JP4238975B2 - NOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置及び推定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、NOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置及び推定方法に係り、詳しくは、NOx吸蔵触媒の再生を行うにあたり、モデル式を用いてNOx吸蔵量を推定するNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置及び推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、NOx吸蔵触媒は、排気空燃比が希薄(リーン)のときに排気中のNOx(窒素酸化物)を吸蔵し、排気空燃比が過濃(リッチ)のときに吸蔵したNOxを放出還元する吸蔵型のNOx触媒である。
具体的には、酸素過剰状態(酸化雰囲気)において排ガス中のNOxを硝酸塩として吸蔵し、この吸蔵したNOxを一酸化炭素過剰状態(還元雰囲気)で窒素に還元させる特性を有している。
【0003】
ここで、図6は、NOx吸蔵触媒の性能を示す図であり、NOx吸蔵触媒は、NOx吸蔵量が少ないときにはNOx浄化率は高くなるのに対し、NOx吸蔵量が多くなると、NOx浄化率が急激に低くなる性能を有している。よって、エンジンは、NOx吸蔵量が飽和する前に排気空燃比を理論空燃比又はその近傍値に制御する如くの空気過剰率が低い状態のリッチ運転と、空気過剰率が高い状態のリーン運転とを定期的に切り換えるリッチスパイクを行う。これにより、燃費悪化が生ずるものの、吸蔵したNOxを放出還元させてNOx吸蔵触媒の再生が図られ、排ガスの浄化が良好に行われる。
【0004】
このように、NOx吸蔵触媒には再生が必要不可欠なものであるが、その再生では、燃費悪化を抑制させるためにリッチ運転を必要最小限度に抑えることが重要となる。よって、リッチ運転を必要最小限度に抑えるには、NOx吸蔵量を正確に把握することが要求される。
ここで、上記NOx吸蔵量を把握するには、NOx吸蔵触媒の上流側及び下流側に配設されたNOxセンサの値を用いることが知られており、上流NOx濃度と下流NOx濃度の差分に排ガスの流量を乗算することでNOx吸蔵量を推定している。
【0005】
しかし、NOx吸蔵触媒ではリッチ運転中には窒素として放出されるので、NOx放出量(吸蔵されたNOxの減少量)をNOxセンサで検知することは困難である。よって、このNOx吸蔵量の推定方法では、NOxが吸蔵され続けるリーン運転中には、NOx吸蔵量を推定することが可能であるものの、例えば運転状況によりリッチ運転が不十分であった場合等には、リーン運転の開始時点にてNOx吸蔵触媒に残留しているNOx吸蔵量を検知することができない。つまり、このNOx吸蔵量の推定方法では、残留しているNOx吸蔵量を加味できず、推定されたNOx吸蔵量に誤差が生じてしまうとの問題がある。
【0006】
また、上記NOx吸蔵量を把握するには、リッチ運転の開始時点及び終了時点の双方のNOx浄化率をNOxセンサから求め、これらのNOx浄化率の回復度合に基づいてNOx放出量(吸蔵されたNOxの減少量)を求めることができるとも考えられる。しかし、NOx浄化率は、触媒温度及び排ガスの流量による影響が大きいものである。したがって、リッチ運転の開始時点とリッチ運転の終了時点にて触媒温度及び排ガスの流量が異なる場合には、NOx放出量に誤差が生じ、推定されたNOx吸蔵量にも誤差が生じてしまうとの問題がある。
【0007】
このように、NOx吸蔵触媒の入口側のNOx濃度と出口側のNOx濃度を検出するだけでは、NOx吸蔵量を正確に推定することができず、これを解決すべく触媒吸蔵モデルを用いてNOx吸蔵量を正確に推定することが考えられる。そして、触媒吸蔵モデルを用いたものとして内燃機関の空燃比制御装置の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
当該制御装置では、流入ガスの吸蔵反応分、流入ガスと吸蔵物質との酸化還元反応分、吸蔵物質の離脱反応分及び流入ガスの未反応分をそれぞれ考慮したモデル式が用いられており、該モデル式に基づく空燃比制御により排ガスの浄化効率の向上を図っている。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−72235号公報(段落番号0003〜0017、図14等)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の内燃機関の空燃比制御装置では、上述の如くモデル式を用いてリーン及びリッチの各反応形態に応じた吸蔵量及び還元量等を求め、吸蔵物質の浄化率が一定となるように空燃比制御を行っている。また、触媒下流側のセンサ出力値に基づいて触媒の経時変化に対応させている。
【0011】
