JP4233303B2 - 空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラシレスモータによりファンを駆動する空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置に係り、特に、ブラシレスモータのロータ磁極の位置を検出する単一の磁極位置検出センサの出力信号に基づいてロータを位置決めして起動制御を実行する空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブラシレスモータは、ステータ巻線に交流電流を流して回転磁界を発生させることにより永久磁石が装着されたロータを回転させる。ロータを回転磁界に確実に追従させるには、ロータのN極及びS極の位置を検出する必要がある。この磁極位置の検出には、例えば、ホールセンサが用いられる。このホールセンサが1つだけの場合、複数のホールセンサを設ける場合とは違って、磁極位置を特定することができないため、起動制御を行う前に、ロータを所定の起動位置に位置決めする制動制御を実行する必要がある。
【0003】
この制動制御の一例として有風時に回転している室外ファンの制動、停止、位置決めを行うことが提案され、この技術を回転停止中のブラシレスモータの位置決めに応用することができる。この技術は、複数のスイッチング素子が3相ブリッジ接続されたインバータ回路を備え、このインバータ回路を構成するスイッチング素子のうち、正電圧側及び負電圧側のいずれか一方の1個のスイッチング素子をPWM通電すると共に、いずれか他方の2個のスイッチング素子をPWM通電して一定時間だけ直流励磁するというものである(特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−125584号公報(第5頁、図3)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の方法は、有風時に回転している室外ファンに制動を加えて減速、停止させると共に、起動位置に停止させてから、回転磁界を発生させる起動制御を実施していた。ここで、起動位置とは、ステータの巻線電流による磁界をロータの永久磁石に作用させてロータが完全停止する位置を中心にして略±5度の範囲に停止又は揺動する状態をいう。この起動位置で起動制御を行うに当たって、PWM通電のデューティ比を小さくするとトルク不足により室外ファンが脱調する、いわゆる、起動失敗を起こしやすくなるため、起動制御を開始する時点のPWM通電のデューティ比を比較的大きな値に設定していた。そのため、有風時に回転している室外ファンに制動を加えて減速停止させるときのPWM通電のデューティ比も起動制御を開始するときの大きさに固定されていた。
【0006】
一方、外風の影響を受けないで起動位置とは無関係な位置に停止している状態においても、有風時と同様に起動位置に停止させる必要があるが、このとき、PWM通電のデューティ比を起動制御を開始するときの大きさに固定すると次のa,b,cのような問題が発生した。
【0007】
a.ファンの重量が大きくなって慣性が増大すると、ファンの振れが大きくなり、起動位置に戻るまでの時間が長くなる。このことは、冷凍サイクルの運転が開始されたにも拘わらず室外ファンが正常に回転しないことによる不具合を招くことになる。
【0008】
b.制動制御時のPWM通電のデューティ比を小さくすればファンの振れは小さくなるが起動開始時のデューティ比も小さく抑えられるためトルク不足に陥って起動失敗を起こしやすくなる。この場合、モータに印加される駆動電圧のばらつきにも左右される。
【0009】
c.磁極位置検出センサの数を増やすか、あるいは、モータ自体を高出力とすれば制動時間は短縮されるが、製品のコストの上昇を招く。
【0010】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的はファンの重量が大きくなった場合でも、ロータの磁極位置検出センサを1個しか使用しないで、迅速かつ確実な制動と起動を可能にする空気調和機のファンモータ駆動制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、空気調和機の熱交換器に送風するプロペラファンからなる室外ファンと、このファンを駆動するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータのロータ磁極の位置を検出する1つの磁極位置検出センサと、電圧可変の直流電圧を出力するコンバータ回路と、複数のスイッチング素子が3相ブリッジ接続され、前記コンバータ回路から出力された直流を交流に変換するインバータ回路と、前記磁極位置検出センサの出力信号に基づいて前記コンバータ回路及びインバータ回路を制御して前記ブラシレスモータのステータ巻線にPAM電流を供給する制御手段とを備えた空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置において、
