JP4235890B2 - 微粒子配列構造体の製造方法、及び反射型スクリーンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射型スクリーンの製造に有用な微粒子配列構造体の製造方法、及び反射型スクリーンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
微粒子を規則的に配列させる方法は、数多く知られている。
【0003】
例えば、レーザーマニピュレーション法は、1つ1つの微粒子をレーザーによって捕捉し、任意の位置に配置する方法である。この方法によれば、特殊な2次元、あるいは3次元の配列をもつ構造であっても、所望の位置に微粒子を配置して作製することができる。しかし、微粒子を操作できるといっても、莫大な個数の微粒子を1つずつ操作してデバイス等を組み立てるのは、手間がかかりすぎて実際的ではない。
【0004】
そこで、微粒子を自己組織化的に集合させ、微粒子が2次元又は3次元的に規則正しく周期的に整列した微粒子集合体を作らせる方法が、種々報告されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1〜3参照。)。
【0005】
その1つに、自然沈降法がある。自然沈降法では、微粒子を分散媒に分散させて微粒子分散液を調製した後、微粒子分散液を基板上に滴下するか、基板を微粒子分散液の下部に静置する。微粒子は、自身の重さによる沈降、又は蒸発による分散媒の減少によって徐々に基板上に堆積し、規則的に配列した微粒子集合体を形成する(非特許文献1参照。)。自然沈降法は、1回の操作で3次元的に配列した微粒子層を作製できる簡便な方法であり、現在も様々な材料に対して適用されている。
【0006】
他の方法に、引き上げ法がある。引き上げ法では、自然沈降法と同様に微粒子分散液を調製し、分散液に対して親和性のよい基板を分散液に垂直に差し込んで浸漬した後、基板を微粒子分散液から徐々に引き上げていく。基板の引き上げ時に、適量の微粒子分散液が基板表面に移し取られ、この分散液から分散媒が蒸発していく過程で、残された微粒子が自己組織化的に集合し、基板上に微粒子が2次元、あるいは3次元的に規則正しく配列した微粒子集合体が形成される(非特許文献2参照。)。この方法では、例えば、エタノールを分散媒とする分散液中にガラス基板を浸漬し、シリカ微粒子の集合体を形成した事例が多数報告されている。
【0007】
引き上げ法のうち、単粒子膜引き上げ法は、低濃度の微粒子溶液中に浸漬した基板を気相中に引き上げ、微粒子が2次元平面状に配列した1層の単粒子膜を作製する方法である。永山らは、近年、単粒子膜引き上げ法において、分散媒による移流集積と横毛管力によって微粒子が整列する現象を明らかにしており、様々な微粒子の規則的な配列構造が自己組織化的に形成されることを報告している(非特許文献2参照。)。
【0008】
更に別の方法もある。この方法は、微粒子よりも大きなスペーサーを挟んだマイクロセルを、微粒子分散液に垂直に差し込み、静置する。微粒子分散液は、毛管現象によりセル内に充填される。その後、充填された微粒子分散液から分散媒が蒸発していく過程で、分散媒の流れによって運ばれた微粒子が自己組織化的に集合し、微粒子集合体がマイクロセル内に形成される(非特許文献3参照。)。
【0009】
図25は、微粒子41が規則的に配列した微粒子集合体44が、微粒子分散液43から自己組織化的に形成される過程を示す説明図である。即ち、シリカ微粒子などの球形の微粒子41を水などの分散媒42に分散させた後、重力による自然沈降又は蒸発による分散媒42の減少によって、分散液43から微粒子41を徐々に基板40上に堆積させる。
【0010】
粒子径が同一であれば、シリカ微粒子のような球形の粒子が最も密につまった配列構造は、最密充填構造である。従って、微粒子41を緻密に集合させることによって、少なくとも部分的には最密充填構造をとる微粒子集合体44を、自己組織化的に形成させることができる。
【0011】
しかしながら、自然沈降法では、分散媒の蒸発に長時間を要することや、数cm2 以上の微粒子層を作製する場合には、基板上から分散媒が均等に蒸発しないため厚さむらを生じること等の難点がある。また、単粒子膜引き上げ法では、均一な膜を形成するには、引き上げ速度を小さくし、気液界面のメニスカスが乱れないようにすることが必要で、数cm2 以上の単粒子膜を作製するには難しい制御が必要になること等の難点がある。また、単層膜しか得られないため、3次元的な配列を得るには何らかの多層構造化の方法が必要であり、例えば、単粒子膜を2次基板に転写して積層する方法が提案されている(特許文献1参照。)。この方法では、1層ごとに積層するため工程が複雑になり、作製に長時間を要する上、積層方向の粒子配列の規則性を実現できるのかという問題点がある。いずれの方法でも、微粒子層の形成の高速化を促そうとすると、巨視的な厚さむらや、微視的な欠陥が生じやすくなる。
【0012】
【特許文献1】
特開平8−155379号公報(第2頁,図1〜4)
【非特許文献1】
H. Miguez et al.,“Control of the Photonic Crystal Properties of fcc-Packed Submicrometer SiO2 Spheres by Sintering”,“Adv. Mater .”,1998年,第10巻,第6号,p.480-483
【非特許文献2】
永山国昭(K. Nagayama),「単粒子膜(Mono-particle Film)」,「粉体工学会誌(J. Soc. Powder Technol. Japan)」,1995年,第32巻,p.476
【非特許文献3】
S. H. Park et al.,“A Three-Dimensional Photonic Crystal Operating in the Visible Region”,“ Adv. Mater.”,1999年,第11巻,p.46 2-466
【0013】
【発明に至る経過】
本出願者は、上記の微粒子集合体の形成方法について鋭意検討した結果、特願P2001−380670において、3次元の配列が1回の操作で形成できる自然沈降法の利点と、厚さむらの少ない単粒子膜引き上げ法の利点とを両立させ、作製時間を大幅に短縮できる微粒子層の形成方法として、引き上げ回転法を提案した(以下、特願P2001−380670に係る発明を先願発明と呼ぶ。)。
【0014】
引き上げ回転法では、引き上げ法と同様に、基板の浸漬と引き上げと分散媒の蒸発を1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことによって微粒子集合体を形成する。しかし、高濃度(例えば、2〜50質量%)の微粒子分散液を用い、基板を高速(例えば、0.06〜0.6m/min)で引き上げる。引き上げ速度が大きいほど、基板1を濡らす微粒子分散液の量は多くなる。このようにして、1サイクルで複数層の微粒子層を形成し、作製工程に要する時間を従来の引き上げ法に比べて大幅に短縮することができる。微粒子分散液の濃度が高く引き上げ速度が大きいと、鉛直方向に関して下方が厚く上方が薄い膜厚分布をもった薄膜が形成され、厚さむらを生じやすくなるが、これは1サイクルごとに基板の向きを回転させることにより抑制する。
【0015】
図26は、先願発明に基づく引き上げ回転法によって、水に分散させた直径280nmのシリカ微粒子51から形成した、シリカ微粒子集合体54の反射スペクトル(a)及び微粒子の配列構造体(b)である。ここで、反射スペクトルは、図26(b)に示すように、微粒子層の面に垂直に白色光を入射させ、面に垂直に反射した反射光のスペクトルを測定している。
【0016】
図26(a)から、反射率は、波長624.5nmの光(赤色光)において最大になり、その反射率は54%と比較的高く、しかも、そのピークの半値幅は約30nmと狭いことがわかる。
【0017】
結晶を形成している原子や分子によるX線の干渉では、ブラッグの法則が成り立つことが知られている。又、光は、一般に、その波長と同程度の間隔(ピッチ)で繰り返される微粒子の周期的配列構造によって反射を受けやすいことが知られている。そこで、シリカ微粒子層による可視光の反射でも、ブラッグ反射の条件と類似した関係が成り立つとすると、最も反射を受けやすい光の波長λ0と微粒子層の間隔(ピッチ)dの間に、次の(式1)に示す関係が成り立つ。
kλ0=2nd ・・・(式1)
但し、ここで、n は微粒子の構成材料のモード屈折率であり、kは正の整数である。
【0018】
一方、微粒子の配列構造は、最密充填構造であると仮定してみる。最密充填構造には、面内での粒子の配列位置が異なる3つの微粒子層が順に積層される立方最密構造と、面内での粒子の配列位置が異なる2つの微粒子層が順に積層される六方最密構造とがあるが、隣接する2つの微粒子層の間隔(ピッチ)dは同じで、微粒子の直径Dとの間に、次の(式2)に示す関係がある。
d=(2×3)1/2 D/3 ・・・(式2)
【0019】
(式1)及び(式2)に、Dとしてシリカ微粒子の直径280nm、n としてシリカ微粒子のモード屈折率1.36を代入して、k=1とすると、最も反射されやすい波長として、λ0=622nmを得る。これは、実測値λ0=624.5nmとよく一致する。
【0020】
以上のことから、引き上げ法によって自己組織化的に形成された図26(b)のシリカ微粒子集合体54では、少なくとも部分的には最密充填構造からなる周期的な粒子配列が形成され、これが、624.5nmを中心波長とする光の反射の主因になっていると考えられる。
【0021】
