JP2005178491A - 超音速航空機の胴体形状の決定方法および胴体前胴部形状 - Google Patents
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Abstract
本発明が解決しようとする課題は、胴体の上下面形状をトータルに修正して、造波抗力を増加させることなくしかもソニックブームを低減する究極の超音速航空機の胴体形状の決定方法を提示すると共に、そのような胴体前胴部形状を提供することにある。
【解決手段】
本発明の超音速飛行する航空機の胴体形状決定方法は、胴体断面の左右対称面に垂直な方向の胴体幅が最大となる位置を境界とした胴体下面形状と胴体上面形状は異なる決め方をするものであって、前記胴体下面形状は、パネル法と波形パラメータ法を用いて推算された地上のソニックブーム圧力波形の圧力上昇量を最小化すべき目的関数として最適化により決定し、胴体上面形状は、パネル法を用いて推算された抗力を最小化すべき目的関数として最適化により決定するようにした。
【選択図】 図3
Description
超音速飛行する物体で造波抗力最小の形状として図12に示すようなシアーズハーク(Sears-Haack)体と呼ばれる長さ位置に対する断面積分布が前後対称となる軸対称物体形状(非特許文献1:Sears,1947)が知られており、超音速航空機の造波抗力を低減するには航空機を飛行マッハ数で決定されるマッハ平面(法線ベクトルを機体軸に対して角度μ=sin-1(1/M)傾けた平面)で切断した断面積の機体軸方向への投影面積の周平均である相当回転体の断面積分布をこのシアーズハーク体の断面積分布と等しくすればよいとされ、そのような航空機の設計手法はエリアルール設計と呼ばれている。
以上の実験結果から、機体の上面形状は機体下方でのソニックブーム強度に影響を与えないとの予測にたって、造波抗力の低減を図るべく機体の上面形状をエリアルール胴体に置き換えた機体モデルがそれなりに低抗力であってかつ低ソニックブームを実現できることが実証できた。
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また、本発明の航空機の胴体前胴部形状は、胴体断面の左右対称面に垂直な方向の胴体幅が最大となる位置を境界とした胴体下面形状は、推算された地上のソニックブーム圧力波形の圧力上昇量を最小化すべき目的関数として最適化により決定し、胴体上面形状は、造波抗力を最小化する様に決定する超音速飛行する航空機の胴体であって、前胴部、中胴部、後胴部で形成された胴体の前胴部の前半である機首部の上面形状は凹状の曲率を有し、機首部後方の前胴部形体は凸状となるようにし、胴体前胴部側面および下面形状は機首部で急激な凸部を有し、機首後方の前胴部は緩やかな凸状となるようにした。
さらに本発明によれば、胴体の上面形状と下面形状とを異なる決定方法により設計する手法により効率的なエリアルール設計が可能となり、従来の軸対称胴体によるエリアルール胴体よりも造波抗力を低減することが可能である。
本発明によれば、上面形状と下面形状が異なる決定方法により設計された超音速機の胴体前胴部において、胴体下面の機首部で強い圧力ピークを形成することでソニックブームを抑制し、胴体上面機首部の衝撃波を抑えて機首後方前胴部で緩やかな圧力上昇とすることで造波抗力の増加を抑えることが可能である。
図1、図2、図3に示す機体は、本発明に基づいて設計された超音速航空機の胴体を示したもので、図1はその斜視図、図2はその平面図と側面図と前方から見た図、そして、図3は軸方向位置に対応した断面形状を示したもので、マッハ1.8で巡航する超音速航空機を想定して設計された本発明の適用例である。ある主翼形状が与えられた時、胴体下面形状は地上でのソニックブーム強度を抑えるため機首部で強い圧力上昇が生じる様に決定する。具体的には、主翼と初期胴体形状で構成される機体形状に対してパネル法を適用し、飛行マッハ数における設計揚力時の全機抗力と、同条件下での機体直下における近傍場圧力波形を求め、機体近傍場圧力波形は波形パラメータ法を用いて大気の鉛直方向分布(温度、密度、大気圧)を考慮して地上に外挿し、地上圧力波形を推算する。得られた全機抗力と地上圧力波形の初期圧力上昇量とを最小化すべき目的関数として、それぞれ胴体上面形状と下面形状を最適化する。胴体上面形状に対して設計変数に微小変動を与えることにより形状を微かに修正してパネル法を適用し、全機抗力の変動を調べ、全機抗力が減少する様に形状修正を行う。同様に胴体下面形状に対して設計変数に微小変動を与えることにより形状を微かに修正してパネル法と波形パラメータ法を適用し、地上圧力波形の初期圧力上昇量の変動を調べ、初期圧力上昇量が減少する様に形状修正を行う。これらの過程を繰り返すことによりそれぞれの目的関数に対して最適な胴体上面形状及び下面形状を同時に決定する。