JP4242034B2 - 研磨方法及び研磨装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、アルミディスク、半導体ウエハ等の薄肉板状の被研磨物を研磨するのに有効な研磨方法及び研磨装置に関し、特に、被研磨物の搬入、搬出の自動化に容易に対応することができ、しかもキャリヤの耐久性を延ばすことができる研磨方法及び研磨装置に関するものである。
【0002】
【従来技術およびその問題点】
アルミディスク、半導体ウエハ等の薄肉板状の被研磨物を研磨するための研磨装置には種々のタイプのものがあり、例えば、駆動源に連結されて回転可能な下定盤と、下定盤の上方に設けられるとともに、駆動源に連結されて回転可能な上定盤と、下定盤の中心部に設けられるとともに、駆動源に連結されて回転可能なサンギアと、下定盤の外周側に設けられるとともに、駆動源に連結されて回転可能なインターナルギアと、サンギアとインターナルギアとの間に噛合されるとともに、被研磨物を保持する孔が複数箇所に設けられる複数枚のキャリヤとを具えたものが知られている。
【0003】
そして、上記のような構成の研磨装置を用いて被研磨物の研磨を行うには、各キャリヤの各孔内に未加工の被研磨物をそれぞれ装填し、上定盤と下定盤との間で各被研磨物を挟持し、この状態で上定盤と下定盤との間に研磨液を供給しつつ、各駆動源を作動させて上定盤、下定盤、サンギア及びインターナルギアを回転させ、各キャリヤと一体に被研磨物を上下定盤間で公転、自転させる。
【0004】
そして、所定の時間経過後に、各駆動源を停止させて上定盤、下定盤、サンギア、インターナルギアを停止させ、各キャリヤと一体に被研磨物を停止させる。このようにして、各キャリヤと一体に被研磨物を所定の時間、公転、自転させることで、各キャリヤに保持した各被研磨物の研磨面を所定の表面粗さに仕上げることができるものである。
【0005】
しかしながら、上記のような構成の従来の研磨装置にあっては、各キャリヤを公転、自転させる機構、制御が必要なため、装置全体の構造、制御が複雑になってしまう。
【0006】
また、研磨が終了したときの各キャリヤの公転方向、自転方向の停止位置にはばらつきがあるため、各被研磨物の公転方向、自転方向の停止位置にばらつきが生じてしまう。このため、ラインに組み込んで被研磨物の搬入、搬出を自動化する場合には、研磨終了後に各キャリヤを公転、自転させて各キャリヤの公転方向、自転方向の位置を補正して各被研磨物を公転方向、自転方向の所定の位置に位置決めしなければならない。または、被研磨物の搬入、搬出を行う移送装置のロボットの位置を、研磨終了後の各キャリヤに保持されている各被研磨物の公転方向、自転方向の停止位置に一致させる補正を行わなければならない。このため、ライン全体としての構造、制御が複雑になってしまい、設備費が高くなってしまう。
【0007】
一方、上記のような問題を解決した研磨装置が実願昭60−117509号のマイクロフィルムに記載されている。この研磨装置は、本願出願人が先に出願したものであって、キャリヤの外側にインターナルギアの代わりに一対の従動歯車を正逆回転可能に設けて、この従動歯車によってキャリヤを支持することによってキャリヤの公転を阻止して自転のみを許容するように構成したものである。
【0008】
そして、このような構成を採用したことにより、キャリヤを公転させる機構、制御が不要となるので、装置全体の構造、制御を簡単にすることができる。また、研磨が終了したときに、キャリヤは公転せずに自転のみを行っているので、被研磨物の搬入、搬出の自動化を行う場合には、キャリヤの公転方向の位置は全く考慮しなくてよいので、ライン全体としての構造、制御を簡単にすることができ、ライン全体としての設備費を安く抑えることができるものである。
【0009】
