JP4270779B2 - 画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真プロセスを用いた複写、印刷およびFAX分野で用いられる画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
昨今の電子写真プロセスを用いた複写、印刷分野では、オフセット印刷並みの高画質化はもちろんのこと、複写速度や印刷速度についてもオフセット印刷並みの高速化が求められている。これに対して片面での高速化については、ある程度の成果は得られてきたが、両面での高速化については、未だ不十分であった。特に、紙等の片面に画像を定着固定した後、残りの面に転写、定着する方式では、片面のみの印刷時間に比べて、単純に約2倍の時間を要していた。そこで、定着前に両面に画像を転写し、その後、定着する方式の検討が行われてきた。その中で、紙等の転写材の両面に静電荷像担持体を段違い的に設置し、片面(表面)の転写が完了直後に、もう一方の片面(裏面)の転写を行なう方式が検討されてきた。この方式は静電荷像担持体を駆動させる手段の違いで二つに大別される。一つは静電荷像担持体自体にモーターやベルトなどの回転機構を設けて駆動させる方式であり、もう一方は回転機構を設けずに紙等の転写材の密着のみで駆動させる方式である。
【0003】
前者は回転機構をもつ性格上、両面の印刷タイミングを制御することが難しく、より精密に制御するには、装置の精密化、複雑化が避けられず、コストアップや装置が大きくなるという欠点を抱えている。特に、多色画像が得られる装置においては、両面の印刷タイミングのズレだけでなく、多色画像特有の色ズレが発生し易く、これらを制御する為の装置への負担は、単色画像のみが得られる装置より増大している。後者は静電荷像担持体を転写材の密着のみで駆動させる、即ち、転写材による連れ回りのみで駆動させる為、現像、転写のタイミングは、前者に比べて容易にとりやすく、結果、両面の印刷タイミング及び色ズレが起きにくく、装置の簡素化が図れる。しかしながら、転写材を静電荷像担持体に密着させる為、転写材と静電荷像担持体間に存在するトナーと静電荷像担持体は、転写材から大きな圧力を受けることになる。この圧力により、静電荷像担持体表面はトナー成分や転写材成分の固着、または削れが主因である劣化が著しく加速する為、それに伴って、解像力の低下、階調性の低下、画像濃度の低下及びカブリ等の画像劣化が加速し、結果、静電荷像担持体を短期間で交換しなければならなくなる。この劣化は(1)複写速度及び印刷速度を更に高速化する場合、(2)複写物や印刷物の広幅対応を静電荷像担持体の幅で対応する場合、(3)静電荷像担持体の寿命を静電荷像担持体の面積で対応する場合、より顕著に加速した。これらは、以下の理由によるものと考えられる。
(1)については、高速化する為には、静電荷像担持体の回転速度を増す必要があるが、本機構では転写材の連れ回りで高速化する為、結果、転写材からの圧力が増大するからである。
(2)および(3)については、いずれも静電荷像担持体が重量化することであり、重量化された静電荷像担持体を転写材の密着のみで駆動させる為には、より転写材からの圧力が得られないと、駆動させることが出来ないからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、静電荷像担持体を転写材の密着のみで駆動させる画像形成方法において、通常の条件の場合はもちろん、(1)複写速度及び印刷速度を更に高速化する場合、(2)複写物や印刷物の広幅対応を静電荷像担持体の幅で対応する場合、(3)静電荷像担持体の寿命を静電荷像担持体の面積で対応する場合等で用いられても、画像劣化を抑制でき、また、従来のものより、ドット再現性が良好な画像形成方法の提供にある。
なお、本発明で述べられている転写材とは、静電荷像担持体から、直接、トナー像を転写し、転写材自体が定着媒体となる物を指し、具体的には紙、OHPシート等を指す。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく検討した結果、静電荷像担持体の表層が少なくとも粘度平均分子量が1万以上7万以下のポリカーボネートを含み、かつ静電荷像担持体の表面が水との接触角が80°以上の滑性面であることにより、静電荷像担持体の劣化を抑制できることを見出し、本発明に到達することができた。
前記ポリカーボネートの粘度平均分子量は1万以上であることが重要である。1万に満たないと転写材による削れが発生した。より好ましくは2万以上であることが望ましい。ただ、粘度平均分子量を大きくするだけでは、静電荷像担持体の塗膜時に塗膜ムラが発生し、実使用上問題となるので、粘度平均分子量には上限があり、7万以下であることが重要であり、より好ましくは6万以下であることが望ましい。
また、ポリカーボネートの粘度平均分子量が増大すると、トナー成分や転写材成分の固着は、逆に増す傾向にあった。この理由としては、削れやすいと担持体上に固着したこれらの成分が、担持体の成分と同様に削れていくが、逆に削れにくいとこれらの成分は、担持体表面に蓄積されていくからである。そこで本発明者らは、静電荷像担持体の表面の接触角に着目した。担持体の接触角が80°以上の時、削れの抑制を何ら損ねることなく、固着の抑制が可能となることを見出した。接触角が80°に満たないとトナー成分や転写材成分による固着が発生した。
