JP2006289165A - 微粒子膜の成膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】配列状態がより均一な微粒子膜を得ることが可能な成膜方法を提供する。
【解決手段】微粒子を自己組織化的に集合させた微粒子膜を基板上に成膜する方法であって、微粒子を分散媒に分散させた微粒子分散液13中に基板1を浸漬する。微粒子濃度は5wt%を越える範囲、好ましくは10wt%以上とする。次に、微粒子分散溶液13中から引き上げ速度0.1〜10mm/secの範囲で基板1を気相中に引き上げることにより、基板1の表面に微粒子分散溶液13の液膜15を形成する。液膜から分散媒を蒸発させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、規則的に微粒子を配列してなる微粒子膜の成膜方法に関し、特には微粒子が3次元に積層配列された多層微粒子膜を大面積に効率良く均一に成膜する方法に関する。
規則的に微粒子を配列してなる微粒子膜は、フォトニック結晶、半導体材料、ディスプレイ用光学散乱体、磁気記録材料、バイオチップ、細胞培養基材など多様な用途への応用が検討されている。このような微粒子膜を成膜する方法として、自然沈降法、引き上げ法等、微粒子を自己組織化的に集合させて規則的に配列させる種々の方法が提案されている。
このうち、自然沈降法は、微粒子を分散媒に分散させて微粒子分散液を調製した後、微粒子分散液を基板上に滴下するか、基板を微粒子分散液中に静置する。微粒子は、自身の重さによる沈降、又は蒸発による分散媒の減少によって徐々に基板上に堆積し、規則的に配列した微粒子集合体を形成する。自然沈降法は、1回の操作で3次元的に配列した微粒子層を作製できる簡便な方法であり、現在も様々な材料に対して適用されている。
また、引き上げ法は、自然沈降法と同様に微粒子分散液を調製し、分散液に対して親和性のよい基板を分散液に垂直に差し込んで浸漬した後、基板を微粒子分散液から徐々に引き上げていく。基板の引き上げ時に、微粒子分散液の一部が基板表面に移し取られ、この分散液から分散媒が蒸発していく過程で、残された微粒子が自己組織化的に集合し、基板上に微粒子が2次元、あるいは3次元的に規則正しく配列した微粒子集合体が形成される。この方法では、エタノールを分散媒とする分散液中にガラス基板を浸漬し、分散媒を自然蒸発させる事により、シリカ微粒子の集合体を形成した事例等が多数報告されている。
以上のような引き上げ法においては、微粒子分散液の基板上におけるぬれ膜の微粒子の体積分率φを、液媒体の蒸発速度及び粘度に依存する係数に基づいた値以上に規定すると共に、ぬれ膜と粒子との接触線を光学的に検出し、この値を基づいて牙の引き上げ速度を帰還制御することにより、縞構造などを発生させることなく、均一な微粒子膜を形成する手法が提案されている(下記特許文献1参照)。
またさらに、サンドブラスト加工した基板の表面上に、下地微粒子層を形成し、下地微粒子層よりも大きい粒子径の微粒子で構成された第2の微粒子層を積層形成することにより、乱れなく規則的に微粒子が配列された第2の微粒子層を得る手法が提案されている(下記特許文献2参照)。
特許第2834416号公報(特に第21段落〜第23段落) 特開平2004−262151号公報(特に図1を参照した第58段落〜第62段落)
しかしながら、以上のような成膜方法では、何れも配列状態が均一で結晶欠陥が少ない微粒子膜を得ることは可能であるが、成膜される微粒子膜は非常に小さく、数μm×数μm〜数mm×数mmオーダーでしかない。また特に、特許文献1に記載された方法では、ぬれ膜と粒子との接触線を光学的に検出し、この値を基づいて基板の引き上げ速度を帰還制御する必要があるため、大面積に配列状態が均一な大面積の微粒子膜を成膜する簡便なプロセスとは言い難い。
そこで本発明においては、配列状態が均一な微粒子膜を得ることが可能な成膜方法を提供することを目的としている。
以上のような目的を達成するための本発明は、微粒子を自己組織化的に集合させた微粒子膜を基板上に成膜する方法であり、以下の3工程を行う。先ず第1工程では、微粒子を分散媒に分散させた微粒子分散液中に前記基板を浸漬する。次の第2工程では、微粒子分散溶液中から基板を気相中に引き上げることにより、当該基板の表面に微粒子分散溶液の液膜を形成する。そして、第3工程では、この液膜から分散媒を蒸発させる。そして特に、第2工程では、引き上げ速度10mm/sec以下の範囲で微粒子分散溶液中から基板を引き上げることを特徴としている。
このような成膜方法によれば、第2工程の引き上げ速度により液膜の量(厚み)を制御できる為、第3工程後の二次元・三次元微粒子膜の厚みを任意に作製できる。また、第3工程の蒸発速度の制御を行う事により、メニスカス移動に伴う微粒子の自己組織化を充分に進行できることから、微粒子の配列状態が良好な液膜、および微粒子膜が得られる。
以上説明したように本発明によれば、微粒子を3次元に良好に配列させた微粒子膜を得ることが可能になる。
以下、本発明の微粒子膜の成膜方法に関する実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、微粒子膜の一例として、スクリーンを構成するフォトニック結晶膜を成膜する方法を例示して実施形態を説明する。
