JP4261702B2 - 高耐候性艶消し化粧板およびその製造方法 - Google Patents

高耐候性艶消し化粧板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面が艶消しされ、かつ、耐候性が非常に優れた化粧板およびその製造方法に関する。
【0002】
【背景技術】
従来の艶消し化粧板では、耐擦過性の要求度が高いため、樹脂として架橋密度が高く比較的硬度が高い高光沢性の放射線硬化性樹脂、あるいは同様の性質を有する光硬化性樹脂を用い、かつ、これら樹脂中に艶消し剤として、体質顔料等を混合して艶消しした塗膜層を絵柄層の上に形成したものが用いられている。このような例として、電子線硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂中に、艶消し剤として合成樹脂製のビーズを混入させて化粧板の塗膜層を形成したもの(特開平6−262133号公報)や、紫外線硬化型樹脂中に艶消し剤として炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタン等の不溶粒子を混入させて化粧板の塗膜層を形成したもの(特開平9−94938号公報)などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述のように、樹脂そのものが高光沢性を有するため、十分な艶消し効果を発揮させるには、合成樹脂製ビーズ等の粒子の混合量を多くする必要がある。このため、樹脂塗料の粘度が大きくなり、スプレー塗装に不向きになるという問題、および、均一な塗膜層の形成が困難となり仕上げ面の肌が悪くなるという問題が生じていた。また、多量に混合された合成樹脂製ビーズ等の粒子により、緻密な塗膜層の形成ができないという問題、および、模様付けを施した絵柄層と塗膜層との密着力が低下するために、耐候性が低下し、劣化しやすくなるという問題が生じていた。
【0004】
このようなことから、従来法では、艶消し剤としての合成樹脂製ビーズ等の添加量にも限界があり、必ずしも十分な艶消し効果が得られているとはいえなかった。また、前述の耐候性の点から、転写等により模様付けをした絵柄層の上に、艶消し剤を添加した樹脂塗料による塗膜層が形成された化粧板で、外装材となり得るものは、現在までのところ製品化されていない。したがって、外装材としても使用できるような、高耐候性を有する艶消し化粧板の開発が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、十分な艶消し効果が得られ、かつ、耐候性の格段に優れた高耐候性艶消し化粧板およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酸素含有不活性ガス雰囲気下において含有酸素濃度を多段階に変化させて電子線を照射し、電子線硬化型クリヤーを硬化させることで、前記目的を達成しようとするものである。
【0007】
具体的には、請求項1に記載の発明は、基材上に絵柄層を形成し、この絵柄層上に電子線硬化型クリヤーを塗布した後、酸素を含有する不活性ガス雰囲気下において、含有酸素濃度を多段階に変化させて電子線照射を行うことにより、前記電子線硬化型クリヤーを硬化させ、艶消し塗膜層を形成させる高耐候性艶消し化粧板の製造方法であって、前記不活性ガス雰囲気中の含有酸素濃度は、第1段階において5から20%であり、第2段階において0.5%以下である2段階に変化させることを特徴とする。
【0008】
本発明における電子線硬化型クリヤーとしては、分子中に重合性不飽和結合を有する樹脂からなる、例えば、アクリル系樹脂塗料がある。また、本発明における不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス等がある。
【0009】
本発明における基材としては、例えば、ケイ酸カルシウム板、セメント板、石膏板等の窯業系無機建材や、パーチクルボード、MDF(中比重ボード)、木質合板等の木質系建材や、プラスチック板等の合成樹脂建材や、アルミニウム板等の金属建材等がある。また、本発明における絵柄層としては、転写または印刷などにより模様付けあるいは色づけをした層をいう。ここで、転写には、例えば、熱転写やロール転写等があり、印刷には、スクリーン印刷やグラビア印刷等がある。
【0010】