しかしながら、上記のような構成の研磨装置にあっては、初動時にキャリヤに対して公転方向へ過大な力が作用するため、300mm用等の大径の薄肉のキャリヤを使用した場合に、初動時にキャリヤが歪んでしまってキャリヤから被研磨物が飛び出してしまうことが多くある。これは、たとえば200mm用と300mm用とはキャリヤの厚みが略同一で略同一の強度なので300mm用の方が歪み易いからである。
そして、単に初動時にキャリヤが歪んで、被研磨物が飛び出すのを防止するだけならば、キャリヤに対して従動歯車が押圧するように従動歯車を付勢しておけば良いが、これではキャリヤがプラスチック等から構成されているので付勢力が作用すると反り返ったりして耐久性が著しく低下してしまう。このために、たとえば300mm用等の大径のキャリヤにおいて耐久性を延ばすことが要望されていた。
【0010】
この発明の目的は、装置全体の構造、制御を簡単にすることができて、設備費を安く抑えることができるとともに、ラインに組み込んで被研磨物の搬入、搬出を自動化することができ、ライン全体としての構造、制御を必要とすることなく容易に対応することができる研磨方法及び研磨装置を提供することにある。
この発明の他の目的は上記の目的の他に300mm用等の大径の薄肉のキャリヤを使用した場合であっても、キャリヤに対する駆動部材の付勢力を調整してキャリヤとの間のクリアランスをほぼ接触しているぐらいにすることにより初動時にキャリヤが歪んでしまってキャリヤから被研磨物が飛び出すのを防止するとともに、キャリヤ自体の耐久性を延ばすことができる研磨方法及び研磨装置を提供することにある。
【0011】
【問題点を解決するための手段】
上記の問題点を解決するためにこの発明の研磨方法は、駆動源に連結されて回転可能な下定盤と上定盤との間に少なくとも1つのキャリヤを位置して、前記下定盤の中心部に位置するとともに、駆動源に連結されて回転可能なキャリヤ回転駆動機構の駆動部材に前記キャリヤを噛合させ、前記キャリヤの孔内に被研磨物を装填し、前記少なくとも1つのキャリヤに対応する下定盤の外周側の部分に位置するとともに、駆動源に連結されて回転可能な少なくとも2つの駆動部材を有するキャリヤ離脱防止機構の前記各駆動部材を前記キャリヤに噛合させ、この状態で全ての駆動源を作動させて前記下定盤、上定盤、キャリヤ回転駆動機構の駆動部材及びキャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を回転させ、前記キャリヤを公転させずに自転のみさせて前記被研磨物を研磨する手段を採用するとともに、前記キャリヤに歯を設けるとともに、前記キャリヤ回転駆動機構の駆動部材及び前記キャリヤ離脱防止機構の各駆動部材に前記キャリヤの歯と噛合可能な噛合ピンを複数設けた手段を採用したものである。さらに、前記キャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を水平方向に前進・後退可能、かつ垂直方向に上昇・下降可能とした手段を採用したものである。また、この発明の研磨装置は、駆動源に連結されて回転可能な下定盤と、下定盤の上方に位置するとともに、駆動源に連結されて回転可能な上定盤と、下定盤と上定盤との間に設けられるとともに、被研磨物を保持するための孔が設けられる少なくとも1つのキャリヤと、下定盤の中心部に設けられるとともに、駆動源に連結されて回転可能であり、かつ、前記キャリヤと相互に噛合可能な駆動部材を有するキャリヤ回転駆動機構と、前記少なくとも1つのキャリヤに対応する下定盤の外周側の部分に設けられるとともに、駆動源に連結されて回転可能かつ前記キャリヤと噛合可能な少なくとも2つの駆動部材を有するキャリヤ離脱防止機構とを具え、全ての駆動源を作動させて前記下定盤、上定盤、キャリヤ回転駆動機構の駆動部材及びキャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を回転させ、前記キャリヤを公転させずに自転のみさせて前記被研磨物を研磨する手段を採用するとともに、前記キャリヤに歯を設けるとともに、前記キャリヤ回転駆動機構の駆動部材及び前記キャリヤ離脱防止機構の各駆動部材に前記キャリヤの歯と噛合可能な噛合ピンを複数設けた手段を採用したものである。そして、前記キャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を、水平方向に前進・後退可能、かつ垂直方向に上昇・下降可能とした手段を採用したものである。