前記のような構成を採用することにより、静電荷像担持体表面の削れと固着防止とを両立させることが可能となり、結果、静電荷像担持体の寿命を飛躍的に延ばすことが可能となった。
【0006】
以上の技術的知見より、本発明の課題解決手段は、静電荷像担持体の表層が少なくとも粘度平均分子量が1万以上7万以下のポリカーボネートと四フッ化エチレン樹脂とを含み、かつ静電荷像担持体の表面特性として水との接触角が80°以上の滑性面である静電荷像担持体を転写材の密着のみで駆動させる画像形成装置を用い、シリコーンオイル処理シリカとヘキサメチルジシラザン処理疎水性酸化チタンを含有するトナーを用いることを特徴とする静電荷像担持体を転写材の密着のみで駆動させる画像形成方法にある。
前記のような構成を採用することにより、静電荷像担持体表面の削れと固着防止とを両立させることが可能となり、結果、静電荷像担持体の寿命を飛躍的に延ばすことが可能となった。
【0007】
以下、本発明の実施の態様について詳述する。
ポリカーボネート
本発明に用いるポリカーボネートとしては、粘度平均分子量が特定の範囲にあれば、従来公知のいずれのポリカーボネートでも使用できる。例えば、下記一般式(1)〜(4)で示される構造単位の少なくとも1種を主要繰返し単位として有する重合体又は共重合体から選ばれるポリカーボネート等が挙げられる。ただし、本発明で用いるポリカーボネートは、これらに限定されない。
【化1】
(前式中、R1〜R8は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはアリール基、R9〜R10は水素原子、低級アルキル基またはアリー
ル基である。)
【0008】
【化2】
{前式(2)〜(4)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子又は低級アルキル基、R9、R10、R11及びR12は、水素原子、低級アルキル基又はアリール基を表す。Zは炭素環又は複素環を形成するに必要な原子群をそれぞれ表わす。
A1は、−C(R13)(R14)−、−Si(R15)(R16)−、−S−、−SO2−、−CO−、−O−および−(CH2)n−よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を表わし、前記R13およびR14は互いに結合して炭素環または複素環を形成する基を表わす。〔但し、nは2以上の整数、R13及びR14は互いに結合して炭素環又は複素環を形成し、R15及びR16はそれぞれ置換、無置換のアルキル基又はアリール基、l及びmは(l+m)=0.1〜0.9を表す。〕}
【0009】
静電荷像担持体の表面を滑性化する手段
静電荷像担持体の表面を滑性化する手段としては、静電荷像担持体表面が水との接触角が80°以上の滑性面となり得る手段であれば、従来公知のいずれの滑性化方法を単独はもちろんのこと、組合せて用いても構わない。
なお、本発明で用いられる接触角は、接触角計CA−W型〔協和界面科学(株)製〕を用いて、純水による液滴法で測定した値を用いた。
【0010】
静電荷像担持体表面の滑性化材料としては、例えばシリコーンオイル、脂肪酸金属塩およびフッ素系物質が挙げられるが、以下、これら滑性化材料について具体的に説明する。
シリコーンオイル
本発明で用いるシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリルまたはメタクリル変性シリコーンオイル、αメチルスチレン変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらのシリコーンオイルは1種または2種以上の混合物、或いは併用して用いられる。
具体的には、これらのシリコーンオイルにより無機微粒子を処理し、該シリコーンオイルで処理された無機微粒子をトナーに添加して用いたり、或いは静電荷像担持体の表層に添加して用いる。
また、これらの内シリコーンオイルで処理された無機微粒子を用いる場合は、シリコーンオイルで処理された無機微粒子のメタノール試験で測定された疎水化度が、30〜100の範囲であることが特に好ましい。
【0011】
無機微粒子
シリコーンオイルで処理される無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。その中でも特にシリカと酸化チタンが好ましい。添加量はトナーに対し0.1から5重量%、好ましくは0.3から3重量%を用いることができる。
本発明で好ましく用いられる無機微粒子としては、MOX80(日本アエロジル社製、平均粒子径、約30nm)、OX50(日本アエロジル社製、平均粒子径、約40nm)及びTT600(日本アエロジル社製、平均粒子径、約40nm)、IT−PB(出光興産社製、平均粒子径、約40nm)及びIT−PC(出光興産社製、平均粒子径、約60nm)、TAF110A(富士チタン工業社製、平均粒子径、約40〜50nm)及びTAF510(富士チタン工業社製、平均粒子径、約40〜50nm)等が都合よく使用できる。また、これらの微粒子は、電子写真用トナーとして用いる際には、単独で用いても2種以上混合して用いても良い。
【0012】
無機微粒子の粒子径
