JP4260335B2 - オゾン発生装置およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、オゾンを高効率に発生させることができるオゾン発生装置およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図11は、例えばオゾナイザハンドブック(249頁、図3.1、コロナ社、昭和35年6月15日発行)に示された平板型オゾン発生装置の断面図である。図において101は圧力容器、102は高圧端子、104は接地側電極、105は誘電体、106は高電圧側電極、107は放電空間を形成するためのスペーサ、108は放電空間、110はオゾン化ガス出口、111は原料ガス入口、112は電源である。
【0003】
次に動作について説明する。酸素を含む原料ガスが原料ガス入口111より圧力容器101内に導入され、接地側電極104、誘電体105および高電圧側電極106により形成された放電空間108に流入する。文献には記載されていないが、相対向する誘電体105の間には絶縁性のスペーサ107がガスの流入を妨げないように挿入され、放電空間108の空隙長を一定に維持している。誘電体105には放電空間108と逆の面に導電層が形成されており、この導電層により金属製の接地側電極104および高電圧側電極106が接触、導通している。
【0004】
相対向して配置される接地側電極104と高電圧側電極106に交流高電圧を印加することにより放電空間108に無声放電が発生し、両電極周囲から放電空間108に供給された原料ガスは、放電空間108を通過する際に一部がオゾンとなる。このようにして生成されたオゾン化ガスは電極中央部のオゾン化ガス出口110に流入し、そこから外部に取り出される。
なお、放電空間108におけるガス温度の上昇を抑制するために、接地側電極104および高電圧電極106は各々中空となっており、水冷できる構造となっている。
【0005】
以上のようなタイプのオゾン発生装置の誘電体105上に形成される導電層は、金属蒸着やメタライズ、スクリーン印刷などにより薄膜として形成される。図11の場合は、例えば、誘電体105と高電圧側電極106を導電層を介して接触させ、高電圧を給電している。単純な接触により給電を行っているために電気的な損失は避けられない。また、薄膜であるために誘電体105からの剥離の可能性もある。さらに誘電体105はその外周部が剥き出しになっており、また、独立した一部品となっているために、メインテナンス性が悪く、破損の可能性が大きい。
【0006】
当然ながら、直接誘電体上に導電層を形成し、高電圧を給電する方法もあるが、この場合、接地側電極または高電圧側電極のどちらか一方の電極のみしか冷却できないため、放電空間の冷却効率が図11の場合に比べ低下する。放電空間の冷却効率は装置のコンパクト化に大きな影響を持っているため、冷却効率の低下はオゾン発生装置の低コスト、コンパクト化には不都合である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のような構造のオゾン発生装置において、誘電体への高電圧給電部分である導電層は、形成方法自体にコストがかかる、歩留まりが悪いなどの問題点があった。特に半導体用途などへのクリーンなオゾンを供給する必要が有る場合、導電層粉末がガス中に混入する可能性が大きい。さらに、装置のアセンブリの面からすると、ガラスやセラミクスによる誘電体が独立した部品として存在するのは、破損および部品点数の増大の可能性があることから避けるべき点である。
【0008】
このような導電層を廃止し、理想的な給電を行う、さらには誘電体膜を独立部品とせず、破損の可能性を消滅させるには金属製電極を構成する基体金属上に誘電体を一体化するように形成し、給電は金属製電極から行う方法が極めて有効である。例えば、プレートまたはシート状の誘電体を接着したり、ゾルゲル法および溶射などにより直接誘電体を基体金属上に形成する方法がある。このような方法によると、誘電体と給電部材となる基体金属が理想的に接触密着し、効率的な給電が実現でき、また、それぞれ単一で独立していた電極と誘電体膜が一体化されることにより部品点数の削減が実行できる。さらに、図11と同様に接地側電極および高電圧側電極の両者の冷却が可能で、効率的な放電空間の冷却ができ、オゾン発生装置をコンパクト化できる。
【0009】
しかし、この場合、誘電体は基体金属と一体化しているために剛体と見なすべきであり、対向電極も金属製で剛体であるために、剛体と剛体の接触により、放電空間を形成することになる。従来のオゾン発生装置であれば、対向電極間の距離に相当する寸法である放電空隙長は1mm程度と比較的大きく、形成が困難ではなく、仮にそれ以下の放電空隙長であっても誘電体が独立部品であったために、その弾性を利用することができるために放電空隙長の形成が容易であった。現在では、オゾン発生装置のコンパクト化やオゾン発生効率の向上が望まれるとともに、この放電空隙長は一桁小さい0.1mmレベルの極短放電空隙長となっており、それを剛体間接触により高精度に形成することは極めて困難と考えられていた。
【0010】
剛体間接触による極短放電空隙長の高精度形成は、放電空間を形成する要素部品すべてが極めて高精度に加工され、組立を行えば実現できる。しかし、事実上、構成部品すべての平面度公差、平行度公差および直角度公差などを完全に所望のオーダーに揃えて高精度に加工する(各部材においては数値制御工作が発展している現在では十分可能である)ことは困難であり、また膨大なコストが必要になる。その反面、加工の公差域をわずかに拡大するだけでもコストは大きく変化する領域でもある。そのため、要求されるオゾン発生効率に対して、放電空隙長の形成に係わる部材の加工の観点から見た最適な放電空隙長の選定とその精度、つまり電極の加工精度を決定し、過度な高精度加工によるコスト上昇を抑制する必要がある。
【0011】
なお、上述の平面度公差とは、公差域だけ離れた二つの平行平面内に対象平面が存在するための指針であり、平行度公差とは、ある基準面に対して、その基準面と平行でかつ公差域だけ離れた二つの平面に対象平面が存在するための指針である。また、直角度公差とは、ある基準直線に直角で、公差域だけ離れた二つの平行平面に対象平面が存在するための指針である。
【0012】
以上のような問題点を解消すべく、この発明は、オゾン発生装置に代表される無声放電式放電機器の誘電体を基体金属と一体化して金属製電極を形成し、理想的な高電圧給電、大幅な部品点数の削減と装置のコンパクト化、装置アセンブリの容易化およびコスト低減を実現するものである。さらに、一体化された誘電体と対向電極の剛体間接触による極短放電空隙長を高精度にしかも適正コストにて実現するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明によるオゾン発生装置は、相対向する二つの金属製電極間に酸素を含むガスを供給して交流高電圧を印加しオゾンを生成するオゾン発生装置において、上記金属製電極間の放電空隙長設定値が0.2mm以下の極短放電空隙長であり、上記金属製電極の鏡面加工をしていない電極面は、平面度公差が上記放電空隙長設定値の30%以下であり、さらに、一方の上記金属製電極の上記電極面を基準とした他方の上記金属製電極の上記電極面との平行度公差が上記放電空隙長設定値の30%以下であるものである。
