JP2010236458A - NOx触媒の劣化診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】NOx触媒の還元性能を考慮しつつ高精度で診断を行う。
【解決手段】NOx触媒が所定温度以上の高温という条件下で吸蔵NOxが放出された後の第1吸蔵量を計測する。NOx触媒が前記所定温度未満の低温という条件下でNOx触媒にストイキ又はリッチの排気ガスが供給されることにより吸蔵NOxが放出された後の第2吸蔵量を計測する。計測された第1吸蔵量を所定の判定値Xと比較してNOx触媒が正常か劣化かを判定する。計測された第1吸蔵量および第2吸蔵量に基づいて判定値Xを設定する。NOx触媒の還元性能を表す第2吸蔵量に基づいて判定値を設定するので、NOx触媒の還元性能を考慮した高精度な診断が可能となる。
【選択図】図5
【解決手段】NOx触媒が所定温度以上の高温という条件下で吸蔵NOxが放出された後の第1吸蔵量を計測する。NOx触媒が前記所定温度未満の低温という条件下でNOx触媒にストイキ又はリッチの排気ガスが供給されることにより吸蔵NOxが放出された後の第2吸蔵量を計測する。計測された第1吸蔵量を所定の判定値Xと比較してNOx触媒が正常か劣化かを判定する。計測された第1吸蔵量および第2吸蔵量に基づいて判定値Xを設定する。NOx触媒の還元性能を表す第2吸蔵量に基づいて判定値を設定するので、NOx触媒の還元性能を考慮した高精度な診断が可能となる。
【選択図】図5
Description
本発明はNOx触媒の劣化診断装置に係り、特に、内燃機関の排気通路に設けられた吸蔵還元型NOx触媒の劣化を診断する装置に関する。
一般に、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気系に配置される排気浄化装置として、排気ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)を浄化するためのNOx触媒が知られている。このNOx触媒としては様々なタイプのものが知られているが、その中で、排気ガス中のNOxを吸蔵して除去する吸蔵還元型NOx触媒(NSR: NOx Storage Reduction)が公知である。吸蔵還元型NOx触媒は、これに供給される排気ガスの空燃比が理論空燃比(ストイキともいう)よりリーン(即ち、酸素過剰雰囲気)のときには排気ガス中のNOxを硝酸塩の形で吸蔵し、排気ガスの空燃比が理論空燃比またはこれよりリッチ(即ち、酸素不足雰囲気)のときには吸蔵したNOxを放出しN2に還元するという、NOxの吸放出作用を有する。
一方、NOx触媒が劣化すると正常時よりも多くのNOxが大気に排出されてしまうことから、これを防止すべく、NOx触媒の劣化を診断することが行われている。特に自動車の分野では車載状態(オンボード)で劣化診断を実施する要請がある。
吸蔵還元型NOx触媒が劣化すると触媒が吸蔵できるNOxの量すなわちNOx吸蔵量が低下する。よってNOx触媒のNOx吸蔵量を計測し、これを所定の判定値と比較することで、NOx触媒が正常か劣化かを判断することができる。
なお、特許文献1には、NOx触媒の活性度が比較的低いタイミングで計測されたNOx触媒のNOx浄化能に関する指標値と、NOx触媒の活性度が比較的高いタイミングで計測された指標値とに基づき、NOx触媒の異常を判定する異常診断装置が開示されている。
ところで、吸蔵還元型NOx触媒については、これから吸蔵NOxを放出させてNOx触媒の吸蔵能を回復させる再生と称する処理が行われる。この再生には二種類が存在する。
一つは、NOx触媒から吸蔵NOxを放出させて還元するために行われる再生であり、NOx触媒が比較的低温の通常の触媒温度(例えば約200〜400℃)のときに排気ガスの空燃比を短時間だけストイキまたはリッチに制御する(すなわち、リッチスパイクを実行する)ことで行われる。このような再生ないし空燃比制御を以下、通常再生と称す。
