JP4262707B2 - 光情報記録媒体及び光情報記録媒体の製造方法 - Google Patents

光情報記録媒体及び光情報記録媒体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、2層以上の情報記録層を備えた光情報記録媒体、及び、その製造方法に関する。
近年、情報記録媒体として、光ディスク等の光情報記録媒体が急速に普及しつつある。光ディスクとしては、一般に、再生専用型、追記型及び書換型のものが用いられている。再生専用型は音楽情報を記録したコンパクト・ディスク(CD)と称されるディスクや画像情報を記録したレーザ・ディスク(LD)と称されるディスクが挙げられる。また追記型は、文書ファイルや静止画ファイル等を記録するディスクが挙げられる。さらに書き換え型は、パソコン用のデータファイル等を記録する記録用ディスクとして商品化されている。
この光ディスクは、従来広く用いられている磁気ディスク等の磁気情報記録媒体に比べて、情報記録密度を非常に高くすることができる。また、情報の記録・再生を光ディスクに接触せずに行うことができるので、振動あるいは電磁界等の外乱に対する耐久性を高めることができ、寿命を長くすることができる。現在、厚さ1.2mmの透明樹脂基板に情報記録層を設け、それをオーバーコートによって保護した構造、あるいは0.6mmの透明樹脂基板の一方又は両方に情報記録層を設け、それら2枚を貼り合わせた構造の光ディスクが広く用いられている。
また、音声だけでなく映画等の動画を情報として記録するために、より大容量の光ディスクであるデジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)が開発・商品化されている。高密度光ディスクであるDVDの実現のために、レーザ波長を短く、且つ、開口数(NA:numerical aperture)の大きな対物レンズを使用する方式が採用された。しかし、短波長化と高NA化は、レーザ光の投入方向に対するディスクの傾き角度(チルト)の許容値を小さくする。チルトの許容値を大きくするには基板厚さを薄くすることが有効である。例えば、DVDではレーザ波長が650nm、NAが0.60であり、基板厚さを0.6mmとしている。厚さ0.6mmの単体の樹脂基板では機械的強度が弱くチルトを生じるため、DVDは情報記録面を内側にして2枚の基板を貼り合わせた構造になっている。さらに、貼り合わせ構造を利用した片面再生2層DVDも商品化されている。この片面再生2層DVDは、貼り合わせる2枚の基板のうち1枚の情報記録面に金、シリコン等の透光性の反射層を成膜し、もう一枚の情報記録面に従来のアルミニウム等からなる反射層を成膜しておき、これらの情報記録面が内側になるように貼り合わせている。再生時には、透光性の反射層を設けた基板側から両方の情報記録面を再生する。さらに同様の2層構成であるが、情報記録面が金属反射層ではなく、書き換え可能な薄膜記録層を設けた書き換え型DVDも提案されている。
近年、高解像度テレビ放送等に代表されるように、情報の容量がさらに大きくなり、それに伴って、記録媒体においてもさらなる高密度記録が要求されるようになっている。さらに記録密度を上げる方法として、記録・再生光の波長を短くし、対物レンズの開口数NAをより大きくすることが考えられる。この場合、レーザ光が入射する記録・再生側の基材の厚さの薄い方が、レーザスポットが受ける収差の影響を小さくすることができ、ディスクの傾き角度(チルト)の許容値を大きくすることができる。このため、記録・再生側の基材の厚さを0.1mm程度にし、開口数(NA)を0.85程度にし、レーザの波長を400nm程度にする手法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、記録・再生光のフォーカスや球面収差への影響を考慮すれば、記録・再生側の基材の厚さのばらつきを5%以内に抑えるのが好ましい。
さらに、高密度化のためには、一つの光ディスクに2層以上の情報記録層を有する多層ディスクが提案されている。この2層以上の情報記録層を備えた光ディスク(以下、「多層光ディスク」という。)では、該ディスクの一方の主面側から複数の情報記録層にレーザ光をそれぞれ照射して各層から情報を読み出している。したがって、レーザ光を照射する側からみて、1層目以外の情報記録層の情報は、隣り合う情報記録層間に存在する中間層を介して読み出される。中間層は、情報を読み出すためのレーザ光の透過経路となる。したがって、中間層の厚さはできる限り均一にする必要がある。
特開2001−357571号公報
ところで、多層光ディスクにおいては、2層の情報記録層の間に挟まれた中間層は、樹脂材料をスピンコート法によって形成されることが多い。例えば、2層の情報記録層を備えた光ディスクでは、スピンコート法により、基板上に設けられた1層の情報記録層上に樹脂材料が塗布され、硬化されて、中間層が形成される。しかし、従来のスピンコート法では、樹脂材料を基板の内周側から外周側までにわたって均一な厚さで塗布することが困難であった。特に、塗布された樹脂材料の厚さは、基板の内周側で薄く、基板の外周側で厚い傾向がある。
また、上記方式の光ディスクでは、記録・再生レーザの透過する層の厚さばらつきの許容値が非常に小さい。つまり、レーザ光が透過するおよそ0.1mmの層に対して、せいぜい±2μm程度のばらつきしか許されない。また、記録・再生側基板が厚さ0.3mm以下にまで薄型化し、射出成形できない厚さであるため、光が透過する層をこの厳しい厚さばらつきの制限を満たしながら形成することは困難である。さらに、0.3mm以下の厚さの多層ディスクの場合、溝または凹凸ピットからなる情報記録層を射出成形によって形成することは困難である。射出成形以外の手法で溝または凹凸ピットを形成する方法として、2P法という手法が広く知られている。しかし、この2P法では、厳しい厚さばらつきの許容値を実現することは容易ではない。
本発明の目的は、2層以上の情報記録層を有する光情報記録媒体の製造方法において、該2層以上の情報記録層の間に挟まれた中間層を厚さばらつきを抑制して均一な厚さで形成することである。
本発明の第1の態様にかかる光情報記録媒体の製造方法は、
(a−1)第1基板の主面に放射線硬化性樹脂を塗布する工程と、
(a−2)前記第1基板上に塗布された前記放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程と、
(b−1)一方の主面に溝又は凹凸ピットを有する第2基板の前記溝又は前記凹凸ピットを有する面に樹脂材料を塗布する工程と、
(b−2)前記第2基板上に塗布された前記樹脂材料を部分的に硬化させる工程と、
(c)前記第1基板に塗布された前記放射線硬化性樹脂と、前記第2基板に塗布された前記樹脂材料を対向させて密着させる工程と、
(d)前記放射線硬化性樹脂及び前記樹脂材料とを硬化させて中間層を形成する工程と
を含むことを特徴とする。
また、前記第1基板に塗布した前記放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程(a−2)において、前記第1基板の第1の半径よりも外周側と内周側とで、前記放射線硬化性樹脂の硬化状態を変えてもよい。
さらに、前記第1の半径は、前記第1基板の半径の90%以上であってもよい。またさらに、前記樹脂材料として粘着材を用いてもよい。また、前記樹脂材料として第2の放射線硬化性樹脂を用いてもよい。さらに、前記第2の放射線硬化性樹脂として、前記第1基板に塗布する前記放射線硬化性樹脂とは異なる材料を用いてもよい。
また、前記第2基板に塗布した前記第2の放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程(b−2)において、前記第2基板の第2の半径よりも外周側と内周側とで、前記第2の放射線硬化性樹脂の硬化状態を変えてもよい。
さらに、前記第2の半径は、前記第1の半径と同じまたはそれより大きくてもよい。
またさらに、前記第1基板に塗布した前記放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程(a−2)において、前記第1基板の第1の半径よりも内周側のみ硬化させて、外周側は未硬化状態のままとし、
前記第2基板上に塗布された前記第2の放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程(b−2)において、前記第2基板の第2の半径よりも外周側のみ硬化させて、内周側は未硬化状態のままとし、
その後に、前記第1基板に塗布された前記放射線硬化性樹脂と、前記第2基板に塗布された前記第2の放射線硬化性樹脂を対向させて密着させてもよい。
また、前記第1基板に塗布した前記放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程(a−2)において、前記第1基板の第1の半径よりも外周側のみ硬化させて、内周側は未硬化状態のままとし、
前記第2基板上に塗布された前記第2の放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程(b−2)において、前記第2基板の第2の半径よりも内周側のみ硬化させて、外周側は未硬化状態のままとし、
