JP4232993B2 - エンジンのグロメット取付構造及びエンジン構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンのグロメット取付構造及びエンジン構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンのパルスセンサは、点火タイミングやセルモータを制御するためにクランクシャフトの回転数を検出するセンサであり、この種のパルスセンサの取付構造に関しては、例えば実用新案登録第2510184号公報「強制空冷エンジンのパルスセンサ取着装置」が知られている。
上記公報の第2図において、24はパルスセンサ、16はリード線、15bはロータ、25は検出ポイントであり、クランクシャフト6aとともに回転するロータ15b上の検出ポイント25をバルスセンサ24でカウントする。
【0003】
上記公報の第1図に示されるとおりに、パルスセンサ24並びにリード線16はクランクシャフト6aを通る線上に配置されているため、径外方へ突出する構造となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
同第3図は横断面図であり、シリンダ1で発生した排気ガスは図示せぬ排気装置でシリンダ1からクランクケース2の下(又は上)を通り、後輪5の側方空間に至る。
このときに、図示せぬ排気装置は、一般に第1図のパルスセンサ24並びにリード線16の近傍を通す。
【0005】
排気装置がパルスセンサ24やリード線16の近傍を通ると、排気装置を大きく迂回させるなどの対策を講じなければならず、パルスセンサ24、リード線16及び排気装置のレイアウトが著しく制約される。
そこで、本発明の目的は、リード線(ハーネス引出し)や排気装置のレイアウトの自由度を高めることのできる技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1は、クランクケースの凹部とカバー部材とで囲った空間に、ステータ並びにロータからなるフライホイールマグネトと、前記ロータの外周面に設けた検出部をモニターするパルスセンサとを収納し、このパルスセンサからのハーネス及び前記ステータからのハーネスをグロメットを介してクランクケース外へ引出すエンジンにおいて、前記エンジンのクランク軸は、後輪車軸と平行に車幅方向に延ばされ、前記グロメットによるハーネスの引出方向をクランク軸にほぼ平行にし、グロメットを介してクランクケースの外側に引出したハーネスは、車体幅中心側に引出され、前記クランク軸方向において、前記パルスセンサと前記グロメットは重なった位置にあることを特徴とする。
【0007】
ハーネスの引出方向をクランク軸にほぼ平行にしたので、ハーネスを径外方へ引出すものと比較して、容易にエンジン廻りの機器との干渉を避けることができる。すなわち、ハーネスが径外方へ突出すると、エンジンが大きくなったことになりエンジン廻りの機器の配置並びにハーネスの引出しが難しくなるが、請求項1によればその心配はなく、エンジンをコンパクトにすることが可能であり、エンジン廻りの機器のレイアウト並びにハーネスの引出しが容易となる。
【0008】
請求項2は、クランクケースに、クランク軸にほぼ平行に切欠きを設けるとともに、この切欠きの一端からクランク軸に向けてグロメット挿入溝を開け、このグロメット挿入溝に外からクランク軸に向けてグロメットを挿入し、カバー部材から舌片状のグロメット抑え片を延ばし、切欠きに差込みつつグロメットを抑えることで、グロメットの径外方への抜け止めを図る様にしたことを特徴とする。
【0009】
グロメットをカバー部材から延ばしたグロメット抑え片で止めるようにした。グロメットの抜け止めや固定のためのボルトやビスが不要となり、部品点数の削減を図ることができる。
請求項3では、グロメットは、クランク軸線に垂直に前記グロメット挿入溝に挿入されていることを特徴とする。
請求項4では、グロメットは、引出した後のハーネスの方向を変更するエルボーを一体的に備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項5は、クランクケースの凹部とカバー部材とで囲った空間に、ステータ並びにロータからなるフライホイールマグネトと、前記ロータの外周面に設けた検出部をモニターするパルスセンサとを収納し、このパルスセンサからのハーネス及び前記ステータからのハーネスをグロメットを介してクランクケース外へ引出すエンジンにおいて、前記グロメットによるハーネスの引出方向を、後輪車軸と平行に車幅方向に延ばされたクランク軸にほぼ平行にし、グロメットを介してクランクケースの外側に引出したハーネスは、車体幅中心側に引出され、前記クランク軸方向において、前記パルスセンサと前記グロメットは重なった位置にするとともに、クランクケースの凹部を囲う如くに排気装置を配置した、ことを特徴とする。
