JP4261407B2 - 有機質正特性サーミスタ - Google Patents

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本発明は、温度上昇とともに抵抗値が急激に増大するPTC(Positive Temperature Coefficient:正温度係数)特性を有する有機質正特性サーミスタに関する。
従来、有機質正特性サーミスタに備えられるサーミスタ素体のマトリックス材料として、熱可塑性樹脂が広く知られている。しかし、熱可塑性樹脂を用いる場合、耐熱性を得るための架橋処理や不燃化処理が必要であるため、サーミスタ素体の製造工程が複雑になっていた。そこで、かかる処理を省き製造工程を簡略化できるマトリックス材料として、熱硬化性樹脂が注目されてきた。
これまでに検討されている熱硬化性樹脂を用いる有機質正特性サーミスタとしては、例えば、熱硬化性樹脂に繊維状の導電物質を分散させたもの(例えば、特許文献1参照。)、熱硬化性樹脂にスパイク状の突起を有する導電性粒子を分散させたもの(例えば、特許文献2参照。)、熱硬化性樹脂にスパイク状の突起を有する導電性粒子と導電性短繊維とを分散させたもの(例えば、特許文献3参照。)等が開示されている。
米国特許第4966729号明細書 特許第3101047号公報 特許第3101048号公報
ところで、有機質正特性サーミスタは、過電流・加熱保護素子、自己制御型発熱体、温度センサー等に利用することができる。これらのデバイスに要求される特性としては、室温抵抗値が十分小さいこと、PTC特性における抵抗値の変化率が十分大きいこと、さらに、加熱冷却した際の室温抵抗値の復帰性(すなわち、信頼性)に優れていることなどが挙げられ、このような特性を満足できる有機質正特性サーミスタが求められている。
しかしながら、特許文献1に記載の有機質正特性サーミスタを始めとする、従来の熱硬化性樹脂と従来の導電性粒子を用いる構成では、PTC特性における抵抗値の変化率を十分に確保したまま室温抵抗値を低下させることが困難であり、満足な特性を得ることができなかった。
一方、特許文献2及び3に記載の有機質正特性サーミスタは、室温抵抗値を下げると共に大きな抵抗変化率を得ることを意図したものである。
しかしながら、近年の電子機器等の小型化に伴い、有機質正特性サーミスタも小型化させる必要があり、このような場合、特許文献2及び3に記載の有機質正特性サーミスタだと、十分な室温抵抗値と抵抗変化率とを実用レベルで両立させることが困難であった。
すなわち、有機質正特性サーミスタの小型化を図ると電極面積が減少し、その結果として室温抵抗値が増加する。これを補う方法としては、電極間の距離を小さくする方法や、サーミスタ素体中の導電性粒子の含有量を増加する方法が挙げられる。しかしながら、特許文献2及び3に記載の有機質正特性サーミスタにおいて、これらの方法を用いて室温抵抗値を低下させたところ、十分な抵抗変化率を得ることができないことを実験的に見出した(本明細書の比較例1〜3参照)。
また、有機質正特性サーミスタが過電流保護素子等に用いられる場合には、特に、室温抵抗値を低く設定できることが望まれている。上記従来の有機質正特性サーミスタでは、室温抵抗値を、10mΩ以下に設定にした場合、所望のPTC特性を得ることが困難であった。さらに、従来の有機質正特性サーミスタでは、設定した室温抵抗値を安定して得られるという信頼性の点においても、まだ不十分であった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、室温抵抗値が十分小さく、PTC特性における抵抗値の変化率が十分大きく、かつ信頼性に優れた有機質正特性サーミスタを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、サーミスタ素体を構成する熱硬化性樹脂として、熱膨張性の高い樹脂と、さらに特定の酸無水物を含む硬化剤とを用いることにより、得られる有機質正特性サーミスタが所望の室温抵抗値と、所望の抵抗変化率とを同時に満たすことができ、しかも信頼性に優れていることを見出し、本発明に到達した。
本発明の有機質正特性サーミスタは、互いに対向して配置された1対の電極と、1対の電極間に配置された正の抵抗−温度特性を有するサーミスタ素体と、を備え、サーミスタ素体が、エポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とからなる混合物の硬化体からなり、エポキシ樹脂が下記一般式(1)で表わされる化合物であり、硬化剤が、硬化体に可とう性を付与する酸無水物であることを特徴とする。
Figure 0004261407