その後に、前記第1基板に塗布された前記放射線硬化性樹脂と、前記第2基板に塗布された前記第2の放射線硬化性樹脂を対向させて密着させてもよい。
さらに、前記放射線硬化性樹脂及び前記樹脂材料とを硬化させて中間層を形成する工程(d)において、放射線を照射することにより前記放射線硬化性樹脂及び/又は前記樹脂材料を硬化させてもよい。
またさらに、前記第1基板又は前記第2基板の少なくとも一方は、前記放射線硬化性樹脂及び/又は前記第2の放射線硬化性樹脂を硬化させる放射線に対して、透明であるものを用いてもよい。
また、前記第1基板の一方の主面に溝又は凹凸ピットを有し、前記第1基板の前記溝又は前記凹凸ピットを有する主面に前記放射線硬化性樹脂を塗布してもよい。
さらに、前記第1基板は、1層以上の記録層を有してもよい。またさらに、前記第2基板は、1層以上の情報記録層を有してもよい。
また、前記放射線硬化性樹脂及び前記樹脂材料とを硬化させて中間層を形成する工程(d)の後に、
(e)前記第1基板又は前記第2基板を剥離して、前記第1基板又は前記第2基板の前記溝又は前記凹凸ピットに対応する溝又は凹凸ピットを前記中間層の表面に形成する工程
をさらに含んでもよい。
さらに、前記工程(e)の後に、
(f)前記中間層の表面に形成された前記溝又は前記凹凸ピットに反射膜を成膜して情報記録層を形成する工程をさらに含んでもよい。
またさらに、前記中間層の表面に反射膜を成膜して情報記録層を形成する工程(f)の後に、
(g)前記情報記録層の上に光透過層を形成する工程をさらに含んでもよい。
また、前記第1基板上に塗布された前記放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程(a−2)において、前記第1基板上に塗布された前記放射線硬化性樹脂の一部のみに放射線を照射してもよい。
さらに、前記第2基板上に塗布された前記第2の放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程(b−2)において、前記第2基板上に塗布された前記第2の放射線硬化性樹脂の一部のみに放射線を照射してもよい。
またさらに、前記放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程(a−2)の後、
(a−3)前記放射線硬化性樹脂の未硬化部分の一部又は全部を除去する工程
をさらに含んでもよい。
また、前記第2の放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程(b−2)の後、
(b−3)前記第2の放射線硬化性樹脂の未硬化部分の一部又は全部を除去する工程
をさらに含んでもよい。
さらに、前記第1基板に前記放射線硬化性樹脂を塗布する工程(a−1)において、前記放射線硬化性樹脂をスピンコート法で塗布してもよい。
以上、本発明に係る光情報記録媒体の製造方法によれば、いずれも、厚さが均一化された単層構造又は複層構造をなす中間層を有するとともに、複層の情報記録層を有する光情報記録媒体を、スピンコート法により、容易に製造することができる。
また、本発明の光情報記録媒体の製造方法によれば、厚さの均一な層を容易に作製することが可能となる。特に、記録再生側基板の薄型化した光情報記録媒体の光透過層や、複数の情報記録層の各層間の厚さを均一に形成することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態に係る光情報記録媒体及びその製造方法について添付図面を参照して説明する。なお、図面において実質的に同一の図面については同一の符号を付している。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る光情報記録媒体の製造方法について、図1から図3を参照しながら説明する。この光情報記録媒体の製造方法は、以下の工程によって作製される。
(a)まず、図1(a)に示すように、一方の主面(以下、「記録層側主面」という。)に情報記録層1を有する、厚さ1.1mm、直径120mm(外径)の基板2を準備する。この基板2の中心部には、該基板2を厚さ方向に貫通する直径15mmの中心孔3が形成されている。
(b)次に、図1(b)に示すように、基板2を、記録層側主面が上向きとなるようにして回転テーブル6上にセットし、上側から中心孔3をキャップ4(孔閉止部材)で塞ぐ。このキャップ4は金属で形成され、基板2の記録層側主面と当接する部分には、テフロン(登録商標)材料からなるシールリング5を有している。また、キャップ4の上面中心部には、上方に向かって突出する軸部4aが設けられている。後で説明するように、キャップ4を基板2から離脱させる(除去する)際には、この軸部4aをつまんで、キャップ4を上向きに引っ張ることができる。
(c)基板2を回転させながら、キャップ4の略中心すなわち基板2のほぼ回転中心に、ノズル8から放射線硬化性樹脂7(例えば、UV硬化樹脂)を滴下する。すなわち、スピンコート法により、基板2の記録層側主面上ないし情報記録層1上に、放射線硬化性樹脂層7を形成する。
なお、基板2の記録層側主面ないし情報記録層1には、予め、放射線硬化性樹脂層7、又は、後で説明する中間層17との接着性を良くする処理を行っておくことが好ましい。また、このような処理を行わず、基板2を、放射線硬化性樹脂7ないしは中間層17と接着しやすい材料、例えばポリカーボネートで形成してもよい。
図1(c)に示すように、放射線硬化性樹脂7を、できるだけ基板2の回転中心に近い部位に滴下することにより、基板2の記録層側主面上ないし情報記録層1上に形成される放射線硬化性樹脂層7の厚さを、基板の内周側から基板の外周側にかけて均一にすることが容易となる。また、中心孔3をキャップ4で塞ぎ、キャップ4上に放射線硬化性樹脂7を滴下することにより、上記放射線硬化性樹脂層7の厚さの均一化効果をさらに高めることができる。また、図1の(b)、(c)に示すように、キャップ4を略円錐台形とすることによって、放射線硬化性樹脂7を基板の円周方向に均一な厚さにでき、且つ、半径方向の厚さばらつきが小さくなる。なお、放射線硬化性樹脂7の一部は、滴9となって基板2から離脱する。
一般に、スピンコート法により、基板2の記録層側主面上ないし情報記録層1上に放射線硬化性樹脂7を滴下した場合、キャップ4と基板2との間のわずかな隙間に、放射線硬化性樹脂7が回り込んでしまうことがある。しかし、上記の塗布工程では、キャップ4にシールリング5が設けられているので、上述のような不具合を防止することができる。なお、キャップ4を下方に押し付け、あるいは引っ張る機構を設ければ、キャップ4と基板2との密着性を一層高めることができる。
ノズル8からキャップ4上に滴下される放射線硬化性樹脂7の粘度は、10〜5000mPa・sの範囲内に設定される。粘度が10mPa・sより低いと、キャップ4の形状によっては、キャップ4と基板2の記録層側主面との接触部で、放射線硬化性樹脂7が波打ち、放射線硬化性樹脂層7の厚さにばらつきが生じる。他方、粘度が5000mPa・sより高いと、タクト(工程時間)が長くなりすぎる。なお、基板2上の放射線硬化性樹脂層7の厚さを25μm程度(目標値)とした場合、タクトを30秒以下にするためには、粘度が5000mPa・s以下であるのが好ましい。
しかし、基板2上の放射線硬化性樹脂層7の厚さをより均一化するために、ノズル8からキャップ4上に滴下される放射線硬化性樹脂7の粘度は30〜1000mPa・sの範囲内に設定するのが好ましく、40〜500mPa・sの範囲内に設定するのが一層好ましい。
このスピンコート法による放射線硬化性樹脂7の塗布工程では、基板2は、回転速度10000rpm以下の範囲内で3秒以上回転する。この塗布工程では、基板2が回転しているときに放射線硬化性樹脂7が継続して滴下されるので、基板2の回転速度が10000rpmを超えると、回転中心と滴下位置とのわずかな位置ずれ(芯ずれ)によっても、放射線硬化性樹脂7の滴下ないし供給に支障がでる。また、基板2の回転速度が10000rpmを超えると、放射線硬化性樹脂層7の厚さの基板の半径方向でのばらつきを制御しにくくなる。
ただし、基板2の回転速度が100rpm未満の場合は、放射線硬化性樹脂7が広がりにくくなり、放射線硬化性樹脂層7の厚さの基板の円周方向でのばらつきが大きくなるので、基板2の回転速度は、100rpm以上に設定するのが好ましい。また、基板2上の放射線硬化性樹脂層7の厚さをより均一化するために、基板2の回転速度は、100〜5000rpmの範囲内に設定するのが一層好ましい。
また、このスピンコート法による放射線硬化性樹脂7の塗布工程では、基板2の回転速度を、1000rpm/秒以上の加速度で所定時間(例えば、3秒以下)上昇させる。一般に、このようなスピンコート法による放射線硬化性樹脂7の塗布工程では、基板2の周縁部で放射線硬化性樹脂層7の厚さにばらつきが生じやすい。しかし、このように基板2の回転速度を加速・上昇させると、上記ばらつきの発生が防止され、基板2上の放射線硬化性樹脂層7の厚さがより均一化される。また、基板2の急激な加速により、余剰の放射線硬化性樹脂7が滴9として振り切られるので、タクトを短縮することができる。
