JP4245285B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、リチウム二次電池に係り、特に高温に曝される用途に用いられるリチウム二次電池に関し、さらに詳しくはリフローはんだ付けによって基板に装着される基板装着用リチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池は、小型且つ軽量で、エネルギー密度が高く、また保存特性に優れていることから、従来より、各種エレクトロニクス機器の主電源や、メモリーバックアップ用電源として広く使用されている。
【0003】
ここで、リチウム二次電池をメモリーバックアップ用電源として使用するにあたっては、このリチウム二次電池が長期間に亘って安定して動作するように、リチウム二次電池をプリント基板等の基板に直接実装する方法が広く採用されている。そして、このようにプリント基板等の基板にリチウム二次電池を実装させるにあたっては、リチウム二次電池の外部端子面にスポット溶接やレーザー溶接等により電流取出し用の金属製リード板の一端部を取り付け、この金属製リード板の他端部をプリント基板等の基板に設けられた端子孔に挿入させたり、バターン表面上に置いた後、はんだ付けすることが行われている。
【0004】
ここで、上記のようにリチウム二次電池の外部端子面に取り付けられた金属製リード板の他端部を基板にはんだ付けするにあたり、個々にはんだ付けする作業は面倒であり、生産性が悪くなって、コストが高く付く等の問題があった。このため、近年においては、リチウム二次電池等の電子部品を取り付ける基板の部分にクリームはんだを塗布し、クリームはんだの塗布面にリチウム二次電池等の電子部品を載置した後、リチウム二次電池等の電子部品を基板と一緒にリフロー炉に導き、このリフロー炉内において230℃〜270℃程度の高温で短時間加熱してはんだを溶融させ、リチウム二次電池等の電子部品を基板に取り付ける自動ソルダリングが試みられている。
【0005】
しかし、リチウム二次電池を基板と一緒にリフロー炉に導いて基板に装着させる場合、リチウム二次電池も230℃〜270℃程度の高温に曝されることになり、リフローはんだ付け時にリチウム二次電池における正極、負極、非水電解液、セパレータ等の電池材料間において激しく反応する。これによりリチウム二次電池の内圧が上昇して液漏れが生じたり、リチウム二次電池の内部抵抗が大きく上昇する等の問題があった。このため、近年においては、特開2000−40525号公報や、特開2000−48859号公報等に示されるように、スルホン基を有するリチウム塩を、スルホランや3−メチルスルホランを主成分とする有機溶媒に溶解させた非水電解液を用い、リフローはんだ付け時に非水電解液が気化するのを抑制して、電池の内圧が上昇するのを防止するようにしたリチウム二次電池が提案されている。
【0006】
しかし、これらの公報に示されるものにおいても、非水電解液の溶媒に用いるスルホランや3−メチルスルホランの量が適当でなかったり、スルホランや3−メチルスルホランと混合させる溶媒の種類が適当でないと、非水電解液の導電率が大きく低下してリチウム二次電池における充放電特性が悪くなったり、リチウム二次電池における高温安定性を十分に向上させることができないという問題があった。
【0007】
また、従来においては、特開2000−12078号公報等において、スルホランとジメチルカーボネートとを混合させたものを非水電解液として用いたリチウム二次電池が提案されている。
【0008】
しかし、上記の公報においては、負極を炭素材料に限定しており、リチウム二次電池における高温安定性を十分に向上させることができないという問題があった。このため、リフローはんだ付け等によってリチウム二次電池を基板に装着させることについても一切記載されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、高温に曝される用途のリチウム二次電池の高温安定性の向上、詳しくはリフローはんだ付け等によって基板にリチウム二次電池を装着させる場合におけるリチウム二次電池の高温安定性を向上することを課題とするものである。すなわち、リフローはんだ付け等によって基板にリチウム二次電池を装着させる場合に、リチウム二次電池における正極、負極、非水電解液、セパレータ等の電池材料間において反応が生じるのを抑制し、電池の内圧が上昇して液漏れが生じたり、電池の内部抵抗が大きく上昇したりすることのないリチウム二次電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、低沸点溶媒であるために、高温安定性の低いジメチルカーボネートを、スルホランと共に混合して電解液溶媒に用いることが有効であることを見出した。そして、正極と、負極と、溶質と溶媒とからなる非水電解液とを備え、上記の負極がリチウムとアルミニウムとを含む合金であり、上記の溶媒がスルホランとジメチルカーボネートとを含むことにより、特に高温安定性を向上させた本発明のリチウム二次電池を完成するに至った。