【0014】
また、この発明によるオゾン発生装置は、上記のような構成において、金属製電極が複数個積層されてなる電極群が、少なくとも一方が弾性体を備えた2個のシールフランジによって締め付けられ、固定されるものである。
【0015】
さらに、この発明によるオゾン発生装置は、上記のような構成において、相対向する二つの金属製電極のうち少なくとも一方の上記金属製電極は基体金属とこの基体金属上に被着された誘電体膜によって構成され、上記の相対向する二つの金属製電極をそれぞれ構成する二つの基体金属および上記誘電体は中心に開口部を有する円盤状に構成され、上記の二つの基体金属のうち接地側となる第一の基体金属、高電圧側となる第二の基体金属、および上記誘電体膜の内径φA、φB、φCおよび外径φA’、φB’、φC’が、(φA−φB)×(φA’−φB’)<0を満たし、かつ(φA−φB)>0の場合はφC≦φB、φC’≧φB’、(φA−φB)<0の場合はφC≦φA、φC’≧A’の関係を満たすものである。
【0016】
また、この発明によるオゾン発生装置は、上記のような構成において、相対向する二つの金属製電極のうち少なくとも一方の上記金属製電極は基体金属とこの基体金属上に被着された誘電体膜によって構成され、上記誘電体は少なくとも3mm以上の上記基体金属上に接着またはコーティングにより形成されたものである。
【0017】
さらに、この発明によるオゾン発生装置は、上記のような構成において、相対向する二つの金属製電極のうち少なくとも一方の上記金属製電極は基体金属とこの基体金属上に被着された誘電体膜によって構成され、上記誘電体膜は少なくとも5mm以上の板厚の上記基体金属上に溶射によって形成されたものである。
【0018】
また、この発明によるオゾン発生装置は、上記のような構成において、溶射により金属製電極を構成する基体金属上に形成された誘電体膜は、比誘電率が5以上、絶縁耐圧が10kV/mm以上、誘電正接が2%以下であるものである。
【0019】
さらに、この発明によるオゾン発生装置は、上記のような構成において、溶射により金属製電極を構成する基体金属上に形成された誘電体膜は、気孔率が10%以下であるものである。
【0020】
また、この発明によるオゾン発生装置の製造方法は、相対向する二つの金属製電極間に酸素を含むガスを供給して交流高電圧を印加しオゾンを生成するオゾン発生装置の製造方法において、上記金属製電極間の放電空隙長設定値を0.2mm以下の極短放電空隙長とし、上記金属製電極の鏡面加工をしていない電極面の平面度公差が上記放電空隙長設定値の30%以下となる上記金属製電極を形成する工程、一方の上記金属製電極面を基準とした他方の上記金属製電極面との平行度公差が上記放電空隙長設定値の30%以下となるように、スペーサを介して上記金属製電極を積層する工程を含むものである。
【0021】
さらに、この発明によるオゾン発生装置の製造方法は、相対向する二つの金属製電極のうち少なくとも一方の上記金属製電極を、溶射または接着若しくはコーティングによって基体金属上に誘電体を形成することによって得る工程を含むものである。
【0022】
また、この発明によるオゾン発生装置の製造方法は、無機絶縁物からなる基材に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状接着層を誘電体と基体金属との間に挿入してプレス機定盤に挟み、接着温度、プレス圧力、上記誘電体と上記基体金属間の電荷量を制御しながらプレスして一体化することで表層が誘電体によって構成される金属製電極を得る工程を含むものである。
【0023】
さらに、この発明によるオゾン発生装置の製造方法は、0級若しくは1級以上の精度を有するプレス機定盤を用い、シート状接着層を介して重ね合わせた誘電体と基体金属をプレスして一体化し金属製電極を得る工程を含むものである。
【0024】
また、この発明によるオゾン発生装置の製造方法は、シート状接着層を介して重ね合わせた誘電体と基体金属を少なくとも1組以上積層してプレス機の熱定盤間に挿入し、上記基体金属および上記誘電体を上記熱定盤と同温度に加熱しながらプレスして一体化する工程を含むものである。
【0025】
さらに、この発明によるオゾン発生装置の製造方法は、シート状接着層にオゾン処理、紫外線処理、コロナ放電処理、プラズマ処理のいずれかの処理またはこれらを併用した処理を行った後に誘電体と基体金属を一体化して金属製電極を得る工程を含むものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明におけるオゾン発生装置の断面を示すもので、図において、2は電源12からオゾン発生装置に交流高電圧を導入するための高圧端子、3は発生したオゾン化ガスのオゾン化ガス出口10以外への流出を防ぐシールドと接地側電極4、高電圧側電極6、スペーサ7および放電空間8より構成されるオゾン発生部9の固定に作用する少なくとも一方が弾性体を備えたシールフランジ、5は高電圧側電極6を構成する基体金属(第二の基体金属に相当)6aの対向電極面側に形成された誘電体であり、基体金属6aと誘電体5によって高電圧側電極6が構成されており、接地側電極4は基体金属(第一の基体金属に相当)のみによって構成されている。なお、上記の接地側電極4および高電圧側電極6は相対向する二つの金属製電極に相当している。
【0027】
さらに、接地側電極4、高電圧側電極6は少なくとも一方が表層に誘電体5を有する構造であれば良く、他方は基体金属のみで構成されていても良い。また接地側電極4および高電圧側電極6を構成する両方の基体金属上に配置形成されていても良い。
さらに、接地側電極4と高電圧側電極6の対向電極間のスペースを放電空間8とする。また、対向電極間の距離を放電空隙長とする。この発明によるオゾン発生装置では、放電空隙長の設定値は0.2mm以下の大きさとする。
【0028】
図1に示す例においては、オゾン発生部9を構成する接地側電極4および高電圧側の基体金属6aはステンレス合金、アルミニウム合金またはチタン合金のいずれかの機械加工により製作された平板状電極、またはSCS13、AC4Cなどの鋳造用合金により製作された平板状電極であり、中央部に円形の開口部を有する円盤状に形成されている。さらに、基体金属6aの対向電極面となる面上は、同じく円盤状の誘電体5が被着されて高電圧側電極6が形成されている。上記のような金属にて製作された両電極はスペーサ7を介して対向するように設置され、対向電極間に位置する空間が放電空間8となり、両電極間に交流高電圧を印加することによりこの放電空間8にて無声放電が発生し、流入した原料ガスからオゾン化ガスを生成する。