前記制御手段は、前記ブラシレスモータの起動前、前記磁極位置検出センサの出力信号に応じて前記インバータ回路の正電圧側及び負電圧側のいずれか一方の1個のスイッチング素子及びいずれか他方の2個のスイッチング素子をオン状態にしてロータを所定位置に位置決めする制動制御を実行し、前記ロータが位置決めされた後、前記磁極位置検出センサの出力信号に同期させて前記インバータの全てのスイッチング素子を所定の順序で通電して起動制御を実行すると共に、制動制御期間中のPAM通電の振幅を前記起動制御期間の最初のPAM通電の振幅よりも小さくしたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置において、起動制御期間を、ロータの動き出しをさせる第1の期間とロータを固定させる第2の期間とに分割し、第1の期間のデューティ比よりも第2の期間のデューティ比を大きくしたことを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置において、制御手段は、起動制御期間に起動が成功したか否かを判別し、起動が失敗した場合に制動制御期間、デューティ比及びその変化パターンの少なくとも1つを変更して再度制動制御を実行することを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置において、インバータ回路に供給される直流電圧を検出する電圧検出手段を備え、検出された直流電圧が高い場合ほどPWM通電のデューティ比を小さく抑えることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る発明は、
ファンを駆動するブラシレスモータと、ブラシレスモータのロータ磁極の位置を検出する磁極位置検出センサと、電圧可変の直流電圧を出力するコンバータ回路と、複数のスイッチング素子が3相ブリッジ接続され、コンバータ回路から出力された直流を交流に変換するインバータ回路と、磁極位置検出センサの出力信号に基づいてコンバータ回路及びインバータ回路を制御してブラシレスモータのステータ巻線にPAM電流を供給する制御手段とを備えた空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置において、
前記制御手段は、ブラシレスモータの起動前、磁極位置検出センサの出力信号に応じてインバータ回路の正電圧側及び負電圧側のいずれか一方の1個のスイッチング素子及びいずれか他方の2個のスイッチング素子をオン状態にしてロータを所定位置に位置決めする制動制御を実行し、ロータが位置決めされた後、磁極位置検出センサの出力信号に同期させてインバータの全てのスイッチング素子を所定の順序で通電して起動制御を実行すると共に、制動制御期間のPAM通電の振幅を起動制御期間のPAM通電の振幅よりも小さくしたことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は本発明を適用するスプリット型空気調和機の冷凍サイクルの系統図であり、暖房モード運転において、圧縮機1→四方弁2→室内熱交換器3→膨張弁4→室外熱交換器5→四方弁2→圧縮機1の経路で冷媒が循環される。この場合、凝縮器として作用する室外熱交換器5の熱交換を促進するために、ファンモータ7によって駆動される室外ファンであるプロペラファン6と、蒸発器として作用する室内熱交換器3の熱交換を促進するために、ファンモータ9によって駆動される室内ファンであるターボファン8とが設けられている。ファンモータ7及びファンモータ9はいずれもロータに永久磁石が装着されたブラシレスモータでなり、そのステータに磁極位置検出センサ(図示を省略)が取り付けられている。そして、ファンモータ7の磁極位置検出センサの位置検出信号MP1に基づいて室外ファン制御部10がファンモータ7の制動制御及び起動制御を実行し、同様に、ファンモータ9の磁極位置検出センサの位置検出信号MP2に基づいて室内ファン制御部20がファンモータ9の制動制御及び起動制御を実行するように構成されている。
【0020】