もう一つは、NOx触媒に吸蔵された硫黄(S)分を脱離させるための再生、或いは排気通路に別途設置されたパティキュレートフィルタ(以下、単にフィルタと称す)から堆積パティキュレートを燃焼除去するフィルタの再生と同時に行われる再生である。これは、NOx触媒の触媒温度が比較的高温(例えば600℃以上)という条件下で行われる。NOx触媒の温度を高温とすることにより、NOx触媒に吸着されていた硝酸塩および硫酸塩が熱分解し、脱離される。このような再生を以下、高温再生と称す。
ところで、本発明者らは、鋭意研究の結果、高温再生の後と通常再生の後とで、計測されるNOx吸蔵量の値が異なることを見出した。すなわち、高温再生は、高温下で行われるため、吸蔵NOxをほぼ完全に放出させることができ、その後に計測されるNOx吸蔵量は大きい。他方、通常再生は、低温下で行われるため、その後に計測されるNOx吸蔵量は、高温再生の後に計測されるNOx吸蔵量に比べ相対的に小さい。
そして、通常再生後に計測されるNOx吸蔵量は、NOx触媒からNOxを放出する能力、すなわちNOx触媒の還元性能を純粋に表すと考えることができる。なぜなら、このNOx吸蔵量は、高温という助けを借りずに雰囲気のみで行われた再生の後に得られた値だからである。
さらに、触媒のNOx吸蔵量とNOx浄化率との間には高い相関があるが、本発明者らは、この相関が、NOx触媒の還元性能によって変化することをも見出した。よって例えば所定値以下のNOx浄化率の触媒を劣化と判定しようとする場合、NOx触媒の還元性能を考慮しないと、劣化診断を高い精度で行うことが困難である。
そこで本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、NOx触媒の還元性能を考慮しつつ高精度で診断を行うことができるNOx触媒の劣化診断装置を提供することにある。
本発明の一の形態によれば、
内燃機関の排気通路に設けられた吸蔵還元型NOx触媒の劣化を診断する装置であって、
前記NOx触媒が所定温度以上の高温という条件下で吸蔵NOxが放出された後の第1吸蔵量を計測する第1計測手段と、
前記NOx触媒が前記所定温度未満の低温という条件下で前記NOx触媒にストイキ又はリッチの排気ガスが供給されることにより吸蔵NOxが放出された後の第2吸蔵量を計測する第2計測手段と、
前記第1計測手段により計測された前記第1吸蔵量を所定の判定値と比較して前記NOx触媒が正常か劣化かを判定する判定手段と、
前記第1計測手段および前記第2計測手段によりそれぞれ計測された前記第1吸蔵量および前記第2吸蔵量に基づいて前記判定値を設定する判定値設定手段と、
を備えたことを特徴とするNOx触媒の劣化診断装置が提供される。
内燃機関の排気通路に設けられた吸蔵還元型NOx触媒の劣化を診断する装置であって、
前記NOx触媒が所定温度以上の高温という条件下で吸蔵NOxが放出された後の第1吸蔵量を計測する第1計測手段と、
前記NOx触媒が前記所定温度未満の低温という条件下で前記NOx触媒にストイキ又はリッチの排気ガスが供給されることにより吸蔵NOxが放出された後の第2吸蔵量を計測する第2計測手段と、
前記第1計測手段により計測された前記第1吸蔵量を所定の判定値と比較して前記NOx触媒が正常か劣化かを判定する判定手段と、
前記第1計測手段および前記第2計測手段によりそれぞれ計測された前記第1吸蔵量および前記第2吸蔵量に基づいて前記判定値を設定する判定値設定手段と、
を備えたことを特徴とするNOx触媒の劣化診断装置が提供される。
本発明によれば、NOx触媒の還元性能を考慮しつつ高精度で診断を行うことができるという、優れた効果が発揮される。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本発明が適用される内燃機関の概略的なシステム図である。図中、10は、自動車用の圧縮着火式内燃機関即ちディーゼルエンジンであり、11は吸気ポートに連通されている吸気マニフォルド、12は排気ポートに連通されている排気マニフォルド、13は燃焼室である。本実施形態では、不図示の燃料タンクから高圧ポンプ17に供給された燃料が、高圧ポンプ17によりコモンレール18に圧送されて高圧状態で蓄圧され、このコモンレール18内の高圧燃料がインジェクタ14から燃焼室13内に直接噴射供給される。エンジン10からの排気ガスは、排気マニフォルド12からターボチャージャ19を経た後にその下流の排気通路15に流され、後述のように浄化処理された後、大気に排出される。なお、ディーゼルエンジンの形態としてはこのようなコモンレール式燃料噴射装置を備えたものに限らない。またEGR装置などの他の排気浄化デバイスを含むことも任意である。