[式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の2価の鎖式基を示し、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、下記一般式(a)で表される2価の有機基を示す。
−(Ar−X)− …(a)
式(a)中、Arは、置換基を有していてもよい、2価の、5員環基、6員環基、ナフタレン基、若しくはアントラセン基を示し、Xは、炭素数1以上の2価の鎖式基を示す。]
かかる本発明の有機質正特性サーミスタにおいては、サーミスタ素体が、エポキシ樹脂と硬化剤とから形成されるマトリックスに導電性粒子を分散させているものからなる。また、形成されたマトリックスが、硬化剤に含まれる上記酸無水物によって可とう性を付与されている。これらのことによって、有機質正特性サーミスタの室温抵抗値を十分小さくすることができ、PTC特性における抵抗値の変化率を十分大きくすることができ、さらに有機質正特性サーミスタの信頼性を優れたものとすることができる。
ここで、酸無水物が「硬化体に可とう性を付与する」ものか否かは、例えば、以下の方法により得られる条件を満足するか否かで判断される。その条件は、エポキシ樹脂と、酸無水物を含む硬化剤とを、当量比1:1で混合した混合物を加熱処理して硬化体を形成した場合に、得られた硬化体の25℃における曲げ弾性率の値E1(Pa)が、同じエポキシ樹脂と、硬化剤としてのメチルヘキサヒドロフタル酸無水物とを、当量比1:1で混合した混合物を、同条件で加熱処理して得られる硬化体の25℃における曲げ弾性率の値E0(Pa)に対して、下記式(A)を満たすことである。
(E1/E0)<1 …(A)
ただし、E1及びE0は、曲げ弾性率測定法に基づいて測定された値である。
かかる条件を満たすことができる酸無水物を、本発明における「硬化体に可とう性を付与する酸無水物」であると判断することができる。
本発明では、(E1/E0)が0.2〜0.8であることが好ましい。(E1/E0)が、0.8を超えると、本発明の効果が得られ難くなる傾向にあり、0.2未満であると、サーミスタ素体の機械的強度が低下する傾向にある。
また、酸無水物を用いるのは、エポキシ樹脂を用いる有機質正特性サーミスタにおいて、室温抵抗値を低下させる効果があること、耐熱性を付与できること、及び低粘度化によって作業性が向上することなどの理由によるものである。
さらに、本発明では、酸無水物が、下記一般式(I)で表される化合物、又は、下記一般式(II)〜(IV)で表される構造単位のうち1種以上を1つ以上含む化合物であることが好ましい。
Figure 0004261407

式(I)中、Xは、炭素数4以上の炭化水素基を少なくとも1つ有する2価の有機基を示す。なお、炭素数4以上の炭化水素基は、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、また、鎖状構造であっても枝分かれ構造であってもよい。
Figure 0004261407

式(II)中、Yは、炭素数4以上の2価の炭化水素基を示す。
Figure 0004261407

式(III)中、Zは、炭素数2以上の2価の炭化水素基を示す。
Figure 0004261407

式(IV)中、Wは、炭素数3以上の3価の炭化水素基を示す。
また、本発明では、酸無水物が、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、及びグリセロールトリストリメリテートからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
かかる酸無水物を用いることで、所望の室温抵抗値と所望の抵抗変化率とを有し、かつ信頼性に優れる有機質正特性サーミスタを、より確実かつ容易に得ることができる。これは、有機質正特性サーミスタの抵抗変化率及び加熱冷却した際の室温抵抗値の復帰性に影響を与えるサーミスタ素体の可とう性が、より好ましい程度になるためと本発明者らは考えている。
また、本発明で用いられる導電性粒子は、電子伝導性を有していれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック、グラファイト、各形状の金属粒子もしくはセラミック系導電性粒子を用いることが出来る。金属粒子の材料としては、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、銀、亜鉛、コバルト、及び銅粉にニッケルメッキを施したもの等が挙げられる。セラミック系導電性粒子の材料としては、TiC及びWC等が挙げられる。これらは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、金属粒子を用いることが好ましい。導電性粒子として金属粒子を用いると、サーミスタの抵抗変化率を十分に確保したまま、室温抵抗値をより低下させることができ、例えば、本発明のサーミスタを過電流保護素子として用いる場合に好適である。
また、導電性粒子の形状としては、球状、フレーク状、繊維状及び棒状等が挙げられるが、粒子の表面にスパイク状の突起を有するものが好ましい。スパイク状の突起を有する導電性粒子を用いることにより、隣接する粒子間におけるトンネル電流が流れやすくなるため、有機質正特性サーミスタの抵抗変化率を十分に確保したまま、室温抵抗値をより確実に低くすることができる。また、スパイク状の突起を有する導電性粒子は、真球状の粒子に比べて、粒子同士の中心間距離を大きくすることができるため、PTC特性において大きな抵抗変化率をより確実に得ることができる。さらに、繊維状の粒子を用いた場合に比べて、サーミスタの室温抵抗値のばらつきを低減することができる。また、導電性粒子の構成材料としてニッケルを用いると、酸化されにくい等の化学的安定性の観点から好ましい。
本発明によれば、室温抵抗値が十分小さく、PTC特性における抵抗値の変化率が十分大きく、かつ信頼性に優れた有機質正特性サーミスタを提供することができる。
以下、図面を参照しながら本発明の有機質正特性サーミスタについて詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の有機質正特性サーミスタの好適な一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図1に示す有機質正特性サーミスタ(以下、場合によって「サーミスタ」ともいう。)10は、互いに対向して配置された1対の電極2及び電極3と、電極2及び電極3間に配置された正の抵抗−温度特性を有するサーミスタ素体(以下、場合によって「サーミスタ素体」ともいう。)1と、必要に応じて電極2に電気的に接続されたリード(図示せず)と、電極3に電気的に接続されたリード(図示せず)とから構成されている。
電極2及び電極3は、サーミスタの電極として機能する電子伝導性を有するものであれば、その形状や材質について特に限定されない。また、リードは、それぞれ電極2及び電極3から外部に電荷を放出又は注入することが可能な電子伝導性を有していれば、その形状や材質について特に限定されない。
サーミスタ素体1は、主剤としてのエポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子とを含有する混合物を加熱して得られる硬化体から形成されている。また、導電性粒子は、サーミスタ素体1中に分散しており、エポキシ樹脂及び硬化剤から形成されたマトリックスにより保持されている。
サーミスタ素体1を形成する際に用いるエポキシ樹脂は、特に限定されず、例えば、平均して1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するものが挙げられる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール及びレゾルシノール等の多価フェノール、若しくは、グリセリン及びポリエチレングリコール等の多価アルコールと、エピクリルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、p−ヒドロキシ安息香酸及びβ−ヒドロキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸と、エピクリルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル、フタル酸及びテレフタル酸等のポリカルボン酸と、エピクリルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル、エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、並びに、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、本実施形態においては、主剤であるエポキシ樹脂として、下記一般式(1)で表される化合物を用いることが好ましい。
Figure 0004261407

