JP3656703B2 - 熱可逆記録媒体及びカードとその製造方法と画像処理方法及び装置 - Google Patents

熱可逆記録媒体及びカードとその製造方法と画像処理方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱層の温度による可逆的な透明度変化を利用して、画像の形成及び消去を何度でも繰り返して行なうことのできる熱可逆記録媒体、カード及び熱可逆記録媒体の製造方法及び記録、消去方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、一時的な画像表示が行なえ、不要となったときにはその画像の消去ができ、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を有する熱可逆記録媒体が注目されている。その代表的なものとしては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂母材中に高級脂肪酸等の有機低分子物質を分散した熱可逆記録媒体が知られている(特開昭55−154198号公報)。しかし、従来の熱可逆記録媒体は、透光、透明性を示す温度範囲の幅が2〜4℃と狭い欠点があり、透光・透明性や遮光・白濁性を利用して画像を形成する際の温度制御に難があった。
【0003】
この点を考慮して、本発明者らは、特開平2−1363号公報、特開平3−2089号公報において、高級脂肪酸と脂肪族ジカルボン酸を混合して用いることにより、透明になる温度範囲を20℃前後まで広げ、画像を消去(透明化)することを容易にできることを明らかにした。また、消去性をさらに向上させるために高級脂肪酸より融点の低い高級ケトンや脂肪酸エステルと脂肪族ジカルボン酸や飽和脂肪族ビスアミドを混合して用い、透明化温度幅を広げることが提案されている(特開平4−366682号公報、特開平5−77549号公報、特開平5−294062号公報、特開平6−255247号公報)。これらは、透明化温度の幅が広がり消去性が向上するものの、溶剤溶解性が低いため記録層の内部では数十μm以上の大きな粒子となり、透明化温度に加熱されても十分な透明性が得られないという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、このような現状に鑑み、透明化する温度幅を広げ、環境温度が変化しても十分な透明性ひいては十分なコントラストが得られ、且つ印字消去の繰り返しによっても消去性が低下しない熱可逆性記録媒体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、本発明の(1)「支持体上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を設けた熱可逆記録媒体において、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合して用いることを特徴とする熱可逆記録媒体」、(2)「直鎖炭化水素含有化合物(B)の融点が50℃以上且つ100℃未満であることを特徴とする前記(1)項に記載の熱可逆記録媒体」、(3)「直鎖炭化水素含有化合物(A)として、尿素結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物を用いることを特徴とする前記(1)または(2)項に記載の熱可逆記録媒体」、(4)「直鎖炭化水素含有化合物(A)として、スルホニル結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物を用いることを特徴とする前記(1)または(2)項に記載の熱可逆記録媒体」、(5)「直鎖炭化水素含有化合物(A)として、アミド結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物を用いることを特徴とする前記(1)または(2)項に記載の熱可逆記録媒体」、(6)「直鎖炭化水素含有化合物(B)が、脂肪族モノカルボン酸、脂肪酸エステル、高級アルキル基を有するケトン、二塩基酸エステル、多価アルコールジ脂肪酸エステル、脂肪族アミド化合物、脂肪族ウレア化合物から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする前記(1)乃至()項のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体」、(7)「前記樹脂母材が架橋されたものであることを特徴とする前記(1)乃至(6)項のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体」により達成される。
【0006】
さらに、前記目的は、本発明の()「前記(1)乃至()項のいずれか1に記載の感熱層と情報記録部を有し、カード状であることを特徴とする熱可逆記録媒体」、()「該情報記録部が磁気記録層、IC、光メモリから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする前記()項に記載の熱可逆記録媒体」により達成される。
【0007】
また、前記目的は、本発明の(10)「支持体上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を設けた熱可逆記録媒体の製造方法において、樹脂溶液中に1種以上の前記有機低分子物質を固体状態で分散した分散液を支持体上に塗布し加熱乾燥させ、該加熱乾燥時に前記有機低分子物質が分散溶媒に溶解し感熱層を形成する段階を有し、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合したものが用いられることを特徴とする前記(1)乃至()項のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体を製造する方法」により達成される。
【0008】
さらにまた、前記目的は、本発明の(11)「前記(1)乃至()項のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体を用い、加熱により画像の記録と消去を行なう熱可逆記録媒体の画像処理方法」、(12)「セラミックヒータにより画像を消去することを特徴とする前記(11)項に記載の画像処理方法」により達成される。
【0009】
さらに、前記目的は、本発明の(13)「前記(1)乃至()項のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体を用い、加熱により画像の記録と消去を行なう熱可逆記録媒体の画像処理装置」、(14)「セラミックヒータにより画像を消去することを特徴とする前記(13)項に記載の画像処理装置」により達成される。
【0010】
さらにまた、前記目的は、本発明の(15)「支持体の感熱層形成面の反対面に接着剤層又は粘着剤層が設けられ、ラベル状であることを特徴とする前記(1)乃至()項のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体」により達成される。
さらにまた、前記目的は、本発明の(16)「ディスク上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化し、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合して用いられる前記(1)乃至(7)項のいずれか1に記載の感熱層が形成されたことを特徴とする可逆表示付ディスク」、(17)「ディスク上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化し、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合して用いられる感熱層が形成された支持体の感熱層形成面の反対面に接着層又は粘着層が設けられた前記(15)項に記載のラベル状熱可逆記録媒体を貼着したことを特徴とする可逆表示付ディスク」、(18)「ディスクパッケージ上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化し、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合して用いられる前記(1)乃至(7)項のいずれか1に記載の感熱層が形成されたことを特徴とする可逆表示付ディスクパッケージ」、(19)「ディスクパッケージ上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化し、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合して用いられる感熱層が形成された支持体の感熱層形成面の反対面に接着層又は粘着層が設けられた前記(15)項に記載のラベル状熱可逆記録媒体を貼着したことを特徴とする可逆表示付ディスクパッケージ」により達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の熱可逆記録媒体は、前記のごとき透明度変化(透明状態、白濁不透明状態)を利用するものであるが、この透明状態と白濁不透明状態との違いは次のように推測される。