【0029】
放電空間8の放電空隙長は金属または絶縁物により製作されたスペーサ7の厚みによりオーダーが決定され、この発明においては0.2mm以下の極短放電空隙長を実現した。また、上記の両電極を構成する基体金属は中空構造となっており、その内部に冷却水を循環させることにより、放電空間8を冷却している。放電空隙長を極めて短くしているために、効率的な放電空間の冷却が実現でき、装置自体の大きさをコンパクト化することができる。
【0030】
上記のようなオゾン発生装置において放電空間8は、剛体である金属製の接地側電極4と剛体とみなせる誘電体5と基体金属6aが一体化された高電圧側電極6の間にスペーサ7を挿入することにより形成されることは上述の通りであり、一方、誘電体5はバルク体の接着または溶射などのコーティングにより皮膜として基体金属6a上に形成されている。この発明のように両電極が剛体となる場合において、特に放電空隙長が0.2mm以下となる場合は、スペーサ7の厚みに加え、剛体の平面度公差、平行度公差が放電空隙長の大きさに大きな影響を及ぼすことになる。
【0031】
同一放電空間内での放電空隙長のばらつきはオゾン発生効率に直接大きな影響を及ぼし、オゾン発生装置の設計スペックを低下させる可能性を含んでいる。従って、剛体と剛体の接触による放電空間の形成において、放電空隙長のばらつきを抑制し、同一空間内での放電空隙長を均一に実現するためには、金属製電極の加工精度を高める必要がある。しかし、むやみに加工精度を高めることは、製作コストの上昇を招くため、要求されるオゾン発生効率に対して、加工精度の公差域が広くなるような、つまり加工しやすい最適な放電空隙長を決定し、過剰なコスト高を招かない電極を製作することが重要である。
【0032】
この発明におけるオゾン発生装置は、2本以上の絶縁性支持軸に対して垂直にオゾン発生部9を構成する。オゾン発生部9を固定する際に各々の電極が平行となっている必要があるため、オゾン発生部9の各電極は支持軸の中心軸に対して直角度公差を指定して組立を行うのが効果的である。当然のことながら、複数の支持軸は平行に備え付けられており、例えば、放電空隙長を0.1mmとした(スペーサ7の厚みが0.1mm)場合においても、極めて高精度な組立ができた。このように支持軸を設置しなければ、電極を精度良く製作しても所望の放電空隙長を得ることができなくなるため注意が必要である。
【0033】
また、同様の電極を用い、放電空隙長を0.075mmとした場合も所定の直角度公差で十分に精度の良い結果を得た。これらにより、ほぼ形成する放電空隙長の30%程度79の直角度公差を支持軸と電極間に持たせることが極めて効果的であることが判明した。極短放電空隙長を高精度に形成するためには、電極の加工精度を議論する前に、まず、上記のような電極を支持、固定する部材を精度良く製作、設置組立する必要がある。
この発明によるオゾン発生装置では、金属製電極が複数個積層されてなる電極群を、少なくとも一方が弾性体を備えた2個のシールフランジによって締め付け固定するようにし、組立時の微妙な調節を可能にしており、30%以下の好ましい直角度公差を実現することができる。
【0034】
各電極表面の平面度公差および平行度公差は形成する放電空隙長設定値の40%以下好ましくは30%以下とするのが良い。図2に電極径がφ500mmの電極を用い、放電空隙長設定値dが0.075mmおよび0.1mmの場合のオゾン発生特性を示す。なお、誘電体5は溶射により基体金属6a上に皮膜として一体形成し高電圧側電極6を形成した。縦軸はオゾン濃度、横軸は投入エネルギー、すなわち放電電力/原料ガス流量を示し、原料ガス圧力Pが0.25MPa、原料ガス流量Qが100Nl/minの場合の結果である。
【0035】
なお、図において、○印が放電空隙長設定値dが0.075mmにおいて接地側電極および高電圧側電極(誘電体膜を一体化した側)各々の平面度および平行度公差が放電空隙長設定値の60%以上の電極を用いた場合、●印がdが0.1mmにおいて平面度および平行度公差が放電空隙長設定値の30%以下の電極を用いた場合の結果を示す。また、波線がdが0.075mm、実線が0.1mmの場合の理論計算結果である。放電空隙長dが0.075mmの実験結果は理論値に対して20%程度低いオゾン発生効率であり、dが0.1mmの場合はほぼ理論値を満足しているのがわかる。
【0036】
dが0.075mmの場合、電極加工公差(平面度、平行度公差)が放電空隙長設定値の60%以上であるため、同一放電空間内に少なくとも放電空隙長設定値の60%以上にあたる放電空隙長差がある空間が存在しており、また、複数の放電空間を比較しても、各々の放電空隙長間に大きな差が生じていた。従って、放電空隙長のばらつきにより放電入力特性およびオゾン発生特性に大きな影響を与え、理論値から低下するような結果を生じさせた。
【0037】
また、dが0.1mmの場合は最大で放電空隙長設定値の30%にあたる放電空隙長差が生じたと考えられるが、理論値を十分満足することからこの程度のばらつきは大きな影響を与えるものではないことが分かる。上記の結果より放電空隙長のばらつきが放電空隙長設定値の40%以下好ましくは30%以下となるような平面度、平行度公差を有する金属製電極を使用することが良い。
【0038】
さらにこの現象を数値的に解析する。放電空間が放電空隙長設定値dの空間とd+Δdの空間の2つの等部分により構成される(占有率r=0.5:放電空隙長d+Δdの空間の全放電空間に対する割合)と仮定し、要求オゾン濃度をクリアできるΔdの値を計算した。オゾン発生効率は理論値を用いている。例として電極径がφ500mm、原料ガス圧力Pが0.25MPa、放電電力密度W/S(W:放電電力、S:放電面積)が4W/cm2 (すべての電極を水冷した場合の定格条件に相当する)、電源周波数15.2kHzの条件のものについて解析した。図3にW/Q(Q:原料ガス流量)が100W/(N l/min)において放電空隙長が0.2mm以下の場合のΔdの変化分に対するオゾン濃度の変化を示す。
【0039】
また、放電空隙長が0.1mm程度以下であるならば、各放電空隙長に対する放電電力はオゾン発生装置に印加する電圧波高値に依存せず、ある一定の放電電力比で与えられるが、0.1mm程度を越えると、放電電力は電圧波高値に依存しだす。そのため、各印加電圧波高値において、0.2mm以下の放電空隙長の放電電力比を算出し(例えば、ある印加電圧波高値を加えたときの放電空隙長0.1mmの放電電力を1とした場合の同じ印加電圧波高値を加えたときの他の放電空隙長における放電電力の比を算出する)、放電空隙長dの空間とd+Δdの空間の各々への放電電力分布を考慮することとした。
