JP4230293B2 - 合成樹脂レザー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車の内装材や自動車用座席、家具の表皮材として用いられる合成樹脂レザーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車の座席やその他の椅子の表皮材として、基布の片面に軟質ポリ塩化ビニルからなる合成樹脂層を形成した合成樹脂レザーが用いられており、基布は主として、レーヨン、綿、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタンの単独又は混紡糸で編み上げた両面編メリヤスが使用されている。
【0003】
しかし、従来の両面編メリヤスは、たて方向の伸びがよこ方向の伸びに対して小さく、且つ、たて方向の引張強度がよこ方向の引張強度に対して大きく、このようなメリヤスを用いた合成樹脂レザーを自動車の座席やその他の椅子の表皮材として用いた場合、曲面部分での歪曲や人の荷重が頻繁にかかることによる皺の発生、型崩れ、破断などが発生し易いという問題があった。
【0004】
また、基布には、レザーとしての自然な柔らかさやしなやかさ(風合い)を出すと共に、縫製して座席や椅子等を作製するシートアッセンブリ時の歩留りや縫製作業を良好にするという目的があるが、従来の両面編メリヤスは、厚みが薄く、且つたて方向の引張強度が大きく、このようなメリヤスを用いた合成樹脂レザーを自動車の座席やその他の椅子の表皮材として用いた場合、自然な柔らかさやしなやかさを出すことが難しく、風合いに欠ける虞れがあるという問題があった。さらに、シートアッセンブリ時において皺が生じ易く、縫製後に蒸気をあてて皺を伸ばす修正作業が必要になるという問題があった。
【0005】
一方、たて方向とよこ方向の伸びの差を小さくした合成樹脂レザーとして、特許文献1には、天竺編メリヤスにおけるループの形成方法を工夫することが提案され、特許文献2には、両面編メリヤスにおけるループの数を工夫することが提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載された合成樹脂レザーは、片面メリヤスであるため基布に厚みがなく、レザーとしての風合いに欠けるという問題がある。
また、特許文献2に記載された合成樹脂レザーは、綿、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニル繊維などの伸び難い糸でメリヤスを編成しているため、よこ方向の伸びが小さく、且つよこ方向の引張強度が大きくなり、自然な柔らかさやしなやかさを出すことができず、レザーとしての風合いに欠けるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】
実開平6−6487号公報
【特許文献2】
特開平7−102486号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来事情に鑑み、本願発明者は、伸び難く腰のある糸と、伸び易い糸を交編して両面編メリヤスに編み上げた基布を用いることが、上述した従来の問題を解決して良好な風合いを持つ合成樹脂レザーを提供し得ると推察し、鋭意研究を重ねた結果、伸び難く腰のある糸として、セルロース系繊維の単独又は混紡のうちの一種の10〜40番手の糸を用い、伸び易い糸として、長繊維の捲縮(ウーリー)加工糸、熱可塑性エラストマー長繊維、ポリウレタン長繊維のうちの一種の50〜300デニールの糸を用いることが好ましいとの知見を得た。
【0008】
しかし、さらに研究を続けた結果、上記した長繊維の捲縮加工糸、熱可塑性エラストマー長繊維、ポリウレタン長繊維による糸は融点が低く、これらの糸で形成されるループが、両面編メリヤスのたて方向、よこ方向、表裏において連続して位置した場合、その部分が燃焼時に溶融して破断が生じ易くなったり、燃え上がり易くなるという新たな知見を得た。
このようなメリヤスからなる基布を使用した合成樹脂レザーは、自動車用内装材の難燃規格(FMVSS 302、JIS D 1201など)をクリアすることが難しく、自動車の座席などに用いることが困難になる。
【0009】
本発明はこのような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、たて方向とよこ方向の伸びの差が小さく、且つ所定の厚みを持つと共に、燃焼時に溶融、破断する虞れのない基布を備え、風合いが良好であると共に難燃性を備えた新規な合成樹脂レザーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る合成樹脂レザーは、交編された両面編メリヤスからなる基布と、該基布の少なくとも片面に接合された合成樹脂層からなる合成樹脂レザーであって、前記基布が、セルロース系繊維の単独又は混紡のうちの一種の10〜40番手である第一の糸(伸び難く太く腰があるのでレザーとしての風合いを出すのに有用な糸)と、長繊維の捲縮加工糸、熱可塑性エラストマー長繊維、ポリウレタン長繊維のうちの一種の50〜300デニールである第二の糸(伸び易いが低融点の糸)とを交編し、且つ、前記第一の糸で形成されるループで前記第二の糸で形成されるループを囲むよう両面編メリヤスに編み上げて、前記第二の糸で形成されるループが基布のたて方向、よこ方向、表裏において連続しないよう構成したことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、第一の糸は伸び難く太く腰があるので、両面編メリヤスからなる基布に所定の厚みを持たせることができ、且つこの第一の糸と、伸び易い第二の糸を交編して両面編メリヤスとすることで、所定の厚みを持つと共に、たて方向とよこ方向の伸びの差が小さい基布とすることができる。