式(1)中、R、R及びRは、それぞれ2価の有機基を示し、かつ、R及びRのうちの少なくとも一つは、置換基を有していてもよい、炭素数1以上の2価の鎖式基を示す。
ここで、「鎖式基」とは、主鎖に環式構造を含まず、主鎖を構成する原子が線状に配列した鎖状構造を有する基を意味し、枝分かれ構造を有していてもよい。また、飽和炭化水素基あるいは不飽和炭化水素基のように、主鎖を構成する原子が炭素のみであるものでもよく、酸素、硫黄又は窒素等のヘテロ原子が主鎖骨格に含まれているものであってもよい。
また、「炭素数1以上の2価の鎖式基」という場合は、主鎖を構成している炭素の数が1以上である2価の鎖式基を意味する。
ここで、炭素数1以上の2価の鎖式基としては、例えば、下記一般式(3)〜(6)で示される2価の有機基が挙げられる。
−(CH− …(3)
ここで、aは、1〜20の整数を示す。
−(CHCHO)− …(4)
ここで、bは、1〜20の整数を示す。
−(CHCH(CH)O)− …(5)
又は、−(CH(CH)CHO)− …(6)
ここで、cは、1〜20の整数を示す。
上記一般式(1)で表わされる化合物を用いることによって、サーミスタ素体1に、より一層適度な可とう性を付与することができ、所望の室温抵抗値と所望の抵抗変化率とを有し、かつ信頼性に優れる有機質正特性サーミスタを、より確実かつ容易に得ることができる。
また、エポキシ樹脂として、下記一般式(1)で表わされる化合物を用いても、同様の効果を得ることができる。
Figure 0004261407

式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の2価の鎖式基を示し、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、下記一般式(a)又は(b)で表される2価の有機基を示す。
−(Ar−X)− …(a)
式(a)中、Arは、置換基を有していてもよい、2価の、5員環基、6員環基、ナフタレン基、若しくはアントラセン基を示し、Xは、炭素数1以上の2価の鎖式基を示す。
−Y− …(b)
式(b)中、Yは、置換基を有していてもよい、グリシジルエーテル基に結合(隣接)した炭素原子を含む炭素数1以上の2価の鎖式基を示す。
ここで、Rとしては、例えば、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、及び−C2n−(nは2〜20の整数)等の鎖式基が挙げられる。
また、R及びRとしては、R及びRが同一である場合、例えば、(a)−C−O−CH−CH−で示される2価の有機基、及び(b)−CH−で示される2価の有機基等が挙げられる。また、R及びRが異なる場合、例えば、一方が(b)−CH−で示される2価の有機基、他方が(b)−CHCH−で示される2価の有機基が挙げられる。
ここで、上記一般式(1)において、Rが、−CH−、−CH(CH)−、又は−C(CH−で示される2価の有機基であり、R及びRが、前記一般式(a)で表され、Arが−C−である2価の有機基であることが好ましい。
このような化合物を用いることにより、上記の効果が得られると共に、耐熱性に優れた有機質正特性サーミスタをより確実に得ることができる。
また、エポキシ樹脂として、下記一般式(1)で表わされる化合物を用いても、サーミスタ素体1に、より一層適度な可とう性を付与することができ、所望の室温抵抗値と所望の抵抗変化率とを有し、かつ信頼性に優れる有機質正特性サーミスタを、より確実かつ容易に得ることができる。
Figure 0004261407