【0011】
この発明におけるリチウム二次電池のように、非水電解液にスルホランとジメチルカーボネートとを含む溶媒を用いると共に、負極にリチウムとアルミニウムを含む合金を用いると、230℃〜270℃程度の高温でのリフローはんだ付け等によって基板にリチウム二次電池を装着させる場合に、非水電解液が正極、負極、セパレータ、ガスケットと反応するのが抑制される。この結果、電池の内圧が上昇して液漏れが生じたり、電池の内部抵抗が上昇したりするのが抑制され、十分な充放電サイクル特性や充放電特性を示すようになる。
【0012】
この発明におけるリチウム二次電池において、非水電解液にスルホランとジメチルカーボネートとを含む溶媒を用いている。これは、スルホランだけでは高温安定性が高くなるが、非水電解液の粘度が高すぎて充放電特性が悪くなる。一方、ジメチルカーボネートだけでは、非水電解液の粘度が低いために充放電特性は良くなるが、高温安定性が悪くなるためである。そして、スルホランとジメチルカーボネートとを含む溶媒を用いることにより、リフローはんだ付け時に、これらの溶媒と、正極、負極、セパレータ、ガスケットとの反応が抑制される。また、ジメチルカーボネートは他の鎖状炭酸エステルのエチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートと異なり、分子内にβ−水素を持たず、β−水素脱離反応による酸化分解が起こらないため、リフローはんだ付け時の非水電解液の反応を抑制する。
【0013】
そして、負極にリチウム−アルミニウム合金を用いた場合に高温安定性が向上したのは、本発明の非水電解液とリチウム−アルミニウム合金とを共に用いると、合金上に非常に良質な被膜を生成し、この被膜が高温安定性に好影響を及ぼすためと考えられるからである。
【0014】
また、上記のように非水電解液にスルホランとジメチルカーボネートとを含む溶媒を用いるにあたり、非水電解液の高温安定性を向上させると共に非水電解液の導電率を高めるためには、溶媒中におけるスルホランの割合を3〜50体積%の範囲にすることが好ましく、より好ましくは、溶媒中におけるスルホランの割合を5〜40体積%の範囲にする。
【0015】
さらに、この発明におけるリチウム二次電池において、正極にマンガン酸化物、セパレータにポリフェニレンスルフィド、セルロース、ポリフェニレンスルフィドとセルロースの混合物、又はポリパラフェニレン、ガスケットにポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリパラフェニレンを用いた場合、これら電池材料がリフローはんだ付け時での本発明の非水電解液との反応が抑制され、より優れた高温安定性や充放電特性を示すようになる。
【0016】
正極にマンガン酸化物を用いた場合に高温安定性が向上したのは、マンガン酸化物は他の遷移金属酸化物に比べて高温状態で安定であるために酸素の放出量が少なく、本発明の非水電解液の酸化を促進しないためと考えられるからである。そして、セパレータにポリフェニレンスルフィド、セルロース、ポリフェニレンスルフィドとセルロースの混合物、又はポリパラフェニレンを、ガスケットにポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリパラフェニレンを用いた場合に高温安定性が向上したのは、リフローはんだ付け時に非水電解液との反応が低かったためと考えられる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態に係るリチウム二次電池を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明におけるリチウム二次電池は、特に、下記の実施形態に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0018】
この実施形態におけるリチウム二次電池においては、図1に示すように、正極1と負極2との間に非水電解液を含浸させたセパレータ3を介在させた状態で、正極ケース4aと負極ケース4bとで構成される電池ケース4内に収容している。正極1を正極集電体5を介して正極ケース4aに接続させると共に、負極2を負極集電体6を介して負極ケース4bに接続している。そして、上記の正極ケース4aと負極ケース4bとを絶縁パッキングであるガスケット7により電気的に絶縁させた状態で、正極ケース4aをかしめて封止させ、扁平なコイン型リチウム二次電池を得ている。
【0019】
ここで、この実施形態に係るリチウム二次電池において、上記の正極1としては、正極活物質と導電剤と結着剤とを混合させて成形したものが用いられる。
