JP4243658B2 - 鉄道先頭車両の車体形状 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速走行する新幹線(登録商標)等の鉄道車両のうち先頭車両に好適な車体形状に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
時速270km/hあるいはそれ以上の高速性能が要求される鉄道車両では、特に先頭車両の車体先頭部の形状にいわゆる高速走行時の走行抵抗を減少させる形状とともに、トンネルに突入した際に生じる微気圧波を低減させる形状が要求される。特に高速の鉄道車両がトンネルに突入する場合に、トンネル内の限られた空間に存在する空気を先頭車両が押し込むように圧縮し、これが圧縮波となってトンネル内をほぼ音速で前方へ伝播される。この圧縮波はトンネルの出口に到達したときに出口で反射されるが、一部は爆発音(パルス状の圧力波)となってトンネル出口から外部へ放射される。このパルス状の圧力波のことを微気圧波(トンネル微気圧波)と言い、トンネルの出口付近では爆発音とともに微振動等が生じ、周辺の環境に影響を及ぼすことがある。
【0003】
そこで、近年いくつかの微気圧波を低減させる先頭車両の車体形状が提案されている。たとえば、特開平7−89439号公報に記載の発明があるが、この発明は、横断面積が一定の胴部に接合する接合部から最先端に至る先頭領域を尖らせ、先頭領域の上面側へ突出する運転室窓部(キャノピー)の前後の長さを、先頭領域の前後長さより短くし、運転室窓部の突設根元部に連接する上方肩部の横断面積を、上方肩部に隣接する隣接肩部の横断面積より小さくし、前記先頭領域における最先端寄りの横断面積急変域を除く領域のスカート部または仮想スカート部を含む横断面積を、接合部から最先端へ向かっていく程に正比例に減少させた構造に先頭部の車体を構成するものである。
【0004】
また特開平8−198105号公報に記載の発明があるが、この発明は車体先端から車体前後方向における車体横断面積が増大する先頭部を有した鉄道車両において、先頭部を先端領域と中間領域とから構成し、先端領域は最大車体横断面積の半分の断面積に相当する位置よりも先端側とし、中間領域は該先端領域よりも車体長手方向他端側とし、前記中間領域は一定の断面積変化率によって車体横断面積が変化し、かつ前記先端領域の断面積変化率を中間領域の断面積変化率よりも大きくするものである。この発明においては、前記中間領域に運転室を配置しており、この運転室部前面窓の傾斜角度を前方注視に支障のない角度としており、前記運転室前面窓の両側方部分より下方に凹み部を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載の2つの発明は、つぎのような点で大きな課題を有する。すなわち、
第1に、いずれの発明も先頭部の横断面積の変化が先頭車両の車体先端から後方の接合部(一般断面部あるいは最大横断面積部との接合部)にかけて車体横断面積が連続して緩やかに増大するように、先端から後方にかけてやや上方に傾斜する曲面形状に形成するとともに、その傾斜曲面部分が車体の前後方向にできるだけ長くなるように先端部をノーズ状に延ばしている。このため、実際の車体形状の製作に際しては、骨組みに溶接等により張り付ける板金を、ハンマー等で打ち出すことによって凹凸部などの複雑な形状を形成しているので、作業に熟練を要することはもとより、多大な時間がかかって生産性が非常に低く、製造コストが極めて高くなるうえに、車体先頭部の車体前後方向において占める長さが長くなるため、車室が制限され、乗車定員が減少するという問題がある。
【0006】