さらに、第二の糸のループが基布のたて方向、よこ方向、表裏において連続しないようにしたので、発火等により第二の糸のループが溶融したとしても、これと隣り合う第一の糸(セルロース系繊維を含む高融点の糸)のループが炭化して溶融、破断を防止する。よって、この基布を用いた合成樹脂レザーは、たて方向とよこ方向の伸びの差が小さく、且つ基布の厚みにより、自然な柔らかさ、しなやかさを持つ風合いの良好な合成樹脂レザーであり、しかも、シートアッセンブリ時の皺の発生が少ないと共に、難燃性を兼ね備えたものとなる。
尚、ここで言う高融点の糸とは、融点より低い温度で炭化する糸であって、熱硬化性樹脂など、実質的に融点をもたない糸を含むものである。
【0012】
上記請求項1において、第一の糸と第二の糸の本数比は特に限定されず、第二の糸のループが基布のたて方向、よこ方向、表裏において連続しなければ、第一の糸のループが連続しても構わない。
【0013】
しかし、第一の糸のループが多すぎる(第一の糸の比率が大きすぎる)と、たて方向とよこ方向の伸びの差が大きくなり、風合いに欠ける虞れがある。
よって、本発明の請求項2のように、第一の糸と第二の糸の本数比が1:1であり、且つ第一の糸で形成されるループと、第二の糸で形成されるループが、基布のたて方向、よこ方向、表裏において交互に位置する構成とすることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、第一の糸によるループと、第二の糸によるループが、基布のたて方向、よこ方向、表裏において均等に配置されるので、請求項1による前述の効果をより向上することができる。
【0015】
本発明の請求項1、2に係る合成樹脂レザーにおいては、合成樹脂層は特に限定されず、この種合成樹脂レザーに用いられる塩化ビニル樹脂や熱可塑性エラストラマー、その他の合成樹脂からなるものを用いることができる。
合成樹脂層は基布の片面に積層しても良いし、両面に積層しても良い。
また、基布と合成樹脂層の間に発泡性合成樹脂層を挟んで積層一体化し、その後発泡性合成樹脂層を発泡させ、発泡合成樹脂レザーとしてもよい。
【0016】
ところで、この種合成樹脂レザーの合成樹脂層は、前述したように風合いを要求されることから、相当に軟らかい配合とした軟質ポリ塩化ビニル層が一般に使用されているが、近年、リサイクル問題などにより、塩化ビニルに替えて、ランダムポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル樹脂、水素添加スチレンブタジエンラバーなどを用いたポリオレフィン系樹脂レザーを用いることが提案されている。
【0017】
また、本願出願人は、アクリル系樹脂レザーの優れた性質を損なうことなく、引裂強度が高く、ミシンなどで縫製したときに、縫い目が広がったり、縫い目から裂け易いなどの欠点を解消した、塩化ビニルの代替として好適な合成樹脂層を有する合成樹脂レザーを提案し、先に出願した(特開2003−166181号)。
【0018】
この本願出願人による先提案の合成樹脂レザーに係る合成樹脂層と、前記した請求項1、2に係る基布とを組み合わせた場合、これら両者による相乗効果により、極めて良好な合成樹脂レザーを得ることができた。
【0019】
すなわち、本願の請求項3に係る合成樹脂レザーは、請求項1又は2における基布の少なくとも片面に、ショアA硬度65〜90の熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%とショアA硬度50〜80のアクリル系軟質樹脂50〜5重量%との混合樹脂層を設けてなり、且つ該混合樹脂層のショアA硬度が60〜80であることを特徴とする。
【0020】
このような構成による合成樹脂レザーは、合成樹脂層を前記混合樹脂層としたことで、従来の軟質ポリ塩化ビニルレザーと同様な柔軟性、手触りを有し、復元性、耐寒性、耐表面傷付き性がよく、また高周波ウエルダーによって溶着加工できる利点があると共に、ミシンなどで縫製したとき、縫い目がが広がったり、縫い目から裂けたりすることがない。さらに、該混合樹脂層と前記基布との相乗効果により、極めて優れた風合いを発現する合成樹脂レザーを提供できた。
【0021】
また、請求項3に係る合成樹脂レザーは、ショアA硬度65〜90の熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%とショアA硬度50〜80のアクリル系軟質樹脂50〜5重量%との混合樹脂を、必要に応じて難燃剤、可塑剤、滑剤などの添加剤を配合し、良く混練し、その後カレンダー成形或いは押出し成形によってシート(混合樹脂層)に成形し、該シートと基布とを積層一体化することを特徴とする製造方法で得ることができる。前記カレンダー成形を円滑にするために、混合樹脂に(メタ)アクリル系重合体を配合したり、炭酸カルシウムを配合してもよい。
