JP4246109B2 - 広口ボトル缶キャップ用アルミニウム合金板 - Google Patents
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Description
該アルミニウム合金板は、Mg:2.1%(重量%、以下同じ)超え、3.5%以下を含み、Cu:0.01〜0.20%、Mn:0.01〜0.30%、Cr:0.01〜0.05%、Zn:0.01〜0.25%、Si:0.01〜0.20%、Fe:0.01〜0.30%、Ti:0.005〜0.05%のうち1種または2種以上を含み、残部が不可避的不純物とアルミニウムからなる化学組成を有し、
上記アルミニウム合金板の元板の引張強さが210〜320MPa、耐力が160〜290MPaであり、
かつ、上記元板に対して、200℃の温度で10分間保持する熱処理を施した空焼板の引張強さが210〜320MPa、耐力が150〜280MPa、伸びが5%以上であり、
上記元板又は上記空焼板の耳率試験に使用する絞りカップの開口部に発生する耳のうち、圧延方向に対し45°方向の4箇所、及び0°、90°、180°、270°方向の4箇所に発生する耳の耳率が2.0%以下であり、かつ圧延方向に対し0°と180°方向の2箇所に発生する耳の耳率が2.0%以下であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用アルミニウム合金板にある(請求項1)。
Mgは、本発明の必須の成分であり、その含有量を2.1%超え、3.5%以下に限定することにより、強度および成形性を良好に保つことができる。
Mg含有量が2.1%以下の場合、高内圧の内容物対応あるいはゲージダウン対応には強度不足になるため、広口ボトル缶キャップ(以下、適宜、単にキャップという。)として所定の耐圧を得ることができない。また、成形したキャップにおけるネジ部の剛性向上と天面のドーミング防止効果が十分に得られないという問題もある。また、圧延方向に対し0°、90°、180°および270°方向の4箇所の耳が発達しやすくなるため、安定して低い耳率の材料を得ることが難しく、文字曲がりのしにくいキャップを量産していくことは容易ではない。そのため、後述するごとく、Mg含有量は2.5%以上であることが好ましい。
また、Mg含有量が3.5%超えの場合、強度が高すぎて、開栓時に多大な力を要するため、開栓しにくくなってしまう。そのため、後述するごとく、Mg含有量は3.0%以下が好ましい。
また、上記文字曲がりとは、平板状態で印刷を施した後にカップ状に成形するキャップの製造方法の特性上、素材の変形の仕方によって、印刷した絵柄や文字等が曲がって表示される現象のことをいう。
上記元板の引張強さ及び耐力が上記範囲にないと、空焼後に目的とする強度を得ることが困難となる。
上記空焼板の引張強さが210MPa未満の場合及び耐力が150MPa未満の場合には、成形したキャップにおいて所定の耐圧を得ることができない。一方、空焼板の引張強さが320MPaを超える場合及び耐力が280MPaを超える場合には、成形したキャップの開栓がしにくくなるという問題がある。
上記空焼板の伸びが5%未満の場合には、キャップ成形時に割れなどの成形不良が出やすくなるという問題がある。
すなわち、キャップの開栓しやすさを重視する場合には、Mg含有量は3.0%以下であり、かつ、上記元板の引張強さが210〜280MPa、耐力が160〜250MPaであると共に、上記空焼板の引張強さが210〜280MPa、耐力が150〜240MPa、伸びが5%以上であることが好ましい(請求項2)。
Cuは、材料強度に影響を及ぼす元素である。0.01%未満の場合、その効果が得られないばかりでなく、純度の高い地金を使用する必要があり、コストアップとなる。0.20%を超えての添加は、本Al−Mg系合金においては、圧延加工しにくくなる。
Mn、Cr、Zn、Feは、結晶粒微細化による成形性に影響を及ぼす元素である。それぞれ上記下限未満の場合、その効果が得られないばかりでなく、純度の高い地金を使用する必要があり、コストアップとなる。一方、上記上限を超える場合、結晶粒微細化効果は飽和するため、添加に要するコストアップを考慮すると上記上限とすることが好ましい。
