JP4236348B2 - インクジェット記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印字面に鉛筆筆記・消去可能なインクジェット記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタル化が普及し、益々コンピュータより画像イメージ等のデジタルデータを出力する機会が増加している。出力する方法としては、ドットインパクト、レーザー等、様々あげられるが、その中でもインクジェット記録方式は、ハード及びランニングコストが安価であること、カラー出力も可能であること等のメリットから普及が進んでいる。
【0003】
このようなインクジェット記録材料の要求性能としては、単にインクジェット記録できるのみならず、インクペンで加筆できること、また、鉛筆で筆記・消去できることなどが求められている。このような性能を満足するものとして、インク受容層中に無機顔料を含有させ、インク受容層表面をマット化したものが提案されている(特開平7−25138号等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このように無機顔料を含有させたものは、鉛筆筆記・消去性は備えるものの、インク受容層の表面形状が不均一となり、印字ムラを発生してしまうという問題があった。また、十分な鉛筆筆記・消去性を得ようとすると、インク受容層の白化、ひいてはインクジェット記録材料全体の透明性の低下を招き、記録後の材料を重ね合わせたりして使用するなどの透明性を重視する分野での使用が困難になるという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、無機顔料の粒子一つ一つの形状・粒径が不均一であることに起因して印字ムラが発生すること、十分な鉛筆筆記・消去性を得るため多量に添加される無機顔料がインク受容層の白化を招いていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明のインクジェット記録材料は、支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録材料において、前記インク受容層は少なくともバインダー樹脂、無機顔料および樹脂ビーズからなり、無機顔料と樹脂ビーズの合計含有量は、バインダー樹脂100重量部に対し10〜100重量部の範囲であり、無機顔料および樹脂ビーズの平均粒子径は、1〜15μmの範囲であることを特徴とするものである。
【0007】
好ましくは、前記インク受容層中の無機顔料と樹脂ビーズが、重量比1:3〜3:1の範囲で含有されていることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成からなる本発明のインクジェット記録材料は、十分な鉛筆筆記・消去性を有しつつも印字ムラが発生することなく、かつ透明性に優れるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録材料は、支持体上にインク受容層を有するものであって、前記インク受容層は少なくともバインダー樹脂、無機顔料および樹脂ビーズからなることを特徴とするものである。以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0010】
支持体としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのプラスチックフィルム、合成紙、紙、繊維布帛等があげられるが、インクジェット記録材料を透明性を重視する分野に使用する場合にはプラスチックフィルムなどの透明性支持体が好適に使用される。支持体の厚さとしては特に限定されるものではないが、機械への搬送性から好ましくは5〜300μmの厚さのものが使用される。
【0011】
インク受容層は少なくともバインダー樹脂、無機顔料および樹脂ビーズからなるものであり、インクジェットインクを受容するとともに、鉛筆筆記・消去性、インクペン記録特性を備えるものである。
【0012】
バインダー樹脂は、主として水溶性高分子から構成されるものであるが、必要に応じて耐水化された水溶性高分子または非水溶性高分子を混合したものであってもよい。
【0013】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシセルロース、メラミン樹脂、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリルアミド共重合体等の合成樹脂やゼラチン、カゼイン、でんぷん、キチン、キトサン等の天然樹脂があげられる。
【0014】
耐水化された水溶性高分子としては、水溶性高分子とイオン結合、配位結合、共有結合、水素結合などにより反応して不溶化したものがあげられる。
【0015】
非水溶性高分子としては、スチレンマレイン酸共重合物、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアセタールなどがあげられる。
【0016】
無機顔料はインク受容層表面をマット化し、鉛筆筆記・消去性を発現させるとともに、インク吸収性を高める役割を有するものである。このようなものとしては、シリカ(非晶性シリカ)、クレー、タルク、ケイソウ土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、合成ゼオライト、アルミナ、スメクタイト等があげられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができる。これらの中でもシリカ、その中でも不定形・多孔質であるシリカはインクを吸収しやすく、適度にインク受容面の表面を不規則に荒すことができるため、鉛筆筆記性を非常に良好にすることができる。なお、無機顔料の平均粒径は、鉛筆筆記・消去性を高める観点から1〜15μmの範囲であることが望ましい。
【0017】
樹脂ビーズも無機顔料と同様にインク受容層表面をマット化し、鉛筆筆記・消去性を発現させるとともに、インク吸収性を高める役割を有するものである。しかし、鉛筆筆記・消去性を発現させるものの、無機顔料と異なり鉛筆筆記の際に画線カスレを生じさせやすい。これは樹脂ビーズの形状に起因すると予測される。また、インク吸収性は無機顔料とは異なり、マット剤自体がインクを吸収するのではなく、隣接しあう樹脂ビーズとの隙間にインクが浸透していくものと考えられる。
【0018】
樹脂ビーズとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂等からなる樹脂ビーズ、若しくはこれらを原料とする中空樹脂ビーズ等があげられる。これらは、架橋されていても差し支えなく、架橋した場合には、耐溶剤性、耐水性、耐擦傷性を向上させることができる。架橋剤としては、多官能性モノマー、ポリイソシアネート系、エポキシ系、金属キレート系、メラミン系架橋剤等があげられる。なお、透明性が重視される用途においては、光学的観点から上記例示した樹脂バインダーと屈折率差の少ない樹脂ビーズを使用することが好ましい。また、樹脂ビーズの平均粒径は、鉛筆筆記・消去性を高める観点から1〜15μmの範囲であることが望ましい。
【0019】
