JP3925896B2 - 熱可逆記録媒体及び可逆表示機能付のディスク、ディスクカートリッジ、テープカセット - Google Patents
熱可逆記録媒体及び可逆表示機能付のディスク、ディスクカートリッジ、テープカセット Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱層の温度による可逆的な透明度変化を利用して、画像の形成及び消去を何度でも繰り返して行なうことのできる熱可逆記録媒体、ラベル、カード、ディスク、ディスクカートリッジ及びテープカセットとそれらを用いた記録、消去の方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、一時的な画像表示が行なえ、不要となったときにはその画像の消去ができ、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を有する熱可逆記録媒体が注目されている。その代表的なものとしては、特開昭55−154198号公報に記載の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の樹脂母材中に高級脂肪酸等の有機低分子物質を分散した熱可逆記録媒体が知られている。しかし、これらの従来の熱可逆記録媒体は、透光・透明性を示す温度範囲の幅が2〜4℃と狭い欠点があり、透光・透明性や遮光・白濁性を利用して画像を形成する際の温度制御に難があった。この点に考慮して、本発明者らは、特開平2−1363号公報、特開平3−2089号公報に記載されているように、高級脂肪酸と脂肪族ジカルボン酸を混合して用いることにより、透明になる温度範囲を20℃前後まで広げ、画像を消去(透明化)することを容易にできることを明らかにした。
【0003】
一方、記録装置の小型化や低価格化のために、消去用の特別な加熱手段を用いることなく、一つのサーマルヘッドで画像の形成と消去の両方を行なうオーバーライト記録が望まれている。サーマルヘッドでの加熱のように加熱時間がミリ秒単位となる場合には、上記のような従来の熱可逆記録媒体は、白濁画像を形成した後、室温より高い温度で長期間保存すると画像を消去(透明化)しにくくなり充分なコントラストが得られないという欠点があった。
【0004】
この消去性の低下の解決手段として、特開平8−72416号公報には特定の放射線硬化型樹脂を混合することが、特開平10−100547号公報には感熱層中に反応性ポリマーを含有させることが提案されている。これらは従来の熱可逆記録媒体と比べると消去性は向上しているが、処理速度が速くなりサーマルヘッドの加熱時間が短くなると充分な消去性を得ることができず、ひいては充分なコントラストを得ることができなかった。
【0005】
さらに、特開平8−72416号公報記載の技術では、樹脂母材と放射線硬化型樹脂を混合しているだけであり、樹脂母材の熱可塑性樹脂は架橋されていないため、繰り返し耐久性が劣るという問題があった。また、特開平10−100547号公報のものでは、紫外線照射によって架橋する場合には一部混合されている反応性ポリマーだけが架橋するため、やはり繰り返し耐久性が劣り、電子線照射によって架橋する場合には良好な繰り返し耐久性が得られるものの、大掛かりで高価格の設備が必要になるという欠点があった。
一方、近年の環境に対する関心の高まりから、材料中に塩素を含まない材料を用いることが求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、このような現状に鑑み、処理速度が速くなりサーマルヘッドでの加熱時間が短くなっても充分な消去性を有し、高コントラスト画像が得られる熱可逆記録媒体を提供することである。また、本発明の他の目的は、高価な設備を導入することなく、良好な繰り返し耐久性が得られる熱可逆記録媒体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、本発明の(1)「温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を有する熱可逆記録媒体において、該感熱層が樹脂マトリックス中に分散された有機低分子物質粒子からなり、該樹脂マトリックスが、両末端の架橋反応性官能基と、該架橋反応性官能基間に環状構造を有さないメチレン鎖を有する柔軟なセグメントと環状構造を有する剛直なセグメントを有し、該両末端の架橋反応性官能基を架橋させた硬化樹脂であることを特徴とする熱可逆記録媒体」、(2)「前記剛直なセグメントの比率が10%以上75%以下であることを特徴とする前記第(1)項に記載の熱可逆記録媒体」、(3)「樹脂マトリックスのガラス転移点が40℃以上であることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の熱可逆記録媒体」、(4)「前記樹脂マトリックスのゲル分率が50%以上であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の熱可逆記録媒体」、(5)「前記熱可逆記録媒体が前記感熱層とは別の情報記録部を有しカード状であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の熱可逆性記録媒体」、(6)「前記情報記録部が磁気層、IC、光メモリから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の熱可逆記録媒体」、(7)「熱可逆記録媒体を構成する支持体の感熱層と反対側の表面上に接着層もしくは粘着層を設けてなり、ラベル状であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の熱可逆性記録媒体」によって達成される。
【0008】
また、上記課題は、本発明の(8)「情報記録が書き換え可能なディスク、情報記憶が書き換え可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ、又は情報記録が書き換え可能なテープカセット上に前記第(7)項に記載のラベル状熱可逆性記録媒体を貼着したことを特徴とする可逆表示機能付きディスク、可逆表示機能付きディスクカートリッジ、又は可逆表示機能付きテープカセット」によって達成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可逆記録媒体は、前記のごとき透明度変化(透明状態、白濁不透明状態)を利用するものであるが、この透明状態と白濁不透明状態の違いは次のように推測される。
【0011】
すなわち、(i)透明の場合には樹脂母材中に分散された有機低分子物質の粒子と樹脂母材は隙間なく密着しており、また粒子部内にも空隙はなく、片側から入射した光は散乱されることなく反対側に透過するため透明に見えること、また、(ii)白濁の場合には有機低分子物質の粒子は有機低分子物質の微細な結晶が集合した多結晶で構成され、結晶の界面若しくは粒子と樹脂母材の界面に隙間ができ、片側から入射した光は空隙と結晶、空隙と樹脂の界面で屈折、反射し、散乱されるため白く見えること、等に由来している。
【0012】
図1は、本発明の熱可逆記録媒体の1例における温度−透明度変化を判り易く説明するものであり、図1において、樹脂母材とこの樹脂母材中に分散された有機低分子物質とを主成分とする感熱層は、例えばT0以下の常温で白濁不透明状態にある。
これを加熱していくと温度T1から徐々に透明になり始め、温度T2〜T3に加熱すると透明となり、この状態で再びT0以下の常温に戻しても透明のままである。これは温度変化の際の樹脂母材の体積変化率又は変化速度と、有機低分子物質粒子の体積変化率又は変化速度との違いに起因するもので、例えば、温度T1付近から樹脂が軟化し始め、軟化が進むにつれ、樹脂が例えば収縮し樹脂と有機低分子物質粒子との界面若しくは粒子内の空隙を減少させるため、徐々に透明度が上がり、温度T2〜T3では有機低分子物質が半溶融状態となり、残った空隙を溶融した有機低分子物質が埋めることにより透明となり、種結晶が残ったまま冷却されることにより、比較的高温で結晶化し、その際樹脂がまだ軟化状態のため、結晶化にともなう粒子の体積変化に樹脂が追随するため、空隙ができず透明状態が維持されるためと考えられる。
【0013】
さらにT4以上の温度に加熱すると、最大透明度と最大不透明度との中間の半透明状態になる。次に、この温度を下げていくと、再び透明状態をとることなく最初の白濁不透明状態に戻る。これは温度T4以上で有機低分子物質が完全に溶融した後、過冷却状態となり、T0より少し高い温度で結晶化し、その際、樹脂が結晶化にともなう体積変化に追随できず、空隙が発生するためであると思われる。
ただし、図1に示した温度−透明度変化曲線は代表的な例を示しただけであり、材料を変えることにより各状態の透明度、発色度等はその材料に応じて変化が生じることがある。
【0014】