【0012】
すなわち、(i)透明の場合には樹脂母材中に分散された有機低分子物質の粒子と樹脂母材は隙間なく密着しており、また粒子部内にも空隙はなく、片側から入射した光は散乱されることなく反対側に透過するため透明に見えること、また、(ii)白濁の場合には有機低分子物質の粒子は有機低分子物質の微細な結晶が集合した多結晶で構成され、結晶の界面若しくは粒子と樹脂母材の界面に隙間ができ、片側から入射した光は空隙と結晶、空隙と樹脂の界面で屈折、反射し、散乱されるため白く見えること、等に由来している。
【0013】
図1は、本発明の熱可逆記録媒体の1例における温度−透明変化を判り易く説明するものであり、図1において、樹脂母材とこの樹脂母材中に分散された有機低分子物質とを主成分とする感熱層は、例えばT0以下の常温で白濁不透明状態にある。
これを加熱していくと温度T1から徐々に透明になり始め、温度T2〜T3に加熱すると透明となり、この状態で再びT0以下の常温に戻しても透明のままである。これは温度T1付近から樹脂が軟化し始め、軟化が進むにつれ、樹脂が例えば収縮し樹脂と有機低分子物質粒子との界面若しくは粒子内の空隙を減少させるため、徐々に透明度が上がり、温度T2〜T3では有機低分子物質が半溶融状態となり、残った空隙を溶融した有機低分子物質が埋めることにより透明となり、種結晶が残ったまま冷却されることにより、比較的高温で結晶化し、その際樹脂がまだ軟化状態のため、結晶化にともなう粒子の体積変化に樹脂が追随しないため、空隙ができず透明状態が維持されるためと考えられる。
【0014】
さらにT4以上の温度に加熱すると、最大透明度と最大不透明度との中間の半透明状態になる。次に、この温度を下げていくと、再び透明状態をとることなく最初の白濁不透明状態に戻る。これは温度T4以上で有機低分子物質が完全に溶融した後、過冷却状態となり、T0より少し高い温度で結晶化し、その際、樹脂が結晶化にともなう体積変化に追随できず、空隙が発生するためであると思われる。
ただし、図1に示した温度−透明度変化曲線は代表的な例を示しただけであり、材料を変えることにより各状態の透明度等はその材料に応じて変化が生じることがある。
【0015】
熱可逆記録媒体の消去性が印字と消去の繰り返しにより低下するのは、加熱されることによって溶融した有機低分子物質が樹脂中を移動することにより記録層の内部構造が変化することにより生じるものと思われる。
本発明によれば、印字と消去を繰り返しても消去性の低下がない熱可逆記録媒体が得られる。この理由は、有機低分子物質が尿素結合、スルホニル結合、アミド結合などの極性基を構造中に有するため、隣接した低分子物質が相互作用を及ぼし加熱溶融時にも移動しにくくなるものと推測される。
ただし、尿素基、アミド基などの極性基と長鎖アルキル基だけを有する有機低分子物質は溶剤溶融性が低いため、記録層の内部で数十μmレベルの大きな粒子となり、図1の温度T4から冷却した後、過冷却状態になりにくくなり、空隙が発生しずらく、コントラストが低下してしまう。
【0016】
本発明における如く、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合などの極性基以外にカルボキシル基をその構造中に有する有機低分子物質は溶剤溶融性が向上し、記録層内部で数μm以下の微粒子として樹脂母材中に分散され存在するため良好なコントラストが得られ、前述の消去性の向上と高コントラストの両立が可能となる。
【0017】
上述の尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物(A)は融点130℃未満である。尿素結合、スルホニル結合、アミド結合は一つの分子内に同種のものが1つないしは2つ以上あってもよいし、異種のものであってもよく、分子の末端でも中心部でもよい。カルボキシル基は1つでも2つ以上でもよく、分子の末端でも側鎖に位置していてもよい。融点が130℃以上になると、白濁化温度が高温化するため、白濁画像形成時の熱感度が低下してしまうという欠点がある。
【0018】
更に、直鎖炭化水素含有化合物(A)と、この直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)を混合して用いることにより、透明化温度範囲の拡大が可能となる。直鎖炭化水素含有化合物(A)若しくは(B)に含まれる直鎖炭化水素は飽和でも不飽和でもよく、その炭素数は2〜30が好ましく、4〜22が更に好ましい。炭化水素鎖は同一分子内に1ないし2以上含まれる。1つの分子内での全部の直鎖炭化水素の炭素数の合計は4〜60が好ましく、8〜40が更に好ましい。
【0019】
直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点は100℃以上が好ましく、110℃以上が更に好ましい。この融点が低すぎると透明化温度幅を広げにくくなる。
直鎖炭化水素含有化合物(B)の融点は50℃以上100℃未満であることが好ましい。この融点は60℃以上が好ましく、70℃以上が特に好ましく、更に90℃以下が好ましい。この融点が低すぎると、画像耐熱性が低下し、高すぎると透明化温度幅の拡大が望めない。
【0020】
直鎖炭化水素含有化合物(A)と直鎖炭化水素含有化合物(B)の混合比は90:10〜2:98が好ましい。この混合比は直鎖炭化水素含有化合物(B)の比率が95以下が更に好ましく、90以下が特に好ましく、更に30以上が更に好ましく、40以上が特に好ましく、50以上がより好ましい。直鎖炭化水素含有化合物(A)、(B)は各々1種類でもよいし2種類以上混合してもよい。直鎖炭化水素含有化合物(B)の比率が高すぎると、透明化する温度の範囲の中でも低温側の透明度が高くなり、逆に高温側の透明度が低くなるため、均一に透明化しにくくなる。また、直鎖炭化水素含有化合物(B)の比率が低すぎると十分な透明性が得られなくなる。
【0021】
以下に尿素結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物(A)の例として一般式(1)で表わされる物質を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
【化1】
CH3(CH2)m−NHCONH−(CH2)n−COOH・・・一般式(1)
(式中、mは0〜25、nは1〜25のそれぞれ整数を表わす。)
m+nは10以上が好ましく、15以上が更に好ましい。
一般式(1)で表わされる物質の例としては、以下のものが挙げられる。
【0023】
【表1】
Figure 0003656703
【0024】
以下にスルホニル結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物(A)の例として一般式(2)で表わされる物質を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
【化2】
CH3(CH2)m−SO2−(CH2)n−COOH・・・一般式(2)
(式中、mは0〜25、nは1〜25のそれぞれ整数を表わす。)
m+nは10以上が好ましく、15以上が更に好ましい。
一般式(2)で表わされる物質の例としては、以下のものが挙げられる。
【0026】
【表2】
Figure 0003656703
【0027】
以下にアミド結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物(A)の例として一般式(3)で表わされる物質を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
【化3】
CH3(CH2)m−CONH−(CH2)n−COOH・・・一般式(3)
(式中、mは0〜26、nは1〜25のそれぞれ整数を表わす。)
m+nは10以上が好ましく、15以上が更に好ましい。
一般式(3)で表わされる物質の例としては、以下のものが挙げられる。
【0029】
【表3】
Figure 0003656703
【0030】