ここで、式(1)中、Rは置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の2価の鎖式基を示し、R及びRは単結合又は2価の有機基を示し、かつ、R及びRの少なくとも一方が、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CH(CH)CHO−、−SiO−、−CH=CH−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=C(CN)−、−CHO−、−CHS−、−NH−CO−O−、−CO−O−、−CH=N−、及び、−O−CO−O−からなる群より選択される1種以上の構造単位を含む。
また、エポキシ樹脂として、下記一般式(1)で表わされる化合物を用いても、サーミスタ素体1に、より一層適度な可とう性を付与することができ、所望の室温抵抗値と所望の抵抗変化率とを有し、かつ信頼性に優れる有機質正特性サーミスタを、より確実かつ容易に得ることができる。
Figure 0004261407

ここで、式(1)中、Rは置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の2価の鎖式基を示し、R及びRは単結合又は2価の有機基を示し、R及びRの少なくとも一方が、−CH−、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CH(CH)CHO−、−SiO−、−CH=CH−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=C(CN)−、−CHO−、−CHS−、−NH−CO−、−NH−CO−O−、−CO−O−、及び、−CH=N−からなる群より選択される1種以上の構造単位を含み、かつ当該構造単位がグリシジルエーテル基に結合している。
及びRの具体例としては、下記一般式(3)〜(6)で示される2価の有機基が挙げられる。
−(CH− …(3)
ここで、aは、1〜20の整数を示す。
−(CHCHO)− …(4)
ここで、bは、1〜20の整数を示す。
−(CHCH(CH)O)− …(5)
又は、−(CH(CH)CHO)− …(6)
ここで、cは、1〜20の整数を示す。
本実施形態では、上記一般式(1)において、R及びRの少なくとも一方が、下記一般式(2)で示される構造単位を含み、かつ当該構造単位がグリシジルエーテル基に結合していることが好ましい。
−(R−O)− …(2)
式(2)中、Rは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、nは1〜10の整数を示す。
さらに、上記一般式(1)において、Rが、−CH−、−CH(CH)−、又は−C(CH−で示される2価の有機基であり、かつ、R及びRが、−C−(O−L)−(Lは、炭素数1〜20の鎖式基を示し、pは、1〜10の整数を示す)で示される2価の有機基であることがより好ましい。
かかる化合物を用いることにより、サーミスタ素体1に、より一層適度な可とう性を付与することができ、所望の室温抵抗値と所望の抵抗変化率とを有し、かつ信頼性に優れる有機質正特性サーミスタを、より確実かつ容易に得ることができる。
上記一般式(1)で表わされる化合物は、公知のものであれば特に制限されない。それらのうち、商業的に入手可能なものとしては、例えば、上記一般式(1)中、R及びRの少なくとも一方が−CHCH(CH)O−、又は−CH(CH)CHO−の構造単位を有するエポキシ樹脂である「リカレジンBPO20E」(新日本理化社製、商品名)、「EP4005」(旭電化工業社製、商品名)、「EP4000」(旭電化工業社製、商品名)、及び「YD−716」(東都化成(株)社製、商品名)等が挙げられる。
式(1)中、R及びRの少なくとも一方が−CO−O−、又は−O−CO−の構造単位を有するエポキシ樹脂として「YD−171」(東都化成(株)社製、商品名)等が挙げられる。
式(1)中、R及びRの少なくとも一方が−CHO−、−OCH−、−CHS−、又は−SCH−の構造単位を有するエポキシ樹脂として「リカレジンBPO60E」(新日本理化社製、商品名)、「YH−300」(東都化成(株)社製、商品名)、「PG202」(東都化成(株)社製、商品名)、「EP4085」(旭電化工業社製、商品名)、「リカレジンDME100」(新日本理化社製、商品名)、及び「リカレジンDME200」(新日本理化社製、商品名)等が挙げられる。
本実施形態において、サーミスタ素体1を形成する際に用いる硬化剤は、硬化体に可とう性を付与する酸無水物を含んでいることが必要である。
ある酸無水物が、本実施形態における「硬化体に可とう性を付与する酸無水物」に該当するか否かは、例えば、以下の方法により得られる条件を満足するか否かで判断される。その条件は、エポキシ樹脂と、酸無水物を含む硬化剤とを、当量比1:1で混合した混合物を加熱処理して硬化体を形成した場合に、得られた硬化体の25℃における曲げ弾性率の値E1(Pa)が、同じエポキシ樹脂と、硬化剤としてのメチルヘキサヒドロフタル酸無水物とを、当量比1:1で混合した混合物を同条件で加熱処理して得られる硬化体の25℃における曲げ弾性率の値E0(Pa)に対して、下記式(A)を満たすことである。
(E1/E0)<1 …(A)
ただし、E1及びE0は、曲げ弾性率測定法に基づいて測定された値である。
かかる条件を満たすことができる酸無水物を、本実施形態における「硬化体に可とう性を付与する酸無水物」であると判断することができる。
硬化体に可とう性を付与する酸無水物を含む硬化剤を用いることにより、所望の室温抵抗値と所望の抵抗変化率とを同時に満足し、さらに、信頼性に優れる有機質正特性サーミスタを得ることができる。
また、本実施形態では、(E1/E0)が0.2〜0.8であることが好ましい。(E1/E0)が、0.8を超えると、本発明の効果が得られ難くなる傾向にあり、0.2未満であると、サーミスタ素体の機械的強度が低下する傾向にある。
また、本実施形態においては、酸無水物を硬化剤に含有させることによって、エポキシ樹脂を用いる有機質正特性サーミスタの室温抵抗値を相対的に低下させる効果があり、さらに、耐熱性を付与できること、及び低粘度化によって作業性が向上することなどの効果もある。
本実施形態で好適に用いることができる酸無水物としては、下記一般式(I)で表される化合物、又は、下記一般式(II)〜(IV)で表される構造単位のうち1種以上を1つ以上含む化合物が挙げられる。
Figure 0004261407