第2に、いずれの発明も先頭部の横断面積の変化が先頭車両の車体先端から後方の接合部にかけて直線的(正比例)に連続している。このため、鉄道車両がトンネル内に突入したときの、トンネル内のある位置における圧力変化(横軸を時間とし縦軸を圧力とする)は、圧力勾配が緩やかになっているとしても漸次高くなっている。一方、トンネル内を伝播する圧縮波の速度(音速に近い)は、圧力が上昇するのにしたがって速くなるから、トンネルの距離がある程度長くなると、せっかく車体の先頭部形状を工夫したことによって圧縮波の圧力を分散したにも拘わらず、分散された圧力がトンネルの出口では集合されて一度に大きな圧力のパルス状圧力波(微気圧波)となって外部へ放射され、トンネルの出口周辺において大きな爆発音が発生したり、振動等が生じたりするおそれがある。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、鉄道車両がトンネル内に突入する場合に、トンネルと車両によって発生する微気圧波を分散させて低減するための鉄道先頭車両の車体形状を提供することを目的としている。
【0008】
また、分散させて低減した圧縮波がトンネル内を車両が通過するまでに、つまりトンネル出口で集合されにくく、トンネル微気圧波を有効に低減でき、しかも外形形状を簡素化して車体の製作を容易にすることも目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために本発明に係る車体形状は、鉄道先頭車両の車体の先端より最大横断面積部となる一般断面部に至る横断面積分布において、横断面積が変化(増大)する領域を車体の前後方向に沿って複数箇所に分けて設けた鉄道先頭車両の車体形状であって、前記車体の先端部分をやや後方に傾斜させて上方に立ちあげることにより1段目の横断面積変化領域を形成したのち、横断面積をほぼ一定に保ってほぼ水平に後方に延設したのち、再びやや後方に傾斜させて上方に立ちあげることにより2段目の横断面積変化領域を形成したことを特徴とする。
【0011】
上記構成を有する請求項1又は2記載の発明によれば、図7に横断面積変化領域を車体の前後方向に沿って少なくとも2カ所に分けて設けた複数段(請求項2では2段式)車体形状と、横断面積を直線的に変化させて設けた、いいかえれば横断面積変化領域を分けずに連続して設けた車体形状との圧力変化の比較を示すように、トンネル入口から所定距離(61m)の位置で鉄道車両がトンネル内に突入する際の圧力変化から明らかに、本発明に係る複数段式(2段式)車体形状の方が圧力変化の状態が緩やかで、しかも少なくとも2段に分散されて段階的に最大車体横断面積の部分がトンネル内に入るまでの圧力(最大圧力)に達する。図7における線図Aは詳しくは、図6に示すところの車体の形状を先端部分でやや後方に傾斜させて上方に立ちあげたのち水平に後方に延ばして1段目の横断面積変化領域を形成し、車体の後端寄り(前後方向の中間位置よりやや後方)で再びやや後方に傾斜させて上方に立ちあげ2段目の横断面積変化領域を形成した車体モデルについて、圧力変化を求めたものである。ここで、計算条件について詳しく説明すると、
▲1▼ 非定常、軸対称、圧縮性および非粘性を仮定した数値流体解析(CFD解析)を用いた。
【0012】
▲2▼ 構造格子を使用したTVD型風上法・有限体積法で陽解法を適用した。
【0013】
▲3▼ 車体の先頭部を同一断面積を有する軸対称物体に、またトンネルを円形横断面からなる円筒形にそれぞれ置き換えたうえで、車体がトンネルに突入するシミュレーションを実施している。ただし、トンネルと鉄道車両(列車という)の間に相対的な運動が発生するため、計算領域を図9のようにトンネルを含む領域1と列車を含む領域2との2つに分割し、それらを相対的に移動させて計算を進めた。
【0014】
▲4▼ 計算上において列車の初期位置をトンネルの入口から20m外方(手前)の周辺に障害物のない(いわゆる明かり区間)で、その初期位置における時間をt=0と設定した。
【0015】
▲5▼ 圧力変化の観測点×は、トンネル入口から内側61mの地点のトンネル内壁上にした。
【0016】
▲6▼ 図7・図8(図7の圧力変化を時間で微分した線図)の線図を求めるための計算条件は、列車速度:275km/h(マッハ数0.225)、トンネル開口断面積:63.4m2 、列車の2段目(最大)横断面積:11.4m2 、1段目横断面積:7.9m2 (図12参照)