以下にアミド結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物(A)の例として一般式(4)で表わされる物質を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
【化4】
CH3(CH2)m−NHCO−(CH2)n−COOH・・・一般式(4)
(式中、mは0〜25、nは1〜26のそれぞれ整数を表わす。)
m+nは10以上が好ましく、15以上が更に好ましい。
一般式(4)で表わされる物質の例としては、以下のものが挙げられる。
【0032】
【表4】
Figure 0003656703
【0033】
以下にアミド結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物(A)の例として一般式(5)で表わされる物質を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
【化5】
HOCO−(CH2)m−NHCO−(CH2)n−COOH・・・一般式(5)
(式中、mは1〜25、nは1〜26のそれぞれ整数を表わす。)
m+nは10以上が好ましく、15以上が更に好ましい。
一般式(5)で表わされる物質の例としては、以下のものが挙げられる。
【0035】
【表5】
Figure 0003656703
【0036】
直鎖炭化水素含有化合物(B)の例としては、脂肪族モノカルボン酸、脂肪酸エステル、高級アルキル基を有するケトン、二塩基酸エステル、多価アルコールジ脂肪酸エステル、脂肪族アミド化合物、脂肪族ウレア化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
以下にさらに具体的な例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
即ち、脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、例えば、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
【0038】
脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ラウリン酸オクタデシル、ラウリン酸ドコシル、ミリスチン酸ドコシル、パルミチン酸ドデシル、パルミチン酸テトラデシル、パルミチン酸ペンタデシル、パルミチン酸ヘキサデシル、パルミチン酸オクタデシル、パルミチン酸トリアコンチル、パルミチン酸オクタデシル、パルミチン酸ドコシル、ステアリン酸ビニル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸ヘプチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸ヘプタデシル、ステアリン酸オクタデシル、ステアリン酸ドコシル、ステアリン酸ヘキサコシル、ステアリン酸トリアコンチル、ベヘン酸ドデシル、ベヘン酸オクタデシル、ベヘン酸ドコシル、リグノセリン酸トラコシル、メリシン酸ミリシル等が挙げられる。
【0039】
高級アルキル基を有するケトンの具体例としては、例えば、8−ペンタデカノン、9−ヘプタデカノン、10−ノナデカノン、11−ヘンエイコサノン、12−トリコサノン、14−ヘプタコサノン、16−ヘントリアコンタノン、18−ペンタトリアコンタノン、22−トリテトラコンタノン、2−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、2−ヘプタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン等が挙げられる。
【0040】
二塩基酸エステルとしては、モノエステル、ジエステルのいずれでもよく、下記一般式(6)で表わされるものである。
【0041】
【化6】
ROOC−(CH2)n−COOR’・・・・・一般式(6)
(式中、R,R’は水素原子、又は炭素数1〜30のアルキル基を表わし、R,R’は同一であっても異なっていてもよいが、同時に水素原子である場合を除く。nは0〜40の整数を表わす)
上記一般式(6)で表わされる二塩基酸エステルにおいて、R,R’のアルキル基の炭素数は1〜22が好ましく、nは、1〜30が好ましく、2〜20が更に好ましい。
【0042】
具体的には、
コハク酸ジエステル、
アジピン酸ジエステル、
セバシン酸ジエステル、
1−又は18−オクタデカメチレンジカルボン酸エステル
等が挙げられる。
【0043】
本発明で用いる有機低分子物質の多価アルコールジ脂肪酸エステルとしては、下記の一般式(7)で表わされるものが挙げられる。
【0044】
【化7】
CH3(CH2)m-2COO(CH2)nOOC(CH2)m-2CH3・・・・・一般式(7)
(式中、nは2〜40、好ましくは3〜30、更に好ましくは4〜22の整数である。mは2〜40、好ましくは3〜30、更に好ましくは4〜22の整数である。)
具体的には以下のものが挙げられる。
1,3プロパンジオールジアルカン酸エステル、
1,6ヘキサンジオールジアルカン酸エステル、
1,10デカンジオールジアルカン酸エステル、
1,18オクタデカンジオールジアルカン酸エステル。
【0045】
脂肪族アミド化合物の具体例としては、例えば次の一般式(8)で表わされるものが挙げられる。
【0046】
【化8】
1−CONH−R2・・・・・一般式(8)
(ここで、R1は炭素数1〜25の直鎖炭化水素、R2は水素、炭素数1〜26の直鎖炭化水素鎖、またはメチロール基であり、R1、R2の少なくともどちらか一方が炭素数8以上の直鎖炭化水素である。)
【0047】
これらの例としては、ノナンアミド、デカンアミド、ウンデカンアミド、ドデカンアミド、トリデカンアミド、テトラデカンアミド、ヘキサデカンアミド、オクタデカンアミド、イコサンアミド、ドコサンアミド、トリコサンアミド、ヘキサコサンアミド、オクタコサンアミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドやN−ラウリルラウリン酸アマイド、N−パルミチルパルミチン酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルミチン酸アマイド、N−12ヒドロキシステアリルステアリン酸アマイド、N−12ヒドロキシステアリルオレイン酸アマイド等を挙げることができる。
【0048】
脂肪族ウレア化合物の具体例としては、例えば次の一般式(9)で表わされるものが挙げられる。
【0049】
【化9】
3−NHCONH−R4・・・・・一般式(9)
(ここで、R3、R4は水素または炭素数1〜26の直鎖炭化水素であり、少なくともどちらか一方が炭素数8以上の直鎖炭化水素である。)
これらの例としては、N−ブチル−N’−ステアリル尿素、N−フェニル−N’−ステアリル尿素、N−ステアリル−N’−ステアリル尿素等が挙げられる。
【0050】
感熱層に使用される樹脂母材は有機低分子物質を均一に分散保持した層を形成すると共に、最大透明時の透明度に影響を与える材料である。このため樹脂母材は透明性が良く、機械的に安定で、且つ成膜性の良い樹脂が好ましい。このような樹脂としてはポリ塩化ビニル;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−アクリレート共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体等の塩化ビニリデン系共重合体;ポリエステル;ポリアミド;ポリアクリレート又はポリメタクリレート或いはアクリレート−メタクリレート共重合体;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で或いは2種以上混合して使用して良いことはもちろんである。
【0051】
これらの樹脂を架橋することが好ましい。架橋した媒体の繰り返し耐久性が向上する。架橋する場合には樹脂中にヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基などの官能基を有することが好ましい。架橋の方法としては、熱架橋、UVやEBの照射による方法があり、イソシアネートや各種アクリル系架橋剤を添加し架橋することが好ましい。樹脂母剤のガラス転移温度は60℃以上が好ましく、70℃以上がもっと好ましい。100℃以下が好ましく、90℃以下が更に好ましい。ガラス転移温度が高くなると画像耐熱性がさらに向上する。
【0052】
