JP4256675B2 - 再剥離性粘着シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、再剥離性粘着シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
再剥離性粘着シートは、貼付してからある期間の後に被着体から容易に剥がすことができる機能を有する粘着シートである。再剥離性粘着シートは、例えば、製品を製造する工程間の管理ラベルや、商品の流通過程での物流管理ラベルとして、必要な情報を印刷し、情報伝達の目的が不要となった時点でラベルを剥がす用途などに使われている。
これら再剥離性粘着シートに対する要求品質は、被着体である物品への良好な接着性と、剥がすときには糊残りや基材が破断することなく容易にかつ綺麗に剥がせることの2点である。
【0003】
しかし、良好な接着性と良好な再剥離性は、粘着シートの粘着力の点からは相反する性質である。すなわち、良好な接着性には高い粘着力が必要であり、逆に良好な再剥離性には低い粘着力が必要である。
特に、再剥離性粘着シートの利用が多い工程管理、物流管理ラベルでは、被着体が段ボールとなる場合が圧倒的に多い。この段ボールの表面は粗面であり、かつ低強度であるため、接着性と再剥離性の両立が難しい被着体である。
この矛盾する粘着物性を満足するために、従来から、粘着剤中に弾性微小球を配合し、粘着剤表面を凹凸形状とすることで、粘着シートと被着体の接触面積を少なくして粘着力を下げ、再剥離性を改善する方法が考案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。これらはいずれも、直径数ミクロンから数百ミクロンの微粒子を粘着剤と混合し、基材へ直接塗布、乾燥することで、粘着剤層に凹凸表面を形成するものである。また接着性に関しては、粘着剤層の凹凸が段ボール表面の凸凹を概略埋める様になり、接触面積が十分に得られることで良好な接着性を示すものである。
【0004】
ここで基材への直接塗布(以下、直接塗工法という)が必須である理由としては、基材と粘着剤層との密着性を満足させるためである。仮に粘着剤表面に所望の凹凸が形成されていても、基材との間の密着性が不十分の場合、剥がすときに粘着剤が基材から剥がれ被着体へ残留し、糊残りが生じるのである。
なお、一般の粘着シートでは剥離シートに粘着剤を塗布、乾燥し、表面基材と貼り合わせて製造する所謂転写方式(以下、転写塗工法という)の採用が多く、通常、十分な密着性が得られている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭50−2736号公報、
【特許文献2】
実開昭61−168146号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の直接塗工法による弊害は多い。例えば、水系の粘着剤を紙類へ塗布した場合、水分の浸透により紙力が低下するため断紙トラブルや、水分の吸収斑や乾燥時の乾燥斑による皺や、吸水により浸透方向(シート表裏)および縦横での寸法変化が生じるためのカールなどが発生する。また、熱で発色記録する感熱記録紙などを表面基材とした場合、粘着剤乾燥時に発色する恐れがあるため、低温乾燥で塗工速度を下げて製造するなど、製造上および品質上の問題が多い。
本発明の目的は、接着性および再剥離性に優れる再剥離性粘着シートを提供し、かつ今まで直接塗工法でしか得られなかった微粒子配合粘着剤による再剥離性粘着シートを、製造面および品質面で有利な転写塗工法で得る製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、なぜ前記微粒子配合の粘着剤の場合、転写塗工法では密着性が不十分となるかについて検討した結果、以下の理由によるものと推察した。
すなわち、一般の粘着シートの粘着剤には微粒子が添加されていないため、剥離シート上に塗布、乾燥後には略平面の粘着剤面が形成される。その後、表面基材と貼り合わされる時に均等に圧力が加えられ、粘着剤自体の流動性により基材へ投錨し、密着性が向上する。一方、前記微粒子を含む粘着剤の場合は、乾燥後に形成される粘着剤の凹凸表面の凸部は基材と接触し密着性が得られても、凹部での接触が不十分であるために、粘着シート全体では十分な密着性が得られないと推察した。そこで、かかる粘着剤と基材とを充分に接触させる方法について検討し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の再剥離性粘着シートの製造方法は、微粒子を含む粘着剤層が一方の面側に形成された剥離シートの粘着剤層側の面を、表面基材と貼り合わせる再剥離性粘着シートの製造方法において、前記微粒子の平均粒子径が15〜70μmであり、前記粘着剤層が形成された剥離シートと前記表面基材とを、線圧98〜980N/cmのニップロールを用いて、および/または、2本のロールの間隙が前記粘着剤層が形成された剥離シートと前記表面基材の総厚の20〜80%であるギャップ式カレンダーを用いて、貼り合わせることを特徴とする。
【0008】
また、前記製造方法で製造され得る再剥離性粘着シートは、剥離シート側の表面に凹凸形状を有する粘着剤層が一方の面側に形成された剥離シートの粘着剤層側の面を、表面基材と貼り合わせて得られる再剥離性粘着シートであって、前記剥離シート側における前記粘着剤層表面の、JIS−Z−8741に準拠した60度光沢値が20%以下であることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる表面基材としては、通常、再剥離性粘着テープの基材として用いられるものであれば公知のものが使用できる。例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト紙等の印刷用紙、感熱記録用紙、熱転写記録用紙、静電記録用紙、インクジェット記録用紙等の情報記録用紙、その他クラフト紙、含浸紙、低サイズ紙、水溶紙等の紙基材、また、PETフィルム、PEフィルム、PPフィルムや合成紙、不織布等のフィルム基材が挙げられ、これら基材単独、または、粘着剤との密着性を向上させる目的でアンカー層を積層した基材を使用できる。