しかしながら、上記従来の技術では、モデル式を用いてリーン及びリッチの各反応形態に応じた吸蔵量を求め、これを三元触媒に対する吸蔵量として推定しており、触媒の状態を把握することができる一方、排ガス成分のうち、特にNOxについて鑑みれば、上述のリーン運転の開始時点にてNOx吸蔵触媒に残留しているNOx吸蔵量を検知すること、並びに、リッチ運転の開始時点とリッチ運転の終了時点では触媒温度及び排ガスの流量が異なることについては格別な配慮がなされていない。つまり、このモデル式に対して上流側及び下流側のNOx濃度の値を用いてNOx吸蔵量を推定したとしても、例えば、NOx吸蔵量が回復した場合には、この回復が、NOxの放出に伴ってNOx浄化率が上昇してNOx吸蔵量が回復したものであるのか、又は、触媒温度及び排ガスの流量の変化によってNOx浄化率が上昇してNOx吸蔵量が回復したかの如く見えるのかという違いを知ることができないとの問題がある。換言すれば、前記従来の技術の如くの触媒吸蔵モデルを用いたとしても、NOx吸蔵量をより正確に把握する点については依然として課題が残されている。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、NOx吸蔵触媒のNOx吸蔵量の推定において、リッチ運転の開始時点とリッチ運転の終了時点における触媒温度及び排ガスの流量をも考慮する触媒吸蔵モデルにより、NOx吸蔵触媒に残留しているNOx吸蔵量を含め、NOx吸蔵量をより正確に把握することができるNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置及び推定方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく、請求項1記載のNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置は、機関の排気通路に設けられ、リーン運転時に排気中のNOxを吸蔵するとともに吸蔵したNOxをリッチ運転を行うことにより放出還元させるNOx吸蔵触媒と、NOx吸蔵触媒の下流側に配設されたNOxセンサと、排気通路の排ガスの流量、NOx吸蔵触媒の触媒温度、NOx浄化率に関わり同定される相当吸蔵率補正パラメータ及びNOx吸蔵量の初期値に基づいてリーン運転中におけるNOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度を演算するNOx濃度演算部と、排ガスの流量及び触媒温度に基づいてリッチ運転中におけるNOx吸蔵触媒の下流側の還元剤濃度を演算する還元剤濃度演算部と、NOx濃度演算部及び還元剤濃度演算部の各出力信号に基づいてNOx吸蔵触媒のNOx吸蔵量を推定するNOx吸蔵量推定部とを備え、NOx濃度演算部は、NOxセンサによる実測された下流側のNOx濃度とNOx濃度演算部で演算された下流側のNOx濃度とを比較してNOx吸蔵量の初期値を補正し、NOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度を演算することを特徴としている。
【0014】
したがって、請求項1記載のNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置では、NOx吸蔵触媒を簡略な数式でモデル化し、NOx濃度演算部にて、排ガスの流量、触媒温度の他、NOx浄化率に関わり同定される相当吸蔵率補正パラメータに基づくリーン運転時のNOx吸蔵量が独自に演算され、また、還元剤濃度演算部にて、排ガスの流量及び触媒温度に基づくリッチ運転時のNOx放出量が独自に演算されることから、リッチ運転の開始時点及びリッチ運転の終了時点の触媒温度及び排ガスの流量を考慮してNOx吸蔵量を推定することが可能になる。
【0015】
しかも、各モデル式で排ガスの流量及び触媒温度が考慮されているにも拘わらず、相当吸蔵率補正パラメータはリッチ運転中には同定されないことから、NOx濃度演算部では、これにより生じるリッチ運転中におけるNOx吸蔵量の変化を考慮すべくNOx吸蔵量の初期値を補正し、NOx吸蔵量推定部では、この補正されたNOx吸蔵量の初期値を用いてNOx吸蔵触媒のNOx吸蔵量を推定しているので、リーン運転の開始時点にてNOx吸蔵触媒に残留しているNOx吸蔵量を正確なものにすることができる。
【0016】
このように、従来のNOx吸蔵触媒再生時のリッチ運転の如く、触媒温度や排ガスの流量を考慮せずに例えば設定されたリーン運転時間に達すればリッチ運転に切り換えられていた場合には、NOx吸蔵量が未だ少ないにも拘わらず、早めのリッチ運転が行われることがあり、NOx吸蔵触媒の性能を最大限まで生かすことができなかったが、上記請求項1記載のNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置によれば、リーン運転の開始時点にてNOx吸蔵触媒に残留しているNOx吸蔵量を含め、NOx吸蔵量をより正確に把握することが可能になり、最適なリッチ運転制御の実施によって燃費悪化が抑制される。
【0017】
なお、NOx吸蔵触媒の上流側にもNOxセンサを配設することが好ましく、この場合には、NOx吸蔵量の推定精度の一層の向上が図られる。
また、請求項2記載の発明では、相当吸蔵率補正パラメータは、NOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度が増大すると減少する関係にある補正パラメータであり、同定される相当吸蔵率補正パラメータの一定期間内の平均値が所定値以下のとき、NOx吸蔵触媒の異常を判定する触媒異常判定部をさらに備えることを特徴としている。
【0018】