図9は、上記スピンコート法による放射線硬化性樹脂7の塗布工程における、基板2の回転速度と時間との関係(タイムチャート)を示す図である。放射線硬化性樹脂7には、例えば粘度が300mPa・sのを用いる。図9に示すように、この例では、放射線硬化性樹脂7の滴下は、例えば基板2の回転開始時から6秒間、0.3g/秒の滴下速度で行われる。また、基板2の回転速度は、例えば、基板2の回転開始時から3秒間は120rpmに設定され、続いて5秒間は2000rpmに設定される。この後、回転速度は、1.5秒間、2000rpm/秒の加速度で上昇させられた後、基板2の回転は停止される。
かくして、図2(a)に示すように、基板2の記録層側主面上ないし情報記録層1上に、略均一な厚さを有する放射線硬化性樹脂層7が形成される。なお、放射線硬化性樹脂7の材質あるいは基板2の回転態様(回転速度等)を調整することにより、放射線硬化性樹脂層7の厚さを、基板の内周側から基板の外周側に向かって厚くしたり、逆に薄くしたりすることができる。すなわち、放射線硬化性樹脂層7に、基板の外周側に向かって高くなる、又は、低くなるゆるやかな傾斜をつけることができる。
次に、図2(b)に示すように、放射線硬化性樹脂層7を通り抜けて上向きに突出している軸部4aをつまんで上向きに引っ張り、キャップ4を鉛直方向上向きに移動させて、基板2から離脱させる(除去する)。
続いて、図2(c)に示すように、一方の主面(以下、「凹凸ピット側主面」という。)に溝ないし凹凸ピット10(以下、単に「凹凸ピット10」という。)を有するスタンパ11を、凹凸ピット10が放射線硬化性樹脂層7と密着するようにして、基板2と一体化させる。基板2とスタンパ11とは、真空チャンバ(図示せず)内で、真空下で一体化させる。なお、このスタンパ11は、厚さが0.6mmである。また、スタンパ11の直径(外径)及び中心孔3’の直径は、基板2と同様である。すなわち、スタンパ11の直径(外径)は120mmであり、中心孔3’の直径は15mmである。
ここで、スタンパ11の凹凸ピット側主面には、予め、スタンパ11と後で説明する中間層17との剥離性を良くする処理を行っておく。なお、このような処理を行わず、スタンパ11を、中間層17と剥離しやすい材料、例えばアクリル又はポリオレフィンで形成してもよい。また、基板2の材料とスタンパ11の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。また、基板2の中心孔3とスタンパ11の中心孔3’とは、ほぼ同じ大きさである。これにより、情報記録層1の中心と、凹凸ピット10の中心とを、ほぼ一致させることが容易となる。
そして、図3(a)に示すように、放射線硬化性樹脂層7を、放射線(例えば、紫外線)の照射により硬化させて中間層17を形成した後、スタンパ11を剥離させる。これにより、中間層17に、スタンパ11の凹凸ピット10に対応する(反転形状をもつ)凹凸ピットが形成される。ここで、中間層17の厚さは、5〜35μmの範囲内に設定するのが好ましく、20〜30μmの範囲内に設定するのがより好ましい。なお、「放射線」は、放射線硬化性樹脂を硬化させることができるあらゆる電磁波、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線等を含む概念である。
次に、図3(b)に示すように、中間層17に形成された凹凸ピットに、もう1つの情報記録層12(記録膜又は反射膜)を形成する。
この後、図3(c)に示すように、中間層17ないし基板2の上に、該光ディスクを保護するための、透明な放射線硬化性樹脂からなる光透過層13を形成する。
かくして、2層の情報記録層1、12を有する光ディスクが完成する。ここで、光透過層13の厚さは、0.1mm(100μm)に設定される。上述の通り、基板2の厚さは1.1mmであるので、この光ディスクの厚さは1.2mmとなる。つまり、この光ディスクの厚さは、市販のCD、DVDの厚さと等しく、この光ディスクは、CD、DVDと互換性をもつ。
なお、図3(d)に示すように、光ディスクをより強固に保護する必要がある場合は、光透過層13の上に、透明材料からなる保護コート14を設ける。また、光透過層13は、樹脂材料からなるシート状基板を、放射線硬化性樹脂や粘着材で接着することにより形成してもよい。
以上、実施の形態1に係る光ディスクの製造方法によれば、中間層17の厚さが均一化された、2層の情報記録層1、12を有する光ディスクを、スピンコート法により容易に製造することができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る光ディスクの製造方法を、図4、図5を参照しながら説明する。この光ディスクの製造方法は、実施の形態1に係る光ディスクの製造方法と比較すると、基板2とスタンパ11との配置を入れ換えて、スタンパ11側に放射線硬化性樹脂を塗布し、基板2を対向させて密着して両者を一体化する点で相違する。また、シールリング5を設けず、キャップ4に付設された磁石と、回転テーブル6に設けられた磁石とが互いに引き合うことによりキャップ4と基板2との密着性を高めている点に特徴がある。
この光ディスクの製造方法について以下に詳述する。
(a)まず、図4(a)に示すように、実施の形態1の場合と同様に、中心孔3’と凹凸ピット10とを備えたスタンパ11を準備する。
(b)次に、図4(b)に示すように、スタンパ11を、凹凸ピット側主面が上向きとなるようにして回転テーブル6上にセットし、上側から中心孔3をキャップ4で塞ぐ。このとき、キャップ4に付設された磁石18(例えば、下端部がN極)と、回転テーブル6に付設された磁石19(例えば、上端部がS極)とが磁力で引き合い、キャップ4と基板2とが密着する。
(c)スタンパ11を回転させながら、キャップ4の略中心すなわちスタンパ11のほぼ回転中心に、ノズル8から放射線硬化性樹脂7を滴下する。そして、スピンコート法によりスタンパ11の凹凸ピット側主面上ないし凹凸ピット10上に、放射線硬化性樹脂層7を形成する。なお、スタンパ11の凹凸ピット側主面ないし凹凸ピット10には、予め、中間層17との剥離性を良くする処理を行っておく。あるいは、スタンパ11を剥離性の良い材料で形成する。
図4(c)に示すように、放射線硬化性樹脂7を、できるだけスタンパ11の回転中心に近い部位に滴下することにより、スタンパ11の凹凸ピット側主面上ないし凹凸ピット10上に形成される放射線硬化性樹脂層7の厚さを、スタンパの内周側からスタンパの外周側にかけて均一にすることができる。また、中心孔3’をキャップ4で塞ぎ、キャップ4上に放射線硬化性樹脂7を滴下することにより、放射線硬化性樹脂層7の厚さの均一化効果をさらに高めることができる。以上によって、図5(a)に示すように、スタンパ11の凹凸ピット側主面上ないし凹凸ピット10上に、略均一な厚さを有する放射線硬化性樹脂層7が形成される。
(d)次に、図5(b)に示すように、キャップ4の軸部4aを上向きに引っ張り、鉛直方向上向きに移動させて、キャップ4をスタンパ11から離脱させる(除去する)。
(e)続いて、図5(c)に示すように、実施の形態1の場合と同様に、中心孔3と情報記録層1とを有する基板2を、情報記録層1が放射線硬化性樹脂層7と対向して密着するようにして、基板2とスタンパ11とを真空中で一体化させる。ここで、基板2の記録層側主面ないし情報記録層1には、予め、基板2と放射線硬化性樹脂層7ないし中間層17との接着性を良くする処理を行っておくことが好ましい。また、基板2を接着性の良い材料で形成しておいてもよい。
(f)この後、実施の形態1の場合と同様に、放射線硬化性樹脂層7を硬化させる。
(g)その後、スタンパ11を基板2から剥離させ、もう1つの情報記録層12と光透過層13とを設ける。また必要に応じて保護コート14を設ける(図3(a)〜(d)参照)。
以上の工程によって、光ディスクが完成する。実施の形態2に係る光ディスクの製造方法によって、実施の形態1の場合と同様に、中間層17の厚さが均一化された、2層の情報記録層1、12を有する光ディスクを、スピンコート法により製造することができる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る光ディスクの製造方法を、図6、図7を参照しながら説明する。この光ディスクの製造方法は、実施の形態1に係る光ディスクの製造方法と比較すると、2層構造の中間層を形成する点で相違する。
すなわち、この光ディスクの製造方法について説明する。
(a)まず、実施の形態1にかかる光ディスクの製造方法の場合と同様に、基板2上に放射線硬化性樹脂層7を形成する(図1(a)〜(c)及び図2(a)参照)。ただし、放射線硬化性樹脂層7の厚さは、実施の形態1の場合よりも薄くする。
(b)図6(a)に示すように、キャップ4の軸部4aを上向きに引っ張り、鉛直方向上向きに移動させて、キャップ4を基板2から離脱させる(除去する)。