【0022】
基布とシートを積層一体化する手段として、例えば、まず基布に接着剤を塗布し、その接着剤塗布面に前記シートを重ね多少加熱加圧して、ずれない程度に接着させ、次いで、必要に応じてマーブルプリントし、つや消し処理剤を塗布し、その後にシートを150〜200℃に加熱し、絞ロールで加圧する手段をあげることができる。前記加圧によって基布とシートが一体化し、合成樹脂レザーが得られる。
【0023】
上記の接着剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、ポリ塩化ビニルペースト、二液型ポリウレタン接着剤、エポキシ系接着剤などが用いられる。この接着剤は、基布面に塗布しても、またシート面に塗布してもよい。
【0024】
請求項3に係る合成樹脂レザーによれば、たて方向とよこ方向の伸びが夫々、20%モジュラス(JISK6772に準ずる)で10〜25N/3cmの範囲内であり、また、たて方向とよこ方向の伸びの平均が、20%モジュラス(JISK6772に準ずる)で15〜20N/3cmの範囲内であり、たて方向とよこ方向の伸びの差が小さく、且つその伸びが適度な範囲内であることから、前記したように、極めて優れた風合いを発現して、従来の軟質ポリ塩化ビニルレザーと同等若しくはそれ以上の品質をもつ合成樹脂レザーを提供できた。
【0025】
本願の請求項4に係る合成樹脂レザーは、前記基布が窒素−リン系難燃剤を用いて難燃加工され、前記合成樹脂層がリン酸エステル系難燃剤を含有したことを特徴とする。
【0026】
基布を難燃加工するにあたり、一般的なリン系難燃剤を用いた場合、前記難燃規格をクリアすることは出来ない。また、本発明で用いる上記の窒素−リン系難燃剤は、縮合リン酸アンモニウム、縮合リン酸メラミン、縮合リン酸アミドアンモニウム及びリン酸カルバメートから選ばれた難燃剤が好ましい。
合成樹脂層に含有する難燃剤として、ハロゲン系やアンチモン系の難燃剤は安全性などの面で忌避されており、安全面、コスト、難燃効果等を考慮すると、リン酸エステル系難燃剤が好ましく用いられる。
【0027】
本願の請求項4によれば、基布と合成樹脂層の双方に対し高い難燃性が付与されるので、自動車用内装材の難燃規格(FMVSS 302、JIS D 1201など)をクリアすることが可能な、難燃性に極めて優れた合成樹脂レザーを得ることが出来る。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
図1(イ)に示す合成樹脂レザーAは、基布1の片面に合成樹脂層2を接合したもので、基布1は、第一の糸3と第二の糸4を交編した両面編メリヤスからなる。
【0029】
第一の糸3は、綿、(ビスコース)レーヨン、麻、キュプラ、アセテートなどのセルロース系繊維の単独、又はこれらセルロース系繊維とポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタンなどとの混紡のうちの一種の10〜40番手の糸であって、伸び難く太くて腰があり、合成樹脂レザーAに所定の厚み(0.9mm〜1.1mm)を持たせて、合成樹脂レザーAに良好な風合いを発現させることができる。
前記セルロース系繊維の単独又は混紡のうちの一種の糸であっても、10番手未満のものでは太すぎ伸び自体も小さいので、基布1が厚く硬くなって自然な柔らかさ,しなやかさが損なわれるため好ましくない。また、40番手を超えるものでは細すぎて腰が無くなり、基布1の自然な柔らかさ,しなやかさが損なわれるため好ましくない。
セルロース系繊維は燃焼時に溶融せずに炭化するため、合成樹脂レザーの燃焼性、難燃性の改善に有用である。
合成樹脂レザーAに良好な風合いを発現させるには、セルロース系繊維とポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタンなどとの混紡であることが好ましい。この場合、燃焼性、難燃性の改善の点から、セルロース系繊維が20%以上含まれることが好ましい。
【0030】
第二の糸4は、長繊維の捲縮(ウーリー)加工糸、熱可塑性エラストマー長繊維、ポリウレタン長繊維のうちの一種の50〜300デニールの糸であって、伸び易く、第一の糸3との交編により、基布1のたて方向とよこ方向の伸びの差を小さくすることができる。
長繊維の捲縮加工糸、熱可塑性エラストマー長繊維、ポリウレタン長繊維のうちの一種であっても、50デニール未満のものでは細すぎ、引張強度が低下するための好ましくない。また、300デニールを超えるものでは太すぎ、伸び率が低下するため好ましくない。
長繊維の捲縮加工糸の素材としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどがあるが、腰があり合成樹脂レザーに良好な風合いを与えるものとして、ポリエステル(その中でも、ポリエチレンテレフタレート)を好ましく用いることができる。
第二の糸4がセルロース系繊維を含むと充分な伸びが得られないため、好ましくない。
【0031】
基布1は、前記第一の糸3と第二の糸4を交編し、且つ、第一の糸3で形成されるループ5により、第二の糸4で形成されるループ6を囲むよう両面編メリヤスに編み上げて、第二の糸4で形成されるループ6が基布1のたて方向、よこ方向、表裏において連続しないよう編成されている。
