まで略直線状に形成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のうち何れか一つのエンジンの吸気装置において、スロットル弁を有底円筒状のピストン弁によって形成し、補助空気通路を、前記スロットル弁の周壁に穿設した空気孔を介してスロットル弁上流側の吸気通路に連通するように形成し、この補助空気通路に介装する制御弁をスロットル弁によって構成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のうち何れか一つのエンジンの吸気装置において、気化器の隔壁にスロットル弁下流側の吸気通路のスロットル弁閉側を燃料噴口と対応する中央部とその両側部とに三分割する分割壁を形成し、前記中央部に点火プラグに近い側の低負荷用通路を接続するとともに、両側部は点火プラグに遠い側の低負荷用通路に接続し、かつ補助空気通路と接続したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
JP09817899A 1998-09-07 1999-04-05 エンジンの吸気装置 Expired - Fee Related JP4271769B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP09817899A JP4271769B2 (ja) 1998-09-07 1999-04-05 エンジンの吸気装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10-252352 1998-09-07
JP25235298 1998-09-07
JP09817899A JP4271769B2 (ja) 1998-09-07 1999-04-05 エンジンの吸気装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000145467A JP2000145467A (ja) 2000-05-26
JP4271769B2 true JP4271769B2 (ja) 2009-06-03

Family

ID=26439378

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP09817899A Expired - Fee Related JP4271769B2 (ja) 1998-09-07 1999-04-05 エンジンの吸気装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4271769B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004036558A (ja) 2002-07-05 2004-02-05 Honda Motor Co Ltd 内燃機関の吸気装置
JP4506555B2 (ja) * 2005-05-16 2010-07-21 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の吸気管構造
KR101877132B1 (ko) * 2016-11-23 2018-07-10 주식회사 현대케피코 엔진의 흡기장치
JP7229334B2 (ja) * 2019-03-01 2023-02-27 本田技研工業株式会社 内燃機関の吸気構造
JP7493097B2 (ja) 2021-03-30 2024-05-30 本田技研工業株式会社 内燃機関の吸気構造

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000145467A (ja) 2000-05-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0867608B1 (en) Air intake apparatus for a four-cycle internal combustion engine
US7802555B2 (en) Intake control device for an engine
JP6000785B2 (ja) 内燃機関の吸気装置
JP2887797B2 (ja) 4サイクルエンジンの吸気装置
JPH05312045A (ja) エンジンの吸気装置
JP4271769B2 (ja) エンジンの吸気装置
EP0856649B1 (en) Four-cycle engine
JP4044195B2 (ja) エンジンの吸気装置
JPS61108818A (ja) エンジンの潤滑装置
JPH01301951A (ja) 4サイクルエンジンの吸気装置
JPH0874585A (ja) 4サイクルエンジンの吸気制御装置
US7137380B1 (en) Internal combustion engine with ignition plug and vehicle provided with the same
JP2014070547A (ja) 内燃機関の吸気装置
JP3971010B2 (ja) エンジンの吸気装置
JP3715059B2 (ja) 4サイクルエンジン
JP3318359B2 (ja) エンジンの吸気制御装置
JP6824218B2 (ja) 内燃機関の副燃焼室
JP3506769B2 (ja) エンジンの吸気制御装置
WO2023188249A1 (ja) 内燃機関の吸気構造
JP3222228B2 (ja) エンジンの吸気制御装置
JP3334064B2 (ja) エンジンの吸気制御装置
JP3117770B2 (ja) リード弁付2サイクルエンジンの吸気通路構造
JPH09222016A (ja) 2サイクルエンジンの吸気装置
JP3323315B2 (ja) エンジンの吸気制御装置
JP3639048B2 (ja) 筒内燃料噴射式エンジン

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051128

TRDD Decision of grant or rejection written
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090212

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090224

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090226

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120306

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120306

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130306

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130306

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140306

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees