JP4243157B2 - 寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂シート - Google Patents

寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂シート Download PDF

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Description

本発明は寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂シートに関する。さらに詳しくは、高温時に低伸縮性であるため熱曲げ加工やハードコート処理等の2次加工に好適な寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂シートに関する。
ポリカーボネート樹脂は安価で軽量かつ透明性、成形性、光学特性、耐熱性加工性、機械的強度に優れている等の特長を生かして種々の分野で幅広く使用されかつポリカーボネート樹脂シートとしても多く使用されており該シートに印刷や熱成形、真空成形、金属蒸着、スパッタリング等を施し幅広く利用されているが、近年、印刷や熱成形等の加工技術の進歩に伴い生産速度が速く、かつ加工条件も厳しくなっている。
ポリカーボネート樹脂シートを二輪車の風防、建設機械のルーフ等の成形品に2次加工する場合、ポリカーボネート樹脂シートを所望寸法に切断し、必要に応じて文字、模様等を印刷後、該シートの表面温度を180℃程度に加熱して柔軟性を与えたのち、雄型と雌型との間に入れて型押しにより所望形状に曲げ、型から取り出し冷却して生産する。
さらに、ポリカーボネート樹脂シートに熱硬化型ハードコートのような表面処理を施す場合、ハードコート塗料を流し塗り等で塗布したあと約110〜140℃程度に加熱して表面を乾燥、冷却して生産する。
このような2次加工を施す用途では、一時的に該ポリカーボネート樹脂シートがガラス転移点近傍以上の高温に加熱されるため伸縮が生じ、また押出方向と幅方向で伸縮率が異なると熱成形後または表面処理後、該ポリカーボネート樹脂シートに反りが生じたり、ハードコート膜にクラックが入るなど製品外観が著しく損なわれて歩留まりが大幅に低下するという問題が発生していた。
一方、熱可塑性樹脂成形物を均質化する方法としては熱処理する方法が一般的に知られている。即ち、ポリカーボネート樹脂シートを枚葉に切断しガラス転移点以上の温度で熱処理することで加熱伸縮率の小さい該シートを得ることは既に知られているが、この方法はシート製造装置以外に大掛かりな熱処理設備が必要である点と、バッチ式になる為生産性が低く経済性にも難があり工業的に有用とはいえなかった。
また、二次成形時の再加熱によっても熱収縮が小さく、成形品の寸法精度を向上させるポリカーボネート樹脂シートの製造方法についても提案がなされている。例えば、特許文献1には複数個の鏡面冷却ロール(ポリシングロール)において各ロールの温度制御および該ロール間へ導入する際シートを加熱する方法が提案されている。しかしながら、この方法ではロール温度が高くシートがロールに取られるなどシーティングの制御が難しく冷却したシートを再度高温加熱するため経済的に難があり、またこの方法で得られたシートは板厚が2.0〜8.0mmの場合加熱伸縮率が大きいため、熱成形等に使用する場合収縮分を見込んで材料シートを切断することさらに最終的に目的とする寸法が得られるようにしても、収縮分が一定しないために製品の歩留まりが悪いという問題点があった。
また、本発明者は、特許文献2に高温時に低収縮性である寸法安定性に優れたインサート成形用ポリカーボネート樹脂フィルムおよび該フィルムの製造方法を提案している。しかしながら、この製造方法では板厚が0.5〜2.0mmのシートを製造する場合、ロール温度が高くシートがロールに取られるなどシーティングの制御が難しく、またこの方法で得られたシートは加熱伸縮率が大きく印刷した意匠がずれる等の欠陥が発生し、且つ反り率も大きく加工速度が速い印刷を施す銘板等の用途では印刷不良が発生しやすく、さらに印刷後の乾燥時またはシート搬送時にシートの反りが大きくなって工程の稼動効率が悪くなって、製品の歩留まりも悪いという問題点があった。
特開平06−344417号公報 特開2001−139705号公報
本発明の目的は、2次加工時にガラス転移点近傍以上の高温に加熱しても加熱時および加熱処理後の伸縮が小さく、成形物の反りのない寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂シートを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂を溶融してシート状に押出し複数個の冷却ロールを使用して該シートを製造する際に、冷却時の温度及び引取による延伸で二次成形時に収縮が起こることに着目し、溶融ポリカーボネート樹脂を冷却ロールの第1ロールと中央の第2ロールの間に供給しながら当該2本のロールで圧延させてから他端の第3ロールの間隙を通過させてから引き取るロールの回転速度と温度をある範囲に制御すれば、上記課題を達成し得ることを見出し、更に検討を重ねた結果本発明に到達した。
すなわち、本発明によれば、
1.加熱温度が180℃の時の加熱伸縮率が下記式(1)および(2)を満足し、厚みが2.0〜8.0mmの寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂シート。
−1.0≦STD≦1.0 …(1)
−4.0≦SMD≦0.0 …(2)
[式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
2.加熱温度が170℃の時の加熱伸縮率が下記式(3)および(4)を満足する前記1記載のポリカーボネート樹脂シート。
−1.0≦STD≦1.0 …(3)
−3.5≦SMD≦0.0 …(4)
[式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
3.加熱温度が160℃の時の加熱伸縮率が下記式(5)および(6)を満足する前記1または2に記載のポリカーボネート樹脂シート。
−1.0≦STD≦1.0 …(5)
−3.0≦SMD≦0.0 …(6)
[式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
4.加熱温度が190℃の時の加熱伸縮率が下記式(7)および(8)を満足する前記1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂シート。
−1.5≦STD≦1.0 …(7)
−5.0≦SMD≦0.0 …(8)
[式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
5.加熱温度が150℃の時の加熱伸縮率が下記式(9)および(10)を満足する前記1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂シート。
−0.5≦STD≦0.5 …(9)
−2.0≦SMD≦0.0 …(10)
[式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
6.反り率の平均値(押出方向と幅方向での反り率の平均値)が1.8%以下である前記1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂シート。
7.回転中心軸が平行で同一平面上にある位置関係にありかつ接近して配置した3本の冷却ロールを用いポリカーボネート樹脂シートを製造する方法において、溶融ポリカーボネート樹脂を上記冷却ロールの第1ロールと中央の第2ロールの間に供給しながら当該2本のロールで圧延させてから他端の第3ロールの間隙を通過させてから引取るに際し、第2ロールに対する第3ロールの回転速度を1.000〜1.015倍、前記3本の冷却ロール温度は第1ロールが100〜120℃、第2ロールが110〜130℃、第3ロールが95〜120℃にすることを特徴とするポリカーボネート樹脂シートの製造方法。
8.前記1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂シートを熱曲げ加工して形成された熱曲げシート。
9.前記1〜のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂シートの少なくとも一面をハードコート処理して得られた被覆されたシート。
が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、加熱温度が180℃の時の加熱伸縮率が下記式(1)および(2)を満足し、厚みが2.0〜8.0mmの寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂シートである。
−1.0≦STD≦1.0 …(1)
−4.0≦SMD≦0.0 …(2)
[式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
このSTDおよびSMDが上記を満足することは、2次加工の際の熱成形時または再加熱時に縦、横の加熱伸縮率の比がほぼバランスの良い状態に保たれ、収縮応力の偏りが起こらず、均一な応力がシートにかかり、熱成形品または再加熱後のシートの外観が良好になる。一方、この範囲を逸脱すると収縮応力に偏りができ、得られるシートの押出方向または幅方向のうち一方で縮みがさらに他方向は伸びが発生する等の伸縮バランスが崩れ、熱成形品または再加熱後のシートの外観が不良になる。
また、STDとSMDがそれぞれ上記式を満足する適度な加熱伸縮率をもつことで、熱成形時または再加熱時に発生した伸縮応力がシートを適度な緊張状態に保持することができる。この加熱伸縮率が上記式の範囲より小さくなると伸縮が大きく、外観不良が発生する。また加熱伸縮率が上記式の範囲を越えると、加熱によりシートが伸びるため、外観不良が発生し実用に供し難くなる。
さらに、加熱伸縮率については、加熱温度が170℃の時の加熱伸縮率が下記式(3)および(4)を満足することが好ましい。
−1.0≦STD≦1.0 …(3)
−3.5≦SMD≦0.0 …(4)
[式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
また、加熱温度が160℃の時の加熱伸縮率が下記式(5)および(6)を満足することが好ましい。
−1.0≦STD≦1.0 …(5)
−3.0≦SMD≦0.0 …(6)
[式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
また、加熱温度が190℃の時の加熱伸縮率が下記式(7)および(8)を満足することが好ましい。
−1.5≦STD≦1.0 …(7)
−5.0≦SMD≦0.0 …(8)
[式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
また、加熱温度が150℃の時の加熱伸縮率が下記式(9)および(10)を満足することが好ましい。
−0.5≦STD≦0.5 …(9)
−2.0≦SMD≦0.0 …(10)
[式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
本発明のポリカーボネート樹脂シートにおいて、150℃〜190℃におけるSTDおよびSMDが上記式を満足することは、熱成形時にシートの縦、横の加熱伸縮率の比がほぼバランスの良い状態に保たれ、収縮応力の偏りが起こらず、均一な応力がシートにかかり、熱成形品の外観が良好になる。
本発明のポリカーボネート樹脂シートの厚みは2.0〜8.0mmの範囲であり、2.0〜5.0mmの範囲が好ましい。上記範囲内の厚みのシートは二輪車の風防、建設機械の窓等の熱曲げシートやハードコート等の再加熱を必要する表面を被覆されたシートに好適である。
また、本発明のポリカーボネート樹脂シートは、反り率の平均値(押出方向と幅方向での反り率の平均値;下限は0%)が1.8%以下が好ましく、1.5%以下がより好ましく、1.0%以下が特に好ましい。反り率は、押出方向と幅方向でそれぞれJIS K 6911の試験方法に準拠して、長さ1000mmに対する最大反り(辺に平行方向に凹状または凸状に変形した時の最大高さ)を測定し、その百分率(%)で表した。反り率の平均値は、押出方向と幅方向それぞれの反り率を平均した値である。反り率の平均値が1.8%を越えるとシートの熱成形時や再加熱時に反りが発生し、製品の歩留まりが悪くなる。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重合法や溶融法等の方法により反応させて得られるものである。二価フェノールの代表的な例としては2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[通称ビスフェノールA]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイト、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられ、なかでもビスフェノールAが好ましい。これらの二価フェノールは単独または2種以上を混合して使用できる。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。更に、ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて添加剤例えば多価アルコールと脂肪酸のエステルまたは部分エステル等の離型剤、亜リン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等の熱安定剤、ヘンゾトリアゾール系、アセトフェノン系、サリチル酸エステル等の紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、増白剤、難燃剤等を配合しても良い。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で10,000〜100,000が好ましく、15,000〜35,000がより好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂は、十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり好ましい。本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mLにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
本発明のポリカーボネート樹脂シートを製造するには、Tダイから押出した溶融ポリカーボネート樹脂を、挟持加圧方式の複数個の鏡面冷却ロールで冷却してシートに成形する。この際使用する装置としては特別な装置である必要はなく、シートの製造に使用される装置が任意に採用される。
本発明のポリカーボネート樹脂シートは、回転中心軸が平行で同一平面上にある位置関係にありかつ接近して配置した3本の冷却ロールを用いポリカーボネート樹脂シートを製造する方法において、溶融ポリカーボネート樹脂を上記冷却ロールの第1ロールと中央の第2ロールの間に供給しながら当該2本のロールで圧延させて(両面タッチ方式)から他端の第3ロールの間隙を通過させてから引取るに際し、第2ロールに対する第3ロールの回転速度を1.000〜1.015倍、前記3本の冷却ロールの温度は第1ロールが100〜120℃、第2ロールが110〜130℃、第3ロールが95〜120℃にすることによって製造できる。
本発明のポリカーボネート樹脂シートの製造方法を具体的に図により説明する。図1は本発明のポリカーボネート樹脂シートの製造方法を実施するに適したシートの製造装置の一例を示す概略図である。図中の1はTダイス、2は第1冷却ロール、3は第2冷却ロール、4は第3冷却ロール、5は一対の引取ロールであり、第1〜第3冷却ロールはいずれもその表面は鏡面仕上げになっており、その内部には熱媒体が循環し、温度を制御できるようになっている。
まず、溶融ポリカーボネート樹脂をTダイス1からシート状に押出す。この際の溶融押出しには格別の条件を必要とせず、通常のポリカーボネート樹脂シートの溶融押出し条件が任意に採用される。次いで押出されたシート状物6は、そのままの状態で第1冷却ロール2と第2冷却ロール3との間に供給しながら当該2本のロールで圧延させてから他端の第3ロール4に受け継がれた後、一対の引取ロール5によって引取られる。
この際、第2冷却ロール3に対する第3冷却ロール4の回転速度を1.000〜1.015倍にすることが必要である。第2冷却ロール3に対する第3冷却ロール4の回転速度を1.000倍より小さくすると冷却が緩やかに進行するが速度が遅いため良好なシーティングができなくなり、1.015倍より大きくすると引取速度が速くなるのでシーティングは良好になるが該ポリカーボネート樹脂シートは押出方向に延伸作用が働くため、二次成形時押出方向の加熱伸縮が大きくなり、幅方向の加熱伸縮とバランスが崩れ実用に供し難くなるためである。
さらに、前記第1冷却ロール2の温度は100〜120℃、第2冷却ロール3の温度は110〜130℃、第3冷却ロール4の温度は95〜120℃に設定する必要がある。ポリカーボネート樹脂は260〜280℃で押出されるのに対して、各冷却ロール2〜4の温度がそれぞれ100℃、110℃、95℃未満では冷却が速すぎて熱収縮が大きくなり、また各冷却ロール2〜4の温度がそれぞれ120℃、130℃、120℃を超えると十分に冷却されないため冷却ロールにシートが取られてシーティングできなかったり、反り率が大きく且つ加熱収縮率が大きいシートとなる。なお、これら第1〜3冷却ロール2〜4の温度制御は、内部に熱媒体を循環させる等のロール温度制御手段により容易に行える。
本発明のポリカーボネート樹脂シートは、その特性を生かして二輪車の風防、建設機械の窓等の熱曲げ加工して形成される熱曲げシートやシートの少なくとも一面をハードコート処理する等の再加熱を必要する被覆されたシートとして好適である。
本発明のポリカーボネート樹脂シートは、シートの縦および横の加熱伸縮率が特定範囲であること、即ち、適度な加熱伸縮率をもつことで、加熱成形中に発生した収縮応力によりシートを緊張状態に保持することができ、縦および横の加熱伸縮率の比がほぼバランスの良い状態にあることで、応力の偏りが起こらず、均一な応力がシートにかかるので適度で均一な応力の発生により、熱成形品または再加熱後のシートの内部歪みが十分に緩和できるので、熱曲げ用シートやハードコート処理用等の二次加工を施すシートとして好適に用いられ、その工業的効果は格別のものがある。
以下に実施例をあげて本発明をさらに説明する。なお、実施例中の評価は下記に示す方法に従った。
(1)加熱伸縮率
JIS K 7133の加熱伸縮率試験法を準用し、加熱条件は温度がそれぞれ190、180、170、160、150℃で、40分間処理を行った。
(2)反り率、反り率の平均値
シートの押出方向と幅方向それぞれについて、JIS K 6911の試験方法に準拠して、長さ1000mmに対する最大反り(辺に平行方向に凹状または凸状に変形した時の最大高さ)を百分率(%)で表した。値が大きい程反りは大きくなる。なお、反り率の平均値は、押出方向と幅方向それぞれの反り率を平均した値である。
(3)ハードコート処理後の反り率
ハードコート処理後のシートを前記(2)と同様に測定した。
[実施例1〜3及び比較例1]
図1に示す装置を設けた押出機によりポリカーボネート樹脂シートを製造した。図中1は幅1250mmのTダイス、2、3及び4は直径300mmの第1〜第3冷却ロール、5は引取ロールである。
ビスフェノールAとホスゲンから界面重縮合法により製造した粘度平均分子量24,500のポリカーボネート樹脂を図1に示した製造装置によりスクリュー径120mmのTダイリップの付いた押出機にて温度約280℃、幅1000mmで連続的に押出し、第1冷却ロールと第2冷却ロールで圧延し(両面タッチ方式)、冷却させながらポリカーボネート樹脂シートを成形し、引取ロールにより引取りシートを得た。但し、第2冷却ロールに対する第3冷却ロールの速度比、第1〜第3冷却ロールのそれぞれの温度を表1記載通りに設定し、得られたシートの物性値を表2に示した。
[比較例2]
市販のポリカーボネート樹脂シート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)ユーピロンシート NF−2000U、厚み3.0mm)を使用して、前記実施例と同様に加熱伸縮率の評価を行い、表2にその結果を示した。
[熱曲げ加工]
前記実施例1および比較例1で得られたシートを180℃で20分加熱軟化させ、この軟化させたポリカーボネート樹脂シートを、図2に示したプレス成形機の雌型の上に水平状態に置き、フランジ押さえでポリカーボネート樹脂シートを固定し、雄型を下降させてプレス成形した。プレス成形した結果、実施例1の成形片は図3のように所望する形状の熱曲げシートがが得られたが、比較例1の成形片は図4のような形状になり所望する形状の熱曲げシートは得られなかった。
[ハードコート処理加工]
前記実施例1〜3および比較例1で得られたシートの一面に、下記組成で調整したメラミン樹脂塗料(塗料の固形分濃度25重量%)をフローコート法で塗布し、10分間室温に放置した後、120℃の熱風循環乾燥機中で60分間加熱乾燥して、メラミン硬化層を被覆した透明被覆ポリカーボネート樹脂板を得た。得られた透明被覆ポリカーボネート樹脂板の反り率を測定し、表3にその結果を示した。
メラミン樹脂塗料の組成
(イ)メチルエーテル化メチロールメラミン100重量部(三井サイアミド(株)製サイメル350)
(ロ)1,6−ヘキサンジオール70重量部
(ハ)マレイン酸5重量部
(ニ)イソプロピルアルコール150重量部
(ホ)イソブチルアルコール320重量部
(ヘ)エチレングリコールモノブチルエーテル25重量部
Figure 0004243157
Figure 0004243157
Figure 0004243157
本発明のポリカーボネート樹脂シートを製造する際に用いられる製造装置の概略図である。 本発明のポリカーボネート樹脂シートを熱曲げ加工する際に使用されるプレス成形機の一例を示す概略図である。 実施例1で得られたシートをプレス成形により賦型させた凸形状を有する熱曲げシートの断面図である。 比較例1で得られたシートをプレス成形により賦型させた凸形状を有する熱曲げシートの断面図である。
符号の説明
1.Tダイス
2.第1冷却ロール
3.第2冷却ロール
4.第3冷却ロール
5.引取ロール
6.溶融押出しされたポリカーボネート樹脂シート
7.雄型
8.フランジ押さえ
9.雌型

Claims (9)

  1. 加熱温度が180℃の時の加熱伸縮率が下記式(1)および(2)を満足し、厚みが2.0〜8.0mmの寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂シート。
    −1.0≦STD≦1.0 …(1)
    −4.0≦SMD≦0.0 …(2)
    [式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
  2. 加熱温度が170℃の時の加熱伸縮率が下記式(3)および(4)を満足する請求項1記載のポリカーボネート樹脂シート。
    −1.0≦STD≦1.0 …(3)
    −3.5≦SMD≦0.0 …(4)
    [式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
  3. 加熱温度が160℃の時の加熱伸縮率が下記式(5)および(6)を満足する請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂シート。
    −1.0≦STD≦1.0 …(5)
    −3.0≦SMD≦0.0 …(6)
    [式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
  4. 加熱温度が190℃の時の加熱伸縮率が下記式(7)および(8)を満足する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂シート。
    −1.5≦STD≦1.0 …(7)
    −5.0≦SMD≦0.0 …(8)
    [式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
  5. 加熱温度が150℃の時の加熱伸縮率が下記式(9)および(10)を満足する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂シート。
    −0.5≦STD≦0.5 …(9)
    −2.0≦SMD≦0.0 …(10)
    [式中、STDは幅方向の加熱伸縮率(%)、SMDは押出方向の加熱伸縮率(%)]
  6. 反り率の平均値(押出方向と幅方向での反り率の平均値)が1.8%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂シート。
  7. 回転中心軸が平行で同一平面上にある位置関係にありかつ接近して配置した3本の冷却ロールを用いポリカーボネート樹脂シートを製造する方法において、溶融ポリカーボネート樹脂を上記冷却ロールの第1ロールと中央の第2ロールの間に供給しながら当該2本のロールで圧延させてから他端の第3ロールの間隙を通過させてから引取るに際し、第2ロールに対する第3ロールの回転速度を1.000〜1.015倍、前記3本の冷却ロール温度は第1ロールが100〜120℃、第2ロールが110〜130℃、第3ロールが95〜120℃にすることを特徴とするポリカーボネート樹脂シートの製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂シートを熱曲げ加工して形成された熱曲げシート。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂シートの少なくとも一面をハードコート処理して得られた被覆されたシート。
JP2003318004A 2003-09-10 2003-09-10 寸法安定性に優れたポリカーボネート樹脂シート Expired - Lifetime JP4243157B2 (ja)

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