JP2006138983A - 微粒子構造体、微粒子構造体の形成方法及びスクリーン - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、微粒子を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層への接着剤の侵入を防ぎ、微粒子層の光学特性の劣化を防止することができる微粒子構造体の提供を目的とする。また、この微粒子構造体の形成方法、及び、微粒子層の光学特性の劣化を防止し、耐用期間の長いスクリーンの提供を目的とする。
【解決手段】
本発明は、微粒子層への接着剤の侵入を防止するバリア層を備えることで、微粒子層への接着剤の侵入が防げるとともに、接着剤による光学特性の劣化を防止することができる。また、微粒子層への接着剤の侵入が防止されることで耐用期間を長くすることができる。
【選択図】
図5
本発明は、微粒子を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層への接着剤の侵入を防ぎ、微粒子層の光学特性の劣化を防止することができる微粒子構造体の提供を目的とする。また、この微粒子構造体の形成方法、及び、微粒子層の光学特性の劣化を防止し、耐用期間の長いスクリーンの提供を目的とする。
【解決手段】
本発明は、微粒子層への接着剤の侵入を防止するバリア層を備えることで、微粒子層への接着剤の侵入が防げるとともに、接着剤による光学特性の劣化を防止することができる。また、微粒子層への接着剤の侵入が防止されることで耐用期間を長くすることができる。
【選択図】
図5
Description
本発明は、微粒子構造体及びスクリーンに関するものである。また、その微粒子構造体の形成方法に関するものである。
微粒子を規則的に配列させ、微細形状を有する微粒子構造体は、フォトニック結晶、半導体材料、ディスプレイ用光学散乱体、磁気記録材料、バイオチップ、細胞培養基材等、多様な用途への応用が検討されている。従来から知られているリソグラフィーやレーザーによる微細加工方法では加工に関する材料、時間、工程に制限がある。また、ある種の物理的パターン構造を利用した微細形状の作製法も知られているが、構造体の形状の均一性、精密度、任意性等の課題がある。さらには、これらの物理的パターン構造を利用した技術を用いた場合、やはり上記と同様に制限がある。一方、自己組織化による微細加工を用いた微粒子構造体の形成方法では、溶媒の蒸発等を利用して従来方法よりも簡易に構造を制御できるようになってきた。現在では、ナノメートルから数百マイクロメートル程度の微粒子を用いて、任意に規則的な配列を実現することができ、上記応用への可能性が広がってきた。
特にフォトニック結晶は、光の波長程度の周期で屈折率が変化するように作製された人工結晶であり、その光学的特性から、今後、光集積回路、光スイッチ、低閾値レーザ、情報記録媒体等の次世代光デバイスとして有望視されている。 上記のような応用のために、フォトニック結晶層に対して、粘着剤又は接着剤(以下まとめて接着剤と表記する)の使用は有望である。
例えば、微粒子を自己組織化により規則的に配列させたフォトニック結晶を、作成時に用いた基板から他の基板に転写する場合、別の基板に接着剤を用いることでフォトニック結晶の転写を可能にしている。これは、フォトニック結晶の用途に適した基板が必ずしもフォトニック結晶の形成に適した基板とは限らないためである。別の基板への転写を行うことで、フォトニック結晶の形成に適した基板でフォトニック結晶を形成し、形成されたフォトニック結晶をその用途に適した基板に移し変えることができる。
また、フォトニック結晶を使用したスクリーンやスクリーンを用いた画像表示システムが提案されている。このとき、視野角特性を広げるための光拡散層やコントラスト比の向上のための偏光フィルタ層をフォトニック結晶層に密着させている。このように、フォトニック結晶を光デバイスとして実用化するために接着剤が必要となると考えられる。
しかしながら、接着剤は図1(a)のようにフォトニック結晶層と接着するが、図1(b)のように微粒子の空隙に接着剤が侵入してしまう可能性がある。これにより、フォトニック結晶の特性が劣化してしまうという問題点を有している。図2は、黒い基板上にフォトニック結晶を作製し、サンプルの表面に接着剤を張り付け、所要の時間を経過させた様子を示す図である。図2に示されるように、接着剤を貼り付けた部分が黒くなっている。これは、フォトニック結晶層の空隙に接着剤が侵入し、フォトニック結晶が完全に透明になり、基板の黒色が見えてしまったためである。
そこで、フォトニック結晶と光拡散層や偏光フィルタとの間に、紫外光又は赤外光を反射する層を形成し、接着剤をフォトニック結晶の反射層に直接接着させないで形成されたスクリーンがある(例えば、特許文献1参照)。
また、単層の微粒子層を透明樹脂層で挟んだ構造があり、透明樹脂層と微粒子層との屈折率がことなる光学フィルムが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献1では、紫外光又は赤外光を反射する反射層を設けることで、フォトニック結晶に染み込む接着剤の量を少なくすることができるが、フォトニック結晶への接着剤の侵入を完全に防ぐことはできない。
図3は、反射層を設けずに可視光を反射するフォトニック結晶層に接着剤を直接貼り付けたスクリーンのフォトニック結晶層の反射率の経時変化である。図3に示されるように、数日で反射特性が劣化してしまうことがわかる。図4は、可視光を反射するフォトニック結晶層の層上に紫外光又は赤外光を反射する反射層を設け、その反射層に接着剤を貼り付けたスクリーンのフォトニック結晶層の反射率の経時変化である。図4に示されるように、直接接着剤を貼り付けたスクリーンに比べ劣化の速度は遅いものの、数十日後には、反射率がかなり低下していることがわかる。