この発明によれば、不活性ガス中の酸素濃度を多段階に変えた電子線照射を行い、電子線硬化型クリヤーを硬化させることで、電子線硬化型クリヤー本体で艶消し効果が得られる。したがって、体質顔料等の粒子への艶消し効果の依存度を低くできる。また、それら粒子の混入をなくすことで、耐候性を向上させることができるとともに、電子線硬化型クリヤーの粘度を低く押さえることができ、スプレー適性および塗膜性を向上できる。したがって、艶消し塗膜層の仕上がり肌がよくなる。さらに、電子線硬化型クリヤーを用いているから、耐擦過性、耐薬品性に優れた艶消し塗膜層を形成できる。
【0012】
本発明において、第1段階の含有酸素濃度が、%より少ないと酸素濃度が低いため、十分な艶消し効果が得られず好ましくない。一方、20%を越えると酸素濃度が高すぎるため第1段階での電子線硬化型クリヤーの硬化が不十分となる。つまり、第2段階での単独照射と同じになり、艶消し効果を得られないので好ましくない。さらに、第2段階の含有酸素濃度が、0.5%を越えると電子線硬化型クリヤーが完全に硬化せず、好ましくない。第1段階の含有酸素濃度として、より好ましくは、5%から15%であり、第2段階の含有酸素濃度として、より好ましくは、0.1%以下である。各段階でこれらの範囲に含有酸素濃度を調整すると、艶消し効果がより向上する。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の高耐候性艶消し化粧板の製造方法において、前記電子線硬化型クリヤーに、艶消し剤を前記電子線硬化型クリヤーの重量に対して外割で0.5から30重量%分散混合させることを特徴とする高耐候性艶消し化粧板の製造方法である。本発明において、添加する艶消し剤の重量%が、30重量%を越えると、得られる化粧板の耐候性が低下して好ましくなく、0.5重量%未満では、艶消し剤を加える目的である艶消し効果の向上がほとんど見られない。
本発明における艶消し剤としては、例えば、体質顔料やビーズ等がある。
【0014】
この発明によれば、電子線硬化型クリヤーに艶消し剤を混入させることにより、得られる艶消し塗膜層の艶消し幅が広がり、より高い艶消し効果を得ることができる。
【0015】
請求項に記載の発明によれば、請求項に記載の高耐候性艶消し化粧板の製造方法において、前記艶消し剤は、体質顔料および/またはビーズであることを特徴とする高耐候性艶消し化粧板の製造方法である。本発明における体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン等があり、その平均粒径は10・m以下であることが好ましい。また、本発明におけるビーズとしては、例えば、樹脂ビーズ、ガラスビーズ等が挙げられる。樹脂ビーズとしては、例えば、アクリル樹脂ビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ等があり、その平均粒径は10・mから100・mであることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、電子線硬化型クリヤーに、体質顔料を混入させることにより、艶消し塗膜層の機械的強度を向上できる。また、電子線硬化型クリヤーに樹脂ビーズを混入させることにより、得られる塗膜層の透明性を低下させることなく、艶消し幅を広げることができる。さらに、体質顔料および樹脂ビーズの両方を混合して添加することで、上述した二つの効果を併せて発揮させることができる。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の高耐候性艶消し化粧板の製造方法において、前記絵柄層は前記基材上に転写用ベースコートを塗布、乾燥した後、転写フィルムを前記転写用ベースコートに熱転写して形成されることを特徴とする高耐候性艶消し化粧板の製造方法である。
【0018】
本発明における転写用ベースコートとしては、例えば、アクリルウレタン樹脂がある。転写フィルムは、例えば、インクとベースフィルムから構成され、インクとしては、例えば、アクリル樹脂と顔料とからなるものがあり、ベースフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、オレフィン系樹脂フィルム、紙等がある。
この発明によれば、従来よく用いられている熱転写を用いた模様付けを行い絵柄層を形成することができる。
【0019】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれかに記載の高耐候性艶消し化粧板の製造方法により製造された高耐候性艶消し化粧板である。
