JP4190236B2 - 合成樹脂レザー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンとアクリル系軟質多層構造樹脂との混合樹脂を用いた合成樹脂レザーに関する。
【0002】
【従来技術】
自動車の車両内装材、袋物素材、家具の表皮材などに用いる合成樹脂レザーは、柔軟で強度を持つことが要求されるが、従来は、織物、編物又は不織布、或はポリオレフィンフォームなどのシート基材の表面に軟質ポリ塩化ビニル層を形成させたものが一般的である。この軟質ポリ塩化ビニルは様々な硬さのものがあって、一般的なフィルム用途の場合はポリ塩化ビニル100重量部に可塑剤(フタル酸ジエチルヘキシル)を30〜50重量部配合した硬さのものであるが、レザーに用いる場合は可塑剤を70〜100重量部配合したときの硬さのもの、すなわち相当に軟らかいものが求められている。ところで、近年リサイクル問題で、軟質ポリ塩化ビニルに替えて、ランダムポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル樹脂、水素添加スチレンブタジエンラバーなどを用いたポリオレフィン系樹脂レザーが提案されている。
【0003】
しかし、ポリオレフィン系レザーは、軟質ポリ塩化ビニルレザーに比し、表面が傷付き易いこと、高周波ウェルダー性がないこと、軟らかさが不充分であるなどの問題点があり、更に難燃性に劣るためリン酸系や硼酸系の難燃剤を配合しないと規制に耐える難燃性を持たないという問題点がある。そこで、本出願人は先に柔軟性があり、耐表面傷付き性に優れ、高周波ウェルダーで溶着加工が行なえる合成樹脂レザーとして、基材の少なくとも片面にアクリル系軟質樹脂層を設けてなるアクリル系樹脂レザーを提案した(特許文献1参照)。このアクリル系樹脂レザーは、従来の軟質ポリ塩化ビニルレザーに代替できる合成樹脂レザーとして優れているが、ミシンなどで縫製したとき、縫い目が広がったり、縫い目から裂け易いという問題点を有することを知った。また、熱可塑性ポリウレタンレザーも知られているが、これはゴムライクで反発性が強く、軟質ポリ塩化ビニルのような遅延弾性による自然な軟らかさがないので感触が劣る。また、軟らかさを出すためには可塑剤を大量に配合する必要があり、可塑剤の移行、ブルームなどの問題があり、またカレンダー加工性が低い。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−155477号公報
【特許文献2】
特開平6−263828号公報
【特許文献3】
特開平9−100385号公報
【特許文献4】
特開平11−71437号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、上記のアクリル系樹脂レザーの優れた性質を損なうことなく、引裂強度が高く、ミシンなどで縫製したときに、縫い目が広がったり、縫い目から裂け易い欠点を解消した合成樹脂レザーを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、織物、編物又は不織布或は軟質発泡体シートの少なくとも片面に、ショアA硬度65〜90の熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%とショアA硬度50〜80のアクリル系軟質多層構造樹脂50〜5重量%との混合樹脂層を設けてなり、且つ混合樹脂層のショアA硬度が60〜80であることを特徴とする合成樹脂レザーである。
【0007】
また、本発明は、ショアA硬度65〜90の熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%とショアA硬度50〜80のアクリル系軟質多層構造樹脂50〜5重量%との混合樹脂をカレンダー加工してシートに成形し、該シートと織物、編物又は不織布或は軟質発泡体シートとを積層一体化することを特徴とする上記の合成樹脂レザーの製造方法である。このカレンダー加工を円滑にするために、混合樹脂に(メタ)アクリル系重合体を配合したり、炭酸カルシウムを配合してもよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の合成樹脂レザーは、基材の少なくとも片面に、熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%とアクリル系軟質多層構造樹脂50〜5重量%との混合樹脂層を設けた合成樹脂レザーである。上記の基材としては、織物、編物又は不織布が用いられる。