他方、エアクリーナ20から吸気通路21内に導入された吸入空気は、エアフローメータ22、ターボチャージャ19、インタークーラ23、スロットルバルブ24を順に通過して吸気マニフォルド11に至る。エアフローメータ22は吸入空気量を検出するためのセンサであり、具体的には吸入空気の流量に応じた信号を出力する。スロットルバルブ24には電子制御式のものが採用されている。
排気通路15には、排気ガス中のNOxを浄化するNOx触媒、特に吸蔵還元型NOx触媒30が設けられている。また、NOx触媒30の上流側には、排気ガス中の未燃成分(特にHC)を酸化して浄化する酸化触媒32と、排気ガス中の煤等の粒子状物質(PM)を捕集して燃焼除去するDPR(Diesel Particulate Reduction)触媒34とが設けられている。
酸化触媒32の上流側には、前述の高温再生を行うため、還元剤としての燃料を噴射する前段燃料添加弁40が設けられている。また、DPR触媒34とNOx触媒30の間には、前述の通常再生を行うため、燃料を噴射する後段燃料添加弁42が設けられている。
また、エンジン全体の制御を司る制御手段としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)100が設けられている。ECU100は、CPU、ROM、RAM、入出力ポート、および記憶装置等を含むものである。ECU100は、各種センサ類の検出値等に基づいて、所望のエンジン制御が実行されるように、インジェクタ14、高圧ポンプ17、スロットルバルブ24等を制御する。またECU100は、高温再生および通常再生のときの燃料噴射量を制御すべく、前段燃料添加弁40および後段燃料添加弁42をそれぞれ制御する。
ECU100に接続されるセンサ類としては、前述のエアフローメータ22の他、NOx触媒30の上流側と下流側にそれぞれ設けられたNOxセンサ即ち触媒前NOxセンサ50及び触媒後NOxセンサ52と、NOx触媒30の上流側と下流側にそれぞれ設けられた排気温センサ即ち触媒前排気温センサ54及び触媒後排気温センサ56が含まれる。前記NOxセンサ50,52は、それら設置位置における排気ガスのNOx濃度に応じた信号をECU100に出力する。前記排気温センサ54,56は、それら設置位置における排気ガスの温度に応じた信号をECU100に出力する。
さらに本実施形態では、NOx触媒30の下流側に空燃比センサ60が設けられている。空燃比センサ60は、その設置位置における排気ガスの空燃比に応じた信号をECU100に出力する。
この他、クランク角センサ26及びアクセル開度センサ27がECU100に接続されている。クランク角センサ26はクランク角の回転時にクランクパルス信号をECU100に出力し、ECU100はそのクランクパルス信号に基づきエンジン10のクランク角を検出すると共に、エンジン10の回転速度を常時演算する。アクセル開度センサ27は、ユーザによって操作されるアクセルペダルの開度(アクセル開度)に応じた信号をECU100に出力する。
吸蔵還元型NOx触媒(NSR: NOx Storage Reduction)30は、アルミナAl2O3等の酸化物からなる基材表面に、触媒成分としての白金Ptのような貴金属と、NOx吸収成分とが担持されて構成されている。NOx吸収成分は、例えばカリウムK、ナトリウムNa,リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つから成る。