この結果から、先頭車両の車体先頭部がトンネルに突入する際に生じる圧縮波(圧力上昇)は、車体12 の横断面積変化領域を2段階に分散して設けたことによって低減され、この低減分の圧力が最大車体横断面積の部分がトンネルT内に突入するまで有効であり、車体12 の2段目の横断面積変化領域がトンネルT内に突入したときに従来の車体1の最大車体横断面積(一般断面部)の部分がトンネルT内に突入したときの圧力と等しくなる。
【0017】
また、第1段の圧力上昇値から最終段(図7では2段)の圧力上昇値までの時間差は、1段目横断面積変化領域と2段目横断面積変化領域との距離L(図6の線図A)/V(走行速度m/s)にほぼ等しい。このため、図6の車体例では11/16(約2/3)に低減された微気圧波が生じたのち、図7に示すように遅れて5/16(約1/3)に低減された微気圧波が生じることになる。したがって、トンネルTの出口での爆発音は小さくなるか一切鳴らなくなるかに低減され、また周辺での家屋等の振動なども低減される。なお、請求項2については後述するが、圧縮波の伝播速度は音速に近く、圧力が高くなるほど伝播速度は速くなるので、1段目横断面積変化領域と2段目横断面積変化領域との距離Lは、トンネル出口までの間に後続(2段目)の圧縮波が1段目の圧縮波に追いついて1段目と2段目の圧縮波が集合された微気圧波が生じるか否かを決定することになるため、重要な要素である。
【0018】
さらに、微気圧波のパルスの強さ(爆音の大きさ)が圧縮波の時間変化率に比例することから、図8に示すように、従来例(線図B)では最大変化率が10000Pa/sであるのに対し、本発明例(線図A)では最大変化率が6000〜7000Pa/sであるから、本発明例は従来例の2/3程度に微気圧波による爆発音を低減できると推測される。
【0019】
加えて、本発明に係る車体形状によれば、車体の横断面積変化領域を少なくとも2カ所に分けて設けることにより微気圧波低減の作用が有効に生じるから、上記後方に記載の従来技術に係る車体形状に比べて車体の設計はもとより製作が容易になる。
【0020】
請求項2に記載のように、前記1段目横断面積/前記2段目横断面積の面積比が0.6以上で、前記1段目と前記2段目の横断面積変化領域の間隔を15m以上にすることが好ましい。
【0021】
この構成により、微気圧波が図7の線図Aに示すように少なくとも2段階に分散され低減されて生じるとともに、微気圧波のパルスの強さが圧縮波の時間変化率に比例するが、図8の線図Aに示すように最大変化率が本発明例では従来例の2/3程度に低減されることから、微気圧波によるトンネル出口での爆発音の大きさを有効に低減することができる。一方、圧縮波の伝播速度は音速に近く、圧力が高くなるほど伝播速度は速くなるが、1段目と2段目の横断面積比が0.6以上で、1段目と2段目の横断面積変化領域の間隔を15m以上離しているので、たとえば図12〜図14の線図から明らかなように、列車最大横断面積が11m2 の場合に、列車速度が240km/hでトンネルの距離が15km、列車速度が270km/hでトンネルの距離が11km、列車速度が300km/hでトンネルの距離が8kmまでは、トンネル出口までの間に後続(2段目)の圧縮波が1段目の圧縮波に追いつくことが阻止され、微気圧波は1段目と2段目とに分散された状態で生じる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る鉄道先頭車両の車体形状の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例に係る先頭車両の車体形状を示すもので、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。本例の車体11 は、図1(a)に示すとおり平面視では従来の新幹線用先頭車両の車体1(図5)と同じような略弾丸形の流線形状からなっており、車体11 の上面を2段階に変化させることにより、横断面変化領域を2カ所に分けて設けている。すなわち、車体11 の先端部を曲面状に上方に立ち上げて1段目の横断面積変化領域2を形成したのち、上面を後方へほぼ水平に平坦面状に延ばし、車体11 の前後方向の中間位置付近で再び後方へ上向きに傾斜させて立ち上げ2段目の横断面積変化領域3を形成している。後述するが、図6は本例の車体11 形状に基づく計算上の車体モデルである。
