JP4267387B2 - 熱可逆記録材料、熱可逆記録ラベル、情報記憶表示部材、画像処理方法 - Google Patents
熱可逆記録材料、熱可逆記録ラベル、情報記憶表示部材、画像処理方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像の形成及び消去を何度でも繰り返して行なうことのできる熱可逆記録媒体、熱可逆記録ラベル、情報記憶部材、画像処理方法、及び画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、一時的な画像表示が行なえ、不要となったときにはその画像の消去ができ、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を有する熱可逆記録材料が注目されている。その代表的なものとしては、特開昭55−154198号に記載の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂母材中に高級脂肪酸等の有機低分子物質を分散した熱可逆記録媒体が知られている。しかし、これらの従来の熱可逆記録媒体は、透光、透明性を示す温度範囲の幅が2〜4℃と狭い欠点があり、透光・透明性や遮光・白濁性を利用して画像を形成する際の温度制御に難があった。
【0003】
透明化温度範囲を拡大する方法として、特開平2−1363号公報、特開平3−2089号公報、特開平4−366682号公報、特開平6−255247号公報に記載されているように、高級脂肪酸や高級ケトンや脂肪酸エステルと脂肪族ジカルボン酸を混合して用いることが開示されている。これらの方法によって、透明になる温度範囲を広げることができて、画像の消去(透明化)が容易になった。その結果、これらの熱可逆記録媒体は、ポイントカードなどの用途に広く使用されるようになった。
【0004】
しかしながら、これらの熱可逆記録媒体は、微量のアンモニアやアミンなどの塩基性物質が存在する環境下に保管されると、それらの物質が非常に低濃度でも白濁画像が形成できなくなってしまうという欠点を有していた。従って、これらの熱可逆記録媒体がポイントカードなどの用途に使用された場合、その保存環境に塩基性物質がわずかでも存在すると、白濁画像が形成できなくなり、ポイントカードとして長期間に渡って繰り返し使用することができなくなっていた。
【0005】
このように白濁画像が形成できなくなるのは、低分子物質のカルボキシル基と塩基性物質が塩を形成し低分子物質の融点を上昇させるためであると考えられている。かかる考え方に基づいて、カルボキシル基を有する低分子物質を用いない熱可逆記録媒体が提案されている。
【0006】
例えば、特開平5−294062号公報(特許文献1)には、高級ケトンや脂肪酸エステルと飽和脂肪族ビスアミドを混合して用い、透明化温度幅を広げることが開示されている。しかしながら、この熱可逆記録媒体はカルボキシル基を有する低分子物質を用いないため塩基性物質による影響が少なく、かつ透明化温度の幅がやや広がり消去性は向上するものの、コントラストが低いという欠点があった。
【0007】
さらに、特開平11−58988号公報(特許文献2)には、塩基性物質による影響を少なくするために脂肪酸エステルなどの低融点低分子物質とステアリン酸銅などの脂肪酸金属塩や脂肪酸アマイドなどを用いることが開示されている。しかし、特許文献2記載の熱可逆記録媒体は、塩基性物質による影響は少なくなるものの、ステアリン酸銅を用いた場合には材料が青色に着色しているために媒体も青色に着色してしまうという欠点を有し、脂肪酸アマイドを用いた場合にはアマイドの融点があまり高くないため透明化温度幅が狭く画像の消去(透明化)が難しいという欠点があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−294062号公報
【特許文献2】
特開平11−58988号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、透明化する温度幅を広げ、環境温度が変化しても十分な画像消去性および高コントラストが得られ、かつ塩基性物質の存在下に保存されても充分な白濁度が得られる熱可逆性記録材料、熱可逆記録ラベル、情報記憶部材、及びこれらを用いた画像処理方法、画像処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、以下に示す熱可逆性記録材料、熱可逆記録ラベル、情報記憶部材、及びこれらを用いた画像処理方法、画像処理装置が提供される。
〔1〕樹脂母材および該樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を有する熱可逆記録材料において、該有機低分子物質が、下記一般構造式(1)乃至(3)及び(5)の化合物から選択された少なくとも一種からなる直鎖炭化水素含有化合物(A)と、カルボキシル基を有さない少なくとも一種の直鎖炭化水素含有化合物からなる直鎖炭化水素含有化合物(B)とからなり、該化合物(B)を構成する各々の直鎖炭化水素含有化合物の融点が、該化合物(A)を構成する各々の直鎖炭化水素含有化合物の融点より20℃以上低いことを特徴とする熱可逆記録材料。
【化6】
【化7】
【化8】
【化10】
(一般構造式(1)〜(5)中、pは1〜10の整数を示し、mは1〜20の整数を示し、nは1〜25の整数を示す。)
〔2〕前記直鎖炭化水素含有化合物(A)を構成する各々の直鎖炭化水素含有化合物の融点が100℃以上であることを特徴とする前記〔1〕に記載の熱可逆記録材料。
〔3〕前記直鎖炭化水素含有化合物(B)を構成する各々の直鎖炭化水素含有化合物の融点が50℃以上100℃未満であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の熱可逆記録材料。
〔4〕前記直鎖炭化水素含有化合物(A)と直鎖炭化水素含有化合物(B)の混合比が80:20〜1:99であることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱可逆記録材料。
〔5〕前記直鎖炭化水素含有化合物(B)が、脂肪酸エステル、高級アルキル基を有するケトン、二塩基酸エステル、多価アルコールジ脂肪酸エステル、脂肪族モノアミド化合物、脂肪族モノウレア化合物から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の熱可逆記録材料。
〔6〕前記樹脂母材のゲル分率値が30%以上であることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の熱可逆記録材料。
〔7〕前記樹脂母材の少なくとも一部が架橋されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の熱可逆記録材料。
〔8〕下記の三条件を満足することを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の熱可逆記録材料。
(条件1)透明化上限温度(Ttu)が115℃以上
(条件2)透明化上限温度(Ttu)と白濁化下限温度(Tsl)の温度差(ΔTts)が20℃以下
(条件3)透明化温度幅(ΔTw)が30℃以上
〔9〕前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の熱可逆記録材料が支持体上に形成され、該支持体の感熱層が形成されている面とは反対の面に、接着剤層または粘着剤層が設けられていることを特徴とする熱可逆記録ラベル。
〔10〕情報記憶部と可逆表示部を有し、該可逆表示部が前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の熱可逆記録材料からなることを特徴とする情報記憶表示部材。
〔11〕情報記憶部を有する部材に可逆表示部が設けられたことを特徴とする前記〔10〕に記載の情報記憶表示部材。
〔12〕該情報記憶部を有する部材が、カード、ディスク、ディスクカートリッジ又はテープカセットのいずれかであることを特徴とする前記〔11〕に記載の情報記憶表示部材。
〔13〕前記可逆表示部が、前記〔10〕に記載の熱可逆記録ラベルであることを特徴とする前記〔11〕又は〔12〕に記載の情報記憶表示部材。
〔14〕前記〔1〕〜〔8〕に記載の熱可逆記録材料、前記〔10〕に記載の熱可逆記録ラベル、又は前記〔10〕〜〔13〕に記載の情報記憶表示部材のいずれかを用いて、加熱により画像の形成及び/又は消去を行うことを特徴とする画像処理方法。
〔15〕サーマルヘッドを用いて画像を形成することを特徴とする前記〔14〕に記載の画像処理方法。
〔16〕サーマルヘッド又はセラミックヒータを用いて画像を消去することを特徴とする前記〔14〕に記載の画像処理方法。
〔17〕サーマルヘッドを用いて画像をオーバーライトし、該画像の消去と新しい画像の記録を行うことを特徴とする前記〔14〕に記載の画像処理方法。
〔18〕前記〔1〕〜〔8〕に記載の熱可逆記録材料、前記〔9〕に記載の熱可逆記録ラベル、又は前記〔11〕〜〔14〕に記載の情報記憶表示部材を用いて、画像の形成及び/又は消去を行う手段を具備することを特徴とする画像処理装置。
〔19〕前記画像の形成手段がサーマルヘッドであることを特徴とする前記〔18〕に記載の画像処理装置。
〔20〕前記画像の消去手段がサーマルヘッド又はセラミックヒータであることを特徴とする前記〔18〕に記載の画像処理装置。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の熱可逆記録材料は、樹脂母材および樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感光層を有する。かかる熱可逆記録材料は、画像の形成及び消去を何度でも繰り返して行なうことができるので、ポイントカード、ディスクカートリッジ、ディスク、テープカセットおよびラベル用の記録材料として好適なものである。
【0012】