また、特許文献2では、2次元的に配列した単層の微粒子層であるため、透明樹脂層の樹脂の侵入を防止することはできず、透明樹脂層の樹脂が微粒子層にまで侵入してしまう。
そこで、本発明は従来の実状に鑑み、自己組織化により微粒子を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層への接着剤の侵入を防止するために、接着剤の侵入を防止するバリア層を備え、微粒子層の光学特性の劣化を防止することができる微粒子構造体の提供を目的とする。また、この微粒子構造体の形成方法、及び、微粒子層の光学特性の劣化を防止し、耐用期間を長くしたスクリーンの提供を目的とする。
本発明の微粒子構造体は、略平板状の基板と、上記基板上に自己組織化により微粒子を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層と、上記微粒子層の層上に接着剤の侵入を防止するバリア層とを有することを特徴とする。本発明の微粒子構造体によれば、微粒子層と接着層との間に接着剤の微粒子層への侵入を防止するバリア層を有することで、微粒子層の接着剤の侵入によって発生する光学特性の劣化を防ぐことができる。
本発明の微粒子構造体の形成方法は、略平板状の基板に自己組織化により微粒子を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層を形成する工程と、上記微粒子層の層上に接着剤の侵入を防止するバリア層を形成する工程とを有することを特徴とする。本発明の微粒子構造体の形成方法によれば、微粒子層に進入しないバリア層を形成することで形成される微粒子層のへの接着剤の侵入を防ぐことができる。これにより、光学特性の劣化を防止する微粒子構造体を形成することができる。
本発明のスクリーンは、略平板状の基板と、上記基板上に自己組織化により微粒子を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層と、上記微粒子層の層上に接着剤の侵入を防止するバリア層とを有することを特徴とする。本発明のスクリーンによれば、微粒子層と接着層との間に接着剤の微粒子層への侵入を防止するバリア層を有することで、微粒子層への接着剤の侵入が防止され、スクリーンの耐用期間を長くすることができる。
本発明の微粒子構造体は、微粒子層への接着剤の侵入を防ぐバリア層を有することで、微粒子層の光学特性の劣化を防止することができる。そして、微粒子層への接着剤の侵入が防止されることで、微粒子構造体の耐用期間を長くすることができる。
本発明の微粒子構造体の形成方法は、微粒子層への接着剤の侵入を防ぐバリア層を形成する。これにより、微粒子層への接着剤の侵入を防止することができる微粒子構造体が形成される。また、微粒子層への接着剤の侵入を防止することによって、微粒子層の光学特性の劣化を防止した微粒子構造体を形成することができる。
本発明のスクリーンは、微粒子層と接着層との間に接着剤の微粒子層への侵入を防止するバリア層を有することで、微粒子層への接着剤の侵入が防止され、スクリーンの耐用期間を長くすることができる。
以下、本発明の微粒子構造体、微粒子構造体の形成方法及びスクリーンについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
図5は、本発明の微粒子構造体の一例を示す図である。本発明の微粒子構造体1は、略平板状の基板10と、基板10に微粒子11を分散媒に分散させた微粒子溶液を塗布し、基板10上に塗布された微粒子溶液を乾燥させることで、自己組織化により微粒子11を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層13と、微粒子層13の層上に接着剤12の侵入を防ぐバリア層14とを有している。接着剤12は、バリア層14の表面に接着している。
基板10は、微粒子11を自己組織化により3次元的に規則正しく配列させた微粒子層13をその基板10上に備えている。基板10の形状は、特に限定されるものではないが、微粒子構造体1の用途により適宜変更することができる。例えば、微粒子構造体1をスクリーンとして使用する場合、所定の大きさを有するシート状の部材を使用してもよい。
基板10の材質としては、微粒子11を分散させる分散媒に膨潤しないものであれば特に限定するものではなく、適宜変更することができる。例えば、ガラス等の無機酸化物やポリエチレンテレフタレート(PET)等の有機材料でもよい。また、基板10の表面は親水性であっても親油性であってもよく、使用する微粒子11及び分散媒の性質等により適宜変更することができる。また、微粒子11の積層を助けるために基板10をサンドブラスト等により凹凸を設けてもよい。
微粒子11は、所要の粒径を有している。この微粒子11を分散媒に分散させた微粒子溶液を基板10に塗布する。塗布後、乾燥させることで、微粒子溶液の溶媒が徐々に蒸発し、微粒子11が自己組織化により3次元的に規則正しく配列し、微粒子層13を形成する。微粒子11の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば、シリカやポリスチレンやアルミナ等が挙げられる。
微粒子11は、分散媒に分散させた微粒子溶液として基板10に塗布される。その分散媒としては、大気中に蒸発できるものであれば特に限定されるものではなく、使用する微粒子11に応じて適宜変更することができる。例えば、水やアルコール等が挙げられ、これらの混合溶液でもよい。水やアルコールは比較的容易に蒸発させることができる。