【0024】
図2は本発明の第2実施例に係る先頭車両の車体形状を示すもので、図2(a)は平面図、図2(b)は側面図である。本例の車体12 は、図2(a)に示すとおり平面視では従来の新幹線用先頭車両と同じような略弾丸形の流線形状からなっており、車体12 の上面を3段階に変化させることにより、横断面変化領域を3カ所に分けて設けている。すなわち、車体の先端部を曲面状に上方に立ち上げて1段目の横断面積変化領域2を形成したのち、上面を後方へほぼ水平に平坦面状に延ばし、車体12 の前後方向の中間位置付近で後方へ上向きに傾斜させて立ち上げ2段目の横断面積変化領域3を形成している。さらに、上面を後方へほぼ水平に平坦面状に延ばし、車体12 の前後方向の中間位置より後端寄りで後方へ上向きに傾斜させて立ち上げ3段目の横断面積変化領域4を形成している。
【0025】
図3は本発明の第3実施例に係る先頭車両の車体形状を示すもので、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図である。本例の車体13 は、平面視では従来の先頭車両の車体1(図5)と同じような略弾丸形の流線形状からなっており、車体1 の下面を2段階に変化させることにより、横断面変化領域を2カ所に分けて設けている。すなわち、車体13 の先端部を曲面状に上方に立ち上げるとともに下面先端部を底上げして水平に後方へ延ばして1段目の横断面積変化領域2を形成したのち、車体13 の前後方向の中間位置付近で下面を後方へ下向きに傾斜させて降下させて2段目の横断面積変化領域3を形成している。
【0026】
図4は本発明の第4実施例に係る先頭車両の車体形状を示すもので、図4(a)は平面図、図4(b)は側面図である。本例の車体14 は第1実施例に係る車体1 の変形例で、車体14 の先端部(1段目横断面積変化領域2)の立ち上げを小さくし、図4(c)のように正面より見て円形断面の車体14 の中心より下方に円形断面の先頭部1Aを偏心させて配置している。
【0027】
さて、上記に本発明の車体構造について4つの実施例を挙げたが、いずれの実施例についても下記のような共通の作用、つまり微気圧波の低減作用がある。この低減作用が生じる根拠を、計算に基づいて作成した圧力変化あるいは圧力時間変化率にて本発明例と従来例との比較により説明する。
【0028】
図6に示すように、車体1の先頭部(先端から約6mの位置まで)を後方へ上向きに傾斜するように立ち上げて1段目横断面積変化領域2(7.9m2 )を形成したのち、横断面積を一定に保って後方へ延長し、再び後方へ上向きに傾斜するように(先端から約21mの位置から約25mの位置まで)立ち上げて2段目横断面積変化領域3(11.4m2 )を形成した形状が本発明例であり、一方、従来例は車体1の先頭部(先端から約10mの位置まで)を後方へ上向きに傾斜するように立ち上げて最大横断面積(11.4m2 )まで連続的に横断面積変化領域を形成した形状(図6の点線表示)にした。
【0029】
計算条件は、次のとおりである。すなわち、図9において、
▲1▼ 非定常、軸対称、圧縮性および非粘性を仮定した数値流体解析(CFD解析)を用いた。
【0030】
▲2▼ 構造格子を使用したTVD型風上法・有限体積法で陽解法を適用した。
【0031】
▲3▼ 車体の先頭部を同一断面積を有する軸対称物体に、またトンネルを円形横断面からなる空洞、つまり円筒形にそれぞれ置き換えたうえで、車体1がトンネルTに突入するシミュレーションな運動が発生するため、計算領域を図17のようにトンネルを含む領域1と列車を含む領域2との2つに分割し、それらを相対的に移動させて計算を進めた。