相当吸蔵率補正パラメータはNOx浄化率に関するものであって、相当吸蔵率補正パラメータとNOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度とは、例えば相当吸蔵率補正パラメータが小さくなると、NOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度が大きくなる関係にあることから、相当吸蔵率補正パラメータの値をモニタすることでNOx浄化率の低下、すなわちNOx吸蔵触媒の異常を判定可能であり、このようにNOx吸蔵触媒の劣化及び破損を検知する機能を備えれば、運転者への警告の他、触媒劣化時にはリッチ運転を禁止させることが可能になり、高濃度の還元剤の排出が防止されるとともに、OBD(On Board Diagnosis)対応等の各種の応用が可能になる。
【0019】
さらに、請求項3記載の発明では、還元剤濃度演算部は、還元剤浄化率に関わる相当放出率補正パラメータをさらに用いてNOx吸蔵触媒の下流側の還元剤濃度を演算することを特徴としている。
このように、相当放出率補正パラメータを用いれば、NOx吸蔵触媒に導入される還元剤の量に対してNOxがどの程度反応するかの関係をも加味することができるので、NOx吸蔵量の推定精度のさらなる向上が図られる。
【0020】
また、請求項4記載のNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定方法は、機関の排気通路の排ガスの流量、機関の排気通路に設けられてリーン運転時に排気中のNOxを吸蔵するとともに吸蔵したNOxをリッチ運転を行うことで放出還元させるNOx吸蔵触媒の触媒温度、NOx浄化率に関わり同定される相当吸蔵率補正パラメータ及びNOx吸蔵量の初期値に基づいてリーン運転中におけるNOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度を演算するNOx濃度演算工程と、排ガスの流量及び触媒温度に基づいてリッチ運転中におけるNOx吸蔵触媒の下流側の還元剤濃度を演算する還元剤濃度演算工程と、NOx濃度演算工程及び還元剤濃度演算工程の各出力信号に基づいてNOx吸蔵触媒のNOx吸蔵量を推定するNOx吸蔵量推定工程とを備え、NOx濃度演算工程では、NOx吸蔵触媒の下流側に配設されたNOxセンサにより実測された下流側のNOx濃度とNOx濃度演算工程で演算された下流側のNOx濃度とを比較してNOx吸蔵量の初期値を補正し、NOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度を演算することを特徴としている。
【0021】
したがって、請求項4記載のNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定方法では、NOx吸蔵触媒を簡略な数式でモデル化し、NOx濃度演算工程によってリーン運転時のNOx吸蔵量が演算され、還元剤濃度演算工程によってリッチ運転時のNOx放出量が演算され、それぞれの工程が排ガスの流量及び触媒温度を加味しつつも独立して演算されているので、NOx用であれば触媒の種類を問わず汎用性かつ信頼性の高い吸蔵量の推定が実現される。例えば、NOx吸蔵量の回復が、NOx放出によってNOx浄化率が変化してNOx吸蔵量が回復したものであるのか、若しくは、触媒温度及び排ガスの流量の変化によってNOx浄化率が変化してNOx吸蔵量が回復したようにみえただけなのかの違いも確実に把握することが可能になる。
【0022】
そして、触媒モデル式と下流側のNOxセンサにより補正されたNOx吸蔵量の初期値を用いてNOx吸蔵触媒のNOx吸蔵量を推定しているので、リーン運転の開始時点にてNOx吸蔵触媒に残留しているNOx吸蔵量を含め、NOx吸蔵量を正確に把握することができ、NOx吸蔵量の推定精度の向上が図られる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るNOx吸蔵量推定装置が適用される多気筒のディーゼル機関(以下、単にエンジンという)1を備えたエンジンシステム構成図を示しており、以下図1に基づき本発明に係るNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置の構成を説明する。
【0024】
同図に示すように、エンジン1の各気筒2には、燃料噴射装置を有した燃料供給系16と、吸気弁6の開弁により燃焼室4に新気(吸入空気)を導入させる吸気通路8と、排気弁18の開弁により燃焼室4からの排ガスを導出させる排気通路20とが接続されている。
この吸気通路8の上流側には過給機14が介装され、吸気通路の8の先端部にはエアクリーナ(図示せず)が接続されている。また、吸気通路8には、給気スロットル10が配設され、さらに、インタークーラ12が介装されている。
【0025】
一方、排気通路20の下流側にはNOx吸蔵触媒22が接続されている。NOx吸蔵触媒22は、排気空燃比がリーンのときに排気中のNOxを吸蔵し、排気空燃比がリッチ等で排ガス中に還元剤(HCやCO)が存在するときに、吸蔵したNOxの放出還元を行うものであり、このNOx吸蔵触媒は公知の構成ものである。
【0026】
また、排気通路20からは排気循環通路(EGR通路)24が分岐して延びており、排ガスの一部(EGRガス)を吸気通路8内に再循環させてNOxの排出を抑制させる。このEGR通路24の先端は、吸気通路8の給気スロットル10の配設位置よりも下流側にて吸気通路8に接続されている。このEGR通路24には、EGRガスの冷却を図るEGRクーラ26と、電子コントロールユニット(ECU)40に電気的に接続されたEGRバルブ28とが設けられ、EGRバルブ28によってEGR通路24の流路面積が調節される。