先ず、図1(1)に示すように、微粒子膜を成膜するための基板1を用意する。基板1としては、以降に説明する微粒子分散液との親和性を有するものを用いることが好ましい。例えば、シリカ微粒子からなる微粒子膜を形成する場合には、シリカ微粒子を水に分散させた微粒子分散液を用いる。この場合、分散媒となる水との親和性が良好なガラス材料からなる基板が好適に用いられる。尚、基板にフレキシビリティを要求する場合、プラスティック材料からなる基板を用いても良い。このような基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるプラスティック基板が例示される。
次に、図1(2)に示すように、基板1の表面1aにサンドブラスト加工を施し、基板1の表面1aに対しての上述した微粒子分散液の保持性能を増加させる。尚、予めサンドブラスト加工が施された基板を用意しても良い。
次に、図1(3)に示すように、サンドブラスト加工が施された基板1の表面1aに、バッファ層3を形成する工程を行う。このバッファ層3は、次に成膜する微粒子膜の下地微粒子膜となる層であり、微粒子膜を構成する微粒子よりも粒径の小さい微粒子3aを自己組織化により規則的に配列したフォトニック結晶として成膜される。例えば、粒径200〜350nmφ程度の微粒子を用いた微粒子膜を成膜しようとした場合、バッファ層3を構成する微粒子3aとして粒径は90nmφ程度の微粒子を用いれば良い。そして例えば、この微粒子3aを、イオン交換水に分散させ、微粒子濃度15.6wt%の微粒子分散溶液を調整し、この微粒子分散溶液を用いてバッファ層3を形成する。
ここでは、例えば通常の引き上げ法や自然沈降法により、粒径の小さい微粒子を自己組織化により配列させ、サンドブラスト加工によって基板1の表面1aに形成された凹凸形状を埋め込む状態でバッファ層3を形成する。これにより、基板1表面の凹凸形状の平滑化を行うと共に、次に用いる微粒子分散液に対する親和性を基板表面に対して付与する。
そして、以上までの処理(すなわちサンドブラスト加工およびバッファ層の形成)は、上述した特許文献2に開示された手法によって行われることとする。そして、このような基板1の表面の平滑化を行うことにより、次に形成する微粒子膜の自己組織化が円滑に進むようにする。また、基板1の表面に親和性を付与することにより、微粒子膜の形成に用いる微粒子分散溶液が基板表面に均等に塗布されるようにする。
尚、上述したサンドブラスト加工、またはサンドブラスト加工とその後のバッファ層の成膜工程は、もともとの基板表面が平滑であり、また基板表面と微粒子分散液との親和性が良好であるならば、必ずしも必要ではない。
そして、次の工程からが、本実施形態に特徴的な工程となる。
ここでは、先ず、図2(1)に示すように、微粒子膜を構成する微粒子を分散媒に分散させた微粒子分散溶液13を調整する。ここでは例えば、微粒子としてシリカ微粒子(シーホスター:日本触媒製)、粒径200〜350nmφ程度を用いることとする。そして、このシリカ微粒子を、イオン交換水に分散させて、微粒子濃度約5wt%を越える範囲、好ましくは10wt%以上の微粒子分散溶液を調整する。尚、微粒子分散溶液13における微粒子濃度の上限は、微粒子分散溶液の粘度が分散溶媒の粘度と同程度に保たれる範囲内であることとする。また微粒子濃度は微粒子が分散溶媒に凝集体がない程度に分散されている事とする。ここでは、一例として微粒子濃度20Wt%の微粒子分散溶液を調整することとする。
そして、以上のように微粒子濃度が調整された微粒子分散溶液13中に、基板1を浸漬させる。
その後、図2(2)に示すように、微粒子分散溶液13中から基板1を気相中に引き上げ、これにより基板1の表面1a、すなわち親水性を有するか、もしくはサンドブラスト加工およびバッファ層の形成によって平滑化された面に、微粒子分散溶液の液膜15を形成する。この際、一回の塗布で作製される微粒子膜の厚さを制御する場合、引き上げ速度v=0.1mm/sec以上の範囲、すなわち引き上げ速度と乾燥速度とが同程度なる範囲で、基板15を引き上げることが重要であり、この範囲で引き上げ速度vを調整することにより、引き上げ速度が微粒子の厚みを直接制御するようにして、所定膜厚の液膜15を形成する。尚、微粒子分散溶液13に対して基板1の裏面側が親和性を有する場合、裏面側にも微粒子膜が形成されることになる。
そして、図2(3)に示すように、基板1の表面1aに成膜された液膜15を乾燥させる。この場合、乾燥速度は、微粒子分散溶液13から充分に引き上げられた位置から乾燥が開始されるように調整されることが好ましい。
以上により、図1(4)に示すように、基板1の表面1a上に、バッファ層3を介して、粒径200〜350nmφ程度の微粒子を3次元に規則的に配列させた微粒子膜5を成膜する。この微粒子膜5は、図2(3)を用いて説明した液膜15を乾燥させた膜である。
尚、以上の後には、必要に応じて、図2(1)〜図2(3)を用いて説明した引き上げ方による微粒子膜5の成膜工程を繰り返し行っても良い。これにより、基板1上の微粒子膜5を、必要膜厚の微粒子膜5とする。
以上のようにして、粒径200〜350nmφ程度の微粒子を3次元に規則的に配列させた所望の膜厚の微粒子膜5が得られる。得られた微粒子膜は、波長430〜745nm付近の光にブラッグ条件(λ=2nΛ/m、λ:入射光波長、n:モード屈折率、Λ:周期、m:次数)を充たす反射光が得られるフォトニック結晶となる。そして、この微粒子膜(フォトニック結晶)は、3原色反射の1つとなりうるため、フルカラー表示用のスクリーンの反射層として有効に用いられるものになる。