【0040】
例えば、上記条件において、放電空隙長0.1mmの場合、放電電力密度4W/cm2 を投入するには、オゾン発生装置への印加電圧波高値は約6kVとなるため、Δdの計算には、電圧波高値6kVにおける放電電力比を用いている。図において、縦軸はオゾン濃度、横軸は放電空隙長の精度Δd(0mmが設定放電空隙長を示す)を示す。上記条件において要求オゾン濃度が200g/N m3 程度以上であるならば、放電空隙長設定値dが±30%以内の精度で十分性能は発揮される。
【0041】
つまり、装置組立の精度や電極以外の部材の加工精度に多少のずれが生じると考えれば、電極の加工公差域はできる限り30%以内とする必要がある。また、放電空隙長設定値dが0.075mmの場合の精度域は0.1mmの場合よりも小さくなるため、0.1mmの方が都合が良い。また、dが0.1mmを越えると、この条件ではオゾン濃度200g/N m3 を達成すること自体が困難となり不都合である。従って、W/Qが100W/(N l/min)でオゾン濃度200g/N m3 を高効率に得るためには放電空隙長が0.1mmで精度域が±25%以内に収まるよう電極を構成する。つまり電極の平面度、平行度公差は少なくとも放電空隙長値の25%以内とする必要がある。
【0042】
また、図4に示すように、W/Qが165W/(N l/min)において、要求オゾン濃度が250g/N m3 程度以上であるならば、上記と同様に考えると、放電空隙長設定値0.075mmの場合は±27%以内、放電空隙長設定値0.1mmの場合は±20%以内となるように電極を形成する必要がある。0.075mm未満の放電空隙長設定値の場合は、0.1mmの場合よりも精度域が小さくなり、放電空隙長設定値が0.1mmを越えるとオゾン濃度250g/N m3 をクリアすることは困難となる。従って、この場合は放電空隙長としては0.075mmで精度域は、その±27%以内が最適と考えられる。つまり、電極の平面度、平行度公差は少なくとも放電空隙長値の27%以内とする必要がある。
【0043】
さらに、図5に示すように、W/Qが320W/(N l/min)において、要求オゾン濃度が300g/N m3 程度以上であるならば、放電空隙長0.050mmで精度域がその40%以内が最適となるため、電極の平面度、平行度公差は少なくとも放電空隙長設定値の40%以内にする必要がある。
【0044】
上記の例においては、ある一つの放電空間内に放電空隙長がdとd+Δdの2空間が存在すると仮定し、放電空隙長d+Δdとなる空間の全放電空間に対する占有率rが0.5という最も厳しい条件において解析した。ここで、図6に放電空隙長設定値dが0.1mmで、放電空隙長d+Δdの空間の占有率rを変化させた場合のオゾン濃度の変化を示す。計算条件は上記と同様である。図より明らかなように占有率rが減少するにつれて、電極の公差域は当然広がっていくため、ここで示した加工公差域より広い公差域に仕上げても要求オゾン濃度を得ることができる場合もある。
【0045】
以上の実験と解析より、少なくとも形成する放電空隙長設定値の40%以下好ましくは30%以下の平面度、平行度公差域に収まるように電極を加工すれば良いことがわかった。例えば0.1mmという放電空隙長に対して30%の公差域で十分所定の性能を得られることがわかっていれば、電極表面をわざわざ鏡面仕上げなどにする必要はなく、コストも激増せずに所定の性能を発揮するオゾン発生装置を製作できるのである。
【0046】
しかし、以下の点は注意が必要である。特に、電極の平行度公差は電極を積層する本発明のオゾン発生装置においては極めて重要である。平面度公差が上記に示した通りであっても、平行度公差が上記の値より大きければ、積層数を増加するにしたがい、オゾン発生効率は低下していくことが予想されるためである。以上のように、要求オゾン濃度によりそれぞれ最適の放電空隙長とその精度域、つまり電極の加工精度が存在する事が明らかとなったことから、過度な高精度化を必要とせず、適正コストにて電極を製作することができる。
【0047】
また、好ましくは、電極製作時の溶接の多用を避け、溶接残留応力により経時的に電極に発生する歪みを抑制することがさらに効果的である。この発明においては、電極の中央部がオゾン化ガス出口10となっているため、特にこの部分が歪み、放電空隙長を増大させることは、ガス温度上昇による生成オゾンの分解が起こり、オゾン発生効率の低下を招く。そのため残留応力歪みによる放電空隙長増大を防止する必要があり、必要に応じてピーニングまたは焼鈍を行い、内部応力を解放しておくことが重要である。
【0048】
実施の形態2.
実施の形態1で示した金属製電極を構成する高電圧側の基体金属上にバルク誘電体を熱硬化性樹脂を用いて接着した。誘電体は接地側電極に接着しても良いし、接地側および高電圧側の両電極に接着しても良い。誘電体としては、アルミナやジルコニアなどのセラミクス焼結板やガラス板、マイカ板などを用いた。誘電体と金属製電極の接着は、ガラスクロス基材にエポキシ樹脂を含浸させたシート状接着層により行った。誘電体−接着層−基体金属または誘電体−接着層−基体金属−接着層−誘電体の順に積層し、これらをプレス機定盤間に挿入し、両端から加圧、昇温し、接着する。
【0049】
上述の実施の形態1に示したように、放電状態に影響を与えるのは放電空隙長の精度であるため、誘電体を一体化した電極の場合、問題となるのはその表面の誘電体の精度となる。しかし、接着の際、平行定盤間で加圧、温度昇降させるため、被接着側である金属製電極自身の平面度および平行度公差が実施の形態1で示した程度の加工精度を有していないと誘電体が割れる可能性があるので注意が必要である。
【0050】
金属製電極の接着面板厚は中空部を流れる冷却水により放電空間を冷却することを考慮すれば薄い方が都合が良いのであるが、薄すぎると接着加圧、温度昇降の際に金属板が塑性変形や熱変形の影響を受けやすくなるため、不都合である。従って、この発明の場合は基体金属の板厚を少なくとも3mm以上とし、金属側の変形が発生せず、効果的な接着状態を得られた。
【0051】
さらにこの接着した電極モジュール(誘電体+基体金属もしくは誘電体+基体金属+誘電体)をオゾン発生装置内に組み込むのであるが、誘電体表面は放電空隙長の精度に影響を及ぼすため、実施の形態1のような加工精度が必要となる。よって、バルク誘電体は接着前に形成する放電空隙長設定値の30%以下の平面度公差としておいた。接着後、誘電体の平面度公差および誘電体間の平行度公差を測定し、実施の形態1の金属製電極の加工精度よりずれているモジュールに関しては、誘電体バルク体の厚みを一定に保つように研磨加工を施し、所望の公差域に収まるようにしておいた。そのために、実施の形態1の金属製電極と組み合わせた結果、理論計算値に極めて近いオゾン発生効率を得ることができた。
【0052】
実施の形態3.