【0027】
なお、給気スロットル10もまたECU40に電気的に接続されており、吸気通路8の流路面積が調節されることにより、筒内リッチの際のEGRガス量を調整し、EGR通路24と吸気通路8との合流後の給気量を調整する。
エアクリーナからの新気は、過給機14を介して吸気通路8に入ってインタークーラ12に達し、給気スロットル10で調整された後、EGRガスと合流して給気となって各気筒2の燃焼室4内に導かれる。そして、燃料供給系16から供給される燃料の燃焼により、クランク軸38及びフライホイール39を作動させる。燃焼が終了すると、排ガスは排気通路20に排出され、NOx吸蔵触媒22に送られる。
【0028】
ここで、排気通路20において、NOx吸蔵触媒22の下流側の適宜位置には、NOxセンサ30が配設され、NOx吸蔵触媒22のNOx吸蔵の際に僅かながらも検出される下流側のNOx濃度を実測している。また、排気通路20において、NOx吸蔵触媒22の上流側の適宜位置には、排ガス流量センサ32と排ガス温度センサ34とが配設され、排気通路20内の排ガス流速とNOx吸蔵触媒22の触媒温度とをそれぞれ検出している。
【0029】
ECU40の入力側には、上述のNOxセンサ30、排ガス流量センサ32及び排ガス温度センサ34の他、クランク角センサ36等のエンジン1の運転状態を検出する各種センサが電気的に接続されている。これに対してECU40の出力側には、上述の燃料供給系16、給気スロットル10及びEGRバルブ28の各種アクチュエータが電気的に接続されている。また、NOx吸蔵触媒22の劣化等を運転者に知らせる警告手段50も接続されている。
【0030】
そして、ECU40は、酸化雰囲気にて排ガス中のNOxをNOx吸蔵触媒22に吸蔵する一方、エンジン1に対して空気過剰率が低い状態と高い状態とを適宜切り換えるリッチスパイクを行い、吸蔵したNOxを還元雰囲気で放出還元させてNOx吸蔵触媒22の再生を図っている。本実施形態におけるリッチ運転としては、大量EGRを実施、つまり、EGRバルブ28及び給気スロットル10を用い、不完全燃焼による一酸化炭素の排出を利用する筒内リッチによってリッチ運転の条件を作り、この条件が成立すればNOxの放出還元を行う。
【0031】
ここで、特にECU40は、NOx吸蔵触媒22のNOx吸蔵量の推定を行う触媒吸蔵モデルを有しており、これにより、排ガスの流量及び触媒温度を加味しつつ、リーン運転時のNOx吸蔵量とリッチ運転時のNOx放出量とを独立して演算し、これらNOx吸蔵量及びNOx放出量を用いてNOx吸蔵量を正確に推定可能にされている。
【0032】
詳しくは、ECU40には、NOx濃度演算工程として、リーン運転中におけるNOx吸蔵触媒22の下流側のNOx濃度を演算するNOx濃度演算部42と、還元剤濃度演算工程として、リッチ運転中におけるNOx吸蔵触媒22の下流側の還元剤濃度を演算する還元剤濃度演算部44と、NOx吸蔵量推定工程として、NOx濃度演算部22及び還元剤濃度演算部44の各出力信号に基づいてNOx吸蔵触媒22のNOx吸蔵量を推定するNOx吸蔵量推定部46とを備えるとともに、NOx吸蔵触媒22の触媒異常判定部48とを備えている。
【0033】
上記触媒吸蔵モデルではモデル式を用い、このモデル式は、NOx吸蔵触媒22の上流側のNOx濃度及び上流側の還元剤濃度、排ガス流速並びに触媒温度を入力とし、予め定められた定数とNOx浄化率に関わる相当吸蔵率補正パラメータAとを用いて、リーン運転中におけるNOx吸蔵触媒22の下流側のNOx濃度、リッチ運転中におけるNOx吸蔵触媒22の下流側の還元剤濃度、及びNOx吸蔵量をそれぞれ出力とする。
【0034】
具体的には、NOx濃度演算部42では、ガス流速、触媒温度T、上流NOx濃度及びNOx浄化率に関わる相当吸蔵率補正パラメータA並びに限界NOx吸蔵量及びNOx吸蔵量に基づいてリーン運転中におけるNOx吸蔵触媒22の下流側のNOx濃度を次式(1)の如く演算する。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、k1(T)は反応速度定数であり、例えばアレニウス式より算出される。また、上流NOx濃度は、エンジン1の運転条件からECU40に備えられたマップで求められる。さらに、式中の限界NOx吸蔵量は、NOx吸蔵触媒22の大きさによって設定され、また、式中のNOx吸蔵量は1ステップ前のNOx吸蔵量の推定値(NOx吸蔵量の初期値)であり、α2は定数である。そして、本モデル式は、NOx吸蔵量が増加すれば下流NOx濃度の値は大きくなる関係を有している。
【0037】
また、NOx濃度演算部42では、後述するように、NOxセンサ30による実測値と上記モデル式によるNOx濃度の演算値とを比較し、相当吸蔵率補正パラメータAの他、NOx吸蔵量推定部46にて用いられる下流NOx濃度の精度の向上を図るべく、NOx吸蔵量の初期値を補正している。
次に、還元剤濃度演算部44では、ガス流速、触媒温度T、上流還元剤濃度及びNOx吸蔵量に基づいてリッチ運転中におけるNOx吸蔵触媒22の下流側の還元剤濃度を次式(2)の如く演算する。
【0038】
【数2】
【0039】