【0032】
図2には、第一の糸3と第二の糸4の本数比が1:1であり、第一の糸3で形成されるループ5,5’と、第二の糸4で形成されるループ6,6’が、基布1のたて方向、よこ方向、表裏において交互に位置するよう形成されている例を示す。
尚、図中の符号5,6は基布1の表面側に形成されたループ、符号5’,6’は裏面側に形成されたループを夫々表している。また、図示の都合上、表裏のループ5,5’、6,6’で糸3,4の太さを変えているが、実際には同じ太さであることは言うまでもない。
【0033】
図3には、第一の糸3と第二の糸4の本数比が2:1であり、第一の糸3で形成されるループ5,5’が、基布1のたて方向において二個連続するよう形成されている例を示す。
【0034】
図4には、第一の糸3と第二の糸4の本数比が3:1であり、第二の糸4で形成されるループ6,6’が、基布1のたて方向、よこ方向において一列ごとに形成されている例を示す。
【0035】
合成樹脂層2は、熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%とアクリル系軟質樹脂50〜5重量%との混合樹脂層であることが好ましい。
【0036】
本発明で用いる熱可塑性ポリウレタンは、ジイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を2個以上有する化合物とを反応させて得ることができる。中でも、長鎖ポリオール、ジイソシアネート、鎖伸長剤から構成された、いわゆるソフトセグメントとハードセグメントからなるポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が好ましく使用できる。これらはショアA硬度で65〜90の樹脂硬度、特に70〜80の樹脂硬度を有するものが好ましい。なお、本発明におけるショアA硬度は、ASTM D 2240で測定した値(測定温度23℃)である。
【0037】
熱可塑性ポリウレタンを合成するためのジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソイアネートなどが用いられる。
【0038】
また、ヒドロキシル基を2個以上有する化合物としては、アジピン酸、フタル酸等の二塩基酸とエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコールとの縮合反応物であるポリエステル系ポリオール;エチレンカーボネート等のカーボネートとグリコーとの反応物であるポリカーボネート系ポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール等のポリエーテル系ポリオール等が用いられる。本発明の合成樹脂レザーにおいては、その物性からポリエーテル系ポリオールを用いるのが好ましい。また、ポリエーテル系ポリオールを原料とする熱可塑性ポリウレタンは、耐老化性、カレンダー加工性が良いので、この観点からも好ましい。
【0039】
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ブタン1,2ジオール、ブタン1,3ジオール、ブタン1,4ジオール、ブタン2,3ジオール、ヘキサンジオールなどの低分子多価アルコール、或いはジアミン、水が用いられる。
【0040】
本発明で用いるアクリル系軟質樹脂は、常温で軟質ポリ塩化ビニルの如く柔軟性を示す樹脂である。このアクリル系軟質樹脂には、硬度がショアAで50〜80のもの、なかんずく55〜65のものが好ましく用いられる。このアクリル系軟質樹脂は、多層構造重合体、すなわち2種以上のアクリル系重合体がコア−シェル型の多層構造を形成している粒子状の重合体が好ましい。これらのアクリル系軟質樹脂は、常温で良好な柔軟性を示し、屈曲耐久性を有し、耐候性に優れている。
【0041】
本発明で用いるアクリル系軟質樹脂の一例を示す。炭素数1〜12のアルキル基を持つ少なくとも一種のアクリル酸アルキルエステル30〜99.9重量%、炭素数1〜8のアルキル基を持つ少なくとも一種のメタクリル酸アルキルエステル0〜70重量%、共重合可能な不飽和単量体0〜30重量%、多官能架橋性単量体及び/又は多官能性グラフト単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物を重合してなるTgが30℃以下である少なくとも1層の重合体層[A]10〜90重量部と、炭素数1〜12のアルキル基を持つ少なくとも一種のアクリル酸アルキルエステル30〜99重量%、炭素数1〜8のアルキル基を持つ少なくとも一種のメタクリル酸アルキルエステル1〜70重量%、共重合可能な不飽和単量体0〜30重量%からなる単量体混合物を重合してなるTgが−20〜50℃である少なくとも1層の重合体層[B]90〜10重量部との組合せからなる多層構造重合体であり、且つ最外層が重合体層[B]であるアクリル系軟質多層構造樹脂である(特開平6−263828号参照)。
【0042】