これらの編織物の素材はポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、綿、レーヨン、これらの混紡糸などである。編物としては、両面編物、天竺編物などであり、織物としては、平織物、綾織物、朱子織物などである。また基材には軟質発泡体シートを用いることもできる。この軟質発泡体シートは、ポリプロピレンフォーム、電子線架橋したポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム、電子線架橋したポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォームなどである。また基材には織物、編物又は不織布と軟質発泡体シートとの積層物を用いることもできる。この場合は、織物、編物又は不織布−軟質発泡体シート−混合樹脂層の構成を採るのが好ましい。
【0009】
本発明で用いる熱可塑性ポリウレタンは、ジイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を2個以上有する化合物とを反応させて得ることができる。中でも、長鎖ポリオール、ジイソシアネート、鎖伸長剤から構成された、いわゆるソフトセグメントとハードセグメントからなるポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が好ましく使用できる。これらはショアA硬度で65〜90の樹脂硬度、特に70〜80の樹脂硬度を有するものが好ましい。なお、本発明におけるショアA硬度は、ASTM D 2240で測定した値(測定温度23℃)である。
【0010】
熱可塑性ポリウレタンを合成するためのジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソイアネートなどが用いられる。
【0011】
また、ヒドロキシル基を2個以上有する化合物としては、アジピン酸、フタル酸等の二塩基酸とエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコールとの縮合反応物であるポリエステル系ポリオール;エチレンカーボネート等のカーボネートとグリコーとの反応物であるポリカーボネート系ポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール等のポリエーテル系ポリオール等が用いられる。本発明の合成樹脂レザーにおいては、その物性からポリエーテル系ポリオールを用いるのが好ましい。また、ポリエーテル系ポリオールを原料とする熱可塑性ポリウレタンは、耐老化性、カレンダー加工性が良いので、この観点からも好ましい。
【0012】
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ブタン1,2ジオール、ブタン1,3ジオール、ブタン1,4ジオール、ブタン2,3ジオール、ヘキサンジオールなどの低分子多価アルコール、或いはジアミン、水が用いられる。
【0013】
本発明で用いるアクリル系軟質多層構造樹脂は、常温で軟質ポリ塩化ビニルの如く柔軟性を示す樹脂である。このアクリル系軟質多層構造樹脂には、硬度がショアAで50〜80のもの、なかんずく55〜65のものが好ましく用いられる。この本発明で用いるアクリル系軟質多層構造樹脂は、2種以上のアクリル系重合体がコア−シェル型の多層構造を形成している粒子状の重合体である。これらのアクリル系軟質多層構造樹脂は、常温で良好な柔軟性を示し、屈曲耐久性を有し、耐候性に優れている。
【0014】
本発明で用いるアクリル系軟質多層構造樹脂の一例を示す。炭素数1〜12のアルキル基を持つ少なくとも一種のアクリル酸アルキルエステル30〜99.9重量%、炭素数1〜8のアルキル基を持つ少なくとも一種のメタクリル酸アルキルエステル0〜70重量%、共重合可能な不飽和単量体0〜30重量%、多官能架橋性単量体及び/又は多官能性グラフト単量体0.1〜10重量%からなる単量体混合物を重合してなるTgが30℃以下である少なくとも1層の重合体層[A]10〜90重量部と、炭素数1〜12のアルキル基を持つ少なくとも一種のアクリル酸アルキルエステル30〜99重量%、炭素数1〜8のアルキル基を持つ少なくとも一種のメタクリル酸アルキルエステル1〜70重量%、共重合可能な不飽和単量体0〜30重量%からなる単量体混合物を重合してなるTgが−20〜50℃である少なくとも1層の重合体層[B]90〜10重量部との組合せからなる多層構造重合体であり、且つ最外層が重合体層[B]であるアクリル系軟質多層構造樹脂である(特許文献2参照)。
【0015】