【0011】
請求項1の作用に加えて、ハーネスとの干渉が心配ないので排気装置をクランクケースやカバー部材に近づけることができ、排気装置を含めたエンジン全体のコンパクト化が達成できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るスクータ型車両の側面図であり、スクータ型車両1は車体フレーム2の前部にヘッドパイプ3並びにフロントフォーク4を介して前輪5を取付け、車体フレーム2の後部にリンク機構8並びにピボット軸9を介してパワーユニット10を上下にスイング可能に取付け、このパワーユニット10の後輪車軸11に後輪12を取付けたものであり、14は排気装置、15はリヤーサスペンション、16はシート、17はカウル、18はオイルタンク、19は燃料タンク、21は前照灯、22はCDIユニット(コンデンサ型点火ユニット)である。このCDIユニット22からパワーユニット10に至るハーネス(配線)は図示しないが車体フレーム2に沿わせる。
【0013】
図2は本発明に係るパワーユニットの平面断面図であり、パワーユニット10はユニットケース31とクランクケース32とでクランク軸33を支えるとともに、シリンダ34及びシリンダヘッド35を支え、シリンダ34内にピストン36を収納し、また、クランク軸33の一端部に変速機プーリ37を取付け、この変速機プーリ37にベルト38を掛け、このベルト38の他端をドリブンプーリ39に掛け、このドリブンプーリ39を中間軸41で支え、この中間軸41を減速歯車列42を介して後輪車軸11に動力伝達するものであり、43は遠心式クラッチ、44はユニットケースカバーである。クランク軸33は、図2で明らかなように、後輪車軸11と平行に、車幅方向に延ばされて配置されている。
【0014】
更に、クランク軸33の他の端部をクランクケース32に設けた凹部45へ突出し、この凹部45にフライホイールマグネト46のステータ47及びロータ48を収納し(ステータ47はクランクケース32に取付け、ロータ48はクランク軸33に取付ける。)、このロータ48に空冷用ファン51を取付け、この空冷用ファン51をカバー部材としてのファンカバー52で囲い、このファンカバー52にグリル53を嵌め込んだものである。
カバー部材52はクランクケースカバーであってもよい。
【0015】
このファンカバー52は、単なるカバーではなく、ファン51で発生した動圧を静圧に変換する渦巻室55と、昇圧後の空気をシリンダ34並びにシリンダヘッド35へ導く導風ガイド56とを備えたファンケーシングである。具体的には点火プラグ57まで延びたファンカバー52と、残りの部分を囲うシュラウド58とで、シリンダ34並びにシリンダヘッド35を囲う構造とした。
【0016】
図3は本発明のエンジン構造を示す図であり、図1にて乗員の右手から排気装置14を見ると共にクランクケース32からファンカバーなどを取外した状態を示す。
排気装置14は排気管14aと、やや大径の排気管14bと、サイレンサ14cと、前ブラケット14dと、後ブラケット14eとからなり、前ブラケット14d及び後ブラケット14eをクランクケース32側にボルト59a,59b,59cで固定する。
【0017】
クランクケース32の凹部45も図面時計廻りに広がる渦巻室61を備え、この渦巻室61の出口がシリンダ34のフィン62やシリンダヘッド35の上・下フィン63,64に臨む。渦巻室61の始まりの箇所に設けたものがパルスセンサ70であり、このパルスセンサ70の取付け構造については後述する。
そして、図から明らかなように、排気管14a,14bはパルスセンサ70を備えたクランクケース32の凹部45を略180°囲んでいることが分かる。
【0018】
図において、クランクケース32、クランク軸33、シリンダ34、シリンダヘッド35、ステータ47、ロータ48、パルスセンサ70を主要素とする部分を、「エンジン75」と呼ぶ。
また、このエンジン75に排気装置14を加えたものを「エンジン構造77」と呼ぶことにする。
【0019】
図4は本発明に係るシリンダヘッドの側面図であり、シリンダヘッド35は上フィン63・・・(・・・は複数個を示す。以下同様)のみならず、下フィン64・・・を備えたことを特徴とする。伝熱面積が、上フィンのみのものに比較して、飛躍的に増加するため、シリンダヘッド35を良好に冷却することができる。