(c)基板2上の放射線硬化性樹脂層7に放射線(例えば紫外線)を照射して、これを硬化させて、硬化層7’を形成する。なお、放射線硬化性樹脂層7は、全面的に硬化させても、一部のみ(例えば、基板内周側のみ、基板外周側のみ等)を硬化させてもよい。
(d)図6の(b)に示すように、普通のスピンコート法、すなわちキャップ4を用いないスピンコート法により、硬化層7’の上に、もう1つの放射線硬化性樹脂16を塗布する。この放射線硬化性樹脂16は、上記の放射線硬化性樹脂7とは材質又は粘度が同一であってもよい。また異なっていてもよい。
このように放射線硬化性樹脂の塗布を2回に分けることにより、基板2とスタンパ11とを一体化させた(重ね合わせた)際に生じる放射線硬化性樹脂層全体の厚さのばらつきを非常に小さくすることができる。すなわち、2層の情報記録層の間に画定される中間層を一つの層で形成するのではなく、2つの中間層を重ね合わせて一つの中間層を形成するほうが厚さのばらつきを抑制する点で有利となる。この場合、1層目の放射線硬化性樹脂を硬化させておき、2層目の未硬化の放射線硬化性樹脂にスタンパ11を押し付けて情報記録層を形成する。
なお、放射線硬化性樹脂16を、普通のスピンコート法ではなく、キャップ4を用いたスピンコート法で塗布してもよい。この場合には、上述のように、基板の中心孔を閉止し、中心孔の略上方から放射線硬化性樹脂16を滴下する。その詳細は後述する。
また、キャップ4を用いずに、普通のスピンコート法で放射線硬化性樹脂16を塗布する場合は、例えば、基板2をゆっくり回転させ(例えば、60rpm程度)、1本のノズルから放射線硬化性樹脂16を基板2の内周部付近に滴下させて、ドーナツ状に塗布する。この後、基板2を高速(例えば、回転数5000rpm程度)で回転させ、放射線硬化性樹脂16を基板2の上面全体にほぼ均一に広がらせる。
この実施の形態3に係る光ディスクの製造方法におけるスピンコート法による放射線硬化性樹脂7、16の塗布工程は、次のように行われる。
まず、キャップ4を用いてのスピンコート法による放射線硬化性樹脂7の塗布工程について説明する。
(1)スピンコート前に、上述のキャップ4を用いる場合と同様に、基板2の中心孔をキャップ4で閉止する。
(2)次に、例えば、粘度が150mPa・sの放射線硬化性樹脂7を用いる場合、放射線硬化性樹脂7を中心孔の略上方から滴下する。放射線硬化性樹脂7の滴下は、例えば、基板2の回転開始時から6秒間、0.3g/秒の滴下速度で行われる。また、基板2の回転速度は、例えば、基板2の回転開始時から3秒間は120rpmに設定され、続いて5秒間は2000rpmに設定される。
(3)次に、回転速度を2000rpm/秒の加速度で1.5秒間上昇させた後、基板2の回転を停止させる。
これにより、平均厚さが約17μmの放射線硬化性樹脂層7が形成される。この放射線硬化性樹脂層7は、内周側から外周側に向かって厚さが少しずつ薄くなる傾向を有するものとなる。
次に、キャップ4を用いない普通のスピンコート法で放射線硬化性樹脂16を塗布する工程について説明する。
(1)例えば、粘度が150mPa・sの放射線硬化性樹脂16を用いる場合は、0.5gの放射線硬化性樹脂16を基板2の上面に円環状に滴下した後に、例えば基板2の回転速度を4000rpmとして、5秒間回転させる。
これにより、平均厚さが約8μmの放射線硬化性樹脂層16が形成される。この放射線硬化性樹脂層16は、内周側から外周側に向かって厚さが少しずつ厚くなる傾向を有するものとなる。
この実施の形態3のように、内周側から外周側に向かって薄くなる放射線硬化性樹脂層7と、内周側から外周側に向かって厚くなる放射線硬化性樹脂層16とを合わせることにより、中間層17’を全体として均一な厚さを有するように形成することができる。もちろん、2つの放射線硬化性樹脂層7、16をそれぞれ厚さを均一に形成して、中間層17’の厚さを均一にすることも可能である。
(e)次に、図6(c)に示すように、実施の形態1の場合と同様に、スタンパ11を、凹凸ピット10が放射線硬化性樹脂層16と対向して密着するようにして、真空中でスタンパ11と基板2と一体化させる。ここで、スタンパ11の凹凸ピット側主面には、予め、スタンパ11と、後で説明する中間層17’との剥離性を良くする処理を行っておく。また、スタンパ11を剥離性の良い材料で形成しておいてもよい。
(f)図7(a)に示すように、放射線硬化性樹脂層16を、放射線(例えば、紫外線)の照射により硬化させて、2層構造をなす中間層17’を形成した後、スタンパ11を剥離させる。これにより、中間層17’に、スタンパ11の凹凸ピット10に対応する(反転形状をもつ)凹凸ピットが形成される。
(g)次に、図7(b)に示すように、中間層17’に形成された凹凸ピットに、もう1つの情報記録層12(記録膜又は反射膜)を形成する。
(h)この後、図7(c)に示すように、中間層17’ないし基板2の上に、該光ディスクを保護するための、透明な放射線硬化性樹脂からなる光透過層13を形成する。
以上の工程によって、2層構造をなす中間層17’を有するとともに、2層の情報記録層を有する光ディスクが完成する。
なお、図7(d)に示すように、光ディスクをより強固に保護する必要がある場合は、光透過層13の上に、透明材料からなる保護コート14を設ける。
以上、実施の形態3にかかる光ディスクの製造方法によれば、2層構造をなす中間層17’の厚さが均一化された、2層の情報記録層1、12を有する光ディスクを、スピンコート法により容易に製造することができる。
なお、実施の形態3では、中間層17’は2層構造であるが、中間層を3層以上の多層構造としてもよい。
以下、実施の形態3に係る光ディスクの製造方法のいくつかの変形例を説明する。
(変形例1)
変形例1に係る光ディスクの製造方法は、実施の形態3に係る光ディスクの製造方法と比較すると、基板1とスタンパ11とを入れ換えて両者を一体化させる点で相違する。その他の点については、実施の形態3の場合と同様である。変形例1においても、実施の形態3の場合と同様に、2層構造をなす中間層17’の厚さが均一化された、2層の情報記録層1、12を有する光ディスクを、スピンコート法により、製造することができる。
(変形例2)
変形例2に係る光ディスクの製造方法は、実施の形態3に係る光ディスクの製造方法と比較すると、実施の形態3の場合と同様に、基板2の上に、放射線硬化性樹脂7が硬化してなる硬化層7’を形成した後、該基板2とは別に、スタンパ11の凹凸ピット側主面の上に、キャップ4を用いたスピンコート法又は普通のスピンコート法により、放射線硬化性樹脂層16を形成する点で相異なる。そして、上記の硬化層7’を伴った基板2を、スタンパ11上の放射線硬化性樹脂層16の上に重ね合わせて、基板2とスタンパ11とを一体化させている。その他の点については、実施の形態3の場合と同様である。変形例2においても、実施の形態3の場合と同様に、2層構造をなす中間層17’の厚さが均一化された、2層の情報記録層1、12を有する光ディスクを、スピンコート法により製造することができる。
(変形例3)
変形例3に係る光ディスクの製造方法は、変形例2に係る光ディスクの製造方法と比較すると、基板1とスタンパ11とを入れ換えて両者を一体化させる点で相異する。その他の点については、変形例2の場合と同様である。変形例3においても、実施の形態3、変形例1、及び変形例2の場合と同様に、2層の情報記録層1、12を有する光ディスクの製造方法において、厚さが均一な2層構造をなす中間層17’を形成することができる。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る光ディスクについて図8を参照しながら説明する。この光ディスクは、実施の形態1から3に係る光ディスクと比較すると、4層の情報記録層1、12、21、23を有している点で相異する。なお、基板2側から数えて2番目の情報記録層12と3番目の情報記録層21との間には、もう1層の中間層20が形成されている。また、基板2側から数えて3番目の情報記録層21と4番目の情報記録層23との間には、さらにもう1層の中間層22が形成されている。
この4層の情報記録層1、12、21、23を有する光ディスクは、以下のように製造される。
(a)まず、実施の形態1の場合と同様のプロセスにより、情報記録層1を備えた基板2の上に、中間層17と情報記録層12とを形成する。
(b)そして、図1(b)、(c)と、図2(a)〜(c)と、図3(a)、(b)とに示すプロセスを再度行って、2層の情報記録層1、12を有する基板2の上に、中間層20と情報記録層21とを形成する。
(c)さらに、図1(b)、(c)と、図2(a)〜(c)と、図3(a)、(b)とに示すプロセスをもう一度行って、3層の情報記録層1、12、21を有する基板2の上に、中間層22と情報記録層23とを形成する。
この後、実施の形態1の場合と同様に、光透過層13を設け、また必要に応じて保護コート14を設けることにより、4層の情報記録層1、12、21、23を有する光ディスクが完成する。