誘電体5を溶射により実施の形態1で示した基体金属6a上に形成する場合は、被溶射面の基体金属6aの板厚を少なくとも5mm以上とし、形成された誘電体5の平面度公差および誘電体5と対向電極表面との平行度公差が形成する放電空隙長設定値の40%以下好ましくは30%以下となるように製作することで極めて高いオゾン発生効率を得ることができた。溶射プロセスでは、前処理であるブラスト処理(粗面化処理)と溶射自身の熱により基材に歪みが発生する。一般に板厚が薄いとこれらによる歪みの影響は顕著となり、精度を必要とする部材への使用には適さなくなる。被溶射面板厚による歪みの変化を調べた結果、板厚が3mmであると、ブラストによる歪みおよび熱歪みが極めて大きいのに対し、板厚を5mm以上にすることにより、溶射熱による歪みはほぼ無視できるようになり、ブラストによる歪みも緩和される。従って、誘電体膜を基体金属に一体化するために、溶射を用いる場合は被溶射板厚(誘電体膜が被着される基体金属の厚み)を少なくとも5mm以上とし、最適パラメータによるブラストを実施するのが被溶射面の歪みを最小限にするのに好ましい。
【0053】
図7に溶射によって形成した誘電体膜のオゾン発生特性に与える表面精度(算術平均粗さRa)の影響を示す。図において、縦軸をオゾン濃度、横軸を放電電力/原料ガス流量とし、評価条件は、原料ガス圧力Pを0.25MPa、放電空隙長dを0.1mmとした。上記条件において、Raを4〜5μm、1μmおよび0.5μmと変化させた誘電体膜(膜厚1mm)を用い、基体金属としては歪みが無視できる十分な板厚15mmのSUS304を用いた。その結果、Raが5μm程度であってもオゾン発生効率は理論効率に比べ、5%以内の低下であり、Raの変化に対してオゾン発生効率は大きな差をもつことがないと言える。5%以内の効率許容値が認められない場合は、Raを5μm未満、好ましくは1μm以内とした方がよい。
【0054】
以上のように、基体金属を冷却効果を著しく妨げない程度の十分な板厚とし、形成する放電空隙長設定値の40%以下好ましくは30%以下の加工精度を持たせ、溶射皮膜である誘電体膜にはRaを5μm程度以下の精度さえあればオゾン発生特性に大きな影響を与えることはない。また、Raが5μm程度というのはAsSpray(溶射したままの状態で研磨加工なし)の状態であり、コスト的にも問題はない。溶射自身はそのプロセスはほぼ自動化されているため、溶射によって形成される皮膜の膜厚の制御を高精度に行うことは容易であり、基体金属さえ実施の形態1で示したような精度に仕上がっていれば、皮膜の膜厚も均一となり、特に皮膜表面の状態を考慮する必要もないと言える。
【0055】
なお、誘電体膜を琺瑯処理により実施の形態1において示した金属製電極を構成する基体金属表面に形成する場合は、被琺瑯面の板厚は少なくとも5mm以上とすることが効果的である。ただし、この場合は被琺瑯面板の表裏両面(放電面側および中空面側)に琺瑯処理を施す必要がある。片面のみの琺瑯処理であれば、実施の形態1の電極と同等の加工精度を実現するためには、被琺瑯面板厚は少なくとも10mm以上必要となる。しかし、10mm以上の板厚では熱伝導性が低下し、効率的な放電空間の冷却が不可能となることや、金属製電極の重量が大きくなりメインテナンス性が低下するといった問題点が発生する。そのため、両面に琺瑯処理を施し、5mm程度以上の板厚とした。
【0056】
実施の形態4.
無声放電式オゾン発生装置は、数kV以上の高電圧を電極モジュールに印加し、極短放電空隙長を形成する場合、接地側と高電圧側が近接する。そのため、電界集中や絶縁距離不足による異常放電により電力ロスが発生する可能性がある。特に、電極内周部および外周部など電界集中が発生する可能性があるエッジ箇所は、接地側電極と高電圧側電極の内径および外径を同一にせず、差を持たせ、絶縁距離に余裕を与えることが効果的である。接地側電極と高電圧側電極のエッジ部を絶縁皮膜でコーティングしても効果的であるが、コストがかかることが問題である。
【0057】
図8に接地側電極と高電圧側電極の断面図を示す。図において、接地側電極(第一の基体金属)4の内径および外径をφA、φA’とし、高電圧側電極6を構成する基体金属(第二の基体金属)6aの内径および外径をφB、φB’とする。また、誘電体5は基体金属6a上に接着もしくは溶射などにより形成され、両者が一体化して高電圧側電極6が形成されており、この誘電体5の内径および外径φC、φC’とする。金属製電極に関しては以下の式を満たす構造を有することが極めて効果的である。
(φA- φB)×(φA’- φB’)<0 ・・・・ (1)
上式より金属製電極を構成するそれぞれの基体金属の内径、外径の関係が図9と逆になっていても同様であることが理解できる。上式を満足し、好ましくは、さらに
|φA- φB|≧10mm ・・・・ (2)
|φA’- φB’|≧10mm ・・・・ (3)
を満足すれば十分な絶縁距離を設けられ、異常放電の発生の可能性は急激に低下する。また、誘電体については、(1)式を満たした上、
(φA- φB)>0の場合、
φC≦φBかつφC’≧φB’ ・・・・ (4)
(φA- φB)<0の場合、
φC≦φAかつφC’≧φA’ ・・・・ (5)
の規定を満たすサイズに製作すれば、異常放電の可能性はなくなる。
【0058】
接地側電極4と高電圧側電極6は同一形状・同一径で製作するのが量産を考慮した場合、都合が良い。しかし、異常放電による電力ロスを抑制するために前述のように電極(基体金属、誘電体膜)の内径、外径には(1)、(4)および(5)式を満足する必要がある。従って、同一形状、同一径で両者金属製電極を製作しておき、どちらか一方の内周部および外周部に段差を設けるよう研削加工し、両者間の絶縁距離を有するようにすればよい。その段差部の高さは少なくとも3mm以上とすると効果的である。さらに、局所的な電界集中を緩和するために、それぞれのエッジ部は半径0.5mm程度以上のR加工を施すべきである。琺瑯にて誘電体膜を成型する場合は、平板電極の場合、必ずエッジ部で皮膜が盛りがってしまうために、金属製電極のエッジ部は半径5mm程度のR加工を施しておくのが望ましい。
【0059】
特に、電極の内周部はオゾン化ガス出口10となっているため、この部分に段差を設け、その高さが不十分であると、必要以上の温度上昇を招き所定の発生効率を達成できなくなる可能性があるため、内周部は特に十分な段差高さを設ける必要がある。好ましくは内周部での段差は設けない方が良い。また前述したように、溶接の多用は控えた方が効果的である。
【0060】
実施の形態5.