微粒子溶液は、分散媒に微粒子11を分散させた溶液である。この溶液を基板10に塗布し、基板10に塗布された微粒子溶液の分散媒を蒸発させることで、微粒子11が基板10上で自己組織化により3次元的に規則正しく配列し、微粒子層13が形成される。
微粒子溶液の基板10への塗布の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、微粒子溶液中に基板10を浸漬させ、微粒子溶液中の基板10を引き上げ、基板10上に微粒子溶液を塗布してもよい。また、カーテンコーティング、スクリーンコーティング、ナイフコーティング等の既存のコーティング法を利用して基板10に微粒子溶液を塗布することもできる。
微粒子層13は、基板10上に微粒子溶液を塗布し、基板10上の微粒子溶液を乾燥させることで、微粒子11が自己組織化により3次元に規則正しく配列することで形成される。微粒子溶液の乾燥時は、微粒子溶液中の分散媒が徐々に蒸発し、微粒子11が基板10に堆積するように集合することで、最も微粒子11が密に詰まった最密充填構造をとる。このような形状をとることで、この微粒子層13を所定の波長の光を反射することができるフォトニック結晶とすることもできる。この微粒子層13は、微粒子層13中の微粒子11を固定化するためにポリビニルアルコール(PVA)を塗布することで固定化されていてもよい。
接着剤12は、形成される微粒子構造体1のバリア層14を介して厚さ方向上方に設けられる。この接着剤は、微粒子構造体1に光拡散層や偏光フィルタ層等の層状シート状部材を貼り付けるためや、微粒子構造体1の微粒子層13を別の基板に転写する等のように、別の板状部材を貼り付けるために設けられる。このように、接着剤12により別の機能を有する部材を貼り付けることができる。
この接着剤12は、バリア層14から剥がすことができないものでもよいが、一時的にバリア層14と接着し、バリア層14から剥がすことができるものでもよい。例えば、接着剤12としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等をはじめとする高分子が挙げられる。また、この接着剤12としては、紫外線、赤外線といった光や熱によって硬化又は可塑化するものを使用することができる。接着剤12は、微粒子構造体1を形成する微粒子層13を別の基板に転写するための板材や、光拡散層や偏光フィルタ等の層状シート状部材などを貼り付けることができ、微粒子構造体1に新たな機能を付与することができる。
接着剤12の微粒子層13への侵入は、バリア層14によって防ぐことができる。接着剤12の微粒子層13への侵入を防ぐためには、粘度を高くする或いは完全に固体化することで挙げられる。このような接着剤12は、分子量が大きく、架橋剤量が多く、熟成期間が長いほどよい。架橋剤とは、接着剤に添加して接着剤に網目構造を形成するためのもので、これにより接着剤を硬化することができる。熟成期間とは、この架橋剤を添加してからの時間を示す。その中で、接着剤の分子量を大きくすると、バリア層14の空隙に入り込み難くなり、微粒子層13への侵入を防止することができる。この接着剤12の分子量としては、バリア層14の空隙のサイズにもよるが、約100万以上の分子量を有するものであれば、接着剤12の微粒子層13への侵入を防止することができる。また、バリア層14と親和性の低い材質からなる接着剤12を使用しても同様の効果を得ることができる。例えば、バリア層14が親水性の場合、疎水性の接着剤12を使用することで、接着剤12の微粒子層13への侵入を防止することができる。
バリア層14は、微粒子層13の厚さ方向上方に設置され、その厚さ方向上方に接着剤12を有しており。このバリア層14は、微粒子層13と接着剤12との間に設置されることで侵入を防ぐことができる。バリア層14は、バリア層14の空隙を小さくする、バリア層14の厚さを厚くする、バリア層14のぬれ性等の化学的特性を接着剤の化学的特性と異なるものとすることで接着剤12の微粒子層13への侵入を防ぐことができる。このとき、微粒子層13の特性に影響を及ぼさないことが必要であり、バリア層14を形成する物質の大きさが微粒子層13の空隙よりも大きいことが必要である。
また、接着剤12の微粒子層13への侵入は、バリア層14を厚くすることでも防止することができる。バリア層14を厚くすることで、接着剤12がバリア層14に染み込んでも、微粒子層13に届くまでに完全に固体となり、微粒子層13への侵入を防ぐことができる。そのバリア層14の厚さとしては、約150nm以上であることが好ましい。バリア層14がこれより薄くなると、微粒子層13への侵入を防ぐことが難しくなる。
このバリア層14は、微粒子層13を形成する微粒子11とは異なる粒径の第2の微粒子を使用し、微粒子層13と同様に規則的に緻密に積層させた層であってもよい。第2の微粒子を使用してバリア層14を形成する場合、上記微粒子層13の形成方法と同様の方法で行うことができる。例えば、第2の微粒子を分散媒に分散させた第2の微粒子溶液に微粒層13を形成した基板10を浸漬させ、浸漬後、基板10を第2の微粒子溶液から引き上げることで、第2の微粒子溶液を基板10に塗布することができる。基板10に塗布された第2の微粒子溶液を乾燥させることで、第2の微粒子を微粒子層13の層状に規則的に緻密に積層させることができる。この塗布方法は、このような引き上げ法だけに限らず、スプレー塗布やカーテンコーティング、スクリーンコーティング、ナイフコーティング等の既存のコーティング法を利用してもよい。この塗布は、複数回行ってもよく、これによりバリア層14を厚くすることができる。