本発明の記録層がサーマルヘッドでの加熱時間が短くなっても充分な消去性を有し、良好な繰り返し耐久性が得られるかは定かではないが、本発明の樹脂の場合、両末端の架橋反応性官能基間に柔軟なセグメントと剛直なセグメントを持ち架橋された樹脂マトリックスにおいて架橋後の樹脂マトリックスのうちの柔軟なセグメント成分がサーマルヘッドのような短時間の加熱においても溶融した低分子物質の結晶化の際に、結晶化に伴う粒子の体積変化に追随し、透明になり易くしているためと考えられる。更に繰り返し耐久性においては樹脂の剛直なセグメント成分の凝集力が、熱と圧力による変形の応力に対する耐久性を発現するものと考えられる。
【0015】
本発明の樹脂マトリックス中の剛直なセグメントの比率は10%以上75%以下が好ましく、更に好ましくは30%以上60%以下が好ましく、特に好ましくは45%以上65%以下がよい。剛直なセグメントの比率が少なすぎると繰り返し耐久性が劣り、剛直なセグメントの比率が多すぎると消去性が悪くなるという問題が起こり、サーマルヘッドのような短時間の加熱では消去し難くなるばかりか、室温より高い温度で長時間の保存によっては消去できなくなるという問題が起こる。
【0016】
また、本発明の樹脂マトリックスのガラス転移温度は40℃以上が好ましく、更に好ましくは60℃以上100℃以下が好ましい。ガラス転移温度が低すぎると記録された画像を保存する際に耐熱性に劣り、ガラス転移温度が高すぎると消去性が低下する。
【0017】
また、本発明の樹脂マトリックスは架橋されており、そのゲル分率は50%以上であることが好ましく、さらに好ましくは70%以上であることが好ましく、特に好ましくは80%以上であることが好ましい。サーマルヘッド等による画像形成、消去の繰り返しに対する耐久性を向上させるためには樹脂マトリックスが架橋されていることが好ましく、ゲル分率は高いほど架橋がなされていることを表わしているからであり、ゲル分率が50%より少ないと架橋の効果は表われない。
【0018】
本発明において樹脂マトリックス中の柔軟なセグメント成分は、環状構造を有さないメチレン鎖を有する部分のことであり、例えば、ウレタン結合でイソシアネートとポリオールを反応させて樹脂を合成して行く場合、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメチレンカーボネートのようなベンゼン環のような環状構造を有さないポリオール類によって導入することができるが、このような方法に限定されるものではない。
【0019】
また、樹脂マトリックス中の剛直なセグメント成分は、ベンゼン環のような芳香族環や複素環の環状構造を有する部分のことであり、例えば、ウレタン結合でイソシアネートとポリオールを反応させて樹脂を合成して行く場合、ベンゼン環を有するビスフェノールにポリオールを付加したり、ポリオール中にベンゼン環を有するビスヒドロキシエトキシベンゼンのようなポリオール類によって導入されたり、イソシアネートで、TDI、MDI、NDI、TODI、XDI、LDI、TMXDI、フェニレンジイソシアネート等のベンゼン環構造を持つイソシアネートによって導入することができるが、このような方法に限定されるものではない。
【0020】
本発明における塩素を含まない樹脂母材の架橋方法として、熱や紫外線、電子線によるものがあるが、電子線によるものは設備が高価であるため熱や紫外線によるものが好ましい。紫外線によるものは、硬化させるために長期間の保存の必要性がないという長所があり、熱硬化によるものは設備が紫外線より安価であるという長所がある。
【0021】
これらの材料の代表的な例としては、ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂や、ポリエーテル等とイソシアネート化合物の組み合わせと、アクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有する熱可塑性樹脂とアクリルもしくはメタクリル系モノマーの組み合わせ等があるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
アクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有する熱可塑性樹脂とアクリルもしくはメタクリル系モノマーの組み合わせの場合には、架橋させる方法として二つの方法がある。一つは、有機過酸化物を混合して加熱することによるラジカルを発生させて樹脂のアクリロイル基もしくはメタクリロイル基とモノマーを反応させ樹脂を架橋させる方法であり、もう一つは光重合開始剤を混合して紫外線を照射することによってラジカルを発生させて樹脂のアクリロイル基もしくはメタクリロイル基とモノマーを反応させ樹脂を架橋する方法である。両者のうち、有機過酸化物を用いる方法は熱により架橋が可能であり、前述のように高価な設備が不必要であるため、より好ましい。
【0023】
本発明で用いられるアクリルもしくはメタクリル系モノマーとしては、一般的に紫外線硬化や電子線硬化用樹脂として用いられる官能性モノマーやオリゴマーを用いることができるが、柔軟な構造を有するものが好ましい。すなわち、脂肪族系が好ましく、芳香族系でも鎖式構造を有するものが好ましく、また、3官能性以上の多官能性モノマーより単官能性乃至2官能性モノマーが好ましい。具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
単官能性モノマーの例:
メタクリル酸(MMA)、
メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)、
メタクリル酸−2−ヒドロキプロピル(HPMA)、
メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMMA)、
メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩(DMCMA)、
メタクリル酸ジエチルアミノエチル(DEMA)、
メタクリル酸グリシジル(GMA)、
メタクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFMA)、
メタクリル酸アリル(AMA)、
ジメタクリル酸エチレングリコール(EDMA)、
ジメタクリル酸トリエチレングリコール(3EDMA)、
ジメタクリル酸テトラエチレングリコール(4EDMA)、
ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール(BDMA)、
ジメタクリル酸−1,6−ヘキサンジオール(HXMA)、
トリメタクリル酸トリメチロールプロパン(TMPMA)、
メタクリル酸−2−エトキシエチル(ETMA)、
2−エチルヘキシルアクリレート、
フェノキシエチルアクリレート、
2−エトキシエチルアクリレート、
2−エトキシエトキシエチルアクリレート、
2−ヒドロキシエチルアクリレート、
2−ヒドロキシプロピルアクリレート、
ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、
N−ビニルピロリドン、
酢酸ビニル、
【0025】
2官能性モノマーの例:
1,4−ブタンジオールアクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、
1,9−ノナンジオールジアクリレート、
ネオペンチルグリコールジアクリレート、
テトラエチレングリコールジアクリレート、
トリプロピレングリコールジアクリレート、
ポリプロピレングリコールジアクリレート、
ビスフェノールA.EO付加物ジアクリレート、
グリセリンメタクリレートアクリレート、
ネオペンチルグリコールのプロピレンオキサイド2モル付加のジアクリレート、
ジエチレングリコールジアクリレート、
ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、
ヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールのエステルのジアクリレート、
2,2−ビス(4−アグリロキシ・ジエトキシフェニル)プロパン、
ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、
ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、
2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、
トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、
トリシクロデカンジメチロールジアクリレートのε−カプロラクトン付加物、
1,6−ヘキサンジオールのジグリシルエーテルのジアクリレート、
【0026】
多官能性モノマーの例:
トリメチロールプロパントリアクリレート、