【0010】
表面基材の支持体が紙である場合は、粘着剤を表面基材の内部へ侵入させることができるが、フィルム基材の場合は不可能であるため、この場合はアンカー層を積層することが好ましい。
【0011】
アンカー層には特に限定はなく、例えばカオリン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、ホワイトカーボン等の無機顔料、或いはポリスチレン樹脂微粒子、尿素ーホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機合成顔料等の顔料と、例えば、カゼイン、デキストリン、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル共重合体等の天然または合成樹脂バインダーを主成分とした材料を、例えば、乾燥重量で0.1〜10g/m2 程度設けることができる。前記顔料と前記バインダーの配合比率は固形分比で、0〜100:100程度の範囲で調整されることが好ましい。
【0012】
本発明で用いられる剥離シートは、再剥離性粘着シートの剥離シートとして用いられるものであれば公知のものが使用でき、通常、剥離シート基材の少なくとも一方の面に剥離剤からなる層を設けたものが用いられる。剥離シート基材としては、例えば、ポリエチレン等のラミネート紙、グラシン紙、クレーコート紙、またはグラシン紙やクラフト紙または上質紙等に、例えばカゼイン、デキストリン、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル共重合体等の天然または合成樹脂を主成分とした目止め層を、乾燥重量で0.1〜10g/m2 程度設けた基紙や、PETフィルム、PEフィルム、PPフィルムや合成紙、不織布等のフィルム基材が挙げられる。
【0013】
剥離剤としては剥離シート用剥離剤として用いられるものであれば、公知のものが使用できる。例えば、水分散型、溶剤型あるいは無溶剤型のシリコーン樹脂やフッ素樹脂等が使用でき、前記剥離基材に乾燥重量で0.05〜3g/m2 程度塗被後、熱硬化、電離放射線硬化等によって剥離層を形成し、剥離シートが得られる。
【0014】
本発明において、粘着剤層は粘着剤と微粒子とで形成されている。
微粒子としては、その材質には特に制限がなく、例えば、カオリン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、ホワイトカーボン、ガラスビーズ等の無機微粒子、或いはアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニリデン樹脂、尿素ーホルマリン樹脂等の合成樹脂からなる微粒子および、それら合成樹脂の中空微粒子が挙げられる。
【0015】
良好な粘着性および再剥離性を得ると共に、製造時に加えられるニップ圧等により十分な基材への密着性を発現させるために、微粒子の平均粒子径は、15〜70μm、好ましくは20〜60μmとされている。また、微粒子の40℃における貯蔵弾性率は、25000〜60000Paであることが好ましく、30000〜55000Paであることがより好ましい。
微粒子の平均粒子径を15μm以上とすることにより、仕上がった粘着シートの糊面の凹凸形成が良好で再剥離性が向上し、70μm以下とすることで点接着がより強調されることなく、優れた接着性を維持できる。
微粒子の平均粒子径は、数平均粒子径であり、例えば、微粒子の電子顕微鏡写真からランダムに100個程度の微粒子を選び、粒子径を測ってその平均値を求めることができる。粒子が真球でない場合は、長径と短径を求め、その平均値をその粒子の粒子径と仮定すればよい。
また、40℃における微粒子の貯蔵弾性率を25000Pa以上とすることで、製造時に加えられるニップ圧等により微粒子が実質的に扁平化することなく、より良好な凹凸形成ができる。また、60000Pa以下とすることで、ニップ圧を加えた時の凹凸形成がより十分にでき、かつ凹部の粘着性成分の基材密着性がより優れたものになる。
なお、該微粒子自体には粘着性があってもなくてもよい。
【0016】
本明細書において、貯蔵弾性率とは、動的粘弾性測定装置(測定装置の例として、オリエンテック製RHEOVIBRON DDV−25FPを例示できる)を用いて約2mm厚の板状に成膜した微粒子を40℃、周波数1Hzで剪断変形させたときに得られる動的複素弾性率の位相角δの余弦成分を指す。ここでいう微粒子とは、微粒子と粘着剤の混合物を脱イオン水にて希釈後、東洋濾紙(株)製定性濾紙No.101により濾過分離し乾燥することで得られる。
【0017】
粘着剤と微粒子の混合比率は、固形分比率(質量比率)で10:5〜100が好ましく、10:20〜50がより好ましい。粘着剤10に対し微粒子を5以上とすることで良好な凹凸形成ができ、100以下とすることで基材密着性を良好にすることができる。
【0018】
前記好適な微粒子を製造する方法としては、例えば、特開2000−281989号公報による方法が挙げられる。すなわち、
(a)一般式 CH2=CHCOOR1
(但し、R1 は炭素数4〜10の直鎖または分岐アルキル基を表す)で示されるアクリル酸エステル系単量体60〜100質量%、