図2は室外ファン制御部10の詳細な構成を示す回路図であり、例えば、100Vの商用電源でなる交流電源11に全波整流回路12が接続されている。この全波整流回路12の直流出力端子間に平滑コンデンサ13が接続され、平滑された直流がモータ駆動回路30に供給される。モータ駆動回路30はインバータ回路でなり、入力された直流を交流に変換してファンモータ7に供給する。モータ駆動回路30には交流電源11の交流電圧を入力してインバータ回路を構成するスイッチング素子の動作電力を得るようになっている。また、モータ駆動回路30に供給される直流電圧を検出する電圧検出器14が設けられ、制御装置40はファンモータ7に設けられた磁極位置検出センサとしてのホールIC15の位置検出信号MP1及び電圧検出器14の電圧検出信号VDに基づいて、制動制御及び起動制御を実行する処理を実行して制御信号G1〜G6をモータ駆動回路30に加えるように構成されている。
【0021】
図3はモータ駆動回路30の詳細な構成を示す回路図であり、図中、図1又は図2と同一の符号を付したものはそれぞれ同一の要素を示している。ここで、モータ駆動回路30はスイッチング素子としてFET(Field Effect Transistor )でなるトランジスタFu ,Fv ,Fw ,Fx ,Fy ,Fz が3相ブリッジ接続されている。すなわち、トランジスタFu 及びFx の直列接続回路と、トランジスタFv 及びFy の直列接続回路と、トランジスタFw 及びFz の直列接続回路とが並列接続され、その一端がスイッチ31を介して図示省略の直流電源(DC140V)の正極に接続され、他端が直流電源の負極に接続されている。これらのトランジスタFu ,Fv ,Fw ,Fx ,Fy ,Fz には環流用のダイオードDu ,Dv ,Dw ,Dx ,Dy ,Dz がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0022】
また、トランジスタFu ,Fv ,Fw ,Fx ,Fy ,Fz の各ゲートには、ホトカプラでなる駆動回路B1 ,B2 ,B3 ,B4 ,B5 ,B6 が接続されている。
【0023】
これらの駆動回路の動作電力を供給するために、1次側が交流電源11に接続されたトランス32と、このトランス12の2次側に直列接続されたダイオードD01及び平滑用のコンデンサC01とでなる半波整流回路を備えている。そして、コンデンサC01の正極が直流電源の負電圧側の駆動回路B4 ,B5 ,B6 の一端にそれぞれ接続され、コンデンサC01の負極が駆動回路B4 ,B5 ,B6 の他端にそれぞれ接続されると共に、トランジスタFx ,Fy ,Fz の各ソース(負電圧側)に接続されている。また、直流電源の正電圧側の駆動回路B1 ,B2 ,B3 にはそれぞれ駆動電力を蓄えるコンデンサC02,C03,C04が並列接続され、その正極は逆流防止用のダイオードD02,D03,D04を介して、電流制限用の抵抗Rの一端に接続されている。この抵抗Rの他端は半波整流回路を構成するコンデンサC01の正極に接続されている。また、コンデンサC02,C03,C04の負極はトランジスタFu ,Fv ,Fw の各ソースに接続されている。
【0024】
一方、トランジスタFu 及びFx 、Fv 及びFy 、Fw 及びFz の相互接続点にそれぞれブラシレスモータ1のステータ巻線U,V,Wの各外部接続導線が接続されている。また、ブラシレスモータ1に設けられたホールIC2の信号出力導線が制御装置10を構成するMCU(マイクロコンピュータユニット)100に接続され、このMCU100から出力される制御信号G1 ,G2 ,G3 ,G4 ,G5 ,G6 をそれぞれ駆動回路B1 ,B2 ,B3 ,B4 ,B5 ,B6 に加えるように構成されている。
なお、制御装置40はMCU(マイクロコンピュータ)100を含んで構成されている。
【0025】
以下、図3に示したモータ駆動回路30の概略動作を説明した後で、ロータ位置を固定する制動制御について詳しく説明する。
トランジスタFu ,Fv ,Fw ,Fx ,Fy ,Fz が3相ブリッジ接続されたインバータ回路の直流入力端子間にDC140Vの電圧が印加される。ここで、トランジスタFu ,Fv ,Fw をインバータ回路の正電圧側のスイッチング素子と称し、トランジスタFx ,Fy ,Fz をインバータ回路の負電圧側のスイッチング素子と称している。交流電源11はAC100Vで、トランス32はこの電圧を例えばAC5Vに降圧する。降圧された交流はダイオードD01及びコンデンサC01でなる半波整流回路によって整流平滑され、得られた直流電圧が負電圧側のスイッチング素子としてのトランジスタFx ,Fy ,Fz をそれぞれ駆動する駆動回路B4 ,B5 ,B6 の両端に印加される。