この発明によれば、耐候性が非常に優れ、かつ、十分な艶消し効果を発揮し、外装材としても使用可能な化粧板を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付して説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係る高耐候性艶消し化粧板1が示されている。化粧板1は、基材10の上に絵柄層12および電子線硬化型クリヤーからなる艶消し塗膜層14を積層させてなるものである。
【0021】
化粧板1は、以下のように製造される。すなわち、まず、基材10に、シーラーを用いた下地処理を施し、目止めおよび下地の隠蔽を行って下地処理層11を形成する。ここにおいて、シーラーとして、例えば、アクリルウレタン系樹脂塗料からなるものを用いる。その後、下地処理層11の上に転写用ベースコート121を塗布し、この転写用ベースコート121上に転写フィルム122を熱転写して模様付けを行い絵柄層12を形成する。
【0022】
続いて、絵柄層12の上に電子線硬化型クリヤーであるアクリル樹脂系塗料をスプレーにより塗布し、第1段階として、含有酸素濃度が、0.1から20%の窒素ガス雰囲気下で電子線照射した後、第2段階として、含有酸素濃度が0.5%以下の窒素ガス雰囲気下で、さらに電子線照射を行うことによりアクリル樹脂系塗料を硬化させ、艶消し塗膜層14を形成して高耐候性艶消し化粧板1が得られる。
【0023】
ここにおいて、第1段階の含有酸素濃度は、本実施形態のように0.1から20%であることが好ましく、より好ましくは、5%から15%の範囲である。第1段階の含有酸素濃度が、0.1%より少ないと酸素濃度が低いため、十分な艶消し効果が得られず好ましくない。一方、20%を越えると酸素濃度が高すぎるため第1段階での電子線硬化型クリヤーであるアクリル樹脂系塗料の硬化が不十分となる。つまり、第2段階での単独照射と同じになり、艶消し効果を得られないので好ましくない。また、第2段階の含有酸素濃度は、本実施形態のように0.5%以下であることが好ましく、0.5%を越えると電子線硬化型クリヤーであるアクリル樹脂系塗料が完全に硬化せず、好ましくない。第1段階の含有酸素濃度として、より好ましくは、5%から15%であり、第2段階の含有酸素濃度として、より好ましくは、0.1%以下である。各段階でこれらの範囲に含有酸素濃度を調整すると、艶消し塗膜層14の艶消し効果がより向上する。
【0024】
このように構成された高耐候性艶消し化粧板1は、内外壁材として使用できることはもちろんのこと、破風板や胴差等の建築資材および家具等に使用できる。この点については、後述する他の実施形態においても同様である。
【0025】
上述のような第1実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)窒素ガス中の含有酸素濃度を変化させる2段階の電子線照射を行い、アクリル樹脂系塗料を硬化させることで、アクリル樹脂系塗料本体で十分な艶消し効果を発揮する艶消し塗膜層14を形成することができる。したがって、艶消し剤を用いなくてもよい。
(2)アクリル樹脂系塗料中に艶消し剤を混入しないから、絵柄層12と艶消し塗膜層14との密着力が強固になり、耐候性を向上させることができるとともに、アクリル樹脂系塗料の粘度を低く押さえることができる。したがって、アクリル樹脂系塗料のスプレー適性および塗膜性を向上でき、仕上がり肌を向上できる。
(3)アクリル樹脂系塗料を用いているから、耐擦過性、耐薬品性に優れた高硬度の塗膜層14を形成できる。
(4)電子線を用いる塗膜層14の形成法であるから、非常に短時間で塗膜層14が形成でき、生産性を向上できる。
【0026】
図2には、本発明の第2実施形態に係る、高耐候性艶消し化粧板2が示されている。化粧板2は、基材10の上に絵柄層12および体質顔料であるシリカ26を含むアクリル樹脂系塗料からなる艶消し塗膜層24を積層させてなるものである。
【0027】
本実施形態においては、アクリル樹脂系塗料に平均粒径10μmの体質顔料であるシリカ26を、アクリル樹脂系塗料の重量に対して、外割で0.5から30重量%分散混合させたものを用いる他は、第1実施形態と同様の部材および方法を用いることで化粧板2を製造した。ここにおいて、添加されるシリカ26の重量%が、30重量%を越えると、化粧板2の耐候性が低下して好ましくなく、0.5重量%未満では、シリカ24を加えたことによる艶消し塗膜層24の艶消し効果の向上がほとんど見られない。なお、加えるシリカ26の平均粒径は10μm以下であることが好ましい。
【0028】
上述のような、第2実施形態によっても第1実施形態の(1)、(3)、(4)と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、以下のような効果がある。