第2の微粒子は、緻密に積層されることでバリア層14を形成する。このバリア層14には、空隙が存在し、この隙間から接着剤12が入り込む。接着剤12を微粒子層13に侵入することを防ぐには、できる限りこの空隙が小さい方が好ましい。この空隙の大きさとしては、接着剤12の大きさにもよるが、約15nm以下が好ましい。これより大きくなると、空隙が大きすぎるため、接着剤12が入り込み易くなり、微粒子層13への侵入を防ぐことが難しくなる。例えば、第2の微粒子の粒径を90nmとし、この第2の微粒子を緻密に積層させると、形成される微粒子層の空隙は約15nm程度となる。これにより、接着剤12がバリア層14に染み込み難くなる。
また、このバリア層14は、層状の物質が重なって形成されるものでもよい。例えば、光学的に透明な層状のケイ酸塩を使用して形成された層であってもよい。この層状のケイ酸塩をバリア層14として使用した場合、バリア層14の空隙は数ナノメートルとなり、接着剤12がバリア層14に染み込み難くなり、接着剤12の微粒子層13への侵入を防止することができる。
この層状の物質を使用する場合、バリア層14は、例えば、層状の物質を分散媒に分散させ、この分散溶液を噴霧する等の方法で微粒子層13の層状に塗布する方法が挙げられる。また、その他の塗布方法で塗布することもできる。
さらに、このバリア層14は、接着剤12のぬれ性と異なる材質からなるものを使用することで、接着剤12を染み込み難くすることができる。(例えば、接着剤12が疎水性である場合、バリア層14を親水性とすることで、バリア層14に接着剤12がしみこみにくくなり、接着剤12の微粒子層13への侵入を防ぐことができる。
また、バリア層14として、シリカ、アルミナ等の無機材料や、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ゼラチンなどの高分子材料等を用いることで、空隙のない連続膜を使用して形成された層であってもよい。特に上記のシリカやアルミナは酸化され難く、耐候性に優れた安定なバリア層14を形成することができる。この場合のバリア層14の形成方法としては、無機材料の場合、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、熱やプラズマやレーザーなどを利用した化学蒸着法などの蒸着法により、微粒子層13の層状にバリア層14を形成してもよい。また、高分子材料を使用する場合、高分子材料を溶液状にし、塗布する方法等が挙げられる。
本発明の微粒子構造体1は、上述のようなバリア層14を備えることで、接着剤12がバリア層14に染み込み難くなる。したがって、微粒子層13への接着剤12の侵入を防ぐことができる。また、使用する接着剤12をバリア層14に染み込み難いものとすることで、微粒子層13に接着剤12が侵入することを防ぐこともでき、また、これらを組み合わせることで、さらに微粒子層13への侵入を防止することができる。バリア層14により接着剤12の微粒子層13への侵入を防ぐことができることで微粒子層13の光学特性の劣化を防ぐことができる。例えば、微粒子層13がフォトニック結晶である場合、反射率や屈折率などの光学特性の劣化を防ぐことができる。すなわち、微粒子構造体の耐用期間を長くすることができる。
このように、接着剤12の微粒子層13への侵入を防ぐことで、微粒子層13の光学特性を維持したまま、転写のための基板を接着させることができる。また、微粒子層13の光学特性を維持したまま、光拡散層や偏光フィルタを貼り付けることもできる。
図5のような微粒子構造体1は、以下のように形成することができる。本発明の微粒子構造体1の形成方法の一例としては、略平板状の基板10に微粒子11を分散媒に分散させた微粒子溶液を塗布し、基板10上の微粒子溶液を乾燥させることで自己組織化により微粒子11を3次元的に規則正しく配列させて微粒子層13を形成し、この微粒子層13の層状に、接着剤12の侵入を防止するバリア層14を形成する工程とを有している。
より詳細に説明すると、まず、微粒子11を分散媒に分散させた微粒子溶液に基板10を浸漬し、十分に浸漬させた後、微粒子溶液から基板10を引き上げることで、基板10に微粒子溶液を塗布することができる。基板10への微粒子溶液の塗布方法は、このような引き上げ法に限られるものではなく、カーテンコーティング、スクリーンコーティング、ナイフコーティング等の既存のコーティング法を利用してもよい。
次に、基板10上に塗布された微粒子溶液を乾燥させる。この乾燥により、微粒子溶液の分散媒が徐々に蒸発し、基板10上に微粒子11が堆積するように集合する。このとき、微粒子11は自己組織化により、3次元に規則正しく配列する。例えば、積層することでフォトニック結晶となる微粒子を用いるとこれにより、結晶性の高いフォトニック結晶を形成することができる。これにより、微粒子11が自己組織化により3次元に規則正しく配列した微粒子層13を基板10上に形成することができる。
そして、形成された微粒子層13の厚さ方向上方に、バリア層14を形成する。バリア層14の形成方法は、上述の説明のように、バリア層14によってことなる。例えば、微粒子11とは異なる粒径の第2の微粒子を積層させる場合は、第2の微粒子を分散媒に分散した第2の微粒子溶液を引き上げ法などの既存の方法により微粒子層13の層状に塗布し、微粒子層13の層状に塗布された第2の微粒子溶液を乾燥させることで、第2の微粒子緻密に積層させたバリア層14を形成することができる。また、層状の物質を重ねてバリア層14とする場合、層状の物質を分散媒に分散させた分散溶液を塗布し、乾燥させることでバリア層14とすることができる。さらに、無機材料や高分子材料により空隙のない連続膜をバリア層14とすることもできる。この場合、無機材料を使用するときは、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、熱やプラズマやレーザーなどを利用した化学蒸着法などの蒸着法により微粒子層13の層上にバリア層14を形成することができる。また、高分子材料を使用するときは、高分子材料を溶液状にし、塗布する方法等により微粒子層13の層上にバリア層14を形成することができる。