【0012】
【作用】
この発明は前記のような手段を採用したことにより、下定盤と上定盤との間に少なくとも1つのキャリヤを位置して、下定盤の中心部に位置しているキャリヤ回転駆動機構の駆動部材と噛合させ、少なくとも1つのキャリヤに対応する下定盤の外周側の部分に位置しているキャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を前記キャリヤに噛合させ、前記キャリヤの孔内に被研磨物を装填する。そして、この状態で全ての駆動源を作動させて、下定盤、上定盤、キャリヤ回転駆動機構の駆動部材及びキャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を回転させると、前記キャリヤが上下定盤間で公転せずに自転のみし、キャリヤに保持した被研磨物の研磨面が研磨されることになる。そして、所定の時間経過後に、全ての駆動源を停止させて、下定盤、上定盤、キャリヤ回転駆動機構の駆動部材及びキャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を停止させると、前記キャリヤは公転せずに自転のみを行った状態で停止するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示すこの発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5には、この発明による研磨装置の一実施の形態が示されていて、この研磨装置1は、回転可能に設けられる下定盤2と、下定盤2の上方に回転可能かつ上下動可能に設けられる上定盤5と、下定盤2と上定盤5との間に設けられるとともに、被研磨物18を保持するための孔16が設けられるキャリヤ15と、下定盤2の中心部に設けられるキャリヤ回転駆動機構7と、下定盤2の外周側に設けられるキャリヤ離脱防止機構19とを具えている。
【0014】
下定盤2は、円板状に形成されるものであって、上面側には研磨パッド4が貼着され、この研磨パッド4の上面側にキャリヤ15に保持した被研磨物18の下面側が当接するようになっている。下定盤2の内部には冷却水を循環させるためのジャケット(図示せず)が設けられ、このジャケット内に冷却水を循環させることで下定盤2を冷却することができるものである。下定盤2は、その下方に位置する駆動源(図示せず)に連結され、駆動源の作動時に水平方向に回転するようになっている。下定盤2の中心部には上下方向に貫通する孔3が設けられ、この孔3内にキャリヤ回転駆動機構7が設けられるようになっている。
【0015】
キャリヤ回転駆動機構7は、下定盤2の孔3の中心部に回転可能に設けられる駆動軸8と、駆動軸8の上端部に取り付けられる駆動部材9と、下定盤2の下方に位置するとともに、駆動部材9を駆動軸8と一体に回転駆動させる駆動源(図示せず)とを具えている。
【0016】
駆動部材9は、駆動軸8の上端部に一体に取り付けられる円板状の基板10と、基板10の周縁部の同一円周上に所定の間隔ごとに回転自在に取り付けられるとともに、後述するキャリヤ15の歯17と相互に噛合可能な複数の棒状の噛合ピン11とから構成されている。
【0017】
キャリヤ15は、合成樹脂又は金属から形成される薄肉円板状をなすものであって、アルミディスク、半導体ウエハ等の薄肉円板状の被研磨物18を保持するための孔16が偏心した状態で1箇所に設けられるようになっている。
【0018】