本発明の熱可逆記録媒体の感熱層の厚さは1〜30μmが好ましく、2〜20μmが更に好ましい。6〜18μmが特に好ましい。記録層が厚すぎると層内での熱の分布が発生し均一に透明化することが困難となる。また、感熱層が薄すぎると白濁度が低下し、コントラストが低くなる。なお、記録層中の脂肪酸の量を増加させると白濁度を増すことができる。なお、感熱層中の有機低分子物質と樹脂(架橋構造を有する樹脂)との割合は、重量比で2:1〜1:16程度が好ましく、1:2〜1:8が更に好ましく、1:2〜1:5が特に好ましく、1:2〜1:4がもっと好ましく、1:2〜1:3.5がそれ以上に好ましい。樹脂の比率がこれ以下になると、有機低分子物質を樹脂中に保持した膜に形成することが困難となり、またこれ以上になると、有機低分子物質の量が少ないため、不透明化が困難になる。
【0053】
また、感熱層上には感熱層を保護するために保護層を設けることができる。感熱層上に積層する保護層(厚さ0.1〜5μm)材料としては、シリコーン系ゴム、シリコーン樹脂(特開昭63−221087号公報に記載)、ポリシロキサングラフトポリマー(特願昭62−152550号に記載)や紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂(特願昭63−310600号に記載)等が挙げられる。これらの中には、有機若しくは無機のフィラーを含有することができる。
【0054】
更にまた、保護層形成液の溶剤やモノマー成分等から感熱層を保護するために、保護層と感熱層との間に中間層を設けることができる(特開平1−133781号公報に記載)。中間層の材料としては感熱層中の樹脂母材として挙げたものの他に下記のような熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV硬化樹脂、EB硬化樹脂が使用可能である。即ち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド等が挙げられる。中間層の厚さは0.1〜2μmくらいが好ましい。これ以下になると、保護効果が下がり、これ以上になると熱感度が低下する。
【0055】
本発明の上記課題は、支持体上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を設けた熱可逆記録媒体の製造方法において、樹脂溶液中に1種以上の有機低分子物質を固体状態で分散した分散液を支持体上に塗布し加熱乾燥させ、該加熱乾燥時に分散された有機低分子物質が分散溶媒に溶解し感熱層を形成することを特徴とする熱可逆記録媒体の製造方法によって達成される。
【0056】
用いられる有機低分子物質は、融点が20℃以上異なるものを2種以上混合して用いることが好ましい。有機低分子物質は通常融点が高くなるにつれ、通常の溶剤には常温では溶解しにくくなってくる。これらの溶剤に溶解しにくい有機低分子物質を分散して用い、塗膜の加熱乾燥時に溶解させることにより、常温で溶媒に溶解させて塗膜を形成すると今までと同様の構造(樹脂中に有機低分子物質が球状の微粒子で分散されている)が得られ、また、有機低分子物質を上記のように2種類以上用いた場合には、透明化温度範囲が広く、また透明状態と不透明状態とのコントラストが大きく、透明状態と不透明状態を繰り返し生じさせるための温度コントロールが容易な可逆性感熱記録材料を得ることができる。
【0057】
ここで用いられる溶媒は2種以上混合してもよく、溶媒の少なくとも1種として沸点の高い溶媒、特に沸点が100℃以上の溶媒を用いることが好ましく、それにより透明状態と不透明状態とのコントラストが更に大きな可逆性感熱記録材料を得ることができる。
【0058】
更に、混合液における沸点の高い溶媒の含有量としては、混合液における全溶媒の10重量%以上が特に好ましく、それにより樹脂マトリックス形状又は2種類以上の有機低分子物質が共存する有機低分子物質ドメイン形状が球形、楕円形又は丸みを帯びた形状となり、これによりコントラストの大きな透明状態と不透明状態とを多数回にわたって繰り返し生じさせることのできる可逆性感熱記録材料を得ることができる。
【0059】
上記のような可逆性感熱記録材料の製造方法が適用される好ましい場合は、上記の分散液中の有機低分子物質として、混合液を支持体上に塗布し乾燥させる際の乾燥温度において分散液溶媒に溶解する有機低分子物質を用いる場合である。特に分散液溶媒に0.5%以上溶解する有機低分子物質を用いることが好ましい。また、常温において、分散液溶媒に対する分散液中に分散された有機低分子物質の溶解度は0.5%未満であることが好ましい。有機低分子物質の分散粒径は50μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましい。
【0060】
このような有機低分子物質を用いることにより、乾燥時に有機低分子物質が一旦溶媒に溶解し、相分離過程を経て分散液中の2種類以上の有機低分子物質が共存する有機低分子物質ドメインが形成される。
【0061】
本発明の上記課題は、支持体上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を設けた熱可逆記録媒体の製造方法において、樹脂溶液中に1種以上の有機低分子物質を固体状態で分散した分散液を支持体上に塗布し、感熱層中の一番高い融点をもつ有機低分子物質の融点より低い温度で加熱乾燥させて感熱層を形成し、次いで、感熱層中のすべての有機低分子物質の融点以上の温度で感熱層を加熱することを特徴とする熱可逆記録媒体の製造方法によって達成される。用いられる有機低分子物質は、融点が20℃以上異なるものを2種以上混合して用いることが好ましい。
【0062】
この有機低分子物質分散液を支持体上に塗布し乾燥させて可逆性感熱記録層を形成し、次いで、有機低分子物質の融点以上の温度で可逆性感熱記録層に加熱処理を施すことにより、透明化温度範囲が広く、また透明状態と不透明状態とのコントラストが大きく、透明状態と不透明状態を繰り返し生じさせるための温度コントロールが容易な可逆性感熱記録材料を得ることができる。
これは可逆性感熱記録層に加熱処理を施すことによって、可逆性感熱記録層における樹脂マトリックス中にそれぞれ単独で分散している2種類以上の有機低分子物質が溶融し、熱膨張し、また、樹脂が軟化することにより合一して2種類以上の有機低分子物質が共存する有機低分子物質ドメインが形成されることによるものである。
【0063】
また、可逆性感熱記録層に有機低分子物質の融点以上の温度で加熱処理を施すことによって、樹脂マトリックス形状又は2種類以上の有機低分子物質が共存する有機低分子物質ドメイン形状が球形、楕円形又は丸みを帯びた形状となり、これによりコントラストの大きな透明状態と不透明状態とを多数回にわたって繰り返し生じさせることのできる可逆性感熱記録材料が得られる。球形、楕円形又は丸みを帯びている樹脂マトリックス形状又は有機低分子物質ドメイン形状の個数は全樹脂マトリックス個数又は全有機低分子物質ドメイン個数の10%以上であることが特に好ましい。これらの製造方法において、有機低分子物質を2種以上用いる場合、例えば1種が分散で用いられ、1種が常温でも溶媒に溶解されて用いられていてもよい。
【0064】
また、可逆性感熱層の他に着色層を設けその上に可逆的感熱層を有するものが、可逆的可視像を目視し易くするために好ましい。この場合、着色層を可視光に対する反射率の異なる2種以上の部位からなるものとすることができる。
【0065】
上記の3条件を満足する可逆表示可能な感熱層と情報記憶部の両方を同一のカードに設けることにより、情報記憶部に記憶された情報の一部を感熱層に表示することにより、カード所有者等は特別な装置がなくてもカードを見るだけで情報を確認することができ、利便性が向上する。情報記憶部は必要な情報を記憶できるものなら何でもよいが、磁気記録、IC、光メモリが好ましい。また、表示に用いる可逆感熱材料をバーコード、2次元コード等により記憶部に用いてもよい。これらの中では磁気記録、ICが更に好ましい。
【0066】
特に、本発明の可逆性記録媒体が、書換可能なバーコードを設けたものである場合には反射率の異なる2種以上の部位からなるものとすることが好ましい。というのは、人間が目視する場合には、例えば白濁状態の画像部と着色状態の非画像部とは光量差に加えて色調差があり、かつ、目視する角度によっては非画像部からの過度の反射光によるグレアがなくなるので可逆的可視像を目視し易くするが、一方、これを反射濃度計やバーコード読取り装置のような装置で読み取る場合には、通常、光を斜めから入射させ面に対し垂直方向にセンサーを置き読み取ることになり、これは、とりもなおさず、着色層により可視光の少なくとも一部が吸収されコントラストが低くなった結果を計測するに過ぎないためである。而して、本発明の可逆性感熱記録媒体における着色層は、可視光に対する反射率の異なる2種以上の部位からなり、かつ、その少なくとも一方の部位が可視光を吸収する層であり、他の少なくとも一部が可視光を反射する層からなるものとして、目視でも画像を認識しやすく、かつ、装置による測定でも高コントラストが得られるものすることができる。