アクリル系軟質樹脂の他の例を示す。炭素数1〜8のアルキル基を持つアクリル酸アルキルエステル60〜99.5重量%、共重合可能ビニル基を1個有する単官能性単量体0〜39.5重量%、及びビニル基又はビニリデン基を少なくとも2個有する多官能性単量体0.5〜5重量%を重合して得られるゴム層30〜80重量部と、メタアクリル酸メチル40〜100重量%、炭素数1〜8のアルキル基を持つアクリル酸アルキルエステル0〜60重量%、及び共重合可能なビニル基又はビニリデン基を有する単量体0〜20重量%を重合して得られる硬質樹脂層20〜70重量部とから構成され、且つ最外層が硬質樹脂層であるアクリル系軟質多層構造樹脂である(特開平9−100385号参照)。
【0043】
更に、アクリル系軟質樹脂の他の例を示す。(A)メチルメタクリレート80〜98.99重量%、炭素数1〜8のアルキル基を持つアクリル酸アルキルエステル1〜20重量%、多官能性グラフト剤0.01〜1重量%及び多官能性架橋剤0〜0.5重量%からなる単量体混合物を重合してなる最内層の硬質重合体層5〜30重量部;(B)炭素数1〜8のアルキル基を持つアクリル酸アルキルエステル70〜99.5重量%、メチルメタクリレート0〜30重量%、多官能性グラフト剤0.5〜5重量%及び多官能性架橋剤0〜5重量%からなる単量体混合物を重合してなる中間層の硬質重合体層20〜45重量部;(C)メチルメタクリレート90〜99重量%及び炭素数1〜8のアルキル基を持つアクリル酸アルキルエステル10〜1重量%からなる単量体混合物を重合してなる最外層の硬質重合体層50〜75重量部からなり、平均粒度が0.01〜0.3μmのアクリル系軟質多層構造樹脂である(特開平11−71437号参照)。
【0044】
本発明の合成樹脂レザーにおいては、熱可塑性ポリウレタンとアクリル系軟質樹脂との配合割合は、熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%、アクリル系軟質樹脂60〜5重量%、好ましくは熱可塑性ポリウレタン60〜90重量%、アクリル系軟質樹脂40〜10重量%、より好ましくは熱可塑性ポリウレタン70〜90重量%、アクリル系軟質樹脂30〜10重量%である。熱可塑性ポリウレタンが50重量%未満では引裂強度が十分でなく、縫い目が広がったり、裂けやすく、一方熱可塑性ポリウレタンが95重量%を越えると硬い感触となりレザーとしての使用に適さなくなり、またカレンダー加工の加工温度が高くなり分解する支障がある。
【0045】
上記混合樹脂層に可塑剤を配合すると、製品の柔軟性、手触りを改善できる。また、可塑剤の配合は混合樹脂のカレンダー加工の加工温度を下げることができ、そのため熱可塑性ポリウレタンの加工時の分解を抑制できる。
また、リン酸エステル系の可塑剤は難燃剤の作用があるものもあり、その場合は可塑剤と難燃剤とを兼ねたものとして使用してもよい。
可塑剤としては、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、フタル酸イソブチル、フタル酸ジイソデシルなどのフタル酸エステル;トリメリット酸トリ−2エチルヘキシルなどのトリメリット酸エステル;ジ−2エチルヘキシルアジペート、ジ−イソノニルアジペート、ジ−2エチルヘキシルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチルなどのエポキシ系可塑剤、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル系、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステルなどが用いられる。このうち、可塑化効率が高く、且つブリード等の問題が少ないという観点から、特に、フタル酸エステル、トリメリット酸エステルなどの芳香族カルボン酸エステルが好ましく用いられる。可塑剤の配合量は、混合樹脂100重量部に対し0〜50重量部、好ましくは3〜20重量部である。大量に配合すると移行、ブリードを起こすので好ましくない。
【0046】
上記混合樹脂層には、更に必要に応じて、通常合成樹脂の配合に使用される滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、抗菌剤などが配合されていてもよい。滑剤としてはステアリン酸のカルシウム、マグネシウム、亜鉛、バリウムなどの脂肪族金属塩、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、アルキレンビス脂肪酸アミドなどが用いられる。紫外線吸収剤としては2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が用いられる。光安定剤としてはビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン系光安定剤等が用いられる。抗菌剤としては銀系無機抗菌剤などが用いられる。
【0047】
上記混合樹脂層はショアA硬度60〜80を有するものが好ましい。この硬度は、ショアA硬度65〜90の熱可塑性ポリウレタンとショアA硬度50〜80のアクリル系軟質樹脂とを使用することによって得ることができる。そして、この硬度にすることによって、ポリ塩化ビニル100重量部に可塑剤(フタル酸ジエチルヘキシル)を70〜100重量部配合した軟質ポリ塩化ビニル層を有するレザーと同様な柔軟さ、手触り、感触を有するレザーが得られる。
【0048】