キャリヤ15の外周面には凹部、凸部が全周に渡って交互に設けられてそれら全体で歯17が構成され、この歯17と前述したキャリヤ回転駆動機構7の駆動部材9の噛合ピン11とが相互に噛合するとともに、この歯17と後述するキャリヤ離脱防止機構19の駆動部材20の噛合ピン22とも相互に噛合するようになっている。
【0019】
この実施の形態においては、下定盤2と上定盤5との間に5つのキャリヤ15を設けているが、数は特に限定するものではなく少なくとも1つ設ければよいものである。
【0020】
キャリヤ離脱防止機構19は、各キャリヤ15に対応する下定盤2の外周側の部分にそれぞれ設けられるようになっている。
【0021】
各キャリヤ離脱防止機構19は、3つの駆動部材20、20、20と、それらの駆動部材20、20、20を回転駆動させる回転駆動機構23と、前記駆動部材20、20、20を回転駆動機構23と一体に水平方向に前進又は後退させる水平移動機構34と、前記駆動部材20、20、20を回転駆動機構23と一体に垂直方向に上昇又は下降させる垂直移動機構39とを具えている。
【0022】
回転駆動機構23は、基枠31に取り付けられるものであって、基枠31の上部にボルト(図示せず)等を介して取り付けられる駆動モータ等の駆動源24と、この駆動源24にベルト25等を介して連結されるとともに、軸受ケース26によって回転自在に支持される一次軸27と、一次軸27にベルト28等を介して連結されるとともに、軸受ケース29によって回転自在に支持される3本の二次軸30とを具え、各二次軸30の先端部にそれぞれ駆動部材20が一体に連結されるようになっている。
【0023】
各駆動部材20は、各二次軸30の先端部に一体に連結される円板状の基板21と、基板21の周縁部の同一円周上に所定の間隔ごとに回転自在に取り付けられるとともに、キャリヤ15の歯17と相互に噛合可能な複数の棒状の噛合ピン22とから構成されている。
【0024】
この場合、駆動部材20は、キャリヤ回転駆動機構7の中心と各キャリヤ15の中心とを結ぶ線の延長線上に1つ、その両側に左右対称となるように2つ設けられている。なお、駆動部材20は、各キャリヤ離脱防止機構19に少なくとも2つ設ければよいものであり、少なくとも2つの駆動部材20がキャリヤ回転駆動機構7の中心Oとキャリヤ15の中心Zとを結ぶ線の両側に左右対称となるように位置するように構成すればよいものである。
【0025】
基枠31は、研磨装置1の基台32の上部に位置する支持板33の上部に取り付けられるものであって、水平移動機構34によって水平方向に進退可能、垂直移動機構39によって垂直方向に上下動可能となっている。
【0026】
水平移動機構34は、基枠31と支持板33との間に設けられるとともに、基枠31と支持板33とを水平方向に相対的に進退自在に支持する案内ガイド35と、基枠31と支持板33との間に設けられるとともに、基枠31と支持板33とを水平方向に相対的に進退させる水平移動用シリンダ36とを具えている。
【0027】
水平移動用シリンダ36は、そのボディ37が支持板33側に固定されるとともに、そのロッド38が基枠31側に連結されるようになっている。したがって、水平移動用シリンダ36を作動させたときに、基枠31が支持板33に対して水平方向に相対的に進退し、基枠31に追従して各駆動部材20が水平方向に進退するものであり、各駆動部材20を前進させたときには、各駆動部材20の噛合ピン22とキャリア15の歯17とが相互に噛合し、各駆動部材20を後退させたときには、各駆動部材20の噛合ピン22がキャリア15の歯17から離間し、噛合状態が解除される。
そして、この水平移動用シリンダ36によって各駆動部材20を前進させてキャリヤ15の歯17との噛合時に歯17と噛合ピン22との間隙を接触する程度に設定することでキャリヤ15の寿命を長くすることができる。
【0028】