【0020】
そして、上記の正極活物質としては、リチウム二次電池において一般に使用されている公知の遷移金属酸化物を用いることができ、例えば、チタン酸化物、バナジウム酸化物、マンガン酸化物、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、ニオブ酸化物、モリブデン酸化物等を用いることができるが、そのなかでマンガン酸化物を用いることが好ましい。
【0021】
また、正極1に用いる上記の導電剤としては、リチウム二次電池において一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、鱗片状黒鉛や土状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維等を用いることができる。ここで、この発明の電池における充放電特性をさらに向上させるためには、上記の導電剤として、黒鉛とアセチレンブラックとを合わせて用いることが好ましく、特に、黒鉛とアセチレンブラックとを3/7〜7/3の重量比で混合させたものを用いることが好ましい。
【0022】
また、正極1に用いる上記の結着剤としても、リチウム二次電池において一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロリド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレンプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンタポリマー、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、フッ素ゴム等を用いることができる。但し、リフローはんだ付け時に230℃〜270℃程度に加熱されるため、高温安定性の高いポリフルオロエチレンプロピレンを用いることが好ましく、特に、このポリフルオロエチレンプロピレンの添加量を1〜10重量%の範囲にすることが好ましい。
【0023】
また、負極2としては、リフローはんだ付け時に非水電解液との反応を抑制するため、リチウムとアルミニウムとを含む合金を用いる。なお、リチウムとアルミニウムとの他に、高温安定性と充放電特性とを低下させない範囲において、鉛、スズ、マグネシウム、マンガン等の他の元素を含んでいてもよい。
【0024】
また、上記のセパレータ3としては、リフローはんだ付け時に非水電解液との反応を抑制するため、ポリフェニレンスルフィドを用いることが好ましい。なお、高温安定性と充放電特性とを低下させない範囲において、他の熱安定性の高い樹脂を混合することや、強度を補強するために無機繊維やセルロース樹脂を混合することも可能である。また、セルロースを単独で用いることも可能である。さらに、ポリパラフェニレンを用いることも可能である。
【0025】
また、このセパレータ3に含浸させる非水電解液としては、スルホランとジメチルカーボネートとを含む溶媒に適当な溶質を溶解させたものを用いるようにする。
【0026】
ここで、この非水電解液の溶媒としては、上記のスルホランとジメチルカーボネートの他に、高温安定性と充放電特性とを低下させない範囲において、エチレンカーボネート、γ―ブチロラクトン等の環状エステルや、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の鎖状エーテルや、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状炭酸エステルや、メチルアセテート等の鎖状エステルや、テトラヒドロフラン等の環状エーテル等を加えることも可能である。
【0027】
また、上記の非水電解液に用いる溶質としては、高温安定性に優れた溶質を使用することが好ましく、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiCF3SO3、リチウムトリフルオロメタンスルホン酸イミドLiN(CF3SO22、リチウムペンタフルオロエタンスルホン酸イミドLiN(C25SO22、リチウムトリフルオロメタンスルホン酸メチドLiC(CF3SO23等を用いるようにし、またこの溶質の濃度を、0.3〜1.5モル/リットルの範囲にすることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0モル/リットルの範囲にする。
【0028】
また、上記の電池において、上記の正極ケース4aや負極ケース4bとしては、ステンレス鋼等をプレス加工によって所定の形状に成形したものを用いるようにする。
【0029】
また、上記の正極1と正極ケース4aとの間に正極集電体5を設けて、正極1と正極ケース4aとの間の導電性を高めるにあたっては、正極ケース4aの内面に黒鉛の粉と水ガラスを混合した導電塗料等を塗布したり、ステンレス鋼やアルミニウムやチタン等で構成されたメッシュ状の集電体を設けるようにする。