Siは、MnやFeと化合物を形成し、鋳造時にAl−Mn−Fe−Si系やAl−Fe−Si系化合物等の晶出物を形成する元素である。0.01%未満の場合、純度の高い地金を使用する必要があり、コストアップとなる。0.20%を超える場合、前記晶出物が多くなり、キャップ成形性を劣化させる。
Tiは、鋳塊組織微細化による成形性向上に影響を及ぼす元素である。0.005%未満の場合、その効果が得られない。0.05%を超えると、未固溶のAl−Ti系化合物が最終製品の表面欠陥として現れやすくなる。
なお、鋳塊組織微細化剤としてAl−Ti−B中間合金を添加する場合は、Bが含有されるが、Bは0.02%以下の範囲で添加されるのが好ましい。
45°耳高さ=A、135°耳高さ=B、225°耳高さ=C、315°耳高さ=D、
45°と135°の間の最小の谷高さ=E、
135°と225°の間の最小の谷高さ=F、
225°と315°の間の最小の谷高さ=G、
315°と45°の間の最小の谷高さ=H、
耳部の平均:M45=(A+B+C+D)/4、
谷部の平均:V45=(E+F+G+H)/4とすると、
耳率=〔(M45−V45)/{(M45+V45)/2}〕×100(%)
0°耳高さ=A’、90°耳高さ=B’、180°耳高さ=C’、270°耳高さ=D’、0°と90°の間の最小の谷高さ=E’、
90°と180°の間の最小の谷高さ=F’、
180°と270°の間の最小の谷高さ=G’、
270°と0°の間の最小の谷高さ=H’、
耳部の平均:M’=(A’+B’+C’+D’)/4、
谷部の平均:V’=(E’+F’+G’+H’)/4とすると、
耳率=〔(M’−V’)/{(M’+V’)/2}〕×100(%)
カップの平均高さ=P(開口端の高さを1000点測定した平均高さ)、
0°耳高さ=Q、180°耳高さ=R、
耳部の平均:S=(Q+R)/2、
耳率={(S−P)/P}×100(%)
ダイス径33.6mm、ポンチ径33mm、ポンチ肩R1.5mmの金型を用い、供試材ブランク径55mmとして、絞り比1.67でカップ絞りを実施。
すなわち、広口ボトル缶キャップ用アルミニウム合金板の板厚は、本発明の課題であるキャップの耐圧に影響を与える。板厚が厚いほど耐圧強度は大きくなるが、省資源の点からは板厚は薄い方が好ましい。本発明では、上記のごとく高強度化を図ることによって、所定の耐圧強度を保ちながら板厚を薄くすることが可能となる。従来は、0.25mm未満の板厚は耐圧の点から困難であったが、本発明では、0.20mm以上、0.25mm未満の板厚を適用しても十分な耐圧を得ることが可能である。さらに、0.25mmの場合は、高耐圧の要求に対してより高強度化を図ることが可能となる。板厚が0.20mm未満の場合には、現行のキャップ形状では所定の耐圧強度が得られないが、技術の進歩によってキャップ形状が改良された場合は、本発明材により実用化が可能となると考えられる。
基本的な製造工程は、鋳塊を均質化熱処理した後、熱間圧延をして板を形成し、焼鈍、冷間圧延、焼鈍、冷間圧延を順次行って製品板厚とし、最後に強度の安定化のために安定化熱処理することである。なお、この安定化熱処理の前あるいは後において、脱脂、化成処理等の表面処理をすることが多い。
上記焼鈍1、2では、300〜550℃の温度に保持する条件で行う。保持温度が300℃未満の場合、最終板で所定の耳率が得られず、また、強度が高くなりすぎて成形性に劣る。保持温度が550℃超えの場合、表面が酸化しやすくなり好ましくない。なお、保持時間は特に限定しないが、連続焼鈍ラインなどによる急速加熱・急速冷却の比較的高温での焼鈍の場合、保持0〜20秒、バッチ式焼鈍炉による比較的低温での焼鈍の場合保持30分〜5時間が適当である。
(実施例1)
表1に示す化学成分を含有するアルミニウム合金鋳塊を半連続鋳造にて造塊し、表面の偏析層を切削後、500℃で8時間保持する均質化熱処理し、均質化熱処理炉から出してすぐに熱間圧延を開始した。熱間圧延は、板厚3mmで終了し、焼鈍を行うことで再結晶組織を得た後に、所定の板厚まで冷間圧延し、さらに中間焼鈍して再結晶組織とした後、50%の冷間加工度で、製品板厚まで冷間圧延し、安定化熱処理して供試材とした。
<機械的性質>
JIS5号試験片にて、引張試験した。