なお、実施の形態4では、4層の情報記録層を有する光ディスクの製造方法を説明しているが、同様の手法を用いて、3層の情報記録層を有する光ディスク、あるいは5層以上の情報記録層を有する光ディスクを製造することができることはいうまでもない。また、実施の形態2の場合と同様に、基板2とスタンパ11とを入れ換えて、3層以上の情報記録層を有する光ディスクを製造することができる。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5に係る光情報記録媒体の製造方法について説明する。図10は、この光情報記録媒体の製造方法の流れを示す図である。この光情報記録媒体の製造方法は、以下の工程を含んでいる。
(a)第1基板を準備する工程。
(b)第1基板の中心孔をキャップで閉止する工程。
(c)第1基板の一主面に放射線硬化性樹脂を塗布する工程。
(d)第1基板に配置した放射線硬化性樹脂を部分的に硬化させる工程。
(e)第1基板に配置した放射線硬化性樹脂の未硬化部分の一部もしくは全部を除去する工程。
(f)第2基板を準備する工程。
(g)第2基板の中心孔をキャップで閉止する工程。
(h)第2基板の一主面に放射線硬化性樹脂を塗布する工程。
(i)第1基板に配置した放射線硬化性樹脂と、第2基板に配置した放射線硬化性樹脂とが互いに対向するように、第1基板と第2基板とを重ね合わせる工程。
(j)放射線硬化性樹脂に放射線を照射し、放射線硬化性樹脂を硬化する工程。
(k)第1基板を第2基板から剥離する工程。
この光ディスクの製造方法について、以下に具体例を挙げて説明する。なお、図において基板、スタンパ等は、左右対称な場合は対称軸から片側半分のみを示す。
(a)図11(a)に示すように、第1基板101を準備した。この第1基板101は、厚さ略0.5mm、外径略120mm、中心孔102径略15mmのポリオレフィン系材料からなる。この基板101は、射出成形により形成した。なお、ここでは後に説明する放射線硬化性樹脂との剥離のし易さからポリオレフィン系材料を選んだが、それ以外の、例えばアクリル系樹脂、などの樹脂材料でよい。また、ここでは第1基板は、厚さが略0.5mmのものを用いたが、厚さは自由に選んでよい。
(b)図11(c)のように第1基板101の中心孔102にキャップ108をして閉止した。
(c)上記第1基板101に、図11(b)のように、ノズル109から放射線硬化性樹脂A104をキャップ108の上に滴下し、基板101を回転数が略300rpmで略25秒間回転させて、放射線硬化性樹脂Aをスピンコート法で第1基板101の半径方向にわたって広げ、略70μmの厚さで塗布した。この放射線硬化性樹脂Aの粘度は略320mPa・sであった。この時の半径方向の放射線硬化性樹脂の厚さ分布を図12(a)に詳しく示す。
(d)第1基板101の半径略56mm以内の内周部分に放射線を照射して、放射線硬化性樹脂Aを半径略56mm以内の内周部分で硬化させ、それよりも外側を未硬化とした。外周端付近を拡大した様子を図12(b)に示す。スピンコート法で塗布した場合、図12(b)のように外周端に表面張力による樹脂の盛り上がりが見られる。この盛り上がりが厚さのばらつきとなってしまうため、この盛り上がり部分を未硬化とした。
(e)次いで、再度基板101を略1000rpmで略7秒間スピンすることによって、図12(c)のように、上記の未硬化の盛り上がり部分のおよそ半分を振り切った。
ここで、放射線硬化性樹脂とは、放射線照射によって硬化する樹脂である。放射線とは、すべての電磁波および粒子波を含んでいる。放射線硬化性樹脂としては、具体的には、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化樹脂や、電子線照射によって硬化する樹脂等がある。また、放射線硬化性樹脂の硬化状態とは、放射線硬化性樹脂の重合状態が高い場合を表し、未硬化状態は、放射線硬化性樹脂が液状等のように重合状態が低い状態を表している。
(f)図13(a)に示すように、第2基板111を準備した。この第2基板111は、厚さ略1.1mm、外径略120mm、中心孔112径略15mmのポリカーボネート基板であり、一方の主面に案内溝113と複数の薄膜層で構成される記録層117からなる情報記録層SA118が設けられている。また、この第2基板111は、射出成形により形成した。なお、第2基板はポリカーボネート以外の樹脂材料でもよい。
(g)図13(b)に示すように第2基板111の中心孔をキャップで閉止した。(h)粘度略320mPa・sの放射線硬化性樹脂B114を、中心孔の略上方から滴下し、第2基板111を略900rpmで略25秒間回転させて、情報記録層SAの上に、スピンコート法により放射線硬化性樹脂B114を略30μm塗布した。なお、図では詳しく示していないが、放射線硬化性樹脂Bにおいても、外周端付近に図12(b)と同様の盛り上がりが見られる。また、放射線硬化性樹脂B114のスピンコートによる塗布は、キャップを使わずに行ってもよい。なお、後に述べる光透過層の厚さが均一になるようにすることが好ましい。
(i)図14(a)に示すように、第1基板101と第2基板111とをそれぞれ放射線硬化性樹脂A、放射線硬化性樹脂Bを塗布した面を対向させて重ね合わせた。ここでは気泡が混入しないように、真空中で重ねあわせを行った。
(j)第1基板101と第2基板111とを重ね合わせた後に、放射線を照射して放射線硬化性樹脂A及びBを硬化した。情報記録層SAは放射線を透過しないので、第1基板101には放射線を透過する材料を用い、第1基板101側から放射線照射を行った。
(k)この後、図14(b)に示すように、第1基板101を第2基板111から剥離した。なお放射線硬化性樹脂Aは、第1基板101から剥離しやすいものを選んだ。
以上の工程によって、放射線硬化性樹脂Aと放射線硬化性樹脂Bを合わせたものを光透過層131とした。これによって情報記録層SA上に厚さの均一な光透過層131を形成することができた。
放射線硬化性樹脂A及びBを、両方ともに全面未硬化の状態で重ね合わせると、2枚の基板の平行度や、力のかかり方の不均一等によって放射線硬化性樹脂にかかる圧力等が場所によって変わってしまう場合がある。このような場合、放射線硬化性樹脂の厚さが部分的に大きく変動してしまう。上記の実施の形態のように放射線硬化性樹脂Aの所定の半径よりも内側を硬化しておくと、硬化した部分には樹脂厚さが変動する要素がなくなるので、重ね合わせたときに発生する厚さ変動量が非常に小さくなり、厚さを均一にすることが容易になる。さらに、放射線硬化性樹脂Aの外周の盛り上がり部分を未硬化にしておき、その未硬化の盛り上がり部分のおよそ半分を回転させて振り切っておく。こうすることによって、重ねあわせの際に、放射線硬化性樹脂Bの外周部の盛り上がりが、放射線硬化性樹脂Aの振り切った部分を埋め合わせる。そして、放射線硬化性樹脂AとBを合わせた、光透過層131の厚さを、ディスク情報記録層上の全面で略均一にすることができる。ここでは、層の平均厚さが略100μmに対して、ばらつきを略2μmで作製することができた。放射線硬化性樹脂Aの外周部分の盛り上がりを硬化していた従来の方法と、本実施の形態の発明方法とで作製した光透過層の、径方向の厚さ分布を図14(c)に示した。外周付近の急激な厚さの盛り上がりが大幅に改善され、厚さが均一になっている。
なお、ここでは第2基板に一層の情報記録層を含む場合を示したが、情報記録層が複数ある、いわゆる多層型の光情報記録媒体でもよい。また、ここでは、放射線硬化性樹脂AとBとに同じ材料のものを選んだが、異なる材料であってもよい。塗布が容易で、光透過層の厚さが均一になる組み合わせが好ましい。また、第1基板101から剥がれ易いものが好ましい。
さらに、ここでは、放射線硬化性樹脂Aを所定半径以内の内周部分を硬化し、外周部分の未硬化部分を振り切ったが、放射線硬化性樹脂Bを部分硬化し、未硬化部分を振り切ってもよい。なお、内周と外周のどちらを部分硬化するか、どの程度の領域を部分硬化するか、また、どのくらい振り切るか等については、光透過層の厚さが均一になるように選択することが好ましい。部分硬化する領域に関しては、使用する放射線硬化性樹脂の粘度や厚さによって変わるが、第1基板101の半径の90%程度よりも外周部分の領域で行うことが効果的であった。また、硬化状態としては完全硬化でなく、半硬化状態としてもよい。さらには本実施の形態で未硬化の部分を半硬化状態としてもよい。光透過層の厚さが均一に成り易いように、部分的に放射線硬化性樹脂の硬化状態(重合状態)を変えるようにすることが好ましい。
さらに、本実施の形態では、情報記録層SA上に直接放射線硬化性樹脂Bを塗布したが、情報記録層SA上に、記録層保護のためのコート等を施してから、放射線硬化性樹脂Bを塗布してもよい。さらには、第1基板に剥離を容易にするような処理を施してから、放射線硬化性樹脂Aを塗布してもよい。
なお、本実施の形態では情報記録層として信号記録再生が可能な薄膜層からなる記録可能型について説明したが、情報信号を凹凸のピットとして記録し、反射層を設けた、いわゆる再生専用型であってもよい。
また、本実施の形態では、外径略120mmの情報記録媒体について例を示したが、それ以外の大きさ、例えば直径80mmの径の小さい情報記録媒体にも適用できる。また、CDやDVD等の記録媒体と厚さを同じにするために、完成後の光情報記録媒体の厚さが1.2mmとなるようにしたが、それ以外の厚さの光情報記録媒体にも応用できる。