【0067】
可逆性(可逆的)感熱層においてバーコードを読み取るのに必要な高いコントラストを得るには、有機低分子物質の平均粒子径が0.1〜2.0μmの範囲にあることが好ましく、より適切な白濁度になる。そして、分散された有機低分子物質の平均粒子径が大きくなればなるほど多結晶状態になり難くなり、光を散乱させる効果が小さくなって、白濁度が低下してコントラストが低くなり、逆に、分散された有機低分子物質の平均粒子径が小さくなればなるほど結晶の成長において分散されたマトリックス中で多結晶状態を形成しにくくなり、この場合も白濁度が低下してコントラストが低くなるためと考えられる。さらに、バーコードを読み取る関係から、有機低分子物質の粒子の平均粒子径がバーコードを読み取る際の光源の波長の1/8から2倍までの範囲にあるとき、バーコードの読み取り時のコントラストがさらに向上する。こうした現象が何故生じるかはいまだに明らかにされていないが、大よそ次のように推察されている。即ち、白濁度つまり光の散乱度は有機低分子物質粒子中の結晶の大きさで決まると考えられ、さらにこの結晶の大きさは有機低分子物質粒子の大きさで決まってくると考えられる。これは、有低分子物質粒子の大きさにより、樹脂母材とその樹脂母材中に分散されている有機低分子物質との界面の面積が決まり、この界面の面積から樹脂母材と有機低分子物質との相互作用の強さが決まり、その相互作用の強さが粒子中の結晶の大きさに影響を与えるためと推測されている。また、ある波長の光を一番散乱しやすい結晶の大きさがあり、これは個々の材料によって異なるが、光の波長より小さい結晶がその波長の光を散乱しやすい。つまり、有機低分子物質の平均粒子径がバーコードを読み取る光の波長の1/8から2倍までの範囲にあるとき白濁状態の有機低分子物質粒子中の多結晶の個々の結晶の大きさがその波長の光を最も散乱しやすい大きさになっているものと考えられている。前記の平均粒子径が読み取り光源の波長の1/8未満となると、散乱効果が減少し、白濁度が下がり、コントラストが減少し、逆に、2倍を越えると樹脂母材と有機低分子物質の界面の表面積が減少し、樹脂母材と有機低分子物質との相互作用が減少し、有機低分子物質粒子中の結晶の制御がしにくくなると考えられており、白濁度が下がり、コントラストが減少する。なお、有機低分子物質の粒径を制御する方法としては貧溶媒の混入、記録層形成液塗工時の加熱乾燥の制御、分散性を制御するための界面活性剤の添加等が考えられるがこれらに限定されるものではない。
【0068】
ところで、従来バーコードを読み取るための光源の波長は600nm以上と規定され(JIS B9550)、通常600nmから1000nmの範囲の波長の光源が用いられている。具体的にはLED(660nm及び940nmの波長のものが良く用いられる)、レーザー(He−Neレーザーで600nm、半導体レーザーで680nm、780nm、及び960nmが良く用いられる)が挙げられる。
【0069】
本発明の可逆性記録媒体におけるバーコード表示体によれば、上記したような660nm以上の波長の光源を用いてバーコードを読み取ることは勿論可能であるが、より短い波長の光源を用いることもでき、むしろ短い波長の光源を用いた方がより高いコントラストが得られる。例えば、400〜600nmの光を用いれば、600nm〜10000nmの光に比べ、コントラストは最大で2倍近くになる。これは波長の短い光の方が有機低分子物質に対する屈折率が大きくなり、光の散乱が増え、そのため白濁度が向上するためであると考えられる。
【0070】
なお、ここでいう「バーコード」とは、光の強弱や波長の変化等の光学的変化を可視光の波長域であってもなくても情報として認識しうるものであればよく、従って、二次元バーコード、OCR、カルラコードに代表される他の光学的認識パターン表示体をも包含する。
【0071】
また、本発明の可逆性記録媒体では、磁気記録層を設けることにより、磁気記録した情報の一部を感熱層上に表示することができる等、この可逆性記録媒体の利便性が向上する。磁気記録層としては通常用いられる酸化鉄、バリウムフェライト等と塩ビ系やウレタン系樹脂等を用い、支持体に塗工形成されるか、または蒸着、スパッタリング等の方法により樹脂を用いず形成される。磁気記憶部は支持体の感熱層の反対面に設けてもよいし、支持体と感熱層の間、感熱層上の一部に設けてもよい。磁気記録層が着色層をかねることも可能である。しかしながら、本発明で使用する可逆性記録媒体には、バーコード情報、磁気記録情報、IC、光メモリ、光磁気メモリ等による情報記憶は必ずしも設けなくてもよい。
【0072】
したがって、例えば本発明の可逆性感熱記録媒体は図2aに示されるように、支持体(11)上に、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルム、図2bに示されるように、支持体(11)上に、アルミ反射層(12)、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルム、図2cに示されるように、支持体(11)上に、アルミ反射層(12)、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設け支持体(11)の裏面に磁気記録層(16)を設けてなるフィルム、を図3に示されるように、印刷表示部(23)を有するカード(21)に加工した形であることができる。
【0073】
さらに、例えば図4aに示されるように、支持体(11)上に、アルミ反射層(12)、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルムをカード状に加工し、ICチップを納める窪み部(23)を形成するとともにカード状に加工した形であることができる。この例においては、カード状の可逆性感熱記録媒体に書き換え記録部(24)がラベル加工されるとともに、可逆性感熱記録媒体の裏面側には所定箇所にICチップ埋め込み用窪み部(23)が形成されており、この窪み部(23)に、図4bに示されるようなウェハ(231)が組込まれて固定される。ウェハ(231)は、ウェハ基板(232)上に集積回路(233)が設けられると共に、この集積回路(233)に電気的に接続されている複数の接触端子(234)がウェハ基板(232)に設けられる。この接触端子(234)はウェハ基板(232)の裏面側に露出しており、専用のプリンタ(リーダライタ)がこの接触端子(234)に電気的に接触して所定の情報を読み出したり書き換えたりできるように構成されている。この可逆的感熱記録カードの機能例を、図5を参照しつつ説明する。
【0074】
図5(a)は、集積回路(233)を示す概略の構成ブロック図であり、(b)はRAMの記憶データの1例を示す構成ブロック図である。集積回路(233)は、例えばLSIで構成されており、その中には制御動作を所定の手順で実行することのできるCPU(235)と、CPU(235)の動作プログラムデータを格納するROM(236)と、必要なデータの書き込み及び読み出しができるRAM(237)を含む。さらに集積回路(233)は、入力信号を受けてCPU(235)に入力データを与えるとともにCPU(235)からの出力信号を受けて外部に出力する入出力インターフェース(238)と、図示していないが、パワーオンリセット回路、クロック発生回路、パルス分周回路(割込パルス発生回路)、アドレスデコーダ回路を含む。CPU(235)は、パルス分周回路から定期的に与えられる割込パルスに応じて、割込制御ルーチンの動作を実行することが可能となる。また、アドレスデコード回路はCPU(235)からのアドレスデータをデコードし、ROM(236)、RAM(237)、入出力インターフェース(238)にそれぞれ信号を与える。入出力インターフェース(238)には、複数(図中では8個)の接触端子(234)が接続されており、前記の専用プリンタ(リーダライタ)からの所定データがこの接触端子(234)から入出力インターフェース(238)を介してCPU(235)に入力される。CPU(235)は、入力信号に応答して、かつROM(236)内に格納されたプログラムデータに従って、各動作を行い、かつ、所定のデータ、信号を入出力インターフェース(238)を介してカードリーダライタに出力する。
【0075】