式(I)中、Xは、炭素数4以上の炭化水素基を少なくとも1つ有する2価の有機基を示す。なお、炭素数4以上の炭化水素基は、飽和炭化水素基であっても不飽和炭化水素基であってもよく、また、鎖状構造であっても枝分かれ構造であってもよい。
Figure 0004261407

式(II)中、Yは、炭素数4以上の2価の炭化水素基を示す。
Figure 0004261407

式(III)中、Zは、炭素数2以上の2価の炭化水素基を示す。
Figure 0004261407

式(IV)中、Wは、炭素数3以上の3価の炭化水素基を示す。
上記一般式(I)で表される化合物としては、例えば、下記一般式(V)及び(VI)で表される酸無水物が挙げられる。
Figure 0004261407

式(V)中、Rは、炭素数4〜20の飽和又は不飽和炭化水素基を示す。
Figure 0004261407

式(VI)中、R〜Rは、同一であっても異なっていてもよく、炭素数4〜20の飽和又は不飽和炭化水素基を示す。
上記一般式(II)で表される化合物としては、例えば、下記一般式(VII)で表される酸無水物が挙げられる。
Figure 0004261407

式(VII)中、Rは、炭素数4以上の2価の炭化水素基を示す。また、この炭化水素基は、主鎖を構成する炭素数が4以上であれば、アルキル基、フェニル基などの置換基を有していてもよい。また、式(VII)中、mは、1〜20の整数を示す。
上記一般式(III)で表される化合物としては、例えば、下記一般式(VIII)で表される酸無水物が挙げられる。
Figure 0004261407

式(VIII)中、Rは、炭素数2以上の2価の炭化水素基を示す。
上記一般式(III)で表される化合物としては、例えば、下記一般式(IX)で表される酸無水物が挙げられる。
Figure 0004261407