【0020】
図5は本発明に係るシリンダヘッドの平面図であり、下フィン64・・・に対して上フィン63・・・を傾斜させたことを示す。冷却風は矢印▲1▼の如く進入するが、上フィン63を傾斜させたために、上フイン63の伝熱面積が増大し、より効果的にシリンダヘッド35を冷却することができる。
【0021】
図6は本発明に係るエンジン構造の分解斜視図であり、図は車体前方から見たものであって、クランクケース32の凹部45にクランク軸33の一方の端部を臨ませるとともに、凹部45にステータ47を収納して凹部42の底面にボルトB,Bで固定し、クランク軸33の軸端にロータ48を嵌合してナット65で止め、更にロータ48にファン51をボルト66・・・で固定し、また、凹部45の所定箇所にパルスセンサ70を2本のボルト67,67(一方の67は不図示)で止め、このパルスセンサ70の近傍においてクランクケース32に切欠き68及びグロメット挿入溝69を設け、このグロメット挿入溝69にグロメット80を差込んで後に、ファンカバー52を被せ、このファンカバー52をランクケース32にねじ止めする。この際にファンカバー52に一体形成した舌片状のグロメット抑え片52aを切欠き68に差込む。切欠き68及びグロメット挿入溝69に付いては後に拡大図にて詳しく説明する。
【0022】
ここで、グロメット80は容器内部において電装品から延ばしたハーネスを容器を貫通させて外へ取出すにあたり、貫通孔とハーネスとの間の隙間を塞ぐシール部材である。
【0023】
また、ファンカバー52の上部に一体形成した導風ガイド56で、シリンダ34及びシリンダヘッド35の手前半分をカバーする。シリンダ34及びシリンダヘッド35の残り半分はシュラウド58で囲ったことを示す。
【0024】
図7は本発明に係るグロメットの取付詳細図であり、グロメット80は入口端に平行溝81,81を備え、グロメット80を矢印▲2▼の如くグロメット挿入溝69に挿入することで、レール69a,69aに平行溝81,81を嵌合する。そして、ファンカバーから延ばしたグロメット抑え片52aを矢印▲3▼の通りに切欠き68に差し入れ、結果的に矢印▲4▼の如くグロメット80を押えることで、それの抜け止めを図る。
即ち、グロメット80をカバー部材(ファンカバー52)から延ばしたグロメット抑え片52aで止めるようにしたので、抜け止めや固定のためのボルトやビスが不要となり、部品点数の削減を図ることができる。
48はロータ、72は検出部であり、この検出部72をパルスセンサ70で検出する。
【0025】
図中、L1はクランク軸線、L2はグロメット80単品の入口軸線、L3は取付け時のグロメット80の入口軸線を示し、軸線L3は軸線L1に平行(含むほぼ平行)であり、グロメット80によるハーネス82の引出方向をクランク軸線L1にほぼ平行にしたことを特徴とする。なお、このハーネス82はパルスセンサ70のハーネスとステータ47(図6参照)のハーネスを一括したものである。
引出した後は、エルボー83で方向を変更することは差支えない。
【0026】
図8(a),(b)はグロメット取付構造の比較図である。
(a)は本発明の実施例を示し、シリンダ軸心からグロメットの外面、詳しくはグロメット抑え片52aの外面までの距離をD1とする。破線で示した丸84はハーネスを図面奥へ引出すことを示す。
(b)は従来採用されてきた比較例であり、グロメット101がシリンダ軸心を通る放射線102上に配置され、このグロメット101を通るハーネス103が更に径外方延びるため、ハーネス103の外面までの距離D2が前記距離D1よりも遥に大きくなることを示す。距離がD2であれば、この付近に設けるエンジン付属機器や特に排気装置は干渉せぬように大きく迂回させなければならず、エンジン付属機器や排気装置のレイアウトが難しくなる。その点、(a)であればエンジン付属機器や排気装置のレイアウトが容易となり、これらをクランクケースに十分に接近させることが可能となる。
【0027】
尚、請求項1では排気装置の配置は任意である。また、請求項3での排気装置は、実施の形態で説明した様にクランクケースの凹部を約180°囲うものの他、例えば90°、150°、210°の如く任意の角度だけ囲うものであってもよい。
更に、本発明はパワーユニットを備えたスクータ型車両に好適であるが、その他の自動二輪車、ポータブル発電機用エンジンなど一般のエンジン若しくは汎用エンジンに広く適用することは差し支えない。