本発明の熱可逆記録材料を構成する有機低分子物質は、下記一般構造式(1)〜(5)の化合物から選択された少なくとも一種からなる直鎖炭化水素含有化合物(A)(以下、単に化合物(A)ともいう。)と、カルボキシル基を有さない少なくとも一種の直鎖炭化水素含有化合物からなる直鎖炭化水素含有化合物(B)(以下、単に化合物(B)ともいう。)とからなる。化合物(B)を構成する直鎖炭化水素含有化合物の各々の融点は、化合物(A)を構成する直鎖炭化水素含有化合物の各々の融点より20℃以上低い。かかる構成の化合物(A)と化合物(B)を混合して用いることにより、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を形成することができる。化合物(B)を構成する各々の直鎖炭化水素含有化合物の融点と化合物(A)を構成する各々の直鎖炭化水素含有化合物の融点の差が20℃未満の場合は、温度に依存して透明度が可逆的に変化する層状感熱体を形成することができない虞がある。かかる観点から、化合物(B)を構成する直鎖炭化水素含有化合物の各々融点は、化合物(A)を構成する直鎖炭化水素含有化合物の各々の融点より20℃以上低いことが好ましく、25℃以上低いことが更に好ましく、30℃以上低いことが特に好ましい。
【0013】
本発明における化合物(A)を構成する直鎖炭化水素含有化合物は、次の一般構造式(1)〜(5)の化合物から選択される。但し、本発明においては、化合物(A)を構成する直鎖炭化水素含有化合物は一種に限定されず、複数選択してもよい。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【0014】
一般構造式(1)〜(5)中、pは1〜10の整数を示し、mは1〜20の整数を示し、nは1〜25の整数を示す。ここで、pは1〜10が好ましく、2〜9が更に好ましく、3〜8が特に好ましい。また、mは1〜20が好ましく、3〜17が更に好ましく、5〜14が特に好ましい。nは1〜25が好ましく、3〜23が更に好ましく、5〜20が特に好ましい。
【0015】
次に、一般構造式(1)〜(5)で表される直鎖炭化水素含有化合物の具体例を挙げる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
一般構造式(1)で表される化合物の具体例としては、下記構造式(6)で表されるものが挙げられる。
【化16】
【0017】
一般構造式(2)で表される化合物の具体例としては、下記構造式(7)で表されるものが挙げられる。
【化17】
【0018】
一般構造式(3)で表される化合物の具体例としては、下記構造式(8)〜(11)で表されるものが挙げられる。
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【0019】
一般構造式(4)で表される化合物の具体例としては、下記構造式(12)で表されるものが挙げられる。
【化22】
【0020】
一般構造式(5)で表される化合物の具体例としては、下記構造式(13)で表されるものが挙げられる。
【化23】
【0021】
本発明において、前記直鎖炭化水素含有化合物(A)を構成する直鎖炭化水素含有化合物の融点は、100〜170℃が好ましく、105〜160℃以上がさらに好ましく、110〜150℃以上が特に好ましい。この融点が低すぎると透明化温度幅の拡大ができなくなり消去性が低下し、融点が高すぎると白濁画像を形成する際の感度が低下してしまう。
【0022】
本発明における化合物(B)を構成する直鎖炭化水素含有化合物としては、脂肪酸エステル、高級アルキル基を有するケトン、二塩基酸エステル、多価アルコールジ脂肪酸エステル、脂肪族モノアミド化合物、脂肪族モノウレア化合物が挙げられる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明においては、化合物(B)を構成する直鎖炭化水素含有化合物は一種に限定されず、複数選択してもよい。
【0023】
以下に、化合物(B)を構成する直鎖炭化水素含有化合物について更に具体的な例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
化合物(B)を構成する脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ラウリン酸オクタデシル、ラウリン酸ドコシル、ミリスチン酸ドコシル、パルミチン酸ドデシル、パルミチン酸テトラデシル、パルミチン酸ペンタデシル、パルミチン酸ヘキサデシル、パルミチン酸オクタデシル、パルミチン酸トリアコンチル、パルミチン酸オクタデシル、パルミチン酸ドコシル、ステアリン酸ビニル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸ヘプタデシル、ステアリン酸オクタデシル、ステアリン酸ドコシル、ステアリン酸ヘキサコシル、ステアリン酸トリアコンチル、ベヘン酸ドデシル、ベヘン酸オクタデシル、ベヘン酸ドコシル、リグノセリン酸トラコシル、メリシン酸ミリシル等が挙げられる。
【0024】
化合物(B)を構成する高級アルキル基を有するケトンの具体例としては、例えば、8−ペンタデカノン、9−ヘプタデカノン、10−ノナデカノン、11−ヘンエイコサノン、12−トリコサノン、14−ヘプタコサノン、16−ヘントリアコンタノン、18−ペンタトリアコンタノン、22−トリテトラコンタノン、2−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、2−ヘプタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン等が挙げられる。
【0025】
化合物(B)を構成する二塩基酸エステルとしては、下記一般構造式(14)で表わされるジエステルが好ましい。
【化24】
ROOC−(CH2)n−COOR’ (14)
(14)式中、R,R’はアルキル基を表わし、このアルキル基の炭素数は1〜30が好ましく、1〜22がさらに好ましい。R,R’は同一であっても異なっていてもよい。nは、1〜30が好ましく、2〜20が更に好ましい。
【0026】
一般構造式(14)で表わされるジエステルの具体例としては、コハク酸ジエステル、アジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエステル、1,18−オクタデカメチレンジカルボン酸エステル等が挙げられる。
【0027】
化合物(B)を構成する有機低分子物質の多価アルコールジ脂肪酸エステルとしては、下記の一般構造式(15)で表わされるものが挙げられる。
【化25】
CH3(CH2)m−2COO(CH2)nOOC(CH2)m−2CH3(15)
(15)式中、nは2〜40、好ましくは3〜30、更に好ましくは4〜22である。mは2〜40、好ましくは3〜30、更に好ましくは4〜22である。
【0028】
一般構造式(15)で表わされる多価アルコールジ脂肪酸エステルの具体例としては、1,3プロパンジオールジアルカン酸エステル、1,6ヘキサンジオールジアルカン酸エステル、1,10デカンジオールジアルカン酸エステル、1,18オクタデカンジオールジアルカン酸エステルが挙げられる。
【0029】
化合物(B)を構成する脂肪酸モノアミドの具体例としては、例えば次の一般構造式(16)で示されるものが挙げられる。
【化26】
R1−CONH−R2 (16)
(16)式中、R1は炭素数1〜25の直鎖炭化水素鎖、R2は炭素数1〜26の直鎖炭化水素鎖、またはメチロール基、または水素であり、R1、R2の少なくともどちらか一方が炭素数10以上の直鎖炭化水素鎖である。
【0030】
一般構造式(16)で表わされる脂肪酸モノアミドの具体例としては、N−ラウリルラウリン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−ステアリルパルミチン酸アミド、N−ベヘニルパルミチン酸アミド、N−パルミチルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ベヘニルステアリン酸アミド、N−パルミチルベヘン酸アミド、N−ステアリルベヘン酸アミド、N−ベヘニルベヘン酸アミド等が挙げられる。
【0031】
化合物(B)を構成する脂肪族ウレア化合物の具体例としては、例えば次の一般構造式(17)で表されるものが挙げられる。
【化27】
R3−NHCONH−R4 (17)
(17)式中、R3、R4の少なくともどちらか一方は炭素数1〜26の直鎖炭化水素である。
【0032】
一般構造式(17)で表わされる脂肪族ウレア化合物の具体例としては、N−ブチル−N’−ステアリル尿素、N−フェニル−N’−ステアリル尿素、N−ステアリル−N’−ステアリル尿素、N−ベヘニル−N’−ステアリル尿素、N−ステアリル−N’−ベヘニル尿素、N−ベヘニル−N’−ベヘニル尿素等が挙げられる。
【0033】
本発明において、前記直鎖炭化水素含有化合物(B)を構成する直鎖炭化水素含有化合物の融点は、50℃以上100℃未満であることが好ましく、60℃以上95℃以下が更に好ましく、70℃以上90℃以下が特に好ましい。この融点が低すぎると画像耐熱性が低下し、高すぎると透明化温度幅が拡大できず、消去性が低下する。
【0034】
直鎖炭化水素含有化合物(A)と直鎖炭化水素含有化合物(B)の混合比は80:20〜1:99が好ましく、70:30〜3:97がより好ましく、60:40〜5:95が更に好ましく、50:50〜10:90が特に好ましい。化合物(B)の比率が高すぎると、透明化温度の中でも低温側では透明度が高くなり高温側では透明度が低くなるという透明度の差が生じ、均一に透明化できなくなる。また、直鎖炭化水素含有化合物(B)の比率が低すぎると、充分な透明性が得られなくなる。
【0035】