ダイス径33.6mm、ポンチ径33mm、ポンチ肩R1.5mmの金型を用い、供試材ブランク径55mmとして、絞り比1.67でカップ絞りを実施。
耳率は、前述の条件により成形したカップを、前述の式から、45°方向4箇所(A方向)の耳の耳率、あるいは0°、90°、180°、270°方向4箇所(B方向)の耳の耳率、及び0°と180°方向2箇所の耳の耳率を測定した。
供試材板面を電解研磨し、偏光顕微鏡で結晶粒を観察した。ASTMカードを用いて、比較法から、結晶粒径を求めた。
文字曲がりは、キャップ開口端部から3〜5mmの位置に文字が来るように、絞り前のブランクに10文字の印刷をし、直径38mmより絞り比が厳しい直径28mmPPキャップ用カップを絞り成形し、文字曲がりを目視観察して評価した。
<キャップ成形性>
成形後のキャップ用のカップの外観において、割れ、しわ、肌荒れ等の欠陥の有無を目視確認した。
表3に示すMgの含有量が本発明の請求範囲外である成分を有するアルミニウム合金鋳塊を、前述の実施例1と同じ条件で製造し、供試材C1、C2を得た。
表4から知られるように、供試材C1は、Mg量が本発明の下限未満であるので、高強度を得ることができず、高耐圧のかかる製品には適さない。
供試材C2は、Mg量が本発明の上限を超えるため、強度が高すぎ、開口力が高くなり、開栓しにくいキャップとなった。また、45°方向4箇所に発生する耳の耳率も2%を超え、文字曲がりが発生し、適さない。
Claims (4)
- 塗装・印刷後に、直径28mmを超える円筒状のカップに成形し、該カップの耳部をトリミングした後、裾部にミシン目を加工し、その後、内容物が充填された飲料容器のネジ部に巻き締めされる広口ボトル缶キャップ用のアルミニウム合金板であって、
該アルミニウム合金板は、Mg:2.1%(重量%、以下同じ)超え、3.5%以下を含み、Cu:0.01〜0.20%、Mn:0.01〜0.30%、Cr:0.01〜0.05%、Zn:0.01〜0.25%、Si:0.01〜0.20%、Fe:0.01〜0.30%、Ti:0.005〜0.05%のうち1種または2種以上を含み、残部が不可避的不純物とアルミニウムからなる化学組成を有し、
上記アルミニウム合金板の元板の引張強さが210〜320MPa、耐力が160〜290MPaであり、
かつ、上記元板に対して、200℃の温度で10分間保持する熱処理を施した空焼板の引張強さが210〜320MPa、耐力が150〜280MPa、伸びが5%以上であり、
上記元板又は上記空焼板の耳率試験に使用する絞りカップの開口部に発生する耳のうち、圧延方向に対し45°方向の4箇所、及び0°、90°、180°、270°方向の4箇所に発生する耳の耳率が2.0%以下であり、かつ圧延方向に対し0°と180°方向の2箇所に発生する耳の耳率が2.0%以下であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用アルミニウム合金板。 - 請求項1において、Mg含有量は3.0%以下であり、かつ、上記元板の引張強さが210〜280MPa、耐力が160〜250MPaであると共に、上記空焼板の引張強さが210〜280MPa、耐力が150〜240MPa、伸びが5%以上であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用アルミニウム合金板。
- 請求項1において、Mg含有量は2.5%以上であり、かつ、上記元板の引張強さが250〜320MPa、耐力が200〜290MPaであると共に、上記空焼板の引張強さが250〜320MPa、耐力が190〜280MPa、伸びが5%以上であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用アルミニウム合金板。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記アルミニウム合金板の板厚が0.20〜0.25mmであることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用アルミニウム合金板。
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