吸蔵還元型NOx触媒30は、これに流入される排気ガスの空燃比がストイキよりリーンのときにはNOxを硝酸塩の形で吸蔵し、これに流入される排気ガスの空燃比がストイキ又はそれよりリッチのときには吸蔵したNOxを放出するという、NOxの吸放出作用を有する。本実施形態のようなディーゼルエンジンの場合、通常時の排気空燃比はストイキよりリーンであり、NOx触媒30は排気中のNOxの吸収を行う。一方、NOx触媒30の上流側にて還元剤が供給され、流入排気ガスの空燃比がストイキ又はそれよりリッチになると、NOx触媒30は吸収したNOxの放出を行う。この放出されたNOxは還元剤と反応して還元浄化される。
還元剤に関しては、排気中で炭化水素HCや一酸化炭素CO等の還元成分を発生するものであれば良く、水素、一酸化炭素等の気体、プロパン、プロピレン、ブタン等の液体又は気体の炭化水素、ガソリン、軽油、灯油等の液体燃料等が使用できる。本実施形態では貯蔵、補給等の際の煩雑さを避けるためディーゼルエンジンの燃料である軽油を使用している。本実施形態では還元剤を供給する燃料添加弁40,42が別途設けられているが、これに代えて或いはこれに加えて、インジェクタ14から燃焼室13に膨張行程後期又は排気行程で燃料を噴射するいわゆるポスト噴射を行うことが可能である。
NOx触媒30のNOx吸放出作用はNOx触媒30が所定の活性温度域にないと行えない。そこで本実施形態ではNOx触媒30の温度が検出又は推定される。NOx触媒30の温度は、触媒に埋設した温度センサにより直接検出することもできるが、本実施形態ではそれを推定することとしている。具体的には、ECU100が、触媒前排気温センサ54及び触媒後排気温センサ56によりそれぞれ検出された触媒前排気温及び触媒後排気温に基づき、触媒温度を推定する。なお推定方法はこのような例に限られない。
前述したように、NOx触媒30から吸蔵NOxを放出させてNOx触媒30のNOx吸蔵能を回復させる再生と称する処理が行われる。この再生には二種類が存在する。一つは、NOx触媒から吸蔵NOxを放出させる目的で行われる通常再生である。通常再生は、NOx触媒30が所定温度(例えば600℃)未満の低温という条件下、具体的には通常の触媒温度(例えば約200〜400℃)の条件下で、後段燃料添加弁42から燃料を噴射することにより、排気ガスの空燃比を短時間だけストイキまたはリッチに制御する(すなわち、通常リッチスパイクを実行する)ことで行われる。
もう一つは、NOx触媒30に吸蔵された硫黄(S)分を脱離させる目的、或いはDPR触媒34に堆積したPMを燃焼除去する目的で行われる高温再生である。高温再生は、NOx触媒30を所定温度(例えば600℃)以上の高温という条件下に置くことで行われる。
NOx触媒30は、燃料中に含まれる硫黄(S)分に起因して排ガス中の硫黄分をBaSO4などの硫酸塩として吸蔵してしまい、S被毒することがある。硫酸塩は、NOx吸蔵時に生成される硝酸塩に比べて安定性が高いため、単に通常リッチスパイクを実行しただけではNOx触媒から放出されない。この硫酸塩を放出するためには、NOx触媒30をより高温にする必要がある。すなわち、NOx触媒30を、これに吸蔵された硫酸塩が熱分解して脱離するほどの高温まで加熱する必要がある。このような高温下では、NOx触媒30に吸蔵された硝酸塩ももはや保持されず、熱分解して脱離してしまう。
高温再生に際しては、前段燃料添加弁40から燃料が噴射される。するとこの燃料が酸化触媒32で酸化、燃焼され、高温な排気ガスが生成される。この高温の排気ガスは、NOx触媒30に供給されてNOx触媒30を高温まで加熱し、NOx触媒30から硫酸塩と硝酸塩を同時に脱離させる。また、DPR触媒34にも供給されて堆積PMを燃焼除去するのに利用される。なお、かかる高温排気ガスはリッチであることが多いが、リーンであってもよい。高温再生に際して後段燃料添加弁42から噴射した燃料をNOx触媒30で直接燃焼させてNOx触媒30を加熱してもよい。