(b)カルボキシル基を有する不飽和単量体0〜10質量%、
(c)前記単量体(a)および(b)と共重合可能なその他の不飽和単量体0〜40質量%、
を共重合して得られ、Tgが10℃以下のアクリル系共重合体微粒子であることが好ましい。因みにTgが10℃を越えると、微粒子の貯蔵弾性率が高くなり過ぎる。またTgが−20〜−70℃の範囲であると、適正な貯蔵弾性率が得られ易く、また微粒子自体の粘着性が発現するのでより好ましい。
【0019】
前記(a)の単量体は、式 CH2=CHCOOR1で表されるアクリル酸エステルであり、そのR1 は炭素数4〜10の直鎖もしくは分岐アルキル基を示し、そのような基R1 の例としては、n−ブチル基、i−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、i−ノニル基、n−デシル基などを挙げることができる。このようなアクリル酸エステルの具体例としては、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、i−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、i−ノニルアクリレート、n−デシルアクリレートなどを例示できる。これらの中n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、i−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、i−ノニルアクリレート等の使用が好ましい。
【0020】
単量体(a)であるアクリル酸エステルの使用量は(a)〜(c)の合計100質量%中、例えば、60〜100質量%、好ましくは70〜100質量%である。該アクリル酸エステル単量体(a)を前記下限量以上使用することにより、優れた接着力ならびに優れた粘着性と優れた凝集力の良好なバランスが達成される。
【0021】
前記(b)のカルボキシル基を含有する単量体としては、α,β−不飽和モノマ−もしくはジ−カルボン酸単量体を挙げることができ、炭素数3〜5のα,β−不飽和モノマ−もしくはジ−カルボン酸単量体の使用が好ましい。このような単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸などを例示できる。これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸の使用がより好ましい。
【0022】
単量体(b)の使用量は、(a)〜(c)の合計100質量%中、例えば、0〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。単量体(b)の使用量が前記下限量以上の場合には、仕上がる微粒子の分散液の機械安定性および凝集力が優秀であり、また、前記上限量以下使用することによって粘着性および耐水性を良好に保持できるので、前記範囲量において適当に選択利用するのがよい。さらに、粘着性および凝集力のバランス、接着力の経時安定性や耐熱湿劣化性なども考慮に入れて、必要ならば、予め実験的に好適範囲量を前記範囲内で選択することができる。
【0023】
単量体(c)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸エステル、ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルマレート、ジ−n−オクチルマレート、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジ−2−エチルヘキシルフマレート、ジ−n−オクチルフマレート等のマレイン酸エステルもしくはフマル酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の飽和脂肪酸ビニルエステル類、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリルなど、また、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルメルカプタン、アリルメルカプタン、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、アリルメタクリレート等のアミド基もしくは置換アミド基、アミノ基もしくは置換アミノ基、水酸基、エポキシ基、メルカプト基、ラジカル重合性不飽和基などの官能性基を1分子中に少なくとも1個含有する不飽和単量体(以下、官能性単量体と称すことがある)で前記単量体(b)以外の官能性単量体も必要に応じて使用できる。この他、単量体(c)としては、特に制限されたものではなく、種々の不飽和単量体を、本発明の卓越した効果が損なわれない範囲において適宜使用できる。
【0024】
単量体(c)の使用量は、(a)〜(c)の合計100質量%中、例えば、0〜40質量%が好ましく、0〜25質量%がより好ましい。該単量体(c)の使用量は、該単量体の種類によっても変わり得るので一義的に使用量は決められないが、接着力とタックのバランスおよびこれらと凝集力とのバランスなどを所望に応じて調整するのに役立つので、そのような目的に合致するように前記範囲量で適宜に選択することができる。該単量体(a)の使用量が前記範囲量の上限を越えて多量すぎると粘着性が過小となり初期接着性、特に段ボールなどの粗面、ポリエチレン等のポリオレフィン系の被着体に対しての接着力が著しく低下するので、単量体(c)を使用する場合には、前記範囲内で適当に選択利用するのがよい。
【0025】