垂直移動機構39は、研磨装置1の基台32上に立設される複数本の支持軸40と、支持軸40に対応する支持板33の部分にそれぞれ取り付けられるとともに、内周側を支持軸40がスライド自在に挿通するすべり軸受41と、研磨装置1の基台32上に回転自在に立設されるねじ軸42と、ねじ軸42に対応する支持板33の部分に取り付けられるとともに、ねじ軸42と相互に螺合するナット43と、ねじ軸42を回転駆動させる駆動源(図示せず)とから構成されている。
【0029】
そして、駆動源を作動させてねじ軸42を回転させることにより、ねじ軸42のナット43に対する相対的な螺合位置が変化し、これに追従して支持板33、すなわち各駆動部材20の垂直方向への位置が変化するものである。したがって、各駆動部材20の垂直方向の位置を変化させることで、各駆動部材20の噛合ピン22のキャリヤ15の歯17に対する垂直方向の噛合位置を変化させることができるものである。
【0030】
上定盤5は、円板状に形成されるものであって、駆動源(図示せず)に連結されて水平方向に回転可能となっているとともに、上下移動用シリンダ等からなる上下移動機構(図示せず)に連結されて垂直方向に上昇又は下降可能となっている。上定盤5の下面側には研磨パッド6が設けられ、この研磨パッド6の下面側に各キャリヤ15に保持した被研磨物18の上面側が当接するようになっている。
【0031】
そして、上記のような構成の研磨装置1を用いて被研磨物18の研磨を行うには、下定盤2の上部の所定の位置に各キャリヤ15をそれぞれ位置させ、各キャリヤ15の歯17をキャリヤ回転駆動機構7の駆動部材9の噛合ピン11に噛合させる。
【0032】
そして、各キャリヤ離脱防止機構19の各駆動部材20を、各垂直移動機構39の駆動源を作動させることによって上昇又は下降させ、各駆動部材20の噛合ピン22を各キャリヤ15の歯17の水平方向の延長線上に位置させる。
【0033】
そして、各水平移動機構34の水平移動用シリンダ36を作動させて各駆動部材20を水平方向に前進させ、各駆動部材20の噛合ピン22を各キャリヤ15の歯17に噛合させる。
この時、各水平移動用シリンダ36のロッド38の突出量を調整して各キャリヤ離脱防止機構19の各駆動部材20の噛合ピン22とキャリヤ15の歯17との間に微小隙間が形成されるようにする。
これにより、キャリヤ15として大径の薄肉キャリヤを用いた場合であっても初動時に大きな付勢力がキャリヤ15に作用しないのでプラスチック製のキャリヤであってもキャリヤの耐久性を延ばすことができる。
【0034】
そして、各キャリヤ15の孔16内に被研磨物18をそれぞれ装填するとともに、上下移動機構(図示せず)の上下移動用シリンダ等を作動させて上定盤5を下降させ、上定盤5側の研磨パッド6を各被研磨物18の上面側に当接させ、上定盤5と下定盤2との間で各被研磨物18を挟持する。
このとき、被研磨物18の最外周は下定盤2の外周と略一致し、あるいはわずかに内方に位置している。
【0035】
そして、この状態で上下定盤2、5間に研磨液を供給しつつ、全ての駆動源を作動させて、下定盤2、上定盤5、キャリヤ回転駆動機構7の駆動部材9及び各キャリヤ離脱防止機構19の各駆動部材20を回転させ、各キャリヤ15を回転させる。この場合、各キャリヤ15と、駆動部材9および駆動部材20との回転方向および回転数により、キャリヤ15が自転のみをして公転しないように設定してあるのでキャリヤ15は常に初期の位置で自転して孔16内の被研磨物18は初期の位置で回転しつつ上下定盤5、2に対して移動して研磨されるようになる。
【0036】
そして、所定の時間経過後に、全ての駆動源を停止させて、下定盤2、上定盤5、キャリヤ回転駆動機構7の駆動部材9、および各キャリヤ離脱防止機構19の各駆動部材20を停止させ、各キャリヤ15を停止させる。このようにして、各被研磨物18の研磨面が所定の表面粗さに仕上げられるものである。
【0037】