一方、正電圧側のスイッチング素子としてのトランジスタFu ,Fv ,Fw を駆動する駆動回路B1 ,B2 ,B3 にそれぞれ並列接続されたコンデンサC02,C03,C04は負電圧側のスイッチング素子がオン状態になったとき、抵抗Rを介して、コンデンサC01の両端電圧によって順次に充電(チャージアップ)される。インバータ回路3の起動前であれば、トランジスタFx ,Fy ,Fz を一斉にオン状態にすることによって、コンデンサC02,C03,C04は全て充電される。これによってトランジスタFu ,Fv ,Fw ,Fx ,Fy ,Fz の駆動回路B1 ,B2 ,B3 ,B4 ,B5 ,B6 の動作が可能になる。これらの駆動回路に並列接続されたコンデンサの充電回路はチャージポンプ方式として知られ、少なくとも通常運転時には各スイッチング素子に対する通電パターンによってコンデンサC02,C03,C04は充電される。
【0026】
次に、空気調和機の起動前にファンモータ7のロータを所定位置に位置決めする制動制御を実行する必要がある。その1つの方法として、MCU100が制御信号G1 ,G2 ,G3 ,G4 ,G5 ,G6 をそれぞれ駆動回路B1 ,B2 ,B3 ,B4 ,B5 ,B6 に加えることによって、正電圧側及び負電圧側のいずれか一方のスイッチング素子の1個をPWM通電すると共に他方のスイッチング素子の2個をPWM通電してPWM電流をステータ巻線U,V,Wに流し、所定の方向の磁界を発生させてロータを停止させる方法がある。具体的には、直流電源の正電圧側のトランジスタFu ,Fw をオン状態に、直流電源の負電圧側のトランジスタFy をオン状態にする。本明細書ではこれを直流励磁による制動と称する。この直流励磁による制動はPWM電流を流すため、駆動回路及びモータに過度の負担をかけることなく、しかも、永久磁石の減磁を抑える効果を有している。
【0027】
次に、制動制御について図4を用いて説明する。本実施形態に係るファンモータ7は同図(a)に示すように、ロータRはN極とS極とが周方向に交互に配置された8個の永久磁石を備えている。その外側のステータSにはU相、V相、W相の順に合計12個の巻線が周方向に装着されている。ホールIC15はU相、V相、W相でなる一組の巻線のうち、U相巻線に近接するW相巻線の周方向端部に取付けられている。いま、ロータRの中心から径方向外側に直線を引き出した位置Zを励磁固定位置とする。すなわち、図4(c)に示すように、S極とN極の境界が励磁固定位置Zにくるようにすることをロータの位置を固定する制動制御と呼んでいる。なお、ホールIC15はロータRのS極が対向したとき「H」レベルの磁極検出信号を出力し、N極が対向したとき「L」レベルの磁極検出信号を出力する。図4(a)に示した状態ではホールIC15は「H」レベルの信号を出力する。この磁極位置検出信号に応じてW相及びV相の各巻線の端子から電流が流入し、V相巻線から電流が流出するようにトランジスタFu ,Fw ,Fy をオン、オフ制御してPWM電流が供給された場合、ロータRは同図(a)のA矢印方向に回転する。このとき、ファンの重量が大きくPWMのデューティ比が大きいとロータRは同図(b)に示すように大きく行きすぎてしまい、今度はB矢印方向に逆転して、最終的には同図(c)に示した状態に落ち着く。本発明はこのような制動制御を行うに当たり、制動制御期間のPWM通電のデューティ比を起動制御期間の最初のPWM通電のデューティ比よりも小さくしたもので、これによりファンの重量が大きくともロータRは図4(b)のように大きく行きすぎることがなく迅速に所定範囲に位置決めされる。以下にその具体例を図5及び図6を用いて説明する。
【0028】
図5(a)は予め定めた制動制御期間を、動き出しをさせる第1の期間と、励磁固定位置Zに固定する第2の期間とに分割し、第1の期間でデューティ比を一定に保持し、この第1の期間の終わりにデューティ比をステップ状に大きくしてその値を一定に保持し、さらに、制動制御期間を終了した段階でデューティ比を増大させて起動制御に移行するデューティ比の制御パターンを示している。図5(b)は制動制御期間の全てにおいてデューティ比を一定に保持し、制動制御期間を終了した段階でデューティ比を増大させて起動制御に移行するデューティ比の制御パターンを示している。図5(c)は第1の期間にデューティ比を徐々に増大させ、第1の期間の終わりにデューティ比をステップ状に大きくし、さらに、第2の期間においてもデューティ比を徐々に増大させ、制動制御期間を終了した段階でデューティ比を増大させて起動制御に移行するデューティ比の制御パターンを示している。