ペンタエリスリトールトリアクリレート、
グリセリンPO付加トリアクリレート、
トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、
トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレート、
グリセリルプロポキシトリアクリレート、
ジペンタエリスリトール・ポリアクリレート、
ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のポリアクリレート、
プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、
ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロピントリアクリレート、
プロピオン酸・ジペンタエリスリトールのテトラアクリレート、
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、
プロピオン酸ジペンタエリスリトールのペンタアクリレート、
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、
DPHAのε−カプロラクトン付加物、
【0027】
アクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有する熱可塑性樹脂100部に対してアクリルもしくはメタクリル系モノマーの混合重量比は、1以上が好ましく、3以上が更に好ましく、5以上が特に好ましく、また、70以下が好ましく、50以下が更に好ましい。混合量が少なすぎると、繰り返し耐久性が低下し、多すぎると透明性が低下するという欠点がある。
【0028】
また、これらの熱可塑性樹脂のアクリロイル基もしくはメタクリロイル基に対して、アクリルもしくはメタクリル系モノマーのアクリロイル基もしくはメタクリロイル基は、0.02当量以上が好ましく、0.05以上が更に好ましく、また、2当量以下が好ましく、1当量以下が更に好ましく、0.8当量以下が特に好ましい。この当量が少なすぎると繰り返し耐久性が低下し、多すぎると透明性が低下するという欠点がある。
【0029】
本発明に使用される有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシカーボネート等が用いられる。
【0030】
本発明に使用される光重合開始剤は、通常の紫外線硬化樹脂に使用される材料の中から選択される。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上混合して使用される。添加量としては架橋剤1重量部に対して0.005〜1.0重量部が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.5重量部である。更に、芳香族系の第3級アミンや脂肪族アミン系等の光重合促進剤を添加してもよい。これらの光重合促進剤は、単独で又は2種以上混合して使用される。添加量としては光重合開始剤1重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、更に好ましくは0.3〜3重量部である。
【0031】
本発明においては、感熱層の熱圧力段差が60%以下であり、更に好ましくは50%以下であり、特に好ましくは40%以下であることが好ましい。また、熱圧力段差変化率は70%以下であることが好ましく、更に好ましくは50%以下であり、特に好ましくは40%以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の熱可逆記録媒体の表示部である感熱層の熱圧力段差量及び熱圧力段差変化率は以下のように定義されるものである。
熱圧力段差量とは、加熱時の塗膜の硬さを示す物性であり、数値が小さいほど塗膜が硬いことを示している。熱圧力段差量の値が60%以下になると、特にサーマルヘッド等による繰り返し画像形成消去に対する耐久性が向上する。
【0033】
熱圧力段差量は、次の方法により測定される。先ず、熱圧力印加装置として図15に挙げたユニークマシナーリ株式会社製のほホットスタンプ型エアー式卓上TCフィルム消去装置テスト機を用いる。図15(a)は熱圧力印加装置を正面から見た概略図であり、また、図15(b)は横から見た概略図である。熱圧力印加装置は、この図に表わすように、圧力調製部であるエアーレギュレータ(103)、時間調製部である印字タイマー(105)、温度調製部である温調器(112)、及び熱圧力印加部である印字ヘッド部(101)、また、記録媒体を支持するサンプル支持台(102)より構成される。また、印字ヘッド(101)は熱圧力段差量測定用に改良したものを用い、図16に挙げる印字ヘッドを使用する。印字ヘッド材質としてはAlを使用し、図中突起部(X)の感熱層表面と接触する部分の表面性は図示したごとく、表面粗さ(Ry)が0.8μm以下(JISB0301−1982、B0601−1994に準じる)であり、また突起部の面積は0.225cm2である。また、サンプル支持台(102)には熱圧力印加時に圧力が分散されるのを防ぐために、図17のようにAl板(102−1)上に厚さ1mmのフッ素ゴム(102−2)(スプリング硬さHs65)を貼着した支持台の上に厚さ1mmのステンレス板(102−3)を置いたものを用いる。
【0034】
次に、熱圧力段差量測定のための熱圧力印加条件としては、前記図15の熱圧力印加装置において、エアーレギュレータ(103)を調整し、エアゲージ(104)圧力値が2.5kg/cm2になるように印加圧力を設定し、次に、印字タイマー(105)を調整し、印加時間が10秒になるように設定し、また次に、温調器(112)を調整し、印加温度が130℃になるように設定する。ここで印加温度については、ヒーター及び温度センサー(108)により調節されている値であり、印字ヘッド表面の温度にほぼ近似している。
【0035】
次に、熱圧力印加装置により印加される熱圧力段差値の測定方法について説明する。測定装置として、株式会社小坂研究所社製の二次元粗さ解析装置サーフコーダAY−41、記録計RA−60E及びサーフコーダSE30Kを用い、先ず、サーフコーダSE30Kの設定を縦倍率(V);2000、横倍率(H);20に設定し、次にサーフコーダAY−41の設定を基準長さ(L);5mm、送り速さ(Ds);0.1mm/secに設定し、測定結果をRA−60Eに記録させ、その記録されたチャートにより熱圧力印加部の熱圧力段差値(Dx)を読み取ればよい。また、これらの設定は一例を示したものであり、測定に応じて任意に変更可能である。なお、この設定は図18に表わすように熱圧力印加部(101−1)の巾方向について2mm間隔で位置を変更し、D1〜D5の5点について測定し、その平均値を熱圧力段差平均値(Dm)とする。
【0036】
この熱圧力段差平均値(Dm)と感熱記録層膜厚(DB)により熱圧力段差量(D)は下記式により求められる。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、感熱記録層膜厚(DB)とは、前記したごとく支持体上に形成された感熱層の膜厚であり、いずれもTEM(透過型電子顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)等の断面観察により調べることができる。
【0039】
次に、熱圧力段差変化率とは、加熱時の塗膜の硬さの経時での変化度合を表わす物性であり、数値が小さいほど塗膜が安定であることを示している。熱圧力段差変化率が70%以下になると、本発明の効果が顕著に表われ、特に、記録媒体の透明化温度の範囲、巾等の特性の安定が顕著に表われるのは、この数値を境にして塗膜の熱的物性の安定性が特に向上するものと考えられる。
熱圧力段差変化率は下記式によって求められる。
【0040】
【数2】
【0041】
ここで、初期熱圧力段差量(DI)とは、画像表示部が形成されてからまず1回目に測定した値であり、形成直後の値でなくてもかまわない。次に、経時熱圧力段差量(DD)とは、初期と同時期に画像表示部を形成したサンプルを50℃環境下に24時間放置してから測定した値である。これらはいずれも前記した熱圧力段差測定方法により測定、算出された値であることはいうまでもない。この熱圧力段差変化率を測定する場合、前記の条件(2.5kg/cm2、130℃)で段差ができない場合には圧力、温度を上げることも可能である。この熱圧力段差量測定は、前述の可逆性感熱記録媒体において、(1)記録層のみのもの、(2)保護層を有するもの、の双方に適用可能である。