結果として胴体下面形状は機首部が急激な凸状、機首後方の前胴部は緩やかな凸状となり、機首部の上面形状は凹状の曲率を有し、機首後方の前胴部が凸状の組み合わせとなる。本発明の適用例である翼胴結合体に対して、パネル法により機体近傍場圧力波形を求め、それを入力とした波形パラメータ法による地上圧力波形推算は、図4(斜視図)および図5(平面図と側面図と前方から見た図)の示すエリアルール設計された軸対称胴体の翼胴結合体と比べて、初期圧力上昇量が約30%低減されることを確認できた。また、同時に実施したパネル法による本発明適用例である翼胴結合体の抗力推算は、エリアルール設計された軸対称胴体の翼胴結合体と比べて、設計揚力での抗力が約4%低減されることを確認できた。本形態例では主翼形状はクランクアロー型の平面形状であり、また、エンジンナセルおよび尾翼が含まれていないが、本発明の効果は主翼形状の変更や、エンジンナセルや尾翼の追加があっても変わらない。
上記のベジエ係数は最適値として得たものであるが、±5%の幅をもたせて形状形成しても実際上低抗力、低ブームとしての要件を満たすものとなるので、設計値として採用できる。パラメータの範囲決めであるが、係数±5%とすると、形状誤差は図9,図10に示したようになる。上面形状について、係数×0.95のときベジエ曲線制御点の値は(0.O,O.033,0.371,0.884,0.950,0.950)となり、係数×1.05のときベジエ曲線制御点の値は(0.O,O.037,0.410,0.977,1.050,1.050)となる。また、側面および下面形状について、係数×1.05のときベジエ曲線制御点の値は(O.0,0.941,0.428,0.846,0.846,0.950)となり、係数×1.05のときベジエ曲線制御点の値は(0.O,1.040,0.473,0.935,0.935,1.050)となる。
また、図11の下段に示したグラフは時間経過に対応する地上における圧力変動のデータについて従来の低抗力型の機体と本発明の低抗力/低ブーム機体との比較データである。この特性から見て先端ブームの値が従来の低抗力型の機体に比べて2/3程度低くなっている点と、それに続く鋸歯状の山がほぼ同じ高さに分割されている点で遠方場においても重畳現象が生じることはなく低ブームが実現されていることを示していると推定される。
Claims (5)
- 胴体断面の左右対称面に垂直な方向の胴体幅が最大となる位置を境界とした胴体下面形状と胴体上面形状は異なる決め方をするものであって、前記胴体下面形状は、パネル法と波形パラメータ法を用いて推算された地上のソニックブーム圧力波形の圧力上昇量を最小化すべき目的関数として最適化により決定し、胴体上面形状は、造波抗力を最小化する様に決定することを特徴とする超音速飛行する航空機の胴体形状決定方法。
- 胴体上面形状は、パネル法を用いて推算された抗力を最小化すべき目的関数として最適化により決定することを特徴とする請求項1に記載の超音速飛行する航空機の胴体形状決定方法。
- 胴体断面の左右対称面に垂直な方向の胴体幅が最大となる位置を境界とした胴体下面形状は、推算された地上のソニックブーム圧力波形の圧力上昇量を最小化すべき目的関数として最適化により決定し、胴体上面形状は、造波抗力を最小化する様に決定する超音速飛行する航空機の胴体であって、前胴部、中胴部、後胴部で形成された胴体の前胴部の前半である機首部の上面形状は凹状の曲率を有し、機首部後方の前胴部形体は凸状となっていることを特徴とする航空機の胴体前胴部形状。
- 胴体前胴部側面および下面形状は機首部で急激な凸部を有し、機首後方の前胴部は緩やかな凸状となっていることを特徴とする請求項3に記載の航空機の胴体前胴部形状。
- 胴体先端から翼付け根までの胴体前胴部の上断面形状を半楕円とすると共に、下断面形状を前記半楕円の短径と等しい半径の半円とし、軸方向分布を5次のベジエ曲線で定義し、5次のベジエ曲線を定義する6つの係数の制御位置は、軸方向位置xを先端位置0乃至翼付け根位置1とする無次元座標で表現してx=0,x=0.2,x=0.4,x=0.6,x=0.8,x=1とし、上面のベジエ係数を±5%の幅をもたせて0.0,0.035×Ru,0.39×Ru,0.93×Ru,1.0×Ru,1.0×Ruとし、下面のベジエ係数を±5%の幅をもたせて0.0,0.99×Rsl,0.45×Rsl,0.89×Rsl,0.89×Rsl,1.0×Rslとして形状形成した航空機の胴体前胴部形状。
但し、Ruはx=1における長径、Rslはx=1における短径であって、機体の軸方向長さをLとしたとき Ru=0.0435×L,Rsl=0.0263×Lとする。
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