誘電体を基体金属と一体化して金属性電極を得る手段として、接着技術は極めて容易かつ安価で効果的な手段である。特に、セラミクス、マイカ、ガラスなどの無機系平板状のもの、または、ポリイミド、フッ素樹脂などの有機系シート状のものを基材とし、この基材にエポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた接着層を介して異種素材を接合する方法は、オゾン発生装置などの容量性負荷放電機器にとって極めて有効である。この方法によれば、給電層である基体金属と誘電体の密着性が極めて良い金属製電極と誘電体の一体化が可能となり、製作が容易で安価となる。
【0061】
例えば、ガラスクロス基材にエポキシ系樹脂を含浸させた厚さ100μm程度以下のシート状接着層によりアルミナセラミクス焼結板(厚さ1mm)と金属製電極をプレス機にて接合し、安価で良質の誘電体を一体化した金属製電極を成形できた。この方式は、シート状接着層の静電容量を介して、直接誘電体に高電圧を給電することができ、接地側および高電圧側電極の両者の冷却が可能、部品点数の削減が実施でき、極めてコンパクトで低コストな装置が設計できる。
【0062】
この発明において、上記のような接着により誘電体と金属製電極を接合する場合、注意しなければならない事項は接着温度、プレス圧力およびボイドの有無である。図9に接着プロセスのタイムチャートを示す。縦軸を温度、横軸をプロセス時間とする。温度制御は加圧してから昇温モードに入り、接着設定温度±5℃以内で一定を保つようにヒーターを制御する。設定温度(時間t1)に到達してから、時間t2まで設定温度を保持する。時間t2はシート状接着層のボイドの有無を測定し、ボイドの消滅を確認し終わった時間である。時間t2−t1はシート状接着層の物性および設定加圧力により随時調整が必要である。
【0063】
その後、加圧力を急激に開放せずに、降温モードに移す。降温モードは熱応力の発生を極力緩和するために、接着保持時間の少なくとも2倍以上の時間を有するのが良い。時間t3より温度を設定温度から降下させるとともに、徐々に圧力を開放していき、常圧下、常温に降下した時点(時間t4)でプロセスを終了する。また、降温中に発生する応力を回避するために、できる限り金属製電極の線膨張係数に近い誘電体を接着するのが好ましい。
【0064】
ボイドの有無は超音波(超音波エコーの強度差)の利用により検出、確認できる。位置を認識する必要はないために精度の高い検出技術は要さない。加圧は接着層でのボイドを消滅させるために行うだけであるので、大きな圧力を印加する必要はなく、電極モジュールを固定する程度でよい。圧力を印加しすぎると金属製電極の塑性変形を招く可能性があるが、シート状接着層の樹脂量や樹脂流れにより調整は必要である。ボイド量をモニターしながら接着するので、ボイド量の減少速度が遅ければ、圧力をさらに印加すればよい。最終的な接着の状態は、モジュールをプレス機から取り出し、電圧を印加して、部分放電の有無を電気信号検出(検出電流の積分値評価)、光信号検出(放電発光評価)、音響信号検出(放電音響の超音波成分評価)などにより評価すれば良い。
【0065】
また、以上のような熱硬化性樹脂による接着層を設ける場合、本発明におけるオゾン発生装置では、内周部が生成オゾンに接触する。上記樹脂は長時間オゾンに曝されることにより劣化する可能性が大きいため、必要に応じてオゾン接触部にはセラミクスやフッ素樹脂など電気絶縁性および耐オゾン性を有した材料でコーティングする。
【0066】
実施の形態6.
プレス機の2つの定盤が各々JIS B7513精密定盤指定の0級もしくは1級相当以上の定盤であり、両者プレス面間の平行度公差が常に形成放電空隙長設定値の40%以下好ましくは30%以下のプレス機を用いれば、接着後に誘電体を研磨して平行度公差を補正する必要はなく、プレスだけで高精度モジュールを形成できる。誘電体膜は平面度公差だけ実施の形態1記載のように仕上げておけば良く、プレス機の2つの定盤の平行度公差はメーカー標準公差で十分である。また、シート状接着層の厚さにも精度は全く必要なく、この方法であれば低コスト化、量産効果が期待できる。ただし、シート状接着層の厚さは誘電体の厚さに比べ十分小さい必要がある。シート状接着層の厚さは誘電体の厚さの1/10程度以下が良い。
【0067】
実施の形態7.
さらに量産効果を高められる接着プレス方法として、積層した電極モジュールの金属製電極をプレス機の熱定盤と同温度に加熱しながら接着することが効果的である。好ましくは熱定盤は金属製電極を構成する基体金属と同一材質で製作しておくのが良い。図10にこの発明における成形装置の断面図を示す。図において、18は熱定盤(JIS B7513精密定盤指定の0級もしくは1級相当以上)、19は加温用ヒーター、20は接着層である。その他は前述したものを示す。2つの熱定盤間18の平行度公差は形成する放電空隙長設定値の40%以下好ましくは30%以下にしておく。シート状接着層20を介して金属製電極21と誘電体5を少なくとも1組以上プレス機の一方の熱定盤18に積層する。熱定盤18と金属製電極21を伝熱線22で接続し、加圧、加温すれば一度のプレスで少なくとも2枚以上の誘電体5を接着することができる。接着温度は高くても150℃かそれ以下であるので、金属製電極21の熱変形も大きな影響を及ぼすことはない。なお各金属製電極21の中空部には補強部材を設置しておくことが望ましい。
【0068】
実施の形態8.
シート状接着層を介して誘電体と基体金属とを接着する前に、シート状接着層の両面にオゾン処理、紫外線処理、コロナ放電処理、プラズマ処理またはこれらを併用した処理を施すことにより、シート状接着層表面の改質を行い、シート状接着層表面を親水化、接着性を向上させてから接着すれば、極めて良い基体金属と誘電体の接合状態が得られる。
シート状接着層表面の水の接触角が10゜以下となることが好ましい。
【0069】
実施の形態9.
