JP4255143B2 - 自動車用手動変速機のシフト機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、特にレース用自動車等の特殊用途に好適な自動車用手動変速機のシフト機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
自助車用トランスミッション変連装置には、手動変速装置と自動変速装置の2種類がある。手動変速装置の中には自動車レース等の特殊用途として、2輪自動車用変速装置のごとく、シフトレバーを前方または後方へ1回動かす毎に1段ずつ変速を行うことができる変速装置(以下シーケンシャルシフト変速装置と略記)が存在する。この変速装置には歯車を選択制御するギヤシフトカムが必要不可欠であり、変速を行なうためにはこのギヤシフトカムを任意一定角度回転させ保持する機構が必要となる。上記自動車レース等の特殊用途の変速装置は、このギヤシフトカムを任意一定角度回転保持する送り装置に電子制御や油圧制御等を用いている。また、近来の自動変速装置の中には付加的にシフトレバーを前方または後方へ1回動かす毎に1段ずつ変速を行うことができる変速機構を持つものも存在している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のシーケンシャルシフト変速装置では、次のような問題点があった。すなわち、
(I)ギヤシフトカムを任意一定角度回転保持する送り装置に電子制御や油圧制御等を用いており、この送り装置が非常に複雑なため容積が嵩むと共に、高重量になってしまう。
(II)上記の如く、送り装置が非常に複雑なため、送り装置自体はもちろんのこと、変速装置自体も非常に高価である。そのためシーケンシャルシフト変速装置の一般への普及を妨げる一因となっている。
(III)自動変速装置の中の付加的にシフトレバーを前方または後方へ1回動かす毎に1段ずつ変速を行う変速機構を持つものは、基本的には従来の自動変速装置と変わるところはなく、シフトラグ、すなわち変速ロスがあり、効率は良くない。
【0004】
本発明は上記従来のシーケンシャルシフト変速装置の問題点を解決しようとするものである。即ち本発明の目的は、シーケンシャルシフト変速装置の一般への普及を妨げる一因となっているギヤシフトカムを任意一定角度回転保持する送り装置を、電子.油圧制御等を用いず、簡単な構造でしかも機械的な動きのみにより成立させることにより、送り装置自体を従来のものより遥かに軽量、コンパクトにし、安価に提供することにある。
加えて、上記のようなシーケンシャルシフト機構により車両の前進時の変速を可能としながら、車両のリバース(後退)の際にも同じシフトレバーの操作で行なうことができる簡易な機構について検討した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動車用手動変速機のシフト機構は、駆動軸の回転比を複数のギヤの噛み合せの選択によって制御するシーケンシャルシフトタイプの変速機であって、噛み合うギヤを各噛み合い部に対応させた選択ピンとそれに対峙したカム溝により選択制御する手動変速機において、複数のカム溝を有するギヤシフトカムをシフトレバーの前方又は後方への揺動により回転させるために設けた伝動手段にラチェットを設け、シフトレバーに連結させた変速操作軸に変速操作のいずれかの方向でそれぞれラチェットに噛み合う逆方向の一対のラッチを設け、シフトレバーの前後いずれか一方向への揺動のみにより順次変速を可能にしたことを特徴とする。
【0006】
より具体的には、ギヤシフトカムを任意一定角度回転保持するこのシフト機構は、レバーの前方または後方への直線的な動きを回転運動へ変換し、ラチェットを任意一定角度づつ送ると共に、ラッチの形状、加えてラチェットの歯を押圧するピンとピンを付勢するスプリングとを設けた場合にはピンとスプリングの作用によりシフトレバーを中立位置に戻したとしてもラチェットは任意一定角度送られたままになる。しかもシフトレバーを中立位置より前方又は後方のどちらへ動かしたとしてもこの動きが成立することを特徴とする送り装置である。この動きをギヤシフトカムへ伝えることによって、シフトレバーを前方または後方へ1回動かす毎に1段ずつ変速を行うことが可能となる。
【0007】
本発明は更に、上記のような駆動軸の回転比を複数のギヤの噛み合いによって選択制御するシーケンシャルシフトタイプの変速機において、後退ギヤへの駆動ギヤの切換えピンをシフトレバーの左右方向への傾斜により連携可能とすると共に、シフトレバーの前方又は後方への揺動時にはシフトレバーの左右方向への傾斜を不能にするロック手段を設けたことを特徴とする自動車用手動変速機のシフト機構とした。ロック手段は、シフトレバーに上下動可能に取り付けた安全ピンからなり、この安全ピンは、下端部がシフトレバーの前後動間隙内へ挿入することにより、前記シフトレバーが前後にのみ揺動可能としながら左右に傾斜できないようにする。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の自動車用手動変速機のシフト機構を備えた変速装置の平面図である。図2は同変速装置のギヤシフトカムとシフトレバー部分を抽出した平面図である。図3〜図5は図1中A−A部に相当するシフトレバーの前方への揺動によるラチェットの送りの様子を示す縦断面図である。