本発明に好適に用いられる前記アクリル系共重合体からなる微粒子は前記アクリル系単量体混合物を水性媒体中で界面活性剤と重合開始剤、必要ならば懸濁安定剤などの存在下に水性懸濁重合することにより製造するのが好都合である。方法としては、公知の懸濁重合法が用いられるが、例えば、水性媒体中、界面活性剤および必要に応じて懸濁安定剤の存在下で、重合開始剤を溶解した単量体混合物を一定時間攪拌し所望の粒子径範囲の油滴乳化液を得た後、一定攪拌回転数下で昇温し、重合反応を開始させることができる。
【0026】
前記懸濁重合時には、生じたラジカルによりアクリル系単量体が重合し主鎖を形成すると同時に、生じたアクリル系共重合体とラジカルとの間のラジカル連鎖移動反応により架橋反応が起こると考えられる。しかし、このラジカルの連鎖移動反応は、不確定要素が大きく、ラジカル反応の結果常に一定の架橋状態を有する安定した品質を得るためには重合開始時の初期反応のコントロールが重要であり、例えば、酸素等の重合禁止効果のある物質存在下で前記昇温を行い、目的の温度で窒素パージ等による置換を行うことで該初期反応のコントロールを行うことができる。
【0027】
前記の「水性媒体中」とは水中または水溶性有機溶剤の水溶液中を意味する。このような水溶性有機溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の水溶性アルコール類;アセトン等の水溶性ケトン類;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール等の水溶性エーテル類;等を挙げることができる。これらは単独または複数混合して使用可能であり、その使用量は、水溶性有機溶剤の濃度として0〜約30質量%程度を例示できる。該有機溶剤は、前記アクリル系共重合体からなる微粒子のゲル分および分子量を調製する目的で使用できるが、該粘着性微粒子を含有してなる再剥離型粘着剤組成物の放置安定性、機械安定性等の観点より、実質的にこれら有機溶剤を含まない水中で懸濁重合を行うのがより好ましい。
【0028】
前記アクリル系共重合体からなる微粒子の製造において用いられる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤をそれぞれ単独あるいは併用して使用でき、安定に懸濁液を製造するためには、アニオン系界面活性剤を用いるか、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤の併用の場合はアニオン系界面活性剤が多い方が、好ましい。該アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ソーダ等の高級脂肪酸塩類;例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアルキルアリールスルホン酸塩類;例えば、ラウリル硫酸ソーダ等のアルキル硫酸エステル塩類;例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ソーダ等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ソーダ等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ソーダ、ジオクチルスルホコハク酸ソーダ、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ソーダ等のアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類;等を例示できる。
【0029】
また、該ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類;例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;例えば、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル類;例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー;等を例示できる。
【0030】
これらの界面活性剤を重合用乳化剤として用いる場合には、これらを適宜組み合わせて使用でき、その使用量としては一般に前記アクリル系単量体混合物100質量部に対して0.5〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部程度を例示できる。
【0031】
さらに、前記アクリル系共重合体からなる微粒子の製造において前記界面活性剤のほかに必要に応じて懸濁安定剤を使用できる。該懸濁安定剤としては、水溶性保護コロイドの使用が好ましく、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール(以下、PVAという)類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体類;等が挙げられる。
該水溶性保護コロイドの使用量としては一般に前記アクリル系単量体混合物100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部程度がより好ましい量として例示できる。
【0032】
前記アクリル系共重合体からなる微粒子は、前記アクリル系単量体混合物を水性媒体中で前記界面活性剤と重合開始剤と、必要に応じて前記懸濁安定剤などの存在下に水性懸濁重合することにより得られる。
該重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビスメチルイソブチレート等の油溶性重合開始剤の使用が好ましい。
該油溶性重合開始剤の使用量は前記アクリル系単量体混合物100質量部に対して0.1〜1.2質量部が好ましく、0.2〜1.0質量部がより好ましく、0.3〜0.8質量部が特に好ましい。