【0042】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体の層構成としては、実開平2−3876号公報に記載されているように、支持体上に感熱記録層と磁性材料を主成分とする磁気記録層を有すると共に、少なくとも感熱記録層直下又は支持体の感熱記録層対応部分が着色されている層構成が挙げられる。または、特開平3−130188号公報に記載されているように支持体上に磁気記録層、その上に光反射層、更にその上に感熱層が設けられているような層構成等が挙げられるが、この場合に、磁気記録層は支持体裏面か、あるいは支持体との感熱層の間に設けているかのどちらでもよく、また、これらの他の層構成であっても何等差し支えはない。
【0043】
前記のような可逆性感熱記録媒体の層構成であっても熱圧力段差量測定には支障はなく、このような構成においても感熱層の表面に熱圧力印加を行なうことにより熱圧力段差量の測定を行なうことができる。
【0044】
上記構成において、支持体上に可逆性感熱層が設けられており、その上に保護層が形成されている場合に、可逆性感熱層を表面に露出させて測定を行なうには次の方法がある。まず、前記したTEM、、SEM等の断面観察により可逆性感熱層及び保護層の膜厚を調べておき、次に保護層膜厚分を削り取ればよい。この保護層を削り取る方法は図19に挙げるように、上記構成の感熱記録媒体(301)を保護層を上にして厚さ2mmのステンレス板の支持台(302)に固定し、次に、真ちゅうからなる直径3.5cmの円柱にサンドペーパー(粗さ800番)を巻きつけた表面切削用部材(303)を前記した保護層上に置き、円柱が回転しないように支持しながら一定方向(304)に平行移動させる。このときに法線方向から加圧する圧力は1.0〜1.5kg/cm2であり、移動回数については、まず媒体(301)の表面切削前の厚みを電子マイクロメータ(膜厚計)で測定しておき、表面切削すると共に厚みを測定し、保護層膜厚分を削り取るまで表面切削を繰り返し行なえばよい。ここで保護層切削後に表面が粗れることが考えられるが、その場合においても、熱圧力印加部を特定することは可能であるため表面の粗れには影響を受けず熱圧力段差量測定はできる。
【0045】
上記のように記録層上に保護層が積層している構成の他に、保護層と記録層の間に設ける中間層、または保護層上に設ける印刷層、あるいは記録層上に耐熱性フィルム等を貼着した層等を設けた構成においても、前記した方法を用いて記録層表面を露出することは可能であり、熱圧力段差量測定を行なうことができる。
【0046】
本発明の熱可逆記録媒体において、感熱層中樹脂のゲル分率値は画像耐久性や過剰のエネルギーでの耐久性の向上において、50%以上でないと架橋された効果がなく、好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上であることが要求される。ゲル分率の測定方法としては、支持体上に感熱層を任意の膜厚で形成してその膜の初期重量を測定し、その後に膜を400メッシュ金網に挟んで、架橋前の樹脂が可溶な溶剤中に24時間浸してから真空乾燥し、乾燥後の重量を測定する。ゲル分率の計算は以下の式に従って行なう。
【0047】
【数3】
ゲル分率(%)=[乾燥後重量(g)/初期重量(g)]×100
【0048】
この計算式でゲル分率を算出するときに、感熱層中の樹脂成分以外の有機低分子物質の重量を除く必要があり、この場合には、ゲル分率計算は以下の式に従って行なう。
【0049】
【数4】
上式において、あらかじめ有機低分子物質重量がわからないときには、TEM、SEM等の断面観察により単位面積当たりを占める面積比率を用い、樹脂と有機低分子物質の各々の比重から重量比率を求めて、有機低分子物質量を算出して、ゲル分率値を算出すればよい。
【0050】
また、上記測定方法の他に、支持体上に可逆性感熱層が設けられており、その上に前記した他の層が積層している場合、または、支持体と感熱層の間に前記した他の層がある場合には、前記したように、まずTEM、SEM等の断面観察により可逆性感熱層及びその他の層の膜厚を調べておき、前記した方法を用いてその他の層の膜厚分の表面を削り、可逆性感熱層表面を露出させると共に、可逆性感熱層を剥離して前記測定方法と同様にゲル分率測定を行なえばよい。また、この方法において、感熱層上層に紫外線硬化樹脂等からなる保護層等がある場合には、この層が混入するのを極力防ぐために、保護層分の膜厚分を削ると共に、感熱層表面も少し削りゲル分率値への影響を防ぐ必要がある。
【0051】
また、上記とは別に次のようなゲル分率測定方法がある。第1として、ソックスレー抽出器を用いて、架橋処理なしの樹脂が可溶な溶剤で、硬化皮膜中の未硬化分を抽出(4時間)し、非抽出残分の重量分率を求める方法。第2として、表面処理のPET支持体上に上記と同様に感熱層塗膜を形成し、電子線照射を行なった後に、溶剤中に浸漬し、浸漬前・後の膜厚比率を求める方法。第3として、第2の方法と同様に形成させた感熱層に溶剤をスポイトで0.2ccほど滴下し、10秒間放置した後に溶剤をふきとり、滴下前・後の膜厚比率を求める方法である。これら第1の方法では、前記したように有機低分子物質重量を除いて算出すればよい。また、第2、第3の方法では膜厚測定によるものであるため、有機低分子物質を囲む樹脂母材が完全に架橋していれば溶剤浸漬後も膜厚は変わらないと考えられるため、重量分率での方法のように有機低分子物質を考慮する必要はない。
【0052】
また、この方法で前記したように可逆性感熱層上に他の層が設けられているものを測定する場合には、まず第1の方法では前記した測定方法と同様にすればよく、また、第2、第3の方法では膜厚測定によるものであるため可逆性感熱層の上層に積層されている層のみを削り測定すればよい。
【0053】
樹脂母材中に分散される有機低分子物質としては、記録層中で粒子状になるものであればよく、一般に融点30〜200℃、好ましくは50〜150℃程度のものが使用される。このような有機低分子物質としては、アルカノール;アルカンジオール;ハロゲンアルカノール又はハロゲンアルカンジオール;アルキルアミン;アルカン;アルケン;アルキン;ハロゲンアルカン;ハロゲンアルケン;ハロゲンアルキン;シクロアルカン;シクロアルケン;シクロアルキン;飽和又は不飽和モノ又はジカルボン酸又はこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;飽和又は不飽和ハロゲン脂肪酸又はこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;アリルカルボン酸又はそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;ハロゲンアリルカルボン酸又はそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;チオアルコール;チオカルボン酸又はそれらのエステル、アミン又はアンモニウム塩;チオアルコールのカルボン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して使用される。これらの化合物の炭素数は10〜60、好ましくは10〜38、特に10〜30が好ましい。エステル中のアルコール基部分は飽和していてもよく、飽和していなくてもよく、またハロゲン置換されていてもよい。いずれにしても有機低分子物質は分子中に酸素、窒素、硫黄及びハロゲンの少なくとも1種、例えば−OH,−COOH,−CONH,−COOR,−NH−,−NH2,−S−,−S−S−,−O−,ハロゲン等を含む化合物であることが好ましい。
【0054】
本発明において前記有機低分子物質としては、低融点の有機低分子物質と、高融点の有機低分子物質とを組み合わせて用いることにより、透明化温度巾を更に拡大させることができるものが好ましい。前記低融点有機低分子物質と高融点有機低分子物質の融点の差は20℃以上が好ましく、更に好ましくは30℃以上であり、特に好ましくは40℃以上である。
【0055】
低融点有機低分子物質材料としては、融点40℃〜100℃のものが好ましく、50℃〜80℃のものが更に好ましい。高融点有機低分子物質としては、融点100℃〜200℃のものが好ましく、110℃〜180℃のものが更に好ましい。
【0056】
また次に、本発明で用いられる高融点有機低分子物質としては、脂肪族飽和ジカルボン酸、高級アルキル基を有するケトン、該ケトンから誘導されるセミカルバゾン、α−ホスホノ脂肪酸などが挙げられ、下記のものが好ましいが、これらに限定されるものではない。
これらは、一種又は二種以上選択して用いられる。
【0057】
これら融点100℃以上の有機低分子物質の具体例を以下に示す。
脂肪族ジカルボン酸の、例えば融点100〜135℃程度の具体例としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸等が挙げられる。
【0058】
本発明において用いるケトンは、ケトン基と高級アルキル基を必須の構成基として含み、その他無置換又は置換基を有する芳香環あるいは被素環を含むこともできる。前記ケトンの全炭素数は16個以上が好ましく、更に好ましくは21個以上である。また、本発明に用いるセミカルバゾンは、上記ケトンから誘導されたものである。
