JP4253902B2 - 多翼遠心ファン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気清浄装置などに用いられる高圧少風量型の多翼遠心ファンに関するもので、特にその羽根車およびスクロールケーシングの形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の技術としては、特開平8ー284886号公報に記載されているものがある。以下、その構成について図6を用いて説明する。
【0003】
同図(a)、(b)に示すように、多翼遠心ファンの羽根車101は円板102と、円板102に対して平行にかつ同心に配設された円環部104と、円板102と円環部104との間に周方向に互いに間隔を隔てて放射状に配設された複数の羽根103とを備え、円環部104の内周縁は羽根103の径方向内端よりも径方向外方に位置決めされている。
【0004】
上記構成により流体の吸い込み量の増大を図り、羽根間流路の円環部側での流体の剥離を抑制しようとしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、羽根車101の吹き出し方向が径方向に限られるため、羽根間流路で通風抵抗が最も高い円板102側での流路長が相対的に長く、この領域での通風抵抗が高いという課題を有していた。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、羽根間流路の円板側の通風抵抗を減少させて、風量性能を向上させた多翼遠心ファンを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の多翼遠心ファンは、円板と、円板の中心軸に対して放射状に円板の外周部に配設された複数の羽根と、羽根の円板と接合する部分の反対側の端部を固定する円環部とを備え、羽根の外周側方向と円板側方向の両方から吹き出しができるようにした羽根車と、羽根車を収納するスクロールケーシングとを有するもので、これによって羽根車の円板側方向からの吹き出しをスクロールケーシングの円板側空間に誘引するようにしたものである。
さらに、前記スクロールケーシングの羽根車中心軸を通る断面形状において、前記スクロールケーシングにおける吸い込み口側と反対側の側面における前記羽根の円板側端部の外縁より前記羽根車中心軸側の位置から外周縁までの部分を吹き出し口に向かうにつれて徐々に軸方向に拡大させたもので、羽根車の円板側方向からの吹き出しをスクロールケーシングの拡大部に誘引し易くし、流れを軸方向で吹き出し口に対し拡大していくことにより、風量性能を向上することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1記載の発明は、円板と、円板の中心軸に対して放射状に円板の外周部に配設された複数の羽根と、羽根の円板と接合する部分の反対側の端部を固定する円環部とを備え、羽根の外周側方向と円板側方向の両方から吹き出しが可能としたことを特徴とする羽根車と、この羽根車を収納するスクロールケーシングとを有し、前記スクロールケーシングの羽根車中心軸を通る断面形状において、前記スクロールケーシングにおける吸い込み口側と反対側の側面における前記羽根の円板側端部の外縁より前記羽根車中心軸側の位置から外周縁までの部分を吹き出し口に向かうにつれて徐々に軸方向に拡大させたことを特徴としたものである。
【0009】
そしてこの構成により、羽根車の円板側方向からの吹き出しをスクロールケーシングの円板側空間に誘引するようにしたものであり、羽根の円板側方向からの吹き出しが可能となり、円板側での流路長が短くなるため、羽根間流路の通風抵抗を減少することができる。また、羽根車の円板側方向からの吹き出しをスクロールケーシングの円板側空間に誘引することにより、風量性能を向上することができる。
【0011】
またこの構成により、羽根車の円板側方向からの吹き出しをスクロールケーシングの拡大部に誘引し易くし、流れを軸方向で吹き出し口に対し拡大していくことにより、風量性能を向上することができる。
【0012】