本発明の感熱層は、樹脂母材および樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とする。この感熱層に使用される樹脂母材は、有機低分子物質を均一に分散保持した層を形成すると共に、最大透明時の透明度に影響を与える材料である。このため樹脂母材は透明であることが良く、機械的に安定で、且つ成膜性の良い樹脂が好ましい。樹脂母材のガラス転移温度は50℃以上100℃未満が好ましく、60℃以上90℃未満がより好ましく、70℃以上85℃未満が更により好ましい。樹脂母材のガラス転移温度が低すぎると画像耐熱性が低下する。一方、ガラス転移温度が高すぎると消去性が低下する。
【0036】
本発明の感熱層を構成する樹脂母材は、ゲル化により硬化していることが好ましく、そのゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。ゲル分率値が小さいと繰り返し耐久性が低下する。ゲル分率を向上させるには、樹脂母材中に熱、UV、EBなどによって硬化する硬化性樹脂を混合するか、または樹脂母材自身を熱や電子線で架橋すればよい。
【0037】
本発明におけるゲル分率の測定は、支持体より測定対象となる試料を剥離してその試料初期重量を測定し、その後に試料400メッシュ金網に挾んで、架橋前の樹脂が可溶な溶剤中に24時間浸してから真空乾燥して、乾燥後の重量を測定し、下記(1)によって求める。
【0038】
【数1】
ゲル分率(%)=[乾燥後重量(g)/初期重量(g)]×100 (1)
【0039】
上記(1)式に基づくゲル分率の算出においては、感熱層中の樹脂成分以外の有機低分子物質粒子等の重量を除いて計算を行なう。この際、あらかじめ有機低分子物質重量がわからないときには、TEM、SEM等の断面観察により、単位面積あたりに占める面積比率と樹脂と有機低分子物質のそれぞれの比重により重量比率を求めて、有機低分子物質重量を算出して、ゲル分率値を算出すれば良い。
【0040】
また、上記測定の際に、支持体上に本発明の熱可逆記録材料が設けられている場合、即ち支持体上に感熱層が設けられている場合、さらに感熱層の上に保護層などの他の層が積層されている場合や支持体と感熱層の間に他の層がある場合には、前記したように、まず前記したTEM、SEM等の断面観察により感熱層及びその他の層の膜厚を調べておき、その他の層の膜厚分の表面を削り、感熱層表面を露出させると共に、感熱層を剥離して前記測定方法と同様にゲル分率測定を行なえばよい。またこの方法において感熱層上層に紫外線硬化樹脂等からなる保護層等がある場合には、この層が混入するのを極力防ぐために、保護層分の膜厚分を削ると共に感熱層表面も少し削りゲル分率値への影響を防ぐ必要がある。
【0041】
本発明の熱可逆記録材料が有する感熱層を構成する樹脂母材は、その少なくとも一部が架橋されていることが好ましい。感熱層が架橋された樹脂母材で構成されていると、印字と消去を繰り返しても感熱層内部の構造が変化しにくく、白濁度、透明度の低下がないなど繰り返し耐久性が向上する。樹脂母材を架橋する場合にはヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクロイル基などの官能基を有する樹脂を用いることが好ましい。架橋の方法としては、熱架橋、紫外線(UV)や電子線(EB)の照射による方法がある。
【0042】
上記樹脂母材を構成する架橋可能な官能基を有する樹脂としては、ポリ塩化ビニル;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリレート共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の塩化ビニリデン系共重合体;ポリエステル;ポリアミド;ポリアクリレート又はポリメタクリレート或いはアクリレート−メタクリレート共重合体;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で或いは2種以上混合して使用して良いことはもちろんである。
【0043】
本発明においては、ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂とイソシアネート化合物の組み合わせて樹脂母材とすることが好ましく、該イソシアネート化合物は鎖式イソシアネート化合物と環式イソシアネート化合物を混合して用いることが好ましい。鎖式イソシアネート化合物のみを用いた場合には、架橋された樹脂は通常柔軟になり消去性は向上するが、感熱層が柔らかすぎて繰り返し耐久性や画像耐熱性が低下するという欠点がある。逆に、環式イソシアネート化合物のみを用いた場合には、架橋された樹脂が剛直になり、繰り返し耐久性や画像耐熱性は向上するが、消去性が低下するという欠点がある。鎖式イソシアネート化合物と環式イソシアネート化合物を混合して用いることにより、消去性と耐久性、耐熱性を両立させることが可能になる。
【0044】
前記樹脂母材を構成する鎖式イソシアネート化合物としては、例えばトリオールなどの水酸基を有する鎖式化合物とヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系のイソシアネートを直接もしくは単数または複数のエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを介して反応させたものが挙げられる。鎖式イソシアネート化合物の分子量は500以上5000以下が好ましく、700以上4000以下がさらに好ましく、1000以上3000以下が特に好ましい。分子量が小さすぎると架橋された塗膜が柔軟な構造をとりにくくなるため消去性が低下し、分子量が大きすぎると分子が動きにくくなるため架橋度が低下し耐久性が低下する。1つのイソシアネート基当たりの分子量は250以上2000以下が好ましく、300以上1500以下がさらに好ましく、400以上1000以下が特に好ましい。1つのイソシアネート基当たりの分子量が小さすぎると架橋された塗膜が柔軟な構造をとりにくくなるため消去性が低下し、分子量が大きすぎると分子が動きにくくなるため架橋度が低下し耐久性が低下する。
【0045】
前記樹脂母材を構成する環式イソシアネート化合物とは、ベンゼン環もしくはイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物である。この中でもイソシアヌレート環を有するタイプは、黄変がないため好適に用いられる。環式イソシアネート化合物も環状構造以外にアルキレン鎖などの鎖状構造を有することが好ましい。環式イソシアネート化合物の分子量は、100以上1000未満が好ましく、200以上800未満がさらに好ましく、300以上700未満が特に好ましい。分子量が小さすぎると塗膜形成時の加熱によって蒸発して塗膜が架橋できなくなり耐久性が低下する。分子量が大きすぎると剛直な構造が形成できなくなり耐久性が低下する。
【0046】
鎖式イソシアネート化合物と環式イソシアネート化合物の混合比は、90:10〜10:90であることが好ましく、90:10〜30:70がさらに好ましく、80:20〜30:70が特に好ましい。鎖式イソシアネート化合物が多いほど消去率や最大消去傾斜が向上しひいてはコントラストの向上が可能になる。
【0047】
鎖式イソシアネート化合物と環式イソシアネート化合物の混合物は上記の材料を混合しても良いし、混合された商品を用いても良い。混合物の商品としては、例えば、日本ポリウレタン社製「コロネート 2298−90T」などがあるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の熱可逆記録材料を構成する感熱層の厚さは1〜30μmが好ましく、2〜20μmがさらに好ましい。感熱層が厚すぎると層内での熱の分布が発生し均一に透明化することが困難となる。また、感熱層が薄すぎると白濁度が低下しコントラストが低くなる。尚、感熱層中の有機低分子物質の量を増加させると白濁度を増すことができる。
【0049】
感熱層中の有機低分子物質と樹脂母材との割合は、重量比で2:1〜1:16程度が好ましく、1:2〜1:8が更に好ましい。樹脂母材の比率がこれ以下になると、有機低分子物質を樹脂中に保持した膜に形成することが困難となり、またこれ以上になると、有機低分子物質の量が少ないため、不透明化が困難になる。
【0050】
本発明における感熱層には以上の成分の他に、透明画像の形成を容易にするために、界面活性剤、可塑剤等の添加物を添加することができる。これらの添加物の具体例は次の通りである。可塑剤としては、リン酸エステル、脂肪酸エステル、フタル酸エステル、二塩基酸エステル、グリコール、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤が挙げられる。
【0051】
本発明における感熱層は、前述した構成により、その透明度が温度に依存して可逆的に変化する。具体的には、感熱層の透明状態と白濁不透明状態とが温度に依存して可逆的に変化する。この透明状態と白濁不透明状態との違いは次のようにして現れると推測される。
(I)透明の状態においては、樹脂母材中に分散された前記有機低分子物質の粒子と前記樹脂母材は隙間なく密着しており、また粒子部内にも空隙はなく、片側から入射した光は散乱されることなく反対側に透過するため透明に見える。
(II)白濁の状態においては、前記有機低分子物質の粒子が有機低分子物質の微細な結晶が集合した多結晶で構成され、結晶の界面若しくは粒子と樹脂母材の界面に隙間ができ、片側から入射した光は空隙と結晶、空隙と樹脂の界面で屈折、反射し、散乱されるため白く見える。
【0052】
次に、図1に基づいて、本発明の熱可逆記録材料を構成する感熱層に現れる温度−透明変化について説明する。図1は、該温度−透明変化の一例を判り易く説明するものである。
図1に示すように、樹脂母材とこの樹脂母材中に分散された有機低分子物質とを主成分とする感熱層は、T0以下の常温で白濁不透明状態にある。該感熱層を加熱していくと温度T1から徐々に透明になり始め、温度T2〜T3に加熱すると透明となり、この状態で再びT0以下の常温に戻しても透明のままである。これは温度T1付近から樹脂が軟化し始め、軟化が進むにつれ、樹脂が例えば収縮し樹脂と有機低分子物質粒子との界面若しくは粒子内の空隙を減少させるため、徐々に透明度が上がり、温度T2〜T3では有機低分子物質が半溶融状態となり、残った空隙を溶融した有機低分子物質が埋めることにより透明となり、種結晶が残ったまま冷却されると、比較的高温で結晶化し、その際樹脂がまだ軟化状態のため、結晶化にともなう粒子の体積変化に樹脂が追随するため、空隙ができず透明状態が維持されるためと考えられる。