前記油溶性重合開始剤の使用量が前記下限量以上の場合には、重合開始時の初期反応をコントロールし易く、一定の架橋状態を有する安定した品質が得られ、また、前記上限量以下を使用すると分子量が低くなり過ぎる等の不具合が生ずることがないので好ましい。
【0033】
さらに、また、水性懸濁重合に際して、所望により、連鎖移動剤を使用でき、かかる連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、トリクロロブロモメタン等を挙げることができる。その使用量としては前記アクリル系単量体混合物100質量部に対して例えば0.001〜0.01質量部の如き使用量を例示できる。
【0034】
本発明において用いられる粘着剤は公知の粘着剤が適用でき、例えば、天然ゴムや合成ゴムをベースにしたゴム系、またアクリル系、SBR系、シリコーン系等の合成樹脂をベースにしたもので、形態としてはエマルジョン型、溶剤型、無溶剤型などがあり、またエポキシ化合物やイソシアネート化合物等の架橋剤を併用し、熱硬化、あるいは紫外線や電子線硬化するタイプが挙げられる。中でも粘着性、耐久性および価格面から水性エマルジョン型のアクリル系粘着剤で、ガラス転移温度(以下、Tgという。)が−60℃〜−30℃のものが粘着性の面から好ましい。Tgを−60℃以上とすることで糊残りの発生を減少させることができ、−30℃以下とすることで成膜後の皮膜の柔軟性を維持することができ、粘着シート製造時に所定のニップ圧を加えた時に優れた密着性を得ることができる。
この粘着剤は、例えば前記の懸濁重合により得られた微球粒子の水性分散液に上記の粘着剤の他、公知の可塑剤、タッキファイヤー、架橋剤等を添加が可能であり、また、必要に応じて他の助剤を添加混合し、水性塗工液として作製することができる。他の助剤としては、増粘剤、pH調整剤、消泡剤、防腐防黴、顔料、無機充填剤、安定剤、濡れ剤、湿潤剤等を挙げることができる。
【0035】
こうして得られた本発明の再剥離性粘着シートに用いる粘着剤の水性塗工液は一般に、微粒子を除いた粘着剤のみの固形分含有量10〜60質量%が好ましく、20〜45質量%がより好ましい。B型回転粘度計による20℃、60rpmにおける粘度が100〜10000mPa・sであることが好ましく、1000〜5000mPa・sがより好ましい。この水性塗工液は、pH4〜8.5が好ましく、pH6.5〜8.5がより好ましい。
【0036】
本発明の再剥離性粘着シートの製造方法では、先ず剥離シートの剥離剤層上へ粘着剤に微粒子を混合した粘着剤組成物を塗布、乾燥して粘着剤層を設ける。
粘着剤組成物を剥離シートへ塗被する装置としては、例えばロールコーター、リバースロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーター、リバースグラビアコーター等の公知の塗被装置が挙げられ、また、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷機でも製造することができる。
【0037】
粘着剤組成物の塗工量は、乾燥重量で3〜30g/m2 、より好ましくは5〜20g/m2 の範囲で調節されることが好ましい。3g/m2 以上とすることにより、得られる粘着シートの接着性能が優れたものとなり、30g/m2 以下とすることで粘着剤層の凹凸形成が良好となる。
【0038】
次いで、ニップロールおよび/または、ギャップ式カレンダーを用いて、粘着剤層が表面基材に面するように、粘着剤層付き剥離シートと表面基材とを貼り合わせる転写塗工法で仕上げられる。
この貼り合わせの時ニップロールを用いる場合、その線圧を98〜980N/cm、好ましくは196〜686N/cmにすると、接着性および再剥離性に優れる再剥離性粘着シートが得られる。線圧を98N/cm以上とすることにより、粘着剤の基材密着性に優れたものとなり、980N/cm以下にすることにより微粒子が塑性変形による扁平化することなく、また、基材厚みの低下も大きくなることがない。
【0039】
貼り合わせの際のニップロールは、公知の構成が適用でき、一般の金属ロールの他、NBR、シリコーン、ウレタン、EPDM等の樹脂ロールやコットン、ウール等の硬度60〜90程度の弾性ロール等が挙げられ、それらロールの組み合わせは自由であり、またニップ数としては、2本のロールによる1ニップや、それ以上のロール本数およびニップ数でも構わない。また、ロールの温度も10〜100℃程度の範囲内で適宜調整しても構わない。ただし、ロール表面が粗いと転写性(密着性)へ影響を及ぼすため、平坦な表面である必要がある。
【0040】
ギャップ式カレンダーを用いる場合、ロールとロールの間隙(ギャップ)を粘着剤層が形成された剥離シートと表面基材の総厚(以下、粘着シートの総厚という。)よりも狭いギャップに設定する。具体的には、粘着シートの総厚に対して20〜80%、好ましくは20〜50%のギャップに設定することが好ましい。ギャップを粘着シート総厚の20%以上とすることにより、微粒子が扁平化することがなく、基材厚みが著しく低下することもない。また、80%以下とすることにより、粘着剤の基材密着性に優れたものとなる。
ギャップ式カレンダーは、公知の構成が適用でき、ギャップ式カレンダーのロールは、一般の金属ロールやセラミックロールが好ましく用いられる。
なお、本発明の貼り合わせ条件については、前記ニップロールまたは前記ギャップ式カレンダーを単独で使用してもよく、両者を併用してもよい。
両者を併用するときは、ニップロールの線圧は、上記線圧の範囲の中で、比較的低い値としてもよい。