このようにして、上記実施の形態の製造方法によれば、高密度化された光情報記録媒体の作製が可能である。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6に係る光情報記録媒体の製造方法について説明する。図15は、この光情報記録媒体の製造方法の流れを示す図である。この光情報記録媒体の製造方法は、実施の形態5に係る製造方法と比較すると、放射線硬化性樹脂Aの未硬化部分を振り切ることなく残存させている点で相異する。これによって放射線硬化性樹脂AとBとを重ね合せた際に互いの盛り上がり部分がつぶれて外周付近での急激な盛り上がりを改善できる。
以下で、図15で示した製造方法について具体例を挙げて説明する。なお、図面は、左右対称な場合には対称軸から片側半分のみを示す。
(a)図16(a)に示すように、第1基板101を準備した。この第1基板201は、射出成形により形成した厚さ略0.5mm、外径略120mm、中心孔202径略15mmのポリオレフィン系材料からなる基板であり、一方の主面に案内溝203が設けてある。第1基板201はここでは信号を転写するためのスタンパとして用いる。ここでは後に説明する放射線硬化性樹脂との剥離のし易さからポリオレフィン系材料を選んだが、それ以外の、例えばアクリル系樹脂、などの樹脂材料でよい。また、ここでは第1基板201は厚さが略0.5mmのものを用いたが、厚さは自由に選んでよい。
(b)第1基板201の中心孔をキャップで閉止した。
(c)図16(b)に示すように、粘度略150mPa・sの放射線硬化性樹脂Aを中心孔の略上方からキャップの上に滴下して、略2000rpmで略5秒間回転させて、放射線硬化性樹脂A204をスピンコート法により第1基板201の案内溝上に略20μm塗布した。放射線硬化性樹脂Aの径方向の厚さ分布を図16(c)のように形成した。
(d)図17(a)は、外周端付近を拡大した図である。図17(a)に示すように、半径略58mm以内の内周部分に放射線を照射して、放射線硬化性樹脂Aを内周部分で硬化し、それよりも外側の外周部分を未硬化とした。なお、スピンコート法で塗布した場合、図のように外周端に表面張力による樹脂の盛り上がりが見られる。この盛り上がりが厚さのばらつきとなってしまうため、ここで、この盛り上がり部分を未硬化とすることによって、厚さの均一化を行っている。この場合、実施の形態5と比較して、未硬化の盛り上がり部分を振り切らずに残存させている点で相異する。
(e)図17(b)に示すように、第2基板211を準備した。第2基板211は、厚さ略1.1mm、外径略120mm、中心孔212径略15mmのポリカーボネート基板であり、一方の主面に案内溝213と複数の薄膜層で構成される記録層217からなる情報記録層SA218が設けてある。この第2基板211は射出成形により形成した。なお、第2基板211はポリカーボネート以外の樹脂材料でもよい。
(f)情報記録層SA上に、粘度略450mPa・sの放射線硬化性樹脂B214をスピンコート法により、略5000rpmで略18秒間回転させ、略5μm塗布した。この塗布は、放射線硬化性樹脂Aのように中心孔にキャップをせずに行ったが、中心孔にキャップを施して該中心孔の略上方から滴下してもよい。後に述べる中間層の厚さを均一にするようにすることが好ましい。
(g)第1基板と第2基板を図18(a)のように、放射線硬化性樹脂を塗布した面を対向させて重ね合わせた。ここでは気泡が混入しないように、真空中で重ねあわせを行った。
(h)第1基板と第2基板とを重ね合わせた後に、放射線を照射して放射線硬化性樹脂AおよびBを硬化した。放射線硬化性樹脂AとBを硬化したものを、中間層212としている。なお、情報記録層SAは放射線を透過しないので、第1基板には放射線を透過する材料を用い、第1基板側から放射線を照射した。
放射線硬化性樹脂AおよびBを両方ともに全面未硬化の状態で重ね合わせると、2枚の基板の平行度や、力のかかり方の不均一等によって放射線硬化性樹脂にかかる圧力等が場所によって変わってしまう場合がある。このような場合、放射線硬化性樹脂の厚さが部分的に大きく変動してしまう。本実施の形態のように放射線硬化性樹脂Aの所定の半径よりも内側を硬化しておくことで、硬化した部分には樹脂厚さが変動する要素がなくなるので、重ね合わせたときに発生する厚さ変動量が非常に小さくなり、厚さを均一にすることが容易になる。さらに、放射線硬化性樹脂Aの外周の盛り上がりを未硬化のままにしておいたことで、重ねあわせの際に放射線硬化性樹脂AおよびBの外周部の盛り上がりがつぶれ、放射線硬化性樹脂AとBを合わせた中間層の厚さをディスク信号面上全面で略均一にすることができる。ここでは、中間層の平均厚さが略25μmに対して、ばらつきを略1μmで作製することができた。外周部分の盛り上がりを硬化してしまう従来の方法と、本実施の形態で述べた方法で、中間層を形成した場合の、径方向の厚さ分布を図18(b)に示す。中間層の厚さが外周付近で急激に盛り上がるのが大幅に改善され、厚さを均一にすることが可能となっている。
(i)この後、図18(c)に示すように、第1基板を剥離した。放射線硬化性樹脂Aは、第1基板から剥離しやすく、かつ、第1基板の案内溝を転写し易いものを選んだ。これによって、中間層に第1基板の案内溝が転写された状態になる。
(j)図19(a)に示すように、転写された案内溝に複数の薄膜層で構成される記録層227を成膜し、情報記録層SB228を形成した。本実施の形態の片側から2つの情報記録層を記録・再生する光ディスクでは、情報記録層SBは記録・再生光に近い側の層になるため、情報記録層SBは半透明になっている。
以上の工程によって、情報記録層SB状に、図19(b)のように略75μmの光透過層231を形成した。本実施の形態ではこの光透過層を、シート状基板を放射線硬化性樹脂で貼り合わせることによって形成したが、シート上基板を粘着性材料で貼り合わせてもいいし、スピンコート法で形成してもいいし、それ以外の方法でもよい。記録・再生光に対して略透明な材料を選ぶことが好ましい。
本実施の形態では、放射線硬化性樹脂AとBは異なる材料のものを選んだが、同じ材料であってもよい。塗布が容易で、厚さが均一になる組み合わせが好ましい。また、第1基板から剥がれやすく、また第1基板の案内溝等のパターンを転写し易いものが好ましい。
本実施の形態では、放射線硬化性樹脂Aを部分硬化したが、放射線硬化性樹脂Aを未硬化にして放射線硬化性樹脂Bを部分硬化してもよい。どちらを部分硬化するか、どの領域を部分硬化するか、については、中間層の厚さが均一になるように選択することが好ましい。また硬化状態としては、完全硬化状態でなく半硬化状態としてもよく、さらに、ここで未硬化の部分を半硬化状態としてもよい。なお、中間層の厚さが均一に成り易く、案内溝が転写し易いように、部分的に放射線硬化性樹脂の重合状態を変えるようにすることが好ましい。
また、本実施の形態では、情報記録層SA上に直接放射線硬化性樹脂Bを塗布したが、情報記録層SA上に、記録層保護のためのコート等を施してから、放射線硬化性樹脂Bを塗布してもよい。さらには、第1基板の案内溝上に剥離を容易にするような処理を施してから、放射線硬化性樹脂Aを塗布してもよい。
なお、本実施の形態では情報記録層として信号記録再生が可能な薄膜層からなる記録可能型について説明したが、情報信号を凹凸のピットとして記録し、反射層を設けた、いわゆる再生専用型であってもよい。
本実施の形態では、外径略120mmの情報記録媒体について例を示したが、それ以外の大きさ、例えば直径80mmの径の小さい情報記録媒体にも適用できる。また、CDやDVD等の記録媒体と厚さを同じにするために、完成後の光情報記録媒体の厚さが1.2mmとなるようにしたが、それ以外の厚さの光情報記録媒体にも応用可能である。
このようにして、上記実施の形態の製造方法によれば、高密度化された光情報記録媒体の作製が可能である。
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7に係る光情報記録媒体の製造方法について一例を説明する。図20は、本発明による光情報記録媒体の製造方法の流れを示す図である。この光情報記録媒体の製造方法は、実施の形態5及び6に係る製造方法と比較すると、第1基板と第2基板とを重ね合わせる工程の前に、放射線硬化性樹脂Bを部分的に硬化させる工程を設けている点で相違する。放射線硬化性樹脂Bを部分的に硬化させておくことによって、未硬化部分で放射線硬化性樹脂A及びBが混ざったり、第1基板と接触してしまうことを防止できる。
以下で、図20で示した製造方法について具体例を挙げて説明する。特に断りがない限り、図は断面図で、左右対称な場合は対称軸から片側半分のみを示す。