【0053】
該感熱層を、さらにT4以上の温度に加熱すると、図1に示すように最大透明度と最大不透明度との中間の半透明状態になる。次に、感熱層の温度を下げていくと、再び透明状態をとることなく最初の白濁不透明状態に戻る。これは温度T4以上で有機低分子物質が完全に溶融した後、過冷却状態となり、T0より少し高い温度で結晶化し、その際、樹脂が結晶化にともなう体積変化に追随できず、空隙が発生するためであると考えられる。ただし、図1に示した温度−透明度変化曲線は代表的な例を示しただけであり、材料を変えることにより各状態の透明度等はその材料に応じて変化が生じることがある。
【0054】
このように、本発明における感熱層においては、その透明状態と白濁不透明状態とが温度に依存して可逆的に変化する。かかる感熱層は下記の三条件(条件1)〜(条件3)を満足することが好ましい。
(条件1)透明化上限温度(Ttu)が115℃以上
(条件2)透明化上限温度(Ttu)と白濁化下限温度(Tsl)の温度差(ΔTts)が20℃以下
(条件3)透明化温度幅(ΔTw)が30℃以上
【0055】
上記三条件(条件1)〜(条件3)を満足する感熱層は、透明化する温度幅が広く、環境温度が変化しても十分な画像消去性および高コントラストが得られ、かつ塩基性物質の存在下に保存されても充分な白濁度が得られる。該三条件を満足する感熱層は、前述したように直鎖炭化水素含有化合物(A)、直鎖炭化水素含有化合物(B)を適宜選択構成し、ゲル分率値を適宜調整することにより得ることができる。
【0056】
本発明において、上記透明化上限温度(Ttu)、白濁化下限温度(Tsl)、透明化上限温度(Ttu)と白濁化下限温度(Tsl)の温度差(ΔTts)、透明化温度幅(ΔTw)、さらに透明化開始温度(Tta)、透明化下限濃度(Dtm)は、下記のように求める。
【0057】
まず、白濁化された熱可逆記録材料を用意する。透明化された媒体や十分に白濁されていない媒体を用いる場合には、十分に加熱したホットプレートに媒体を押しあて加熱することによって、事前に熱可逆記録材料を白濁させる。加熱する時間は10秒〜30秒程度でよい。加熱する温度が白濁化するために十分な温度であることを確認するためは、その温度よりやや高い温度(例えば10℃高い温度)で再度加熱してみればよい。白濁度が両者で変わらなければ最初の加熱温度が白濁化するために十分に高い温度であったことになる。やや高い温度で加熱すると白濁度が高くなる場合は、最初の温度ではまだ温度が低いことを意味するので、加熱温度を上げて再度同じことを繰り返す必要がある。
【0058】
次に、この白濁化された熱可逆記録材料を温度を変えて加熱し、透明になる温度を調べる。熱可逆記録材料の加熱には熱傾斜試験機(東洋精機製HG−100)を用いる。この熱傾斜試験機は5つの加熱ブロックを持ち、各ブロックは個別に温度を設定でき、加熱時間、圧力をコントロールすることも可能であり、設定された条件で、一度に5つの異なる温度で媒体を加熱することができる。具体的には、加熱時間を1秒とし、加熱時の圧力は約2.5kg/cm2とし、加熱温度は、加熱しても白さが変化しない低温度から1〜5℃の等温度間隔で十分に白濁する温度まで加熱する。熱ブロックへの媒体の粘着を防ぐため、ポリイミドやポリアミドの薄い(10μm以下)フィルムを上にのせてもよい。そのように加熱した後、常温に冷却し、マクベスRD−914反射濃度計を用い、各温度で加熱した部分の濃度を測定し、図2のように横軸を熱傾斜試験機の設定温度、縦軸を反射濃度としたグラフを作成する。媒体が透明な支持体を用いている場合には、光を吸収するシートか、Alなどの金属を蒸着した光を正反射するシートを媒体の背面に敷いて濃度を測定する。グラフは各温度毎の濃度値をプロットした後、プロットした隣接点同士を直線で結ぶことにより完成される。作成されたグラフは通常図2のように台形状となる。
【0059】
これらのデータは、感熱層と支持体を合わせた媒体の厚みや材質によっても影響を受ける。媒体の厚みは300μm以下であれば厚みの影響は受けず、ほぼ同じデータが得られるが、それ以上の厚みの場合は、支持体側を削ったり、剥がしたりして厚みを300μm以下にすることにより測定する。
【0060】
このグラフから、前記の透明化上限温度(Ttu)や白濁化下限温度(Tsl)等を読み取り計算してゆく。
グラフを読む場合、最初にこのグラフの中で最大濃度値(Dmax)を読み取る。次にy=0.7×Dmaxの線を横軸に平行に引き、この線より高濃度のプロット点を選択する。このプロット点の数は5〜20点が好ましい。プロット点が少ないと、この後の計算結果が不確かなものとなる。プロット点の数が少ない場合には、前述の熱傾斜試験機での加熱の温度間隔を狭くし、数を増やすことが必要である。選択されたプロット点のうち、濃度値の大きいもの、濃度値の小さいものを各々同数だけ除外し、残ったものの濃度値を平均したものを平均透明濃度(Dtav)とする。濃度値の大きいもの、小さいものを除外する割合は選択されたプロット点のうち、各々10〜30%、好ましくは各々15〜25%である。このように濃度値が大きいものと小さいものを除外することにより、媒体の透明濃度の正確な値が算出できる。
【0061】
次に、透明化下限濃度(Dtm)を次の(3)式により算出する。
【数2】
Dtm=Dtav−0.2×(Dtav−Dmin) (3)
ここでDminは最大白濁濃度であり、温度を上げていって、隣接した3点のプロット点が濃度値0.3以内になったとき、その3点の濃度の平均値から算出される。Dtmはこの濃度以上であれば目視でほぼ透明に見える濃度を表わす。
【0062】
さらに、グラフ上にy=Dtmの線を引き、濃度温度曲線との交点の温度を求める。この交点のうち、低温側を透明化下限温度(Ttl)、高温側を透明化上限温度(Ttu)とする。透明化温度幅(ΔTw)は次の(4)式により求められる。
【数3】
ΔTw=Ttu−Ttl (4)
【0063】
また、白濁化上限濃度(Ds)は次の(5)式によって算出される。
【数4】
Ds=Dmin+0.1×(Dtav−Dmin) (5)
【0064】
次に、グラフ上にy=Dsの線を引き、濃度−温度曲線の透明から白濁へと変化する部分との交点の温度を白濁化下限温度(Tsl)とする。透明化上限温度(Ttu)と白濁化下限温度(Tsl)の温度差(ΔTts)は、次の(6)式で求められる。
【数5】
ΔTts=Tsl−Ttu (6)
【0065】
透明化開始濃度(Dta)は次の(7)式で求められる。
【数6】
Dta=Dmin+0.25×(Dtav−Dmin) (7)
【0066】
透明化開始温度(Tta)は、図2に示されるようにy=Dtaとグラフの交点から求められる。
透明化上限温度(Ttu)は、115℃以上であることが好ましい。透明化上限温度(Ttu)が高温になることにより、画像耐久性を低下させることなく、透明化温度幅の拡大が可能となる。透明化上限温度(Ttu)は120℃以上が好ましく、125℃以上が更に好ましく、130℃以上が特に好ましい。この温度が高くなるほど消去性が向上する。また、Ttuは170℃以下が好ましく、160℃以下が更に好ましく、150℃以下が特に好ましい。この温度が低いほど印字感度が向上する。
【0067】
透明化上限温度(Ttu)と白濁化下限温度(Tsl)の温度差(ΔTts)は20℃以下であることが好ましい。温度差(ΔTts)がこれより大きくなると、白濁になる温度が必要以上に高くなるため、白濁画像を形成する際、非常に高いエネルギーが必要となり、画像の記録と消去を繰り返すと媒体表面に傷がついたり、画像の白濁度が低下してしまう。温度差(ΔTts)は15℃以下が好ましく、10℃以下が更に好ましい。
【0068】
透明化開始温度(Tta)は、70℃以上95℃未満が好ましく、75℃以上90℃以下がさらに好ましく、75℃以上85℃以下が特に好ましい。透明化開始温度(Tta)が低いと消去性が向上し、高いと画像耐熱性が向上する。
【0069】
透明化温度幅(ΔTw)は30℃以上であることが好ましい。ΔTwがこれより小さくなると消去性が低下する。透明化温度幅(ΔTw)は35℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましく、45℃以上が特に好ましい。この温度幅が広い方が消去性が向上する。また透明化温度幅(ΔTw)は100℃以下が好ましく、90℃以下がさらに好ましく、80℃以下が特に好ましい。透明化温度幅(ΔTw)がより広くなると消去の際の処理速度が速くなっても均一な消去が可能になるという利点がある。この場合のΔTwは60℃以上が好ましく、70℃以上がさらに好ましい。
【0070】
本発明の熱可逆記録材料を作るには、まず例えば次の方法により支持体上に感熱層を形成する。場合によっては、支持体上を用いることなくシート状の可逆性感熱記録材料として成形することもできる。
【0071】
1)樹脂母材及び有機低分子物質を溶媒中に溶解し、これを支持体上に塗布し、溶媒を蒸発させ皮膜あるいはシート状にするとともに架橋するか、又はシート状とした後、架橋する方法。
2)樹脂母材のみを溶解させる溶媒に樹脂母材を溶解させ、その中に有機低分子物質を種々の方法で粉砕又は分散し、これを支持体上に塗布し、溶媒を蒸発させ皮膜あるいはシート状にするとともに架橋するか、又はシート状とした後、架橋する方法。
3)溶媒を用いず、樹脂母材と有機低分子物質を加熱溶融混合し、これを皮膜あるいはシート状に成形して冷却した後、架橋する方法。
【0072】
上記1)、2)の方法において用いる溶媒としては、樹脂母材及び有機低分子物質の種類によって種々選択できるが、例えばテトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0073】