図5(b)に示されるように、RAM(237)は複数の記憶領域(239a)〜(239f)を含む。例えば領域(239a)にはカード番号が記憶され、(239b)には例えばカード所有者の氏名、住所、電話番号等のIDデータが記憶され、領域(239c)には例えば所有者の使用しうる残存有価価値又は有価物に相当する情報が記憶され、領域(239d)(239e)(239f)及び(239g)には使用済の有価価値又は有価物に相当する情報が記憶される。
【0076】
上記の熱可逆記録媒体の画像の記録と消去の方法と装置について以下に述べる。画像の記録はサーマルヘッド、レーザ等、媒体を画像上に部分的に加熱可能である画像記録手段が用いられる。画像の消去は、ホットスタンプ、セラミックヒータ、ヒートローラ、熱風等や、サーマルヘッド、レーザ等の画像消去手段が用いられる。この中ではセラミックヒータが好ましく用いられる。セラミックヒータを用いることにより、装置が小型化でき、かつ安定した消去状態が得られ、コントラストのよい画像が得られる。セラミックヒータの設定温度は90℃以上が好ましく、100℃以上が特に好ましい。
【0077】
また、サーマルヘッドを用いることにより、更に小型化が可能となり、また、消費電力を低減することが可能であり、バッテリー駆動のハンディタイプの装置も可能となる。記録用と消去用を兼ねて一つのサーマルヘッドとすれば、更に小型化が可能となる。一つのサーマルヘッドで記録と消去を行なう場合、一度前の画像を全部消去した後、あらためて新しい画像を記録してもよいし、画像毎にエネルギーを変えて一度に前の画像を消去し、新しい画像を記録していくオーバーライト方式も可能である。オーバーライト方式では記録と消去を合わせた時間が少なくなり、記録のスピードアップにつながる。
感熱層と情報記憶部を有するカードを用いる場合、上記の装置には情報記憶部の記憶を読み取る手段と書き換える手段も含まれる。
【0078】
図6には、本発明の熱可逆性記録装置の具体例を示す。
図6aは、本発明により画像の消去をセラミックヒータで、画像の形成をサーマルヘッドでそれぞれ行う場合の装置の概略例を示す。図6aの熱可逆性記録装置においては、最初、記録媒体の磁気記録層に記憶された情報を磁気ヘッドで読み取り、つぎにセラミックヒータで可逆性感熱層に記録された画像を加熱消去し、さらに、磁気ヘッドで読み取られた情報をもとにして、処理された新たな情報がサーマルヘッドにより、逆性感熱層に記録される。その後、磁気記録層の情報も新たな情報に書き替えられる。
【0079】
すなわち、図6aの熱可逆性記録装置においては、感熱層の反対側に磁気記録層を設けた熱可逆性記録媒体(1)は往復の矢印で図示されている搬送路に沿って搬送され、或いは搬送路に沿って装置内を逆方向に搬送される。熱可逆性記録媒体(1)は、磁気ヘッド(34)と搬送ローラ(31)間で磁気記録層に磁気記録或いは記録消去され、セラミックヒータ(38)と搬送ローラ(40)間で像消去のため加熱処理され、サーマルヘッド(53)及び搬送ローラ(47)間で像形成され、その後、装置外に搬出される。先に説明したように、セラミックヒータ(38)の設定温度は100℃以上が好ましく、105℃以上が更に好ましい。ただし磁気記録の書きかえはセラッミックヒータによる画像消去の前であっても後であってもよい。また、所望により、セラミックヒータ(38)と搬送ローラ(40)間を通過後、又はサーマルヘッド(53)及び搬送ローラ(47)間を通過後、搬送路を逆方向に搬送され、セラミックヒータ(38)よる再度の熱処理、サーマルヘッド(53)による再度の印字処理を施すことができる。
【0080】
図6bの熱可逆性記録装置においては、出入口(30)から挿入された熱可逆性記録媒体(1)は一点破線で図示されている搬送路(50)に沿って進行し、或いは搬送路(50)に沿って装置内を逆方向に進行する。出入口(30)から挿入された熱可逆性記録媒体(1)は、搬送ローラ(31)及びガイドローラ(32)により記録装置内を搬送され、搬送路(50)の所定位置に到達するとセンサ(33)により制御手段(34c)を介してその存在を認識され、磁気ヘッド(34)とプラテンローラ(35)間で磁気記録層に磁気記録或いは記録消去され、ガイドローラ(36)及び搬送ローラ(37)間を通過し、ガイドローラ(39)及び搬送ローラ(40)間を通過し、センサ(43)により、セラミックヒータ制御手段(38c)を介してその存在を認識して作動するセラミックヒータ(38)とプラテンローラ(44)間で像消去のため加熱処理され、搬送ローラ(45)(46)(47)により搬送路(50)内を搬送され、所定位置にてセンサ(51)により、サーマルヘッド制御手段(53c)を介してその存在を認識して作動するサーマルヘッド(53)及びプラテンローラ(52)間で像形成され、搬送路(50a)から搬送ローラ(59)及びガイドローラ(60)により出口(61)を経て装置外に搬出される。ここで、セラミックヒータ(38)の設定温度は、先に説明したように、100℃以上が好ましく、105℃以上が更に好ましい。
【0081】
また、所望により、搬送路切換手段(55a)を切り替えることにより搬送路(56b)に導き、熱可逆性記録媒体(1)の押圧により入力するリミットスイッチ(57a)の作動より逆方向に動く搬送ベルト(58)によって、熱可逆性記録媒体(1)を再度、サーマルヘッド(53)及びプラテンローラ(52)間で熱処理した後、搬送路切換手段(55b)を切り替えることにより通じる搬送路(49b)、リミットスイッチ(57b)、搬送ベルト(48)を介して順方向に搬送し、搬送路(50a)から搬送ローラ(59)及びガイドローラ(60)により出口(61)を経て装置外に搬出することができる。さらに、このような分岐した搬送路及び搬送切換手段は、セラミックヒータ(38)の両側に設けることもでき、その場合にはセンサ(43a)をプラテンローラ(44)と搬送ローラ(45)の間に設けることが望ましい。またこれら装置には、磁気記録層等がセラミックヒータ(38)からの熱の影響を受けないようにするため、サーマルヘッド(53)周辺には、断熱覆いを設けることができる。
【0082】
本発明の熱可逆記録媒体では、支持体の感熱層形成面の反対面に接着剤層または粘着剤層を設けることができる。このように接着剤層または粘着剤層を設けることにより、記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカードなどの厚手の基板の全面若しくは一部に貼ることができ、磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。
【0083】
このような接着剤層または粘着剤層を設けた熱可逆記録ラベルは、前述の塩ビカードだけでなく、ICカード、光カードなどの厚手カードに適用できることはもちろん、フロッピーディスク、ビデオテープ、ミニディスク等の表示ラベルの代わりとして用い、それらの記憶内容の変更に応じて自動的に表示内容を変更するなどの用途への適用が可能である。CD−リライタブルなどには直接ディスクにラベルを貼ることも可能であり、さらにディスク上に塗布又は転写により熱可逆記録層を形成することも可能である。
また、接着剤層または粘着剤層の上に剥離紙を設けてもよい。使用する剥離紙としては市販のシリコーン紙が好ましい。
【0084】
また、本発明の可逆性感熱記録ラベルの感熱記録層は、サーマルヘッド等での画像の形成−消去を行なう際に、繰り返しサーマルヘッドとプラテンに挟まれ、また、搬送部のガイドロールによって搬送される。したがって、ラベルシートを被貼着体に貼り合わせたときの接着力が不十分であると、繰り返し画像の形成−消去の際に剥がれてしまう恐れがある。そのため、本発明においては、ラベルシートと被貼着体の間における接着強度を、JIS K−6854、180度剥離の方法で測定した引っ張り荷重の平均値で表わした場合、0.5kgf/25mm以上とすることが好ましい。なお、可逆性感熱記録ラベルの支持体側を紙又はフィルムに貼り合わせた構成の場合は、支持体と紙又はフィルムの間の接着力が0.5kgf/25mm以上であることが望ましい。即ち、接着剤層または粘着材層としては、被貼着体とを張り合わせた際の接着強度が、JIS K−6854、180度剥離の方法で測定した引っ張り荷重の平均値で表わした場合、0.5kgf/25mm以上になるものを選択することが好ましいと言える。接着剤としては、加熱することにより接着性を発現する熱接着タイプのものを用いてもよい。
【0085】
接着剤及び粘着剤の具体例としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニルアクリル共重合体樹脂、EVA系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム系、シアノアクリレート系共重合体等の接着剤及びこれらの接着剤に適当な粘着付与剤を添加した粘着剤が挙げられる。更に必要に応じて、可塑剤、充填剤、老化防止剤等も添加することができる。