また請求項2記載の発明は、前記スクロールケーシングの側面を、側面と円板の外周線と交わる部分から一定の角度でスクロールケーシングの外周縁に向けて傾斜させ、その傾斜角度を吹き出し口に向うにつれて徐々に拡大させたものである。
【0013】
この構成により、羽根車の円板側方向からの斜め吹き出しをスクロールケーシングの羽根車軸方向の拡大部に滑らかに誘引し、剥離を少なくすることにより風量性能を向上することができる。
【0014】
また請求項3記載の発明は、前記羽を、円板の中心軸に対して放射状に円板の外周部に設けた小羽根と、この小羽根の外周部に設けた主羽根とで構成したものである。
【0015】
この構成により、円板側からの吹き出し量を増加させ、請求項1または2の多翼遠心ファンよりもより風量性能を向上することができる。
【0016】
また請求項4記載の発明は、前記円板の外周側の厚みを中心軸側よりも小さくし、前記羽根を、円板の吸入側の面に円板の中心軸に対して放射状に設けた底羽根と、この底羽根と円板の外周部に設けた小羽根と、この小羽根の外周部に設けた主羽根とで構成したものである。
【0017】
この構成により、羽根の底羽根および小羽根と円板とが接合する面積が大きくなり、風量性能を維持しつつ、羽根の取り付け強度を強化することができる。
【0018】
また請求項5記載の発明は、前記円板の外周側の厚みを中心軸側よりも小さくし、羽根を円板の吸入側の面に円板の中心軸に対して放射状に設けた底羽根と、この底羽根と円板の外周部に設けた主羽根とで構成し、円板の外周径を主羽根の内縁径よりも大きくしたものである。
【0019】
この構成により、羽根の底羽根および主羽根と円板2とが接する面積がさらに大きくなり、羽根の取り付け強度を一層強化することができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。
【0021】
(実施例1)
図1(a)、(b)に本発明の第1の実施例における多翼遠心ファンの正面図および断面図を示す。図示のように、羽根車1は、円板2と円板2の中心軸に対して放射状に円板2の外周部に配設された複数の羽根3と羽根3の円板2と接合する部分の反対側の端部を固定する円環部4とを備えている。また、5は羽根車1を収納するスクロールケーシングで、中心部側に吸い込み口7と外周部側に吹き出し口6とを有している。
【0022】
上記構成において、羽根3の円板2側は、円板2により塞がれておらず、羽根3の円板2側方向からの吹き出しが可能となる(矢印B)。また、羽根間流路の円板2側での流路長も短くなり、通風抵抗を減少することができる。また、羽根車1の円板2側方向からの吹き出しをスクロールケーシング5と羽根車1との間の軸方向の空間(円板側空間)に誘引し、風量性能を向上することができる。
【0023】
この構成の多翼遠心ファンはHEPAフィルタ等の高通風抵抗材料を有する空気清浄装置に向いており、高圧型で必要風量が少なくてよい場合に有効である。羽根車1の円板2側方向からの吹き出しによる風量の増加は絶対値としてはあまり大きくないが、少風量型の多翼遠心ファンにおいては全体的な風量に対する寄与度は大きく、風量性能の向上が見込める。
【0024】
また、羽根車1を収納するスクロールケーシング5の羽根車中心軸を通る断面形状は、同図(a)に示すスクロールケーシング5の側面5aにおいて、線部A−A’より羽根車1の軸方向に凸状に拡大を始め、吹き出し口6に向かうにつれて徐々にその拡大率が大きくなる形状とした。ここで、Aは側面5aの外周縁に位置し、A’は主羽根3の円板2側の端部の外縁より羽根車中心軸側に位置する。これにより、羽根車1の円板2側方向からの吹き出しをスクロールケーシング5の軸方向の拡大部8に誘引し、流れを軸方向で拡大していくことにより、風量性能を向上することができる。
【0025】
(実施例2)