アクリル系軟質多層構造樹脂の他の例を示す。炭素数1〜8のアルキル基を持つアクリル酸アルキルエステル60〜99.5重量%、共重合可能ビニル基を1個有する単官能性単量体0〜39.5重量%、及びビニル基又はビニリデン基を少なくとも2個有する多官能性単量体0.5〜5重量%を重合して得られるゴム層30〜80重量部と、メタアクリル酸メチル40〜100重量%、炭素数1〜8のアルキル基を持つアクリル酸アルキルエステル0〜60重量%、及び共重合可能なビニル基又はビニリデン基を有する単量体0〜20重量%を重合して得られる硬質樹脂層20〜70重量部とから構成され、且つ最外層が硬質樹脂層であるアクリル系軟質多層構造樹脂である(特許文献3参照)。
【0016】
更に、アクリル系軟質多層構造樹脂の他の例を示す。(A)メチルメタクリレート80〜98.99重量%、炭素数1〜8のアルキル基を持つアクリル酸アルキルエステル1〜20重量%、多官能性グラフト剤0.01〜1重量%及び多官能性架橋剤0〜0.5重量%からなる単量体混合物を重合してなる最内層の硬質重合体層5〜30重量部;(B)炭素数1〜8のアルキル基を持つアクリル酸アルキルエステル70〜99.5重量%、メチルメタクリレート0〜30重量%、多官能性グラフト剤0.5〜5重量%及び多官能性架橋剤0〜5重量%からなる単量体混合物を重合してなる中間層の硬質重合体層20〜45重量部;(C)メチルメタクリレート90〜99重量%及び炭素数1〜8のアルキル基を持つアクリル酸アルキルエステル10〜1重量%からなる単量体混合物を重合してなる最外層の硬質重合体層50〜75重量部からなり、平均粒度が0.01〜0.3μmのアクリル系軟質多層構造樹脂である(特許文献4参照)。
【0017】
本発明の合成樹脂レザーにおいては、熱可塑性ポリウレタンとアクリル系軟質多層構造樹脂との配合割合は、熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%、アクリル系軟質多層構造樹脂50〜5重量%、好ましくは熱可塑性ポリウレタン60〜90重量%、アクリル系軟質多層構造樹脂40〜10重量%、より好ましくは熱可塑性ポリウレタン70〜90重量%、アクリル系軟質多層構造樹脂30〜10重量%である。熱可塑性ポリウレタンが50重量%未満では引裂強度が十分でなく、縫い目が広がったり、裂けやすく、一方熱可塑性ポリウレタンが95重量%を越えると硬い感触となりレザーとしての使用に適さなくなり、またカレンダー加工の加工温度が高くなり分解する支障がある。
【0018】
混合樹脂層に可塑剤を配合すると、製品の柔軟性、手触りを改善できる。また、可塑剤の配合は混合樹脂のカレンダー加工の加工温度を下げることができ、そのため熱可塑性ポリウレタンの加工時の分解を抑制できる。可塑剤としては、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、フタル酸イソブチル、フタル酸ジイソデシルなどのフタル酸エステル;トリメリット酸トリ−2エチルヘキシルなどのトリメリット酸エステル;ジ−2エチルヘキシルアジペート、ジ−イソノニルアジペート、ジ−2エチルヘキシルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチルなどのエポキシ系可塑剤、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル系、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステルなどが用いられる。このうち、可塑化効率が高く、且つブリード等の問題が少ないという観点から、特に、フタル酸エステル、トリメリット酸エステルなどの芳香族カルボン酸エステルが好ましく用いられる。可塑剤の配合量は、混合樹脂100重量部に対し0〜50重量部、好ましくは3〜20重量部である。大量に配合すると移行、ブリードを起こすので好ましくない。
【0019】
混合樹脂層には、更に必要に応じて、通常合成樹脂の配合に使用される滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、抗菌剤などが配合されていてもよい。滑剤としてはステアリン酸のカルシウム、マグネシウム、亜鉛、バリウムなどの脂肪族金属塩、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、アルキレンビス脂肪酸アミドなどが用いられる。紫外線吸収剤としては2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が用いられる。光安定剤としてはビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのヒンダードアミン系光安定剤等が用いられる。抗菌剤としては銀系無機抗菌剤などが用いられる。