上記のように構成したこの実施の形態による研磨装置1にあっては、各キャリヤ15は、キャリヤ回転駆動機構7の駆動部材9と各キャリヤ離脱防止機構19の各駆動部材20との協働によって公転せずに自転のみだけすることになる。したがって、装置全体の構造、制御を簡単にすることができるので、装置全体としての価格を安く抑えることができることになる。
【0038】
この研磨装置1をライン内に組み込んで被研磨物18の搬入、搬出の自動化を行う場合には、研磨終了後に被研磨物18の一部がキャリヤ15の中心Zを含む位置に必ず存在することになるので搬出のためのマニュピュレータ等がキャリヤの中心に来るようにセットしておけば位置決め等の補正を必要としない。
これにより、被研磨物18の搬入、搬出を行う移送装置等の構造、制御を簡単にすることができ、ライン全体の構造、制御を簡単にすることができ、ライン全体としての価格を安く抑えることができることになる。
【0039】
さらに、キャリヤ回転駆動機構7の駆動部材9及び各キャリヤ離脱防止機構19の各駆動部材20は、ともに駆動源によって回転駆動させられるようになっているので、初動時に各キャリヤ15に対して公転方向への過大な力が作用するようなことはなく、各キャリヤ15を300mm用等の薄肉のものとした場合であっても、初動時に各キャリヤ15が歪んでしまって各キャリヤ15から被研磨物18が飛び出してしまうようなことはない。
したがって、今後主流となる300mmの被研磨物18を研磨する場合であっても、生産効率を大幅に高めることができることになる。
【0040】
なお、前記の説明においては、各キャリヤ離脱防止機構19にそれぞれ回転駆動機構23と水平移動機構34と垂直移動機構39とを設けたが、図示はしないが、1つの回転駆動機構と1つの水平移動機構と1つの垂直移動機構によって3つのキャリヤ離脱防止機構19を回転、水平方向に進退、垂直方向に上下動させるように構成してもよいものである。また、前記キャリヤ15として定寸キャリヤを使用することも可能である。さらに、キャリヤ15の孔16を角形とし、被研磨物としてキャリヤの孔に合致する角形のものを研磨するようにしたとしても被研磨物の内方に常にキャリヤの中心が位置するように構成しておけばライン内に組み込むことが可能である。
【0041】
【発明の効果】
この発明は前記のように構成したことにより、キャリヤ回転駆動機構とキャリヤ離脱防止機構との協働によって、キャリヤを公転させずに自転のみさせて被研磨物の研磨を行うことができる。したがって、キャリヤを公転するための機構、制御が不要となるので、装置全体の構造、制御を簡単にすることができ、装置全体としての価格を安く抑えることができることになる。
また、キャリヤが公転しないで被研磨物の研磨を終了することができ、しかも、被研磨物は必ずその一部がキャリヤの中心に存在するので、搬出のためのマニュピュレータ等がキャリヤの中心に来るようにセットしておけば被研磨物に対して搬出のための位置決め等の補正を必要としない。したがって、ライン全体としての構造、制御を簡単にすることができるのでライン全体としての価格を安く抑えることができる。
さらに、キャリヤ回転駆動機構の駆動部材とキャリヤ離脱防止機構の駆動部材との両方を駆動源によって回転駆動するように構成し、しかも、キャリヤの歯とキャリヤ離脱防止機構の駆動部材との隙間を調整可能としたので初動時にキャリヤに対して公転方向へ過大な力が作用することはなくなるとともに、キャリヤに対して駆動部材が大きな付勢力を与えることを防止できる。したがって、200mmの場合のキャリヤと同一の厚みおよび強度である300mm等用の大径の薄肉のキャリヤを用いたとしても、初動時にキャリヤが歪んでしまって被研磨物が飛び出したりする恐れがないとともに、キャリヤの耐久性を延ばすことができるので、今後主流とする300mm用等の大径の被研磨物を研磨する場合においても、耐久性を確保することができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による研磨装置の一実施の形態の全体を示した概略縦断面図である。