【0009】
図示した変速機は、入力側(エンジン側)駆動軸1と出力側(車輪側)駆動軸2の回転比を複数のギヤからなるギヤ群3の内の任意なギヤの噛み合せの選択によって制御するシーケンシャルシフトタイプの公知の変速機である。噛み合うギヤは各噛み合い部に対応させて設けた選択ピン4a〜4dとそれに対峙したカム溝5a〜5dにより選択制御する手動変速機である。カム溝5a〜5dは円筒カムであるギヤシフトカム5に直線部とわん曲部からなる溝を設けた構造である。
【0010】
この複数のカム溝5a〜5dを有するギヤシフトカム5をシフトレバー6の前方又は後方への揺動により回転させるために、運転席の側部に設けたシフトレバー6から変速機に達するまで変速操作軸7を設けている。変速操作軸7によりギヤシフトカム5を任意に一定角度回転させるために伝動手段として変速操作軸7とほぼ直角に伝動軸8を設け、この伝動軸8によって変速操作軸7とほぼ平行なギヤシフトカム5を回転させる。その為に、図3〜図5にもみられるように、伝動軸8にラチェット9を設け、変速操作軸7に変速操作のいずれかの方向でそれぞれラチェット9に噛み合う逆方向の一対のラッチ10a,10bを設けている。また、伝動軸8の他方はベベルギヤ11aを設けて、ギヤシフトカム5に設けたベベルギヤ11bと噛み合っている。
【0011】
ここで、シフトレバー6の一方向への揺動のみにより順次変速を行なうシフト機構を図3〜図5によって詳細に説明する。
この実施例の装置では、ラチェット9に対してケーシング12側からスプリング15で付勢したピン13を押圧させている。また、2個のラッチ10a,10bはそれぞれスプリング14a,14bでラチェット9側へ付勢している。図3を中立位置とすると、図4のように中立位置より前方ヘシフトレバー6を動かした時、スプリング14aによりラチェット9に抑圧されたラッチ10aとラチェット歯面との摩擦力の増大により、ラチェット9が回転を始める。この時ピン13がラチェット9の回転を妨げようとする力よりも、ラッチ10aがラチェット9を回転させようとする力の方がはるかに大きい。図4の位置となった時、ピン13は最上点にあり、スプリング15は最圧縮された状態となる。この位置よりラチェット9が微小角度送り方向へ回転したときより、ピン13とスプリング15との作用によりラチェット9の回転は一層加速される。このままシフトレバー6を前方へ動かして行くと、図5の状態となり任意一定角度ラチェットが送られる、この動きをギヤシフトカム5ヘ伝えることにより変速が行われる。もし、この時シフトレバーの動きを、図4の位置よりラチェットが微小角度送り方向へ回転したときに静止したとしても、ピン13とスプリング15との作用により、図5の位置へラチェットが自動的に回転する。この時、反対側のラッチ10bは変速操作軸7が移動することによる摩擦力の減少により、ラチェットの動きを妨げることなく一連の図のような動きをとる。
【0012】
シフトレバー6を前方へ動かしたままでは、次の変速操作(例えば2速から3速への変速操作)への移行が行えないので、シフトレバー6を中立位置へ戻す必要がある、この時の動きを以下に説明する。
図5の状態よりシフトレバー6を後方(図は右方)へ動かすとラチェット9とラッチ10aとが接触する。このスプリング14aにより抑圧されたラッチ10aが摩擦力によりラチェット9を回転させようとする力よりも、ピン13がラチェット9の回転を止めようとする力の方が遥かに大きいため、ラチェット9は回転することなくラッチ10aのみが移動する。この時、反対側のラッチ10bはラチェットの回転には影響を及ぼさない位置にある。シフトレバーが中立位置に戻った時には、スプリング力により、ラッチも中立位置へ復帰する。
【0013】
シフトレバー6を後方へ動かし逆方向への送り作業(例えば5速から4速への変速)を行なう場合も、ラッチが同様の動きをしラチェットの送り作業を行なうことにより変速が可能となる。本発明のシフト機構では、ラッチとラチェット歯面に生ずる摩擦力によりラッチの直線的な動きをラチェット9の回転運動に変えている。この摩擦力は変速操作軸がラッチをラチェットに押し付けようとする力により増大する。ラッチをラチェットに押圧しているスプリングは予圧力を与え、送り作業のきっかけを与えるためのものであるため弱い力でも良い。
【0014】