更に、最密充填構造を単純化したモデル計算では、屈折率1.36、粒子径280nmのシリカ微粒子を用いると、625nm付近に鋭いピークをもつ、半値幅約30nmの反射層が形成できることが示され、この結果は実験値と良く一致する。この計算では、入射した波長625nmの光は、表面から8〜15周期までしか侵入せず、大部分の光はこの付近までに反射されて進行方向を逆転させること、特に11周期付近がその境界であることも示される。この結果から、シリカ微粒子を用いて光反射層を形成する場合、11周期程度あれば十分であることがわかる。
【0022】
また、微粒子集合体によって反射される光の波長λ0 と微粒子の直径Dとの間には、(式1)及び(式2)に示した比例関係があると考えられ、この関係に基づいて対応する直径Dを有する微粒子を選択すれば、所望の波長λ0の光を選択的に反射する微粒子集合体を自己組織化的に形成させることができる。このようなシリカ等の微粒子集合体は、特定の波長の光のみを反射する反射材等の光学媒体として有用な材料である。そこで、本明細書では、自己組織化的に形成され、特定の波長の光のみを反射する微粒子集合体をフォトニック結晶と呼び、フォトニック結晶による特定波長の光の反射をブラッグ反射と呼び、ブラッグ反射を起こすフォトニック結晶層をブラッグ反射層と呼ぶことにする。
【0023】
図27は、屈折率n=1.29〜1.45、例えば1.36のシリカ微粒子について、シリカ微粒子の直径とブラッグ反射波長との関係を図示したものである。即ち、粒子径305nmのシリカ微粒子を用いれば、赤色光(波長約645nm)を反射する微粒子集合体を形成することができ、粒子径250nmのシリカ微粒子を用いれば、緑色光(波長約535nm)を反射する微粒子集合体を形成することができ、粒子径220nmのシリカ微粒子を用いれば、青色光(波長約465nm)を反射する微粒子集合体を形成することができる。
【0024】
図28は、先願発明の好ましい実施の形態に基づく反射型スクリーンの基本構造である。このスクリーンでは、光反射面として、3原色光近傍の狭い波長領域の光のみを選択的に反射するブラッグ反射層15〜17が設けられ、その厚み方向下部に、ブラッグ反射層を透過してきた可視光を吸収する可視光吸収体32が設けられている。具体的には、赤色光反射層15として粒子径280nmのシリカ微粒子が11層積層され、その上に緑色光反射層16として粒子径234.5nmのシリカ微粒子が11層積層され、更にその上に青色光反射層17として粒子径212nmのシリカ微粒子が積層されている。可視光吸収体32としては、例えばカーボンを含有する黒い基材が用いられる。
【0025】
上記のスクリーンに画像を表示する場合には、プロジェクタ等から、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色光をスクリーンに投射し、スクリーン上での混色によって種々の色をもつ画像を形成する。これら3原色光は、スクリーンに設けられたブラッグ反射層15〜17によって反射され、観察者の目に届き、画像として知覚される。
【0026】
一方、スクリーンには、画像に関係のない様々な光が入射する(以下、本明細書では、プロジェクタ等から投射される画像以外の、画像とは無関係にスクリーンに入射する可視光を外部光と呼ぶことにする。)。外部光が画像と同様に反射又は散乱されると、その光は画像に重なって観察者の目に入り、画像のコントラストを劣化させる。
【0027】
3原色光とは異なり、外部光には様々な波長の光が含まれていて、その大部分は、ブラッグ反射層が反射できる3原色光近傍の波長領域をはずれた光である。このため、上記のスクリーンに外部光が入射しても、その大部分はブラッグ反射層15〜17によって反射されず、可視光吸収体32に吸収される。従って、外部光が画像に重なって観察者の目に入ることはほとんどない。この結果、外部光によるコントラストの劣化がわずかになり、画像の暗黒部をスクリーン上に真の暗部として表示することができる。また、照明のある室内や野外など、暗室外でのスクリーン表示も可能になる。
【0028】
上記のように、スクリーン自体が波長によって光を選別するフィルタとしての作用を示すので、次に記す理由で、画像の色再現性も改善される(図29参照。)。CRTプロジェクタや液晶プロジェクタから出射される各3原色光のスペクトル半値幅は、通常60〜100nmと大きく色純度が悪いため、白地のスクリーンに投射した場合には、図29に示すように色再現範囲が限定される。一方、これらの光を図28のスクリーンに投射すると、3原色光とその近傍の狭い波長領域の光のみが反射され、これら以外は光吸収される。この結果、スクリーンから反射される各3原色光は、半値幅30nm程度の色純度の良い光に改善され、これらの3原色光の混色によって形成される画像の色再現範囲は、図29に示すように拡大する。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の微粒子層の形成方法には、いくつかの問題点があることが明らかになった。
【0030】
問題点の1つは、微粒子層を形成する基板の材質が作製方法によって大きく制限されてしまうことである。例えば、水を分散媒とする分散液からシリカ微粒子層を形成する場合、ガラス基板やマイクロセルの中にしかシリカ微粒子集合体を作製することができない。例えば、スクリーンを作製するために、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムのようなフレキシブルな基板上にシリカ微粒子層を形成しようとしても、PETフィルムは水との塗れ性が低いため、配列むらの無いシリカ微粒子層を形成することは困難である。
【0031】
他の問題点は、基板の表面には多かれ少なかれ凹凸があり、その上に形成される微粒子層はその凹凸の影響を受けて、微粒子の配列に乱れが生じやすくなり、格子欠陥ができやすくなることである。この欠陥は光を散乱させる原因となり、微粒子層のブラッグ反射層としての品質を低下させる。
【0032】
本発明の目的は、上記のような実情に鑑み、微粒子層を保持する基体が微粒子層を作製する方法によって制約されることがなく、微粒子配列が基体表面の凹凸の影響をほとんど受けない、微粒子配列構造体の製造方法、並びに反射型スクリーンの製造方法を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、第1の基体の表面に凹凸を形成する第1工程と、この第1の基体上に、前記凹凸の高さより小さい粒子径の微粒子によって、前記凹凸を被覆して埋める下地微粒子層を形成する第2工程と、前記凹凸の高さより小さくて前記下地微粒子層の前記微粒子より大きい粒子径のシリカ微粒子の分散液を前記下地微粒子層上に付着させる第3工程と、前記分散液から分散媒を蒸発させることによって前記シリカ微粒子を集合させ、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3原色の入射光の少なくとも1種をブラッグ反射可能にするシリカ微粒子の周期的配列構造を有する微粒子層を前記下地微粒子層上に積層する第4工程と、前記微粒子層を前記下地微粒子層との間で剥離させて第2の基体上に転写する第5工程とを有する、微粒子配列構造体の製造方法及び反射型スクリーン(以下、光学媒体と称することもある。)の製造方法に係わるものである。
【0034】
本発明によれば、前記第1の基体上に前記下地微粒子層と前記微粒子層を形成し、この微粒子層を前記下地微粒子層との間で剥離させて第2の基体上に転写する。この転写に際して、前記下地微粒子層と前記微粒子層とは微粒子の配列状態(微粒子の粒子径や充填密度や配列構造)が異なるため、両者の界面が剥離面になりやすい。従って、微粒子配列の欠陥の多い前記下地微粒子層は、ほとんど前記第1の基体側に残り、欠陥の少ない前記微粒子層のみが前記第2の基体側に転写される。結果的には、前記第1の基体表面の凹凸の影響をほとんど受けず、結晶性の高い前記微粒子層が前記第2の基体上に設けられた微粒子配列構造体及び光学媒体を作製することができる(以下、本明細書では、微粒子が規則正しく整列し、欠陥が少なく、良好なブラッグ反射特性を有する微粒子集合体を「結晶性」の高い微粒子集合体と言うことがある。)。
【0035】
この場合、前記第1の基体は、前記微粒子層を形成する上で最適なものを用い、前記第2の基体は、前記光学媒体等としての用途等に合わせて、前記微粒子層の機能を発揮させる上で最適なものを用いるというように、それぞれの目的に最適な基体を使い分けることが可能になる。
【0036】
また、前記第1の基体上に前記下地微粒子層を形成し、この下地微粒子層の上に規則的に配列した微粒子からなる微粒子層を積層するので、前記第1の基体表面の凹凸は前記下地微粒子層によって被覆され、前記微粒子層の形成は、前記第1の基体表面の凹凸の影響を受けにくくなる。この結果、微粒子が規則正しく整列し、光を散乱させる原因となる欠陥が少なく、特にブラッグ反射層としての品質の高い微粒子層を形成することができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明において、前記下地微粒子層及び/又は前記微粒子層を形成する方法は特に限定されるものではないが、微粒子分散液から前記微粒子を自己組織化的に集合させて前記微粒子層を形成するのが好ましい(ここで、自己組織化とは、上述した特許文献1等の公知文献に示された語句であって、微粒子がそれ自体の凝集力で集合する現象を意味する:以下、同様)。具体的には、前記微粒子分散液中に前記第1の基体を浸漬する工程と、前記第1の基体を気相中に引き上げることにより、その表面を前記微粒子分散液で濡らす工程と、前記微粒子分散液で濡れた前記第1の基体から分散媒を蒸発させる工程とによって、前記微粒子層を形成する引き上げ法が、特に好ましい。
【0038】