シリコーンオイルで処理された無機微粒子の一次粒子の平均粒径は、100nm以下、好ましくは70nm以下である。この範囲より大きいと、無機微粒子の表面積が小さくなる為、シリコーンオイル処理時に実使用上向かない凝集が発生する。なお、前記平均粒径は、数平均の粒子径である。本発明に使用される無機微粒子の粒子径は、動的光散乱を利用する粒径分布測定装置、例えば(株)大塚電子製のDLS−700やコールターエレクトロニクス社製のコールターN4により測定可能である。しかしシリコーンオイル処理後の粒子の二次凝集を解離することは困難であるため、走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により得られる写真より直接粒径を求めることが好ましい。この場合少なくとも100個以上の無機微粒子を観察しその長径の平均値を求める。
【0013】
シリコーンオイル処理方法
あらかじめ数百℃のオーブンで充分脱水乾燥した無機微粒子とシリコーンオイルを均一に接触させ、無機微粒子表面に付着させる。付着させるには無機微粒子粉体とシリコーンオイルを回転羽根等の混合機により充分粉体のまま混合させたり、シリコーンオイルが希釈できる比較的低沸点の溶剤によりシリコーンオイルを溶解させ、無機微粒子粉体を液中に含浸させ溶剤を除去乾燥させる方法により作成できる。シリコーンオイルの粘度が高い場合には液中で処理するのが好ましい。その後シリコーンオイルが付着した無機粉体を100℃から数百℃のオーブン中で熱処理を施すことにより、無機粉体表面の水酸基を用いて金属とシリコーンオイルとのシロキサン結合を形成させたり、シリコーンオイル自身をさらに高分子化、架橋することができる。あらかじめシリコーンオイル中に酸やアルカリ、金属塩、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の触媒を含ませて反応を促進させても良い。また無機微粒子はシリコーンオイル処理の前にあらかじめシランカップリング剤等の疎水化剤による処理を行っておいても良い。あらかじめ疎水化されている無機粉体の方がシリコーンオイルの吸着量は多くなる。
【0014】
脂肪酸金属塩
本発明に用いられる脂肪酸金属塩は、静電荷像担持体表面が水との接触角が80°以上の滑性面となり得る物質であれば、従来公知のいずれの脂肪酸金属塩を用いても構わない。例えば、下式(5)で表される脂肪酸金属塩、具体的にはステアリン酸亜鉛、ラウリル酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0015】
【化3】
脂肪酸金属塩のトナー中の含有量としては、トナー100重量部に対し、0.01〜1.0重量部であることが好ましい。0.01重量部未満では、添加効果が認められない。また、1.0重量部を超えると現像剤担持体等、他の部分に対し、被膜形成が起こり、現像性に関する問題が起こる。特に好ましくは、0.03〜1.0重量部である。
【0016】
フッ素系物質
本発明に用いられるフッ素系物質は、静電荷像担持体表面が水との接触角が80°以上の滑性面となり得る物質であれば、従来公知のいずれのフッ素系物質を用いても構わない。その中でもフッ素系樹脂粉体が特に好ましい。
フッ素系樹脂粉体は、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体の中から1種あるいはそれ以上が適宜選択されるが、特に四フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。樹脂の分子量や粉体粒径は市販グレードから適宜選択して用いることができるが、特に低分子量グレードで、かつ一次粒子が1μ以下のものが好ましい。
表面層に分散されるフッ素系樹脂粉体の含有量は、表面層固形分重量に基づいて1〜50重量%が適当であり、特に2〜30重量%が好ましい。含有率が1重量%未満ではフッ素系樹脂粉体による表面層改質効果が十分でなく、一方、50重量%を超えると光透過性が低下し、かつキャリアの移動性も低下する。
また、フッ素系樹脂粉体を含有する場合は、感光体バインダー中への分散性を向上させるために、フッ素系グラフトポリマーを、添加することが好ましい。
【0017】
本発明に適用するフッ素系グラフトポリマーは、片末端に重合性官能基を有し、かつ一定の繰り返し単位を有する分子量が1000〜10000程度のオリゴマー(以下マクロマーと称す)と重合性単量体との共重合により得ることができる。
フッ素系グラフトポリマーの構造は、
(i)非フッ素系重合性単量体から合成した非フッ素系マクロマーとフッ素系重合性単量体の共重合の場合、幹がフッ素系セグメントで枝が非フッ素系セグメント
(ii)フッ素系重合性単量体から合成したフッ素系マクロマーと非フッ素系重合性単量体の共重合の場合、幹が非フッ素系セグメントで枝がフッ素系セグメント
となる。
フッ素系グラフトポリマーは、上記のようにフッ素系セグメントと非フッ素系セグメントがそれぞれ局在化しており、フッ素系セグメントがフッ素系樹脂粉体に、非フッ素系セグメントが添加された樹脂層に、それぞれ配向した機能分離形態をとっている。特にフッ素系セグメントが連続して配列しているため、フッ素系セグメントがフッ素系樹脂粉体に高密度で、かつ効率良く吸着し、さらに非フッ素系セグメントが樹脂層に配向するため、従来の分散剤には見られなかったフッ素系樹脂粉体の分散安定性向上効果が発現されているものである。