【0020】
本発明の基材の少なくとも片面に設けた混合樹脂層はショアA硬度60〜80を有するものである。この硬度は、ショアA硬度65〜90の熱可塑性ポリウレタンとショアA硬度50〜80のアクリル系軟質多層構造樹脂とを使用することによって得ることができる。そして、この硬度にすることによって、ポリ塩化ビニル100重量部に可塑剤(フタル酸ジエチルヘキシル)を70〜100重量部配合した軟質ポリ塩化ビニル層を有するレザーと同様な柔軟さ、手触り、感触を有するレザーが得られる。
【0021】
本発明の合成樹脂レザーは次のようにして製造する。すなわち、例えば、熱可塑性ポリウレタンとアクリル系軟質多層構造樹脂とを所定の割合で混合し、また必要に応じて可塑剤、滑剤などの添加剤を配合し、良く混練し、その後カレンダー成形或は押出し成形によって0.1〜5mmの厚さのシートに成形して混合樹脂シートを作成する。基材の編織物に接着剤を塗布し、その接着剤塗布面に前記混合樹脂シートを重ね多少加熱加圧して、ずれない程度に接着させる。次いで、必要に応じてマーブルプリントし、つや消し処理剤を塗布し、その後にシートを150〜200℃に加熱し、絞ロールで加圧する。この加圧によって基材と混合樹脂シートが一体化し、レザーが得られる。また、基材の編織物の両面に混合樹脂層を設けてもよい。またポリプロピレンフォームシート、ポリウレタンフォームシートなどの軟質発泡体シートに接着剤を塗布し、この軟質発泡体シート面に、上記と同様にして混合樹脂層を形成させてレザーとしてもよい。特に、軟質発泡体シートとしてポリウレタンフォームシートを用いた場合は、接着剤なしで一体化することが可能である。
【0022】
基材と混合樹脂シートの接着には、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、ポリ塩化ビニルペースト、二液型ポリウレタン接着剤などが用いられる。この接着剤は、基布面に塗布しても、また混合樹脂シート面に塗布してもよい。基材とポリプロピレンフォームシート、及びポリプロピレンフォームシートと混合樹脂シートを接着させるために、ポリプロピレンフォームシートの積層面にポリウレタン系プライマー層又はエポキシ系樹脂プライマー層などの接着性を良くするためのプライマー層を設けてもよい。
【0023】
上記の混合樹脂をシートに成形するにはカレンダー加工によるのが好ましいが、混合樹脂に(メタ)アクリル系重合体を配合することによってカレンダー加工時の溶融張力が調整でき、カレンダー加工を円滑にすることができる。この(メタ)アクリル系重合体は、例えば、メタクリル酸メチル50〜90重量%及びこれと共重合可能な他のエチレン系不飽和単量体50〜5重量%を共重合して得られる分子量50〜500万の共重合体が好ましい。他のエチレン系不飽和単量体は、例えば、炭素数2〜18のアルコールのメタクリル酸エステル、炭素数2〜18のアルコールのアクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、マレイン酸、イタコン酸などである。(メタ)アクリル系重合体の配合量は、混合樹脂100重量部に対し0〜30重量部、好ましくは2〜10重量部である。
【0024】
更に、混合樹脂層に、炭酸カルシウム、酸化アンチモン、コロイド状シリカ、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウムどの無機物質粉末を配合することにより、カレンダー加工時の粘着性を低下させて、カレンダー加工を円滑にすることができる。特に炭酸カルシウムが好ましい。無機質の配合量は、混合樹脂100重量部に対し0〜30重量部、好ましくは5〜20重量部である。
【0025】
本発明の合成樹脂レザーは、自動車などの車両内装(座席、ヘッドレスト、トノカバー、サンバイザー、天井など)、室内の内装材、二輪車のサドルの表皮材、家具(椅子、ソファーなど)の表皮材、バッグなど袋物の素材、カッパ、前掛けなどに用いられる。また基材の編織物の両面に混合樹脂層を設けたものはフレキシブルコンテナーの材料に用いられる。また、軟質発泡シートを基材としたレザーも車両内装(インストルメントパネル、ドア、天井等)に用いられる。
【0026】
【実施例】
次に実施例、比較例を示し、本発明を更に詳しく説明する。