【0059】
本発明において使用するケトン、セミカルバゾンとしては、例えば次に示すようなものを挙げることができる。
3−オクタデカノン、
7−アイコサノン、
14−ヘプタコサノン、
18−ペンタトリアコンタノン、
テトラデカノフェノン、
ドコサノフェノン、
ドコサノナフトフェノン、
2−ヘンエイコサノンセミカルバゾン。
【0060】
本発明で用いるα−ホスホノ脂肪酸は例えばE.V.Kaurer等、J.Ak.Oil Chekist’s Soc,41,205(1964)の方法に従って、脂肪酸をHell−Volhard−Zelinskin反応によって臭素化してα−臭素化酸臭化物とし、次いでエタノールを加えα−ブロモ脂肪酸エステルを得、さらにトリエチルホスファイトと加熱反応してα−ホスホノ脂肪酸エステルとし、濃塩酸による加水分解を行なって生成物をトルエンから再結晶することにより得ることができる。
【0061】
本発明で用いるホスホノ脂肪酸に具体例を以下に示す。
α−ホスホノミリスチル酸、
α−ホスホノパルミチン酸、
α−ホスホノステアリン酸、
などが挙げられる。なお、α−ホスホノベラルゴン酸以外は2つのmp(融点)を持っている。
【0062】
これらの低融点有機低分子物質と高融点有機低分子物質の混合重量比は95:5〜5:95が好ましく、90:10〜10:90が更に好ましく、80:20〜20:80が特に好ましい。また、これらの低融点有機低分子物質、高融点有機低分子物質以外に前記した他の有機低分子物質を混合して用いてもよい。これらは下記のものが挙げられる。
【0063】
これら化合物としてはラウリン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、中でも本発明では高級脂肪酸、特にパルミチン酸、ペンタデカン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の炭素数16以上の高級脂肪酸が好ましく、炭素数16〜24の高級脂肪酸が更に好ましい。
【0064】
本発明において、透明化できる温度の巾を広げるには、前記記載した有機低分子物質を適宜組み合わせるか、または、そうした有機低分子物質と融点の異なる他の材料とを組み合わせればよい。これらは例えば特開昭63−39378号公報、特開昭63−130380号公報等や、特願昭63−14754号明細書、特開平4−235095号公報に開示されているが、これらに限定されるものではない。
【0065】
本発明の熱可逆記録媒体の感熱層の厚さは1〜30μmが好ましく、2〜20μmが更に好ましい。4〜15μmが特に好ましい。記録層が厚すぎると層内での熱の分布が発生し均一に透明化することが困難となる。また、感熱層が薄すぎると白濁度が低下し、コントラストが低くなる。なお、記録層中の脂肪酸の量を増加させ、また、感熱層中の樹脂を架橋することにより白濁度を増すことができる。なお、感熱層中の有機低分子物質と樹脂(架橋構造を有する樹脂)との割合は、重量比で2:1〜1:16程度が好ましく、1:2〜1:8が更に好ましく、1:2〜1:5が特に好ましく、1:2〜1:4がもっと好ましく、1:2.5〜1:4がそれ以上に好ましい。樹脂の比率がこれ以下になると、有機低分子物質を樹脂中に保持した膜に形成することが困難となり、またこれ以上になると、有機低分子物質の量が少ないため、不透明化が困難になる。
【0066】
また、感熱層上には感熱層を保護するために保護層を設けることができる。感熱層上に積層する保護層(厚さ0.1〜5μm)材料としては、シリコーン系ゴム、シリコーン樹脂(特開昭63−221087号公報に記載)、ポリシロキサングラフトポリマー(特開昭63−317385号公報に記載)や紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂(特開平2−566号公報に記載)等が挙げられる。これらの中には、有機若しくは無機のフィラーを含有することができる。
【0067】
更にまた、保護層形成液の溶剤やモノマー成分等から感熱層を保護するために、保護層と感熱層との間に中間層を設けることができる(特開平1−133781号公報に記載)。中間層の材料としては感熱層中の樹脂母材として挙げたものの他に下記のような熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、UV硬化樹脂、EB硬化樹脂が使用可能である。即ち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド等が挙げられる。中間層の厚さは0.1〜2μmくらいが好ましい。これ以下になると、保護効果が下がり、これ以上になると熱感度が低下する。
【0068】
可逆表示可能な感熱層と情報記憶部の両方を同一のカードに設け、情報記憶部に記憶された情報の一部を感熱層に表示することにより、カード所有者等は特別な装置がなくてもカードを見るだけで情報を確認することができ、利便性が向上する。情報記憶部は必要な情報を記憶できるものなら何でもよいが、磁気記録、IC、非接触IC、光メモリが好ましい。磁気記録層としては通常用いられる酸化鉄、バリウムフェライト等と塩ビ系やウレタン系或いはナイロン系樹脂等を用い、支持体に塗工形成されるか、または蒸着、スパッタリング等の方法により樹脂を用いず形成される。磁気記録部は支持体の感熱層の反対面に設けてもよいし、支持体と感熱層の間、感熱層上の一部に設けてもよい。また、表示に用いる可逆感熱材料をバーコード、2次元コード等により記憶部に用いてもよい。これらの中では磁気記録、ICが更に好ましい。
【0069】
本発明の熱可逆記録媒体では、支持体の感熱層形成面の反対面に接着剤層または粘着剤層を設けて熱可逆記録ラベルとすることができる。接着剤層または粘着剤層の材料は一般的に使われているものが使用可能である。具体例としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。接着剤層または粘着剤層の材料はホットメルトタイプでも良い。剥離紙を用いても良いし、無剥離紙タイプでも良い。
【0070】
このように接着剤層または粘着剤層を設けることにより、感熱層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカードなどの厚手の基板の全面もしくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着剤層または粘着剤層を設けた熱可逆記録ラベルは、前述の磁気付塩ビカードだけでなく、ICカードや光カードなどの厚手カードにも適用できる。
【0071】
また、これらの熱可逆記録ラベルはフロッピーディスクやMDやDVD−RAMなどの記憶情報が書換可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ上の表示ラベルの替わりとして用いることができる。図2に熱可逆記録ラベルをMDのディスクカートリッジ上に貼った例を示す。さらに、CD−RWなどのディスクカートリッジを用いないディスクの場合には、直接ディスクに熱可逆記録ラベルを貼ることもできる。それらの記憶内容の変更に応じて自動的に表示内容を変更するなどの用途への応用が可能である。図3に熱可逆記録ラベルをCD−RW上に貼った例を示す。CD−Rなどの追記型ディスク上に熱可逆記録ラベルを貼って、CD−Rに追記した記憶情報の一部を書換え表示することも可能である。
【0072】
図4は、AgInSbTe系の相変化形記憶材料を用いた光情報記録媒体(CD−RW)上に熱可逆記録ラベルを形成した構成の例である。基本的な構成は、案内溝を有する基体上に第一誘電体層、光情報記憶層、第二誘電体層、反射放熱層、中間層が設けられ、基体の裏面にハードコート層を有する。さらに中間層上に熱可逆記録ラベルが貼付されている。誘電体層は必ずしも記録層の両側に設ける必要はないが、基体がポリカーボネート樹脂のように耐熱性が低い材料の場合には第一誘電体層を設けることが望ましい。
【0073】
さらにまた、図5に示すようにビデオテープカセットの表示ラベルとして用いても良い。
厚手カード、ディスクカートリッジやディスク上に熱可逆記録機能を設ける方法としては上述の熱可逆記録ラベルを貼る方法以外に、それらの上に感熱層を直接塗布する方法やあらかじめ別の支持体上に感熱層を形成しておき、厚手カード、ディスクカートリッジやディスク上に感熱層を転写する方法などがある。転写する場合には、感熱層上にホットメルトタイプなどの接着層や粘着層を設けておいても良い。厚手カード、ディスク、ディスクカートリッジ、テープカセットなどのように剛直なものの上に熱可逆記録ラベルを貼着したり、感熱層を設ける場合には、サーマルヘッドとの接触性を向上させ画像を均一に形成するために弾力があり、クッションとなる層もしくはシートを剛直な基体とラベルもしくは感熱層の間に設けることが好ましい。