また、前記下地微粒子層は、その上に積層する前記微粒子層の微粒子とは粒子径の異なる微粒子、特に、粒子径がより小さい微粒子で形成する。前記下地微粒子層を形成する目的は、前記第1の基体の表面の凹凸を被覆して、この凹凸の影響が前記微粒子層に及ぶのを防止して、前記微粒子層の結晶性を向上させること、及び、転写に際して前記微粒子層との境界面で剥離面を形成し、前記微粒子層がその結晶性を損なわれることなく第2の基体に転写されるのを助けることの2つである。前記下地微粒子層と前記微粒子層とを構成する微粒子の粒子径が異なると、その境界で微粒子の配列構造も変化するので密着性が低下し、境界面で剥離が起こりやすくなる。更に、平坦性の高い被覆面を形成できること、及び容易に可視光を反射しない層を形成できることから、粒子径がより小さい微粒子で前記下地微粒子層を形成する。
【0039】
また、前記第1の基体の表面を粗面化し、この粗面上に前記下地微粒子層を形成するのがよい。例えば、PETフィルムのような疎水性の高分子フィルムは、通常、水に対する塗れ性が低いため、配列むらの無いシリカ微粒子層を形成することは困難であるが、サンドブラスト加工等で表面を粗面化すれば、水に対する塗れ性を向上させ、その上に配列むらの無いシリカ微粒子層を形成することができるようになる。この場合、前記下地微粒子層を構成する微粒子は、粒子径が粗面の凹凸の大きさよりも十分小さい微粒子であることが望ましい。なお、サンドブラスト加工とは、砂粒の吹きつけによって表面を荒らす加工のことである。
【0040】
また、前記転写する前記微粒子層を、単一の可視光領域又は複数の特定の可視光領域の入射光を反射する反射層として形成するのがよく、この際、入射光を反射させるように、その反射光の波長に対応して微粒子の大きさ、材質又は形状(特に大きさ)を各波長領域毎に選択する。特に、前記反射層が、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色光の少なくとも1種を反射するのがよい。反射波長は、特に限定されないが、可視光反射層が最も実用的であり、フルカラー表示のためには、3原色光の少なくとも1種を反射する反射層であるのがよい。
【0041】
また、前記第2の基体の表面に接着又は粘着材層を形成した後、この接着又は粘着材層によって前記微粒子集合体を前記第2の基体に転写するのがよい。前記接着又は粘着材層中の接着又は粘着材として有機高分子物質を用いるのがよい。但し、ブラッグ反射層等としての性能を低下させないように、前記接着又は粘着材を前記微粒子層の内部に侵入させないようにするのがよい。そのためには、前記有機高分子物質として、重合度の大きいゼラチンやPVA(ポリビニルアルコール)等を用いるのがよい。或いは、転写後すみやかに、前記接着又は粘着材層中の接着又は粘着材を硬化させるのがよく、このために、前記接着又は粘着材として紫外線硬化樹脂又はアクリル樹脂粘着剤を用いるのがよい。
【0042】
また、静電気的な引力によって、前記第2の基体の表面に前記微粒子層を転写してもよい。
【0043】
前記第2の基体は、前記微粒子配列構造体或いは前記光学媒体の用途等によって適宜選ぶのがよい。例えば、反射型スクリーンなどのフレキシビリティを要する用途では、前記第2の基体として高分子フィルムを用いるのがよい。
【0044】
本発明の光学媒体の製造方法において、転写のために用いた前記第2の基体は前記微粒子層の保護材等としてそのまま残し、この第2の基体上又はこれとは反対側の面上に、光拡散層又は可視光吸収層等の光学層を設け、前記微粒子層を可視光反射層とする反射型スクリーンを製造するのがよい。
【0045】
本発明において、前記第2の基体の面方向及び/又は厚み方向において前記微粒子層を配設するように転写を繰り返すのがよい。本発明では、前記微粒子層の形成工程と転写工程とによって微粒子配列構造体及び光学媒体を作製するので、1つの基体に対して転写を繰り返すことで、微粒子層の形成工程のみでは作製の難しい微粒子配列構造体及び光学媒体を容易に作製することができる。
【0046】
転写を繰り返す形態としては、前記第2の基体の厚み方向に転写を繰り返して、同じ領域に前記微粒子層を重ね書きするように配設する場合と、前記第2の基体の面方向に転写を繰り返して、前記第2の基体上の別の領域を覆って面的に広がっていくように前記微粒子層を配設していく場合とがある。
【0047】
厚み方向に転写を繰り返す例として、赤色光、緑色光及び青色光をブラッグ反射する前記微粒子層をそれぞれ別個に形成し、これらを転写によって積層して3原色光を反射する層を形成する例が考えられる。
【0048】
また、特に転写工程が有効と考えられる例は、多数の層が積層された厚い微粒子層を形成する場合である。厚い微粒子層は、実現しようとする光学的特性との関係で必要になる場合がある。このような特に多数の層が積層された微粒子層を、塗布を繰り返すだけで形成するのは、作製効率から考えても、形成される微粒子層の結晶性の質から考えても限界がある。このような場合、引き上げ法により作製に好都合な膜厚の微粒子層を複数作製し、これらを転写によって積層して目的とする膜厚を有する微粒子層を作製することができる。
【0049】
更に、面的に広がって行くように面方向に転写を繰り返す場合、或いはこれと厚み方向の繰り返し転写とを組み合わせる場合、転写工程ならではの特徴が発揮される。これには、同じ特性をもつ前記微粒子層を配設する場合と、特性の異なる複数種の前記微粒子層を配設する場合とに分けて考えることができる。
【0050】
同じ特性をもつ前記微粒子層を繰り返し配設する場合の利点は、小面積の前記微粒子層を部材として、大面積の微粒子配列構造体を容易に作製することができることである。これは、例えれば、小さなタイルで大きな壁面を覆うのに似ている。
【0051】
大きな面積の基体上に均一に前記微粒子層を作製することは、困難である。その理由は、次の通りである。即ち、自然沈降法や引き上げ法では、基体を微粒子の分散液に浸さなければならない。従って、前記基体が大面積になれば、それに応じて分散液の量も、それを保持する容器も、大型化する。しかも、その大型化した容器中の分散液やそれを取りまく環境条件を、均一に保たなければならない。
【0052】
例えば、引き上げ法では、基体の引き上げ速度以外にも、分散液の温度や濃度、雰囲気の温度や雰囲気中の分散媒蒸気の圧力、分散液中や雰囲気中における流れの有無とその速度や方向、容器の形状や設置状態など、分散媒の蒸発過程に影響を与える要因は多岐に渡り、それらは、非常に緻密で高精度の制御を必要とする。このため、大面積における面内の条件を均一に揃えることが難しく、それをあえて実現しようとすると、作製工程や設備が非常に大がかりになってしまい、コスト高になるという問題点がある。
【0053】
逆に、小面積の前記微粒子層であれば、高品質のものが比較的容易に作製できる。これらを多数作製し、同一基体上に転写することによって1つにまとめれば、大面積で高品質の前記微粒子配列構造体を、製造装置の大きさに制限されることなく、小面積の前記微粒子配列構造体と大差ないコストで容易に作製することができる。
【0054】
特性の異なる複数種の前記微粒子層を配設する場合の利点は、1つの基体上を機能の異なる複数の領域に分割して、機能を分担したり、複数の機能の組み合わせの効果を発揮させ得ることである。例えば、反射型スクリーンを形成する場合、スクリーンをストライプ状又はマトリックス状に分割して、赤色光反射領域、緑色光反射領域、及び青色光反射領域を各々形成し、これらを画素としてフルカラー表示を行うことができる。
【0055】
この例のように、微粒子の材料、大きさ、又は形状を変えて光学的特性が異なる前記微粒子層を作製し、それらをアレンジしながら転写して配置することで、複数の機能の組み合わせによって生じる特性を持たせることができる。また、転写する基体面も2次元の平面に限られず、もっと複雑な3次元的形状を持つ曲面であってよいし、複数の基体を3次元的に配置したものであってもよい。これらの表面を所望のブラッグ反射特性を有する微粒子層(フォトニック結晶層)で被覆することで、従来にない新しい材料による表面装飾等を実現できる。
【0056】
また、前記微粒子配列構造体或いは光学前記媒体をオプトエレクトロニクス(光エレクトロニクス)関連のデバイスに応用した場合、大がかりな制御装置などが省略できるため、作製行程が非常に簡便になる。また、複数種の前記微粒子層(フォトニック結晶層)の配置とアレンジにより、それらの組み合わせによる新規の特性を持つデバイスが開発できる。特に、反射型スクリーンに応用した場合、平面上にドットのように三原色をブラッグ反射させるフォトニック結晶層を配置することができ、非常に高効率なスクリーンが作製できる。
【0057】
次に、本発明の好ましい実施の形態によって微粒子配列構造体10を作製する工程を、図1及び2参照下、工程順に説明する。
【0058】
工程1:第1の基体1
第1の基体1としては、微粒子分散液と親和性があり、且つ転写工程に必要なフレキシビリティと機械的強度とを有するものがよい。シリカ微粒子を水に分散させた分散液からシリカ微粒子集合体を形成する場合、通常、シリカ微粒子及び水に対し強い親和性を有するガラス基板が用いられる。しかし、ガラス基板は、フレキシビリティが不足している。転写工程に適したフレキシビリティと機械的強度を有するものとしては、適度な厚さのプラスチック基板100、例えば、厚さが20μm〜500μm、より好ましくは50μm程度のポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム等が最も適している(図1(a))。
【0059】
しかし、PETフィルム等のプラスチック基板100は疎水性であり、そのままでは水に対する濡れ性が不足している。そこで、図1(b)に示すように、PETフィルム等の表面をサンドブラスト加工したものを第1の基体1として用いるのがよい。このときの表面の凹凸の高さは、例えば0.8〜4μmである。サンドブラスト加工されたPETフィルムの表面は、水に対する濡れ性がよく、微粒子分散液を保持しやすくなる。また、安価なPETフィルムを用いることは、コスト的にも有利である。
【0060】