(5)アクリル樹脂系塗料に、体質顔料であるシリカ26を加えることで、化粧板2における、塗膜層24の艶消しの幅が広がり、より高い艶消し効果が得られる。
(6)アクリル樹脂系塗料に、シリカ26を加えることで、塗膜層24の強度が向上する。
(7)シリカ26等の艶消し剤を少なくしても十分な艶消し効果が発揮されるから、アクリル樹脂系塗料の粘度を低くすることができ、スプレー適性および塗膜性を向上できる。
【0029】
図3には、本発明の第3実施形態に係る、高耐候性艶消し化粧板3が示されている。化粧板3は、基材10の上に絵柄層12およびビーズとしてアクリル樹脂製ビーズ38を分散混合させたアクリル樹脂系塗料からなる艶消し塗膜層34を積層させてなるものである。
【0030】
本実施形態においては、アクリル樹脂系塗料中に平均粒径30μmのアクリル樹脂製ビーズ38を、アクリル樹脂系塗料の重量に対して、外割で0.5から30重量%分散混合させたものを用いる他は、第1実施形態と同様の部材および方法で化粧板3を製造した。ここにおいて、添加されるアクリル樹脂製ビーズ38の重量%が、30重量%を越えると、化粧板3の耐候性が低下して好ましくなく、0.5重量%未満では、アクリル樹脂製ビーズ38を加えた効果がほとんど発揮されず好ましくない。なお、アクリル樹脂製ビーズ38の平均粒径は10μmから100μmであることが好ましい。
【0031】
上述のような、第3実施形態によっても第1実施形態の(1)、(3)、(4)および第2実施形態の(7)と同様の効果が得られる。また、本実施形態においては、(8)アクリル樹脂系塗料にアクリル樹脂製ビーズ38を加えることで、艶消し塗膜層34の透明性を低下させることなく、その艶消しの幅を広げることができる。
【0032】
図4には、本発明の第4実施形態に係る、高耐候性艶消し化粧板4が示されている。化粧板4は、基材10の上に絵柄層12および、シリカ26とアクリル樹脂製ビーズ38とを分散混合させたアクリル樹脂系塗料からなる塗膜層44、を積層させてなるものである。
【0033】
本実施形態においては、アクリル系樹脂塗料中にシリカ26とアクリル樹脂製ビーズ38との合計重量が、アクリル樹脂系塗料の重量に対して、外割で0.5から30重量%になるように、それぞれ分散混合させたものを用いる他は、第1実施形態と同様の方法で化粧板4を製造した。ここにおいて、シリカ26とアクリル樹脂製ビーズ38との合計が30重量%を越えると、化粧板4の耐候性が低下して好ましくなく、0.5重量%未満では、シリカ26およびアクリル樹脂製ビーズ38を加えた効果が少なくなり好ましくない。なお、シリカ26の平均粒径としては、10μm以下が好ましく、アクリル樹脂製ビーズ38の平均粒径としては、10μmから100μmが好ましい。
【0034】
上述のような、第4実施形態においても上記(1)および(3)から(8)と同様の効果が得られる。また、本実施形態においては、(9)アクリル樹脂系塗料にシリカ26およびアクリル樹脂製ビーズ38を加えることで、得られる化粧板4における、艶消しの幅がより広がり、より高い艶消し効果が得られる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて、より具体的に説明する。以下の各実施例および各比較例では、基材10としてケイ酸カルシウム板を使用し、基材10に、ウレタン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料による下地処理を施して下地処理層11を形成した後、下地処理層11上を転写用ベースコート121仕上げし、熱転写処理による絵付けを施して絵柄層12形成したものを試験片として用いた。なお、使用した試験片の表面積は、200mm×1000mmである。
【0036】
〔実施例1〕
試験片に、電子線硬化型クリヤーとして、アクリル樹脂塗料50g/m2をスプレーにて塗布し、その後、含有酸素濃度10%の窒素ガス雰囲気下、試験片送り速度20m/min、照射エネルギー200KVにて電子線を照射し、つづいて、含有酸素濃度0.05%の窒素ガス雰囲気下、試験片送り速度20m/min、照射エネルギー100KVにて電子線を照射し、電子線硬化型クリヤーを硬化させて艶消し塗膜層14を形成させ、高耐候性艶消し化粧板1を得た。
【0037】
〔実施例2〕
実施例1で使用の電子線硬化型クリヤーに、体質顔料としての平均粒子径10μmのシリカ26を電子線硬化型クリヤーの重量に対して外割で10重量%分散混合させ、実施例1と同条件で電子線を照射し、艶消し塗膜層24を形成させて高耐候性艶消し化粧板2を得た。