【0086】
上記の接着剤のうち、合成ゴム又はシロキサン架橋型ポリマーを主成分とする弾性接着剤は、クッション機能をもち応力を緩和する能力が大であるので特に好ましい。シロキサン架橋型ポリマーを主成分とする弾性接着剤としては、例えばエポキシ基と反応しうるアミノ基を含有し、主鎖構造がポリオキシプロピレンであり、湿分硬化性シリル基を有する液状ポリマーと、エポキシ樹脂を主成分とする組成物を挙げることができる。また、クッション機能を有する弾性粘着剤としては、アクリルフォーム粘着剤が挙げられる。
【0087】
このような接着剤又は粘着剤に、必要に応じて水又は有機溶剤を加えて粘度を調整して、常法により支持体上又は紙若しくはフィルム上に塗布し、接着剤層又は粘着剤層を形成させる。接着剤層又は粘着剤層の厚みは、約1〜40μmが好ましい。
【0088】
また、サーマルヘッドによる印字性をよくするために、クッション性を有するシートを、基材とこの熱可逆記録ラベルとの間に設けてもよい。すなわち、基材とクッション性を有するシートの間にも接着剤層若しくは粘着剤層を設けて基材とクッション性を有するシートを接着若しくは粘着し、更にクッション性を有するシートの上に熱可逆記録ラベルを貼る。このような構成とすることにより、サーマルヘッドと熱可逆記録ラベルの接触がよくなり、画像の均一性が向上する。
【0089】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、実施例中の「部」は重量部を表わす。
実施例1
ガラスビン中に
ベヘン酸(ミヨシ油脂社製、ベヘン酸95) 7部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 30部
(ユニオンカーバイト社製、VYHH)
テトラヒドロフラン 180部
トルエン 20部
よりなる溶液を入れ、さらに
CH3(CH2)17−NHCONH−(CH2)5−COOH 3部
を加え、さらにガラスビン中に直径約2mmのセラミックビーズを入れた後、ビンにふたをして密閉した。これをペイントシェーカー(浅田鉄工(株)社製)を用い、約18時間分散し、平均粒径約6μmの分散液を作製した。
【0090】
この液を約50μm厚の透明なポリエステルフィルム(東レ社製、ルミラーT−60)上に塗布し加熱乾燥して約12μm厚の感熱層を設けた。その上に、
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂の 10部
75%酢酸ブチル溶液
(大日本インキ化学工業社製、ユニディック C7−157)
イソプロピルアルコール 10部
よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥後、80w/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射し、硬化させ、約3μm厚のオーバーコート層を設け、熱可逆記録媒体を作製した。
【0091】
実施例2
大日本インキ工業社製磁気原反(メモリディック DS−1711−1040:188μm厚の透明PETフィルム上に磁気記録層及びセルフクリーニング層を塗工したもの)のPETフィルム側に約400ÅのAlを真空蒸着して光反射層を設けた。その上に、
塩化ビニル−酢酸ビニル−リン酸エステル共重合体 10部
(電気化学工業社製、デンカビニール♯1000P)
メチルエチルケトン 45部
トルエン 45部
よりなる溶液を塗布、加熱乾燥し、約0.5μm厚の接着層を設けた。更にその上に、感熱層の厚みを約10μmとする以外は実施例1と同様に感熱層及びオーバーコート層を設け、熱可逆記録媒体を作製した。
【0092】
実施例3
ベヘン酸を8.5部、CH3(CH2)17−NHCONH−(CH2)5−COOHを1.5部とする以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
実施例4
ベヘン酸を5部、CH3(CH2)17−NHCONH−(CH2)5−COOHを5部とする以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
実施例5
ベヘン酸を12−トリコサノン(東京化成社製、試薬)5.2部、14−ヘプタコサノン(東京化成社製、試薬)1.8部とする以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
実施例6
ベヘン酸をステアリン酸ステアリルエステル(東京化成社製、試薬)とする以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
実施例7
CH3(CH2)17−NHCONH−(CH2)5−COOHをCH3(CH2)19−SO2−CH2−COOHとする以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
実施例8
CH3(CH2)17−NHCONH−(CH2)5−COOHをCH3(CH2)16−CONH−CH2−COOHとする以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
実施例9
CH3(CH2)17−NHCONH−(CH2)5−COOHをCH3(CH2)11−NHCO−(CH2)4−COOHとする以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
実施例10
CH3(CH2)17−NHCONH−(CH2)5−COOHをHOCO−(CH2)11−NHCO−(CH2)2−COOHとする以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
【0093】
実施例11
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体30部を塩化ビニル−酢酸ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体(日信化学社製TA2)28部とする以外は、実施例1と同様にして分散液を作製した。
この分散液235gに対して、ポリイソシアネート系架橋剤(固形分75%、日本ポリウレタン工業社製、コロネートHL)を2g均一に混合し、実施例1と同様に感熱層を設けた後、60℃の恒温槽中に24時間放置し、樹脂とポリイソシアネートを架橋させた。更にこの上に、実施例1と同様にしてオーバーコート層を設け、熱可逆記録媒体を作製した。
【0094】
比較例1
感熱層の塗工液を下記のとおりとする以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
ベヘン酸(ミヨシ油脂社製、ベヘン酸95) 7部
エイコサン2酸(岡村製油社製、SL−20−90) 3部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 30部
(ユニオンカーバイト社製、VYHH)
テトラヒドロフラン 180部
トルエン 20部
を均一に溶解した。
【0095】
比較例2
ベヘン酸を、12−トリコサノン(東京化成社製、試薬)5.2部、14−ヘプタコサノン(東京化成社製、試薬)1.8部とする以外は、実施例1と同様にして熱可逆記録媒体を作製した。
【0096】
次に以下の測定を行なった。
(1)透明化温度範囲と幅
実施例1〜11、比較例1〜2に係る熱可逆記録媒体を熱傾斜試験機(東洋精機製、HG−100)を用い、加熱時間1秒、圧力約2.5kg/cm2とし、1℃間隔で温度を変え、加熱した後、常温に冷却し、実施例1、実施例3〜11、比較例1、2の場合は加熱した部位の背面に透明PETフィルム上に約400Å厚でAlを蒸着したフィルム(東洋メタライジング(株)♯50 メタルミー)を蒸着面側を上にして置き、実施例2の場合はそのままでマクベスRD914反射濃度計を用い、各温度に加熱した後の濃度値を測定した。
【0097】
(2)印字消去の繰り返しによる消去性変化
透明になった温度の範囲と、透明化温度の幅を表6に示す。更に、沖電気製リーダライタRC−30/M20を用い、各々の媒体の飽和印字エネルギーより若干低いエネルギーで白濁印字し、内臓のホットスタンプで消去(透明化)した。印字と消去を10回繰り返した後、媒体を40℃に24時間放置し、印字と消去の計100回となるまで繰り返した。初期の透明状態と100回繰り返し後の消去(透明化)状態の濃度を表6に示す。
【0098】