実施例1〜5、比較例1〜2実施例1〜5として、熱可塑性ポリウレタン(UHE−75A:三菱化学株式会社製、特殊エーテル系ポリオールを使用したポリウレタン、ショアA硬度77)、熱可塑性ポリウレタン(UE−80:三菱化学社製、エーテル系ポリオール使用、ショアA硬度80)、アクリル系軟質多層構造樹脂(SA−1000P:株式会社クラレ製、ショアA硬度70)、メタクリル酸メチル−アクリル酸アルキル共重合体(メタブレンP−530A:三菱レイヨン株式会社製)、炭酸カルシウム(NS−A:日東粉化工業社製)、抗酸化剤(PEP−36:旭電化工業株式会社製)、可塑剤(#124:花王株式会社製、フタル酸エステル)、滑剤(ポリエチレンワックス)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系)、光安定剤(HALS)及び顔料を表1の実施例1〜5及び比較例1〜2に示す割合(数字は重量部を示す)で配合し、カレンダー成形によって厚さ0.25mmのシートを成形した。レーヨンとポリエステル繊維の7:3混紡糸の天竺編物にエチレン−酢酸ビニル系エマルジョン接着剤を塗布した。この接着剤塗布面に前記シートを重ね多少加熱加圧して、ずれない程度に接着させた。その後にシートを180℃に加熱し、常温の絞ロールとゴムロールとで加圧した。天竺編物と混合樹脂シートが一体化し、絞模様がある合成樹脂レザーが得られた。この実施例、比較例で製造したレザーについて、表面傷付き性、耐寒性、高周波ウェルダー性、柔軟性、縫い目の広がり状態、ロール加工性、耐熱性、耐光性を調べた。その結果を併せて表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1において、表面傷付き性は、JIS K 7204に準拠して測定した。但し、摩耗輪はCS−10、荷重は1kgf×2000回にした。耐寒性は、JIS K 6772に準拠して合格する最も低い温度を示した。高周波ウェルダー性は、市販の機械を用いて実際に溶着加工し、混合樹脂同士の接着性を剥離試験によって評価した。○は剥離時に材料破壊、×は剥離時に界面剥離を表す。柔軟性は、製造した各レザーを手で触り、その感触を軟質ポリ塩化ビニルレザー(合成樹脂層がポリ塩化ビニル100重量部に可塑剤フタル酸ジエチルヘキシル100重量部配合したポリ塩化ビニル組成物であるレザー)と対比して評価した。○は軟質ポリ塩化ビニルレザーと同等の感触を有する、△は軟質ポリ塩化ビニルレザーよりやや硬い感触を有する、×は感触が硬く、軟質ポリ塩化ビニルレザーの代替不可、を表す。
【0029】
縫い目の広がり状態は、各レザーを使用して椅子の上貼りを縫製で行ない、その縫い目の状態を目視で観察した。○は縫い目が広がらない、×は縫い目が拡がり商品性がない、を表す。ロール加工性は、カレンダー加工温度(適切な溶融温度になっている)で30分経過後の粘着性で加工性を評価した。○は適度に粘着、△はやや粘着、×は粘着、を表す。耐熱性は、110℃で500時間放置した後の変色を測定評価した。耐光性は、JIS−B−7751に準拠して、ブラックパネル温度83℃の紫外線カーボンアーク式耐光試験機で300時間照射後の変色を評価した。
【0030】
【発明の効果】
本発明の合成樹脂レザーは、従来の軟質ポリ塩化ビニルレザーと同様な柔軟性、手触りを有し、復元性、耐寒性、耐表面傷付き性がよく、また高周波ウエルダーによって溶着加工できる利点があると共に、ミシンなどで縫製したとき、縫い目が広がったり、縫い目から裂けたりすることがない。したがって、自動車の車両内装材、袋物素材、家具の表皮材として有用であり、従来の軟質ポリ塩化ビニルレザーに代替できる合成樹脂レザーである。
Claims (5)
- 織物、編物又は不織布或は軟質発泡体シートの少なくとも片面に、ショアA硬度65〜90の熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%とショアA硬度50〜80のアクリル系軟質多層構造樹脂50〜5重量%との混合樹脂層を設けてなり、且つ混合樹脂層のショアA硬度が60〜80であることを特徴とする合成樹脂レザー。
- 混合樹脂層が可塑剤を含む請求項1記載の合成樹脂レザー。
- ショアA硬度65〜90の熱可塑性ポリウレタン50〜95重量%とショアA硬度50〜80のアクリル系軟質多層構造樹脂50〜5重量%との混合樹脂をカレンダー加工してシートに成形し、該シートと織物、編物又は不織布或は軟質発泡体シートとを積層一体化することを特徴とする請求項1記載の合成樹脂レザーの製造方法。
- 混合樹脂に(メタ)アクリル系重合体を配合することを特徴とする請求項3記載の合成樹脂レザーの製造方法。
- 混合樹脂に炭酸カルシウムを配合することを特徴とする請求項3又は4記載の合成樹脂レザーの製造方法。
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