オゾン発生装置などに誘電体を用いる場合、放電空間静電容量より大きな静電容量を有する誘電体を形成することが望ましい。当然、放電空間静電容量より小さい静電容量でも良いが、システムとしての効率から考えれば、前者の方が良い。従って、比誘電率および絶縁耐圧が大きく、誘電正接が小さい誘電体が最適となる。ただし、この3つの条件がすべて揃う必要は必ずしもない。
【0070】
放電空間の比誘電率をε1、放電空隙長をd1、放電面積をS1とし、誘電体皮膜の比誘電率をε2、膜厚をd2、放電部面積をS2とする。なお、ε1=1、S1=S2が成り立ち、d1は0.2mm以下とする。ここで、下記式が成り立つことが望ましい。
(ε2/d2)≧(1/d1)
上式に溶射によって形成する誘電体膜の比誘電率を代入することにより、最大膜厚が算出できる。この皮膜の絶縁耐圧と誘電正接を考慮して誘電体膜を設計すればよい。特に、比誘電率が5以上、絶縁耐圧が10kV/mm以上、誘電正接2%以下となる誘電体膜を用いることが効果的であり、このような誘電体膜の膜厚を上式より算出すればよい。具体的にはAl2 03 、Al2 03 −TiO2 、Al2 03 −SiO2 、Al2 03 −ZrO2 、Y2 O3 −ZrO2 、ZrO2 −SiO2 、MgO−ZrO2 、MgO−SiO2 、CaO−ZrO2 、La2 O3 などの皮膜が有効である。また、溶射以外のコーティング技術を使用するのであれば、TiO2 、MgOなども良い。さらに琺瑯によりガラス皮膜を形成しても良い。
【0071】
実施の形態10.
溶射によって形成する誘電体膜は多孔質皮膜であるため、誘電体膜として使用するには、皮膜内部の気孔が極力少ないことが条件となる。当然ながら、溶射後に封孔処理を行い、気孔の大半を封孔する。オゾン発生装置などのように強力な絶縁性を必要とする場合は、封孔後の気孔が10%以下となるような誘電体膜を用いることが効果的である。10%を越える気孔や基材への貫通気孔が存在したまま、オゾン発生装置などに使用すると、不純物吸収、腐食の進行、絶縁性の寿命低下を発生してしまう可能性がある。
【0072】
このような誘電体膜を得るためには、溶射原材料粉末の平均粒径が10μm程度の細粒であることが好ましく、また、封孔処理は低粘度で浸透性の良いシリコン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂などを封孔材として用いればよい。これらの樹脂はオゾンによる劣化は少ないが、放電におけるスパッタリングの影響を受けるため保護膜を形成することが好ましい。
【0073】
例えば、ステンレス電極を用いた場合、オゾン酸化によりステンレスから酸化物が析出し、それがステンレス表面および対向電極(この場合、誘電体膜)に付着する。この酸化物のうち、クロム酸化物が誘電体に付着するに従い、オゾン発生効率は上昇し、その後、定常状態となる。従って、誘電体膜上にあらかじめクロム酸化物を溶射することは、誘電体膜の封孔材に耐スパッタリング性を付加し、またオゾン発生装置の初期状態から定常状態に至るまでの立ち上がり速度も速めることができ、都合がよい。
【0074】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成および製作されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0075】
この発明によるオゾン発生装置は、要求されるオゾン発生効率に対して、最適な放電空隙長および放電空間を形成する金属製電極の加工公差域、つまり平面度公差と平行度公差を決定したことにより、過度な製作コストの上昇を招かずに極短放電空隙長を形成できることから、装置の低コスト化、コンパクト化が可能であり、オゾン発生効率を高効率化することができる。
【0076】
また、この発明によるオゾン発生装置は、少なくとも一方に弾性体を有するシールフランジによって電極群を締め付け固定する構造であるため、電極の組立時に金属製電極の直角度を微調整することが可能である。
【0077】
さらに、この発明によるオゾン発生装置は、接地側の金属製電極を構成する第一の基体金属と高電圧側の金属製電極を構成する第二の基体金属、および基体金属上に配置される誘電体の内径および外径に条件を設定したことにより、絶縁破壊に至る異常放電を抑制、電力ロスを回避し、長期間にわたり、高効率オゾン発生を実施することができる。
【0078】
また、この発明によるオゾン発生装置は、誘電体を基体金属と一体化して金属製電極を形成する場合の、基体金属の板厚を誘電体の形成方法によって決定したことにより、一体化する際に生じる金属製電極の歪みおよびバルク誘電体の破損が発生せずに、高精度な金属製電極を製作できる。
【0079】
さらに、この発明によるオゾン発生装置は、基体金属上に溶射によって一体化する誘電体膜の電気的特性を限定したことにより、長寿命かつ高性能な絶縁皮膜を形成することができ、高効率オゾン発生を実施できる。
【0080】
また、この発明によるオゾン発生装置は、基体金属上に溶射によって一体化する誘電体膜の気孔率を限定したことにより、長寿命かつ高品質な絶縁皮膜を形成することができ、高効率オゾン発生を実施できる。
【0081】
さらに、この発明によるオゾン発生装置の製造方法においては、金属製電極の平面度公差、対向電極面の平行度公差を決定し、その許容範囲内の制度で金属製電極を形成する工程を含んでいるため、過度な製作コストの上昇を招かずに極短放電空隙長を形成でき、装置を低コストで製造することが可能であり、オゾン発生効率を高効率化することができる。
【0082】
また、この発明によるオゾン発生装置の製造方法においては、誘電体を基体金属上に被着する場合に、溶射、接着、コーティングのいずれかの方法を採用することが可能であり、従来のものよりも単純な電極構造であるために、簡単な方法で金属製電極を形成することが可能である。
【0083】
さらに、この発明によるオゾン発生装置の製造方法においては、誘電体と基体金属の一体化にシート状接着層を用いることにより、安価に電極を製作することができ、かつ最適な接着プロセスを決定したことにより、高品質な接着を得ることができる。
【0084】
また、この発明によるオゾン発生装置の製造方法においては、シート状接着層を介して誘電体と基体金属の一体化を行う場合に、0級若しくは1級以上の十分な精度を有するプレス機定盤を用いることにより、シート状接着層の厚さおよび平面度に依存することなく金属製電極の対向電極面の平行度公差をプレス機定盤によって決定でき、容易かつ安価に誘電体と基体金属一体化することが可能となる。
【0085】