【0038】
〔実施例3〕
実施例1で使用の電子線硬化型クリヤーに、ビーズとして平均粒子径30μmのアクリル樹脂製ビーズ38を電子線硬化型クリヤーの重量に対して外割で10重量%分散混合させ、実施例1と同条件で電子線を照射し、艶消し塗膜層34を形成させて高耐候性艶消し化粧板3を得た。
【0039】
〔実施例4〕
実施例1で使用の電子線硬化型クリヤーに、実施例2で使用のシリカ26を電子線硬化型クリヤーの重量に対して外割で5重量%分散混合させ、さらに、実施例3で使用のアクリル樹脂製ビーズ38を同じく外割で5重量%分散混合させ、実施例1と同条件で電子線を照射し、艶消し塗膜層44を形成させて高耐候性艶消し化粧板4を得た。
【0040】
〔比較例1〕
試験片に、実施例1で使用の電子線硬化型クリヤー50g/m2をスプレーにて塗布し、その後、含有酸素濃度0.05%の窒素ガス雰囲気下、試験片送り速度20m/min、照射エネルギー200KVにて電子線を照射し、電子線硬化型クリヤーを硬化させて塗膜層を形成させ、化粧板を得た。
【0041】
〔比較例2〕
実施例1で使用の電子線硬化型クリヤーに、実施例2で使用のシリカ26を同様に外割で10重量%分散混合し、比較例1と同条件で電子線を照射し、塗膜層を形成させて化粧板を得た。
【0042】
〔比較例3〕
実施例1で使用の電子線硬化型クリヤーに、実施例3で使用のアクリル樹脂製ビーズ38を同様に外割で10重量%分散混合し、比較例1と同条件で電子線を照射し、塗膜層を形成させて化粧板を得た。
【0043】
〔比較例4〕
実施例1で使用の電子線硬化型クリヤーに、実施例2で使用のシリカ26を同様に外割で40重量%分散混合し、比較例1と同条件で電子線を照射し、塗膜を形成させて化粧板を得た。
【0044】
〔比較例5〕
実施例1で使用の電子線硬化型クリヤーに、実施例3で使用のアクリル樹脂製ビーズ38を同様に外割で40重量%分散混合し、比較例1と同条件で電子線を照射し、塗膜を形成させ化粧板を得た。
【0045】
〔比較例6〕
実施例1で使用の電子線硬化型クリヤーに、実施例2で使用のシリカ26を同様に外割で20重量%分散混合させ、さらに、実施例3で使用のアクリル樹脂製ビーズ38を同様に外割で20重量%分散混合し、比較例1と同条件で電子線を照射し、塗膜を形成させて化粧板を得た。
【0046】
さらに、前述の各実施例で得られた高耐候性艶消し化粧板1、2、3、4および各比較例で得られた化粧板について、スプレー適性、カーテンコーター適性、仕上がり肌、ツヤ(グロス)、耐候性試験を行い、その結果を表1にまとめた。
【0047】
【表1】
Figure 0004261702
【0048】
なお、ここで、ツヤ(グロス)はグロス−光沢計(60度)(HORIBA製IG310(60度))にて測定を行った。また、耐候性試験は、サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(JIS7752準拠)を用い、JIS K5400に示される条件で、各化粧板を5000hr暴露した後の塗膜層の変化を観察した。
【0049】
表1からわかるように、実施例1では、グロス値が30であるのに対し、比較例1ではグロス値が90であり、本発明のように窒素ガス中の含有酸素濃度を変化させた2段階法を用いると、比較例1に示す従来法に比べ、艶消し剤を用いなくとも十分な艶消し効果が得られている。
【0050】
比較例1におけるグロス値を下げるため、比較例2〜6のように、艶消し剤である体質顔料等の添加物の重量%を増加させている。この結果によると、グロス値は多少改善されるが、実施例1の値とはかなり離れており、その効果が十分でないことがわかる。さらに、比較例2〜6では、混入添加物の増加により、スプレー適性の悪化(比較例4〜6)、カーテンコーター適性の悪化(比較例5、6)、仕上がり肌の悪化(比較例4〜6)、耐候性の低下(比較例2、4〜6)を招いている。
【0051】
これに対して、実施例2〜4では、実施例1に艶消し剤であるシリカ等の添加物を分散混合させているが、これにより、さらにグロス値の低下、すなわち、艶消し効果の向上が見られる。しかも、他の試験項目において各性質の悪化は生じていない。
以上のように、窒素ガス中の含有酸素濃度を2段階に変化させて、電子線を照射して塗膜層を形成させる方法を用いると、仕上がり肌のよい、耐候性の非常に優れた高耐候性艶消し化粧板が得られてくることがわかる。
【0052】
なお、本発明は前記各実施形態および各実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。