また、一般にフッ素系樹脂粉体は、数μオーダーの凝集体で存在しているものであるが、本発明のフッ素系グラフトポリマーを分散剤として用いることにより、1μ以下の一次粒子まで均一に分散されるものである。
【0018】
このような機能分離効果を最大限に利用するためには、マクロマーの分子量を上記のように1000〜10000程度に調節する必要がある。即ち、分子量が1000未満であるとセグメントの長さが短すぎるため、フッ素系セグメントの場合にはフッ素系樹脂粉体への吸着効率が減少し、また非フッ素系セグメントの場合には表面層樹脂層への配向が弱まり、いずれにおいてもフッ素系樹脂粉体の分散安定性が阻害される。
一方、分子量が10000を超えると添加される表面層樹脂層との相溶性が減少する。特にフッ素系セグメントにおいてこの現象は顕著であり、セグメントが樹脂層中で縮まったコイル状形態をとるため、フッ素系樹脂粉体に対する吸着活性点数が減少し、分散安定性が阻害される。
また、フッ素系グラフトポリマー自身の分子量も大きく影響を与え、10000〜100000が好ましい範囲である。分子量が10000以下であると分散安定機能の発現が不十分であり、100000以上になると添加される表面層樹脂層との相溶性が減少するため、同様に分散安定機能が発現されなくなる。
【0019】
フッ素系グラフトポリマー中におけるフッ素系セグメントの比率は5〜90重量%が好ましく、10〜70重量%がさらに好ましい。フッ素系セグメントの比率が5重量%未満ではフッ素系樹脂粉体の分散安定機能が十分に発揮できず、90重量%を超えると添加される表面層樹脂層との相溶性が悪くなる。
フッ素系グラフトポリマーの添加量はフッ素系樹脂粉体に対して0.1〜30重量%が適当であり、特に1〜20重量%が好ましい。添加量が0.1重量%未満ではフッ素系樹脂粉体の分散安定性効果が十分でなく、一方、30重量%を超えるとフッ素系グラフトポリマーがフッ素系樹脂粉体に吸着して存在する以外にフリーの状態で表面層樹脂層内部に存在するようになり、繰り返し電子写真プロセスを行なったときに残留電位の蓄積が生じてくる。
【0020】
トナー
トナーを構成するバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0021】
トナーを構成する着色剤としては、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミニウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミニウムレッド、カドミニウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレトVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。使用量は一般にバインダー樹脂100重量部に対し0.1〜50重量部である。
【0022】
本発明のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージNX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0023】
帯電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
製造されるトナーに離型性を持たせる為に、製造されるトナーの中にワックスを含有させることが好ましい。前記ワツクスは、その融点が40〜120℃のものであり、特に50〜110℃のものであることが好ましい。ワックスの融点が過大のときには低温での定着性が不足する場合があり、一方融点が過小のときには耐オフセツト性、耐久性が低下する場合がある。なお、ワックスの融点は、示差走査熱量測定法(DSC)によって求めることができる。すなわち、数mgの試料を一定の昇温速度、例えば(10℃/min)で加熱したときの融解ピーク値を融点とする。
ワックスとしては、例えば固形のパラフィンワックス、マイクロワツクス、ライスワツクス、脂肪酸アミド系ワックス、脂肪酸系ワックス、脂肪族モノケトン類、脂肪酸金属塩系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、部分ケン化脂肪酸エステル系ワックス、シリコーンワニス、高級アルコール、カルナウバワツクスなどを挙げることができる。また低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなども用いることができる。特に、環球法による軟化点が70〜150℃のポリオレフィンが好ましく、さらには当該軟化点が120〜150℃のポリオレフィンが好ましい。
【0024】
本発明で用いられる樹脂微粒子としては、ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられ、比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0025】
本発明で用いられる疎水化処理された無機微粒子は、以下で示された疎水化処理方法及び疎水化処理剤を用いて、先述の無機微粒子に疎水化処理することが、流動性補助、帯電調整、帯電の環境安定性及び熱に対する保存性の上で最も好ましい。