本発明においてはマット剤として上述した無機顔料と樹脂ビーズを併用することを特徴とする。これにより、それぞれを単独で使用した場合に生じる印字ムラ、鉛筆筆記・消去性、透明性の低下といった欠点を解消することができる。
【0020】
即ち、無機顔料を単独で使用した場合には、無機顔料の粒子一つ一つの形状・粒径が不均一であることから、インク受容層の表面形状が不均一となり、印字ムラが発生してしまう。また、十分な鉛筆筆記・消去性を得るには多くの無機顔料を必要とすることから、インク受容層の白化、ひいてはインクジェット記録材料全体の透明性の低下を招き、記録後の材料を重ね合わせたりして使用するなどの透明性を重視する分野での使用が困難になってしまう。一方、樹脂ビーズを単独で使用した場合には印字ムラの発生、透明性の低下は押さえられるものの、インク受容層表面は単になめらかになるのみで十分な鉛筆筆記・消去性を得ることができない。
【0021】
無機顔料と樹脂ビーズは、インク受容層中において、好ましくは重量比1:3〜3:1、更に好ましくは1:2〜2:1の範囲で含有されていることが望ましい。前者の添加量1に対し後者の添加量を3以下としたのは、十分な鉛筆筆記性を得るためであり、後者の添加量1に対し前者の添加量を3以下としたのは、印字ムラの発生や透明性の低下を防止するためである。
【0022】
無機顔料と樹脂ビーズの合計含有量は、バインダー樹脂に対し10〜100重量部の範囲であることが望ましい。10重量部以上とすることにより十分な鉛筆筆記性を得ることができ、100重量部以下とすることによりインク受容層の塗膜強度を十分なものとすることができる。なお、透明性が重視される用途においては、バインダー樹脂に対し10〜50重量部の範囲であることが望ましい。また、インク受容層の厚みはインク受容適性の観点から5μm以上、透明性及び価格の観点から25μm以下が望ましい。
【0023】
なお、インク受容層にはこれらの他、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を添加することができる。
【0024】
このようなインク受容層を形成する方法としては、上記のバインダー樹脂、無機顔料、樹脂ビーズおよび必要により添加される添加剤を適当な溶媒に溶解又は分散させて塗工液を調製し、当該塗工液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法等の公知の方法により支持体上に塗布・乾燥させる方法が好ましく、その他上記混合物をホットメルトコーティングする方法、あるいは一旦単独のインク受容層用シートを形成しておき、該シートを他の支持体上にラミネートする如き方法でもよい。
【0025】
なお、インク受容層の接着性を調節するため、インク受容層と支持体との間にアンカーコート層を設けたり、カーリングを防止するため、支持体のインク受容層とは反対側の面にバックコート層を設けることは何ら差し支えない。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0027】
[実施例1]
厚さ100μmの透明ポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)上に、下記の組成からなるインク受容層用塗工液を乾燥膜厚15μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥してインク受容層を形成し、インクジェット記録材料を得た。
【0028】
<インク受容層用塗工液>
・ポリビニルアルコール 10部
(ゴーセノールKL-05:日本合成化学工業社)
・シリカ(平均粒径5.5μm) 2部
(サイリシア450:富士シリシア化学社)
・アクリル樹脂ビーズ(平均粒径10μm) 2部
(MX-500KS:綜研化学社)
・水 100部
・エタノール 100部
【0029】
[比較例1]
実施例1のインク受容層塗工液からアクリル樹脂ビーズを抜き、シリカを4部とした以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【0030】
[比較例2]
実施例1のインク受容層塗工液からシリカを抜き、アクリル樹脂ビーズを4部とした以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を作製した。
【0031】
実施例及び比較例で得られたインクジェット記録材料につき、以下の項目の評価を行った。結果を表1に示す。
【0032】
(1)印字ムラ
インクジェット記録材料にインクジェットプリンタ(BJC−420J:キヤノン社)によりテストパターンの記録を行い、画像のベタ部分に部分的な濃度差のなかったものを「○」、濃度差のあったものを「×」とした。
【0033】
(2)鉛筆筆記・消去性
インク受容層上に鉛筆筆記を行った際、画線にかすれが生じなかったものを「○」、かすれが生じてしまったものを「×」とした。
【0034】
(3)透明性
テストパターンを印字したインクジェット記録材料上に未印字のインクジェット記録材料を重ね合わせた際に、下方のテストパターンが十分認識できたものを「○」、十分認識できなかったものを「×」とした。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1のものは、インク受容層中のマット剤として無機顔料と樹脂ビーズを併用したものであることから、十分な鉛筆筆記・消去性を有しつつも印字ムラが発生することなく、かつ透明性にも優れるものであった。
【0037】
一方、比較例1のものは、マット剤として無機顔料のみを含有するものである。従って、インク受容層の表面形状が不均一となり印字ムラが発生してしまうとともに、透明性も満足できるものではなかった。
【0038】
比較例2のものは、マット剤として樹脂ビーズのみを含有するものである。従って、十分な透明性を有し、印字ムラの発生も認められないものの、インク受容層表面は単になめらかになるのみで十分な鉛筆筆記・消去性を得ることができるものではなかった。
【0039】
【発明の効果】
以上のような構成を採用する本発明のインクジェット記録材料は、マット剤として無機顔料と樹脂ビーズを併用していることから、それぞれを単独で使用した場合に生じる欠点を解消し、良好な印字特性、鉛筆筆記・消去性、透明性といった諸性能を同時に満足することができるものである。
Claims (2)
- 支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録材料において、前記インク受容層は少なくともバインダー樹脂、無機顔料および樹脂ビーズからなり、無機顔料と樹脂ビーズの合計含有量は、バインダー樹脂100重量部に対し10〜100重量部の範囲であり、無機顔料および樹脂ビーズの平均粒子径は、1〜15μmの範囲であることを特徴とするインクジェット記録材料。
- 前記インク受容層中の無機顔料と樹脂ビーズが、重量比1:3〜3:1の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録材料。
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1999
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