上記混合樹脂層からなる混合樹脂シート(合成樹脂層2)と基布1の接着には、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、ポリ塩化ビニルペースト、二液型ポリウレタン接着剤などが用いられる。この接着剤は、基布面に塗布しても、また混合樹脂シート面に塗布してもよい。基布とポリプロピレンフォームシート、及びポリプロピレンフォームシートと混合樹脂シートを接着させるために、ポリプロピレンフォームシートの積層面にポリウレタン系プライマー層又はエポキシ系樹脂プライマー層などの接着性を良くするためのプライマー層を設けてもよい。
【0049】
本例の合成樹脂レザーAは、自動車などの内装材(座席、ヘッドレスト、トノカバー、サンバイザー、天井など)、室内の内装材、二輪車のサドルの表皮材、家具(椅子、ソファーなど)の表皮材、バッグなど袋物の素材、カッパ、前掛けなどに用いることができる。また基布1の両面に混合樹脂層(合成樹脂層2)を設けたものはフレキシブルコンテナーの材料に用いることができる。
【0050】
また、本例の合成樹脂レザーAは、図2〜図4に示すように、第一の糸3のループ5により第二の糸4のループ6を囲むよう両面編メリヤスに編み上げ、第二の糸のループ4が基布1のたて方向、よこ方向、表裏において連続しないよう構成したので、難燃性にも優れた特性を有する。
その中でも、第一の糸3と第二の糸4の本数比が1:1であり、且つ第一の糸のループ5と、第二の糸のループ6が、基布1のたて方向、よこ方向、表裏において交互に位置するよう形成されている図2に示す編み方のものが、たて方向とよこ方向の伸びの差が小さくレザーの風合いに優れ、且つ、難燃性にも優れた結果が得れらる。
【0051】
基布1は難燃加工することがより好ましい。基布1の難燃加工は、基布に窒素−リン系難燃剤の分散液又は溶液を付着させた後、加熱乾燥して難燃剤を基布に固着させることにより行う。混合液の基布への付着は浸漬、塗布、噴霧などで行う。
窒素−リン系難燃剤としては縮合リン酸アンモニウム、縮合リン酸メラミン、縮合リン酸アミドアンモニウム及びリン酸カルバメートから選ばれた一種又は二種以上の難燃剤が好ましく用いられる。特に、リン酸カルバメートは基布への固着性がよく、後述する合成樹脂のエマルジョンや水溶液を併用しなくても耐久性ある堅牢な難燃加工が行える。分散液や溶液の調製はアセトン、イソプロピルアルコール、水などが用いられる。
【0052】
また、上記の難燃加工に当り、窒素−リン系難燃剤と合成樹脂のエマルジョン又は水溶液との混合液を用いてもよい。合成樹脂のエマルジョン又は水溶液を併用することによって、難燃加工の耐久・堅牢性を助長できるが、難燃性そのものは低下する傾向がある。合成樹脂のエマルジョン又は水溶液としては、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体、これらの単量体とアクリル酸、酢酸ビニルなどの他のビニル系単量体との共重合体、これらの単量体とエチレンなどのオレフィン系単量体との共重合体、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、スチレン−ブタジエン系ゴムなどのエマルジョン又は水溶液が用いられる。混合液中の合成樹脂(固形分)と難燃剤との割合は、合成樹脂100質量部に対し難燃剤5〜100質量部である。
有するレザーが得られる。
【0053】
また、合成樹脂層2には、合成樹脂レザーAの難燃性を高めるために、リン酸エステル系難燃剤を含有させるのがより好ましい。リン酸エステル系難燃剤としてはトリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールジホスフェート、芳香族縮合リン酸エステルなどが挙げられるが、分子量350未満では、揮発性が高く車輌内装材には不適なため、分子量350以上のものを用いる。縮合型の高分子量リン酸エステルは難燃性がやや劣るので、分子量350〜500程度の芳香族リン酸エステルが好ましい。また、窒素系難燃剤を併用してもよい。窒素系難燃剤としてはメラミンシアヌレート、ジアミンジアミド、ヒドラゾジカルボンアミド、メラミン、ベンゾグアナミンなどが挙げられる。
【0054】
図1(ロ)は、基布1と合成樹脂層2の間に発泡性合成樹脂シート3を挟んで接着積層し、その後発泡性合成樹脂シート3を発泡させ、発泡合成樹脂レザーA’としたものである。この発泡性合成樹脂シート3にも、前述のリン酸エステル系難燃剤を含有させる、若しくは窒素系難燃剤を併用して、難燃性を高めることが好ましい。
【0055】
【実施例】
次に実施例、比較例を示し、本発明を更に詳しく説明する。
(実施例1〜3)
合成樹脂層として、熱可塑性ポリウレタン(UHE−75A:三菱化学株式会社製、特殊エーテル系ポリオールを使用したポリウレタン、ショアA硬度77)80重量部、アクリル系軟質樹脂(SA−1000P:株式会社クラレ製、ショアA硬度70)20重量部、メタクリル酸メチル−アクリル酸アルキル共重合体(メタブレンP−530A:三菱レイヨン株式会社製)5重量部、炭酸カルシウム(NS−A:日東粉化工業社製)10重量部、抗酸化剤(PEP−36:旭電化工業株式会社製)0.3重量部、滑剤(ポリエチレンワックス)0.5重量部、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系)0.7重量部、光安定剤(HALS)0.3重量部、及び顔料を微量で配合し、カレンダー成形によって厚さ0.25mmのシートを成形した。