【0030】
また、上記の負極2と負極ケース4bとの間に負極集電体6を設けて、負極2と負極ケース4bとの間の導電性を高めるにあたっては、負極ケース4bの内面に黒鉛の粉と水ガラスを混合した導電塗料等を塗布したり、ステンレス鋼や銅やチタン等で構成されたメッシュ状の集電体を設けるようにする。
【0031】
また、上記の絶縁パッキンであるガスケット7としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリパラフェニレンを用いると、リフローはんだ付け時に本発明の非水電解液との反応が抑制されるために好ましい。また、熱安定性を低下させない範囲においては、他の熱安定性の高い樹脂を混合することも可能である。
【0032】
【実施例】
次に、この発明の条件を満たす具体的な実施例に係るリチウム二次電池と、この発明の条件を満たさない比較例のリチウム二次電池とを比較し、この発明の実施例に係るリチウム二次電池が優れていることを明らかにする。
【0033】
(実施例1)
実施例1においては、下記のようにして作製した正極と負極と非水電解液とを用い、前記の図1に示すような扁平なコイン型リチウム二次電池を得た。
【0034】
[正極の作製]
正極を作製するにあたっては、水酸化リチウムLiOHと酸化ホウ素B23と二酸化マンガンMnO2とを、Li:B:Mnの原子比が0.50:0.01:1.00になるように混合し、これを空気中において400℃で20時間熱処理し、これを粉砕して、リチウムとホウ素とマンガンとの複合酸化物からなる正極活物質を得た。そして、この正極活物質と、黒鉛とアセチレンブラックとを重量比1:1で混合した導電剤と、ポリフルオロエチレンプロピレンとを、90:5:5の重量比になるように混合し、その混合物を直径4mm、厚さ1.2mmの円板状に成型した後、真空中において250℃で2時間乾燥させて正極を作製した。
【0035】
[負極の作製]
負極を作製するにあたっては、リチウム−アルミニウム合金を電気化学的に作製し、このリチウム−アルミニウム合金を直径4mm、厚さ0.3mmの円板状に打ち抜いて負極を作製した。
【0036】
[非水電解液の作製]
非水電解液を作製するにあたっては、スルホラン(SL)とジメチルカーボネート(DMC)とを30:70の体積比で混合させた溶媒を用い、この溶媒に、溶質のリチウム塩としてリチウムトリフルオロメタンスルホン酸イミドLiN(CF3SO22を0.75モル/リットルの濃度になるように溶解して非水電解液を作製した。
【0037】
そして、前記の図1に示すように、ステンレス製の負極ケース4bの内面に溶着させたステンレス製の網からなる負極集電体6の上に、上記の負極2と、ポリフェニレンスルフィド製のセパレータ3と、上記の正極1とを順々に重ね、ポリフェニレンスルフィド製の絶縁パッキングであるガスケット7を負極ケース4bの内周側に装着した。そして、上記の非水電解液を注入した後、黒鉛の粉と水ガラスとを混合した導電塗料が塗布されてなる正極集電体5が内面に形成されたステンレス製の正極ケース4aを被せて、上記の正極1と正極集電体5とを接触させた。その後、この正極ケース4aをかしめ封止して、実施例1のリチウム二次電池を作製した。
【0038】
(比較例1)
比較例1においては、上記の実施例1における非水電解液の作製において、溶媒として、ジメチルカーボネート(DMC)だけを用いるようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例1のリチウム二次電池を作製した。
【0039】
(比較例2)
比較例2においては、上記の実施例1における非水電解液の作製において、溶媒として、スルホラン(SL)とジエチルカーボネート(DEC)とを80:20の体積比で混合させた溶媒を用いるようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例2のリチウム二次電池を作製した。
【0040】
(比較例3)
比較例3においては、上記の実施例1における非水電解液の作製において、溶媒として、スルホラン(SL)とプロピレンカーボネート(PC)とを80:20の体積比で混合させた溶媒を用いるようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例3のリチウム二次電池を作製した。
【0041】
(比較例4)
比較例4では負極にリチウム金属を用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例4のリチウム二次電池を作製した。
【0042】
(比較例5)