式(IX)中、R10は、炭素数3以上の3価の炭化水素基を示す。
さらに、硬化体に可とう性を付与する酸無水物としては、例えば、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、及び2,4−ジエチルグルタル酸無水物等の脂肪族酸無水物、並びに、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、及びグリセロールトリストリメリテート等の芳香族酸無水物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
かかる酸無水物を用いることによって、所望の室温抵抗値と所望の抵抗変化率とを同時に満足し、さらに、信頼性に優れる有機質正特性サーミスタを、より確実かつ容易に得ることができる。
サーミスタ素体1を形成する際に用いる硬化剤は、1種又は2種以上の上述の酸無水物のみであってもよいが、1種又は2種以上の上述の酸無水物と1種又は2種以上の他の硬化剤との混合物であってもよい。硬化体に可とう性を付与する酸無水物以外の他の硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応して硬化体を形成できるものであれば特に限定されず、例えば、上記式(1)を満足しない酸無水物、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、フェノール、ポリメルカプタン、第三アミン及びルイス酸錯体等の公知の硬化剤が挙げられる。
硬化体に可とう性を付与する酸無水物は、硬化剤全体100質量部に対して、5〜100質量部の配合割合で用いることが好ましく、20〜100質量部の配合割合で用いることがより好ましい。硬化体に可とう性を付与する酸無水物の配合割合が、5質量部未満であると、得られる有機質正特性サーミスタが所望の室温抵抗値と所望の抵抗変化率とを同時に満たすことが困難となる傾向にある。
サーミスタ素体1を形成する際に用いる硬化剤の配合割合としては、エポキシ樹脂の全量に対して当量比で、0.5〜1.5が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。硬化剤の当量比がエポキシ樹脂に対して0.5未満だと、あるいは1.5を超えると、未反応のエポキシ基及び酸無水物基が増加することにより、サーミスタ素体の機械的強度が低下したり、サーミスタのPTC特性における抵抗変化率が低下したりする傾向にある。
サーミスタ素体1に含有される導電性粒子は、電子伝導性を有していれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック、グラファイト、各形状の金属粒子若しくはセラミック系導電性粒子を用いることができる。金属粒子の金属材料としては、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、銀、亜鉛、コバルト、及び銅紛にニッケルめっきを施したもの等が挙げられる。セラミック系導電性粒子の材料としては、TiC及びWC等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の有機質正特性サーミスタでは、金属粒子を用いることが好ましい。導電性粒子として金属粒子を用いると、サーミスタの抵抗変化率を十分に確保したまま、室温抵抗値をより低下させることができ、例えば、本発明のサーミスタを過電流保護素子として用いる場合に好適である。また、金属粒子の構成材料としてニッケルを用いることが酸化されにくい等の化学的安定性の観点から好ましい。
導電性粒子の形状としては特に限定させず、球状、フレーク状、繊維状及び棒状等が挙げられるが、粒子の表面にスパイク状の突起を有するものが好ましい。本実施形態の有機質正特性において、スパイク状の突起を有する導電性粒子を用いることにより、隣接する粒子間におけるトンネル電流が流れやすくなるため、有機質正特性サーミスタの抵抗変化率を十分に確保したまま、室温抵抗値をより低くすることができる。また、スパイク状の突起を有する導電性粒子は、真球状の粒子に比べて、粒子同士の中心間距離を大きくすることができるため、PTC特性においてより大きな抵抗変化率を得ることができる。さらに、繊維状の粒子を用いた場合に比べて、サーミスタの室温抵抗値のばらつきを低減することができる。
スパイク状の突起を有する導電性粒子は、一つ一つの粒子(一次粒子)が個別に存在する粉体であってもよいが、10〜1000個程度の一次粒子が鎖状に連なりフィラメント状の二次粒子を形成しているものが好ましい。かかるフィラメント状の二次粒子を形成しているものを用いることにより、より低い室温抵抗を得ることができ、さらには、ばらつきの少ない安定した室温抵抗値を得ることができる。また、その材質は、化学的安定性の観点から金属が好ましく、ニッケルを主成分とするものがより好ましい。さらに、その比表面積が0.3〜3.0m/gであって、見かけ密度が3.0g/cm以下であることが好ましい。ここで、「比表面積」とは、BET一点法に基づく窒素ガス吸着法により求められる比表面積を示す。
また、一次粒子の平均粒径は、0.1〜7.0μmであると好ましく、0.5〜5.0μmであるとより好ましい。なお、平均粒径はフィッシャー・サブシーブ法で測定したものである。
商業的に入手可能なスパイク状の突起を有する導電性粒子としては、例えば、「INCO Type210」、「INCO Type255」、「INCO Type270」、「INCO Type287」(いずれもINCO社製、商品名)等が挙げられる。
サーミスタ素体1に含有される導電性粒子の配合割合としては、サーミスタ素体中で50〜90質量%となるように配合することが好ましく、60〜80質量%となるように配合することがより好ましい。導電性粒子の配合割合が、50質量%未満であると、低い室温抵抗値が得られ難くなる傾向にあり、90質量%を超えると、PTC特性においてより大きな抵抗変化率を得ることが困難になる傾向にある。
本実施形態では、エポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子を含有する混合物に、さらに硬化促進剤等の添加剤を加えてもよい。硬化促進剤を加えることにより、混合物を硬化させる際の硬化温度を下げることや硬化に要する時間を短縮することが可能となる。
硬化促進剤としては、例えば、第三アミン、アミンアダクト化合物、イミダゾールアダクト化合物、ほう酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、有機酸金属塩、及びイミダゾール等の一般に用いられているものが挙げられる。これらのうち、イミダゾールアダクト化合物である、イミダゾールアダクトエポキシ化合物を用いることが好ましい。第三アミンやアミンアダクト化合物を硬化促進剤として用いる場合に比べて、硬化速度のコントロールが容易であり、発熱をより小さくすることができるため、サーミスタ素体1を形成する樹脂が炭化するほどの熱が発生することをより確実に抑制することができる。
添加剤の配合量については、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。
次に、本発明の有機質正特性サーミスタの製造方法の一例を示す。
まず、所定量のエポキシ樹脂、硬化剤、導電性粒子、及び、必要に応じて硬化促進剤などの添加剤を混合する(混合工程)。この混合工程の際に用いられる装置は、各種撹拌機、分散機、ミル等の公知のものが挙げられる。混合する時間は、特に限定されないが、通常、10〜60分間混合することで、各成分を分散させることができる。
混合処理中に気泡が混入した場合は、真空脱泡を行うことが好ましい。また、粘度調節のために、反応性希釈剤や一般的に用いられる溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、例えばIPA、アセトン、メタノール、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、THF、セロソルブアセテート、及び酢酸エチル等が挙げられる。
次に、得られた混合物をスクリーン印刷等の方法により電極としての金属箔上に塗布する。さらに、別の金属箔で挟み、プレス成形することによりシート状にする。また、混合物をニッケルや銅等の金属箔電極間に流し込むことによりシート状にしてもよい。
次に、得られたシートを加熱処理して硬化させる(硬化工程)。
また、混合物のみをドクターブレード方法などによりシート状に成形し、これを硬化したものに導電性ペースト等を塗布して電極を形成することもできる。