このようにして得られた熱可逆記録材料はコーティング材料用としての高度な性能を発現させるために、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加して使用することもできる。本発明の熱可逆記録材料を用いて各種材料の表面に被膜を形成する際の塗装方法としては、噴霧コート法、ローラーコート法、バーコート法、エアナイフコート法、刷毛塗り法、ディッピング法等従来公知の方法を適宜選択して使用することができ、特に制約を受けるものではない。
【0074】
本発明における感熱層を構成する樹脂母材は、前述したように、加熱または紫外線を照射することにより硬化することが好ましく、紫外線若しくは電子線を照射することにより架橋させて硬化することが好ましい。
樹脂母材を硬化することにより、感熱層の硬度を向上させることができる。本発明における感熱層を、サーマルヘッド等を用い圧力を加え同時に加熱する場合には画像形成−消去を繰り返すうちに有機低分子物質粒子の周囲の樹脂母材が変形し、細かく分散された有機低分子物質粒子が次第に大きな径の粒子となり、光を散乱させる効果が少なくなり(白濁度が低下し)、ついには画像コントラストが低下する。感熱層の耐久性を向上させるには膜の硬さが重要であり、膜の硬さが強いほど耐久性が良好である。また加熱時(100〜140℃)の塗膜の硬さが硬い方がよい。膜の硬さを測定する方法としては、例えばNEC製の薄膜硬度計MHA−400で膜の硬度変化を測定する事ができる。
【0075】
上記紫外線硬化に用いる紫外線照射装置は、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置から構成されている。光源には水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプがあるが、前記した光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に対応した発光スペクトルを有する光源を使用すればよい。また紫外線照射条件については、樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度を決めればよい。
【0076】
前記感熱層を構成する樹脂を架橋するのに特に効果的な電子線照射法は以下のとおりである。まず、EB照射装置としては、走査形(スキャンビーム)あるいは非走査形(エリアビーム)の2種に大別できるが、照射面積、照射線量等の目的に応じて決めればよい。次に、EB照射条件については、樹脂を架橋するために必要な線量に応じて、電子流、照射幅、搬送スピードを考慮し下記(8)式から決められる。
【0077】
【数7】
D=(ΔE/ΔR)・η・I/(W・V) (8)
(8)式中、D:必要線量(Mrad)、ΔE/ΔR:平均エネルギー損失、η:効率、I:電子流(mA)、W:照射幅(cm)、V:搬送速度(cm/s)である。
【0078】
工業的には、(8)式を簡略化し、下記(9)式とし
【数8】
D・V=K・I/W (9)
装置定格をMrad・m/minで示す。電子流定格は、実験器では20〜30mA、パイロット機では50〜100mA、生産機では100〜500mA程度が選ばれる。
【0079】
本発明における感熱層においては、感熱層中の樹脂母材と有機低分子物質の粒子との界面及び/又は粒子中に樹脂母材及び有機低分子物質の粒子の屈折率と異なる空隙があると、白濁状態での画像濃度が向上し、コントラストが向上する効果がある。空隙の大きさが不透明状態を検知するために用いる光の波長の1/10以上であるとより効果が顕著である。
【0080】
本発明の熱可逆記録材料に形成される画像は透光画像及び反射画像として用いることができる。反射画像として用いる場合には、熱可逆記録材料の背面に光を反射する層を設けるのが望ましい。また、反射層があると熱可逆記録材料の厚みを薄くしてもコントラストを上げることができる。具体的にはAl、Ni、Sn等を蒸着することが挙げられる(特開昭64−14079号公報に記載)。
【0081】
また、本発明の熱可逆記録材料においては、感熱層を保護するために保護層を設けることが好ましい。保護層(厚さ0.1〜10μm)の材料としては、シリコーン系ゴム、シリコーン樹脂(特開昭63−221087号公報)、ポリシロキサングラフトポリマー(特願昭63−317385号明細書に記載)や紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂(特願平2−566号明細書に記載)等が挙げられる。いずれの場合も、塗布時に溶剤を用いるが、その溶剤は、感熱層を構成する樹脂母材ならびに有機低分子物質を溶解しにくいほうが望ましい。感熱層を構成する樹脂母材及び有機低分子物質を溶解しにくい溶剤としてn−ヘキサン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、特にアルコール系の溶剤がコスト面から望ましい。
【0082】
また、これら保護層は、感熱層の樹脂を硬化するのと同時に硬化させることも可能である。この場合には前記した方法により支持体上に感熱層を形成した後に、保護層を塗布、乾燥し、その後に電子線照射等を行ない、それぞれの層を硬化させればよい。このような保護層の厚さは0.5〜10.0μmが好ましい。これ以下の厚さでは感熱層を保護する硬化がなく、これ以上の厚さでは熱感度が低下する。
【0083】
更に、本発明の熱可逆記録材料においては、保護層形成液の溶剤やモノマー成分等から感熱層を保護するために、保護層と感熱層との間に中間層を設けることができる(特開平1−133781号公報に記載)。中間層の材料としては感熱層中の樹脂母材の材料として挙げたものの他に下記のような熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が使用可能である。即ち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド等が挙げられる。中間層の厚さは0.5〜10mくらいが好ましい。
【0084】
また、本発明の熱可逆記録材料を支持体と組み合わせる場合の層構成としては、実開平2−3876号公報に記載されているように支持体上に感熱層と磁性材料を主成分とする磁気記録層を有すると共に、少なくとも感熱層直下又は支持体の感熱層対応部分が着色されている層構成も挙げられる。または、特開平3−130188号公報に記載されているように、支持体上に磁気記録層、その上に光反射層、更にその上に感熱層が設けられているような層構成等も挙げられるが、この場合に磁気記録層は支持体裏面か、あるいは支持体と感熱層の間に設けているかのどちらでもよく、またこれらの他の層構成であっても何らさしつかえはない。
【0085】
また本発明の熱可逆記録材料においては、支持体と感熱層の間に視認性をよくするために着色層を設けることもできる。着色層は着色材及び樹脂バインダーを主成分とする溶液又は分散液を対象面に塗布、乾燥するか、或いは単に着色シートを貼り合わせることにより形成される。ここで着色剤としては上層の感熱層の透明及び白濁の変化を反射画像として認識できればよく、赤、黄、青、紺、紫、黒、茶、灰、橙、緑などの色を有する染料、顔料等が使用される。また、樹脂バインダーとしては各種熱可塑性、熱硬化性又は紫外線硬化性樹脂が使用される。
【0086】
上記着色剤及び樹脂バインダーとしては、まず着色剤として従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインキ中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられる。また、樹脂バインダーとしては各種の熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0087】
また本発明の熱可逆記録材料を支持体上に形成する場合、支持体と感熱層との間に、空気を有する非密着部である空気層を設けることができる。空気層を設けると、感熱層の主成分として用いられた有機高分子材料(樹脂母材)の屈折率が1.4〜1.6程度で、空気の屈折率1.0との差が大きいため、感熱層と非密着部との界面で光が反射し、感熱層が白濁状態のとき白濁度が増幅され、視認性が向上するので、この非密着部位を表示部として用いることが望ましい。非密着部位は非密着部の内部に空気を有するため、その非密着部が断熱層となり、感熱度が向上する。更に、非密着部位はクッションの役目もなし、サーマルヘッドで圧力をかけて押さえつけても実際に感熱部材に加わる圧力は低くなり、熱を加えても感熱層の変形は少なく、有機低分子物質粒子の拡大もなく、繰り返し耐久性が向上する。
【0088】
また本発明の熱可逆記録材料においては、前記保護層の上に耐熱性樹脂と無機顔料からなるヘッドマッチング層を設けることが好ましい。該ヘッドマッチング層に用いられる耐熱性樹脂としては、前記した保護層中に用いられる耐熱性樹脂と同じものが好ましく用いられる。また、無機顔料としては炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、タルク等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。これらの無機顔料の粒径は0.01〜10.0μmが好ましく、より好ましくは0.05〜8.0μmである。またこれらの無機顔料はヘッドマッチング層中に単独でまたは2種以上混合して使用されるが、添加量としては耐熱性樹脂1重量部に対して0.001〜2重量部が好ましく、更に好ましくは0.005〜1重量部である。また、本発明において前記保護層、ヘッドマッチング層中に含まれる樹脂を紫外線により硬化させる場合には、前記した感熱層の樹脂を紫外線架橋させるために用いた架橋剤、光重合開始剤、光重合促進剤を用いればよい。
【0089】