これら通常再生と高温再生は、所定のタイミング毎に定期的ないし周期的に行われる。例えば、触媒前NOxセンサ50により検出された触媒前NOx濃度C1と、触媒後NOxセンサ52により検出された触媒後NOx濃度C2との差ΔC=C1−C2が所定値以下に減少したならば、NOx触媒30が実質的にNOxを吸蔵できなくなり吸蔵NOxがほぼ飽和量に達したとみなして、通常再生を行う。他方、高温再生の周期は通常再生の周期より長いことが多い。例えば通常再生を一乃至複数回行ってもNOx吸蔵量が回復しないときにはS被毒が生じたとみなして高温再生を実行する。また、差圧等に基づきDPR触媒34に多量のPMが堆積したことが検出されたときにも高温再生を実行する。
次に、NOx触媒30の劣化診断について説明する。
ECU100は、通常再生と高温再生のいずれの後においても、NOx触媒30が吸蔵し得るNOxの量すなわちNOx吸蔵量を計測する。すなわち、図2に示すようにECU100は、通常再生に際して、排気ガスの空燃比A/FをリッチとするリッチスパイクRSの終了時点t2から次のリッチスパイクの開始時点t1まで、所定の演算周期毎に、NOx触媒30に流入するNOx量(これを入NOxと称す)とNOx触媒30から流出するNOx量(これを出NOxと称す)との差を求め、且つこれを積算して、NOx吸蔵量を求める。
具体的にはECU100は、触媒前NOxセンサ50により検出された触媒前NOx濃度C1と、触媒後NOxセンサ52により検出された触媒後NOx濃度C2との差ΔC=C1−C2に、排ガス流量の代用値である吸入空気量Ga(エアフローメータ22により検出される)を乗じて得られた値ΔC・Gaを、所定の演算周期毎に求め、且つこれをあるリッチスパイクRSの終了時点t2から次のリッチスパイクの開始時点t1まで積算してNOx吸蔵量を求める。
同様にECU100は、高温再生に際して、ある高温再生の終了時点から次の通常再生または高温再生の開始時点まで、入NOxと出NOxとの差を求め、且つこれを積算し、NOx吸蔵量を求める。
こうして高温再生後に計測されたNOx吸蔵量を第1吸蔵量M1、通常再生後に計測されたNOx吸蔵量を第2吸蔵量M2と称す。
図3および図4にそれぞれ第1吸蔵量M1および第2吸蔵量M2の計測の様子を示す。図から分かるように、第1吸蔵量M1の計測値は第2吸蔵量M2の計測値より大きい。その理由は、高温再生が高温下で行われ吸蔵NOxをほぼ完全に放出させることができるため、高温再生後に多くのNOxを吸蔵できるのに対し、通常再生が低温下で行われ吸蔵NOxを高温再生時のように放出させることができないため、通常再生後にも高温再生後ほど多くのNOxを吸蔵できないからである。
そして本実施形態では、第1吸蔵量M1の計測値を所定の判定値Xと比較してNOx触媒30が正常か劣化かを判定する。すなわち、M1>XであればNOx触媒30を正常と判定し、M1≦XであればNOx触媒30を劣化と判定する。
ところで、NOx触媒30にはNOxを吸蔵する能力と放出する能力とがあるが、通常再生後に計測される第2吸蔵量M2はNOxを放出する能力、すなわちNOx触媒の還元性能を純粋に表すと考えることができる。なぜなら、この第2吸蔵量M2は、高温という助けを借りずに雰囲気のみで行われた再生の後に得られた値だからである。
他方、高温再生後に計測される第1吸蔵量M1はNOxを吸蔵する能力、すなわちNOx触媒の吸蔵性能を純粋に表すと考えることができる。なぜなら、この第1吸蔵量M1は、高温再生により吸蔵NOxをほぼ完全に放出した後に得られた値だからである。
一方、NOx触媒30のNOx吸蔵量とNOx浄化率との間には高い相関があるが、この相関は、NOx触媒30の還元性能によって変化する。これを図5に基づいて説明する。
図5において、横軸には第1吸蔵量M1が取ってあり、縦軸にはNOx浄化率が取ってある。また線A,Bは、第1吸蔵量M1と第2吸蔵量M2との比すなわち吸蔵量比R=M1/M2が異なる触媒についての第1吸蔵量M1とNOx浄化率との関係を示す。
概して、NOx浄化率は、第1吸蔵量M1の増加と共に増加し、第1吸蔵量M1が所定値以上になると一定となり、すなわち飽和する傾向にある。