図2(a)、(b)に本発明の第2の実施例における多翼遠心ファンの正面図および断面図を示す。図示のように、この多翼遠心ファンにおいては、スクロールケーシング5の羽根車中心軸を通る断面形状を、スクロールケーシング5の側面5aにおいて、円板2の外周線9と交わる部分から一定の角度で吸い込み口7とは反対方向に外周縁に向かって傾斜させ、その傾斜を線部A−A’より始めて傾斜角度を吹き出し口6に向かって徐々に拡大させたものである。ここで、Aはスクロールケーシング5の外周縁に位置し、A’は側面5aが円板2の外周線9と交わる部分に位置する。この構成により羽根車1の円板2側方向からの斜め吹き出しをスクロールケーシング5の軸方向の拡大部10に滑らかに誘引し、剥離を少なくすることにより風量性能を向上することができる。また、スクロールケーシング5の容積の拡大率に対して効率よく風量性能を向上することができるため、ファンモータ周りの空間を使い、本体サイズを大きくすることなく性能の向上を図ることができる。
【0026】
(実施例3)
図3(a)、(b)に本発明の第3の実施例における多翼遠心ファンの羽根車の平面図および断面図を示す。図に示すように、この羽根車1は、円板2の外周部に放射状に小羽根11を設けて、小羽根11の外周部に主羽根12を設けたものである。円板2と小羽根11の接合部に強度を持たせるため、円板2には充分な厚みを持たせている。この構成により、円板2側からの吹き出し量を増加させ、風量性能を一層向上することができる。
【0027】
(実施例4)
図4(a)、(b)に本発明の第4の実施例における多翼遠心ファンの羽根車の平面図および断面図を示す。図示のように、この羽根車1は吸い込み口7側の円板2の外周部の厚みを中心軸部よりも小さくした段部2aを設け、段部2aに底羽根13を円板2の中心軸に対して放射状に設けて、底羽根13と円板2の外周部に円板2の中心軸に対して放射状に小羽根11を設け、さらに小羽根11の外周部に円板2の中心軸に対して放射状に主羽根12を延設したものである。この構成により、羽根3(底羽根13と小羽根11の部分)と円板2とが接合する面積が大きくなり、風量性能を維持しつつ、羽根3の取り付け強度を強化することができる。
【0028】
(実施例5)
図5(a)、(b)に本発明の第5の実施例における多翼遠心ファンの羽根車の平面図および断面図を示す。図に示すように、この羽根車1は吸い込み口7側の円板2の外周部の厚みを中心軸側よりも小さくした段部2aを設け、段部2aに底羽根13を円板2の中心軸に対して放射状に設けて、底羽根13と円板2の外周部に円板2の中心軸に対して放射状に主羽根12を設け、かつ円板2の外周径を主羽根12の内縁径よりも大きくしたものである。この構成により、羽根3(底羽根13と主羽根12の部分)と円板2とが接合する面積がさらに大きくなり、羽根3の取り付け強度を一層強化することができる。
【0029】
【発明の効果】
上記実施例から明らかなように、本発明の多翼遠心ファンは、スクロールケーシングに内蔵される羽根車の羽根を、円板の中心軸に対して放射状に円板の外周部に複数個配設することにより、羽根の外周側方向と円板側方向の両方から吹き出しを可能としたもので、これにより、羽根間流路の円板側の通風抵抗を減少することができ、風量性能を向上することができるという効果がある。また、羽根車の円板側方向からの吹き出しをスクロールケーシングの円板側空間に誘引でき、風量性能を向上することができるという効果がある。
【0030】
また本発明は、前記スクロールケーシングの羽根車中心軸を通る断面形状において、スクロールケーシングの吸い込み口側と反対側の側面を、吹き出し口に向かうにつれて徐々に外方に拡大させたものである。これにより、羽根車の円板側方向からの吹き出しをスクロールケーシングの羽根車軸方向の拡大部に誘引し、流れを軸方向で吹き出し口に対し拡大していくことにより、風量性能を向上することができるという効果がある。
【0031】
また本発明は、前記スクロールケーシングの側面を、側面と円板の外周線と交わる部分から一定の角度でスクロールケーシングの外周縁に向けて傾斜させ、その傾斜角度を吹き出し口に向うにつれて徐々に拡大させたものである。これにより、羽根車の円板側方向からの斜め吹き出しをスクロールケーシングの軸方向拡大部に滑らかに誘引し、剥離を少なくすることにより、風量性能を向上できるという効果がある。また、スクロールケーシングの容積の拡大率に対して効率よく風量性能を向上することができるため、ファンモータ周りの空間を使い、本体サイズを大きくすることなく性能の向上を図ることができる。