【0029】
図5(d)は制動制御期間の全てにおいてデューティ比を徐々に増大させ、制動制御期間を終了した段階でデューティ比を増大させて起動制御に移行するデューティ比の制御パターンを示している。図5(e)は制動制御期間の第1の期間と第2の期間のいずれか一方でデューティ比を一定に保持し、いずれか他方の区間でデューティ比を徐々に増大させ、制動制御期間を終了した段階でデューティ比を増大させて起動制御に移行するデューティ比の制御パターンを示している。
【0030】
かくして、制動制御期間のPWM通電のデューティ比を起動制御期間の最初のPWM通電のデューティ比よりも小さくし、さらに、図5(a)〜(d)に示した制御パターンを適宜選択することによって、迅速かつ確実な制動制御と起動制御が可能になる。
【0031】
図6(a)は図5(b)に示すデューティ比が一定のパターンにて1回目の制動制御を実行したが、外乱等により完全な固定ができないために、万が一、起動制御を失敗した場合に、制動制御期間を長くして2回目の制動制御を実行するデューティ比の制御パターンを示している。周知の如く、図6(a)の第1回目の制動制御及び起動制御を実行して起動失敗と判定した場合には、その瞬間に冷凍サイクルの運転は停止せられ、制動時間に比較して格段に長い時間を経過した後でなければ冷凍サイクルが再運転されることはないので、第2回目の制動制御の時間を長くしたとしても、室外ファンが正規に回転していない状態で冷凍サイクルのみが運転されるといった不具合を生ずることはない。
【0032】
図6(b)は図5(a)に示すようにデューティ比をステップ状に増大させるパターンにて1回目の制動制御を実行したが、外乱等により、万が一、起動制御を失敗した場合に、制動制御期間の第2の期間のデューティ比をより大きくして2回目の制動制御を実行するデューティ比の制御パターンを示している。
【0033】
図6(c)は1回目に制動制御期間のデューティ比をかなり大きな一定値に保持したがために、慣性等によって完全な固定ができずに起動制御を失敗した場合、2回目では制動制御期間の第1の期間でデューティ比を比較的小さな一定値に保持し、この第1の期間の終わりにデューティ比をステップ状に大きくしてその値を一定値に保持し、さらに、制動制御期間を終了した段階でデューティ比を増大させて起動制御に移行するデューティ比をより大きくして起動制御に移行するデューティ比の制御パターンを示している。
【0034】
なお、図6(a)(b)(c)は起動失敗によって制御パターンを変更する一例を示したにすぎず、起動が失敗した場合には制動制御期間、デューティ比及びその変化パターンの少なくとも1つを変更して再度制動制御を実行するようにすることにより確実な起動制御が可能となる。
【0035】
かくして、図5及び図6にいくつかの例を示したPWM通電のデューティ比の制御パターンを用いることによって、迅速かつ確実な制動と起動が可能になる。
【0036】
図7は上述した制動制御及び起動制御を実行するに当たり、制御装置40を構成するMCU100が実行する全体的な処理手順を示すフローチャートである。この場合、ステップ101で運転開始時か否かを判定し、運転開始時であると判定した場合にはステップ102にて外風によりファンが回転中か否かを判定し、回転中であればステップ103にてこれを停止させる制御を実行し、ファンが停止した段階でステップ106の処理に移り、ここで図5を用いて説明した制動、位置決め制御を実行する。次に、ステップ105にて図5及び図6に示した起動制御を実行し、ステップ106にて起動が成功したかあるいは失敗したかを判定する。ここで、成功と判定すればステップ107で所定の回転数制御を行ってステップ101以下の処理を実行し、失敗と判定した場合には図6に示したようにステップ108にて再び制動、位置決め制御を実行して、ステップ105の起動制御に移る。なお、ステップ101で運転開始でないと判定した場合には、ステップ109にて通常の制御を実行する。
【0037】
図8は図5(b)に示した制動制御に対応するMCU100の具体的処理手順を示すフローチャートであり、ステップ111にて制動制御時間を計時するタイマT1をスタートさせ、ステップ112で一定のデューティ比(図面ではデューティと略記する)D1で直流励磁を実行し、ステップ113でタイマT1で計時した時間が設定値Ts1を超えたか否かを判定し、設定値Ts1を超えるまでステップ112,113の処理を繰り返し、超えた段階で他の処理に移る。
【0038】