そして、得られたシート状の硬化体を所望の形状(例えば、3.6mm×9mm)に打ち抜くことにより、サーミスタを得ることができる(打ち抜き工程)。打ち抜き方法としては、通常の有機質正特性サーミスタを打ち抜く方法であれば特に限定されることなく用いることができる。
また、必要に応じて、打ち抜き工程によって得られたサーミスタの電極の表面に、それぞれリードを接合することにより、リードを有するサーミスタを作製できる。リード接合方法としては、通常の有機質正特性サーミスタの製造方法において用いられるものであれば特に限定されることなく用いることができる。
以上、本発明の有機質正特性サーミスタの好適な実施形態及び製造方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
また、有機質正特性サーミスタが、複数のサーミスタ素体を積層して構成されていてもよい。
本発明の有機質正特性サーミスタは、過電流・加熱保護素子、自己制御型発熱体、温度センサー等に利用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
参考例1)
エポキシ樹脂としてビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名「EPICLON850」、エポキシ当量190g/eq)100質量部と、硬化剤としてのドデセニル無水コハク酸(新日本理化社製、商品名「リカシッドDDSA」、酸無水物当量266g/eq)140質量部(エポキシ樹脂と硬化剤との当量比で1:1)と、硬化促進剤としてのイミダゾールアダクトエポキシ化合物(味の素ファインテクノ(株)製、商品名「PN−40J」)1質量部とを攪拌機を用いて攪拌混合した。さらに、導電性粒子としてフィラメント状ニッケルパウダ(INCO社製、商品名「Type255ニッケルパウダ」、平均粒径2.2〜2.8μm、見かけ密度0.5〜0.65g/cm、比表面積0.68m/g)を、混合物中で75質量%となるように添加して攪拌混合し、混合物を調製した。
次に、得られた混合物を、印刷法によりNi箔(厚さ:25μm)上に塗布して、膜厚が0.5mmの塗膜を形成し、さらにもう一枚のNi箔で塗膜を挟みプレス成形した。さらに、これをオーブンに入れ、温度150℃で300分間保持して硬化処理を行い、Ni箔の電極で挟まれたシート状の硬化体を得た。
続いて、得られたシート状の硬化体を3.6×9.0mmの形状に打ち抜き、参考例1の有機質正特性サーミスタを得た。
次いで、得られたサーミスタを恒温槽内で室温(25℃)から200℃まで3℃/分で加熱、冷却し、4端子法により所定の温度で抵抗値の測定を行い、温度−抵抗曲線を得た。
参考例1の有機質正特性サーミスタの初期室温抵抗は2.0×10−3Ω(1.3×10−2Ω・cm)であった。また、130℃付近でその抵抗が急激に増加し、抵抗変化率は7桁(10)以上であった。さらに、加熱冷却後の室温抵抗値は6.0×10−3Ω(3.9×10−2Ω・cm)であった。これらの結果を表1にまとめる。
また、参考例1の有機質正特性サーミスタを約200℃の高温中に放置した後、室温雰囲気に取り出したところ、Ni箔電極の歪みや変形、打ち抜き側面からの素体のはみ出し等が見られず、サーミスタの変形は確認されなかった。
Figure 0004261407
参考例2)
エポキシ樹脂として、ビスフェノールAタイプのものに代えて、ビスフェノールFタイプのエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名「EPICLON830」、エポキシ当量175g/eq)を100質量部用い、このエポキシ樹脂100質量部に対して硬化剤を152質量部(エポキシ樹脂と硬化剤との当量比で1:1)用いたこと以外は参考例1と同様にして、参考例2の有機質正特性サーミスタを得た。
得られた参考例2のサーミスタについて、参考例1と同様にして、温度−抵抗曲線を得た。その初期室温抵抗値は2.0×10−3Ω(1.3×10−2Ω・cm)であった。また、130℃付近で抵抗が急激に増加し、抵抗変化率は6桁(10)以上であった。さらに、加熱冷却後の室温抵抗値は4.0×10−3Ω(2.6×10−2Ω・cm)であった。これらの結果を表1にまとめる。
また、参考例2の有機質正特性サーミスタを約200℃の高温中に放置した後、室温雰囲気に取り出したところ、Ni箔電極の歪みや変形、打ち抜き側面からの素体のはみ出し等が見られず、サーミスタの変形は確認されなかった。
参考例3)
硬化剤として、ドデセニル無水コハク酸に代えて、オクテニル無水コハク酸(三洋化成工業社製、商品名「OSA」、酸無水物当量258g/eq)を、エポキシ樹脂100質量部に対して136質量部(エポキシ樹脂と硬化剤との当量比で1:1)用いたこと以外は参考例1と同様にして、参考例3の有機質正特性サーミスタを得た。
得られた参考例3のサーミスタについて、参考例1と同様にして、温度−抵抗曲線を得た。その初期室温抵抗値は2.0×10−3Ω(1.3×10−2Ω・cm)であった。また、130℃付近で抵抗が急激に増加し、抵抗変化率は7桁(10)以上であった。さらに、加熱冷却後の室温抵抗値は4.0×10−3Ω(2.6×10−2Ω・cm)であった。これらの結果を表1にまとめる。
また、参考例3の有機質正特性サーミスタを約200℃の高温中に放置した後、室温雰囲気に取り出したところ、電極箔表面の歪みや、打ち抜き側面からのPTC素体のはみ出しなどは見られず、サーミスタの変形は確認されなかった。
(比較例1)
硬化剤として、ドデセニル無水コハク酸に代えて、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(大日本インキ化学工業社製、商品名「B570」、酸無水物当量168g/eq)を、エポキシ樹脂100質量部に対して88質量部(エポキシ樹脂と硬化剤との当量比で1:1)用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の有機質正特性サーミスタを得た。
得られた比較例1のサーミスタについて、実施例1と同様にして、温度−抵抗曲線を得た。その初期室温抵抗は3.0×10−3Ω(1.9×10−2Ω・cm)であった。しかし、温度が変化しても抵抗変化率が1桁(10)未満であり、十分なPTC特性が得られなかった。この結果を表1にまとめる。
(比較例2)
硬化剤として、ドデセニル無水コハク酸に代えて、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(大日本インキ化学工業社製、商品名「B650」、酸無水物当量166g/eq)を、エポキシ樹脂100質量部に対して88質量部(エポキシ樹脂と硬化剤との当量比で1:1)用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の有機質正特性サーミスタを得た。
得られた比較例2のサーミスタについて、実施例1と同様にして、温度−抵抗曲線を得た。初期室温抵抗は4.0×10−3Ω(2.6×10−2Ω・cm)であった。しかし、温度が変化しても抵抗変化率が1桁(10)程度であり、十分なPTC特性が得られなかった。これらの結果を表1にまとめる。
(比較例3)
エポキシ樹脂として、ビスフェノールAタイプのものに代えて、ビスフェノールFタイプのエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名「EPICLON830」、エポキシ当量175g/eq)を100質量部、及び、硬化剤として、ドデセニル無水コハク酸に代えて、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(大日本インキ化学工業社製、商品名「B570」、酸無水物当量168g/eq)を、エポキシ樹脂100質量部に対して96質量部(エポキシ樹脂と硬化剤との当量比で1:1)用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の有機質正特性サーミスタを得た。
得られた比較例3のサーミスタについて、実施例1と同様にして、温度−抵抗曲線を得た。その初期室温抵抗は3.0×10−3Ω(1.9×10−2Ω・cm)であった。しかし、温度が変化しても抵抗変化率が1桁(10)未満であり、十分なPTC特性が得られなかった。これらの結果を表1にまとめる。
表1に示されるように、参考例1〜3の有機質正特性サーミスタは、十分低い室温抵抗値と十分大きな抵抗変化率とを同時に有していることが確認された。また、加熱冷却後の室温抵抗値の復帰性も良好であり、信頼性に優れていることが確認された。
本発明の有機質正特性サーミスタの好適な一実施形態を模式的に示す斜視図である。
符号の説明
1…サーミスタ素体、2…電極、3…電極、10…有機質正特性サーミスタ。