ここで、k2(T)もまた反応速度定数であり、例えばアレニウス式より算出される。また、上流還元剤濃度は、エンジン1の運転条件からECU40に備えられたマップで求められる。さらに、式中のNOx吸蔵量は1ステップ前のNOx吸蔵量の推定値(NOx吸蔵量の初期値)である。そして、本モデル式は、NOx吸蔵量が増加すれば下流還元剤濃度の値は小さくなる関係を有している。特に、本モデル式は、NOxセンサ30では下流側の還元剤の量が検出できないにも拘わらず、上記NOx放出量の演算によってNOx吸蔵触媒22の状況を知ることを可能にしている。
【0040】
そして、NOx吸蔵量推定部46では、ガス流速、上流NOx濃度、上流還元剤濃度並びにNOx濃度演算部42で演算された下流NOx濃度及び還元剤濃度演算部44で演算された下流還元剤濃度に基づいてNOx吸蔵触媒22のNOx吸蔵量を次式(3)の如く推定する。
【0041】
【数3】
【0042】
ここで、α1は定数であり、上流NOx濃度及び上流還元剤濃度は、エンジン1の運転条件からECU40に備えられたマップで求められる。また、式中の下流NOx濃度は、NOxセンサ30の実測値が用いられる。そして、本モデル式は、リーン運転中におけるNOx吸蔵触媒22のNOx吸蔵量と、リッチ運転中におけるNOx吸蔵触媒22のNOx放出量とが別個独立して演算された結果が用いられている。なお、NOx吸蔵触媒22のNOx放出量は、リーン運転中にはほぼ零に等しくなる。
【0043】
図2は、NOx濃度演算部42のブロック図である。NOx濃度演算部42は、モデル式NOx濃度演算部421と、比較部422と、補正計算部423とから構成される。
モデル式NOx濃度演算部421では、上記各入力値に基づいてNOx吸蔵触媒22の下流側のNOx濃度を演算して比較部422にまず出力する。
【0044】
比較部422では、NOxセンサ30によるNOx吸蔵触媒22の下流側のNOx濃度の実測値とNOx吸蔵量推定部46によるNOx濃度の演算値とを比較してその結果を補正計算部423に出力する。
補正計算部423では、まず、リーン運転中において、前記NOx濃度の演算値と実測値との比較結果に基づいて最小二乗法により相当吸蔵率補正パラメータAを同定させる。そして、リッチ運転中においては、放出したが還元されないNOxが一時的に多量に排出される現象が起きることがあるために相当吸蔵率補正パラメータAを同定させることができないことから、相当吸蔵率補正パラメータAをそのまま保持し、モデル式NOx濃度演算部421に出力する。
【0045】
次に、モデル式NOx濃度演算部421では、再度のリーン運転中において、同定された相当吸蔵率補正パラメータAを用いて再び下流側のNOx濃度を演算して比較部422に出力する。比較部422では、NOxセンサ30によって再度検出されたNOx濃度の実測値とこの演算値とを比較する。なお、この比較は、NOx浄化率の実測値とNOx浄化率の演算値とで行われる。
【0046】
そして、補正計算部423では、これら実測値と演算値との差が所定の閾値以上である場合には、図6に示したNOx吸蔵触媒22のNOx浄化率とNOx吸蔵量との関係にしたがって、NOx吸蔵量の初期値を補正してモデル式NOx濃度演算部421に出力する。つまり、この場合には、上記式(1)の1ステップ前のNOx吸蔵量をこの補正された後のNOx吸蔵量としている。これは、上述のように、リッチ運転中には相当吸蔵率補正パラメータAを同定できずに保持されたままであり、還元剤濃度演算部44では相当吸蔵率補正パラメータAが考慮されていない。一方、上記各モデル式では、ともに排ガス流速及び触媒温度が既に考慮されていることから、それでも実測値と演算値との間に上記所定の閾値以上の差が生じるのは、前記相当吸蔵率補正パラメータAが同定できなかったことによってNOx吸蔵触媒22のリーン運転開始時点のNOx吸蔵量に対して変更が必要であると擬制できるからである。
【0047】
そして、NOx吸蔵量推定部46では、上記補正されたNOx吸蔵量の初期値を用いてNOx吸蔵量の推定を行う。また、相当吸蔵率補正パラメータAは、補正計算部423から触媒異常判定部48に出力される。
なお、NOx濃度演算部42にて補正されたNOx吸蔵量が用いられた場合には、還元剤濃度演算部44における上記式(2)の1ステップ前のNOx吸蔵量もまた上記補正された後のNOx吸蔵量とされる。
【0048】
図3は、NOx濃度演算部42における補正計算のフローチャートである。
同図に示すように、ステップS301では、補正計算部423にて、リーン運転時の相当吸蔵率補正パラメータAを同定する。次に、ステップS302では、リーン運転が終了してリッチ運転が開始されたか否かを判別し、リッチ運転が開始したと判定された場合、すなわちYESのときには、ステップS303に進んでリッチ運転期間中では同定された相当吸蔵率補正パラメータAを保持し、ステップS304に進む。一方、ステップS302でリッチ運転が開始していないと判定された場合には、リーン運転時の相当吸蔵率補正パラメータAの同定作業に戻る(ステップS301)。
【0049】
ステップS304では、リッチ運転が終了してリーン運転が開始されたか否かを判別し、リッチ運転が終了したと判定された場合、すなわちYESのときには、ステップS305に進み、モデル式NOx濃度演算部421にて、同定された相当吸蔵率補正パラメータAを用いてNOx濃度を再び演算してNOx浄化率を求め、ステップS306に進む。一方、ステップS304でリッチ運転が終了していないと判定された場合には、相当吸蔵率補正パラメータAを保持すべく、ステップS303に戻る。