ところが、このような相関関係は吸蔵量比R=M1/M2によって変化する。吸蔵量比Rは線Bの方が線Aより大であり、すなわち線Bの方が線Aよりも、同一の第1吸蔵量M1に対し第2吸蔵量M2が小さいという関係にある。これはすなわち、線Bの方が線AよりもNOx触媒30の還元性能が低いことを意味する。吸蔵量比Rが大きくなるすなわち還元性能が低下するにつれ、同一の第1吸蔵量M1に対するNOx浄化率は低下する。
ここで、所定のNOx浄化率Hを劣化判定の閾値と定め、閾値H以下の触媒を劣化、閾値Hより大きい触媒を正常と判定しようとする場合、吸蔵量比Rに応じて、閾値Hに対応する第1吸蔵量M1の値は変化する。線Aの場合、閾値Hに対応する第1吸蔵量M1の値はaであり、線Bの場合、閾値Hに対応する第1吸蔵量M1の値はaより大きいbである。
閾値Hと前記判定値Xとは対応するものであるから、線Aの特性を示す触媒に対しては判定値Xをaとすべきであり、線Bの特性を示す触媒に対しては判定値Xをbとすべきである。
また、線Bは線Aよりも還元性能が低いため、触媒としては劣化側である。
以上の検討を踏まえ、本実施形態では、判定値Xを、それぞれ計測された第1吸蔵量M1と第2吸蔵量M2との値、より詳細にはこれらの比Rに基づき、設定する。すなわち、吸蔵量比Rが大きいほど判定値Xが大きくなるように、判定値Xを変化させる。例えば線Aのような吸蔵量比Rを示す触媒に対してはX=aとし、線Bのような吸蔵量比Rを示す触媒に対してはX=bとする。こうすると、同一の第1吸蔵量M1が計測されても触媒の還元性能の低下につれ、判定値Xが増大し、劣化判定し易くなり、上記検討に見合った結果となる。従ってこれにより、NOx触媒の還元性能を考慮しつつ高精度で診断を行うことが可能となる。
ECU100で実行される具体的な診断処理については、まず予め、吸蔵量比Rと判定値Xとの関係を規定したマップまたは関数(以下、マップ等という)をECU100に記憶しておく。このマップ等は、吸蔵量比Rが大きいほど大きな判定値Xを得られるように規定しておく。そしてECU100は、第1吸蔵量M1と第2吸蔵量M2とを計測した後、これら計測値に基づき吸蔵量比Rを算出し、吸蔵量比Rに対応した判定値Xをマップ等から算出する。次いでECU100は、第1吸蔵量M1と判定値Xを比較し、M1>XであればNOx触媒30を正常、M1≦XであればNOx触媒30を劣化と判定する。
ところで、次のような他の実施形態も可能である。上述の基本実施形態では判定値Xを吸蔵量比Rに応じて可変とした。これに対し、第1の他の実施形態にあっては、判定値Xを吸蔵量比Rに拘わらず一定値とする一方、吸蔵量比R自体を別の判定値と比較してその結果をも利用して正常劣化判定を行う。
例えば、吸蔵量比Rについての判定値をYとし、M1≦X(吸蔵性能の低下)およびR≧Y(還元性能の低下)の少なくとも一方が成立したとき、NOx触媒30を劣化と判定する。他方、M1>XおよびR<Yの両方が成立したとき、NOx触媒30を正常と判定する。
次に、第2の他の実施形態について説明する。
図1に示したような、NOx触媒30の下流側に設置された空燃比センサ60は、高温再生時における排気空燃比の制御に用いられる。すなわち、ECU100は、空燃比センサ60によって検出された空燃比が所定の目標空燃比に一致するよう、前段燃料添加弁40から噴射される燃料量をフィードバック制御する。
ところで、高温再生時にNOx触媒30にリッチな(特に著しくリッチな)排気ガスが供給されると、NOx触媒30で生成される水素H2の影響により、空燃比センサ60の出力がリッチ側にズレる。例えば、排気ガスの空燃比が14.2であるのに、空燃比センサ60は空燃比14.0相当の出力を発する。こうなると空燃比センサ60により正確な空燃比を検出できなくなり、空燃比制御の精度が悪化する。
一方、かかるリッチ状態では、NOx触媒30内でアンモニアNH3も生成される。このアンモニアNH3の生成量と水素H2の生成量との間には、図6に示すような相関関係ないし比例関係がある。他方、NOx触媒30の下流側に設置された触媒後NOxセンサ52は、その構造上、アンモニアNH3も検出可能であり、すなわち排気ガスのアンモニア濃度に対応した信号を出力可能である。