以上説明した成膜方法によれば、図2(2)を用いて説明した微粒子分散溶液13からの基板1の引き上げ速度vを0.1〜10mm/sec以下としたことにより、必要粒子数の微粒子層に制御する事が可能である。これにより、必要粒子数に満たない場合は積層させる事により達成する事が可能である。つまり必要粒子数に達するまでの工程を最小にする事が出来ると共に、微粒子の規則性を高める要因である、メニスカスの移動に伴う微粒子の自己組織化が充分に進められ、微粒子の配列状態が良好な液膜、および微粒子膜が得られる。この結果、微粒子を3次元に良好に配列させた微粒子膜を得ることが可能になる。また、この引き上げ速度vを10mm/sec以上とすることにより、微粒子分散溶液から引き上げた基板の表面に、より安定に一定量の膜厚の液膜が形成される。そして、この液膜から分散媒を蒸発させて得られる微粒子膜は、液膜の膜厚に対応した、ある程度の膜厚以上となり、より少ない引き上げ回数で必要膜厚の微粒子膜が得られる。これにより、各成膜で得られる微粒子膜の界面の発生を抑えて、この界面に生じる膜厚方向の微粒子の配列の乱れが抑えられる。
また、図2(1)を用いて説明した微粒子分散溶液13における微粒子濃度を5wt%以上としたことにより、微粒子が自己組織化的に集合する際に、島状に集合することが防止され、広い範囲で均一化された配列状態の微粒子膜を得ることができる。またさらに、微粒子分散溶液における微粒子濃度を10wt%以上とした場合には、最密六法構造に微粒子を自己組織化的に集合させることができ、微粒子の配列状態にムラのない、反射特性の良好な微粒子膜を得ることができる。
尚、以上の実施形態においては、微粒子膜の成膜においてのみ、図2(1)〜図2(3)を用いて説明したように微粒子分散溶液13の濃度や、微粒子分散溶液13からの基板1の引き上げ速度vを規定した成膜を行った。しかしながら、図1(3)を用いて説明したバッファ層3も一種の微粒子膜であることから、このバッファ層3の成膜工程においても、図2(1)〜図2(3)を用いて説明した成膜工程と同様の規定を行った引き上げ法を適用しても良い。これにより、バッファ層3も、微粒子を3次元にムラなく良好に配列させた微粒子膜として成膜することが可能になる。これにより、このようなバッファ層3を下地として、この上部にさらに均一に微粒子を配列させてなる微粒子膜5を形成することが可能になる。
ここで、以上のようにして得られる微粒子膜5は、粒径200〜350nmφ程度の微粒子を3次元に規則的に配列させてなるフォトニック結晶となる。図3には、フォトニック結晶における微粒子の粒径と反射波長の関係を示す。
また、このフォトニック結晶における粒径の波長依存性(構造性発色)については、以下の様に報告されている(Z.Z.Gu, S.Hayami, S.Kubo, Q.B.Meng, Y.Einaga, D.A.Tryk, A.Fujishima, and O.Sato, J.Am.Chem.Soc., 123(2001), 175)。
Figure 2006289165
上記式からも明らかな様に任意の反射波長を得るためには、フォトニック結晶の周期は結晶の厚さ方向に規則性を有している事が最大の条件である。したがって、上述した実施形態の方法、特に微粒子濃度10wt%以上の微粒子分散溶液を用いた方法で得られた微粒子膜5は、最密六法構造に微粒子が自己組織化的に集合して構成されたものとなるため、非常に反射特性に優れたフォトニック結晶が得られることがわかる。
また、通常の移流集積法において作製される膜厚と作製条件の関係式は次の通りである(A.S.Dimitrov and K.Nagayama, Langmuir, 12(1996), 1303)。
Figure 2006289165
上記式では、微粒子層の成長速度は微粒子の層数、つまり膜厚に反比例している事を表している。反射強度が強くなるフォトニック結晶の周期数は11周期(国際公開番号WO03/050612)であり、微粒子層22層と考察されている。移流集積現象を利用して上記の代表的な作製条件によりフォトニック結晶を大面積に作製する場合、数cm作製するのに100時間以上必要となる。また、引き上げ速度を速くして薄いフォトニック結晶を繰り返し積層させても、同じ大きさの作製には同程度の時間を有することが容易に推察される。どちらにしても反射特性に優れたフォトニック結晶の作製には膨大な作製時間を要する。
また、この移流集積法では微粒子特有の縞構造が生成されることも知られており、ぬれ膜中の微粒子体積分率を制御することにより縞構造をなくす作製条件も提案されている(永山ら、特許公報2834416)。しかしこの方法も理論的にぬれ膜の微粒子体積分率を制御するために引き上げ速度を帰還制御しており、大面積に均一塗布する簡便なプロセスとは言い難い。
しかしながら、上述した実施形態のように、微粒子分散溶液からの引き上げ測度vを0.1mm/sec以上とすることにより、より少ない引き上げ回数で必要膜厚の微粒子膜が得られる。したがって、より効率的に厚膜の微粒子膜を得ることが可能になる。
以下、本発明を適用した実施例1〜6、および本発明を導き出すに際して行った実験的な例を比較例1〜3として説明する。
<比較例1>
サンドブラスト加工したPET基板と、スライドガラス基板とを用意した。