さらに、この発明によるオゾン発生装置の製造方法においては、プレス機の熱定盤とともに被接着体である基体金属を加温したことにより、均一温度接着および複数同時接着を可能とし、高品質、安価な電極製作を実施できる。
【0086】
また、この発明によるオゾン発生装置の製造方法において、シート状接着層表面の改質処理を行い、シート状接着層表面を親水化、接着性を向上させてから接着するようにすれば、極めて良い基体金属と誘電体の接合状態を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を示すオゾン発生装置の断面を表す図である。
【図2】 この発明の実施の形態1を示すオゾン発生装置の特性を示すものである。
【図3】 この発明の実施の形態1を示すオゾン発生装置の放電空隙長の精度を示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態1を示すオゾン発生装置の放電空隙長の精度を示す図である。
【図5】 この発明の実施の形態1を示すオゾン発生装置の放電空隙長の精度を示す図である。
【図6】 この発明の実施の形態1を示すオゾン発生装置の放電空隙長の精度を示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態3を示す表面精度によるオゾン発生特性を説明する図である。
【図8】 この発明の実施の形態4を示すオゾン発生装置の電極の断面を表す図である。
【図9】 この発明の実施の形態5を示す接着プロセスを説明する図である。
【図10】 この発明の実施の形態7を示す接着プレス機の断面を表す図である。
【図11】 従来のオゾン発生装置の断面を表す図である。
【符号の説明】
1 圧力容器 2 高圧端子
3 シールフランジ 4 接地側電極
5 誘電体 6 高電圧側電極 6a 基体金属
7 スペーサ 8 放電空間
9 オゾン発生部 10 オゾン化ガス出口
11 原料ガス入り口 12 電源
18 熱定盤 19 ヒーター
20 接着層 21 金属製電極
22 伝熱線
Claims (13)
- 相対向する二つの金属製電極間に酸素を含むガスを供給して交流高電圧を印加しオゾンを生成するオゾン発生装置において、上記金属製電極間の放電空隙長設定値が0.2mm以下の極短放電空隙長であり、上記金属製電極の鏡面加工をしていない電極面は、平面度公差が上記放電空隙長設定値の30%以下であり、さらに、一方の上記金属製電極の上記電極面を基準とした他方の上記金属製電極の上記電極面との平行度公差が上記放電空隙長設定値の30%以下であることを特徴とするオゾン発生装置。
- 金属製電極が複数個積層されてなる電極群が、少なくとも一方が弾性体を備えた2個のシールフランジによって締め付けられ、固定されることを特徴とする請求項1記載のオゾン発生装置。
- 相対向する二つの金属製電極のうち少なくとも一方の上記金属製電極は基体金属とこの基体金属上に被着された誘電体によって構成され、上記の相対向する二つの金属製電極をそれぞれ構成する二つの基体金属および上記誘電体は中心に開口部を有する円盤状に構成され、上記の二つの基体金属のうち接地側となる第一の基体金属、高電圧側となる第二の基体金属、および上記誘電体の内径φA、φB、φCおよび外径φA’、φB’、φC’が、(φA−φB)×(φA’−φB’)<0を満たし、かつ(φA−φB)>0の場合はφC≦φB、φC’≧φB’、(φA−φB)<0の場合はφC≦φA、φC’≧A’の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載のオゾン発生装置。
- 相対向する二つの金属製電極のうち少なくとも一方の上記金属製電極は基体金属とこの基体金属上に被着された誘電体によって構成され、上記誘電体は少なくとも3mm以上の板厚の上記基体金属上に接着またはコーティングにより形成されたものであることを特徴とする請求項1記載のオゾン発生装置。
- 相対向する二つの金属製電極のうち少なくとも一方の上記金属製電極は基体金属とこの基体金属上に被着された誘電体膜によって構成され、上記誘電体膜は少なくとも5mm以上の板厚の上記基体金属上に溶射によって形成されたものであることを特徴とする請求項1記載のオゾン発生装置。
- 溶射により金属製電極を構成する基体金属上に形成された誘電体膜は、比誘電率が5以上、絶縁耐圧が10kV/mm以上、誘電正接が2%以下であることを特徴とする請求項5記載のオゾン発生装置。
- 溶射により金属製電極を構成する基体金属上に形成された誘電体膜は、気孔率が10%以下であることを特徴とする請求項5記載のオゾン発生装置。
- 相対向する二つの金属製電極間に酸素を含むガスを供給して交流高電圧を印加しオゾンを生成するオゾン発生装置の製造方法において、上記金属製電極間の放電空隙長設定値を0.2mm以下の極短放電空隙長とし、上記金属製電極の鏡面加工をしていない電極面の平面度公差が上記放電空隙長設定値の30%以下となる上記金属製電極を形成する工程、一方の上記金属製電極面を基準とした他方の上記金属製電極面との平行度公差が上記放電空隙長設定値の30%以下となるように、スペーサを介して上記金属製電極を積層する工程を含むことを特徴とするオゾン発生装置の製造方法。
- 相対向する二つの金属製電極のうち少なくとも一方の上記金属製電極を、溶射または接着若しくはコーティングによって基体金属上に誘電体を形成することによって得ることを特徴とする請求項8記載のオゾン発生装置の製造方法。
- 無機絶縁物からなる基材に熱硬化性樹脂を含浸させたシート状接着層を誘電体と基体金属との間に挿入してプレス機定盤に挟み、接着温度、プレス圧力、上記誘電体と上記基体金属間の電荷量を制御しながらプレスして一体化することで表層が誘電体によって構成される金属製電極を得る工程を含むことを特徴とする請求項8記載のオゾン発生装置の製造方法。
- 0級若しくは1級以上の精度を有するプレス機定盤を用い、シート状接着層を介して重ね合わせた誘電体と基体金属をプレスして一体化し金属製電極を得る工程を含むことを特徴とする請求項10記載のオゾン発生装置の製造方法。
- シート状接着層を介して重ね合わせた誘電体と基体金属を少なくとも1組以上積層してプレス機の熱定盤間に挿入し、上記基体金属および上記誘電体を上記熱定盤と同温度に加熱しながらプレスして一体化する工程を含むことを特徴とする請求項10記載のオゾン発生装置の製造方法。
- シート状接着層にオゾン処理、紫外線処理、コロナ放電処理、プラズマ処理のいずれかの処理またはこれらを併用した処理を行った後に誘電体と基体金属を一体化して金属製電極を得る工程を含むことを特徴とする請求項10記載のオゾン発生装置の製造方法。
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