上記のような駆動軸の回転比を複数のギヤの噛み合いによって選択制御するシーケンシャルシフトタイプの変速機において、後退ギヤへの駆動ギヤの切換えも同一のシフトレバー6の操作によることとした。その構造を更に詳細に説明する。図6〜図8は上述したシフトレバー6を前後に揺動させている際のシフトレバーの軸支状態を示す。図6は図3中B−B相当断面図、図7は図8中D−D断面図、図8は図6中C方向から見た側面図である。シフトレバー6は車両側へ固定するベース16から起立した軸受に支持された軸17に左右に傾斜可能にピン18で取り付けている。従って前後に揺動かつ左右に傾斜可能である。前述した変速操作軸7は前後に移動可能なシフタ19に端部が固定されており、このシフタ19にはピン係合穴20aがあって、車両が通常の前進又は停止時にはシフトレバー6の下端に設けた切換えピン21がシフタ19のピン係合穴20aに係止している。この状態のとき、前述した変速操作軸7をシフトレバー6で操作可能である。また、シフトレバー6にはロック手段として安全ピン22を上下動可能に取り付けており、この安全ピン22の下端部がシフトレバー6の前後動間隙23内へ挿入されているのでシフトレバー6は前後にのみ揺動可能で左右には傾斜できない。
【0015】
後退ギヤへの駆動ギヤの切換え時の様子は図9,図10に示す。安全ピン22を上方へ上げてシフトレバー6の前後動間隙23内から抜き取ると、図10のようにシフトレバー6は左右方向へ傾斜可能となり、後退切換え軸24の端部を固定しているシフタ25のピン係合穴20bに切換えピン21が係止し連携して、後退ギヤへの駆動ギヤの切換えが可能となるのである。
【0016】
【発明の効果】
以上で明かなように、本発明の自動車用手動変速機のシフト機構は従来のものに比べて、機械的な動きのみの簡単な構造で構成できるという効果を奏する。
即ち、従来のシーケンシャルシフトタイプの変速機は、ギヤシフトカムを任意一定角度回転保持する送り装置に電子制御や油圧制御等を用いていた。この送り装置が大変複雑なため容積が嵩むと共に、重量自体もかなりのものになってしまう、しかも高価であった。これに対して上記の如く本発明のギヤシフトカムを任意一定角度回転させ保持する機構は、機械的な動きのみの簡単な構造でできる。
従って本発明は、ギヤシフトカムを任意一定角度回転させ保持する送り装置を、従来のものよりはるかに簡単な構造で、しかも軽量、コンパクトそして安価に製作することにより、シーケンシャルシフトタイプの変速機の一般への普及を進めることが可能となるものである。しかも、同一のシフトレバーの操作によって後退も行なわれ、かつ、ロック手段を設けているので安全である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用手動変速機のシフト機構を備えた変速装置の平面図である。
【図2】同変速装置のギヤシフトカムとシフトレバー部分を抽出した平面図である。
【図3】図1中A−A部に相当するシフトレバーの前方への揺動によるラチェットの送りの様子を示す中立時の縦断面図である。
【図4】シフトレバーの前方への揺動によるラチェットの送りの様子を示す縦断面図である。
【図5】ラチェットの送りを完了した時の様子を示す縦断面図である。
【図6】図3中B−B相当断面図である。
【図7】図8中D−D断面図である。
【図8】図6中C方向から見た側面図である。
【図9】後退ギヤへの駆動ギヤの切換え時の図6中E方向から見た側面図である。
【図10】後退ギヤへの駆動ギヤの切換え時の様子を示す図7相当断面図である。
【符号の説明】
1 入力側(エンジン側)駆動軸
2 出力側(車輪側)駆動軸
3 ギヤ群
4a〜4d 選択ピン
5 ギヤシフトカム
5a〜5d カム溝
6 シフトレバー
7 変速操作軸
8 伝動軸
9 ラチェット
10a,10b ラッチ
13 ピン
14a,14b スプリング
15 スプリング
16 ベース
17 軸
18 ピン
19 シフタ
20a,20b ピン係合穴
21 切換えピン
22 安全ピン
23 前後動間隙
24 後退切換え軸
Claims (2)
- 駆動軸の回転比を、噛み合うギヤを各噛み合い部に対応させた選択ピンとそれに対峙したカム溝により選択制御するシーケンシャルシフトタイプの自動車用手動変速機のシフト機構において、シフトレバーは、変速操作軸を連結させ、前後いずれか一方向への揺動のみにより順次変速を可能にし、後退ギヤへの駆動ギヤの切換えピンをシフトレバーの左右方向への傾斜により連携可能とすると共に、シフトレバーの前方又は後方への揺動時にはシフトレバーの左右方向への傾斜を不能にするロック手段を設けたことを特徴とする自動車用手動変速機のシフト機構。
- ロック手段は、シフトレバーに上下動可能に取り付けた安全ピンからなり、該安全ピンは、下端部がシフトレバーの前後動間隙内へ挿入することにより、前記シフトレバーが前後にのみ揺動可能としながら左右に傾斜できないようにする請求項1記載の自動車用手動変速機のシフト機構。
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