また、微粒子として粒径216nmφのシリカ微粒子(シーホスターKE−W22日本触媒製)を用い、微粒子濃度20.5wt%でイオン交換水に分散させた微粒子分散溶液50mlを調整した。微粒子としてKE−W22を使用した理由は、粒径が216nmφであり、今回の実施例及び比較例で使用した微粒子の中では自然沈降するまでに非常に長い時間を費やすからである。
そして、調整した微粒子分散溶液50mlをビーカーに入れ、この微粒子分散溶液中に上記基板を立てて置いた。
この状態で5日間放置し、ビーカー内の微粒子分散溶液の残量が10ml程度になるまで分散媒(イオン交換水)を蒸発させ、自然乾燥による液面低下によって上記PET基板およびスライドガラス基板を微粒子分散溶液から引き上げた。そして、液面低下によって引き上げられた部分に、微粒子を配列してなる微粒子膜を形成した。微粒子膜が形成された各基板を観察したところ、表面でブラック反射している様子が見られ、微粒子膜として半結晶膜ができていることが確認された。
また上記5日間の放置により、微粒子分散溶液が濃縮して、最終的に微粒子濃度が約5倍程度(すなわち、ある一定以上高濃度になると微粒子が分散媒中で凝集を始めてしまう程度)の非常に高濃度溶液となった微粒子分散溶液に、別のスライドガラス基板を浸漬して引き上げ、その表面に微粒子分散液の液膜を形成した。その後、この液膜の分散媒を蒸発させて微粒子膜を成膜した。ここでは、微粒子濃度が非常に高い微粒子分散溶液を用いたため、膜厚の厚い微粒子膜が形成できた。これによって成膜された微粒子膜の反射特性を図4に示す。この図4に示すように、反射反値幅の広い微粒子膜が成膜されていることがわかる。
これに対して、微粒子濃度20wt%程度と薄い微粒子分散溶液を用いて同様の成膜を行い、微粒子膜を得た。この微粒子膜は、先の微粒子膜と比較して膜厚は薄かった。また、この微粒子膜の反射特性を図5に示す。この図5に示すように、先の微粒子濃度が濃い微粒子分散溶液用いて形成した微粒子膜における反射特性(図4)と比較して、反射半値幅の狭い微粒子膜が成膜されていることがわかる。
以上の結果、図4,図5を比較し、微粒子濃度が濃すぎると、微粒子同士の運動が制限されたり、凝集反応が進む事により自己組織化が阻害され、微粒子の配列状態が乱れて反射半値幅の広い微粒子膜が成膜されると考えられる。
また、微粒子膜成長速度が適切でない場合、作製する微粒子膜の膜厚が均一とならず、メニスカスの移動制御が微粒子膜の均一性に重要であることを確認できた。
<比較例2>
スライドガラス基板を用意し、移流集積法にて次のように微粒子膜を成膜した。
微粒子として、粒径のことなるシリカ微粒子を用いて、それぞれ微粒子濃度20wt%でイオン交換水に分散させた各微粒子分散溶液を調整した。用いたシリカ粒子の粒径は、210、213、220、230、250、255、280、289、290nmφ(日本触媒のシーホスターKE−Wシリーズ)である。
次に、それぞれ別のスライドガラス基板上に上記各微粒子分散溶液を塗布して、プラスチックケースの中に入れた。非常に高い湿度(分散媒が蒸発し、プラスチックケース内部に水滴が付着する飽和状態であり、ほぼ100%程度)の中でゆっくりと乾燥を進め、微粒子を移流集積させて微粒子膜を成膜した。
その後、各スライドガラス基板をプラスチックケースからか取り出し、得られた微粒子膜の反射特性を測定した。この結果を図6に示す。また、得られた微粒子膜の中心反射波長(Wavelrngth)、および反射半値幅(FWHM)を図7に示す。
図6および図7から、可視光波長全領域において、反射波長および反射強度反値幅が、微粒子膜を構成する微粒子の粒径に依存することが確認できた。
そしてこの結果から、微粒子の自己組織化によって成膜された微粒子膜を反射層として用いる場合には、微粒子膜を構成する微粒子粒径によって任意の反射波長を選択でき、かつ、反射強度反値幅も想定できることが確認できた。しかし移流集積法の難しいところであるが、膜厚を均一にすることが難しく、目視にて確認される縞状構造ができてしまった
<実施例1>
実施形態で説明した引き上げ法にて微粒子膜を成膜した。尚、液膜から分散媒を蒸発させて完全乾燥を行う引き上げ成膜を1回〜5回繰り返したそれぞれのサンプルを作製した。
(1)基板:プラズマ処理したスライドガラス基板
(2)微粒子分散溶液
微粒子 :粒径250nmφシリカ微粒子(シーホスターKE−W25:日本触媒製)
分散媒 :イオン交換水
微粒子濃度 :20wt%
(3)成膜条件
引き上げ速度:10nm/sec
乾燥条件 :大気中室温放置
引き上げ回数:1回〜5回
このようにして得られた引き上げ回数1〜5の各微粒子膜については、目視にて非常に均一な膜が作製できていることが確認された。
また、得られた各微粒子膜について、図8には反射特性を測定した結果を示し、図9には透過特性を測定した結果を示す。これらの結果から、同一粒径の微粒子を用いて構成された微粒子膜においては、反射波長および透過波長が微粒子の粒径に依存して同一であることが確認できた。
図10には、引き上げ回数(Dipping Time)1〜5で成膜した各微粒子膜について、その中央部と端部の反射率を示した。この結果から、引き上げ成膜の回数と反射率とは比例せず、2回の引き上げ成膜で充分な反射率が得られる周期構造が微粒子膜に形成されることが確認された。また、図11には、引き上げ回数(Dipping Time)1〜5で成膜した各微粒子膜における膜厚方向の積層粒子数(Particle Number)を示す。この結果から、引き上げ成膜の回数と膜厚とは比例することが確認された。