そこで、この第2の他の実施形態においては、高温再生時、ECU100が触媒後NOxセンサ52の検出値に基づいて空燃比センサ60の検出値を補正する。
具体的には、図6に示した相関関係に対応する、触媒後NOxセンサ52の検出値と水素(H2)生成量との関係を予めマップ等としてECU100に記憶させる。そしてECU100は、高温再生時、触媒後NOxセンサ52の検出値からマップ等を参照して水素生成量を求め、この水素生成量から所定のマップ等に従い補正値を算出し、この補正値により空燃比センサ60の検出値を補正する。補正値は、水素生成量が大きくなるほど空燃比センサ60の検出値を大きくリーン側に補正するように規定しておく。
こうして、空燃比センサ60の検出値は、水素影響を除去するようにリーン側に補正され、実際の排気空燃比相当の正確な値となる。この補正後の検出値を用いて排気空燃比を制御することにより、空燃比制御の精度を著しく向上することができる。
また、水素生成量を検出する装置(センサ等)を追加することなく水素生成量を推定することができるので、構造上およびコスト上の利点も存在する。
なお、この第2の他の実施形態は通常再生に適用することも可能である。
以上、本発明の実施形態について詳細に述べたが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。例えば、エンジンは車両用以外であってもよいし、火花点火式内燃機関、とりわけ直噴リーンバーンガソリンエンジンであってもよい。前記実施形態では、高温再生用と通常再生用とで二本の燃料添加弁40,42を用いたが、これに限らず、両方の再生を一本の燃料添加弁で行ってもよいし、燃料添加弁を用いずポスト噴射等によって行ってもよい。
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
10 エンジン
15 排気通路
22 エアフローメータ
30 NOx触媒
40 前段燃料添加弁
42 後段燃料添加弁
50 触媒前NOxセンサ
52 触媒後NOxセンサ
100 電子制御ユニット(ECU)
M1 第1吸蔵量
M2 第2吸蔵量
X 判定値
15 排気通路
22 エアフローメータ
30 NOx触媒
40 前段燃料添加弁
42 後段燃料添加弁
50 触媒前NOxセンサ
52 触媒後NOxセンサ
100 電子制御ユニット(ECU)
M1 第1吸蔵量
M2 第2吸蔵量
X 判定値
Claims (1)
- 内燃機関の排気通路に設けられた吸蔵還元型NOx触媒の劣化を診断する装置であって、
前記NOx触媒が所定温度以上の高温という条件下で吸蔵NOxが放出された後の第1吸蔵量を計測する第1計測手段と、
前記NOx触媒が前記所定温度未満の低温という条件下で前記NOx触媒にストイキ又はリッチの排気ガスが供給されることにより吸蔵NOxが放出された後の第2吸蔵量を計測する第2計測手段と、
前記第1計測手段により計測された前記第1吸蔵量を所定の判定値と比較して前記NOx触媒が正常か劣化かを判定する判定手段と、
前記第1計測手段および前記第2計測手段によりそれぞれ計測された前記第1吸蔵量および前記第2吸蔵量に基づいて前記判定値を設定する判定値設定手段と、
を備えたことを特徴とするNOx触媒の劣化診断装置。
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JP2009086729A JP2010236458A (ja) | 2009-03-31 | 2009-03-31 | NOx触媒の劣化診断装置 |
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2009
- 2009-03-31 JP JP2009086729A patent/JP2010236458A/ja active Pending
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