(a)図21(a)に示すように、第1基板301を準備する。この第1基板301は、厚さ略0.5mm、外径が略120mm、中心孔302の径が略15mmのポリカーボネート材料からなる基板であり、一方の主面に案内溝303が設けられている。また、第1基板301は、射出成形により形成した。第1基板301は、ここでは信号を転写するためのスタンパとして用いる。第1基板301は、ポリカーボネート以外の、例えばアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、などの樹脂材料で形成してもよい。また、ここでは第1基板は厚さが略0.5mmのものを用いたが、厚さは自由に選んでよい。
(b)図21(b)に示すように、実施の形態6の放射線硬化性樹脂Aと同じ材料からなる放射線硬化性樹脂Aを用い、実施の形態6と同様にして、案内溝上に放射線硬化性樹脂A304をスピンコート法によって、略20μmの厚さで塗布した。
(c)図21(c)の外周部の拡大図に示したように、半径略58mmよりも内周部分に放射線を照射して放射線硬化性樹脂Aを硬化させ、それよりも外側を未硬化とした。
(d)図22(a)に示すように、第2基板311を準備した。第2基板311は、厚さ略1.1mm、外径が略120mm、中心孔312の径が略15mmのポリカーボネート基板であり、一方の主面に案内溝313と複数の薄膜層で構成される記録層317からなる情報記録層SA318が設けてある。第2基板は、射出成形により形成した。第2基板はポリカーボネート以外の樹脂材料で形成してもよい。
(e)図22(b)に示すように、情報記録層SA上に放射線硬化性樹脂B314をスピンコート法によって略5μmの厚さで塗布した。この塗布は中心孔にキャップをせずに行ったが、放射線硬化性樹脂Aのように、中心孔をキャップで閉止し、中心孔の略上方から滴下してもよい。
(f)図22(c)の外周部の拡大図に示したように、放射線硬化樹脂B314の塗布後、半径略59mmよりも外側部分に放射線を照射して放射線硬化性樹脂Bを硬化させ、それより内側を未硬化とした。
(g)図23(a)に示すように、第1基板と第2基板を放射線硬化性樹脂を塗布した面を対向させて重ね合わせた。ここでは気泡が混入しないように、真空中で重ねあわせを行った。
(h)第1基板と第2基板とを重ね合わせた後に、放射線を照射して放射線硬化性樹脂AおよびBを硬化した。
(i)この後、第1基板を図のように剥離した。
これによって、放射線硬化性樹脂Aと放射線硬化性樹脂Bを合わせた中間層321に第1基板の案内溝が転写された状態になる。
ここで、放射線硬化性樹脂Aはポリカーボネートとの接着力が非常に低く、第1基板の案内溝等のパターンを転写しやすい材料を選んでいる。放射線硬化性樹脂Bとしては、ポリカーボネートおよび情報記録層SAとの接着力が強いものを選んでいる。このように、放射線硬化性樹脂AとBに異なる機能を持つものを用いることによって、放射線硬化性樹脂の材料の選択の幅を広げることができ、また第1基板の材料にも、ポリカーボネートなどの光ディスクでは広く用いられている安価な材料を利用することができる。
しかし、実施の形態6のように、放射線硬化性樹脂Bの全面を未硬化のまま第1基板と第2基板を重ね合わせると、外周付近の未硬化になっている部分で放射線硬化性樹脂Aと放射線硬化性樹脂Bが混ざったり、外周端にはみ出した放射線硬化性樹脂Bが第1基板に接触したりして、後で第1基板を剥離することができなくなる可能性がある。そこで、放射線硬化性樹脂Bの外周端付近のみを硬化しておくことにより、第1基板と放射線硬化性樹脂Bとが接触することがなくなり、第1基板の剥離を良好にしておくことが可能となる。外周端近傍を硬化する領域が広すぎると、外周付近に厚さムラが発生することがあるため、硬化する範囲は厚さムラと剥離のしやすさを考慮しながら決めることが好ましい。放射線硬化性樹脂Bを硬化する範囲は第2基板の半径の90%以上とすることが効果的であった。本方法によって、実施の形態6のと同様に、均一な厚さを形成することができた。
なお、機能の異なる放射線硬化性樹脂を用いなくても同様の効果が得られるのであれば、特に分ける必要はない。
これ以降の、転写された案内溝に記録層を成膜する、光透過層を形成する、ことについては、実施の形態6で述べたのと同様である。
なお、本実施の形態では情報記録層として信号記録再生が可能な薄膜層からなる記録可能型について説明したが、情報信号を凹凸のピットとして記録し、反射層を設けた、いわゆる再生専用型であってもよい。
本実施の形態では、放射線硬化性樹脂Aの外周部を未硬化にし、放射線硬化性樹脂Bの外周部を硬化したが、放射線硬化性樹脂Aの外周部を硬化し、放射線硬化性樹脂Bの外周部を硬化してもよい。どちらを硬化するか、どれくらいの領域を部分硬化するか、については、中間層の厚さが均一になるように選択することが好ましい。また硬化状態としては、完全硬化状態でなく半硬化状態としてもよく、さらには未硬化の部分を半硬化状態としてもよい。中間層の厚さが均一に成り易く、案内溝が転写し易いように、部分的に放射線硬化性樹脂の重合状態を変えるようにすることが好ましい。
このようにして、上記実施の形態の製造方法によれば、高密度化された光情報
記録媒体の作製が可能である。
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8に係る光情報記録媒体の製造方法について一例を説明する。この光情報記録媒体の製造方法について、実施の形態6及び7に係る製造方法と比較すると、液状の放射線硬化性樹脂Bに代えて、シート状に形成された感圧性接着剤、粘着材等を用いる点で相異する。これらのシート状に形成されたものを用いることによって厚さ精度を非常に高くできる。液状の放射線硬化性樹脂の塗布では十分な厚さばらつきを得られない場合があり、この場合、最初からある程度固体であって、厚さ精度が非常に高いものを用いることが好ましい。例えば、シート状に形成された感圧性接着剤や粘着材などである。これを放射線硬化性樹脂Bの代わりに、第2基板上に形成することによって厚さ精度が非常に高く、実施の形態5または6で説明したのと同様の方法で、同様の効果を得ることができる。このようにして、上記実施の形態の製造方法によれば、高密度化された光情報記録媒体を作製できる。
(実施の形態9)
本発明の実施の形態9に係る光情報記録媒体の製造方法について一例を説明する。実施の形態5では光ディスクの光透過層を形成し、実施の形態6や7では、複数の記録層を有する光ディスクの記録・再生用の案内溝を有する中間層を均一な厚さで容易に作製する方法について説明した。しかし、実施の形態5の方法で中間層を形成してもよく、一方、実施の形態6または7で述べた方法によって光透過層を形成することもできる。作製する手間やコスト、厚さ精度などを考慮して、最適な方法を選択することが好ましい。
(実施の形態10)
本発明の実施の形態10に係る光情報記録媒体の製造方法について一例を説明する。実施の形態6や7で述べた方法によって、非常に厚さ精度の高い、2層構造の光情報記録媒体を作製することができた。このうち、光透過層を形成する前までの各工程を繰り返すことによって、2層以上の多層構造を有する光ディスクを作製することができる。例として、図24に4層構造の光情報記録媒体を示した。
(実施の形態11)
本発明の実施の形態11に係る光情報記録媒体の製造方法について一例を説明する。実施の形態5乃至10では、第1基板を剥離して厚さの均一な層を作製した。しかし、用いる用途によっては第1基板を剥がさなくてもよい。例えば第1基板に半透明の情報記録層を設け、第1基板を光透過層として用いる場合である。そこで、実施の形態5乃至10で述べた方法を用いることによって、基板に挟まれた層を均一に作製することも容易である。
さらには、第1基板を剥離せず、さらに第1基板の第2基板と重ね合わせた主面と反対側の主面上に、さらに情報記録層を設けていくことも可能である。本発明は厚さの均一な層を作製することが可能であり、その層を作製したあとにどのような工程を追加することも可能である。
以上、本発明の実施の形態について例をあげて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づき他の実施の形態に適用することができる。