本発明の熱可逆記録材料においては、熱を選択的に与えることにより感熱層を選択的に加熱し、透明地に白濁画像、白濁地に透明画像を形成することができ、その変化は何回も繰り返しすることが可能である。そして、このような感熱層の背面に着色シートを配置すれば、白地に着色シートの色の画像又は着色シートの色の地に白地の画像を形成することができる。また、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)などで投影すれば、白濁部は暗部になり、透明部は光が透過しスクリーン上では明部となる。
【0090】
本発明の熱可逆記録材料に画像表示を行うための感熱記録画像表示装置として多種多様なものが挙げられるが、その代表的なものは感熱層に画像形成・消去を行うための画像形成手段と画像消去手段が同一の発熱体、例えばサーマルヘッドで、サーマルヘッドに印加するエネルギーを変化させることにより画像処理を行うことができる感熱記録画像表示装置、または、画像形成手段がサーマルヘッドであり、画像消去手段がサーマルヘッド、セラミックヒータ(アルミナ基板上に発熱抵抗体をスクリーン印刷した発熱体)、ホットスタンプ、ヒートローラ、ヒートブロック等の発熱体を接着させる接触押圧型手段か、あるいは温風や赤外線などを用いた非接触型手段のうち一つから選択される感熱記録画像表示装置がある。
【0091】
本発明の熱可逆記録材料は、支持体上に形成し、該支持体の感熱層が形成されている面とは反対の面に、接着剤層または粘着剤層を設けて熱可逆記録ラベルとすることが好ましい。接着剤層または粘着剤層の材料は一般的に使われているものが使用可能である。具体例としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリーコン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
接着剤層または粘着剤層の材料はホットメルトタイプでも良い。また剥離紙を用いても良いし、無剥離紙タイプでも良い。
【0092】
このように接着剤層または粘着剤層を設けることにより、感熱層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカードなどの厚手の基板の全面もしくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着剤層または粘着剤層を設けた熱可逆記録ラベルは、前述の磁気ストライプ付塩ビカードだけでなく、ICカードや光カードなどの厚手カードにも適用できる。
【0093】
また、これらの熱可逆記録ラベルはフロッピー・ディスクやMDやDVD−RAMなどの記録情報が書換可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ上の表示ラベルの替わりとして用いることができる。図3に、本発明の熱可逆記録ラベルをMDのディスクカートリッジ上に貼着した例を示す。さらに、CD−RWなどのディスクカートリッジを用いないディスクの場合には、直接ディスクに熱可逆記録ラベルを貼ることもできる。それらの記憶内容の変更に応じて自動的に表示内容を変更するなどの用途への応用が可能である。図4に、本発明の熱可逆記録ラベルをCD−RW上に貼着した例を示す。CR−Rなどの追記型ディスク上に熱可逆記録ラベルを貼着して、CD−Rに追記した記憶情報の一部を替換え表示することも可能である。
【0094】
図5は、AgInSbTe系の相変化形記憶材料を用いた光情報記録媒体(CD−RW)上に熱可逆記録ラベルを貼着した構成の例である。基本的な構成は、案内溝を有する基体上に第一誘電体層、光情報記億層、第二誘電体層、反射放熱層、中間層が設けられ、基体の裏面にハードコート層を有する。さらに中間層上に熱可逆記録ラベルが貼付されている。誘電体層は必ずしも記録層の両側に設ける必要はないが、基体がポリカーボネート樹脂のように耐熱性が低い材料の場合には第一誘電体層を設けることが望ましい。
【0095】
本発明の熱可逆記録ラベルは、図6に示すようにビデオテープカセットの表示ラベルとして用いても良い。
【0096】
厚手カード、ディスクカートリッジやディスク上に熱可逆記録機能を設ける方法としては上述の熱可逆記録ラベルを貼る方法以外に、それらの上に感熱層を直接塗布する方法や、あらかじめ別の支持体上に感熱層を形成しておき、厚手カード、ディスクカートリッジやディスク上に感熱層を転写する方法などがある。転写する場合には、感熱層上にホットメルトタイプなどの接着層や粘着層を設けておいても良い。厚手カード、ディスク、ディスクカートリッジ、テープカセットなどのように剛直なものの上に熱可逆記録ラベルを粘着したり、感熱層を設ける場合には、サーマルヘッドとの接触性を向上させ画像を均一に形成するために弾力があり、クッションとなる層もしくはシートを剛直な基体とラベルもしくは感熱層の間に設けることが好ましい。
【0097】
例えば本発明の熱可逆記録材料は、図7aに示されるように、支持体(11)上に、感熱層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルムや、図7bに示されるように、支持体(11)上に、アルミ反射層(12)、感熱層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルムや、図7cに示されるように、支持体(11)上に、アルミ反射層(12)、感熱層(13)、保護層(14)を設け支持体(11)の裏面に磁気記録層(16)を設けてなるフィルムを、図8に示されるように、印刷表示部(23)を有するカード(21)に加工した形であることができる。
【0098】
本発明においては、前記可逆表示可能な感熱層と情報記憶部の両方を同一のカードに設け、情報記憶部に記憶させた情報の一部を感熱層に表示することにより、カード所有者等は特別な装置がなくてもカードを見るだけで情報を確認することができ、利便性が向上する。情報記憶部は必要な情報を記億できるものなら何でもよいが、磁気記録、IC、非接触IC、光メモリが好ましい。磁気記録層としては通常用いられる酸化鉄、バリウムフェライト等と塩ビ系やウレタン系或いはナイロン系樹脂等を用い、支持体に塗工形成されるか、または蒸着・スパッタリング等の方法により樹脂を用いず形成される。磁気記録部は支持体の感熱層の反対面に設けてもよいし、支持体と感熱層の間、感熱層の一部に設けてもよい。また、表示に用いる可逆感熱材料をバーコード、2次元コード等により記憶部に用いてもよい。これらの中では磁気記録、ICが更に好ましい。
【0099】
さらに本発明においては、例えば図9aに示されるように、支持体(11)上に、アルミ反射層(12)、感熱層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルムをカード状に加工し、ICチップを納める窪み部(23)を形成するとともにカード状に加工した形であることができる。この例においては、カード状の熱可逆記録媒体に書き換え記録部(24)がラベル加工されるとともに、熱可逆記録媒体の裏面側には所定箇所にICチップ埋め込み用窪み部(23)が形成されており、この窪み部(23)に、図9bに示されるようなウェハ(231)が組込まれて固定される。ウェハ(231)は、ウェハ基板(232)上に集積回路(233)が設けられると共に、この集積回路(233)に電気的に接続されている複数の接触端子(234)がウェハ基板(232)に設けられる。この接触端子(234)はウェハ基板(232)の裏面側に露出しており、専用のプリンタ(リーダライタ)がこの接触端子(234)に電気的に接触して所定の情報を読み出したり書き換えたりできるように構成されている。この熱可逆記録カードの機能例を図10を参照しつつ説明する。
【0100】
図10(a)は、集積回路(233)を示す概略の構成ブロック図であり、(b)はRAMの記憶データの1例を示す構成ブロック図である。集積回路(233)は、例えばLSIで構成されており、その中には制御動作を所定の手順で実行することのできるCPU(235)と、CPU(235)の動作プログラムデータを格納するROM(236)と、必要なデータの書き込み及び読み出しができるRAM(237)を含む。さらに集積回路(233)は、入力信号を受けてCPU(235)に入力データを与えるとともにCPU(235)からの出力信号を受けて外部に出力する入出力インターフェース(238)と、図示していないが、パワーオンリセット回路、クロック発生回路、パルス分周回路(割込パルス発生回路)、アドレスデコーダ回路とを含む。CPU(235)は、パルス分周回路から定期的に与えられる割込パルスに応じて、割込制御ルーチンの動作を実行することが可能となる。また、アドレスデコード回路はCPU(235)からのアドレスデータをデコードし、ROM(236)、RAM(237)、入出力インターフェース(238)にそれぞれ信号を与える。入出力インターフェース(238)には、複数(図中では8個)の接触端子(234)が接続されており、前記の専用プリンタ(リーダライタ)からの所定データがこの接触端子(234)から入出力インターフェース(238)を介してCPU(235)に入力される。CPU(235)は、入力信号に応答して、かつROM(236)内に格納されたプログラムデータに従って、各動作を行い、かつ、所定のデータ、信号を入出力インターフェース(238)を介してカードリーダライタに出力する。
【0101】
図10(b)に示されるように、RAM(237)は複数の記憶領域(239a)〜(239f)を含む。例えば領域(239a)にはカード番号が記憶され、(239b)には例えばカード所有者の氏名、住所、電話番号等のIDデータが記憶され、領域(239c)には例えば所有者の使用しうる残存有価価値又は有価物に相当する情報が記憶され、領域(239d)(239e)(239f)及び(239g)には使用済の有価価値又は有価物に相当する情報が記憶される。
【0102】
本発明の本発明の熱可逆記録材料を用いた画像の記録と消去の方法及び装置について以下に述べる。