【0050】
ステップS306では、比較部422にて、NOx浄化率の実測値とNOx浄化率の演算値との差が1ステップ前のNOx吸蔵量の値を疑うべき程の所定の閾値以上であるか否かを判別し、所定の閾値以上であると判定された場合、すなわちYESのときには、ステップS307に進み、補正計算部423にてNOx吸蔵量の初期値を補正し、この値を用いてモデル式NOx濃度演算部421でNOx濃度をさらに演算すべく、ステップS305に戻る。そして、NOx浄化率の実測値とNOx浄化率の演算値との差が所定の閾値未満に達するまで、補正計算部423でのNOx吸蔵量の初期値の補正を繰り返す。
【0051】
そして、ステップS306でNOx浄化率の実測値とNOx浄化率の演算値との差が所定の閾値以上でないと判定されたときには、ステップS301に戻り、補正計算部423にて、リーン運転時の相当吸蔵率補正パラメータAの同定作業に移行する。以後、相当吸蔵率補正パラメータAの同定とNOx吸蔵量の初期値の補正とが各運転毎に繰り返される。
【0052】
次に、上記触媒異常判定部48について説明する。
図4は触媒異常判定部48における触媒劣化検知のフローチャートであり、図5は触媒異常判定部48による異常判定に用いられる図である。
触媒異常判定部48は、同定される相当吸蔵率補正パラメータAの一定期間内の平均値が所定値以下のときに、NOx吸蔵触媒22が劣化或いは破損による異常であることを判定し、警告手段50にその旨を出力する。
【0053】
具体的には、図4に示すように、ステップS401では、補正計算部423にて相当吸蔵率補正パラメータAがリーン運転毎に同定され、ステップS402では、リーン運転中に同定されるまでの相当吸蔵率補正パラメータAを監視し、同定に至るまでの一定期間内における相当吸蔵率補正パラメータAの移動平均値を計算してステップS403に進む。
【0054】
ステップS403では、一定期間内の相当吸蔵率補正パラメータAの平均値が、NOx吸蔵触媒22が劣化或いは破損による異常と考えられる所定の閾値以下に達しているか否かを判別し、所定の閾値以下に達していると判定された場合、すなわちYESのときには、ステップS404に進む。なぜならば、上式(1)のモデル式の如く、相当吸蔵率補正パラメータAは、上流NOx濃度と下流NOx濃度との比が増加すれば増加し、換言すれば、相当吸蔵率補正パラメータAは、下流NOx濃度が増大すると減少する関係を有するものであることから、一定期間内の相当吸蔵率補正パラメータAの平均値が小さくなると、下流NOx濃度が高くなって一定期間内のNOx吸蔵触媒22の平均NOx浄化率も低くなり、NOx吸蔵触媒22が劣化等の状態にあることを判別できるからである(図5参照)。
【0055】
そして、ステップS404では、NOx吸蔵触媒22が異常である旨の警報を警告手段50の一態様であるランプに出力して運転者にその旨を視覚的に知らせてステップS405に進み、この場合には有害な還元剤成分が多量に排出されるのを防ぐべく、リッチ運転を禁止する信号を出力する。
一方、ステップS403で所定の閾値以下に達していないと判定されたときには、同定された相当吸蔵率補正パラメータAの一定期間内の移動平均値を計算すべくステップS402に戻る。
【0056】
以上のように、本発明では、NOx濃度演算部42及び還元剤濃度演算部44が、リーン運転時のNOx濃度演算工程とリッチ運転時の還元剤濃度演算工程として、排ガスの流量及び触媒温度を考慮して別個独立に計算されている。つまり、NOx濃度演算部42では、排ガスの流量、触媒温度、相当吸蔵率補正パラメータA及びNOx吸蔵量の初期値に基づくリーン運転時のNOx吸蔵量が演算されているので、リッチ運転の開始時点の触媒温度及び排ガスの流量を考慮することができ、また、還元剤濃度演算部44では、排ガスの流量及び触媒温度に基づくリッチ運転時のNOx放出量が演算されているので、リッチ運転の終了時点の触媒温度及び排ガスの流量を考慮することができる。よって、リッチ運転の開始時点と終了時点とで排ガスの流量及び触媒温度が異なる場合にも、NOx放出量に誤差が生じ難くなり、NOx吸蔵量の正確な把握を可能にすることができる。
【0057】
特に、NOx吸蔵触媒22の下流側にNOxセンサ30が配設され、下流側の還元剤の濃度を単純には検出できないエンジン構成であっても、還元剤濃度演算部44ではNOx放出量の演算が可能になり、NOx吸蔵触媒22の状況を知ることができる。
そして、NOx濃度演算部42の補正計算部423では、NOxセンサ30による下流側のNOx濃度の実測値とモデル式NOx濃度演算部421による下流側のNOx濃度の演算値とを比較してNOx吸蔵量の初期値を逐次補正し、NOx吸蔵量推定部46では、この補正後のNOx吸蔵量の初期値を用いてNOx吸蔵触媒22のNOx吸蔵量を推定していることから、NOx吸蔵量推定工程では、排ガスの流量、触媒温度を考慮することと相俟ってリーン運転の開始時点にてNOx吸蔵触媒に残留しているNOx吸蔵量をも考慮したNOx吸蔵量を推定することができ、NOx吸蔵量を正確に把握してNOx吸蔵触媒22の性能を最大限まで生かすことができる。