図9は図5(d)に示した制動制御に対応するMCU100の具体的処理手順を示すフローチャートであり、ステップ121にて制動制御時間を計時するタイマT1をスタートさせ、ステップ122にて、所定のデューティ比D0で直流励磁を開始し、その後に一定の割合Δd/tでデューティ比を増大させ、ステップ123でタイマT1で計時した時間が設定値Ts1を超えたか否かを判定し、設定値Ts1を超えるまでステップ122,123の処理を繰り返し、超えた段階で他の処理に移る。
【0039】
図10は図5(a)に示した制動制御に対応するMCU100の具体的処理手順を示すフローチャートであり、ステップ131にて制動制御時間を計時するタイマT1をスタートさせ、ステップ132で一定のデューティ比D1で直流励磁を実行し、ステップ133でタイマT1で計時した時間が動き出しの第1の期間に対応する設定値Ts0を超えたか否かを判定し、設定値Ts0を超えるまでステップ132,133の処理を繰り返し、超えた段階でステップ134の処理に進む。ステップ134においては、デューティ比をD2(>D1)に変更して直流励磁を実行し、続いて、ステップ135でタイマT1で計時した時間が設定値Ts1を超えたか否かを判定し、設定値Ts1を超えるまでステップ134,135の処理を繰り返し、超えた段階で他の処理に移る。
【0040】
図11は図5(c)に示した制動制御に対応するMCU100の具体的処理手順を示すフローチャートであり、ステップ141にて制動制御時間を計時するタイマT1をスタートさせ、ステップ142にて、所定のデューティ比D0で直流励磁を開始し、その後に一定の割合Δd/tでデューティ比を増大させ、ステップ143でタイマT1で計時した時間が動き出しの第1の期間に対応する設定値Ts0を超えたか否かを判定し、設定値Ts0を超えるまでステップ142,143の処理を繰り返し、超えた段階でステップ144の処理に移る。ステップ144においてはデューティ比D2(>D0)で直流励磁を開始し、その後に一定の割合Δd2/tでデューティ比を増大させ、ステップ145でタイマT1で計時した時間が設定値Ts1を超えたか否かを判定し、設定値Ts1を超えるまでステップ144,145の処理を繰り返し、超えた段階で他の処理に移る。
【0041】
図12は図5(e)に示した処理のうち、第1の期間でデューティ比を増大させ、第2の期間でデューティ比を一定に保持する制動制御に対応するMCU100の具体的処理手順を示すフローチャートであり、ステップ151にて制動制御時間を計時するタイマT1をスタートさせ、ステップ152にて、所定のデューティ比D0で直流励磁を開始し、その後に一定の割合Δd/tでデューティ比を増大させ、ステップ153でタイマT1で計時した時間が動き出しの第1の期間に対応する設定値Ts0を超えたか否かを判定し、設定値Ts0を超えるまでステップ152,153の処理を繰り返し、超えた段階でステップ154の処理に進む。ステップ154においては一定のデューティ比D2にて直流励磁を実行し、ステップ154でタイマT1で計時した時間が設定値Ts1を超えたか否かを判定し、設定値Ts1を超えるまでステップ154,155の処理を繰り返し、超えた段階で他の処理に移る。
【0042】
図13は図5(e)に示した処理のうち、第1の期間でデューティ比を一定に保持し、第2の期間でデューティ比を徐々に増大する制動制御に対応するMCU100の具体的処理手順を示すフローチャートであり、ステップ161にて制動制御時間を計時するタイマT1をスタートさせ、ステップ162にて、所定のデューティ比D0で直流励磁を実行し、ステップ163でタイマT1で計時した時間が動き出しの第1の期間に対応する設定値Ts0を超えたか否かを判定し、設定値Ts0を超えるまでステップ162,163の処理を繰り返し、超えた段階でステップ164の処理に進む。ステップ164において、所定のデューティ比D1で直流励磁を開始し、その後に一定の割合Δd/tでデューティ比を増大させ、ステップ145でタイマT1で計時した時間が設定値Ts1を超えたか否かを判定し、設定値Ts1を超えるまでステップ164,165の処理を繰り返し、超えた段階で次の処理に移る。
【0043】
かくして、図8ないし図13のフローチャートに示した処理を実行することによって、図5(a)〜(e)に示した制動制御を実行することができる。
【0044】