粘着シート製造工程におけるニップロールやギャップ式カレンダーによる処理は、粘着剤層付き剥離シートと表面基材を貼り合わせた後、ワインダーで巻き取るまでの間で処理するオンライン処理でもよく、一旦、通常条件(例えばニップ圧約49N/cm程度)で貼り合わせた後、別工程で処理するオフライン処理でもよい。
本発明の製造方法により得られる再剥離性粘着シートは、粘着剤層と表面基材との間が剥離しにくい。これは、従来の転写塗工法では粘着剤層と表面基材との間に気泡が挟み込まれて空隙ができてしまい、密着性が低下していたのに対し、本発明の製造方法では、ニップロールおよび/またはギャップ式カレンダーで処理しているので転写塗工法で生じた空隙が押しつぶされ、これにより粘着剤層と表面基材の間の密着性が高められているためと推察される。
【0041】
本発明で得られる再剥離性粘着シートは、剥離シート側の粘着剤表面が凹凸形状をなしている。具体的には、JIS−Z−8741に準拠した60度光沢値が20%以下である必要があり、12%以下であることが好ましい。このように、被着体に接する粘着剤表面が凹凸形状をなしているので、糊残りのない良好な再剥離性を得ることができる。一方、前記貼り合わせ条件を採用することにより、粘着剤と表面基材との良好な密着性も得ることができる。すなわち、粘着剤表面を凹凸形状とすることで、粘着シートと被着体の接触面積を適度の範囲とし、それにより被着体に貼り付けたときに適度の接着性と再剥離性を与え、ニップロールおよび/または、ギャップ式カレンダーを用いて、粘着剤層付き剥離シートと表面基材とを貼り合わせることにより粘着剤を基材内部へ侵入させて、粘着剤と表面基材との密着性を向上させ、糊残りのない再剥離性を発現するものと推測される。
なお、前記貼り合わせ条件以外にも、所定の荷重をある期間加えることでも同様な効果が得られるが、所望の効果を得るためには、50kPa以上の圧力が1週間以上必要となり、製造の面から効率的ではない。60度光沢値は通常0%になることはなく、使用する微粒子およびその径、使用する粘着剤によりおのずと定まる値以上になると思われるが、60度光沢値が20%以下であれば、どのような値でも本発明の再剥離性粘着シートの剥離シート側の粘着剤表面は充分な凹凸形状を発現できる。
なお、この60度光沢値は公知の光沢度計で測定でき、例えば、株式会社村上色彩技術研究所製の「デジタル光沢計GM−26D型」で測定できる。
【0042】
また、良好な再剥離性粘着シートを得るためには粘着剤が表面基材の内部へ侵入していることが好ましく、その深さが1〜5μmであることが好ましく、2〜4μmであることがより好ましい。これは、表面基材として前述した如き紙の様にポーラスな素材を採用して、前記貼り合わせ条件を採用することで達成できる。表面基材として、染み込みの不可能な素材を用いた場合は、表面基材の粘着剤を貼り合わせる側の面に前述の如きアンカー層を設けることが好ましい。粘着剤の一部が表面基材内部に侵入すると、アンカー効果により充分な密着性が得られ、剥離時の糊残りが生じない。因みに表面基材への侵入深さが1μm以上であると、密着性がより向上し、糊残りの発生し易い被着体に貼付したものを剥離する際にも糊残りのおそれがなくなる。また5μmを超えてもそれ以上のアンカー効果の向上はなく、逆に粘着力が低下する場合もある。
【0043】
ここで述べた粘着剤の表面基材の内部へ侵入程度の測定手段としては、粘着シートを切断し、その切り口を顕微鏡観察して判断でき、例えば、日本電子株式会社の走査電子顕微鏡「JSM−T300」により、2000倍程度の倍率で観察し、判断できる。
【0044】
本発明で得られる再剥離性粘着シートにおいて、前記粘着剤層の剥離シート側表面の凹凸形状の高低差が10〜50μmであることが好ましく、15〜30μmであることがより好ましい。この凹凸形状の高低差は、例えば、再剥離性粘着シートを凍結状態で切断し、その断面の顕微鏡写真から測定できる高低差の平均値として求めることができる。この高低差を10μm以上とすることにより、凹凸形状を十分に発現でき、粘着性および再剥離性のバランスが良好となり、また、50μm以下にすることで、点接着がより強調されることなく、優れた接着性を維持できる。
【0045】
本発明で得られる再剥離性粘着シートは紙、金属、プラスチック類などの被着体に対し、良好な接着性を示し、かつ、粘着シートからなるラベルを被着体から剥がす際に糊残りしない良好な再剥離性を示す。
また、本発明の再剥離性粘着シートの製造方法によれば、粘着剤を剥離シートに塗布、乾燥後表面基材と貼り合わせるので、表面基材の水分浸透による紙力低下に基づく断紙トラブルのおそれがなく、水分の吸収斑や乾燥時の乾燥斑による皺の発生や、吸水によるシート断面方向や、縦横方向の寸法変化によるカール発生のおそれもなく、表面基材として熱で発色する感熱記録紙を用いた場合でも感熱紙の発色の心配がないので低温乾燥などにより生産速度を低下させる必要がなく、生産性高く、再剥離性粘着シートを製造できる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらに限定されるものではない。また例中の部、割合、塗工量等は特に断わらない限り、全て固形分質量で示すものである。
【0047】
実施例1
<微粒子分散液の製造>
温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却器を備えた反応器に、イオン交換水730質量部、予め溶解しておいた5質量%濃度の部分ケン化ポリビニルアルコール130質量部、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルソーダ塩型アニオン系界面活性剤水溶液(不揮発分27質量%)を13質量部仕込み充分攪拌した。