(3)繰り返し耐久性
実施例1と11の媒体を用い、沖電気製リーダライタRC−30/M20を用い、各々の媒体の飽和印字エネルギーよりも約40%高いエネルギーで白濁印字し、内臓のホットスタンプで消去(透明化)を各々50回繰り返したところ、実施例1の媒体は、初期の濃度0.12に対し、繰り返し後0.52に白濁度が大きく低下したのに対し、実施例11の媒体は、初期濃度0.13に対し、繰り返し後0.20と白濁度の低下は少なかった。なお、約40%の印字エネルギーのアップは繰り返し回数にすると約10倍の強制テストである。
【0099】
【表6】
Figure 0003656703
【0100】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明から明らかなように、本発明によれば、透明化する温度幅を広げ、環境温度が変化しても十分な透明性ひいては十分なコントラストが得られ、且つ印字消去の繰り返しによっても消去性が低下しない熱可逆性記録媒体及びカードが提供され、また、そのための製造方法及びこれら熱可逆性記録媒体を用いるに適した画像処理方法及び装置が提供されるという極めて優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る熱可逆記録媒体による透明度の変化を表わした図である。
【図2】本発明に係る熱可逆記録媒体の層構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る熱可逆記録媒体の1例を説明する図である。
【図4】本発明に係る熱可逆記録媒体の別の1例を説明する図である。
【図5】本発明に係る熱可逆記録媒体の使用例を説明する図である。
【図6】本発明に係る熱可逆記録装置の1例を説明する図である。
【符号の説明】
1 熱可逆性記録媒体
11 支持体
12 アルミニウム反射層
13 感可逆性記録層
14 保護層
15 透明PETフイルム
16 空気層
17 接着層
20 磁気塗工層
21 カード
22 書き換え記録部
23 ICチップ用窪み部
24 書き換え記録部のラベル加工
30 出入口
31 搬送ローラ
32 ガイドローラ
33 センサ
34 磁気ヘッド
34c 制御手段
35 プラテンローラ
36 ガイドローラ
37 搬送ローラ
38 セラミックヒータ
38c 制御手段
39 ガイドローラ
40 搬送ローラ
43 センサ
44 プラテンローラ
45 搬送ローラ
46 搬送ローラ
47 搬送ローラ
48 搬送ベルト
49a 搬送路
49b 搬送路
50 搬送路
51 センサ
52 プラテンローラ
53 サーマルヘッド
53c 制御手段
54 搬送路
55a 搬送路切換手段
55b 搬送路切換手段
56a 搬送路
56b 搬送路
57a リミットスイッチ
57b リミットスイッチ
58 搬送ベルト
59 搬送ローラ
60 ガイドローラ
61 出口
231 ウエハ
232 ウエハ基板
233 集積回路
234 接触端子
235 CPU
236 ROM
237 RAM
238 入出力用インターフェース
239 RAM記憶領域の情報

Claims (17)

  1. 支持体上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を設けた熱可逆記録媒体において、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合して用いることを特徴とする熱可逆記録媒体。
  2. 直鎖炭化水素含有化合物(B)の融点が50℃以上且つ100℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の熱可逆記録媒体。
  3. 直鎖炭化水素含有化合物(A)として、尿素結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可逆記録媒体。
  4. 直鎖炭化水素含有化合物(A)として、スルホニル結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可逆記録媒体。
  5. 直鎖炭化水素含有化合物(A)として、アミド結合とカルボキシル基を有する直鎖炭化水素含有化合物を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可逆記録媒体。
  6. 直鎖炭化水素含有化合物(B)が、脂肪族モノカルボン酸、脂肪酸エステル、高級アルキル基を有するケトン、二塩基酸エステル、多価アルコールジ脂肪酸エステル、脂肪族アミド化合物、脂肪族ウレア化合物から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体。
  7. 前記樹脂母材が架橋されたものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1に記載の感熱層と情報記録部を有し、カード状であることを特徴とする熱可逆記録媒体。
  9. 該情報記録部が磁気記録層、IC、光メモリから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載の熱可逆記録媒体。
  10. 支持体上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を設けた熱可逆記録媒体の製造方法において、樹脂溶液中に1種以上の前記有機低分子物質を固体状態で分散した分散液を支持体上に塗布し加熱乾燥させ、該加熱乾燥時に前記有機低分子物質が分散溶媒に溶解し感熱層を形成する段階を有し、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合したものが用いられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体を製造する方法。
  11. 請求項1乃至9のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体を用い、加熱により画像の記録と消去を行なう熱可逆記録媒体の画像処理装置。
  12. セラミックヒータにより画像を消去することを特徴とする請求項11に記載の画像処理装置。
  13. 支持体の感熱層形成面の反対面に接着剤層又は粘着剤層が設けられ、ラベル状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の熱可逆記録媒体。
  14. ディスク上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化し、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合して用いられる請求項1乃至7のいずれか1に記載の感熱層が形成されたことを特徴とする可逆表示付ディスク。
  15. ディスク上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化し、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合して用いられる感熱層が形成された支持体の感熱層形成面の反対面に接着層又は粘着層が設けられた請求項13に記載のラベル状熱可逆記録媒体を貼着したことを特徴とする可逆表示付ディスク。
  16. ディスクパッケージ上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化し、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合して用いられる請求項1乃至7のいずれか1に記載の感熱層が形成されたことを特徴とする可逆表示付ディスクパッケージ。
  17. ディスクパッケージ上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明度が可逆的に変化し、該有機低分子物質として、尿素結合、スルホニル結合、アミド結合の少なくとも一つとカルボキシル基を有する融点100℃以上で130℃未満の直鎖炭化水素含有化合物(A)の少なくとも一種と、該直鎖炭化水素含有化合物(A)の融点より20℃以上低い融点の直鎖炭化水素含有化合物(B)の少なくとも一種を該化合物(A)と該化合物(B)の混合比が90:10〜2:98で混合して用いられる感熱層が形成された支持体の感熱層形成面の反対面に接着層又は粘着層が設けられた請求項13に記載のラベル状熱可逆記録媒体を貼着したことを特徴とする可逆表示付ディスクパッケージ。
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