【0032】
▲4▼ 計算上において列車の初期位置をトンネルTの入口から20m外方(手前)の周辺に障害物のない(いわゆる明かり区間)で、その初期位置における時間をt=0と設定した。
【0033】
▲5▼ 圧力変化の観測点×は、トンネルTの入口から内側61mの地点のトンネル内壁上にした。
【0034】
▲6▼ 図7・8の線図を求めるための計算条件は、列車速度:275km/h(マッハ数0.225)、トンネル開口断面積:63.4m2 、列車の最大横断面積:11.4m2 、1段目断面積:7.9m2 (図7参照)
この結果から、先頭車両の車体先頭部がトンネルに突入する際に生じる圧縮波(圧力上昇)は、車体11 の横断面積変化領域を2段階に分散して設けたことによって低減され、この低減分の圧力が最大車体横断面積の部分がトンネルT内に突入するまで有効であり、車体11 の2段目の横断面積変化領域がトンネルT内に突入したときに従来の車体1の最大車体横断面積(一般断面部)の部分がトンネルT内に突入したときの圧力と等しくなる。また、第1段の圧力値(1100Pa)から最終段(図7では2段)の圧力値(1600Pa)までの時間差(約0.23sec)は、第1段目変化領域2と第2段目変化領域との距離L(図6の線図A上に表示:約18m)/V(走行速度:75m/s)にほぼ等しい。このため、図6の車体例では11/16(約2/3)に低減された微気圧波が生じたのち、図7の線図Aに示すように遅れて5/16(約1/3)に低減された微気圧波が生じることになる。したがって、図7の線図Bに示すようにトンネルTの出口に圧力1600Paの圧縮波が伝播され、大きな圧力の微気圧波が生じる従来例の車体1(図5)に比べて、本発明例の車体11 によればトンネル出口で外部に放射される微気圧波が分散されることにより爆発音が小さくなるか一切鳴らなくなるかまで低減され、また周辺での家屋等の振動なども低減される。
【0035】
また、図8は図7の圧力変化線図を時間(s)で微分して求めた線図で、時間に対する圧力の変化率を表している。
【0036】
さらに、微気圧波のパルスの強さ(爆音の大きさ)が圧縮波の時間変化率に比例することから、図8に示すように、従来例(線図B)では最大変化率が10000Pa/sであるのに対し、本発明例(線図A)では最大変化率が6000〜7000Pa/sであるから、本発明例は従来例の2/3程度に微気圧波による爆発音を低減できると推測される。
【0037】
ところで、上記したとおり圧縮波の伝播速度は音速に近く、圧力が高くなるほど伝播速度は速くなるので、トンネルの長さによっては、トンネルの入口に列車が突入する際に発生した最初(1段目)の圧縮波にトンネル出口までの間に後続(2段目)の圧縮波が追いついてしまい、横断面積変化領域を複数に分断した作用効果が期待できないおそれがあるので、これに関連する要素である1段目と2段目の横断面積比および1段目と2段目の間隔(距離)などと有効なトンネル長さの関係について説明する。
【0038】
まず、計算式について説明すると、図10に示すように、1段目列車横断面積2をS1(m2),2段目列車横断面積3をS2(m2)、トンネル横断面積をSt(m2)とし、1段目と2段目の間隔をLtrain(m)とする。一方、図11に示すように列車がトンネル内に突入する際の1段目の圧縮波による圧力上昇を△p1(Pa)、2段目の圧縮波による圧力上昇を△p2(Pa)とし、トンネルT内における圧縮波の1段目と2段目の間隔をLwave(m)とし、1段目圧縮波の伝播速度をU1(m/s)、2段目圧縮波の伝播速度をU2(m/s)とする。そして、列車速度:V(m/s)、圧縮波の影響がないところでの音速:c(m/s)、圧縮波の影響がないところでの空気密度:ρ(kg/m3)、空気の比熱比:γ、圧縮波の影響がないところでの大気圧力:p0(Pa)とすると、
○1段目の圧縮波による圧力上昇
△p1=1/2×ρV2×[1−(1−S1/St)2]/[(1−V/c)×{V/c+(1−S1/St)}]
○2段目の圧縮波による圧力上昇