Claims (4)

  1. 互いに対向して配置された1対の電極と、前記1対の電極間に配置された正の抵抗−温度特性を有するサーミスタ素体と、を備え、
    前記サーミスタ素体が、エポキシ樹脂と、硬化剤と、導電性粒子と、からなる混合物から誘導される硬化体からなり、
    前記エポキシ樹脂が、下記一般式(1)で表わされる化合物であり
    前記硬化剤が、前記硬化体に可とう性を付与する酸無水物であることを特徴とする有機質正特性サーミスタ。
    Figure 0004261407

    [式(1)中、Rは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の2価の鎖式基を示し、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、下記一般式(a)で表される2価の有機基を示す。
    −(Ar−X)− …(a)
    式(a)中、Arは、置換基を有していてもよい、2価の、5員環基、6員環基、ナフタレン基、若しくはアントラセン基を示し、Xは、炭素数1以上の2価の鎖式基を示す。]
  2. 前記酸無水物が、下記一般式(I)で表される化合物、又は、下記一般式(II)〜(IV)で表される構造単位のうち1種以上を1つ以上含む化合物、であることを特徴とする請求項1に記載の有機質正特性サーミスタ。
    Figure 0004261407

    [式(I)中、Xは、炭素数4以上の炭化水素基を少なくとも1つ有する2価の有機基を示す。]
    Figure 0004261407

    [式(II)中、Yは、炭素数4以上の2価の炭化水素基を示す。]
    Figure 0004261407

    [式(III)中、Zは、炭素数2以上の2価の炭化水素基を示す。]
    Figure 0004261407

    [式(IV)中、Wは、炭素数3以上の3価の炭化水素基を示す。]
  3. 前記酸無水物が、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、及びグリセロールトリストリメリテートからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機質正特性サーミスタ。
  4. 前記導電性粒子が、スパイク状の突起を有するニッケル粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機質正特性サーミスタ。
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