本発明に用いられる疎水化方法としては、無機微粉体と反応或いは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、金属ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された無機微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
そのような有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、ρ−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。
【0026】
また、未処理のシリカ微粉体を窒素含有のシランカップリング剤で処理したものを用いてもよい。
そのような処理剤の例としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、モノブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジオクチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルジメトキシシラン、ジブチルアミノプロピルモノメトキシシラン、ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリル−γ−プロピルフェニルアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルベンジンアミン、トリメトキシシリル−γ−プロピルピペリジン、トリメトキシシリル−γ−プロピルモルホリン、トリメトキシシリル−γ−プロピルイミダゾール等がある。これらの処理剤は1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
また、疎水化処理された無機微粒子は、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度30〜100の範囲の値を示すものが特に好ましい。
本発明においては、疎水化処理された無機微粒子、シリコーンオイル処理された無機微粒子とともに、表面処理を施さない公知の無機微粒子を1種類以上合わせて使用しても良い。
【0027】
トナーの製造方法
トナーの製造方法としては、少なくとも結着剤樹脂、主帯電制御剤および顔料を含むトナー成分を機械的に混合する工程と、溶融混練する工程と、粉砕する工程と、分級する工程とを有するトナーの製造方法が適用できる。また機械的に混合する工程や溶融混練する工程において、粉砕または分級する工程で得られる製品となる粒子以外の粉末を戻して再利用する製造方法も含まれる。
ここで言う製品となる粒子以外の粉末(副製品)とは溶融混練する工程後、粉砕工程で得られる所望の粒径の製品となる成分以外の微粒子や粗粒子や引き続いて行われる分級工程で発生する所望の粒径の製品となる成分以外の微粒子や粗粒子を意味する。このような副製品を混合工程や溶融混練する工程で原料と好ましくは副製品1に対しその他原材料99から副製品50に対し、その他原材料50の重量比率で混合するのが好ましい。
少なくとも結着剤樹脂、主帯電制御剤および顔料、副製品を含むトナー成分を機械的に混合する混合工程は、回転させる羽による通常の混合機などを用いて通常の条件で行えばよく、特に制限はない。
以上の混合工程が終了したら、次いで混合物を混練機に仕込んで溶融混練する。溶融混練機としては、一軸、二軸の連続混練機や、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、池貝鉄工所社製PCM型2軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。
この溶融混練は、バインダー樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが重要である。具体的には、溶融混練温度は、結着剤樹脂の軟化点を参考に行うべきであり、軟化点より低温過ぎると切断が激しく、高温過ぎると分散が進まない。
【0028】
以上の溶融混練工程が終了したら、次いで混練物を粉砕する。この粉砕工程においては、まず粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
この粉砕工程が終了した後、或いは粉砕工程中に、粉砕物を遠心力などで気流中で分級し、所望の円形度と粒度をもつトナーを得る。また、粒度については、重量平均径が4〜20μmであることが望ましい。好ましくは、6〜10μmであることが望ましい。
本発明で用いられる円形度は、種々の方法で測定可能であるが、本発明においては東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPA−1000を使用して求めた。円形度は、トナーを1%食塩水の電解液に希釈して行なった。
【0029】
本発明で使用するトナーの重量平均径は、種々の方法によって測定できるが、本発明においてはマルチサイザーを用いて行った。すなわち、測定装置としてはマルチサイザーII(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェース及びパーソナルコンピューターを接続し、電解液は特級あるいは1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。測定法としては前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記マルチサイザーII型により、アパーチャーとして、トナー粒径を測定するときは、100μmアパーチャーを用いて測定した。トナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布とを算出した。それから本発明に係わるところの体積分布から求めた重量基準の重量平均径を体積分布から求めた。