この混合樹脂シート(合成樹脂層2)に、第一の糸3として、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)65%とレーヨン35%を混紡した20番手の糸を用い、第二の糸4として、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)長繊維のウーリー加工糸の150デニールのものを用い、これらの交編で、且つ図2に示す両面編メリヤスの基布1を接合して得られた合成樹脂レザーを実施例1、図3に示す両面編メリヤスの基布1を接合して得られた合成樹脂レザーを実施例2、図4に示す両面編メリヤスの基布1を接合して得られた合成樹脂レザーを実施例3とした。
【0056】
(比較例1)
図5に示す基布1’を用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして合成樹脂レザーを得た。
この基布1’は、前記した第一の糸3と第二の糸4を交編し、且つ第二の糸のループ6,6’が、基布1’のよこ方向、表裏において連続するよう構成したものである。
【0057】
(比較例2)
前記した第一の糸3のみを用いて両面編メリヤスに編み上げた基布を用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして合成樹脂レザーを得た。
【0058】
(比較例3)
前記した第二の糸4のみを用いて天竺編に編み上げた基布を用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして合成樹脂レザーを得た。
【0059】
これら実施例、比較例の合成樹脂レザーについて、燃焼性、たて方向とよこ方向の伸び、柔軟性、縫い目の広がり状態、風合い(官能評価)、シートアッセンブリ時の作業性について試験を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 0004230293
【0061】
表1において、燃焼性は、合成樹脂レザーを、合成樹脂層を下にして水平に保持した状態で着火した際、燃えながら垂れ下がって燃え上がったものを×、垂れ下がることなく静かに燃えたものを○として評価した。
【0062】
たて方向とよこ方向の引張強度は、JIS K 6772に準ずる20%モジュラス試験(20%伸長時の引張強度)を測定した。
【0063】
柔軟性は、製造した各レザーを手で触り、その感触を軟質ポリ塩化ビニルレザー(合成樹脂層がポリ塩化ビニル100重量部に可塑剤フタル酸ジエチルヘキシル100重量部配合したポリ塩化ビニル組成物であるレザー)と対比して評価した。○は軟質ポリ塩化ビニルレザーと同等の感触を有する、×は感触が硬く軟質ポリ塩化ビニルレザーの代替不可、を表す。
【0064】
縫い目の広がり状態は、各レザーを使用してJASO M403−83の縫い目疲労試験に準じて試験を行ない、その縫い目の状態を目視で観察した。○は縫い目が広がらない、×は縫い目が拡がり商品性がない、を表す。
【0065】
風合いは、実施例、比較例の合成樹脂レザーを自動車用座席の表皮材として用い、その使用感を軟質ポリ塩化ビニルレザー(合成樹脂層がポリ塩化ビニル100重量部に可塑剤フタル酸ジエチルヘキシル100重量部配合したポリ塩化ビニル組成物であるレザー)と対比して評価した。○は軟質ポリ塩化ビニルレザーと同等の風合いを有するもの、×は軟質ポリ塩化ビニルレザーよりやや風合いに劣るものを表す。
【0066】
シートアッセンブリ時の作業性は、座席状に縫製してアッセンブリ作業を行い、皺が生じなかったものを○、皺が生じたものを×とした。
【0067】
以上の試験結果から、本発明に係る合成樹脂レザーが、たて方向とよこ方向の伸びの差が小さく、且つ所定の厚みを持ち、風合いが良好であると共に、シートアッセンブリ作業を効率良く行え、しかも、難燃性を備えた新規な合成樹脂レザーであることが確認できた。またこの中でも、図2の基布1を用いた実施例1の合成樹脂レザーが、特に好適であることが確認できた。
【0068】
これに対し、比較例1の合成樹脂レザーは、第二の糸のループ6,6’が基布1’のよこ方向、表裏において連続するため、難燃性に劣ることが確認された。比較例2の合成樹脂レザーは、第一の糸3のみからなる基布を用いたので、たて方向とよこ方向の伸びの差が大きく、且つ伸びに対する応力が大きいため柔軟性に劣ることが確認できた。
比較例3の合成樹脂レザーは、第二の糸のみからなる基布を用いたので、たて方向とよこ方向の伸びの差が大きく、縫い目が広がり商品性がないと共に、厚みが足りないため風合いに欠けることが確認できた。
【0069】
また、上記各実施例、比較例において、第一の糸3,第二の糸4の素材を〔0024〕、〔0025〕中に記載のものと代えた場合も、表1と同様の結果が得られた。
また、難燃性、たて方向とよこ方向の伸びとその平均、厚みについては、合成樹脂層に軟質ポリ塩化ビニルレザーを用いた場合も、表1と同様の結果が得られた。
【0070】
(実施例4〜6)
前述した実施例1〜3において、丸菱油化工業社製のノンネン109(リン酸カルバメートをイソプロピルアルコール/水に分散させた窒素−リン系難燃剤)を用いて難燃加工した基布と、リン酸エステル系難燃剤を含有した合成樹脂層を積層一体化した合成樹脂レザーを実施例4〜6とした。