<実施例2>
実施形態で説明した引き上げ法にて微粒子膜を成膜した。ここでは3種類の粒径の微粒子を用いて各微粒子膜を成膜した。
(1)基板:バッファ層付きのサンドブラスト加工PET基板
(2)微粒子分散溶液
微粒子 :粒径309、250,213nmφシリカ微粒子(シーホスターKE−Wシリーズ:日本触媒製)
分散媒 :イオン交換水
微粒子濃度 :20.5wt%
(3)成膜条件
引き上げ速度:10nm/sec
乾燥条件 :温度25℃、湿度50%
引き上げ回数:2回(実施例1をふまえて)
このようにして得られた各微粒子膜については、目視にて非常に均一な膜が作製できていることが確認された。
また以上の成膜によって得られた各微粒子膜について、SEM観察像から膜厚を測定した結果、次のようであった。
粒径309nmφ…膜厚3.60μm
粒径250nmφ…膜厚3.46μm
粒径213nmφ…膜厚3.60μm
この結果から、成膜される微粒子膜の膜厚は、微粒子径によって影響を受けないことが確認された。
成膜される微粒子膜の膜厚は、微粒子の粒径以外の成膜条件が全く同じ条件であれば、塗布した溶液の量で定まる事が確認できた。引き上げ時点での移流集積法による自己組織化ではなく、基板に塗布された溶液が、乾燥時のメニスカス移動に伴い自己組織化したためである。つまり塗布した溶液量に占める微粒子の体積分率は同じであり、塗布した溶液量が同じであれば微粒子量も同じとなり同じ膜厚になると考えられるからである。
尚、以上の実施例2の結果を踏まえて、粒径の異なる微粒子分散溶液を用い、順々に積層成膜させることを試みた。この結果、予想通りに制御された膜厚の反射層を積層できることが確認された。
<比較例3>
精密に膜厚を制御でき、塗布液使用量も無駄を省く装置である、(株)ヒラノテクシードのCAP Coaterを用い、塗布実験を行った。この装置の原理を簡単に説明する。金属製の精密なノズルのスリットの間に毛細管現象で塗布液を注入する。ノズルの先端から染み出た溶液を基板と接液させた後、基板から液が離れない程度にノズルを基板から数百μm離して設置する。その後ノズルと基板との距離を一定に保ったまま、基板を一定速度で動かしながら溶液を塗布する、という仕組みである。
作製条件は、スリットギャップ:200μm、ノズルギャップ:200μm、塗布液のタンク位置:7mm、基板:ガラスとした。
図12より、塗布回数(Dipping Time)と、膜厚に対応する膜厚方向の積層粒子数(Particle Number)とは、微粒子分散溶液の微粒子濃度毎に比例関係を示すことがわかった。また図13より、塗布回数(Dipping Time)と、光学特性とは、微粒子膜の中央部と端部ともに比例しなかった。そして、目視観察でも高濃度溶液、多量溶液塗布によって得られた膜は巨視的な塗布ムラが大きいことが確認された。SEM観察では、少量/1time(5wt%以下 or 0.1m/min)塗布は、反射率も悪く、島状成長しており結晶性も悪い。多量/1time(20wt% or 3m/min)塗布は、六方最密構造に成長した。中間の中量/1time(10wt% and 0.5m/min)塗布では、体心立方構造に成長した。光学特性(反射率)も多量>中量>少量の順である。
次に、成膜される膜厚が等しくなるように、微粒子分散溶液における微粒子濃度および、液膜から分散媒を蒸発させて完全乾燥を行う引き上げ回数を設定したCAP Coaterによる塗布成膜を行った。成膜条件は、スリットギャップ:300μm、ノズルギャップ:200μm、塗布液のタンク位置:7mm、基板:ガラス。
作製したサンプルは、
2wt% 20回塗布
5wt% 8回塗布
10wt% 4回塗布
20wt% 2回塗布
いずれも膜厚は約1.0〜1.2μmで粒子層数を考慮するとほぼ等しい膜厚の微粒子膜が形成された。しかし、光学特性は高濃度溶液で塗布したものが高い反射率を得ている。図13の結果も併せて、膜厚と光学特性は相関がないと考えられる。つまり、CAP Coaterによる塗布では結晶性が高くムラが少ない微粒子膜の作製は困難であった。
また、図14には、得られた各微粒子膜について、反射特性と透過特性を測定した結果を示す。
<実施例3>
上記比較例3においてCAP Coaterを用いて成膜した微粒子膜と比較するべく、実施形態で説明した引き上げ法にて微粒子膜を成膜した。尚、微粒子分散溶液における微粒子濃度および、液膜から分散媒を蒸発させて完全乾燥を行う引き上げ成膜の回数をパラメータとしてそれぞれの微粒子膜を成膜した。
(1)基板:スライドガラス基板
(2)微粒子分散溶液
微粒子 :粒径290nmφシリカ微粒子(シーホスターKE−W30日本触媒製)
分散媒 :イオン交換水
微粒子濃度 :0.2wt%、2.0wt%、5.0wt%、10.0wt%、20.0wt%
(3)成膜条件
引き上げ速度:10nm/sec
乾燥条件 :温度25℃、湿度50%グローブボックス中
引き上げ回数:1〜5回、
以上によって得られた各微粒子膜について、膜厚として積層粒子数を測定した。図15には、測定された積層粒子数(Particle Number)の引き上げ回数(Dipping Time)依存性を示す。図15から、引き上げ法においては、成膜される微粒子膜の膜厚は引き上げ回数に比例することが確認された。また、図16には、引き上げ回数1回と5回で得られた微粒子膜について、積層粒子数(Particle Number)の、微粒子分散液における微粒子濃度(Density)依存性を示す。図16から、引き上げ法においては、成膜される微粒子膜の膜厚は、微粒子分散溶液における微粒子濃度に比例することが確認された。