次に、第1の基体1の上にバッファー層3及び微粒子層4を、例えば自己組織化法によって形成する。具体的には、自然沈降法や引き上げ法など、特に引き上げ法が適している。即ち、第1の基体1を比較的高濃度の微粒子分散液中に浸漬した後、引き上げながら分散媒の蒸発速度の制御を行い、分散液中の微粒子を規則正しく自己組織化的に配列させたバッファー層3及び微粒子層4を形成する。本実施の形態のようにサンドブラスト加工したPET基板を用いる場合には、基板の向きを変えなくても均一な厚さの微粒子層を形成することができる。但し、ガラス基板などの場合で、浸漬による塗布を繰り返す場合に、第1の基体1の向きを回転させ、厚さむら等ができるだけ生じないようにすることが有効な場合もある。
【0061】
工程2:バッファー層3の形成
第1の基体1の上に目的の微粒子層4を直接形成するのではなく、図1(c)及び(d)に示すように、第1の基体1と微粒子層4との間に、下地微粒子層としてバッファー層3を形成するのがよい。バッファー層3は、微粒子層4を構成する微粒子より粒子径の小さい微粒子によって、第1の基体1の表面の凹凸を覆い尽くす程度の厚さまで形成するのがよい。バッファー層3は、絶対に必要ということではないが、次の2つの目的で設ける。
【0062】
目的の1つは、形成される微粒子層4の結晶性を向上させることである。第1の基体1の表面にはサンドブラスト加工によって凹凸が形成されているため、直接微粒子層4を形成すると、この凹凸の影響を受けて微粒子の配列に欠陥が生じやすく、結晶性が低下する。この欠陥は光を散乱させる原因となり、微粒子層4の光反射層としての品質が低下する。これに対して、基体1の表面の凹凸をバッファー層3で埋めて平坦面を形成し、この平坦面の上に微粒子層4を形成すれば、凹凸の影響を受けにくくなり、微粒子が規則正しく整列した、光反射層としての品質の高い微粒子層4を形成することができる。
【0063】
他の目的は、転写を行う際、バッファー層3と微粒子層4との界面で剥離が起こるようにすることである。バッファー層3を形成しておくと、バッファー層3と微粒子層4とは粒子径が異なり、密着性が比較的弱いため、両者の界面で剥離が起こりやすく、微粒子層4を丸ごと、品質を低下させることなく転写させることができる。一方、バッファー層3がないと、微粒子層4の中間位置や第1の基体1との界面で剥離が起こり、剥離面が乱れたり、剥離の際の応力によって転写される微粒子層4の品質低下が起こりやすくなる。
【0064】
微粒子配列構造体を反射型スクリーン等の光学媒体として利用する場合には、バッファー層3がブラッグ反射する光の波長が、光学媒体が利用する波長範囲より小さくなるように、バッファー層3を構成する微粒子の直径を選択する。例えば、バッファー層3を構成する微粒子として直径90nmのシリカ微粒子を用いると、ブラッグ反射波長は紫外光領域となり、可視光領域の光に悪影響を及ぼすことがない(図27参照。)。
【0065】
工程3:微粒子層4の形成
図1(d)に示すように、バッファー層3の上に微粒子層4を形成する。例えば、微粒子層4を構成する微粒子として直径305nmのシリカ微粒子を用いると、ブラッグ反射波長は645nm付近になり、赤色光を反射する光反射層を形成することができる。同様に、直径250nm及び220nmのシリカ微粒子を用いると、それぞれ、ブラッグ反射波長は535nm及び465nm付近になり、緑色光及び青色光を反射する光反射層を形成することができる。また、これら3つの層を積層すれば、3原色光を選択的に反射する反射層を形成することができる(図27参照。)。
【0066】
工程4:第2の基体2への転写
一方、第2の基体2は、微粒子層4を転写して微粒子層4の機能を発揮させるための基体であるから、実際の使用条件等を考慮して用途等に最適のものを選ぶのがよい。例えば反射型スクリーンとして利用するには、機械的強度が十分あって破れにくく、しかも、フレキシビリティが高く、スクリーンの巻き取りが容易であるのがよい。また、軽量で、安価であるのが望ましい。この目的には、適当な厚さのプラスチックフィルム、例えば、厚さが20μm〜500μm、より好ましくは50μm程度のポリカーボネートフィルムやPETフィルム等が適している。
【0067】
次に、図2(e)及び(f)に示すように、第2の基体2に接着材を適量塗布して接着材層18を形成する。そして、接着材層18に微粒子層4を重ね合わせるように、第1の基体1と第2の基体2とを圧着する。接着材は、透明で微粒子と屈折率が近いものがよく、微粒子がシリカ微粒子である場合には、例えばアクリル系接着材がよい。また、接着材が微粒子層4の内部に侵入するのを防ぐには、紫外線硬化樹脂を接着材として用い、基体1と基体2を圧着後、直ちに紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させるか、又は巨大分子からなるゼラチンを接着材として用いるのがよい。
【0068】
その後、図2(g)に示すように、第1の基体1と第2の基体2とを引き離すことで、微粒子層4の第2の基体2の上への転写を行う。この際、バッファー層3が形成されていれば、バッファー層3と微粒子層4との境界面で剥離が起こり、微粒子層4は結晶性が低下することなく、第2の基体2に転写され、微粒子配列構造体10が作製される。
【0069】
バッファー層3が形成されていない場合には、微粒子層4の最下層の数層が第1の基体1の表面の凹凸の影響を受けて乱れの多い配列となり、これが下地微粒子層を形成する。第1の基体1の表面の凹凸はこの下地微粒子層で被覆されるので、この上に形成される微粒子層は結晶性が高いものになる。下地微粒子層と結晶性の高い微粒子層とは配列構造や配列周期が異なるので、両層の密着性は、結晶性の高い層同士の層間の密着性に比べてやや劣る。このため、転写に際しては、主として下地微粒子層と結晶性の高い微粒子層との間で剥離が起こり、結晶性の高い微粒子層は第2の基板2に転写され、粒子配列の乱れの多い下地微粒子層は第1の基体1の側に残る。
【0070】
【実施例】
次に、本発明の好ましい実施例を図面参照下に具体的に説明する。
【0071】
実施例1
第1の基体として、表面にサンドブラスト加工を施した厚さ50μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム製)11を用い、この上に微粒子層であるフォトニック結晶層14を直接形成し、次に第2の基体であるポリカーボネートフィルム(ゼネラルエレクトリック製;商品名 レキサンフィルム)12に転写して、転写による微粒子配列構造体20の作製が可能であることを示した。図3は、実施例1による微粒子配列構造体20の作製工程の一部を示す概略断面図である。
【0072】
フォトニック結晶層14は、直径305nmのシリカ微粒子(日本触媒製;商品名 シーホスターKE−W32)を純水に20質量%で分散させた微粒子分散液を用い、引き上げ法による塗布を行い、分散媒蒸発時の自己組織化により形成した(図3(a))。このとき、大気の温度は25℃、相対湿度は55%で、PETフィルム11を引き上げる速度は0.6m/minであった。
【0073】
ポリカーボネートフィルム12の上には、薄く紫外線硬化樹脂(旭硝子製;商品名 フォトレック)を3mg/cm2 で塗布した。このときの紫外線硬化樹脂の厚みは26μmとなり、フォトニック結晶層14の全てに浸透してしまう量である。この状態で紫外線を照射し、硬化しきる前の半硬化の状態で照射をやめ(照射時間2分、その後、硬化時間約5分)、まだ樹脂が粘着性を保っている状態でフォトニック結晶14の上に貼り付けた。その後、1分以内に再び紫外線を照射した(照射時間3分)。この状態でPETフィルム11とポリカーボネートフィルム12とは貼り付いていた(図3(b))。
【0074】
貼り付いているPETフィルム11とポリカーボネートフィルム12とを、少し力を加えて、互いを引き離したところ、下地微粒子層である下部層をPETフィルム11の側に残して、フォトニック結晶層14の上部層がポリカーボネートフィルム12の側にフォトニック結晶層14が転写され、微粒子配列構造体20を作製することができた(図3(c))。
【0075】
図4は、実施例1によるフォトニック結晶層14等の反射スペクトルである。スペクトルAは、図3(a)に示したPETフィルム11の上に形成したままのフォトニック結晶層14の反射スペクトル(図中の矢印は、入射光の入射方向を表す。以下、同様。)、スペクトルBは、図3(b)に示したポリカーボネートフィルム12に接着した状態のフォトニック結晶層14の反射スペクトル、CとDは、それぞれ、図3(c)に示した転写されたフォトニック結晶層14の反射スペクトルと転写後のPETフィルム11の側の反射スペクトルとである。
【0076】
また、図5は、走査電子顕微鏡で観察した、サンドブラスト加工したPETフィルム11の表面の観察像(a)、及び、剥離面の観察像(b)(PETフィルム11側)と(c)(ポリカーボネートフィルム12側)である。
【0077】
図5(b)を図5(a)と比べると、剥離後のPETフィルム11の表面には、基板の凹凸の隙間に微粒子が混入している程度で、フォトニック結晶層14はほとんど残っていないことがわかる。つまり、フォトニック結晶層14のほとんど全てがポリカーボネートフィルム12側に転写されたことがわかる。しかし、図4のスペクトルCをスペクトルA及びBと比べると、フォトニック結晶層14のほとんど全てが転写されている割には、転写後のフォトニック結晶層14の反射スペクトルは弱い。
【0078】
この理由は、図5の剥離面の観察像から、次のように考えられる。上述したように、PETフィルム11の上に形成されていたフォトニック結晶層14のほとんど全てが転写されてしまったので、数μm程度の凹凸形状を有しているPETフィルム11の表面付近に形成された、配列の乱れたフォトニック結晶層(下地微粒子層)の一部も転写されてしまい、それが転写後のフォトニック結晶層14の表面を形成している。このため、転写後のフォトニック結晶層14の表面の配列は乱れがあると想像されるが、図5(c)のポリカーボネートフィルム12側の剥離面の観察像から、この予想は確認できた。転写後のフォトニック結晶層14の反射スペクトルが弱い原因は、この荒れた表面による散乱が影響したためである。