比較例5では負極に炭素材料を用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例5のリチウム二次電池を作製した。炭素材料負極は、天然黒鉛粉末と、ポリフルオロエチレンプロピレンとを、95:5の重量比になるように混合し、その混合物を直径4mm、厚さ1.2mmの円板状に成型した後、真空中において250℃で2時間乾燥させたのちに、正極と対抗する面に直径4mm、厚さ0.3mmの円板状に打ち抜いたリチウムをはりつけ、作製した。
【0043】
そして、実施例1及び比較例1〜5のそれぞれ5個の電池を180℃で1分間余熱させた後、最高温度が250℃、出入口付近の最低温度が180℃になったリフロー炉内を1分間かけて通過させ、その後、これらを室温まで自然冷却させて、液漏れの有無を調べ、それぞれ5個の電池中において液漏れした電池の個数を下記の表1に示した。
【0044】
次いで、液漏れしていない電池だけを用い、それぞれ電圧及び抵抗の検査を行ってショート等の不備のないことを確認した後、各電池を0.1mAの定電流で充電終止電圧3.0Vまで充電させた後、0.1mAの定電流で放電終止電圧2.0Vまで放電させ、これを1サイクルとして充放電を繰り返して行い、放電容量が1サイクル目の放電容量の半分になるまでのサイクル数を求め、その結果を下記の表1に示した。
【0045】
【表1】
Figure 0004245285
【0046】
この結果から明らかなように、非水電解液にスルホラン(SL)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶媒及び負極にリチウムーアルミニウム合金を用いた実施例1のリチウム二次電池は、非水電解液にスルホラン(SL)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶媒を用いていない比較例1〜3及び負極にリチウムーアルミニウム合金を用いていない比較例4、5のリチウム二次電池に比べて、リフローによる液漏れが少なくなると共に、優れた充放電サイクル特性を示した。
【0047】
実施例2〜6においては、上記実施例1における正極活物質、負極、セパレータ、ガスケットをそれぞれ変えたときの特性を調べた。
【0048】
(実施例2)
実施例2では正極活物質にバナジウム酸化物(V25)を用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例2のリチウム二次電池を作製した。
【0049】
(実施例3)
実施例3ではセパレータにポリパラフェニレンを用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例3のリチウム二次電池を作製した。
【0050】
(実施例4)
実施例4ではセパレータにセルロースを用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例4のリチウム二次電池を作製した。
【0051】
(実施例5)
実施例5ではガスケットにポリエーテルエーテルケトンを用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例5のリチウム二次電池を作製した。
【0052】
(実施例6)
実施例6ではガスケットにポリパラフェニレンを用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例6のリチウム二次電池を作製した。
【0053】
そして、上記のようにして作製した実施例2〜6の各リチウム二次電池についても、上記の実施例1のリチウム二次電池の場合と同様にして、リフローはんだ付けによる液漏れの有無を調べ、それぞれ5個の電池中において液漏れした電池の個数を下記の表2に示した。また液漏れしていない電池を用い、上記の実施例1のリチウム二次電池の場合と同様にして、それぞれ放電容量が1サイクル目の放電容量の半分になるまでのサイクル数を求め、その結果を下記の表2に示した。
【0054】
【表2】
Figure 0004245285
【0055】
この結果から明らかなように、正極にマンガン酸化物を用い、負極にリチウムとアルミニウムとを含む合金を用い、セパレータにポリフェニレンスルフィドを用い、ガスケットにポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンを用いたリチウム二次電池においては、高い高温安定性を有すると共に、より優れた充放電サイクル特性を示した。
【0056】
(実施例7.1〜7.6)
これらの実施例7.1〜7.6においては、上記の実施例1における非水電解液の作製において、溶媒に用いるスルホラン(SL)とジメチルカーボネート(DMC)との体積比を変更し、SLとDMCとの体積比を、実施例7.1では1:99に、実施例7.2では3:97に、実施例7.3では5:95に、実施例7.4では40:60に、実施例7.5では50:50に、実施例7.6では70:30にし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例7.1〜7.6の各リチウム二次電池を作製した。