また、図17には、微粒子濃度10wt%の微粒子分散溶液を用いて成膜された各微粒子膜にいて、反射率(Refrectance)の引き上げ回数(Dipping Time)依存性を示す。図17および先の図15とを併せると、膜厚が光学特性と比例関係にあるといえる。
また、微粒子濃度5wt%以下の微粒子分散溶液を用いて成膜された微粒子膜は、島状の成長が確認された。したがって、均等な膜を形成するには、微粒子濃度5wt%を越える微粒子分散溶液を用いる必要が有ることが確認された。そして、各微粒子膜をSEM観察した結果、微粒子濃度10wt%以上の微粒子分散溶液を用いて成膜された微粒子膜は、layer-by-layerで最密六方構造に集積しており、結晶状態の良好な微粒子膜が得られることが確認された。
ここで、引き上げ法による膜厚tと引き上げ速度vとの間には、次の式(1)が成り立つことが報告されている。
Figure 2006289165
また、粘度について詳しく関係を示している次式(2)も報告されている。
Figure 2006289165
これらの式(1)および式(2)では、logtとlogvによるプロットの勾配が1/2である事を示している。(C.C.Yang, J.Y.Josegowicz, and L.Alexandru, Thin Solid Films, 74(1980), 117)。また金属アルコキシドから得られるゾルについてlogtとlogvの勾配が2/3である事が分かっている。(H.Dislich and E.Hussmann, Thin Solid Films, 77(1981), 129)。更に5wt%のSiO2ゾル(2.835cP)によるSiO2膜ではtがv1/2に比例であることや(S.P.Mukherjee, Applied Science, No.92, Glass-Current Issues, ed.by A.F.Wright and J.Dupuy, Marthinus Nijhff Publishers, Dordrecht-Boston-Lancaster, 1985, p.232)、テトラエトキシシラン溶液によるコーティング膜では勾配が1/2に近い事が示されている。
以上から、引き上げ速度(塗布速度)が増加するに伴い、塗布溶液の膜厚も増加する関係であることが確認できている。
そこで、図18には、上記式(1)中の定数Kの、微粒子濃度(Weight Fraction)依存性を示す。この図18から、微粒子濃度5wt%以上で定数Kが安定し、10wt%以上ではさらに定数Kが安定することがわかる。このことから、微粒子濃度5wt%以下では定数Kの変動が大きく島状成長となる一方、微粒子濃度5wt%を越えると島状成長が抑えられ、さらに微粒子濃度10wt%以上では、layer-by-layerで最密六方構造に集積成長することを示している。
この結果を、上記比較例3と比較すると、ほぼ同じ結果が得られた。しかし本発明を適用した実施例3では、ムラはなく均一な微粒子膜が得られた。比較例3と実施例3とで異なる点は、本実施例3では引き上げ法を適用しているため、引き上げた基板の上部から一直線状にメニスカスが下部に向けて後退し、一方向から乾燥が進むように制御がなされている。
<実施例4>
上記比較例3で成膜した微粒子膜と比較するべく、実施形態で説明した引き上げ法にて微粒子膜を成膜した。尚、成膜される膜厚が等しくなるように、微粒子分散溶液における微粒子濃度および、液膜から分散媒を蒸発させて完全乾燥を行う引き上げ回数を、比較例3と同じ設定とした。
(1)基板:スライドガラス基板
(2)微粒子分散溶液
微粒子 :粒径290nmφシリカ微粒子(シーホスターKE−W30日本触媒製)
分散媒 :イオン交換水
微粒子濃度 :下記参照
(3)成膜条件
引き上げ速度:10nm/sec
乾燥条件 :温度25℃、湿度60%以上グローブボックス中
引き上げ回数:下記参照
各成膜における微粒子分散溶液の微粒子濃度と引き上げ成膜の回数は、比較例3と同じく、以下のように設定した。
2wt% 20回塗布
5wt% 8回塗布
10wt% 4回塗布
20wt% 2回塗布
このようにして得られた各微粒子膜は、膜厚方向の積層粒子数が4.37〜4.60個であった。
これは、比較例3のCAP Coater塗布によって成膜された各微粒子膜においては、膜厚が1.0〜1.2μmで、膜厚方向の積層粒子数が4.60〜5.52個だったことと比較すると、本実施例の引き上げ法による成膜の方が、膜厚が薄いにも関わらず微粒子の充填率が高くなることが確認された。
また、図19には、得られた各微粒子膜について、反射特性と透過特性を測定した結果を示す。この結果を、先の比較例3において成膜された各微粒子膜の反射特性と透過特性(図14)と比較すると、本実施例の引き上げ法による成膜の法が、反射率及び透過率ともに優れていることが確認された。尚、同一粒径の微粒子を用いて構成された微粒子膜においては、反射波長および透過波長は、成膜方法によらず、微粒子の粒径に依存して同一であることも確認できた。