別途、2−エチルヘキシルアクリレート(以下、2EHAという)320質量部、アクリル酸(以下、AAという)6.5質量部、過酸化ベンゾイル(以下、BPOという)2.2質量部、ジビニルベンゼン(以下、DVBという)0.16質量部を別の容器にて攪拌溶解した。
次いで、この単量体混合液を上記の反応器中の水溶液に添加して攪拌した。
攪拌500rpm前後で1時間攪拌した後昇温開始し、内温が約70℃となったら窒素による置換を行った。
75〜80℃で重合反応が始まり、急激に90℃前後まで発熱した。冷却し80℃を保持し5時間反応を行った。
その後生成した微粒子分散液を30℃まで冷却し、25%アンモニア水を約0.7質量部添加してpH8とした。得られた微粒子分散液の物性値は、40℃における貯蔵弾性率は50000Pa、固形分濃度が30%、平均粒子径が45μmであった。
【0048】
<粘着剤組成物の製造>
固形分濃度45%のエマルジョン型アクリル系粘着剤(JSR社製、OJ300)を液姿100質量部に対して、エポキシ系架橋剤(JSR社製、NE−421)を液姿1質量部混合し、さらに前記微粒子分散液を225質量部混合し、固形分濃度34.6%の粘着剤組成物を製造した。得られた粘着剤組成物は、pH7.6、粘度3500mPa・s(20℃、BL型回転粘度計60rpm)であった。
【0049】
<再剥離性粘着シートの作製>
厚さ78μmのグラシン紙(王子製紙社製、G8B)に剥離剤として無溶剤型シリコーン(荒川化学社製、R−353AとR−353Bを1:1混合)を0.5g/m2 となるように、グラビアロールコーターで塗工後、140℃の熱風式ドライヤーで10秒間乾燥した。次いで、該剥離剤層上に上記の粘着剤組成物を乾燥重量が10g/m2 となるようにリップコーターで塗工後、粘着剤含有水分が0.5%となるように120℃の熱風式ドライヤーで10秒間乾燥して粘着剤層を形成した。
次いで、ニップロールを用いて、該粘着剤層に含有水分6%の厚さ90μm感熱記録紙(王子製紙社製、KH54)の非記録層側を貼り合わせた。その貼り合わせ時のニップは、直径30cmで表面をクロムメッキ処理された光沢面である金属ロールと直径30cmの硬度75°のシリコーンゴムロールで線圧294N/cmであった。その後、剥離シートの非剥離剤面へ水塗りロールで水付けし、剥離シートの水分を6%とし、粘着剤層の剥離シート側表面の凹凸の高低差20μmの再剥離性粘着シートを得た。なお、本加工は速度200m/minで一連の工程で仕上げた。
【0050】
実施例2
貼り合わせ時のニップの線圧を98N/cmとし、次いでニップロール通過後の粘着シートを、ギャップ式カレンダーのギャップが70μm(粘着シート総厚に対し、約40%)に調整された、直径が30cmで表面がクロムメッキ処理された光沢面の2本の金属ロール間を通過させた以外は、実施例1と同様にして粘着剤層の剥離シート側表面の凹凸の高低差15μmの再剥離性粘着シートを得た。
【0051】
実施例3
貼り合わせ時のニップの線圧を686N/cmとした以外は、実施例1と同様にして粘着剤層の剥離シート側表面の凹凸の高低差20μmの再剥離性粘着シートを得た。
【0052】
実施例4
貼り合わせ時のニップの線圧を1078N/cmとした以外は、実施例1と同様にして粘着剤層の剥離シート側表面の凹凸の高低差25μmの再剥離性粘着シートを得た。
【0053】
実施例5
微粒子分散液の製造にあたって、5質量%濃度の部分ケン化ポリビニルアルコールを150質量部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルソーダ塩型アニオン系界面活性剤水溶液(不揮発分27質量%)を22質量部とした以外は実施例1と同様にして微粒子分散液を得た。微粒子分散液の物性値は、40℃における貯蔵弾性率は55000Pa、固形分濃度が29%、平均粒子径が15μmであった。
次いで、張り合わせ時のニップの線圧を49N/cmとし、ギャップ式カレンダーのギャップを35μm(粘着シート総厚に対し、約20%)とした以外は、実施例2と同様にして粘着剤層の剥離シート側表面の凹凸の高低差20μmの再剥離性粘着シートを得た。
【0054】
実施例6
微粒子分散液の製造にあたって、5質量%濃度の部分ケン化ポリビニルアルコールを100質量部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルソーダ塩型アニオン系界面活性剤水溶液(不揮発分27質量%)を11質量部、また、2EHAを290質量部、AAを7.5質量部、BPOを2.5質量部とした以外は実施例1と同様にして微粒子分散液を得た。
微粒子分散液の物性値は、40℃における貯蔵弾性率が70000Pa、固形分濃度が28.0%、平均粒子径が70μmであった。
次いで、貼り合わせ時のニップの線圧を49N/cmとし、ギャップ式カレンダーのギャップを107μm(粘着シート総厚に対し、約60%)とした以外は、実施例1と同様にして粘着剤層の剥離シート側表面の凹凸の高低差40μmの再剥離性粘着シートを得た。
【0055】
比較例1
貼り合わせ時のニップの線圧を49N/cmとした以外は、実施例1と同様にして粘着剤層の剥離シート側表面の凹凸の高低差3μmの再剥離性粘着シートを得た。
【0056】
比較例2
微粒子分散液の製造にあたって、5質量%濃度の部分ケン化ポリビニルアルコールを150質量部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルソーダ塩型アニオン系界面活性剤水溶液(不揮発分27質量%)を20質量部とし、また、AAの代わりにMAA3.2質量部を用い、DVBを用いず、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン(NDM)0.16質量部を用いた以外は実施例1と同様にして微粒子分散液を得、その他は実施例1と同様にして粘着剤層の剥離シート側表面の凹凸の高低差5μmの再剥離性粘着シートを得た。