【0057】
そして、上記のようにして作製した実施例7.1〜7.6の各リチウム二次電池についても、上記の実施例1のリチウム二次電池の場合と同様にして、リフローはんだ付けによる液漏れの有無を調べ、それぞれ5個の電池中において液漏れした電池の個数を下記の表2に示した。また液漏れしていない電池を用い、上記の実施例1のリチウム二次電池の場合と同様にして、それぞれ放電容量が1サイクル目の放電容量の半分になるまでのサイクル数を求め、その結果を下記の表3及び図2に示した。
【0058】
【表3】
Figure 0004245285
【0059】
この結果から明らかなように、非水電解液にスルホラン(SL)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶媒を用いた実施例のリチウム二次電池において、非水電解液中におけるスルホラン(SL)の割合が3〜50体積%の範囲になった実施例7及び実施例7.2〜7.5の各リチウム二次電池においては、リフローはんだ付けによる液漏れが抑制されて高温安定性に優れると共に、充放電サイクル特性も向上しており、さらにスルホラン(SL)の割合が5〜40体積%の範囲になった実施例7及び実施例7.3〜7.4の各リチウム二次電池においては、さらに充放電サイクル特性が向上していた。
【0060】
なお、上記の実施形態及び各実施例においては、扁平なコイン型になったリチウム二次電池を示したが、リチウム二次電池の形状や大きさ等は限定されるものではない。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明におけるリチウム二次電池においては、非水電解液にスルホランとジメチルカーボネートとを含む溶媒を用いると共に、負極にリチウムとアルミニウムとを含む合金を用いるようにしたため、高温安定性が向上した。そして、このリチウム二次電池を230℃〜270℃程度の高温でのリフローによって基板に装着させるような場合においても、非水電解液が正極や負極、特に負極と反応するのが抑制されるようになった。
【0062】
この結果、この発明におけるリチウム二次電池をリフローはんだ付け等によって基板に装着させた際に、電池の内圧が上昇して液漏れが生じたり、電池の内部抵抗が上昇したりするのが抑制され、十分な高温安定性と充放電特性を示すようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態に係るリチウム二次電池の内部構造を示した断面説明図である。
【図2】この発明の実施例1及び実施例7.1.〜7.6の各リチウム二次電池において、非水電解液の溶媒中におけるスルホラン(SL)の割合と、サイクル回数との関係を示した図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電池ケース
4a 正極ケース
4b 負極ケース
5 正極集電体
6 負極集電体
7 ガスケット

Claims (7)

  1. 正極と、負極と、溶質と溶媒とからなる非水電解液とを備え、上記の負極がリチウムとアルミニウムとを含む合金であり、上記の溶媒がスルホランとジメチルカーボネートとを含むことを特徴とするリチウム二次電池。
  2. リフローはんだ付けによって基板に装着されることを特徴とする請求項1に記載したリチウム二次電池。
  3. 前記の正極がマンガン酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載したリチウム二次電池。
  4. 前記の電池のセパレータがポリフェニレンスルフィド、セルロース、ポリフェニレンスルフィドとセルロースの混合物、又はポリパラフェニレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載したリチウム二次電池。
  5. 前記の電池のガスケットがポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、又はポリパラフェニレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載したリチウム二次電池。
  6. 前記の溶媒中におけるスルホランの割合が3〜50体積%の範囲であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載したリチウム二次電池。
  7. 前記の溶媒中におけるスルホランの割合が5〜40体積%の範囲であることを特徴とする請求項6に記載したリチウム二次電池。
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