【0079】
転写後のフォトニック結晶層14の表面の配列に多少問題はあるものの、PETフィルム(第1の基体)11の上に形成したフォトニック結晶層14をポリカーボネートフィルム(第2の基体)12の上に転写して、微粒子配列構造体20を作製することができた。
【0080】
なお、サンドブラスト加工していないPETフィルムに微粒子層を形成することを試みたが、形成できなかった。これは、サンドブラスト加工していないPETフィルム表面は疎水性であるため、水に分散させたシリカ微粒子分散液がPETフィルム表面に保持されないためである。図6は、走査電子顕微鏡で観察した、微粒子層の形成を試みた後の、サンドブラスト加工していないPETフィルム表面の観察像である。
【0081】
実施例2
第1の基体の上にバッファー層13を形成し、この上にフォトニック結晶層14を積層した点が異なる以外は実施例1と全く同様にして、転写によって微粒子配列構造体20を作製し、バッファー層13の効果を調べた。図7は、実施例2による微粒子配列構造体の作製工程の一部の概略断面図である。
【0082】
重複を避けるため、実施例1との相違点に重点をおいて説明する。第1の基体である、表面にサンドブラスト加工を施した厚さ50μmのPETフィルム11の上に微粒子層であるバッファー層13を形成し、その上にフォトニック結晶層14を積層し、続いて第2の基体であるポリカーボネートフィルム12の上に転写した。
【0083】
バッファー層13は、直径90nmのシリカ微粒子(日本触媒製;商品名 シーホスターKE−W10)を純水に15.6質量%で分散させた微粒子分散液を用い、引き上げ回転法による塗布を行い、分散媒蒸発時の自己組織化により形成した。この上に直径305nmのシリカ微粒子からなるフォトニック結晶層14を積層した(図7(a))。このとき、大気の温度は25℃、相対湿度は55%で、PETフィルム11を引き上げる速度は0.6m/minであった。
【0084】
ポリカーボネートフィルム12の上には、薄く紫外線硬化樹脂を塗布し、半硬化の状態でフォトニック結晶層14の上に貼り付け、その後、再び紫外線を照射して完全に硬化させた(図7(b))。
【0085】
PETフィルム11とポリカーボネートフィルム12とを引き離して、バッファー層13とフォトニック結晶層14との境界面で剥離させ、ポリカーボネートフィルム12の側にフォトニック結晶層14を転写した(図7(c))。
【0086】
図8は、実施例2によるフォトニック結晶層14等の反射スペクトルである。スペクトルAは、図7(a)に示したPETフィルム11とバッファー層13の上に形成したままのフォトニック結晶層14の反射スペクトル、スペクトルBは、図7(b)に示したポリカーボネートフィルム12に貼り合わせた状態のフォトニック結晶層14の反射スペクトル、スペクトルCとDは、それぞれ、図7(c)に示した転写されたフォトニック結晶層14の反射スペクトルと転写後のPETフィルム11の側の反射スペクトルとである。
【0087】
また、図9は、走査電子顕微鏡で観察した、剥離面の観察像(a)(PETフィルム11側)及び(b)(ポリカーボネートフィルム12側)である。
【0088】
反射スペクトルに関しては、次の2つの特徴がある。
【0089】
1つは、図8のスペクトルAを図4のスペクトルAと比べるとわかるように、PETフィルム11のバッファー層13の上に形成したフォトニック結晶層14の反射スペクトルは、PETフィルム11の上に直接形成したフォトニック結晶層14の反射スペクトルより、2倍以上強くなっていた。これは、下地微粒子層であるバッファー層13によってPETフィルム11の凹凸が被覆され、その結果、結晶性の高いフォトニック結晶層14が形成されたためと考えられる。
【0090】
他の1つは、図8のスペクトルAとスペクトルCとを比べるとわかるように、転写によって反射率は若干低下するものの、転写後もフォトニック結晶層14の反射特性は維持されていた。これは、転写に際し、バッファー層13とフォトニック結晶層14との境界面で剥離が起こったため、転写後のフォトニック結晶層14の表面の荒れがほとんど無かったためと考えられる。これは、図9の走査電子顕微鏡による観察像でも確認できる。
【0091】
即ち、図9(a)のPETフィルム11側の剥離面の観察像からは、PETフィルム11の表面の凹凸が粒子径90nmのシリカ微粒子で完全に被覆されていることと共に、転写後に残存するフォトニック結晶層14の微粒子はわずかであり、剥離がバッファー層13とフォトニック結晶層14との境界面で起こったことを示している。このPETフィルム11は、再利用することもできる。一方、図9(b)のポリカーボネートフィルム12側の剥離面の観察像からは、ポリカーボネートフィルム12が、結晶性の高い表面を有するフォトニック結晶層14で覆われていることがわかる。これは、バッファー層13の上に第1層目から結晶性の高いフォトニック結晶層14が形成されていたこと、及び、そのフォトニック結晶層14が結晶性を損なわれることなく転写されたことを示している。
【0092】
転写によってフォトニック結晶層14の反射率が若干低下する現象の原因は、紫外線硬化樹脂18がフォトニック結晶層14の中に侵入したため、フォトニック結晶層14のブラッグ反射に有効な積層段数が減少したためと考えられる。これは、接着材の材質や使用方法を工夫することで改善されるものと考えられる。
【0093】
このように、バッファー層13を形成することで、この上に結晶性の高いフォトニック結晶層14を形成し、且つ、その高い結晶性を損なうことなく、フォトニック結晶層14をポリカーボネートフィルム(第2の基体)12の上に転写して、高品質の微粒子配列構造体20を作製することができた。
【0094】
そこで、バッファー層の効果をさらに詳細に調べ、最適なバッファー層を検討するための実験を行った。ここでは、バッファー層は、上記と同様に直径90nmのシリカ微粒子(日本触媒製;商品名 シーホスターKE−W10)で形成したが、フォトニック結晶層は、直径290nmのシリカ微粒子(日本触媒製;商品名 シーホスターKE−P30)を純水に12.5質量%の濃度で分散させた分散液を用いて作製した。ここで用いたシリカ微粒子のブラッグ反射波長は、640〜650nmであり、実施例1及び2で用いた直径305nmのシリカ微粒子(KE−W30)と実質的な差はほとんどない。
【0095】
図10は、(a)バッファー層を形成せず、引き上げ塗布回数を1回〜3回まで変えてフォトニック結晶層を形成した場合の反射スペクトルと、(b)3回の引き上げ塗布によってバッファー層を形成した後、その上に引き上げ塗布回数を1回〜3回まで変えてフォトニック結晶層を形成した場合の反射スペクトルとを示したものである。図10から、塗布回数が同じもの同士を比べると、バッファー層を形成した場合(b)の方が、バッファー層がない場合(a)より強い反射スペクトルを与えることがわかる。また、バッファー層を形成せずにフォトニック結晶層を3回の引き上げ塗布で形成したものと、バッファー層を形成した後にフォトニック結晶層を1回の引き上げ塗布で形成したものが、類似した反射スペクトルを与えることもわかる。
【0096】
図11は、走査電子顕微鏡で観察した各フォトニック結晶層の表面の観察像である。図10で類似した反射スペクトルを与えた、バッファー層を形成せずにフォトニック結晶層を3回の引き上げ塗布で形成したもの(図11(b))と、バッファー層を形成した後にフォトニック結晶層を1回の引き上げ塗布で形成したもの(図11(c))とは、表面の平坦性や微粒子の整列の度合いもほぼ同等であることがわかる。更に、これらの平坦性や微粒子の整列の度合いは、バッファー層を形成した後にフォトニック結晶層を3回の引き上げ塗布で形成したもの(図11(d))と比べても、さして遜色のないものであることもわかる。これらに対して、バッファー層を形成せずにフォトニック結晶層を1回の引き上げ塗布で形成しただけのもの(図11(a))は、PETフィルム表面の凹凸の影響を受けて、平坦性や微粒子の整列の度合いが著しく劣っている。
【0097】
以上から、バッファー層を形成せずにフォトニック結晶層を形成した場合には、3回目の引き上げ塗布から良好な微粒子配列が得られるのに対し、バッファー層を形成した後にフォトニック結晶層を形成した場合には、初回の引き上げ塗布から良好な微粒子配列が得られるといえる。逆に言い換えると、バッファー層を形成しない場合には、1回目及び2回目の引き上げ塗布では欠陥の多い粒子配列が形成され、これがフォトニック結晶層の最下層部を構成する。このフォトニック結晶層を転写すると、最下層部が転写後のフォトニック結晶層の最上層部を構成するので、表面の粒子配列が乱れたフォトニック結晶層になってしまい、実施例1のように、良好な反射スペクトルを与えることができなくなってしまう。このように、転写を行う場合には、1層目から欠陥の少ないフォトニック結晶層を形成することが本質的に重要である。
【0098】
図12は、バッファー層の引き上げ塗布回数を1回〜5回に変えて表面の平坦性の変化を調べた結果である。表中、Raは、平均線からの絶対値偏差の平均値である算術平均粗さであり、Ryは、基準長さごとの最低谷底から最高山頂までの高さであり、RMSは、二乗平均粗さである。Ra、Ry、RMSのいずれも、3回の引き上げ塗布が最も平坦にPETフィルムの凹凸を覆い尽くしていることがわかった。表には、比較対象として、バッファー層を形成する前のPETフィルムのデータ、及び平坦面の例であるNDガラスのデータも示した。
【0099】