【0032】
また本発明は、前記羽根を、円板の中心軸に対して放射状に円板の外周部に設けた小羽根と、この小羽根の外周部に設けた主羽根とで構成したものである。これにより、円板側からの吹き出し量を増加させ、風量性能を一層向上することができるという効果がある。
【0033】
また本発明は、前記円板の外周側の厚みを中心軸側よりも小さくし、前記羽根を、円板の吸入側の面に円板の中心軸に対して放射状に設けた底羽根と、この底羽根と円板の外周部に設けた小羽根と、この小羽根の外周部に設けた主羽根とで構成したものである。これにより、羽根の底羽根および小羽根と円板とが接合する面積が大きくなり、風量性能を維持しつつ、羽根の取り付け強度を強化することができるという効果がある。
【0034】
また本発明は、前記円板の外周側の厚みを中心軸側よりも小さくし、前記羽根を円板の吸入側の面に円板の中心軸に対して放射状に設けた底羽根と、この底羽根と円板の外周部に設けた主羽根とで構成し、円板の外周径を主羽根の内縁径よりも大きくしたものである。これにより、羽根の底羽根および主羽根と円板とが接合する面積がさらに大きくなり、羽根の取り付け強度を一層強化することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明の第1の実施例を示す多翼遠心ファンの正面図
(b)は(a)のCC断面図
【図2】 (a)は同第2の実施例を示す多翼遠心ファンの正面図
(b)は(a)のCC断面図
【図3】 (a)は同第3の実施例を示す多翼遠心ファンの正面図
(b)は(a)のDD断面図
【図4】 (a)は同第4の実施例を示す多翼遠心ファンの正面図
(b)は(a)のDD断面図
【図5】 (a)は同第5の実施例を示す多翼遠心ファンの正面図
(b)は(a)のDD断面図
【図6】 (a)従来の多翼遠心ファンの平面図
(b)は(a)のEE断面図
Claims (5)
- 円板と、前記円板の中心軸に対して放射状に前記円板の外周部に配設された複数の羽根と、前記羽根の前記円板と接合する部分の反対側の端部を固定する円環部とを備え、前記羽根の外周側方向と円板側方向の両方から吹き出しが可能とした羽根車と、前記羽根車を収納するスクロールケーシングとを有し、前記スクロールケーシングの羽根車中心軸を通る断面形状において、前記スクロールケーシングにおける吸い込み口側と反対側の側面における前記羽根の円板側端部の外縁より前記羽根車中心軸側の位置から外周縁までの部分を吹き出し口に向かうにつれて徐々に軸方向に拡大させたことを特徴とする多翼遠心ファン。
- 前記スクロールケーシングの側面における円板の外周線と交わる部分から一定の角度で前記スクロールケーシングの外周縁に向けて傾斜させ、その傾斜角度を吹き出し口に向うにつれて徐々に拡大させたことを特徴とする請求項1記載の多翼遠心ファン。
- 羽根を、円板の中心軸に対して放射状に前記円板の外周部に設けた小羽根と、前記小羽根の外周部に前記円板の中心軸に対して放射状に設けた主羽根とで構成したことを特徴とする請求項1または2記載の多翼遠心ファン。
- 円板の外周側の厚みを中心軸側よりも小さくし、羽根を、前記円板の吸い込み側の面に前記円板の中心軸に対して放射状に設けた底羽根と、前記底羽根と前記円板の外周部に前記円板の中心軸に対して放射状に設けた小羽根と、前記小羽根の外周部に前記円板の中心軸に対して放射状に設けた主羽根とで構成したことを特徴とする請求項1または2記載の多翼遠心ファン。
- 円板の外周側の厚みを中心軸側よりも小さくし、羽根を、前記円板の吸い込み側の面に前記円板の中心軸に対して放射状に設けた底羽根と、前記底羽根と前記円板の外周部に前記円板の中心軸に対して放射状に設けた主羽根とで構成し、かつ前記円板の外周径を前記主羽根の内縁径よりも大きくしたことを特徴とする請求項1または2記載の多翼遠心ファン。
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