【0028】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1及び4は、ハーネスの引出方向をクランク軸にほぼ平行にしたので、ハーネスを径外方へ引出すものと比較して、容易にエンジン廻りの機器との干渉を避けることができる。すなわち、ハーネスが径外方へ突出するとエンジンが大きくなったことになりエンジン廻りの機器の配置並びにハーネスの引出しが難しくなるが、請求項1によればその心配はなく、エンジンをコンパクトにすることが可能であり、エンジン廻りの機器のレイアウト並びにハーネスの引出しが容易となる。
【0029】
請求項2及び3は、グロメットをカバー部材から延ばしたグロメット抑え片で止めるようにした。グロメットの抜け止めや固定のためのボルトやビスが不要となり、部品点数の削減を図ることができる。
【0030】
請求項5は、グロメットによるハーネスの引出方向をクランク軸にほぼ平行にするとともに、クランクケースの凹部を囲う如くに排気装置を配置したので、上記効果に加えて、ハーネスとの干渉が心配ないので排気装置をクランクケースやカバー部材に近づけることができ、排気装置を含めたエンジン全体のコンパクト化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスクータ型車両の側面図
【図2】本発明に係るパワーユニットの平面断面図
【図3】本発明のエンジン構造を示す図
【図4】本発明に係るシリンダヘッドの側面図
【図5】本発明に係るシリンダヘッドの平面図
【図6】本発明に係るエンジン構造の分解斜視図
【図7】本発明に係るグロメットの取付詳細図
【図8】グロメット取付構造の比較図
【符号の説明】
1…スクータ型車両、10…パワーユニット、14…排気装置、14a,14b…排気管、14c…サイレンサ、32…クランクケース、33…クランク軸、45…クランクケースの凹部、46…フライホイールマグネト、47…ステータ、48…ロータ、51…空冷用ファン、52…カバー部材(ファンカバー)、52a…グロメット抑え片、68…切欠き、69…グロメット挿入溝、69a…レール、70…パルスセンサ、72…ロータ外周面に設けた検出部、75…エンジン、77…エンジン構造、80…グロメット、81…平行溝、82…ハーネス。
Claims (5)
- クランクケースの凹部とカバー部材とで囲った空間に、ステータ並びにロータからなるフライホイールマグネトと、前記ロータの外周面に設けた検出部をモニターするパルスセンサとを収納し、このパルスセンサからのハーネス及び前記ステータからのハーネスをグロメットを介してクランクケース外へ引出すエンジンにおいて、
前記エンジンのクランク軸は、後輪車軸と平行に車幅方向に延ばされ、
前記グロメットによるハーネスの引出方向をクランク軸にほぼ平行にし、グロメットを介してクランクケースの外側に引出したハーネスは、車体幅中心側に引出され、
前記クランク軸方向において、前記パルスセンサと前記グロメットは重なった位置にある、
ことを特徴とするエンジンのグロメット取付構造。 - 前記クランクケースに、クランク軸にほぼ平行に切欠きを設けるとともに、この切欠きの一端からクランク軸に向けてグロメット挿入溝を開け、このグロメット挿入溝に外からクランク軸に向けて前記グロメットを挿入し、前記カバー部材から舌片状のグロメット抑え片を延ばし、前記切欠きに差込みつつグロメットを抑えることで、グロメットの径外方への抜け止めを図る様にしたことを特徴とする請求項1記載のエンジンのグロメット取付構造。
- 前記グロメットは、クランク軸線に垂直に前記グロメット挿入溝に挿入されていることを特徴とする請求項2記載のエンジンのグロメット取付構造。
- 前記グロメットは、引出した後のハーネスの方向を変更するエルボーを一体的に備えていることを特徴とする請求項1記載のエンジンのグロメット取付構造。
- クランクケースの凹部とカバー部材とで囲った空間に、ステータ並びにロータからなるフライホイールマグネトと、前記ロータの外周面に設けた検出部をモニターするパルスセンサとを収納し、このパルスセンサからのハーネス及び前記ステータからのハーネスをグロメットを介してクランクケース外へ引出すエンジンにおいて、
前記グロメットによるハーネスの引出方向を、後輪車軸と平行に車幅方向に延ばされたクランク軸にほぼ平行にし、グロメットを介してクランクケースの外側に引出したハーネスは、車体幅中心側に引出され、
前記クランク軸方向において、前記パルスセンサと前記グロメットは重なった位置にするとともに、クランクケースの凹部を囲う如くに排気装置を配置した、
ことを特徴とするエンジン構造。
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