JP4267360B2 - 永久磁石式回転電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転界磁形の永久磁石式回転電機に係り、特に、ヒートポンプ用圧縮機の駆動に好適な永久磁石式回転電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の永久磁石式回転電機においては、固定子巻線に集中巻が採用され、界磁には希土類のネオジウム永久磁石が採用されつつある。そして、従来技術では、回転子鉄心にV字形状の永久磁石挿入孔を設け、これに永久磁石を挿入配置し、この永久磁石間の極間鉄心削除するように凹部を設けた永久磁石式回転電機について提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−78255号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術は、コギングトルクについて配慮がされておらず、騒音の抑圧に問題があった。
【0005】
上記従来技術では、回転子鉄心中にV字形状の永久磁石挿入孔を設けて永久磁石を配置し、このとき永久磁石の間の極間鉄心を削って凹部を設けることにより横軸リアクタンスを低減し、120度インバータで駆動しても転流失敗の虞れがなく安定に駆動できるようにしたものであるが、反面、極間鉄心が削られたことからコギングトルクが大きくなり、騒音が発生してしまうのである。
【0006】
本発明の目的は、コギングトルクを抑え低騒音化が得られるようにした永久磁石式回転電機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、回転子に永久磁石を用いた回転界磁形の永久磁石式回転電機において、
前記回転子の界磁磁極部の開角が電気角で124度の近傍に設定されるようにして前記回転子を回転軸方向に2個の部分に分割し、前記2個の部分のそれぞれの界磁磁極部の表面にそれぞれ1本のスリットを設け、
前記スリットは、それぞれの位置が、前記2個の部分の一方と他方の界磁磁極部において周方向で異なり、回転軸方向から見て前記一方と他方の界磁磁極部で相互の開角が電気角で98度の近傍になるようにして左右対称に設定することにより達成される。
【0008】
上記手段によれば、スリットの位置がずれているため、コギングトルクも位相がずれて現われ、この結果、コギングトルクが半減でき、コギングトルクに起因する騒音が低減できることになる。
【0009】
このとき、前記永久磁石がV字形とU字形、それに一文字形の何れかで構成されているようにしてもよく、更に、このとき、前記界磁磁極部の開角が電気角で124度の近傍に設定され、前記スリットの開角が電気角で98度の近傍に設定されているようにしてもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による永久磁石式回転電機について、図示の実施形態を用いて詳細に説明する。ここで、以下に説明する実施形態では、本発明を4極の永久磁石式回転界磁形回転電機に適用し、回転子の極数と固定子のスロット数との比を2:3とした場合について示し、このとき以下の各図中において、共通する符号は同一物を示すものとする。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る永久磁石式回転電機1の正面図で、図示のように、大きく分けて固定子2と回転子3で構成されている。ここで、この図1が(a)と(b)に分けて描かれている理由については後述する。
【0012】
そして、まず、固定子2は、ティース4とコアバック5が形成されている固定子鉄心6と、ティース4の間のスロット7内にティース4を取り囲むように巻装された集中巻による三相の電機子巻線8(U相巻線8a、V相巻線8b、W相巻線8c)で構成されている。
【0013】
このとき、この永久磁石式回転電機1では、上記したように、回転子3は4極であり、固定子2は、図示のように6スロットであるから、スロットピッチは電気角で120度になる。
【0014】
次に、回転子3は、図2の拡大図に示されているように、シャフト嵌合孔9を備えた回転子鉄心10の外周面近傍にV字形状の永久磁石挿入孔11を形成し、この永久磁石挿入孔11の中に永久磁石12を配置したものであり、従って、永久磁石12の磁束軸上にある部分が界磁磁極部13となる。
【0015】
このとき、永久磁石12としては、希土類のネオジウムを用いた、いわゆるネオジウム永久磁石が用いられている。そして、回転子鉄心10には、リベット孔14が設けてあり、これにより積層鉄板からなる回転子鉄心10のリベット止めが得られるようにしてある。
【0016】
そして、この実施形態では、更に界磁磁極部13の一部にスリット16が形成してあるが、ここで、図1と図2において、それらの(a)と(b)の違いについて説明すると、まず、この実施形態では、図3に示すように、回転子3が軸方向に2分割され、部分3A、3Bとして構成してあり、これが図1と図2においては、部分3Aが(a)に示され、部分3Bは(b)に示されているのである。
【0017】
そして、図1と図2の(a)に示す部分3Aの場合は、回転子鉄心10に○で囲って示したように、スリット16が界磁磁極部13の右側に形成されているのに対して、図1と図2の(b)に示す部分3Bでは、回転子鉄心10に○で囲って示したように、界磁磁極部13の左側にスリット16か形成されている点で異なっているものである。
【0018】
更に詳しく説明すると、特に図2(a)、(b)に拡大して示したように、この実施形態では、回転子鉄心10の回転軸中心0に対して、電気角で表した開角θ1のV字形状をした永久磁石挿入孔11を形成し、この永久磁石挿入孔11の中に各々2個の短冊状をしたネオジウム永久磁石12を挿入するようになっている。
【0019】
ここで、回転子鉄心10の周表面で永久磁石12の間にある部分には、凹部15が形成してあり、同じく回転子鉄心10の界磁磁極部13の周表面にはスリット16が形成してあるが、このとき、(a)に示す部分3Aと、(b)に示す部分3Bでは、スリット16が界磁磁極部13上で左右対称になるようにしてある。
【0020】
このとき、回転子鉄心10の回転軸中心0に対して、部分3Aの右側のスリット16と部分3Bの左側のスリット16の間の開角をθ2とする。ここでは、上記した永久磁石間の開角θ1を電気角で124度近傍に設定し、開角θ2は同じく電気角で98度近傍に設定した。