【0053】
例えば、前記各実施形態(実施例)において、異なる含有酸素濃度の窒素雰囲気下で二段階の電子線照射を行っていたが、これに限らず、三段階以上でもよい。ただし、本実施形態(実施例)のように、二段階で十分な効果が得られるので、二段階が好ましい。また、電子線硬化型クリヤーとして、アクリル樹脂塗料を用いていたが、これに限らず、他の電子線硬化型クリヤー、例えば、エポキシ樹脂系塗料を用いてもよい。さらに、不活性ガスとして窒素ガスを用いていたが、これに限らず、他の不活性ガス、例えば、アルゴンガス等でもよい。
【0054】
前記各実施形態(実施例)では、絵柄層12の模様付けに熱転写を用いているが、これに限らず、ロール転写等の他の転写あるいはスクリーン印刷等の印刷を用いてもよい。また、電子線硬化型クリヤーをスプレーにより塗布していたが、これに限らず、カーテンコータ、刷毛などを用いて塗布してもよい。ただし、スプレー塗布の方が、容易に広範囲に塗布することができ好ましい。
【0055】
また、前記各実施形態(実施例)において、アクリル樹脂塗料中に、例えば、アルミナ等の高硬度の添加剤等の特殊機能を付加させる顔料を加えてもよい。例えば、アルミナを加えることで、各艶消し塗膜層14、24、34、44の表面硬度を向上させることができて好ましい。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、不活性ガス中の酸素濃度を多段階に変えた電子線照射を行い、電子線硬化型クリヤーを硬化させることで、電子線硬化型クリヤー本体で艶消し効果が得られる。したがって、艶消し剤である体質顔料等の粒子への依存度を低くできる。また、それら粒子の混入を少なくすることで、耐候性を向上させることができるとともに、電子線硬化型クリヤーの粘度を低く押さえることができ、塗膜性および仕上がり肌を向上できる。
電子線硬化型クリヤーを用いているから、耐擦過性、耐薬品性に優れた塗膜層を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る高耐候性艶消し化粧板の模式断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る高耐候性艶消し化粧板の模式断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る高耐候性艶消し化粧板の模式断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る高耐候性艶消し化粧板の模式断面図である。
【符号の説明】
1、2、3、4 高耐候性艶消し化粧板
10 基材
12 絵柄層
121 転写用ベースコート
122 転写フィルム
14、24、34、44 艶消し塗膜層
26 体質顔料としてのシリカ
38 ビーズとしてのアクリル樹脂製ビーズ

Claims (5)

  1. 基材上に絵柄層を形成し、この絵柄層上に電子線硬化型クリヤーを塗布した後、酸素を含有する不活性ガス雰囲気下において、含有酸素濃度を多段階に変化させて電子線照射を行うことにより、前記電子線硬化型クリヤーを硬化させ、艶消し塗膜層を形成させる高耐候性艶消し化粧板の製造方法であって、
    前記不活性ガス雰囲気中の含有酸素濃度は、第1段階において5から20%であり、第2段階において0.5%以下である2段階に変化させることを特徴とする高耐候性艶消し化粧板の製造方法
  2. 請求項1に記載の高耐候性艶消し化粧板の製造方法において、前記電子線硬化型クリヤーに、艶消し剤を前記電子線硬化型クリヤーの重量に対して外割で0.5から30重量%分散混合させることを特徴とする高耐候性艶消し化粧板の製造方法。
  3. 請求項2に記載の高耐候性艶消し化粧板の製造方法において、前記艶消し剤は、体質顔料および/またはビーズであることを特徴とする高耐候性艶消し化粧板の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の高耐候性艶消し化粧板の製造方法において、前記絵柄層は前記基材上に転写用ベースコートを塗布、乾燥した後、転写フィルムを前記転写用ベースコートに熱転写して形成されることを特徴とする高耐候性艶消し化粧板の製造方法。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の高耐候性艶消し化粧板の製造方法により製造された高耐候性艶消し化粧板。
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