【0058】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、NOx濃度演算部42では、相当吸蔵率補正パラメータAが用いられているのに対し、還元剤濃度演算部44では、このような補正パラメータが用いられていないが、必ずしもこの形態に限定されるものではなく、例えば、次式(4)及び(5)に示す如く、NOx濃度演算部では相当吸蔵率補正パラメータaを用い、還元剤濃度演算部では相当放出率補正パラメータbを用いて、下流NOx濃度及び下流還元剤濃度をそれぞれ演算する吸蔵触媒モデルであっても良い。
【0059】
【数4】
【0060】
【数5】
【0061】
ここで、k1(T)及びk2(T)は反応速度定数であり、例えばアレニウス式より算出される。式中のNOx吸蔵量は1ステップ前のNOx吸蔵量の推定値(NOx吸蔵量の初期値)であり、また、α3及びα4は定数である。そして、aはNOx浄化率に関わる相当吸蔵率補正パラメータであって、bは還元剤浄化率に関わる相当放出率補正パラメータである。具体的には、相当吸蔵率補正パラメータとしてa次のべき数を用い、相当放出率補正パラメータとしてb次のべき数を用いている。相当放出率補正パラメータbは、NOx吸蔵触媒22に導入される還元剤の量に対してNOxがどの程度反応するかの関係を示すものである。なお、上流NOx濃度及び上流還元剤濃度は、エンジン1の運転条件からECU40に備えられたマップで求められる。
【0062】
そして、このように、相当吸蔵率補正パラメータaの他、相当放出率補正パラメータbをも用いた触媒吸蔵モデルとすることにより、リッチ運転時のNOx放出量の推定精度を高め、NOx吸蔵量の推定精度のさらなる向上を図ることができる。
また、上記実施形態では、NOx吸蔵触媒22の下流側にのみNOxセンサ30が配設され、NOx吸蔵触媒22の上流側にはNOxセンサが配設されていない。これは、NOx吸蔵触媒22の上流NOx濃度は、ECU40のマップに基づくからであるが、必ずしもこの形態に限定されるものではなく、NOx吸蔵触媒22の上流NOx濃度を検出するNOxセンサをNOx吸蔵触媒22の上流側に別途配設すれば、NOx吸蔵量の推定精度の一層の向上を図ることができる。
【0063】
さらに、リッチ化の方法は、本実施形態の如く大量EGRによるリッチ運転を行い、不完全燃焼による一酸化炭素の排出を利用する筒内リッチの他、未燃燃料(HC)を排気行程中にポスト噴射により供給する筒内リッチ、又はHCをNOx吸蔵触媒に供給する筒外リッチでも良いものである。
また、ディーゼル機関が好ましいが、これに限定されるものではなく、本発明のNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置は、排気通路にNOx吸蔵触媒を備え、リッチ運転可能な全てのエンジンシステムに適用させることができる。
【0064】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、請求項1記載の本発明のNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置によれば、NOx吸蔵触媒を簡略な数式でモデル化し、NOx濃度演算部にて、排ガスの流量、触媒温度の他、相当吸蔵率補正パラメータに基づくリーン運転時のNOx吸蔵量が独自に演算され、また、還元剤濃度演算部にて、排ガスの流量及び触媒温度に基づくリッチ運転時のNOx放出量が独自に演算されることから、リッチ運転の開始時点及びリッチ運転の終了時点の触媒温度及び排ガスの流量を考慮してNOx吸蔵量を推定することができる。
【0065】
しかも、各モデル式で排ガスの流量及び触媒温度が考慮されているにも拘わらず、相当吸蔵率補正パラメータはリッチ運転中には同定されないことから、NOx濃度演算部では、これにより生じるリッチ運転中におけるNOx吸蔵量の変化を考慮すべくNOx吸蔵量の初期値を補正し、NOx吸蔵量推定部では、この補正されたNOx吸蔵量の初期値を用いてNOx吸蔵触媒のNOx吸蔵量を推定しているので、リーン運転の開始時点にてNOx吸蔵触媒に残留しているNOx吸蔵量を正確なものにすることができる。
【0066】
したがって、NOx吸蔵量をより正確に把握することが可能になり、最適なリッチ運転制御の実施によって燃費悪化を抑制することができる。
また、請求項2記載の発明によれば、相当吸蔵率補正パラメータとNOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度とは、例えば相当吸蔵率補正パラメータが小さくなると、NOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度が大きくなる関係にあることから、相当吸蔵率補正パラメータの値をモニタすることでNOx吸蔵触媒の異常を判定可能であり、このようにNOx吸蔵触媒の劣化及び破損を検知する機能を備えれば、運転者への警告の他、触媒劣化時にはリッチ運転を禁止させることが可能になり、高濃度の還元剤の排出が防止されるとともに、OBD(On Board Diagnosis)対応等の各種の応用が可能にすることができる。
【0067】
さらに、請求項3記載の発明によれば、相当放出率補正パラメータを用い、NOx吸蔵触媒に導入される還元剤の量に対してNOxがどの程度反応するかの関係をも加味することができるので、NOx吸蔵量の推定精度のさらなる向上を図ることができる。