図14は起動及び起動判定を行うMCU100の具体的処理手順を示すフローチャートである。ここでは、ステップ201でデューティ比D5(>D0,D1,D2)にて強制転流を開始し、その後、所定の増加分Δd5/tでデューティ比を増加させると共に、転流の周波数を増大させる。次にステップ202ではその時点のデューティ比Dが上限値Dsを超えたか否かを判定し、超えたと判定するまでステップ201,202の処理を繰り返し、超えた段階でステップ203の処理に進む、ステップ203においては、回転数rを検知することが可能か否かを判定し、可能と判定した場合にはステップ204にて回転数rが最小の閾値rsを超えたか否かを判定し、超えたと判定した場合には周知の回転数制御を実行し、回転数rが最小の閾値rsを超えていないと判定した場合にはステップ205で圧縮機を停止させる異常処理を実行し、その後、図6を用いて説明した2回目の制動制御を実行する。
【0045】
かくして、図14のフローチャートに示した処理を実行することによって、起動制御と、起動が正常に行われたか否かの判定が可能になる。
【0046】
ところで、上記の実施形態は商用電源から駆動電力を受給しているため、モータ駆動回路30に供給される直流電圧が変動することが考えられる。図2に示した電圧検出器14は直流電圧に応じてトルクが変動することを抑制するために設けられたもので、その電圧検出信号VDを制御装置40のMCU100に供給することによって、MCU100は検出電圧が変動しても一定の出力トルクが得られるように、デューティ比を変更する。この場合、直流電圧が高くなった場合にはデューティ比を小さくし、反対に、直流電圧が低くなった場合にはデューティ比を大きくする。
【0047】
かくして、本発明の一実施形態によれば、ファンの重量が大きくなった場合でも、ロータの磁極位置検出センサを1個しか使用しないで、迅速かつ確実な制動と起動を可能にする空気調和機のファンモータ駆動制御装置が得られる。
【0048】
なお、上記の実施形態では全波整流回路12の出力を直接インバータ回路に供給することによりPWM通電のデューティ比を種々のパターンで変更する直流励磁について説明したが、例えば、図2中に交流電源11とモータ駆動回路30との間に、交流を電圧可変の直流に変換するコンバータ部を設けるか、あるいは、モータ駆動回路30に直流を電圧可変直流に変換するコンバータ部を設け、インバータ部の通電状態を直流励磁状態に保持したままで、コンバータ部の電圧振幅を変更する、いわゆる、PAM制御によっても、上述したと同様の制動制御を行うことができる。
【0049】
なおまた、上記の実施形態では、制動制御期間の一部又は全部でPWMのデューティ比を一定の変化率、すなわち、直線的に増大させたが、例えば放物線状に増大させても同様な効果が得られることから、連続的に増大させるものであれば良い。
【0050】
さらに、上記の実施形態では、外風によって回転されることの多い室外ファンの制動制御及び起動制御について説明したが、本発明はこれに適用を限定されるものではなく、室内ファンにも適用することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明によって明らかなように、本発明によれば、ファンの重量が大きくなった場合でも、ロータの磁極位置検出センサを1個しか使用しないで、迅速かつ確実な制動と起動を可能にする空気調和機のファンモータ駆動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用するスプリット型空気空気調和機の冷凍サイクルの系統図。
【図2】本発明の一実施形態に係る室外ファン制御部の詳細な構成を示す回路図。
【図3】本発明の一実施形態に係るモータ駆動回路の詳細な構成を示す回路図。
【図4】本発明の一実施形態の動作を説明するために、ファンモータのロータの磁極とステータの巻線の相対配置を示した説明図。
【図5】本発明の一実施形態の動作を説明するために、起動制御に先立って行われる制動制御におけるPWM通電の各種のパターンを示す図。
【図6】本発明の一実施形態の動作を説明するために、起動制御を失敗した場合に行われる制動制御におけるPWM通電の各種のパターンを示す図。
【図7】本発明の一実施形態の主要な機能をマイクロコンピュータに持たせた場合の処理手順を示すフローチャート。
【図8】図5に示したPWM通電パターンの1つを生成するマイクロコンピュータの処理手順を示すフローチャート。
【図9】図5に示したPWM通電パターンの1つを生成するマイクロコンピュータの処理手順を示すフローチャート。
【図10】図5に示したPWM通電パターンの1つを生成するマイクロコンピュータの処理手順を示すフローチャート。
【図11】図5に示したPWM通電パターンの1つを生成するマイクロコンピュータの処理手順を示すフローチャート。
【図12】図5に示したPWM通電パターンの1つを生成するマイクロコンピュータの処理手順を示すフローチャート。