なお、微粒子分散液の物性値は、40℃における貯蔵弾性率は20000Pa、固形分濃度が29%、平均粒子径が10μmであった。
【0057】
比較例3
実施例1において、5質量%濃度の部分ケン化ポリビニルアルコールを170質量部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステルソーダ塩型アニオン系界面活性剤水溶液(不揮発分27質量%)を25質量部、また、2EHA290質量部、AA7.0質量部、BPO2.0質量部を用い、DVBを用いなかった以外は実施例1と同様にして微粒子分散液を得、その他は実施例1と同様にして粘着剤層の剥離シート側表面の凹凸の高低差2μmの再剥離性粘着シートを得た。
なお、微粒子分散液の物性値は、40℃における貯蔵弾性率が60000Pa、固形分濃度が28.0%、平均粒子径が5μmであった。
【0058】
<評価>
以下試験方法(1)〜(6)に従って再剥離性粘着シートの品質を評価し、結果を表1に記載した。
(1)粘着剤層の凹凸評価(糊面の光沢度)
再剥離性粘着シートの剥離シートを剥がし、粘着剤層表面の光沢度を、株式会社村上色彩技術研究所製の「デジタル光沢計GM−26D型」を用い、照射角60度で測定した。
(2)粘着剤の浸透度評価(断面観察)
剥離紙を剥がした後の再剥離性粘着シートを液体窒素浴へ浸漬し凍結処理した後、ナイフで切断し、その切り口を日本電子株式会社の走査電子顕微鏡「JSM−T300」により、1500倍の倍率で観察し、粘着剤の基材への浸透深さを測定した。
(3)粘着剤層の凹凸高低差の測定
剥離紙を剥がした後の再剥離性粘着シートを液体窒素浴へ浸漬し凍結処理した後、ナイフで切断し、その切り口を日本電子株式会社の走査電子顕微鏡「JSM−T300」により、1500倍の倍率で観察し、形成された凹凸部分50ヶ所の高低差を計測し、数値を平均化した。
【0059】
(4)初期粘着力
JIS−Z−0237、180゜ピール法に準じて、粘着力を測定した。被着体はK7ライナー(王子製紙製)を使用した。その時の粘着力および、再剥離性を下記評価基準により評価した。
(評価基準)
○:再剥離性粘着シート、ダンボールの紙やぶれ、糊残りなく良好
△:糊残りはないが、再剥離性粘着シートまたはダンボールの紙破れが、若干あり
×:糊残り発生。または再剥離性粘着シート、ダンボールの紙破れがひどい
【0060】
(5)経時粘着力
被着体としてK7ライナー(王子製紙製)を使用し、圧着条件として2kgの圧着ローラーで、300mm/分、1往復圧着した後、40℃、90%RHの環境で7日間保管の後、23℃、50%RHの環境に2時間放置し、JIS−Z−0237、180゜ピール法に準じて、粘着力を測定した。またその時の再剥離性を下記評価基準により評価した。
(評価基準)
○:再剥離性粘着シート、ダンボールの紙やぶれ、糊残りなく良好
△:糊残りはないが、再剥離性粘着シートまたはダンボールの紙破れが、若干あり
×:糊残り発生。または再剥離性粘着シート、ダンボールの紙破れがひどい
【0061】
(6)エッジリフト
直径50mmの円筒にKライナー(王子製紙製)を巻きつけ、その表面に、16mm×20mmの大きさにカットした再剥離性粘着シートを貼り付け(方向は20mmの辺が円筒の円周に沿う)、24時間後の浮き具合を下記評価基準により評価した。
(評価基準)
○:再剥離性粘着シートの浮きがなく良好
△:再剥離性粘着シートの浮き、剥がれがあるが、ラベル面積の20%未満である
×:再剥離性粘着シートのラベル面積20%以上の浮き、剥がれあり
【0062】
総合判定
評価結果を基に、実用性を下記基準で判定した。
○:実用上問題なし
×:実用上、問題である
【0063】
【表1】
【0064】
表1から明らかなように、貼り合わせ時のニップの線圧が低く、光沢度の大きい比較例1、微粒子の平均粒径が15μm未満の比較例2、3では、得られた再剥離性粘着シートの60度光沢度が高く、再剥離性及びエッジリフトが不良であるのに対し、本発明の製造方法で得た再剥離性粘着シートは粘着力も適正で、再剥離性に優れていることがわかる。
また、実施例1から、再剥離性粘着シートを高速で生産できることがわかる。
【0065】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明で得られる再剥離性粘着シートは、粘着性および再剥離性のバランスが良好で、高品質の再剥離性粘着シートである。また、本発明の再剥離性粘着シートの製造方法によれば、粘着剤を剥離シートに塗布、乾燥後、表面基材と貼り合わせる転写塗工法でも、製造時の張り合わせの条件を設定することで製造が容易で、良好な接着物性、再剥離性の再剥離性粘着シートを製造できる。
Claims (2)
- 微粒子を含む粘着剤層が一方の面側に形成された剥離シートの粘着剤層側の面を、表面基材と貼り合わせる再剥離性粘着シートの製造方法において、前記微粒子の平均粒子径が15〜70μmであり、前記粘着剤層が形成された剥離シートと前記表面基材とを、線圧98〜980N/cmのニップロールを用いて、および/または、2本のロールの間隙が前記粘着剤層が形成された剥離シートと前記表面基材の総厚の20〜80%であるギャップ式カレンダーを用いて、貼り合わせることを特徴とする再剥離性粘着シートの製造方法。
- 前記微粒子の40℃における貯蔵弾性率が25000〜60000Paである請求項1記載の再剥離性粘着シートの製造方法。
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