△p2=1/2×ρV2×[1−(1−S2/St)2]/[(1−V/c)×{V/c+(1−S2/St)}]
○1段目圧縮波の伝播速度
U1=c×[{(γ+1)/(γ−1)}×{(1+△p1/p0)( γ -1)/2 γ −1}+1]
○2段目圧縮波の伝播速度
U2=c×[{(γ+1)/(γ−1)}×{(1+△p2/p0)( γ -1)/2 γ −1}+1]
○トンネル内における圧縮波の1段目と2段目の間隔
Lwave=(Ltrain×c)/V
続いて計算条件について説明すると、
○列車速度:240km/h,270km/h,300km/h
○列車最大横断面積:7m2,11m2,13m2
○トンネル開口断面積:63.4m2(山陽新幹線のトンネルと同一)
○列車1段目断面積/2段目断面積(比):0.3,0.35,0.4,0.45,0.5,0.55, 0.6,0.65,0.7,0.75,0.8,0.85,0.9
○列車1段目断面積/2段目断面積の間隔:5m,7.5m,10m,15m,20m,25m
計算結果は図12〜図16に線図で示すとおりである。これらの結果から、たとえば1段目と2段目の横断面積比が0.6以上で、1段目と2段目の横断面積変化領域の間隔を15m以上あければ、図12〜図14の線図に示されるように、列車最大横断面積が11m2 の場合に、列車速度が300km/hでトンネルの距離が8km、列車速度が270km/hでトンネルの距離が11km、列車速度が240km/hでトンネルの距離が15kmまでは、トンネル出口までの間に後続(2段目)の圧縮波が1段目の圧縮波に追いつかないことが確認される。また、列車速度が速くなるにつれて後続の圧縮波が前方の圧縮波に追いつきやすくなること、列車最大横断面積が増大するのにつれて後続の圧縮波が前方の圧縮波に追いつきやすくなることが確認される。
【0039】
したがって、車体形状の設計に際しては車体先端から一般断面部(最大横断面積)にわたって横断面積を段階的に複数に分けて増大させるとともに、それらの横断面積変化領域の間隔および各段目間の横断面積比を、トンネル長さや列車速度等を考慮して決定する必要がある。
【0040】
上記に本発明に係る車体形状の実施例を示したが、本発明は下記のように実施することができる。すなわち、
▲1▼ 車体の上面を後方へ上向きに横断面積が増大するように変化させるだけでなく、車体の両側面を後方へ外向きに横断面積が増大するように変化させることができる。
【0041】
▲2▼ 横断面積を段階的に変化(増大)させる領域は2カ所以上であれば、いくつでもよく、また各変化領域間には横断面積が一定の領域を車体の前後方向にできるだけ長く設けることが望ましい。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明に係る車体形状によれば、下記のような優れた効果がある。
【0043】
(1) 請求項1の発明では、鉄道先頭車両の車体の先端より最大横断面積部となる一般断面部に至る横断面積分布において、横断面積が変化(増大)する領域を車体の前後方向に沿って複数箇所に分けて設けているので、車体先端から一般断面部にかけて連続的に横断面積を増大させた従来の車体形状に比べて、圧力変化の状態が緩やかになり、しかも段階的に分散されて圧力が最大に達するから、圧縮波の圧力勾配の時間変化率を低減することができる。この結果、トンネル出口で発生するトンネル微気圧波による爆発音を小さくしたり、出口周辺での家屋の振動などを削減できる。また、上記公報に記載の従来の車体形状に比べて本発明に係る車体形状は単純であるから、車体の設計が簡単になるだけでなく、製作が極めて容易になって、製作に要する期間の短縮を図れる。
【0044】
車体の横断面積変化領域を2カ所にするので、形状がより簡略化されるとともに、横断面積変化領域の間隔を大きくとりやすくなるので、2段目の圧縮波が1段目の圧縮波に追いつくことを容易に阻止でき、トンネル出口から外部に放射される微気圧波を低減させる効果を有効に発揮させられる。
【0045】