【図2】図1に示すものの部分拡大図である。
【図3】図1に示すものの部分拡大図である。
【図4】図1に示すもののキャリヤ回転駆動機構の駆動部材とキャリヤとの噛合状態および各キャリヤ離脱防止機構の各駆動部材とキャリヤとの噛合状態を示した説明図である。
【図5】図4に示すもののキャリヤとこのキャリヤに噛合する1つの駆動部材の噛合ピンとの関係を示す概略図である。
【符号の説明】
1……研磨装置
2……下定盤
3、16……孔
4、6……研磨パッド
5……上定盤
7……キャリヤ回転駆動機構
8……駆動軸
9、20……駆動部材
10、21……基板
11、22……噛合ピン
15……キャリヤ
17……歯
18……被研磨物
19……キャリヤ離脱防止機構
23……回転駆動機構
24……駆動源
25、28……ベルト
26、29……軸受ケース
27……一次軸
30……二次軸
31……基枠
32……基台
33……支持板
34……水平移動機構
35……案内ガイド
36……水平移動用シリンダ
37……ボディ
38……ロッド
39……垂直移動機構
40……支持軸
41……すべり軸受
42……ねじ軸
43……ナット

Claims (4)

  1. 駆動源に連結されて回転可能な下定盤と上定盤との間に少なくとも1つのキャリヤを位置して、前記下定盤の中心部に位置するとともに、駆動源に連結されて回転可能なキャリヤ回転駆動機構の駆動部材に前記キャリヤを噛合させ、前記キャリヤの孔内に被研磨物を装填し、前記少なくとも1つのキャリヤに対応する下定盤の外周側の部分に位置するとともに、駆動源に連結されて回転可能な少なくとも2つの駆動部材を有するキャリヤ離脱防止機構の前記各駆動部材を前記キャリヤに噛合させ、この状態で全ての駆動源を作動させて前記下定盤、上定盤、キャリヤ回転駆動機構の駆動部材及びキャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を回転させ、前記キャリヤを公転させずに自転のみさせて前記被研磨物を研磨する研磨方法であって、
    前記キャリヤに歯を設けるとともに、前記キャリヤ回転駆動機構の駆動部材及び前記キャリヤ離脱防止機構の各駆動部材に前記キャリヤの歯と噛合可能な噛合ピンを複数設けたことを特徴とする研磨方法。
  2. 前記キャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を水平方向に前進・後退可能、かつ垂直方向に上昇・下降可能とした請求項1記載の研磨方法。
  3. 駆動源に連結されて回転可能な下定盤と、下定盤の上方に位置するとともに、駆動源に連結されて回転可能な上定盤と、下定盤と上定盤との間に設けられるとともに、被研磨物を保持するための孔が設けられる少なくとも1つのキャリヤと、下定盤の中心部に設けられるとともに、駆動源に連結されて回転可能であり、かつ、前記キャリヤと相互に噛合可能な駆動部材を有するキャリヤ回転駆動機構と、前記少なくとも1つのキャリヤに対応する下定盤の外周側の部分に設けられるとともに、駆動源に連結されて回転可能かつ前記キャリヤと噛合可能な少なくとも2つの駆動部材を有するキャリヤ離脱防止機構とを具え、全ての駆動源を作動させて前記下定盤、上定盤、キャリヤ回転駆動機構の駆動部材及びキャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を回転させ、前記キャリヤを公転させずに自転のみさせて前記被研磨物を研磨する研磨装置であって、
    前記キャリヤに歯を設けるとともに、前記キャリヤ回転駆動機構の駆動部材及び前記キャリヤ離脱防止機構の各駆動部材に前記キャリヤの歯と噛合可能な噛合ピンを複数設けたことを特徴とする研磨装置。
  4. 前記キャリヤ離脱防止機構の各駆動部材を、水平方向に前進・後退可能、かつ垂直方向に上昇・下降可能とした請求項記載の研磨装置。
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