(a)〜(c)は、本発明の実施の形態1に係る光ディスクの製造プロセスの放射線硬化性樹脂の塗布工程における、基板等の立面断面図である。 (a)〜(c)は、本発明の実施の形態1に係る光ディスクの製造プロセスの中間層の形成工程における、基板からスタンパ等の立面断面図である。 (a)〜(d)は、本発明の実施の形態1に係る光ディスクの製造プロセスの情報記録層の形成工程における、基板等の立面断面図である。 (a)〜(c)は、本発明の実施の形態2に係る光ディスクの製造プロセスの放射線硬化性樹脂の塗布工程における、スタンパ等の立面断面図である。 (a)〜(c)は、本発明の実施の形態2に係る光ディスクの製造プロセスの中間層の形成工程における、基板ないしスタンパ等の立面断面図である。 (a)〜(c)は、本発明の実施の形態3に係る光ディスクの製造プロセスの中間層の形成工程における、基板ないしスタンパ等の立面断面図である。 (a)〜(d)は、本発明の実施の形態3に係る光ディスクの製造プロセスの情報記録層の形成工程における、基板等の立面断面図である。 実施の形態4に係る製造方法で製造された、4層の情報記録層を有する光ディスクの立面断面図である。 放射線硬化性樹脂層を形成する際の基板のスピンの態様の一例を示すグラフ(タイムチャート)である。 本発明の実施の形態5に係る光情報記録媒体の製造方法のフローチャートである。 (a)〜(c)は、本発明の実施の形態5に係る光情報記録媒体の製造方法の各工程を示す図である。 (a)は、本発明の実施の形態5に係る光情報記録媒体の製造方法において、塗布された放射線硬化性樹脂Aの半径方向の厚さ分布を示す図であり、(b)及び(c)は、光情報記録媒体の製造方法の各工程を示す図である。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態5に係る光情報記録媒体の製造方法の各工程を示す図である。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態5に係る光情報記録媒体の製造方法の各工程を示す図であり、(c)は、作製された光透過層の半径方向の厚さ分布である。 本発明の実施の形態6に係る光情報記録媒体の製造方法のフローチャートである。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態6に係る光情報記録媒体の製造方法の各工程を示す図であり、(c)は、塗布された放射線硬化性樹脂Aの半径方向の厚さ分布を示す図である。 (a)は、本発明の実施の形態6に係る光情報記録媒体の製造方法において、外周端付近の放射線硬化性樹脂Aを示す図であり、(b)及び(c)は、本発明の実施の形態6に係る光情報記録媒体の製造方法の各工程を示す図である。 (a)は、本発明の実施の形態6に係る光情報記録媒体の製造方法の一工程を示す図であり、(b)は、中間層の半径方向の厚さ分布を示す図であり、(c)は製造方法の一工程を示す図である。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態6に係る光情報記録媒体の製造方法の各工程を示す図である。 本発明の実施の形態7に係る光情報記録媒体の製造方法のフローチャートである。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態7に係る光情報記録媒体の製造方法の各工程を示す図であり、(c)は、外周端付近の放射線硬化性樹脂Aを示す図である。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態7に係る光情報記録媒体の製造方法の各工程を示す図であり、(c)は、外周端付近の放射線硬化性樹脂Bを示す図である。 (a)及び(b)は、本発明の実施の形態7に係る光情報記録媒体の製造方法の各工程を示す図である。 本発明の実施の形態10に係る光情報記録媒体の断面図である。
符号の説明
1 情報記録層、2 基板、3 中心孔、3’ 中心孔、4 キャップ、4a 軸部、5 シールリング、6 回転テーブル、7 放射線硬化性樹脂(放射線硬化性樹脂層)、7’ 硬化層、8 ノズル、9 滴、10 凹凸ピット、11 スタンパ、12 情報記録層、13 光透過層、14 保護コート、16 放射線硬化性樹脂(放射線硬化性樹脂層)、17 中間層、17’ 中間層、18 磁石、19 磁石、20 中間層、21 情報記録層、22 中間層、23 情報記録層、 101 第1基板、 102 中心孔、 104 放射線硬化性樹脂A、 105 未硬化の放射線硬化性樹脂A、 106 硬化した放射線硬化性樹脂A、 108 キャップ、 109 ノズル、 111 第2基板、 112 中心孔、 113 案内溝、 114 放射線硬化性樹脂B、 117 記録層、 118 情報記録層SA、 131 光透過層、 201 第1基板、 202 中心孔、 203 案内溝、 204 放射線硬化性樹脂A、 205 未硬化の放射線硬化性樹脂A、 206 硬化した放射線硬化性樹脂A、 211 第2基板、 212 中心孔、 213 案内溝、 214 放射線硬化性樹脂B、 217 記録層、 218 情報記録層SA、 221 中間層、 223 転写された案内溝、 227 記録層、 228 情報記録層SB、 301 第1基板、 302 中心孔、 303 案内溝、 304 放射線硬化性樹脂A、 305 未硬化の放射線硬化性樹脂A、 306 硬化した放射線硬化性樹脂A、 311 第2基板、 312 中心孔、 313 案内溝、 314 放射線硬化性樹脂B、 315 未硬化の放射線硬化性樹脂B、 316 硬化した放射線硬化性樹脂B、 317 記録層、 318 情報記録層SA、 321 中間層、 323 転写された案内溝、 411 第2基板、 412 中心孔、 418 情報記録層、 421 中間層、 428 情報記録層、 431 中間層、 438 情報記録層、 441 中間層、 448 情報記録層、 451 光透過層

Claims (7)

  1. (a−1)一方の主面に溝又は凹凸ピットを有する第1基板の前記溝又は前記凹凸ピットを有する主面に放射線硬化性樹脂を形成する工程と、
    (a−2)前記第1基板上の前記放射線硬化性樹脂の外周部に形成された盛り上がり部分よりも内周側の第1の半径よりも外周側においては、前記第1基板上に形成された前記放射線硬化性樹脂を未硬化とし、前記第1の半径よりも内周側においては、前記第1基板上に形成された前記放射線硬化性樹脂を完全硬化、または、半硬化させる工程と、
    (b)一方の主面に溝又は凹凸ピットを有する第2基板の前記溝又は前記凹凸ピットを有する面に放射線硬化性樹脂を形成する、または、第2基板の前記溝又は前記凹凸ピットを有する面に、反射層、または、薄膜層を形成し、前記反射層、または、薄膜層の上に前記放射線硬化性樹脂を形成する工程と、
    (c)前記第1基板に形成された前記放射線硬化性樹脂と、前記第2基板に形成された前記放射線硬化性樹脂を対向させて密着させる工程と、
    (d)前記第1基板、及び、前記第2基板に形成された前記放射線硬化性樹脂を硬化させて中間層を形成する工程と、
    (e)前記第1基板又は前記第2基板を剥離して、前記第1基板又は前記第2基板の前記溝又は前記凹凸ピットに対応する溝又は凹凸ピットを前記中間層の表面に形成する工程と、
    を含むことを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
  2. (a)一方の主面に溝又は凹凸ピットを有する第1基板の前記溝又は前記凹凸ピットを有する主面に放射線硬化性樹脂を形成する工程と、
    (b−1)一方の主面に溝又は凹凸ピットを有する第2基板の前記溝又は前記凹凸ピットを有する面に放射線硬化性樹脂を形成する、または、第2基板の前記溝又は前記凹凸ピットを有する面に、反射層、または、薄膜層を形成し、前記反射層、または、薄膜層の上に前記放射線硬化性樹脂を形成する工程と、
    (b−2)前記第2基板上の前記放射線硬化性樹脂の外周部に形成された盛り上がり部分よりも内周側の第1の半径よりも外周側においては、前記第2基板上に形成された前記放射線硬化性樹脂を未硬化とし、前記第1の半径よりも内周側においては、前記第2基板上に形成された前記放射線硬化性樹脂を完全硬化、または、半硬化させる工程と、
    (c)前記第1基板に形成された前記放射線硬化性樹脂と、前記第2基板に形成された前記放射線硬化性樹脂を対向させて密着させる工程と、
    (d)前記第1基板、及び、前記第2基板に形成された前記放射線硬化性樹脂を硬化させて中間層を形成する工程と、
    (e)前記第1基板又は前記第2基板を剥離して、前記第1基板又は前記第2基板の前記溝又は前記凹凸ピットに対応する溝又は凹凸ピットを前記中間層の表面に形成する工程と、
    を含むことを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
  3. 前記第1の半径は、前記第1基板の半径の90%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録媒体の製造方法。
  4. 前記第2基板の前記溝又は前記凹凸ピットを有する面に、放射線硬化性樹脂に代えて、粘着材を形成することを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体の製造方法。
  5. 前記第1基板の前記溝又は前記凹凸ピットを有する面に、放射線硬化性樹脂に代えて、粘着材を形成することを特徴とする請求項に記載の光情報記録媒体の製造方法。
  6. 前記工程(e)の後に、
    (f)前記中間層の表面に形成された前記溝又は前記凹凸ピットに反射膜を成膜して情報記録層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光情報記録媒体の製造方法。
  7. 前記中間層の表面に反射膜を成膜して情報記録層を形成する工程(f)の後に、
    (g)前記情報記録層の上に光透過層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の光情報記録媒体の製造方法。
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