このトナーに本発明で用いられる無機微粒子と脂肪酸金属石鹸を適宜添加混合する。
外添混合としては、一般の粉体の混合機が用いられるがジャケット等装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけば良い。もちろん混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよい。はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えても良いし、その逆でも良い。
使用できる混合設備の例としては、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。
また、本発明においては、先述の無機微粒子をトナー中に内添して用いても構わない。内添方法としては、溶融混練前の混合工程や溶融混練工程で他のトナー成分と同様に行われる。
また、外添と内添を同時に用いても構わない。
また、本発明で用いられる無機微粒子と脂肪酸金属塩以外に先述した様なトナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、他の添加剤を添加混合してもよい。
【0030】
本発明のトナーを2成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いれば良く、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100重量部に対してトナー1〜10重量部が好ましい。磁性キャリアとしては、粒子径20〜200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど従来から公知のものが使用できる。また、被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。またポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂およびスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が使用できる。また必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。また、本発明のトナーはキャリアを使用しない1成分系の磁性トナー或いは、非磁性トナーとしても用いることができる。
【0031】
静電荷像担持体
本発明に用いられる静電荷像担持体としては、有機感光体が好ましく用いられる。有機感光体は、感光層が電荷発生物質及び電荷輸送性能を有する物質を同一層に含有する、いわゆる、単一層型でもよく、電荷輸送層と電荷発生層を成分とする機能分離型感光体であっても良い。導電性基体上に電荷発生層、次いで電荷輸送層の順で積層されている構造の積層型感光体は好ましい例の一つである。
本発明に用いられる有機感光体の態様を以下に説明する。
導電性基体としては、アルミニウムまたはステンレス等の金属、アルミニウム合金または酸化インジウム−酸化錫合金等による被膜層を有するプラスチック、導電性粒子を含浸させた紙またはプラスチック、導電性ポリマーを有するプラスチック等の円筒状シリンダーが用いられる。
これら導電性基体上には、感光層の接着性向上、塗工性改良、基体の保護、基体上に欠陥の被覆、基体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護等を目的として下引き層を設けても良い。下引き層は、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリビニルブチラール、フェノール樹脂、カゼイン、ポリアミド、共重合ナイロン、ニカワ、ゼラチン、ポリウレタン、酸化アルミニウム等の材料によって形成される。その膜厚は通常0.1〜10μm、好ましくは0.1〜3μm程度である。
【0032】
電荷発生層は、アゾ系顔科、フタロシアニン系顔科、インジゴ系顔科、ペリレン系顔科、多環キノン系顔科、スクワリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素;セレン、非晶質シリコン等の無機物質などの電荷発生物質を適当な結着剤に分散し塗工するあるいは蒸着等により形成される。結着剤としては、広範囲な結着性樹脂から選択でき、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。電荷発生層中に含有される結着剤の量は80重量%以下、好ましくは0〜40重量%である。また、電荷発生層の膜厚は5μm以下、特に0.05〜2μmが好ましい。
【0033】