(2) 請求項2の発明では、圧縮波が2段階に分散されて低減されるととともに、1段目と2段目の圧縮波の生じる距離が十分に離れ、かつ横断面積比が大きいので、トンネルの距離が余程長くならない限り、トンネル出口で分散された微気圧波が集合されて発生することが阻止され、爆発音や振動等を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る先頭車両の車体形状を示すもので、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る先頭車両の車体形状を示すもので、図2(a)は平面図、図2(b)は側面図である。
【図3】本発明の第3実施例に係る先頭車両の車体形状を示すもので、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図である。
【図4】本発明の第4実施例に係る先頭車両の車体形状を示すもので、図4(a)は平面図、図4(b)は側面図、図4(c)は正面図である。
【図5】従来の一般的な先頭車両の車体構造を示すもので、図5(a)は平面図、図5(b)は側面図である。
【図6】本発明の第6実施例に係る段付き車体と段無し車体の断面積分布を表す模式図である。
【図7】図9に示す条件に基づいて求めた本発明の段付き車体モデルによる×位置で測定した圧力変化線図である。
【図8】図7の圧力変化線図を時間(s)で微分して求めた線図で、時間に対する圧力の変化率を表している。
【図9】本発明の実施例に係る段付き車体がトンネルに突入する際の圧力変化線図を求めるための計算条件を示す模式図である。
【図10】鉄道先頭車両の1段目列車横断面積と2段目列車横断面積の大きさや間隔の関係を示す車体モデルの模式図で、図6に対応するものである。
【図11】図10に示す車体モデルの列車がトンネル内に突入する際の1段目の圧縮波による圧力上昇と2段目の圧縮波による圧力上昇および両圧縮波の間隔の関係と1段目圧縮波の伝播速度と2段目圧縮波の伝播速度の関係を示す模式図である。
【図12】図12〜図16は、トンネルの入口に列車が突入する際に発生した最初(1段目)の微気圧波にトンネル出口までの間に後続(2段目)の微気圧波が追いついてしまい、横断面積変化領域を複数に分断した作用効果が期待できないおそれがあるので、これに関連する要素である1段目と2段目の横断面積比および1段目と2段目の間隔(距離)などと有効なトンネル長さの関係について示す線図である。そして、図12は列車速度240km/h、列車一般部面積11m2 の場合を示す。
【図13】図12と同様な線図で、列車速度270km/h、列車最大横断面積11m2 の場合を示す。
【図14】図12と同様な線図で、列車速度300km/h、列車最大横断面積11m2 の場合を示す。
【図15】図12と同様な線図で、列車速度270km/h、列車最大横断面積7m2 の場合を示す。
【図16】図12と同様な線図で、列車速度270km/h、列車最大横断面積13m2 の場合を示す。
【符号の説明】
11・12・13・14…車体(本発明例)
1…車体(従来例)
2〜4…横断面積変化領域
T…トンネル
Claims (2)
- 鉄道先頭車両の車体の先端より最大横断面積部となる一般断面部に至る横断面積分布において、横断面積が変化する領域を車体の前後方向に沿って複数箇所に分けて設けた鉄道先頭車両の車体形状であって、
前記車体の先端部分をやや後方に傾斜させて上方に立ちあげることにより1段目の横断面積変化領域を形成したのち、横断面積をほぼ一定に保ってほぼ水平に後方に延設したのち、再びやや後方に傾斜させて上方に立ちあげることにより2段目の横断面積変化領域を形成したことを特徴とする鉄道先頭車両の車体形状。 - 前記1段目横断面積/前記2段目横断面積の面積比が0.6以上で、前記1段目と前記2段目の横断面積変化領域の間隔を15m以上にした請求項1記載の鉄道先頭車両の車体形状。
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