【図13】図5に示したPWM通電パターンの1つを生成するマイクロコンピュータの処理手順を示すフローチャート。
【図14】本発明の一実施形態において起動制御と、起動が正常に行われたか否かの判定する機能をマイクロコンピュータに持たせた場合の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
1 圧縮機
3 室内熱交換器
5 室外熱交換器
6 プロペラファン
7,9 ファンモータ
8 ターボファン
12 全波整流回路
13 平滑コンデンサ
14 電圧検出器
15 ホールIC
30 モータ駆動回路
31 スイッチ
32 トランス
40 制御装置
100 MCU
Claims (5)
- 空気調和機の熱交換器に送風するプロペラファンからなる室外ファンと、このファンを駆動するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータのロータ磁極の位置を検出する1つの磁極位置検出センサと、複数のスイッチング素子が3相ブリッジ接続され、直流を交流に変換するインバータ回路と、前記磁極位置検出センサの出力信号に基づいて前記インバータ回路のスイッチング素子をオン、オフ制御して前記ブラシレスモータのステータ巻線にPWM電流を供給する制御手段とを備えた空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置において、
前記制御手段は、前記ブラシレスモータの起動前、前記磁極位置検出センサの出力信号に基づいて前記インバータ回路の正電圧側及び負電圧側のいずれか一方の1個のスイッチング素子及びいずれか他方の2個のスイッチング素子をPWM通電してロータを所定位置に位置決めする制動制御を実行し、前記ロータが位置決めされた後、前記磁極位置検出センサの出力信号に同期させて前記インバータの全てのスイッチング素子を所定の順序でPWM通電して起動制御を実行すると共に、制動制御期間中のPWM通電のデューティ比を前記起動制御期間の最初のPWM通電のデューティ比よりも小さくしたことを特徴とする空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置。 - 前記起動制御期間を、ロータの動き出しをさせる第1の期間とロータを固定させる第2の期間とに分割し、前記第1の期間のデューティ比よりも前記第2の期間のデューティ比を大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置。
- 前記制御手段は、前記起動制御期間に起動が成功したか否かを判別し、起動が失敗した場合に前記制動制御期間、デューティ比及びその変化パターンの少なくとも1つを変更して再度制動制御を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置。
- 前記インバータ回路に供給される直流電圧を検出する電圧検出手段を備え、検出された直流電圧が高い場合ほどPWM通電のデューティ比を小さく抑えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置。
- 空気調和機の熱交換器に送風するプロペラファンからなる室外ファンと、このファンを駆動するブラシレスモータと、前記ブラシレスモータのロータ磁極の位置を検出する1つの磁極位置検出センサと、電圧可変の直流電圧を出力するコンバータ回路と、複数のスイッチング素子が3相ブリッジ接続され、前記コンバータ回路から出力された直流を交流に変換するインバータ回路と、前記磁極位置検出センサの出力信号に基づいて前記コンバータ回路及びインバータ回路を制御して前記ブラシレスモータのステータ巻線にPAM電流を供給する制御手段とを備えた空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置において、
前記制御手段は、前記ブラシレスモータの起動前、前記磁極位置検出センサの出力信号に応じて前記インバータ回路の正電圧側及び負電圧側のいずれか一方の1個のスイッチング素子及びいずれか他方の2個のスイッチング素子をオン状態にしてロータを所定位置に位置決めする制動制御を実行し、前記ロータが位置決めされた後、前記磁極位置検出センサの出力信号に同期させて前記インバータの全てのスイッチング素子を所定の順序で通電して起動制御を実行すると共に、制動制御期間中のPAM通電の振幅を前記起動制御期間の最初のPAM通電の振幅よりも小さくしたことを特徴とする空気調和機の室外ファンモータ駆動制御装置。
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