【0021】
図3は、回転子2の拡大斜視図で、この図から、回転子鉄心10が回転子鉄心17と回転子鉄心18の2部分に50%づつ分割されていて、スリット16が回転子鉄心17では界磁磁極部13の右側に配置され、回転子鉄心18では界磁磁極部13の左側に配置されているが、その他の部分は軸方向で同一形状を有していることがわかる。
【0022】
そして、これにより、界磁磁極部13の周方向でのスリット16の位置が、回転軸の軸方向で階段状に異なっていることがわかる。
【0023】
次に、この第1の実施形態によるコギングトルクについて、図4により説明する。ここで、この図4は、ロータ(回転子2)の位置(回転角)に対するコギングトルクの値を示したものであり、図において、特性Aは回転子鉄心17、つまり部分3Aによるコギングトルク特性で、特性Bは回転子鉄心18、つまり部分3Bによるコギングトルク特性であり、特性Cが特性Aによるコギングトルク特性と特性Bによると合成したコギングトルク特性、つまり第1の実施形態によるコギングトルク特性である。
【0024】
部分3Aと部分3Bではスリット16の位置がずれているため、特性Aのコギングトルクと特性Bのコギングトルクも位相がずれて現われ、この結果、これらの合成である特性Cのコギングトルク波形では、ピーク値は特性Aのコギングトルク波形と特性Bのコギングトルク波形の何れとも大差ない。
【0025】
ここで、回転子3を2分割してない場合、すなわち全部が部分3Aとした場合又は全部を部分3Bとした場合、特性Aのコギングトルク波形と特性Bのコギングトルク波形は、図4の特性の2倍の振幅になる。
【0026】
従って、この実施形態に係る回転子3によれば、コギングトルクが半減でき、これにより、コギングトルクに起因する騒音が低減できることになる。
【0027】
ところで、このとき、特性Aによるコギングトルク波形と特性Bによるコギングトルク波形を完全に180度位相が反転した状態にできれば、それが一番望ましく、このためには、上記した開角θ1は120度に、開角θ2は90度にすべきである。
【0028】
しかし、上記実施形態では、スリット16を設けなければならないので、上記の角度にするのは困難であり、従って、できるだけコギングトルクが少なくなるように、開角θ1を124度近傍に設定し、開角θ2は98度近傍に設定したのである。
【0029】
ここで、本発明の他の実施形態について説明すると、まず、図5は本発明の第2の実施形態で、これが図1〜図3で説明した第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態におけるV字形状をした永久磁石挿入孔11と短冊状をしたネオジウム永久磁石12に代えて、U字形状の永久磁石挿入孔19にU字形状の永久磁石20を配置した点だけであり、その他の構成は同じである。
【0030】
次に、図6は本発明の第3の実施形態で、これが図1〜図3で説明した第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態におけるV字形状をした永久磁石挿入孔11と短冊状をしたネオジウム永久磁石12に代えて、台形形状の永久磁石挿入孔21に一文字形状の永久磁石22を配置した点だけであり、その他の構成は同じである。
【0031】
従って、これら第2と第3の実施形態によっても、図1〜図3で説明した第1の実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、永久磁石式回転電機のコギングトルクが半減でき、騒音を低減させることができる。
【0033】
また、このとき、回転子鉄心を2分割して、界磁磁極部に形成したスリットを軸方向で異なった位置に配置するという簡単な構成で済むので、騒音の低減を少ないコストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による永久磁石式回転電機の第1の実施形態を正面から示した断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による回転子を拡大して示した断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による回転子を拡大して示した斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態によるロータ位置とコギングトルクの関係を示めした特性図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による回転子を拡大して示した断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態による回転子を拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
1 永久磁石式回転電機(全体)
2 固定子
3 回転子
3A 回転子の一方の部分
3B 回転子の他方の部分
4 ティース
5 コアバック
6 固定子鉄心
7 スロット
8 電機子巻線
9 シャフト嵌合孔
10 回転子鉄心
11 永久磁石挿入孔
12 永久磁石(ネオジウム永久磁石)
13 界磁磁極部
14 リベット孔
15 凹部
16 スリット
17 回転子鉄心(部分A)
18 回転子鉄心(部分B)
19 永久磁石挿入孔
20 U字永久磁石
21 台形永久磁石挿入孔
22 一文字永久磁石

Claims (2)

  1. 回転子に永久磁石を用いた回転界磁形の永久磁石式回転電機において、
    前記回転子の界磁磁極部の開角が電気角で124度の近傍に設定されるようにして前記回転子を回転軸方向に2個の部分に分割し、前記2個の部分のそれぞれの界磁磁極部の表面にそれぞれ1本のスリットを設け、
    前記スリットは、それぞれの位置が、前記2個の部分の一方と他方の界磁磁極部において周方向で異なり、回転軸方向から見て前記一方と他方の界磁磁極部で相互の開角が電気角で98度の近傍になるようにして左右対称に設定されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
  2. 請求項1に記載の永久磁石式回転電機において、
    前記永久磁石がV字形とU字形、それに一文字形の何れかで構成されていることを特徴とする永久磁石式回転電機。
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