このバリア層14の層上にバリア層14に接着する接着剤12が配される。接着剤12は、微粒子構造体1を形成する微粒子層13を別の基板に転写するための板材や、光拡散層や偏光フィルタ等の層状シート状部材などを貼り付けることができ、微粒子構造体1に新たな機能を付与することができる。この接着剤12は、バリア層14により、微粒子層13への侵入が防止されているため、微粒子層13の光学特性を劣化させることがない。
このように、本発明の微粒子構造体1の形成方法により形成される微粒子構造体1は、バリア層14を形成することで、接着剤12の微粒子層13への侵入を防止することができる。バリア層14により接着剤12の微粒子層13への侵入を防ぐことによって、微粒子層13の光学特性の劣化を防ぐことができる。例えば、微粒子層13がフォトニック結晶である場合、反射率や屈折率などの光学特性の劣化を防ぐことができる。すなわち、微粒子構造体の耐用期間を長くすることができる。
このように、接着剤12の微粒子層13への侵入を防ぐことで、微粒子層13の光学特性を維持したまま、転写のための基板を接着させることができる。また、微粒子層13の光学特性を維持したまま、光拡散層や偏光フィルタを貼り付けることもできる。
上述で説明した微粒子構造体は、光反射型スクリーンとして利用することができる。図6は、本発明のスクリーンの一例を示す図である。本発明のスクリーン5は、略平板状の基板50と上記基板50上に自己組織化により微粒子511、512、513を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層531、532、533とを有し、微粒子層533の層上に、微粒子層531、532、533への接着剤535の侵入を防止するバリア層534を有している。接着剤535は、バリア層534に接着している。
微粒子511、512、513は、それぞれ異なる粒径を有している。また、微粒子11は、3次元的に規則正しく配列させることで微粒子層531を形成する。この微粒子層531は、赤色の光541を反射することができる。また、微粒子511と粒径の異なる微粒子512は、3次元的に規則正しく配列させることで微粒子層532を形成する。この微粒子層532は、緑色の光542を反射することができる。さらに、微粒子511及び微粒子512と粒径の異なる微粒子513は、3次元的に規則正しく配列させることで、微粒子層533を形成する。微粒子層533は、青色の光543を反射することができる。そして、この基板50は、外部光544を吸収することができる可視光吸収層を兼ねている。
微粒子層531は、微粒子511を分散媒に分散した微粒子溶液を基板50に塗布し、基板50に塗布された微粒子溶液を乾燥させることで形成される。そして、微粒子層531は、赤色の光541を選択的に反射することができる。また、微粒子層532は、微粒子512を分散媒に分散した微粒子溶液を微粒子層531が形成された基板50に塗布し、基板50に塗布された微粒子溶液を乾燥させることで形成される。そして、微粒子層532は、緑色の光542を選択的に反射することができる。さらに、微粒子層533は、微粒子513を分散媒に分散した微粒子溶液を微粒子層532が形成された基板50に塗布し、基板50に塗布された微粒子溶液を乾燥させることで形成される。そして、微粒子層533は、青色の光543を選択的に反射することができる。
この微粒子層533の層上に上述で説明したバリア層534を形成する。バリア層534の形成方法は、上述の説明のように、バリア層14によってことなる。例えば、微粒子511、512、513とは異なる粒径の微粒子を積層させる場合は、この微粒子を分散媒に分散した微粒子溶液を引き上げ法などの既存の方法により微粒子層533の層上に塗布し、微粒子層533の層上に塗布された微粒子溶液を乾燥させることで、微粒子を緻密に積層させたバリア層534を形成することができる。また、層状の物質を重ねてバリア層534とする場合、層状の物質を分散媒に分散させた分散溶液を塗布し、乾燥させることでバリア層534とすることができる。さらに、無機材料や高分子材料により空隙のない連続膜をバリア層534とすることもできる。この場合、無機材料を使用するときは、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、熱やプラズマやレーザーなどを利用した化学蒸着法などの蒸着法により微粒子層533の層上にバリア層534を形成することができる。また、高分子材料を使用するときは、高分子材料を溶液状にし、塗布する方法等により微粒子層533の層上にバリア層534を形成することができる。このとき、このバリア層534は、可視光を透過することができる材質からなるため、表示される画質に影響を与えないものである。
このバリア層534の層上にバリア層534と接着する接着剤535が配される。接着剤535は、スクリーン5を形成する微粒子層531、532、533を別の基板に転写するための板材や、光拡散層や偏光フィルタ等の層状シート状部材などを貼り付けることができ、スクリーン5に新たな機能を付与することができる。この接着剤535は、バリア層534により、微粒子層531、532、533への侵入が防止されているため、微粒子層531、532、533の光学特性を劣化させることがない。