また、請求項4記載の本発明のNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定方法によれば、NOx吸蔵触媒を簡略な数式でモデル化し、NOx濃度演算工程によってリーン運転時のNOx吸蔵量が演算され、還元剤濃度演算工程によってリッチ運転時のNOx放出量が演算され、それぞれの工程が排ガスの流量及び触媒温度を加味しつつも独立して演算しているので、NOx用であれば触媒の種類を問わず汎用性かつ信頼性の高い吸蔵量の推定を実現することができる。例えば、NOx吸蔵量の回復が、NOx放出によってNOx浄化率が変化してNOx吸蔵量が回復したものであるのか、若しくは、触媒温度及び排ガスの流量の変化によってNOx浄化率が変化してNOx吸蔵量が回復したようにみえただけなのかの違いも確実に把握することができる。
【0068】
そして、触媒モデル式と下流側のNOxセンサにより補正されたNOx吸蔵量の初期値を用いてNOx吸蔵触媒のNOx吸蔵量を推定しているので、リーン運転の開始時点にてNOx吸蔵触媒に残留しているNOx吸蔵量を含め、NOx吸蔵量を正確に把握することができ、NOx吸蔵量の推定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置が適用されるエンジンシステム構成図である。
【図2】図1のNOx濃度演算部のブロック図である。
【図3】図1のNOx濃度演算部における補正計算のフローチャートである。
【図4】図1の触媒異常判定部における触媒劣化検知のフローチャートである。
【図5】図1の触媒異常判定部の異常判定に用いられる図である。
【図6】NOx吸蔵触媒の一般的性能を示す図である。
【符号の説明】
1 ディーゼル機関
20 排気通路
22 NOx吸蔵触媒
32 排ガス流量センサ
34 排ガス温度センサ
30 NOxセンサ
40 電子コントロールユニット(ECU)
42 NOx濃度演算部
44 還元剤濃度演算部
46 NOx吸蔵量推定部
48 触媒異常判定部
Claims (4)
- 機関の排気通路に設けられ、リーン運転時に排気中のNOxを吸蔵するとともに該吸蔵したNOxをリッチ運転を行うことにより放出還元させるNOx吸蔵触媒と、
該NOx吸蔵触媒の下流側に配設されたNOxセンサと、
前記排気通路の排ガスの流量、前記NOx吸蔵触媒の触媒温度、NOx浄化率に関わり同定される相当吸蔵率補正パラメータ及びNOx吸蔵量の初期値に基づいてリーン運転中における前記NOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度を演算するNOx濃度演算部と、
前記排ガスの流量及び前記触媒温度に基づいて前記リッチ運転中における前記NOx吸蔵触媒の下流側の還元剤濃度を演算する還元剤濃度演算部と、
前記NOx濃度演算部及び前記還元剤濃度演算部の各出力信号に基づいて前記NOx吸蔵触媒のNOx吸蔵量を推定するNOx吸蔵量推定部とを備え、
前記NOx濃度演算部は、前記NOxセンサによる実測された下流側のNOx濃度と該NOx濃度演算部で演算された前記下流側のNOx濃度とを比較して前記NOx吸蔵量の初期値を補正し、前記NOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度を演算することを特徴とするNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置。 - 前記相当吸蔵率補正パラメータは、前記NOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度が増大すると減少する関係にある補正パラメータであり、同定される該相当吸蔵率補正パラメータの一定期間内の平均値が所定値以下のとき、前記NOx吸蔵触媒の異常を判定する触媒異常判定部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置。
- 前記還元剤濃度演算部は、還元剤浄化率に関わる相当放出率補正パラメータをさらに用いて前記NOx吸蔵触媒の下流側の還元剤濃度を演算することを特徴とする請求項1又は2記載のNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定装置。
- 機関の排気通路の排ガスの流量、前記機関の排気通路に設けられてリーン運転時に排気中のNOxを吸蔵するとともに該吸蔵したNOxをリッチ運転を行うことで放出還元させるNOx吸蔵触媒の触媒温度、NOx浄化率に関わり同定される相当吸蔵率補正パラメータ及びNOx吸蔵量の初期値に基づいてリーン運転中における前記NOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度を演算するNOx濃度演算工程と、
前記排ガスの流量及び前記触媒温度に基づいて前記リッチ運転中における前記NOx吸蔵触媒の下流側の還元剤濃度を演算する還元剤濃度演算工程と、
前記NOx濃度演算工程及び前記還元剤濃度演算工程の各出力信号に基づいて前記NOx吸蔵触媒のNOx吸蔵量を推定するNOx吸蔵量推定工程とを備え、
前記NOx濃度演算工程では、前記NOx吸蔵触媒の下流側に配設されたNOxセンサにより実測された下流側のNOx濃度と該NOx濃度演算工程で演算された前記下流側のNOx濃度とを比較して前記NOx吸蔵量の初期値を補正し、前記NOx吸蔵触媒の下流側のNOx濃度を演算することを特徴とするNOx吸蔵触媒の吸蔵量推定方法。
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