画像の記録はサーマルヘッド、レーザ等、媒体を画像上に部分的に加熱可能である画像記録手段が用いられる。画像の消去は、ホットスタンプ、セラミックヒータ、ヒートローラ、熱風等や、サーマルヘッド、レーザ等の画像消去手段が用いられる。この中ではセラミックヒータが好ましく用いられる。セラミックヒータを用いることにより、装置が小型化でき、かつ安定した消去状態が得られ、コントラストのよい画像が得られる。セラミックヒータの設定温度は95℃以上が好ましく、100℃以上が更に好ましく、105℃以上が特に好ましい。
【0103】
また、画像消去手段としてサーマルヘッドを用いることにより、更に装置全体の小型化が可能となり、また、消費電力を低減することが可能であり、バッテリー駆動のハンディタイプの装置も可能となる。記録用と消去用を兼ねて一つのサーマルヘッドとすれば、更に小型化が可能となる。一つのサーマルヘッドで記録と消去を行なう場合、一度前の画像を全部消去した後、あらためて新しい画像を記録してもよいし、画像毎にエネルギーを変えて一度に前の画像を消去し、新しい画像を記録していくオーバーライト方式も可能である。オーバーライト方式では記録と消去を合わせた時間が少なくなり、記録のスピードアップにつながる。熱可逆記録材料と情報記憶部を有するカードを用いる場合、上記の装置には情報記憶部の記憶を読み取る手段と書き換える手段も含まれる。
【0104】
図11には、本発明の熱可逆記録材料を用いた熱可逆性記録装置の具体例を示す。
図11aは、本発明により面像の消去をセラミックヒータで、画像の形成をサーマルヘッドでそれぞれ行う場合の装置の概略例を示す。図11aの熱可逆性記録装置においては、最初、記録媒体の磁気記録層に記億された情報を磁気ヘッドで読み取り、つぎにセラミックヒータで感熱層に記録された画像を加熱消去し、さらに、磁気ヘッドで読み取られた情報をもとにして、処理された新たな情報がサーマルヘッドにより、感熱層に記録される。その後、磁気記録層の情報も新たな情報に書き替えられる。
【0105】
すなわち、図11aの熱可逆性記録装置においては、感熱層の反対側に磁気記録層を設けた熱可逆記録材料(1)は往復の矢印で図示されている搬送路に沿って搬送され、或いは搬送路に沿って装置内を逆方向に搬送される。熱可逆記録材料(1)は、磁気ヘッド(34)と搬送ローラ(31)間で磁気記録層に磁気記録或いは記録消去され、セラミックヒータ(38)と搬送ローラ(40)間で画像消去のため加熱処理され、サーマルヘッド(53)及び搬送ローラ(47)間で画像形成され、その後、装置外に搬出される。先に説明したように、セラミックヒータ(38)の設定温度は95℃以上が好ましく、110℃以上が更に好ましく、105℃以上が特に好ましい。ただし磁気記録の書きかえはセラミックヒータによる画像消去の前であっても後であってもよい。また、所望により、セラミックヒータ(38)と搬送ローラ(40)間を通過後、又はサーマルヘッド(53)及び搬送ローラ(47)間を通過後、搬送路を逆方向に搬送され、セラミックヒータ(38)よる再度の熱処理、サーマルヘッド(53)による再度の印字処理を施すことができる。
【0106】
図11bの熱可逆性記録装置においては、出入口(30)から挿入された熱可逆記録材料(1)は一点破線で図示されている搬送路(50)に沿って進行し、或いは搬送路(50)に沿って装置内を逆方向に進行する。出入口(30)から挿入された熱可逆記録材料(1)は、搬送ローラ(31)及びガイドローラ(32)により記録装置内を搬送され、搬送路(50)の所定位置に到達するとセンサ(33)により制御手段(34c)を介してその存在を認識され、磁気ヘッド(34)とプラテンローラ(35)間で磁気記録層に磁気記録或いは記録消去され、ガイドローラ(36)及び搬送ローラ(37)間を通過し、ガイドローラ(39)及び搬送ローラ(40)間を通過し、センサ(43)により、セラミックヒータ制御手段(38c)を介してその存在を認識して作動するセラミックーヒータ(38)とプラテンローラ(44)間で画像消去のため加熱処理され、搬送ローラ(45)(46)(47)により搬送路(50)内を搬送され、所定位置にてセンサ(51)により、サーマルヘッド制御手段(53c)を介してその存在を認識して作動するサーマルヘッド(53)及びプラテンローラ(52)間で画像形成され、搬送路(56a)から搬送ローラ(59)及びガイドローラ(60)により出口(61)を経て装置外に搬出される。ここで、セラミックヒータ(38)の設定温度は、先に説明したように、95℃以上が好ましく、100℃以上が更に好ましく、105℃以上が特に好ましい。
【0107】
また、所望により、搬送路切換手段(55a)を切り替えることにより搬送路(56b)に導き、熱可逆記録材料(1)の押圧により入力するリミットスイッチ(57a)の作動により逆方向に動く搬送ベルト(58)によって、熱可逆記録材料(1)を再度、サーマルヘッド(53)及びプラテンローラ(52)間で熱処理した後、搬送路切換手段(55b)を切り替えることにより通じる搬送路(49b)、リミットスイッチ(57b)、搬送ベルト(48)を介して順方向に搬送し、搬送路(56a)から搬送ローラ(59)及びガイドローラ(60)により出口(61)を経て装置外に搬出することができる。さらに、このような分岐した搬送路及び搬送切換手段は、セラミックヒータ(38)の両側に設けることもでき、その場合にはセンサ(43a)をプラテンローラ(44)と搬送ローラ(45)の間に設けることが望ましい。
【0108】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明する。ここでの部及び%はいずれも重量基準である。
【0109】
実施例1
大日本インキ工業社製磁気原反(メモリディック DS−1711−1040:188μm厚の透明PETフィルム上に磁気記録層及びセルフクリーニング層を塗工したもの)のPETフィルム側に約400ÅのAlを真空蒸着して光反射層を設けた。その上に、
よりなる溶液を塗布、加熱乾燥し、約0.5μm厚の接着層を設けた。
【0110】
次に、塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン社製、M110)26部をメチルエチルケトン210部に溶解した樹脂溶解液中に
【化28】
を加え、ガラス瓶中に直径2mmのセラミックビーズを入れて、ペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)を用い48時間分散し、均一な分散液を作成した。その分散液にイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネート2298−90T)4部を加え感熱層形成液を作成し、前記の磁気記録層を有するPETフィルムの接着層上に加熱乾燥した後、さらに65℃環境下に24時間保存し樹脂を架橋させ、約10μm厚の感熱層を設けた。
【0111】
この感熱層上に、
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂の75%酢酸ブチル溶液
(大日本インキ化学工業社製、ユニディックC7−157) 10部
イソプロピルアルコール 10部
よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥後、80w/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射し、硬化させ、約3μm厚の保護層を設け、熱可逆記録材料を作成した。
【0112】
実施例2
下記構造式(7)の化合物を用いて直鎖炭化水素含有化合物(A)を構成した以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録材料を作成した。
【化29】
【0113】
実施例3
下記構造式(8)の化合物を用いて直鎖炭化水素含有化合物(A)を構成した以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録材料を作成した。
【化30】
【0114】
実施例4
下記構造式(9)の化合物を用いて直鎖炭化水素含有化合物(A)を構成した以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録材料を作成した。
【化31】
【0115】
実施例5
下記構造式(10)の化合物を用いて直鎖炭化水素含有化合物(A)を構成した以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録材料を作成した。
【化32】
【0116】
実施例6
下記構造式(11)の化合物を用いて直鎖炭化水素含有化合物(A)を構成した以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録材料を作成した。
【化33】
【0118】
実施例8
下記構造式(13)の化合物を用いて直鎖炭化水素含有化合物(A)を構成した以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録材料を作成した。
【化35】
【0119】
実施例9
ベヘン酸ドコシルの代わりに、エタノールアミンジステアレート(日本化成(株)製、スリエイドS)を用いて直鎖炭化水素含有化合物(B)を構成した以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録材料を作成した。
【0120】
実施例10
ベヘン酸ドコシルの代わりに、ジヘプタデシルケトン(日本化成(株)製、ワックスKS)を用いて直鎖炭化水素含有化合物(B)を構成した以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録材料を作成した。
【0121】
実施例11
約50μm厚のAl蒸着ポリエステルフィルム(東レ社製、♯50メタルミー)のAl蒸着面上に、実施例1と同様に接着層、感熱層、保護層を形成した。さらに、支持体の感熱層が設けられている面と反対の面に、約5μmのアクリル系粘着剤層を設け、熱可逆記録ラベルを作製した。