さらに、本実施例4と、先の比較例3とで共通する現象として、2wt%−20回成膜、5wt%−8回成膜など、微粒子濃度が比較的低い微粒子分散溶液を用いて多数回の成膜を行って得た微粒子膜は、光学特性(反射・透過)が悪い。つまり、任意の光学特性を得るために必要な微粒子膜の成膜には、微粒子濃度が10wt%以上の微粒子分散溶液を用いた少ない引き上げ回数で成膜を行うことが好ましいことが確認された。
また、本実施例4で成膜された微粒子膜についてSEM観察を行ったところ、微粒子濃度5wt%以下の微粒子分散溶液を用いて成膜された微粒子膜は、島状の成長が確認された。したがって、均等な膜を形成するには、微粒子濃度5wt%を越える微粒子分散溶液を用いる必要が有ることが確認された。微粒子濃度10wt%以上の微粒子分散溶液を用いて成膜された微粒子膜は、layer-by-layerで最密六方構造に集積しており、結晶状態の良好な微粒子膜が得られることが確認された。これは、実施例3の結果と同じである。尚、比較例3のCAP Coater塗布でも同じ成長過程であった。
<実施例5>
実施形態で説明した引き上げ法にて微粒子膜を成膜した。引き上げ速度および引き上げ回数をパラメータにして各微粒子膜を成膜した。
(1)基板:バッファー層付きのサンドブラスト加工PET基板
(2)微粒子分散溶液
微粒子 :粒径309nmφシリカ微粒子(シーホスターKE−W32日本触媒製)
分散媒 :イオン交換水
微粒子濃度 :20.6wt%
(3)成膜条件
引き上げ速度:下記表1参照
乾燥条件 :温度25℃、湿度60%
引き上げ回数:下記表1参照
Figure 2006289165
尚、表1における○印箇所の条件で成膜した。
成膜された各微粒子膜の膜厚をSEM写真の断面像に基づいて測定した。図20には、測定された微粒子の膜厚(Thickness)を引き上げ速度(Dipping Speed)の依存性として示した。また図21には、引き上げ回数1回あたり膜厚の、引き上げ速度に対する依存性を示した。これらの結果から、膜厚は、引き上げ速度8mm/sまでの範囲では、膜厚は引き上げ速度に比例するが、引き上げ速度8mm/sを越えると、膜厚が飽和することが確認された。このような膜厚の飽和は、引き上げ回数によらず引き上げ速度8mm/sを境に生じることも確認された。そして、図21の結果から、引き上げ法の文献(H.Dislich and E.Hussmann, Thin Solid Films, 77(1981), 129)と同じく、飽和前まではlog(t)(t:膜厚)がlog(v)(v:引き上げ速度の2/3に比例していることが確認できた。
図22には、成膜された各微粒子膜の反射率(Reflectance)の、引き上げ速度(Dipping Speed)に対する依存性を示した。図22から、膜厚と同様に、反射率も引き上げ速度8mm/secを境に飽和することが確認された。また図23には、成膜された各微粒子膜の反射率(Reflectance)の、膜厚(Film Thickness)に対する依存性を示した。この図23から、同じ膜厚でも引き上げ回数が少ない条件で成膜された微粒子膜、すなわち一回に塗布される膜厚が厚い条件で成膜された微粒子膜の方が、反射率が高いことが確認できた。ただし、1回塗布ではどの引き上げ速度でも反射率はやはり低かった。
また、成膜された各微粒子膜について、600lx程度の明所での散乱強度の測定を行った。散乱強度が大きいと任意の波長を反射させる際に、それ以外の波長の光を散乱させてしまい、選択的な反射とはならない。そのためにスクリーンを実現するためには散乱強度が低い条件で反射率を高める作製条件を見いだす必要がある。
図24には、成膜された各微粒子膜の散乱強度(Scattering)の、引き上げ速度(Dipping Speed)に対する依存性を示した。図24から、上述した膜厚および反射率と同様に、散乱強度も引き上げ速度8mm/secを境に飽和することが確認された。図25には、成膜された各微粒子膜の散乱強度(Scattering)の、膜厚(Film Thickness)に対する依存性を示した。図25から、同じ膜厚でも引き上げ回数が少ない条件で成膜された微粒子膜、すなわち一回に塗布される膜厚が厚い条件で成膜された微粒子膜の方が、散乱強度が低いことが確認できた。さらに図26には、上記式(1)で示した定数Kの引き上げ速度(Dipping Speed)依存性を示した。この結果も、引き上げ速度8mm/secまでが効率のよい成膜であることを示している。
そして、以上の結果から、反射率が高く、散乱強度が低い微粒子膜の作製条件は、引き上げ法において引き上げ速度8mm/sec以下の条件で、なるべく少ない塗布回数で所望の膜厚の微粒子膜を作製することが好ましい事が確認された。
<実施例6>
実施形態で説明した引き上げ法にて微粒子膜を成膜した。乾燥条件をパラメータにして各微粒子膜を成膜した。
(1)基板:バッファー層付きのPET基板
(2)微粒子分散溶液
微粒子 :粒径309nmφシリカ微粒子(シーホスターKE−W32日本触媒製)
分散媒 :イオン交換水
微粒子濃度 :20wt%
(3)成膜条件
引き上げ速度:2mm/sec
乾燥条件A):温度25℃−湿度50%雰囲気中、
B):基板表面温度65℃−湿度35%雰囲気中
引き上げ回数:2回
ただし、乾燥条件B)は、液膜から10cmの位置に設置した遠赤外線セラミックヒータによる加熱とした。