これら実施例4〜6の合成樹脂レザーに対し、JIS D 1201に準ずる燃焼試験によって自動車の内装材としての難燃性を評価したところ、燃焼速度100mm/min未満であって、自動車の内装材としての難燃性をクリアできることが確認できた。
また、特に基布が硬くなるようなことは無く、柔軟性は実施例1〜3と変わらないことが確認できた。
【0071】
(比較例4〜6)
前述した実施例1〜3において、丸菱油化工業社製のノンネンR023−4(リン系難燃剤)を用いて難燃加工した基布を用いたものを比較例4〜6とした。これら比較例4〜6の合成樹脂レザーに対し、JIS D 1201に準ずる燃焼試験によって自動車の内装材としての難燃性を評価したところ、燃焼速度100mm/min以上であって、自動車の内装材としての難燃性をクリアできないことが確認できた。
【0072】
以上、本発明に係る実施形態の例を図面、実施例を参照して詳述したが、本発明はこれら図示例、実施例などに限定されず、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において種々の変更が可能であることは言うまでも無い。
【0073】
【発明の効果】
本発明に係る合成樹脂レザーは以上説明したように構成したので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0074】
(請求項1)
伸び難く太く腰がある第一の糸と伸び易い第二の糸を交編して両面編メリヤスとした基布を用いることで、たて方向とよこ方向の伸びの差が小さく、所定の厚みを持ち、自然な柔らかさ、しなやかさを持つ風合いの良好な合成樹脂レザーを提供できた。さらに、第二の糸のループが基布のたて方向、よこ方向、表裏において連続しないようにし、発火等により第二の糸のループが溶融したとしても、これと隣り合う第一の糸(高融点の糸)のループが炭化してレザーの溶融、破断を防止するので、難燃性を兼ね備え、さらに、シートアッセンブリ時の皺の発生を防止して縫製作業性を良好ならしめる新規な合成樹脂レザーを提供できた。
【0075】
(請求項2)
第一の糸のループと第二の糸のループが、基布のたて方向、よこ方向、表裏において交互に位置する構成としたので、請求項1による効果をより実効あるものとした合成樹脂レザーを提供できた。
【0076】
(請求項3)
本願出願人による先提案の合成樹脂レザー(特開2003−166181号)に係る混合樹脂層と、前記請求項1、2に係る基布とを組み合わせた構成としたので、これら両者による相乗効果により、軟質ポリ塩化ビニルレザーと同等の風合いを有し、且つ難燃性にも優れた新規な合成樹脂レザーを得ることができた。
【0077】
(請求項4)
基布を窒素−リン系難燃剤により難燃加工すると共に、合成樹脂層にリン酸エステル系難燃剤を含有して、基布及び合成樹脂層の双方に難燃性を付与したので、自動車用内装材、自動車用座席の表皮材としても好適に使用し得る極めて難燃性の高い合成樹脂レザーを提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る合成樹脂レザーの実施形態の一例を示す縦断面図。
【図2】本発明に係る合成樹脂レザーの実施形態の一例における基布の編み方を示す概念図。
【図3】基布の編み方の他例を示す概念図。
【図4】基布の編み方の他例を示す概念図。
【図5】基布の編み方の比較例を示す概念図。
【符号の説明】
1:基布
2:合成樹脂層
3:第一の糸
4:第二の糸
5,5’:第一の糸のループ
6,6’:第二の糸のループ

Claims (4)

  1. 交編された両面編メリヤスからなる基布と、該基布の少なくとも片面に接合された合成樹脂層からなる合成樹脂レザーであって、
    前記基布が、セルロース系繊維の単独又は混紡のうちの一種の10〜40番手である第一の糸と、長繊維の捲縮加工糸、熱可塑性エラストマー長繊維、ポリウレタン長繊維のうちの一種の50〜300デニールである第二の糸とを交編し、且つ、前記第一の糸で形成されるループにより前記第二の糸で形成されるループを囲むよう両面編メリヤスに編み上げて、前記第二の糸で形成されるループが基布のたて方向、よこ方向、表裏において連続しないよう構成したことを特徴とする合成樹脂レザー。
  2. 前記第一の糸と第二の糸の本数比が1:1であり、且つ第一の糸で形成されるループと、第二の糸で形成されるループが、基布のたて方向、よこ方向、表裏において交互に位置するよう形成されている請求項1記載の合成樹脂レザー。
  3. 前記合成樹脂層が、ショアA硬度65〜90の熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%とショアA硬度50〜80のアクリル系軟質樹脂50〜5重量%との混合樹脂層であり、且つ該混合樹脂層のショアA硬度が60〜80である請求項1又は2記載の合成樹脂レザー。
  4. 前記基布が窒素−リン系難燃剤を用いて難燃加工され、前記合成樹脂層がリン酸エステル系難燃剤を含有した請求項1〜3のいずれか1項記載の合成樹脂レザー。
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