これにより、本発明のスクリーン5は、微粒子層533の層上に接着剤535の侵入を防ぐバリア層534を有することで、接着剤535の微粒子層531、532、533への侵入を防止することができる。バリア層534で接着剤535の微粒子層531、532、533への侵入を防ぐことによって、微粒子層531、532、533の光学特性の劣化を防ぐことができる。すなわち、本発明のスクリーン5は、赤色の光541、緑色の光542、青色の光543のみを選択的に反射することができる。したがって、外部光による画質の低下を防ぎ、高コントラストで鮮明な画像を表示することができる。また、微粒子構造体の耐用期間を長くすることができる。
このように、接着剤535の微粒子層533への侵入を防ぐことで、微粒子層531、532、533の光学特性を維持したまま、転写のための基板を接着させることができる。また、微粒子層531、532、533の光学特性を維持したまま、光拡散層や偏光フィルタを貼り付けることもできる。
以下、本発明に関する実施例を示す。なお、本発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
[実施例1]
まず、粒径220nmのシリカ微粒子(日本触媒製 KE−22)を濃度が20wt%となるように微粒子溶液を調製した。この微粒子溶液を塗布する基板としては、サンドブラスト加工によりアンチグレア効果をもたせたポリエチレンテレフタレート(PET)基板を使用した。このPET基板を微粒子溶液に浸漬し、十分に浸漬させた後、1cm/secの速さで引き上げ、微粒子溶液をPET基板に塗布した。PET基板に塗布された微粒子溶液を乾燥させて、PET基板上に3次元的に規則正しく配列させた微粒子層(フォトニック結晶の層)を形成させた。このフォトニック結晶の反射スペクトルを測定したところ、460nm前後にピークが生じた。
まず、粒径220nmのシリカ微粒子(日本触媒製 KE−22)を濃度が20wt%となるように微粒子溶液を調製した。この微粒子溶液を塗布する基板としては、サンドブラスト加工によりアンチグレア効果をもたせたポリエチレンテレフタレート(PET)基板を使用した。このPET基板を微粒子溶液に浸漬し、十分に浸漬させた後、1cm/secの速さで引き上げ、微粒子溶液をPET基板に塗布した。PET基板に塗布された微粒子溶液を乾燥させて、PET基板上に3次元的に規則正しく配列させた微粒子層(フォトニック結晶の層)を形成させた。このフォトニック結晶の反射スペクトルを測定したところ、460nm前後にピークが生じた。
フォトニック結晶形成後、接着テープとフォトニック結晶の接着性を高めるために、フォトニック結晶にPVA(日本合成化学製 NM−11)溶液を塗布した。PVA溶液を塗布しないフォトニック結晶は均一に接着できずに容易に剥がれてしまうためである。このPVAを濃度が0.33wt%の水溶液になるように調製し、スプレーによる噴霧法で10秒程度塗布した。このときスプレーは1mm以下の液滴を形成した。PVAがフォトニック結晶の空隙に染み込み、屈折率が変化し、光学特性が劣化することが懸念されるが、図7に示すように、PVA溶液塗布の前後では反射率はほとんど変化しなかった。
PVA溶液塗布後、サンプルに接着テープを貼り付けた。このとき、反射スペクトルが保護フィルムによって変化するため、図8のように、透明なポリカーボネートシート(旭硝子のレキサン)に接着テープを貼り付けてPVA溶液を塗布したフォトニック結晶に貼り付けた。
このように、形成されたフォトニック結晶の反射率を測定するが、その反射率は、塗布条件や測定位置により異なる。したがって、反射率の変化が十分に測定できるように20%程度の反射率をもつサンプル中の点を選定し、その同一点での反射率を測定した。また、ピークの反射率から600nm近傍のバックグラウンドの反射率を差し引いたものを「反射率」として統一した。また、サンプルによって接着直後の反射率が異なるので、接着後の反射率で規格化して、反射率の変化を表した。
例えば、図9の場合では接着直後の反射率からバックグラウンドの反射率を引くと、反射率は20%になる。3日後は13.9%、6日後は9%になる。ここで、接着直後を「1」として規格化すると3日後は「0.70」6日後は「0.45」となる。以上の、縦軸に規格化した値を、横軸に時間をとったものをグラフにした。このグラフを「経時変化グラフ」とする。また、接着直後の反射率を「1」として、「0.5」になった時間を「半減期」と定義する。ちょうど0.5になった時間が分からない場合は前後の時間から線形近似により割り出した。
また、加速試験法は、サンプルに55℃の温度をかけて染み込み速度を加速させて迅速かつ効率的な評価を行う方法である。55℃の環境下では、室温に比べて半減期はおよそ18倍程度短くなった。例えば、日東電工製CS−9611では、室温で半減期が140時間程度であるのに対し、55℃では7.1時間程度であった。結果を図10に示す。その他のサンプルについても調べてみたところ、半減期は15倍〜20倍の範囲に収まっていた。以上のことから55℃での加速度は18倍とする。例えば、55℃にて半減期が1日であったならば、室温では18日に相当する。また、この加速度に誤差があったとしても染み込みにくさは定性的に比較できると考えられる。
[実施例2] バリア層の最適化