電荷輸送層は、電界の存在下で電荷発生層から電荷キャリアを受け取り、これを輸送する機能を有している。電荷輸送層は電荷輸送物質を必要に応じて結着樹脂と共に溶剤中に溶解し、塗工することによって形成され、その膜厚は5〜40μm、好ましくは10〜30μmである。電荷輸送物質としては、主鎖または側鎖にビフェニレン、アントラセン、ピレン、フェナントレンなどの構造を有する多環芳香族化合物;インドール、カルバゾール、オキサジアゾール、ピラゾリンなどの含窒素環式化合物;ヒドラゾン化合物;スチリン化合物等が挙げられる。また、これら電荷輸送物質を分散させる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂;ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。
また、電荷輸送層における結着樹脂の量は40〜70重量%が好ましい。
【0034】
有機感光体の最外層に保護層を有する形態のものが好ましい。保護層の樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ホスファゼン樹脂或いはこれらの樹脂の硬化剤等が単独或いは二種組合されて用いられる。保護層の膜厚は、感光層の構成上電荷の移動しない層を設けることに起因して、耐久使用によって、残留電位が上昇したり、感度が低下するといった弊害を避けるために0.1〜6μmが好ましく、より好ましくは0.5〜4μmである。
保護層の塗工は、塗工液をスプレーコーティング、ビームコーティング、或いは浸漬コーティングすることによって行うことができる。
また、保護層の電気抵抗を調整するために、先にあげた電荷輸送物質や、金属、金属酸化物粒子等を含有させても良い。
金属酸化物粒子としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化スズ被覆酸化チタン、スズ被覆酸化インジウム、アンチモン被覆酸化スズ、酸化ジルコニウム等の超微粒子が挙げられる。これらの金属酸化物は単独で用いても二種以上混合して用いても良い。二種以上混合した場合は、固溶体または融着の形をとっても良い。
本発明で用いられる静電荷像担持体の表層とは、有機感光体においては前述の電荷輸送層が最も一般的であるが、本発明においては感光層上に更に設けられた保護層であっても良く、また電荷発生層と電荷輸送層が逆に積層されている場合は電荷発生層であっても良い。いずれにせよ表層には特定の粘度平均分子量を有するポリカーボネートが含まれることが必須である。
【0035】
静電荷像担持体駆動方式
本発明に用いられる駆動方式として、図1にその代表的な駆動方式を示す。多色画像形成方法として用いる場合は図1のユニットを必要な色数だけ組合せる。
定着方式
本発明に用いられる定着方式としては、従来公知の定着方式のいずれを用いても可能であるが、両面同時印刷及び複写が可能な画像形成方法においては、非接触加熱方式を用いることが好ましい。最も好ましくは加熱された空気を供給して定着させるオーブン定着法を用いることが、ドット再現性の面で望ましい。図2に代表的なオーブン定着を示す。
【0036】
以下にトナー用母剤着色粒子の製造例、トナー製造例、静電荷像担持体製造例、参考例および比較例を挙げて本発明について具体的に説明する。以下の例おいて、部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0037】
トナー用母剤着色粒子の製造例
ブラック着色粒子
水 1200部
フタロシアニングリーン含水ケーキ(固形分30%) 200部
カーボンブラック(MA60 三菱化学社製) 540部
をフラッシャーでよく撹拌する。ここに、エポキシポリオ−ル樹脂(Mn;3800、Mw/Mn;3.9、Tg;59℃)1200部を加え、150℃で30分混練後、キシレン1000部を加えさらに1時間混練、水とキシレンを除去後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕、マスターバッチ顔料を得た。
上記エポキシポリオール樹脂 100部
上記マスターバッチ 8部
サリチル酸亜鉛誘導体(ボントロンE−84、オリエント化学社製)2部
上記材料をミキサーで混合後、2本ロールミルで溶融混練し、混練物を圧延冷却した。その後、粉砕分級を行い、重量平均粒径8.0μmのブラック着色粒子を得た。
【0038】
をフラッシャーでよく撹拌する。ここに、エポキシポリオ−ル樹脂(Mn;3800、Mw/Mn;3.9、Tg;59℃)1200部を加え、150℃で30分混練後、キシレン1000部を加えさらに1時間混練、水とキシレンを除去後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕、さらに3本ロールで2パスし、マスターバッチ顔料を得た。
上記エポキシポリオール樹脂 100部
上記マスターバッチ 8部
サリチル酸亜鉛誘導体(ボントロンE−84、オリエント化学社製)2部
上記材料をミキサーで混合後、2本ロールミルで溶融混練し、混練物を圧延冷却した。その後、粉砕分級を行い、重量平均粒径8μmのイエロー着色粒子を得た。
【0039】
をフラッシャーでよく撹拌する。ここに、エポキシポリオ−ル樹脂(Mn;3800、Mw/Mn;3.9、Tg;59℃)1200部を加え、150℃で30分混練後、キシレン1000部を加えさらに1時間混練、水とキシレンを除去後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕、さらに3本ロールミルで2パスしマスターバッチ顔料を得た。