図13は、バッファー層が形成されたサンドブラスト加工PETフィルム表面の、走査電子顕微鏡による観察像である。図13(a)の引き上げ塗布回数1回の場合の観察像から、塗布回数1回では表面の凹凸が被覆しきれず、凹凸を被覆するのに最低2回の塗布回数が必要であり、平坦に被覆するには3回以上の塗布回数が必要であることがわかる。
【0100】
次にバッファー層の厚みによりフォトニック結晶層の反射スペクトルがどの程度の影響を受けるのかを調べた。単にバッファー層の必要厚みを試算できるだけでなく、厚く積層させた時に、バッファー層がフォトニック結晶層に与える影響を調べることができる。図14は、フォトニック結晶層を形成したPETフィルムの平面図である。端部14bでは中心部14aより分散媒である水の蒸発状況の違いから、結晶性の高いフォトニック結晶層が形成されやすい。
【0101】
図15は、バッファー層の厚さの効果を調べるために、引き上げ塗布回数を1回〜5回まで変えてバッファー層を形成し、その上に引き上げ塗布を3回行ってフォトニック結晶層を積層した場合につき、(a)フォトニック結晶層の中心部の反射スペクトル、及び(b)端部の反射スペクトルを測定した結果である。図中、スペクトルに付記した数字は、前の数字がバッファー層の引き上げ塗布回数であり、後の数字がフォトニック結晶層の引き上げ塗布回数である。
【0102】
中心部では、引き上げ塗布回数が1回又は2回では、反射スペクトルに大きな変化はなく、塗布回数が3回をこえると、劇的に反射率が向上し始めた。これは、バッファー層でPETフィルムの表面の凹凸が全て覆い尽くされると、それ以後は塗布回数に応じてフォトニック結晶層のブラッグ反射層としての性能が向上するものと考えられる。つまりバッファー層による基板表面の平坦化の効果が確認された。3回以後も引き上げ塗布回数を増すごとに反射率が高くなり、バッファー層の結晶性の向上がフォトニック結晶層の結晶性を向上させる効果が確認できた。
【0103】
端部では、4回の塗布で頭打ちになるが、十分良い反射率に達している。
【0104】
図16は、上記の実験における反射スペクトルの中心波長と、バッファー層の引き上げ塗布回数との関係である。初回の塗布から比較的高い反射率に達している端部の反射スペクトルの中心波長は、初回からブラッグ反射の波長領域にあり、結晶性の高さが推定される。一方、中心部の反射スペクトルの中心波長は、塗布回数ごとにブラッグ反射の波長に近づく傾向があり、フォトニック結晶層の結晶性が向上した結果であると考えられる。なお、5回目の引き上げ塗布で長波長側にシフトした理由は、ひび割れが大きな原因と考えている(図13(b)参照。)。ひび割れが大きいと、反射波長を測定する際にも結晶軸がずれるし、ひび割れの性で結晶性が落ちることがある。
【0105】
図17は、シリカ微粒子と親和性があり、表面が平坦なスライドガラスを基板として用い、バッファー層を形成せず、直接フォトニック結晶層を形成した参考例である。
【0106】
フォトニック結晶層は、実施例1及び2と同様に、微粒子分散液を引き上げ回転法によって塗布し形成した。この際、直径290nmのシリカ微粒子(日本触媒製;商品名 シーホスターKE−P30)を純水に12.5質量%で分散させた微粒子分散液を用い、スライドガラス基板を引き上げる速度は0.6m/min(1cm/sec)であった。この工程は、温度25℃、相対湿度60%以上のグローブボックス中で行った。
【0107】
図17(a)〜(c)は、それぞれ、1回〜3回の引き上げ塗布でフォトニック結晶層を形成した参考例の反射及び透過スペクトルである。測定は、図14に示したと同様に、中心部と端部の2箇所で行った。図17(c)に示した、参考例の3回引き上げ塗布によって平坦なスライドガラス基板の上に形成したフォトニック結晶層の反射スペクトルを、図8にAとして示した、実施例2でバッファー層13の上に形成したフォトニック結晶層14による反射スペクトルと比べると、実施例2のスペクトルは参考例のスペクトルにさして劣っていないことがわかる。これは、バッファー層13の有効性を示す証拠と考えられる。
【0108】
実施例3
第1の基体として、表面にサンドブラスト加工を施した厚さ50μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム製)11を用い、この上に直接、赤色光、緑色光及び青色光の3原色光を反射する各フォトニック結晶層15〜17を形成し、続いて、フォトニック結晶層15〜17を第2の基体であるポリカーボネートフィルム(ゼネラルエレクトリック製;商品名 レキサンフィルム)12の上に転写して、3原色光を反射する微粒子配列構造体30を転写によって作製することが可能であることを示した。
【0109】
図18は、実施例3による微粒子配列構造体30の作製工程の一部の概略断面図である。作製工程は、単一のフォトニック結晶層14のかわりに複数のフォトニック結晶層15〜17を積層した点が異なる以外は実施例1と全く同様であるので、重複を避けるため、実施例1との相違点に重点をおいて説明する。
【0110】
表面にサンドブラスト加工を施した厚さ50μmのPETフィルム11の上に、フォトニック結晶層15〜17を積層した(図18(a))。フォトニック結晶層(赤色光反射層)15は、直径305nm(ブラッグ反射波長645nm)のシリカ微粒子(日本触媒製;商品名 シーホスターKE−W32)を純水に20質量%で分散させた微粒子分散液を用いて形成し、フォトニック結晶層(緑色光反射層)16は、直径250nm(ブラッグ反射波長535nm)のシリカ微粒子(日本触媒製;商品名 シーホスターKE−W25)を純水に20質量%で分散させた微粒子分散液を用いて形成し、フォトニック結晶層(青色光反射層)17は、直径220nm(ブラッグ反射波長465nm)のシリカ微粒子(日本触媒製;商品名 シーホスターKE−W22)を純水に20質量%で分散させた微粒子分散液を用いて形成した。
【0111】
ポリカーボネートフィルム12の上には、薄く紫外線硬化樹脂を塗布し、半硬化の状態でフォトニック結晶層17の上に貼り付け、その後、再び紫外線を照射して完全に硬化させた(図18(b))。
【0112】
PETフィルム11とポリカーボネートフィルム12とを引き離して、ポリカーボネートフィルム12の側にフォトニック結晶層15〜17を転写し、微粒子配列構造体30を作製した(図18(c))。
【0113】
図19は、実施例3によるフォトニック結晶層等の反射スペクトルである。スペクトルAは、図18(a)に示したPETフィルム11の上に形成したままのフォトニック結晶層15〜17の反射スペクトル、スペクトルBは、図18(b)に示したポリカーボネートフィルム12に貼り合わせた状態のフォトニック結晶層15〜17の反射スペクトル、スペクトルCは、図18(c)に示した転写されたフォトニック結晶層15〜17の反射スペクトルである。▲1▼〜▲3▼の記号は、反射スペクトルを測定した箇所を示し、▲1▼と▲2▼は、フォトニック結晶層15〜17が接着材層18によってポリカーボネートフィルム12と接着され、転写された箇所を示し、▲3▼は、ポリカーボネートフィルム12に接着されず、転写されなかった箇所を示す。
【0114】
また、図20は、走査電子顕微鏡で観察した、剥離面の観察像(a)(PETフィルム11側)及び(b)(ポリカーボネートフィルム12側)である。
【0115】
走査電子顕微鏡による観察像から、剥離面に関しては実施例1と同じことが確認された。つまり、剥離後のPETフィルム11の表面には、凹凸の隙間に微粒子が混入している程度で、フォトニック結晶層15〜17はほとんど残っていない。PETフィルム11の表面付近に形成されていた、配列の乱れたフォトニック結晶層(下地微粒子層)も転写されてしまったため、転写後のフォトニック結晶層15〜17の表面は、粒子配列が乱れた状態になっている。更に、PETフィルム11の表面の凹凸は、直接、接しているフォトニック結晶層15ばかりでなく、フォトニック結晶層15〜17全体にひび割れ等の影響を与えている(図20(c)参照。)。
【0116】
上記のことから予想されるように、図19の反射スペクトルも実施例1と同様の結果であった。つまり、粒子配列が乱れた表面による散乱が影響したため、転写後のフォトニック結晶層15〜17による反射スペクトルB▲1▼及び▲2▼は、形成時の反射スペクトルAに比べて、はるかに弱い。
【0117】
反射スペクトルB▲1▼及び▲2▼において、赤色光及び緑色光の反射に比べ、青色光の反射(465nm付近の反射)が著しく減少し、ほとんど確認できない程度になっている。青色光反射層17は、接着材層18と接している層である。接着材がフォトニック結晶層に侵入すると、ブラッグ反射に有効な微粒子層の積層段数が減少して、反射率が低下する現象は実施例2でも確認されていた。従って、青色光の反射が著しく減少した原因は、青色光射層への接着材の侵入によると考えられる。これは、実施例2でも述べたように、接着材の材質や使用方法を適切に選択することで改善できると考えられる。
【0118】
転写の際の剥離に関しては、フォトニック層15〜17の間での剥離が観察されなかったことが注目される。この原因は、隣接する層を形成する微粒子の粒子径の違いがそれほど大きくなかったことにあると考えられる。つまり、フォトニック層15(粒子径305nm)とフォトニック層16(粒子径250nm)の2層の粒子径の比は1.220、フォトニック層16とフォトニック層17(220nm)の2層の粒子径の比は約1.136であるから、1.22未満程度の粒子径の比では転写時に剥離面が形成されず、一体として転写されることがわかる。
【0119】
なお、実施例2では、微粒子層14(粒子径305nm)とバッファー層13(粒子径90nm)との粒子径の比は約3.39であったから、転写時にきれいな剥離面を形成するのに十分な粒子径の違いがあったのだと考えられる。このように、フォトニック結晶層の転写を行う場合、バッファー層を構成する微粒子はフォトニック結晶層を構成する微粒子と大きく粒子径が異なることが好ましい。