上記実施例1と同様の方法でフォトニック結晶を作製し、接着剤として日東電工製CS−9611を用いた。バリア層として、厚さが数nm程度で数μm四方の大きさを有する薄い層状のケイ酸塩(サカタインクス製 エコステージGB−3)を用いた。この層状の物質であるケイ酸塩は、図11のように、表面にマイナス電荷を帯びており、Na+イオンを介して膜状に折り重なった構造である。このケイ酸塩を分散させる分散媒はイソプロピルアルコールと水を3:7の割合で混ぜたものを使用した。このケイ酸塩分散液を希釈し、蒸発残分を0.33wt%となるように調整した。これをスプレーにて10秒間噴霧し、乾燥させた。この噴霧の工程と乾燥の工程とを3回繰り返し行った。
上記実施例1と同様の方法でフォトニック結晶を作製し、接着剤として日東電工製CS−9611を用いた。バリア層として、厚さが数nm程度で数μm四方の大きさを有する薄い層状のケイ酸塩(サカタインクス製 エコステージGB−3)を用いた。この層状の物質であるケイ酸塩は、図11のように、表面にマイナス電荷を帯びており、Na+イオンを介して膜状に折り重なった構造である。このケイ酸塩を分散させる分散媒はイソプロピルアルコールと水を3:7の割合で混ぜたものを使用した。このケイ酸塩分散液を希釈し、蒸発残分を0.33wt%となるように調整した。これをスプレーにて10秒間噴霧し、乾燥させた。この噴霧の工程と乾燥の工程とを3回繰り返し行った。
この層状ケイ酸塩は光学的には透明であり、二次元的な大きさは数マイクロメートル四方である。層状ケイ酸塩は、図12のように、フォトニック結晶には入り込まない。よって、フォトニック結晶の光学特性には影響しない。このとき、層状ケイ酸塩の膜厚は約150nmであった。また、バリア層を設けずに、同様に形成されたフォトニック結晶を作製した。
形成された2種類のフォトニック結晶を実施例1で説明した加速試験法により反射率の経時変化を測定した。その結果を図13に示す。バリア層のないサンプルでは、図13(a)に示されるように、半減期が7時間程度であったのに対し、層状ケイ酸塩をバリア層としたサンプルでは、図13(b)のように、半減期が500時間を超えた。これは、加速度を換算すると半減期は1年程度となる。さらに、図13(b)のように、反射率が0.4程度の近傍で劣化がほとんど止まっている。これにより、接着剤の染み込みが半永久的に略防止できたと考えられる。
次に、上記実施例1と同様の方法でフォトニック結晶を作製し、接着剤として日東電工製CS−9611を用いた。バリア層として、90nmのシリカ微粒子(日本触媒製 KE−W10)を使用して規則的に配列させた微粒子層を使用した。この微粒子層は、濃度を16wt%となるようにシリカ微粒子を水に分散させ、フォトニック結晶を形成したサンプルにこの微粒子溶液を引き上げ法により塗布した。引き上げ速度は5cm/secで、塗布回数は1回行った。このシリカ微粒子の大きさは、図14に示されるように、フォトニック結晶の空隙の大きさよりも大きいため、フォトニック結晶の光学特性に影響しない。この微粒子は、六方細密構造で配列していた。また、その微粒子層の厚さは210nm程度であった。また、同様の方法で、シリカ微粒子溶液を2回塗布したものを作製した。微粒子層の厚さは単純に2倍程度になると考えられる。
この2つのサンプルと上述のバリア層を有さないサンプルについて、実施例1で説明した加速試験法により反射率の経時変化を測定した。その結果を図15に示す。シリカ微粒子を1回塗布したサンプルは、半減期は55℃下で36時間程度であった。この結果から、バリア層としては、層状ケイ酸塩の方が優れていた。また、シリカ微粒子を2回塗布したサンプルは、半減期は55℃下で144時間程度であった。これにより、バリア層の接着剤をフォトニック結晶への侵入を防止する効果は、微粒子層の厚さが厚いほど高いことがわかった。また、微粒子層の厚さが2倍になった場合、半減期が4倍になった。このことから、微粒子層の厚さに対して染み込み速さが正比例していないことがわかる。これは、その他のバリア層についてもいえると考えられる。
以上の結果、バリア層によってフォトニック結晶への接着剤の染み込む速さを遅くすることができた。そして半減期が最大で70倍程度まで長くすることができた。すなわち、接着剤の染み込む速さをバリア層なしと比べて1/70に遅くすることができた。さらに、バリア層の厚さを厚くすることで接着剤の染み込む速さが遅くなることがわかった。
[実施例3] 接着剤の最適化
バリア層を設けずに、実施例1と同様の方法で形成されたフォトニック結晶に接着剤を貼り付け、その反射率の経時変化を測定した。接着剤は、以下の通り調製されたものを使用した。そのサンプルの一覧を表1に示す。表中熟成期間とは、架橋剤を加えてからの時間を示す。また、架橋剤量は、サンプル1に投入した量を基準量とし、その基準量より少ない量を少量と示した。
バリア層を設けずに、実施例1と同様の方法で形成されたフォトニック結晶に接着剤を貼り付け、その反射率の経時変化を測定した。接着剤は、以下の通り調製されたものを使用した。そのサンプルの一覧を表1に示す。表中熟成期間とは、架橋剤を加えてからの時間を示す。また、架橋剤量は、サンプル1に投入した量を基準量とし、その基準量より少ない量を少量と示した。
これら6つのサンプルの反射率の経時変化を測定し、その結果を図16に示した。まず、サンプル1と2とを比較すると、サンプル2の方が長い半減期であった。このことから熟成期間が長いほど接着剤が染み込みにくいことがわかった。次に、サンプル1とサンプル3を比較すると、サンプル3の方が長い半減期であった。以上のことから架橋剤量が多いほど接着剤が染み込みにくいことがわかった。さらに、サンプル1とサンプル4、5、6を比較した。これにより、サンプル1>サンプル4>サンプル5>サンプル6の順に接着剤が染み込みにくいことがわかった。これは分子量に依存していることがわかる。この結果より、熟成期間や架橋剤量が同じではないため一概にはいえないが、分子量が大きいほど接着剤の粘度は高くなり、接着剤が染み込みにくいと考えられる。特に、分子量が100万以上の場合、接着剤の染み込みにくさが大きく変わったことがわかった。