上記エポキシポリオール樹脂 100部
上記マスターバッチ 8部
サリチル酸亜鉛誘導体(ボントロンE−84、オリエント化学社製)2部
上記材料をミキサーで混合後、2本ロールミルで溶融混練し、混練物を圧延冷却した。その後、粉砕分級を行い、重量平均粒径8μmのマゼンタ着色粒子を得た。
【0040】
をフラッシャーでよく撹拌する。ここに、エポキシポリオ−ル樹脂(Mn;3800、Mw/Mn;3.9、Tg;59℃)1200部を加え、150℃で30分混練後、キシレン1000部を加えさらに1時間混練、水とキシレンを除去後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕、さらに3本ロールミルで2パスしマスターバッチ顔料を得た。
上記エポキシポリオール樹脂 100部
上記マスターバッチ 8部
サリチル酸亜鉛誘導体(ボントロンE−84、オリエント化学社製)2部
上記材料をミキサーで混合後、2本ロールミルで溶融混練し、混練物を圧延冷却した。その後、粉砕分級を行い、重量平均粒径8μmのシアン着色粒子を得た。
【0041】
トナー製造例1〜3
得られた着色粒子100重量部に表1に示した添加剤をヘンシェルミキサーにより混合した後、目開き50μmの篩を通過させることにより凝集物を取り除いて、表1に示したトナーを得た。更に、これらのトナー5重量部とシリコーン樹脂により0.3μmの平均厚さでコーティングされた平均粒径50μmのフェライトキャリア100重量部をターブラーミキサーにて混合させて、現像剤を作成した。
【0042】
【表1】
【0043】
静電荷像担持体製造例1
約150mmφのアルミニウムドラム上にアルコール可溶性ナイロン(ポリアミド樹脂:商品名、CM8000東レ社製)を約0.2μm下引層として浸漬塗工し、その上に下記電荷発生層塗工液を浸漬塗工し、110℃で10分間加熱乾燥して約0.2μmの電荷発生層を形成した。
〔電荷発生層用塗工液〕φ15cmのガラスポット中に容積1/2の量のφ1cmの焼結酸化ジルコニウムボール(YTZボール)とポリビニルブチラール(商品名XYHL)の2部シクロヘキサノン溶液300部とY型チタニルフタロシアニンを12部投入して72時間ミリングした。さらに500部のメチルエチルケトンを追加投入してさらに24時間ミリングして電荷発生層塗工とした。次に電荷発生層の上に下記電荷移動層塗工液を浸漬塗工し、130℃で30分間加熱乾燥して30μmの電荷移動層を形成した。
【0044】
【化4】
【0045】
静電荷像担持体製造例2
電荷移動層塗工液にシリコーンオイル(商品名:KF−50/信越化学社製)0.1部を加えた以外は、静電荷像担持体製造例1と同様に製造した。
静電荷像担持体製造例3
電荷移動層塗工液に四フッ化エチレン樹脂10部を加えた以外は、静電荷像担持体製造例1と同様に製造した。
静電荷像担持体製造例4
電荷移動層塗工液中のポリカーボネートを粘度平均分子量8000に変更した以外は、静電荷像担持体製造例2と同様に製造した。
静電荷像担持体製造例5
担持体の長さを約375mmに短くした以外は、静電荷像担持体製造例1と同様に製造した。
【0046】
上記のトナーと現像剤をオーブン定着温度140℃に設定したXEIKON社製DCP50D改造機にて200k枚画像出しを行い、その後画像評価を行った。但し、実施例4は、XEIKON社製DCP32D改造機にて評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0047】
【表2】
スジ、固着の評価は、目視で確認
画像評価は、初期と200k枚時点での解像力、階調性、画像濃度、カブリ、色再現性を評価した
◎:目視で確認できず、画像としても劣化が認められない
○:目視でわずかに確認できるが、画像としては劣化が認められない
△:目視ではっきりと確認できるが、画像としては許容できる
×:目視ではっきりと確認でき、画像としても劣化が認められる
【0048】
【発明の効果】
本発明により、静電荷像担持体を転写材の密着のみで駆動させる画像形成方法において、(1)複写速度及び印刷速度を更に高速化する場合、(2)複写物や印刷物の広幅対応を静電荷像担持体の幅で対応する場合、(3)静電荷像担持体の寿命を静電荷像担持体の面積で対応する場合に用いられても、画像劣化を抑制でき、かつ、従来のものより、ドット再現性が良好な画像形成方法の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な駆動方式を示す図である。
【図2】本発明に用いられるオーブン定着の定着方式を示す図である。
【符号の説明】
1 転写材
2 静電荷潜像担持体
3 転写部
4 トナー
Claims (1)
- 静電荷像担持体の表層が少なくとも粘度平均分子量が1万以上7万以下のポリカーボネートと四フッ化エチレン樹脂とを含み、かつ静電荷像担持体の表面特性として水との接触角が80°以上の滑性面である静電荷像担持体を転写材の密着のみで駆動させる画像形成装置を用い、シリコーンオイル処理シリカとヘキサメチルジシラザン処理疎水性酸化チタンを含有するトナーを用いることを特徴とする静電荷像担持体を転写材の密着のみで駆動させる画像形成方法。
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