【0120】
実施例4
第1の基体の上にバッファー層13を形成し、この上にフォトニック結晶層15〜17を積層した点が異なる以外は実施例3と同様にして、転写によって3原色光を反射する微粒子配列構造体30を作製し、バッファー層13の効果を調べた。図21は、微粒子配列構造体30の作製工程の一部の概略断面図である。
【0121】
重複を避けるため、実施例3との相違点に重点をおいて説明する。第1の基体である、表面にサンドブラスト加工を施した厚さ50μmのPETフィルム11の上にバッファー層13を形成し、その上にフォトニック結晶層15〜17を積層し、続いて第2の基体であるポリカーボネートフィルム12の上に転写した。
【0122】
各微粒子層は、引き上げ法によって作製した。バッファー層13は直径90nmのシリカ微粒子(シーホスターKE−W10)により、赤色光反射層15は直径305nmのシリカ微粒子(シーホスターKE−W32)により、緑色光反射層16は直径250nmのシリカ微粒子(シーホスターKE−W25)により、青色光反射層17は直径220nmのシリカ微粒子(シーホスターKE−W22)により、それぞれ作製した(図21(a))。なお、本実施例でのPETフィルム11の引き上げ速度は、0.12m/min(2mm/sec)であった。塗布回数は、バッファー層13及び赤色光反射層15は各3回、緑色光及び青色光反射結晶層16及び17は各2回であった。
【0123】
微粒子層を形成した後、ポリカーボネートフィルム12の上に、薄く紫外線硬化樹脂18を塗布し、半硬化の状態でフォトニック結晶層17の上に貼り付け、その後、再び紫外線を照射して完全に硬化させた(図21(b))。
【0124】
PETフィルム11とポリカーボネートフィルム12とを引き離して、バッファー層13とフォトニック結晶層15との境界面で剥離させ、ポリカーボネートフィルム12の側にフォトニック結晶層15〜17を転写した(図21(c))。
【0125】
図22は、本実施例によるフォトニック結晶層等の反射スペクトルである。スペクトルAは、図21(a)に示した、形成したままのフォトニック結晶層15〜17の反射スペクトル(図中の矢印Aは、入射光の入射方向を表す。以下、同様。)であり、スペクトルBは、図21(b)に示した、ポリカーボネートフィルム12に貼り合わせた状態のフォトニック結晶層15〜17の反射スペクトルである。また、C及びDは、図21(c)に示した、転写後のフォトニック結晶層15〜17の反射スペクトルで、それぞれ矢印C及びDの方向から光を入射させて測定したスペクトルである。そしてEは、転写後のPETフィルム11の反射スペクトルである。
【0126】
また、図23は、走査電子顕微鏡で観察した剥離面の観察像(a)(PETフィルム11側)と(b)(ポリカーボネートフィルム12側)である。
【0127】
走査電子顕微鏡による観察像から、剥離面に関しては実施例2と同じことが確認された。即ち、図23(a)のPETフィルム11側の剥離面の観察像からは、PETフィルム11の表面の凹凸が粒子径90nmのシリカ微粒子で完全に被覆されていることと共に、転写後に残存するフォトニック結晶層14の微粒子はわずかであり、剥離がバッファー層13とフォトニック結晶層15との境界面で起こったことを示している。このPETフィルム11は、再利用することもできる。一方、図23(b)のポリカーボネートフィルム12側の剥離面の観察像からは、転写されたフォトニック結晶層15〜17の表面が、結晶性の高いフォトニック結晶層15で覆われていることがわかる。これは、バッファー層13の上に第1層目から結晶性の高いフォトニック結晶層15が形成されていたこと、及び、そのフォトニック結晶層15が結晶性を損なわれることなく転写されたことを示している。
【0128】
反射スペクトルに関しては、まず、次の2つの特徴が指摘できる。1つは、図22のスペクトルAを図19のスペクトルAと比べるとわかるように、PETフィルム11のバッファー層13の上に形成したフォトニック結晶層15〜17の反射スペクトルは、PETフィルム11の上に直接形成したフォトニック結晶層15〜17の反射スペクトルより、反射率が著しく高くなっているばかりでなく、反射率の波長依存性が明瞭で、3原色光を選択的に反射する性能が著しく向上していることである。
【0129】
他の1つは、図22のスペクトルAとスペクトルC或いはDとを比べるとわかるように、転写によって反射率は若干低下するものの、転写後もフォトニック結晶層15〜17の反射特性は維持されていることである。これは、転写に際し、バッファー層13とフォトニック結晶層15との境界面で剥離が起こったため、フォトニック結晶層15〜17の表面の荒れがほとんど起こらなかったためと考えられる。その事実は、既に図23の走査電子顕微鏡による観察像で確認したとおりである。
【0130】
このように、バッファー層13を形成することで、その上に結晶性の高いフォトニック結晶層15〜17を形成し、且つ、その高い結晶性を損なうことなく、フォトニック結晶層15〜17をポリカーボネートフィルム(第2の基体)12の上に転写して、高品質の微粒子配列構造体30を作製することができた。
【0131】
スペクトルBとCとにおいて、スペクトルAに比べ特に青色光反射層17の反射率が低下している主な原因は、実施例2と同様、紫外線硬化樹脂18がフォトニック結晶層17等の中に侵入したため、フォトニック結晶層17のブラッグ反射に有効な積層段数が減少したためと考えられる。これは、接着材の材質や使用方法を工夫することで改善されるものと考えられる。
【0132】
また、同じ転写後のフォトニック結晶層でありながら、赤色光反射層15側から測定したスペクトルDは、青色光反射層17側から測定したスペクトルCに比べ、青色光の反射が更に少ない。これは構造体30の各反射層の膜厚比を変更する事で対応可能である。
【0133】
図24(a)は、微粒子配列構造体30に光拡散層31と可視光吸収体32とを設けて、先願発明で提案された3原色光を選択的に反射する反射型スクリーンを作製した例である(図28参照。)。短波長の光ほど散乱されやすいので、散乱光を減らすためには、青色光反射層17が光の入射側にある配置が望ましい。従って、光は、図24(a)の上方、ポリカーボネートフィルム12の側からフォトニック結晶層15〜17に入射する。
【0134】
ポリカーボネートフィルム12の表面には、光拡散層31として光拡散フィルム等が図示を省略した接着材等によって貼り付けられている。光拡散層31は、光の拡散をはかり、スクリーンから反射される光の指向性を緩和するとともに、スクリーン全体に均一な輝度を持たせるためのものである。
【0135】
光拡散層31の材料としては、可視光領域において透明な材料で、且つ光を拡散させるもの、即ち、光拡散層内の場所ごとに屈折率が変化するような屈折率分布を持つものや、フィルムの表面に凹凸を有するものがよい。光拡散フィルムは、表面に2次元マイクロレンズアレイが形成されたマイクロレンズフィルム等に置き換えてもよい。
【0136】
可視光吸収体32は、フォトニック結晶層15〜17を透過してきた外部光等を吸収してコントラストを高める働きをするもので、可視光を吸収するものなら何でもよく、用途等に応じて適宜選択すればよい。図24(a)のスクリーンでは、可視光吸収体32はフォトニック結晶層15〜17の保護材の役割も兼ねていて、図示を省略した接着材等によってフォトニック結晶層15に貼り付けられている。可視光吸収体32には、例えば黒色PETフィルムや、透明な高分子フィルムに黒色のカーボン膜をコーティングしたものがよい。可視光吸収体32の厚さが厚くなるほど、機械的強度は強くなるが、フレキシビリティは失われる。機械的強度とフレキシビリティとを両立させるには、PETフィルム等の厚さは20μm〜500μmが好ましく、例えば50μm程度がより好ましい。
【0137】
図24(b)は、PETフィルム11の上にフォトニック結晶層15〜17を逆順に積層し、これを転写して反射型スクリーンを作製した例である。この場合も、散乱光を減らすために青色光反射層17が光の入射側にある配置にすると、光は、図24(b)の下方からフォトニック結晶層15〜17に入射する。従って、光拡散層31は、図示しない接着材等によってフォトニック結晶層17の表面に貼り付けられる。一方、可視光吸収体32はポリカーボネートフィルム12の表面に設けられている。
【0138】
図24(b)の反射型スクリーンでは、光拡散層31はフォトニック結晶層15〜17の保護材の役割も兼ねるので、光拡散層31の材料は適切な強度を有するものがよい。一方、可視光吸収体32には保護材としての働きは不要であるから、ポリカーボネートフィルム12の表面に黒色のカーボン膜をコーティングしてもよい。また、第2の基体として可視光吸収性のものを用いれば、可視光吸収体32を省略することもできる。
【0139】
このような3原色光を選択的に反射する微粒子配列構造体30は、フルカラー表示に関わる光学媒体の素材として有用である。
【0140】
以上に述べた実施の形態及び実施例は、本発明の技術的思想に基づいて適宜変更可能である。
【0141】
【発明の作用効果】
本発明によれば、第1の基体上に下地微粒子層と微粒子層を形成し、この微粒子層を下地微粒子層との間で剥離させて第2の基体上に転写する。この転写に際して、前記下地微粒子層と前記微粒子層とは微粒子の配列状態(微粒子の粒子径や充填密度や配列構造)が異なるため、両者の界面が剥離面になりやすい。従って、微粒子配列の欠陥の多い前記下地微粒子層は、ほとんど前記第1の基体側に残り、欠陥の少ない前記微粒子層のみが前記第2の基体側に転写される。結果的には、前記第1の基体表面の凹凸の影響をほとんど受けず、結晶性の高い前記微粒子層が前記第2の基体上に設けられた微粒子配列構造体及び光学媒体を作製することができる。