【0074】
本発明の熱可逆記録媒体が書換可能なバーコードを設けたものである場合は、感熱層の背面に光を正反射する層を設けることが好ましい。光を正反射する層を設けることにより、白濁部の白濁度が向上し、ひいてはコントラストが向上し、バーコードの読み取り精度を向上させることができる。光を正反射する層はAlなどの金属薄膜や金属蒸着層が好適に用いられる。
【0075】
本発明の可逆性記録媒体が、書換可能なバーコードと人間が目視で認識する画像、文字、数字などの両方を設けたものである場合には、反射率の異なる2種以上の部位からなるものとすることが好ましい。すなわち、書換可能なバーコードの背面には、上述の光を反射する層を設け、人間が目視する部位の背面には光を吸収する層、つまり着色層を設けることが好ましい。というのは、人間が目視する場合には、例えば白濁状態の画像部と着色状態の非画像部とは光量差に加えて色調差があり、かつ、目視する角度によっては非画像部からの過度の反射光によるグレアがなくなるので可逆的可視像を目視し易くするが、一方、これを反射濃度計やバーコード読取り装置のような装置で読み取る場合には、通常、光を斜めから入射させ面に対し垂直方向にセンサーを置き読み取ることになり、これは、とりもなおさず、着色層により可視光の少なくとも一部が吸収されコントラストが低くなった結果を計測するに過ぎないためである。したがって、本発明の可逆性感熱記録媒体における着色層は、可視光に対する反射率の異なる2種以上の部位からなり、かつ、その少なくとも一方の部位が可視光を吸収する層であり、他の少なくとも一部が可視光を反射する層からなるものとして、目視でも画像を認識しやすく、かつ、装置による測定でも高コントラストが得られるものとすることができる。
【0076】
例えば、本発明の可逆性感熱記録媒体は図6(a)に示されるように、支持体(11)上に、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルム、図6(b)に示されるように、支持体(11)上に、アルミ反射層(12)、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルム、図6(c)に示されるように、支持体(11)上に、アルミ反射層(12)、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設け支持体(11)の裏面に磁気記録層(16)を設けてなるフィルム、を図7に示されるように、印刷表示部(19)を有するカード(18)に加工した形であることができる。
【0077】
さらに、例えば図8(a)に示されるように、支持体(11)上に、アルミ反射層(12)、可逆性感熱記録層(13)、保護層(14)を設けてなるフィルムをカード状に加工し、ICチップを納める窪み部(23)を形成するとともにカード状に加工した形であることができる。この例においては、カード状の可逆性感熱記録媒体に書き換え記録部(24)がラベル加工されるとともに、熱可逆感熱記録媒体の裏面側には所定箇所にICチップ埋め込み用窪み部(23)が形成されており、この窪み部(23)に、図8(b)に示されるようなウェハ(231)が組み込まれて固定される。ウェハ(231)は、ウェハ基板(232)上に集積回路(233)が設けられると共に、この集積回路(233)に電気的に接続されている複数の接触端子(234)がウェハ基板(232)に設けられる。この接触端子(234)はウェハ基板(232)の裏面側に露出しており、専用のプリンタ(リーダライタ)がこの接触端子(234)に電気的に接触して所定の情報を読み出したり書き換えたりできるように構成されている。この熱可逆感熱記録カードの1つの機能例を、図9を参照しつつ説明する。
【0078】
図9(a)は、集積回路(233)を示す概略の構成ブロック図であり、図9(b)はRAMの記憶データの1例を示す構成ブロック図である。集積回路(233)は、例えばLSIで構成されており、その中には制御動作を所定の手順で実行することのできるCPU(235)と、CPU(235)の動作プログラムデータを格納するROM(236)と、必要なデータの書き込み及び読み出しができるRAM(237)を含む。さらに集積回路(233)は、入力信号を受けてCPU(235)に入力データを与えるとともにCPU(235)からの出力信号を受けて外部に出力する入出力インターフェース(238)と、図示していないが、パワーオンリセット回路、クロック発生回路、パルス分周回路(割込パルス発生回路)、アドレスデコーダ回路とを含む。CPU(235)は、パルス分周回路から定期的に与えられる割込パルスに応じて、割込制御ルーチンの動作を実行することが可能となる。また、アドレスデコード回路はCPU(235)からのアドレスデータをデコードし、ROM(236)、RAM(237)、入出力インターフェース(238)にそれぞれ信号を与える。入出力インターフェース(238)には、複数(図中では8個)の接触端子(234)が接続されており、前記の専用プリンタ(リーダライタ)からの所定データがこの接触端子(234)から入出力インターフェース(238)を介してCPU(235)に入力される。CPU(235)は、入力信号に応答して、かつROM(236)内に格納されたプログラムデータに従って、各動作を行い、かつ、所定のデータ、信号を入出力インターフェース(238)を介してカードリーダライタに出力する。
【0079】
図9(b)に示されるように、RAM(237)は複数の記憶領域(239a)〜(239g)を含む。例えば領域(239a)にはカード番号が記憶され、(239b)には例えばカード所有者の氏名、住所、電話番号等のIDデータが記憶され、領域(239c)には例えば所有者の使用しうる残存有価価値又は有価物に相当する情報が記憶され、領域(239d)(239e)(239f)及び(239g)には使用済の有価価値又は有価物に相当する情報が記憶される。
【0080】
上記の熱可逆記録媒体の画像の記録と消去の方法と装置について以下に述べる。画像の記録はサーマルヘッド、レーザ等、熱可逆記録媒体を画像上に部分的に加熱可能である画像記録手段が用いられる。画像の消去は、ホットスタンプ、セラミックヒータ、ヒートローラ、熱風等や、サーマルヘッド、レーザ等の画像消去手段が用いられる。この中ではセラミックヒータが好ましく用いられる。セラミックヒータを用いることにより、装置が小型化でき、かつ安定した消去状態が得られ、コントラストのよい画像が得られる。セラミックヒータの設定温度は110℃以上が好ましく、112℃以上が更に好ましく、115℃以上が特に好ましい。
【0081】
また、サーマルヘッドを用いることにより、更に小型化が可能となり、また、消費電力を低減することが可能であり、バッテリー駆動のハンディタイプの装置も可能となる。記録用と消去用を兼ねて一つのサーマルヘッドとすれば、更に小型化が可能となる。一つのサーマルヘッドで記録と消去を行なう場合、一度前の画像を全部消去した後、あらためて新しい画像を記録してもよいし、画像毎にエネルギーを変えて一度に前の画像を消去し、新しい画像を記録していくオーバーライト方式も可能である。オーバーライト方式では記録と消去を合わせた時間が少なくなり、記録のスピードアップにつながる。
感熱層と情報記憶部を有するカードを用いる場合、上記の装置には情報記憶部の記憶を読み取る手段と書き換える手段も含まれる。
【0082】
図10には、本発明の熱可逆記録装置の具体例を示す。
図10(a)は、本発明により画像の消去をセラミックヒータで、画像の形成をサーマルヘッドでそれぞれ行う場合の装置の概略例を示す。図10(a)の熱可逆性記録装置においては、最初、記録媒体の磁気記録層に記憶された情報を磁気ヘッドで読み取り、つぎにセラミックヒータで可逆性感熱層に記録された画像を加熱消去し、さらに、磁気ヘッドで読み取られた情報をもとにして、処理された新たな情報がサーマルヘッドにより、可逆性感熱層に記録される。その後、磁気記録層の情報も新たな情報に書き替えられる。
【0083】
すなわち、図10(a)の熱可逆性記録装置においては、感熱層の反対側に磁気記録層を設けた熱可逆記録媒体(1)は往復の矢印で図示されている搬送路に沿って搬送され、或いは搬送路に沿って装置内を逆方向に搬送される。熱可逆記録媒体(1)は、磁気ヘッド(34)と搬送ローラ(31)間で磁気記録層に磁気記録或いは記録消去され、セラミックヒータ(38)と搬送ローラ(40)間で像消去のため加熱処理され、サーマルヘッド(53)及び搬送ローラ(47)間で像形成され、その後、装置外に搬出される。先に説明したように、セラミックヒータ(38)の設定温度は110℃以上が好ましく、112℃以上が更に好ましく、115℃以上が特に好ましい。ただし磁気記録の書きかえはセラッミックヒータによる画像消去の前であっても跡であってもよい。また、所望により、セラミックヒータ(38)と搬送ローラ(40)間を通過後、又はサーマルヘッド(53)及び搬送ローラ(47)間を通過後、搬送路を逆方向に搬送され、セラミックヒータ(38)よる再度の熱処理、サーマルヘッド(53)による再度の印字処理を施すことができる。