このラベルを図4のようにドーナッツ状にして図5のようにCD−RW上に貼り合わせて可逆表示機能付きの光情報記録媒体を作製した。上記のように作製した光情報記録媒体を用い、CD−RWドライブ((株)リコー製 MP6200S)で記憶した情報の一部(年月日、時刻など)を、記録手段(サーマルヘッド)と消去手段(セラミックヒーター)を有する記録装置を用いて、サーマルヘッドの記録エネルギーをそれぞれの媒体の記録温度の変化に合わせて調整して感熱層へ表示記録し、可視化した。また、該ドライブを用い、光情報記録媒体の記憶層の情報を書き換え、記録装置により消去手段を用い、先の記録を消去し新たにサーマルヘッドで、書き換えた情報を感熱層に書き換え、表示記録した。さらに、この表示記録の書き換えを100回繰り返したが、記録および消去は可能であった。
【0122】
実施例12
実施例11の熱可逆記録ラベルを図3に示すようにミニディスク(MD)ディスクカートリッジ上に貼り付けた。MDに記憶された情報の一部(年月日、曲名など)を、記録手段(サーマルヘッド)と消去手段(セラミックヒーター)を有する記録装置を用いて、サーマルヘッドの記録エネルギーをそれぞれの媒体の記録温度の変化に合わせて調整して感熱層へ表示記録し、可視化した。さらに、この表示記録の書き換えを100回繰り返したが、記録および消去は可能であった。
【0123】
比較例1
感熱層の塗工溶液を下記のとおり変更する以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録材料を作製した。
ベヘン酸(SIGMA社製試薬、純度99%) 5部
エイコサン二酸(岡村製油社製、SL−20−90) 5部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 38部
(ユニオンカーバイト社製、VYHH)
テトラヒドロフラン 210部
トルエン 20部
【0124】
比較例2
感熱層の塗工溶液を下記のとおり変更する以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。ここで形成された感熱層は、表面に白色の粒子が目立ち均一性の悪いものであった。
ベヘン酸ドコシル(シグマ社製、試薬) 9.5部
エチレンビスベヘン酸アミド 0.5部
(日本化成社製、スリパックスB)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 30部
(ユニオンカーバイト社製、VYHH)
テトラヒドロフラン 160部
【0125】
以上のようにして作成した媒体(実施例1〜12、比較例1、2)を用い、下記の評価を行った。
【0126】
(1)コントラスト
前記のようにして得られた媒体をあらかじめ透明化しておき、九州松下電器製の印字消去機能付磁気カードリーダライタ(KU−R−3001FA)を用いて、サーマルヘッドの印字エネルギー値を0.47mJ/dotに設定して熱印加を行い、室温まで冷却して、マクベス反射濃度計で反射濃度測定を行い、これを初期画像濃度とした。
次に同じ装置を用いて、前記エネルギー値にて媒体に白濁画像を形成した後に、セラミックヒータの消去温度値を98℃に設定して熱印加を行い、室温まで冷却して、マクベス反射濃度計で反射濃度測定を行い、これを初期消去濃度とした。
次に上記により求めた初期画像濃度、初期消去濃度により初期コントラスト(初期消去濃度−初期画像濃度)を算出した。結果をまとめて表1に示す。
【0127】
(2)耐アンモニア性
あらかじめ透明化された媒体を炭酸アンモニウム8%水溶液中に48時間浸漬した後に、前記のコントラストで用いた同じ装置、及び同じ方法にて画像濃度、消去濃度を測定し、これらを試験後画像濃度、試験後消去濃度とした。
次に上記により求めた試験後画像濃度、試験後消去濃度により試験後コントラスト(試験後消去濃度−試験後画像濃度)を算出した。結果をまとめて表1に示す。
【0128】
(3)透明化上限温度(Ttu)、白濁化下限温度(Tsl)、透明化上限温度と白濁化下限温度の温度差(ΔTts)、透明化下限温度(Ttl)、透明化温度幅(ΔTw)
前記した測定方法を用いて、Ttu、Tsl、ΔTts、Ttl、ΔTwを測定した。結果をまとめて表2に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【発明の効果】
本発明の熱可逆記録材料を構成する感熱層は、特定の直鎖炭化水素含有化合物(A)と特定の直鎖炭化水素含有化合物(B)からなり、該直鎖炭化水素含有化合物(B)を構成する各々の化合物の融点が、直鎖炭化水素含有化合物(A)を構成する各々の化合物の融点よりも20℃以上低いので、透明化する温度幅が広く、環境温度が変化しても十分な画像消去性および高コントラストが得られ、かつ塩基性物質の存在下に保存されても充分な白濁度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る熱可逆記録材料による透明度の変化を表した図である。
【図2】本発明に係る熱可逆記録材料の透明化上限温度、白濁化下限温度、透明化開始温度、透明化温度幅を説明する図である。
【図3】熱可逆記録ラベルをMDのディスクカートリッジ上に貼った例を示す図である。
【図4】熱可逆記録ラベルをCD−RW上に貼った例を示す図である。
【図5】AgInSbTe系の相変化形記憶材料を用いた光情報記録媒体(CD−RW)上に熱可逆記録ラベルを形成した構成の例を示す図である。
【図6】ビデオテープカセットの表示ラベルを示す図である。
【図7】本発明に係る熱可逆記録材料の層構成例を示す図である。
【図8】本発明に係る熱可逆記録材料の1例を説明する図である。
【図9】本発明に係る熱可逆記録材料の別の1例を説明する図である。
【図10】本発明に係る熱可逆記録材料の使用例を説明する図である。
【図11】本発明に係る熱可逆記録装置の1例を説明する図である。
Claims (17)
- 樹脂母材および該樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を有する熱可逆記録材料において、該有機低分子物質が、下記一般構造式(1)乃至(3)及び(5)の化合物から選択された少なくとも一種からなる直鎖炭化水素含有化合物(A)と、カルボキシル基を有さない少なくとも一種の直鎖炭化水素含有化合物からなる直鎖炭化水素含有化合物(B)とからなり、該化合物(B)を構成する各々の直鎖炭化水素含有化合物の融点が、該化合物(A)を構成する各々の直鎖炭化水素含有化合物の融点より20℃以上低いことを特徴とする熱可逆記録材料。
- 該直鎖炭化水素含有化合物(A)を構成する各々の直鎖炭化水素含有化合物の融点が100℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の層状の熱可逆記録材料。
- 該直鎖炭化水素含有化合物(B)を構成する各々の直鎖炭化水素含有化合物の融点が50℃以上100℃未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可逆記録材料。
- 該直鎖炭化水素含有化合物(A)と直鎖炭化水素含有化合物(B)の混合比が80:20〜1:99であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可逆記録材料。
- 該直鎖炭化水素含有化合物(B)が、脂肪酸エステル、高級アルキル基を有するケトン、二塩基酸エステル、多価アルコールジ脂肪酸エステル、脂肪族モノアミド化合物、脂肪族モノウレア化合物から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可逆記録材料。
- 該樹脂母材のゲル分率値が30%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱可逆記録材料。
- 該樹脂母材の少なくとも一部が架橋されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱可逆記録材料。
- 下記の三条件を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の熱可逆記録材料。
(条件1)透明化上限温度(Ttu)が115℃以上
(条件2)透明化上限温度(Ttu)と白濁化下限温度(Tsl)の温度差(ΔTts)が20℃以下
(条件3)透明化温度幅(ΔTw)が30℃以上 - 請求項1〜8のいずれかに記載の熱可逆記録材料が支持体上に形成され、該支持体の感熱層が形成されている面とは反対の面に、接着剤層または粘着剤層が設けられていることを特徴とする熱可逆記録ラベル。
- 情報記憶部と可逆表示部を有し、該可逆表示部が請求項1〜8のいずれかに記載の熱可逆記録材料からなることを特徴とする情報記憶表示部材。
- 情報記憶部を有する部材に可逆表示部が設けられたことを特徴とする請求項10に記載の情報記憶表示部材。
- 該情報記憶部を有する部材が、カード、ディスク、ディスクカートリッジ又はテープカセットのいずれかであることを特徴とする請求項11に記載の情報記憶表示部材。
- 該可逆表示部が、請求項9に記載の熱可逆記録ラベルであることを特徴とする請求項11又は12に記載の情報記憶表示部材。
- 請求項1〜8に記載の熱可逆記録材料、請求項9に記載の熱可逆記録ラベル、又は請求項10〜14に記載の情報記憶表示部材のいずれかを用いて、加熱により画像の形成及び/又は消去を行うことを特徴とする画像処理方法。
- サーマルヘッドを用いて画像を形成することを特徴とする請求項14に記載の画像処理方法。
- サーマルヘッド又はセラミックヒータを用いて画像を消去することを特徴とする請求項14に記載の画像処理方法。
- サーマルヘッドを用いて画像をオーバーライトし、該画像の消去と新しい画像の記録を行うことを特徴とする請求項14に記載の画像処理方法。
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