上記成膜において、乾燥条件A)とした場合、乾燥速度は引き上げ速度よりも非常に遅い。一方、乾燥条件B)の上記成膜において、2mm/secという引き上げ速度では、ヒーターの正面において微粒子溶液が完全乾燥する。乾燥速度は引き上げ速度と同程度である。
図27には、上記乾燥条件A)で成膜された3枚の微粒子膜A1〜A3の光学特性の測定結果を示す。また図28には、上記乾燥条件B)で成膜された3枚の微粒子膜A1〜A3の光学特性の測定結果を示す。これらの結果を比較すると、乾燥速度が遅い乾燥条件A)で成膜された微粒子膜の方が、ヒータ加熱によって乾燥速度を速めた乾燥条件B)で成膜された微粒子膜と比較して、高反射率であった。これは乾燥測度の遅い方が、すなわちフォトニック結晶成長の速度が遅い方が、高いフォトニック結晶性であることを示している。
尚、上記と同様の成膜条件で、バッファー層無しのPETフィルム基板上に微粒子膜を成膜したところ、バッファ層有りの場合と同様の結果が得られた。
実施形態の微粒子膜の成膜手順を説明する断面工程図である。 実施形態の成膜手順における要部工程を説明する工程図である。 フォトニック結晶における微粒子の粒径と反射波長の関係を示す。 比較例1において高濃度の微粒子分散液を用いて成膜された微粒子膜の反射特性を示す図である。 比較例1において低濃度の微粒子分散液を用いて成膜された微粒子膜の反射特性を示す図である。 比較例2で成膜した微粒子膜の反射特性を示す図である。 比較例2で成膜した微粒子膜の中心反射波長および反射半値幅を示す図である。 実施例1で成膜した微粒子膜の反射特性を示す図である。 実施例1で成膜した微粒子膜の透過特性を示す図である。 実施例1で成膜した微粒子膜の中央部と端部の引き上げ回数と反射率との関係を示す図である。 実施例1で成膜した微粒子膜の引き上げ回数と積層粒子数との関係を示す図である。 比較例3のCAP Coaterを用いて成膜された微粒子膜の塗布回数と積層粒子数との関係を示す図である。 比較例3のCAP Coaterを用いて成膜された微粒子膜の塗布回数と光学特性との関係を示す図である。 比較例3のCAP Coaterを用いて成膜された微粒子膜の反射特性と透過特性を示す図である。 実施例3で成膜した微粒子膜においての積層粒子数の引き上げ回数依存性を示す図である。 実施例3で成膜した微粒子膜においての積層粒子数の微粒子濃度依存性を示す図である。 実施例3で成膜した微粒子膜においての反射率の引き上げ回数依存性を示す図である。 実施例3で成膜した微粒子膜から得た式(1)中における定数Kの微粒子濃度依存性を示す図である。 実施例4で成膜した微粒子膜においての反射特性と透過特性を示す図である。 実施例5で成膜した微粒子膜においての膜厚の引き上げ速度依存性を示す図である。 実施例5で成膜した微粒子膜においての引き上げ回数1回あたり膜厚の引き上げ速度依存性を示す図である。 実施例5で成膜した微粒子膜においての反射率の引き上げ速度依存性を示す図である。 実施例5で成膜した微粒子膜においての反射率の膜厚依存性を示す図である。 実施例5で成膜された微粒子膜の散乱強度の引き上げ速度依存性を示す図である。 実施例5で成膜された微粒子膜の散乱強度の膜厚依存性を示す図である。 実施例5で成膜された微粒子膜から得た式(1)中における定数Kの引き上げ速度依存性を示す図である。 実施例6の乾燥条件A)で成膜された3枚の微粒子膜A1〜A3の光学特性の測定結果を示す図である。 実施例6の乾燥条件B)で成膜された3枚の微粒子膜A1〜A3の光学特性の測定結果を示す図である。
符号の説明
1…基板、3…バッファ層、5…微粒子膜、5a…微粒子、13…微粒子分散液、15…液膜、v…引き上げ測度

Claims (6)

  1. 微粒子を自己組織化的に集合させた微粒子膜を基板上に成膜する方法であって、
    微粒子を分散媒に分散させた微粒子分散液中に前記基板を浸漬する第1工程と、
    前記微粒子分散溶液中から引き上げ速度10mm/sec以下の範囲で前記基板を気相中に引き上げることにより、当該基板の表面に微粒子分散溶液の液膜を形成する第2工程と、
    前記液膜から前記分散媒を蒸発させる第3工程とを行う
    ことを特徴とする微粒子膜の成膜方法。
  2. 請求項1記載の微粒子膜の成膜方法において、
    前記第1工程では、微粒子濃度が5wt%を越える範囲の微粒子分散溶液を用いる
    ことを特徴とする微粒子膜の成膜方法。
  3. 請求項1記載の微粒子膜の成膜方法において、
    前記第1工程では、微粒子濃度が10wt%以上の微粒子分散溶液を用いる
    ことを特徴とする微粒子膜の成膜方法。
  4. 請求項1記載の微粒子膜の成膜方法において、
    前記第1工程の前に、前記基板の表面に前記微粒子膜を構成する微粒子よりも粒径の小さい微粒子を自己組織化的に集合させてなる微粒子膜をバッファ層として形成する工程を行う
    ことを特徴とする微粒子膜の成膜方法。
  5. 請求項4記載の微粒子膜の成膜方法において、
    前記バッファ層を形成する工程では、サンドブラスト加工によって前記基板の表面に形成された凹凸形状を当該バッファ層で埋め込む
    ことを特徴とする微粒子膜の成膜方法。
  6. 請求項5記載の微粒子膜の成膜方法において、
    前記バッファ層を形成する工程では、前記第1工程〜前記第3工程を行う
    ことを特徴とする微粒子膜の成膜方法。
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