[実施例4] バリア層と接着剤の最適な組み合わせ
実施例2、3より、層状ケイ酸塩を用いて分子量が100万以上の染み込みにくい接着剤を使用することで、接着剤を染み込み難くすることがわかった。この結果から、以下のサンプルについて加速測定法により反射率の経時変化を測定した。その結果を図17に示し、測定したサンプルを表2に示す。
実施例2、3より、層状ケイ酸塩を用いて分子量が100万以上の染み込みにくい接着剤を使用することで、接着剤を染み込み難くすることがわかった。この結果から、以下のサンプルについて加速測定法により反射率の経時変化を測定した。その結果を図17に示し、測定したサンプルを表2に示す。
図17に示すように、サンプル7とサンプル9及びサンプル8とサンプル10とを比較すると、バリア層を有する方が接着剤の染み込みを防ぐことができた。また、サンプル7とサンプル8及びサンプル9とサンプル10とを比較すると、接着剤の分子量が大きい方が接着剤の染み込みを防ぐことができた。したがって、サンプル7>サンプル8>サンプル9>サンプル10の順で接着剤が染み込み難くなっていることがわかった。また、サンプル1及び2では、ある時間から一定の値となっていた。これにより、さらに時間が経過しても、この値以下の反射率にはならないことが予想される。特にサンプル1は、光学特性が75%以上という高い値で一定になっていることがわかった。
このように、バリア層と分子量100万以上の接着剤を組み合わせることで接着剤のフォトニック結晶への染み込みをより防止することができる。図17のように、加速試験法において1000時間を越えてもフォトニック結晶の光学特性が初期値の8割程度を保っていた。これは、室温下で約2年程度まで光学特性が保たれるものと考えることができる。さらに、500時間を越えてからは、反射率の劣化が初期値の20%程度で一定となっていた。すなわち、フォトニック結晶の光学特性が初期値の80%程度に保ったまま半永久的に保たれるものと考えられる。
[実施例5]
上記実施例1と同様の方法でフォトニック結晶を作製し、バリア層として、3wt%のPVA溶液を塗布し、接着剤を貼り付けた。このときの反射率の経時変化を図18乃至図21に示す。図18及び図19のように、PVA溶液を塗布することで反射率は低下した。しかしながら、図19及び図20、図21とを比較すると、接着剤の塗布後及び接着剤を塗布して6日後においても反射率の低下は確認されなかった。
上記実施例1と同様の方法でフォトニック結晶を作製し、バリア層として、3wt%のPVA溶液を塗布し、接着剤を貼り付けた。このときの反射率の経時変化を図18乃至図21に示す。図18及び図19のように、PVA溶液を塗布することで反射率は低下した。しかしながら、図19及び図20、図21とを比較すると、接着剤の塗布後及び接着剤を塗布して6日後においても反射率の低下は確認されなかった。
1 微粒子構造体
10、50 基板
11、511、512、513 微粒子
12、535 接着剤
13、531、532、533 微粒子層
14、534 バリア層
5 スクリーン
10、50 基板
11、511、512、513 微粒子
12、535 接着剤
13、531、532、533 微粒子層
14、534 バリア層
5 スクリーン
Claims (13)
- 略平板状の基板と、
上記基板上に自己組織化により微粒子を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層と、
上記微粒子層の層上に接着剤の侵入を防止するバリア層とを有する
ことを特徴とする微粒子構造体。 - 上記バリア層の空隙の大きさを15nm以下とすることを特徴とする請求項1記載の微粒子構造体。
- 上記バリア層の厚さを150nm以上とすることを特徴とする請求項1記載の微粒子構造体。
- 上記バリア層は、上記微粒子とは異なる第2の微粒子を緻密に積層させたことを特徴とする請求項1記載の微粒子構造体。
- 上記第2の微粒子は、シリカ又はアルミナにより形成されていることを特徴とする請求項4記載の微粒子構造体。
- 上記バリア層は、層状の物質が重なってなることを特徴とする請求項1記載の微粒子構造体。
- 上記層状の物質は、ケイ酸塩により形成されていることを特徴とする請求項6記載の微粒子構造体。
- 上記バリア層は、無機材料又は高分子材料により形成されていることを特徴とする請求項1記載の微粒子構造体。
- 上記微粒子層は、フォトニック結晶であることを特徴とする請求項1記載の微粒子構造体。
- 上記接着剤は、分子量を100万以上とすることを特徴とする請求項1記載の微粒子構造体。
- 上記接着剤は、熱又は紫外線によって効果又は可塑することを特徴とする請求項1記載の微粒子構造体。
- 略平板状の基板に自己組織化により微粒子を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層を形成する工程と、
上記微粒子層の層上に接着剤の侵入を防止するバリア層を形成する工程と、
ことを特徴とする微粒子構造体の形成方法。 - 略平板状の基板と、
上記基板上に自己組織化により微粒子を3次元的に規則正しく配列させた微粒子層と、
上記微粒子層の層上に接着剤の侵入を防止するバリア層とを有する
ことを特徴とするスクリーン。
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-
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