【0084】
図10(b)の熱可逆性記録装置においては、出入口(30)から挿入された熱可逆記録媒体(1)は一点破線で図示されている搬送路(50)に沿って進行し、或いは搬送路(50)に沿って装置内を逆方向に進行する。出入口(30)から挿入された熱可逆記録媒体(1)は、搬送ローラ(31)及びガイドローラ(32)により記録装置内を搬送され、搬送路(50)の所定位置に到達するとセンサ(33)により制御手段(34C)を介してその存在を認識され、磁気ヘッド(34)とプラテンローラ(35)間で磁気記録層に磁気記録或いは記録消去され、ガイドローラ(36)及び搬送ローラ(37)間を通過し、ガイドローラ(39)及び搬送ローラ(40)間を通過し、センサ(43)により、セラミックヒータ制御手段(38C)を介してその存在を認識して作動するセラミックヒータ(38)とプラテンローラ(44)間で像消去のため加熱処理され、図示していない回転制御手段により制御(停止を含む回転速度及び回転方向の制御)される搬送ローラ(45)(46)(47)により搬送路(50)内を搬送され、所定位置にてセンサ(51)により、サーマルヘッド制御手段(53C)を介してその存在を認識して作動するサーマルヘッド(53)及びプラテンローラ(52)間で像形成され、搬送路(56a)から搬送ローラ(59)(図示していない回転手段により制御される)及びガイドローラ(60)により出口(61)を経て装置外に搬出される。ここで、セラミックヒータ(38)の設定温度は、先に説明したように、110℃以上が好ましく、112℃以上が更に好ましく、115℃以上が特に好ましい。
【0085】
また、所望により、搬送路切換手段(55a)を切り替えることにより搬送路(56b)に導き、熱可逆記録媒体(1)の押圧により入力するリミットスイッチ(57a)の作動より逆方向に動き、かつ図示していない制御手段により回転速度が制御される搬送ベルト(58)によって、熱可逆記録媒体(1)を再度、サーマルヘッド(53)及びプラテンローラ(52)間で熱処理した後、搬送路切換手段(55b)を切り替えることにより通じる搬送路(49b)、リミットスイッチ(57b)、図示していない制御手段により回転速度が制御される搬送ベルト(48)を介して順方向に搬送し、搬送路(56a)から搬送ローラ(59)及びガイドローラ(60)により出口(61)を経て装置外に搬出することができる。さらに、このような分岐した搬送路及び搬送切換手段は、セラミックヒータ(38)の両側に設けることもでき、その場合にはセンサ(43)をプラテンローラ(44)と搬送ローラ(45)の間に設けることが望ましい。
【0086】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、実施例中の「部」は重量部を表わす。
実施例1
大日本インキ工業社製磁気原反(メモリディック、DS−1711−1040:188μm厚の透明PETフィルムに磁気記録層及びセルフクリーニング層を塗工したもの)のPETフィルム側に約400Å厚のAlを真空蒸着した光反射層を設けた。その上に、
塩化ビニル−酢酸ビニル−リン酸エステル共重合体
(電気化学工業社製、デンカビニール#1000P) 10部
メチルエチルケトン 45部
トルエン 45部
よりなる溶液を塗布、加熱乾燥し、約0.5μm厚の接着層を設けた。次に、
下記構造式の根上工業社試作ポリウレタン樹脂
(UR17:固形分30%) 40部
【0087】
【化1】
下記構造式の根上工業社試作ポリウレタン樹脂
(UR10:固形分30%) 40部
【0088】
【化2】
ステアリン酸ステアリル(SIGMA試薬99%) 4部
エイコサン二酸(岡村製油(株)製、SL−20−99) 4部
光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア184) 1部
テトラヒドロフラン 112部
よりなる感熱記録層液を作成し、前記の磁気層を有するPETフィルムの接着層上に塗布し、加熱乾燥後、80W/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射して硬化させ、約11μmの感熱層を設けた。この感熱層上に
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂の75%酢酸ブチル溶液
(大日本インキ化学工業社製、ユニディックC7−175) 10部
イソプロピルアルコール 10部
よりなる溶液を塗布し、加熱乾燥後、80W/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射して硬化させ、約3μmのオーバーコート層を設け、熱可逆記録媒体を作成した。
【0089】
実施例2
実施例1と同様の大日本インキ工業社製磁気原反のPETフィルム側に約400Å厚のAlを真空蒸着した光反射層を設け、実施例1と同様に、約0.5μm厚の接着層を設けた。更にその上に、
下記構造式の根上工業社試作ポリウレタン樹脂
(UR09:固形分30%) 64部
【0090】
【化3】
実施例1で用いた根上工業社試作ポリウレタン樹脂
(UR10:固形分30%) 16部
ステアリン酸ステアリル(SIGMA試薬99%) 4部
エイコサン二酸(岡村製油(株)製、SL−20−99) 4部
光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア184) 1部
テトラヒドロフラン 112部
よりなる感熱記録層液を作成し、実施例1と同様に塗布し、加熱乾燥後、80W/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射して硬化させ、約11μmの感熱層を設け、実施例1と同様に約3μmのオーバーコート層を設け、熱可逆記録媒体を作成した。
【0091】
実施例3
実施例1と同様の大日本インキ工業社製磁気原反のPETフィルム側に約400Å厚のAlを真空蒸着した光反射層を設け、実施例1と同様に、約0.5μm厚の接着層を設けた。更にその上に、
実施例2で用いた根上工業社試作ポリウレタン樹脂
(UR09:固形分30%) 64部
下記構造式の根上工業社試作ポリウレタン樹脂
(UR15:固形分30%) 16部
【0092】
【化4】
ステアリン酸ステアリル(SIGMA試薬99%) 4部
エイコサン二酸(岡村製油(株)製、SL−20−99) 4部
光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア184) 1部
テトラヒドロフラン 112部
よりなる感熱記録層液を作成し、実施例1と同様に塗布し、加熱乾燥後、80W/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射して硬化させ、約11μmの感熱層を設け、実施例1と同様に約3μmのオーバーコート層を設け、熱可逆記録媒体を作成した。
【0093】
実施例4
東レ社製ポリエステルフィルム(ルミラー#、125μm厚)上に400Å厚のAlを真空蒸着して光反射層を設けた。その上に実施例1と同様に約0.5μm厚の接着層を設けた。更にその上に、実施例1と同様に感熱層を設け、約3μm厚のオーバーコート層を設け、熱可逆感熱記録媒体を作成した。
【0094】
この熱可逆記録媒体の支持体の感熱層面の裏面に、約5μm厚のアクリル系粘着剤層を設け、熱可逆記録ラベルを作製した。このラベルをCD−RW上に貼り合わせて可逆表示機能付きの光情報記録媒体を作製した。
【0095】
上記のように作製した光情報記録媒体を用い、CD−RWドライブ((株)リコー製 MP6200S)で記憶した情報の一部(年月日、時刻など)を、記録手段(サーマルヘッド)と消去手段(セラミックヒーター)を有する記録装置を用いて、サーマルヘッドの記録エネルギーをそれぞれの媒体の記録温度の変化に合わせて調整して感熱層へ表示記録し、可視化した。また、該ドライブを用い、光情報記録媒体の記憶層の情報を書き換え、記録装置の消去手段を用い、先の記録を消去し新たにサーマルヘッドで書き換えた情報を感熱層に書き換え、表示記録した。さらに、この表示記録の書き換えを50回繰り返したが、記録および消去は可能であった。
【0096】
比較例1
実施例1と同様の大日本インキ工業社製磁気原反のPETフィルム側に約400Å厚のAlを真空蒸着した光反射層を設け、実施例1と同様に、約0.5μm厚の接着層を設けた。更にその上に、
下記構造式の根上工業社試作ポリウレタン樹脂
(UR01:固形分30%) 80部
【0097】
【化5】
ステアリン酸ステアリル(SIGMA試薬99%) 4部
エイコサン二酸(岡村製油(株)製、SL−20−99) 4部
光重合開始剤(チバガイギー社製、イルガキュア184) 1部