【0142】
この場合、第1の基体は、微粒子層を形成する上で最適なものを用い、第2の基体は、光学媒体等としての用途等に合わせて、微粒子層の機能を発揮させる上で最適なものを用いるというように、それぞれの目的に最適な基体を使い分けることが可能になる。
【0143】
また、第1の基体上に下地微粒子層を形成し、この下地微粒子層の上に規則的に配列した微粒子からなる微粒子層を積層するので、第1の基体表面の凹凸は下地微粒子層によって被覆され、微粒子層の形成は、第1の基体表面の凹凸の影響を受けにくくなる。この結果、微粒子が規則正しく整列し、光を散乱させる原因となる欠陥が少なく、特にブラッグ反射層としての品質の高い微粒子層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に基づく微粒子配列構造体の作製工程を示す概略断面図である。
【図2】同、微粒子配列構造体の作製工程を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施例1による微粒子配列構造体の作製工程の概略断面図である。
【図4】同、フォトニック結晶などの反射スペクトルである。
【図5】同、走査電子顕微鏡による、サンドブラスト加工したPETフィルム表面の観察像(a)、及び、剥離面の観察像(b)(PETフィルム側)と(c)(ポリカーボネート側)である。
【図6】走査電子顕微鏡による、微粒子層の形成を試みた後の、サンドブラスト加工していないPETフィルム表面の観察像である。
【図7】本発明の実施例2による微粒子配列構造体の作製工程の概略断面図である。
【図8】同、フォトニック結晶などの反射スペクトルである。
【図9】同、走査電子顕微鏡による、剥離面の観察像(a)(PETフィルム側)と(b)(ポリカーボネート側)である。
【図10】同、PETフィルム上に形成されたフォトニック結晶層の反射スペクトルである。
【図11】同、走査電子顕微鏡による、フォトニック結晶層の表面の観察像である。
【図12】同、バッファー層の引き上げ塗布回数の変化による、表面の平坦性の変化を示す表である。
【図13】同、走査電子顕微鏡による、バッファー層が形成されたサンドブラスト加工PETフィルム表面の観察像である。
【図14】同、PETフィルムの中心部と端部を示す概略平面図である。
【図15】同、PETフィルム上に形成されたフォトニック結晶層の反射スペクトルである。
【図16】同、PETフィルム上に形成されたフォトニック結晶層の反射スペクトルの中心波長と、バッファー層の引き上げ塗布回数との関係を示すグラフである。
【図17】参考例によるスライドガラス基板上に形成されたフォトニック結晶層による反射及び透過スペクトルである。
【図18】本発明の実施例3による微粒子配列構造体の作製工程の概略断面図である。
【図19】同、フォトニック結晶などの反射スペクトルである。
【図20】同、走査電子顕微鏡による、剥離面の観察像(a)(PETフィルム側)、及び、(b)(ポリカーボネート側、拡大倍率10000倍)と(c)(同、1000倍)である。
【図21】本発明の実施例4による微粒子配列構造体の作製工程の概略断面図である。
【図22】同、フォトニック結晶などの反射スペクトルである。
【図23】同走査電子顕微鏡による、剥離面の観察像(a)(PETフィルム側)と(b)(ポリカーボネート側)である。
【図24】本発明の実施例4による反射型スクリーンの要部拡大概略断面図である。
【図25】自己組織化的に微粒子集合体を形成する方法を示す説明図である。
【図26】先願発明の好ましい実施の形態に基づく引き上げ回転法によって形成されたシリカ微粒子集合体の、反射スペクトル(a)と微粒子の配列構造を示す概略断面図(b)である。
【図27】同、シリカ微粒子集合体によってブラッグ反射される光の波長とシリカ微粒子の直径との関係を示すグラフである。
【図28】同、3原色光のみを反射する反射型スクリーンの基本構造の要部拡大概略断面図である。
【図29】同、3原色光のみを反射する反射型スクリーンによって色再現範囲が改善されることを示す色度図である。
【符号の説明】
1…第1の基板(サンドブラスト加工したPETフィルムなど)、
2…第2の基板、3…バッファー層、4…微粒子層、8…接着材層、
10…微粒子配列構造体、
11…サンドブラスト加工したPETフィルム、
12…ポリカーボネートフィルム、13…バッファー層、
14…フォトニック結晶層、14a…フォトニック結晶層中心部、
14b…フォトニック結晶層端部、
15…フォトニック結晶層(赤色光反射層)、
16…フォトニック結晶層(緑色光反射層)、
17…フォトニック結晶層(青色光反射層)、18…紫外線硬化樹脂、
20、30…微粒子配列構造体、31…光拡散層、32…可視光吸収体、
40…基板、41…微粒子、42…分散媒、43…微粒子分散液、
44…微粒子集合体、50…基板、51…シリカ微粒子、
54…シリカ微粒子集合体、100…プラスチック基板
Claims (17)
- 第1の基体の表面に凹凸を形成する第1工程と、この第1の基体上に、前記凹凸の高さより小さい粒子径の微粒子によって、前記凹凸を被覆して埋める下地微粒子層を形成する第2工程と、前記凹凸の高さより小さくて前記下地微粒子層の前記微粒子より大きい粒子径のシリカ微粒子の分散液を前記下地微粒子層上に付着させる第3工程と、前記分散液から分散媒を蒸発させることによって前記シリカ微粒子を集合させ、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3原色の入射光の少なくとも1種をブラッグ反射可能にするシリカ微粒子の周期的配列構造を有する微粒子層を前記下地微粒子層上に積層する第4工程と、前記微粒子層を前記下地微粒子層との間で剥離させて第2の基体上に転写する第5工程とを有する、微粒子配列構造体の製造方法。
- 前記シリカ微粒子分散液中に前記第1の基体を浸漬する工程と、前記第1の基体を気相中に引き上げることにより、その表面を前記シリカ微粒子分散液で濡らす工程と、前記シリカ微粒子分散液で濡れた前記第1の基体から分散媒を蒸発させる工程とによって、前記下地微粒子層及び前記微粒子層を形成する、請求項1に記載した微粒子配列構造体の製造方法。
- 前記シリカ微粒子の粒子径を前記入射光の各色毎に選択する、請求項1に記載した微粒子配列構造体の製造方法。
- 前記第2の基体の表面に接着又は粘着材層を形成した後、この接着又は粘着材層によって前記微粒子層を前記第2の基体に転写する、請求項1に記載した微粒子配列構造体の製造方法。
- 前記接着又は粘着材層中の接着又は粘着材として、ゼラチン、ポリビニルアルコール、紫外線硬化樹脂又はアクリル樹脂粘着剤を用いる、請求項4に記載した微粒子配列構造体の製造方法。
- 前記第2の基体として高分子フィルムを用いる、請求項1に記載した微粒子配列構造体の製造方法。
- 前記第2の基体の面内の同じ領域及び/又は異なる領域において、前記第2工程〜前記第5工程を繰り返して、前記第2の基体上に複数の前記微粒子層を積層及び/又は並設する、請求項1に記載した微粒子配列構造体の製造方法。
- 赤(R)、緑(G)及び青(B)の3原色の入射光のうち互いに異なる入射光をそれぞれブラッグ反射する複数種の前記微粒子層を配設する、請求項7に記載した微粒子配列構造体の製造方法。
- 第1の基体の表面に凹凸を形成する第1工程と、この第1の基体上に、前記凹凸の高さより小さい粒子径の微粒子によって、前記凹凸を被覆して埋める下地微粒子層を形成する第2工程と、前記凹凸の高さより小さくて前記下地微粒子層の前記微粒子より大きい粒子径のシリカ微粒子の分散液を前記下地微粒子層上に付着させる第3工程と、前記分散液から分散媒を蒸発させることによって前記シリカ微粒子を集合させ、赤(R)、緑(G)及び青(B)の3原色の入射光の少なくとも1種をブラッグ反射可能にするシリカ微粒子の周期的配列構造を有する微粒子層を前記下地微粒子層上に積層する第4工程と、前記微粒子層を前記下地微粒子層との間で剥離させて第2の基体上に転写する第5工程とを有する、反射型スクリーンの製造方法。
- 前記シリカ微粒子分散液中に前記第1の基体を浸漬する工程と、前記第1の基体を気相中に引き上げることにより、その表面を前記シリカ微粒子分散液で濡らす工程と、前記シリカ微粒子分散液で濡れた前記第1の基体から分散媒を蒸発させる工程とによって、前記下地微粒子層及び前記微粒子層を形成する、請求項9に記載した反射型スクリーンの製造方法。
- 前記シリカ微粒子の粒子径を前記入射光の各色毎に選択する、請求項9に記載した反射型スクリーンの製造方法。
- 前記第2の基体の表面に接着又は粘着材層を形成した後、この接着又は粘着材層によって前記微粒子層を前記第2の基体に転写する、請求項9に記載した反射型スクリーンの製造方法。
- 前記接着又は粘着材層中の接着又は粘着材として、ゼラチン、ポリビニルアルコール、紫外線硬化樹脂又はアクリル樹脂粘着剤を用いる、請求項12に記載した反射型スクリーンの製造方法。
- 前記第2の基体として高分子フィルムを用いる、請求項9に記載した反射型スクリーンの製造方法。
- 前記第2の基体の面内の同じ領域及び/又は異なる領域において、前記第2工程〜前記第5工程を繰り返して、前記第2の基体上に複数の前記微粒子層を積層及び/又は並設する、請求項9に記載した反射型スクリーンの製造方法。
- 赤(R)、緑(G)及び青(B)の3原色の入射光のうち互いに異なる入射光をそれぞれブラッグ反射する複数種の前記微粒子層を配設する、請求項15に記載した反射型スクリーンの製造方法。
- 前記第2の基体上又はこれとは反対側の面上に、光拡散フィルム又は可視光吸収用の黒色フィルムを設ける、請求項9に記載した反射型スクリーンの製造方法。
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