テトラヒドロフラン 112部
よりなる感熱記録層液を作成し、実施例1と同様に塗布し、加熱乾燥後、80W/cmの高圧水銀灯で紫外線を照射して硬化させ、約11μmの感熱層を設け、実施例1と同様に約3μmのオーバーコート層を設け、熱可逆性記録媒体を作成した。
【0098】
測定方法
消去性の測定実験には八城電気社製印字試験装置を用い、サーマルヘッドは松下電子部品(株)製、EUX−ET8A9AS1端面型サーマルヘッド(抵抗値:1306Ω)を用いた。
【0099】
測定条件
サーマルヘッド印字条件を、パルス幅:1.62ms、ライン周期:1.8ms、印字速度:69.44mm/s、副走査密度:8dot/mmに設定し、プラテンロール圧を3kgfに設定した。
次に、透明状態の記録媒体を恒温槽で130℃、5分間加熱し常温で冷却して白濁画像形成させた。
次に、白濁画像を形成した各記録媒体を、上記同条件にて0.084mj/dot〜0.297mj/dotまで電圧を変えることでエネルギーを変化させて白濁画像上へ印字、消去を行ない各々のエネルギーにおける濃度をマクベス濃度計RD−914にて測定し、消去性を調べた。
次に、白濁画像を形成した方法と同様にして、白濁画像を形成した記録媒体を35℃環境下に3日間放置した後、前記と同じ方法で白濁画像上へ印字、消去を行ない、各々のエネルギーにおける濃度を同様に測定した。
【0100】
結果
実施例1の測定結果を図11に、実施例2の測定結果を図12に、実施例3の測定結果を図13に、比較例1の測定結果を図14に示す。また、記録媒体作成時に媒体を透明化したときの地肌濃度をグラフ中にあわせて示す。
ここで構造から推測される実施例1の樹脂母材中の剛直なセグメント(ベンゼン環を含む部分)の含有率は48%、実施例2のその剛直なセグメント(ベンゼン環を含む部分)の含有率は57%、実施例3のその剛直なセグメント(ベンゼン環を含む部分)の含有率は55%、比較例1のその剛直なセグメント(ベンゼン環を含む部分)はない。
以上、図11〜14のグラフから判るように、実施例においてはいずれも地肌濃度まで消去可能であり、保存後の消去も可能であることがわかる。比較例1では、消去性はよいが、媒体の白濁度が低くコントラストが取れない。
【0101】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明より明らかなように、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を有する熱可逆媒体において、両末端の架橋反応性官能基間に環状構造を有さないメチレン鎖を有する柔軟なセグメントと環状構造を有する剛直なセグメントを有し、該両末端の架橋反応性官能基を架橋させた硬化樹脂を、熱可逆記録媒体の感熱層の樹脂マトリックスとして用いることにより、処理速度が速く、加熱時間が短くても充分な消去が行なえ、高コントラスト画像が得られる。この熱可逆記録媒体はラベル、カードの形態として使用でき、また、ディスク、ディスクカートリッジ、テープカセット等に貼着して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る熱可逆記録媒体による透明度の変化を表した図である。
【図2】熱可逆記録ラベルをMDのディスクカートリッジ上に貼った例を示す図である。
【図3】熱可逆記録ラベルをCD−RW上に貼った例を示す図である。
【図4】熱可逆記録ラベルを光情報記録媒体(CD−RW)上に形成した構成の例を示す図である。
【図5】熱可逆記録ラベルをビデオテープカセットに貼った例を示す図である。
【図6】本発明に係る熱可逆記録媒体の層構成例を示す図である。
【図7】本発明に係る熱可逆記録媒体の1例を説明する図である。
【図8】本発明に係る熱可逆記録媒体の別の1例を説明する図である。
【図9】本発明に係る熱可逆記録媒体の使用例を説明する図である。
【図10】本発明に係る熱可逆記録装置の1例を説明する図である。
【図11】実施例1の熱可逆記録媒体の印加エネルギー−濃度の関係を示す図である。
【図12】実施例2の熱可逆記録媒体の印加エネルギー−濃度の関係を示す図である。
【図13】実施例3の熱可逆記録媒体の印加エネルギー−濃度の関係を示す図である。
【図14】比較例1の熱可逆記録媒体の印加エネルギー−濃度の関係を示す図である。
【図15】熱圧力印加装置を示す概略図である。
【図16】図16の熱圧力印加装置の印字ヘッドの正面図(a)、及び側面図(b)を示す図である。
【図17】図16の熱圧力印加装置を用いる場合のサンプル支持台を示す図である。
【図18】図16の熱圧力印加装置により熱圧印加された部分の拡大図である。
【図19】保護層切削装置を示す概略図である。
【符号の説明】
1 熱可逆記録媒体
11 支持体
12 アルミ反射層
13 可逆性感熱記録層
14 保護層
16 磁気記録層
17 書き替え記録部
18 カード
19 印刷表示部
20 磁気記録部
23 ICチップ用窪み部
24 書き換え記録部のラベル加工
30 出入口
31 搬送ローラ
32 ガイドローラ
33 センサ
34 磁気ヘッド
34C 制御手段
35 プラテンローラ
36 ガイドローラ
37 搬送ローラ
38 セラミックヒータ
38C 制御手段
39 ガイドローラ
40 搬送ローラ
43 センサ
44 プラテンローラ
45 搬送ローラ
46 搬送ローラ
47 搬送ローラ
48 搬送ベルト
49b 搬送路
50 搬送路
51 センサ
52 プラテンローラ
53 サーマルヘッド
53C 制御手段
55a 搬送路切換手段
55b 搬送路切換手段
56a 搬送路
56b 搬送路
57a リミットスイッチ
57b リミットスイッチ
58 搬送ベルト
59 搬送ローラ
60 ガイドローラ
61 出口
231 ウエハ
232 ウエハ基板
233 集積回路
234 接触端子
235 CPU
236 ROM
237 RAM
238 入出力インターフェース
239 RAM記憶領域の情報
101 印字ヘッド、熱ヘッド
101−1 熱圧力印加部
102 サンプル支持台
102−1 Al板
102−2 フッ素ゴム
102−3 ステンレス板
103 エアレギュレータ及びフィルター
104 エアゲージ
105 印字タイマー
106 ONE SHOTスイッチ
107 印字シリンダー
108 ヒーター及び温度センサー
109 コントロールボックス
110 ホットスタンプ用指令スイッチ
111 電源スイッチ
112 温調器
113 温度警報ランプ
301 感熱記録媒体
302 支持台
303 表面切削用部材
304 表面切削用部材移動方向
Claims (8)
- 温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を有する熱可逆記録媒体において、該感熱層が樹脂マトリックス中に分散された有機低分子物質粒子からなり、該樹脂マトリックスが、両末端の架橋反応性官能基と、該架橋反応性官能基間に環状構造を有さないメチレン鎖を有する柔軟なセグメントと環状構造を有する剛直なセグメントを有し、該両末端の架橋反応性官能基を架橋させた硬化樹脂であることを特徴とする熱可逆記録媒体。
- 前記剛直なセグメントの比率が10%以上75%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可逆記録媒体。
- 樹脂マトリックスのガラス転移点が40℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可逆記録媒体。
- 前記樹脂マトリックスのゲル分率が50%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱可逆記録媒体。
- 前記熱可逆記録媒体が前記感熱層とは別の情報記録部を有しカード状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱可逆性記録媒体。
- 前記情報記録部が磁気層、IC、光メモリから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱可逆記録媒体。
- 熱可逆記録媒体を構成する支持体の感熱層と反対側の表面上に接着層もしくは粘着層を設けてなり、ラベル状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱可逆性記録媒体。
- 情報記録が書き換え可能なディスク、情報記憶が書き換え可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ、又は情報記録が書き換え可能なテープカセット上に請求項7に記載のラベル状熱可逆性記録媒体を貼着したことを特徴とする可逆表示機能付きディスク、可逆表示機能付きディスクカートリッジ、又は可逆表示機能付きテープカセット。
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