JP4230180B2 - 有機el素子の製造方法、有機el素子、及び有機el表示装置 - Google Patents

有機el素子の製造方法、有機el素子、及び有機el表示装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL(electro luminescence)素子とその製造方法、及び複数の有機EL素子を配列してなる有機EL表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、可視光を発光し、しかも低電圧で駆動できる発光素子として、有機EL素子が着目されている。その有機EL素子は、従来の無機EL素子と比較して、単純な製造プロセスにより作製できるという利点も有する。
【0003】
また、有機EL素子を使用した表示装置は、従来広く普及している液晶表示装置に比べ、視野角依存性が無く、応答速度が速く、且つバックライトが不要なため、装置の構造が簡単になり、軽量化が可能であるという利点がある。そして、有機EL素子は固体素子であるので衝撃に強いという長所もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の有機EL素子の有機発光層としては、例えば色素がドープされた高分子材料が使用され、それは通常スピンコート法により形成される。
【0005】
しかしながら、このようにスピンコート法で有機発光層を形成する場合、塗布した後に有機発光層を電極毎にパターニングする必要があるのであるが、有機発光層上にパターニング用のレジストを塗布すると、有機発光層とレジストとが互いに混ざり合い、有機発光層を所望にパターニングできないという不都合が生じる。また、露光用の紫外線により有機発光層が損傷を受けるという不都合もある。これらの不都合は、スピンコートによる有機発光層の形成を実現するのに大きな障害となっている。
【0006】
本発明は係る従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、レジストを使用せずに有機発光層をパターニングできる有機EL素子の製造方法、有機EL素子、及び有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、絶縁性基板上に第1電極を形成する工程と、電磁誘導の際に前記第1電極よりも高温に発熱する第2電極を前記絶縁性基板上に形成する工程と、第1有機発光層用の第1塗膜を前記第1電極上に選択的に印刷する工程と、前記第1塗膜よりも不溶化温度が高い第2有機発光層用の第2塗膜を前記第2電極上に選択的に印刷する工程と、前記第1電極及び前記第2電極に対して電磁誘導により、前記第1電極よりも高温に前記第2電極を発熱させ、該発熱によって前記第1電極上の前記第1塗膜を加熱して第1有機発光層にすると共に、前記第2電極上の前記第2塗膜を加熱して第2有機発光層にする工程と、を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法によって解決する。
【0027】
次に、本発明の作用について説明する。
【0028】
本発明によれば、印刷により第1、第2電極上に第1、第2塗膜を形成するので、従来のようにレジストを使用して第1、第2塗膜をパターニングする必要が無い。
【0029】
しかも、第1、第2塗膜に対して別々に不溶化工程を行う必要が無く、1回の不溶化工程で第1、第2塗膜を一括して不溶化することができるので、プロセスの煩雑化が防がれる。
【0030】
更に、電磁誘導による発熱量を第1電極と第2電極とで異ならせたので、第1、第2塗膜の各々に最適な温度で該第1、第2塗膜が不溶化される。
【0031】
又は、上記した課題は、第1電極を絶縁性基板上に形成する工程と、第1の励磁周波数に対しては前記第1電極よりも低温に発熱し、第2の励磁周波数に対しては前記第1電極よりも高温に発熱する第2電極を前記絶縁性基板上に形成する工程と、第1有機発光層用の第1塗膜を前記第1電極上、前記第2電極上、及び前記絶縁性基板上に形成する工程と、前記第1の励磁周波数の磁界中に前記絶縁性基板を置いて電磁誘導により前記第1電極を前記第2電極よりも高温に発熱させ、該発熱によって前記第1電極上の前記第1塗膜を加熱して選択的に不溶化する第1不溶化工程と、前記第1不溶化工程後、前記第1塗膜を液に曝し、不溶化されていない部分の前記第1塗膜を選択的に溶解して除去すると共に、不溶化された部分の前記第1塗膜を前記第1有機発光層として前記第1電極上に残す工程と、第2有機発光層用の第2塗膜を前記第2電極上、前記第1有機発光層上、及び前記絶縁性基板上に形成する工程と、前記第2の励磁周波数の磁界中に前記絶縁性基板を置いて電磁誘導により前記第2電極を前記第1電極よりも高温に発熱させ、該発熱によって前記第2電極上の前記第2塗膜を加熱して選択的に不溶化する第2不溶化工程と、前記第2不溶化工程後、前記第2塗膜を液に曝し、不溶化されていない部分の前記第2塗膜を選択的に溶解して除去すると共に、不溶化された部分の前記第2塗膜を前記第2有機発光層として前記第2電極上に残す工程と、を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法によって解決する。
【0032】
次に、本発明の作用について説明する。
【0033】
本発明によれば、第1電極と第2電極とを絶縁性基板上に形成する。このうち、第2電極は、電磁誘導により、第1の励磁周波数に対しては第1電極よりも低温に発熱し、第2の励磁周波数に対しては第1電極よりも高温に発熱する。このような第1、第2電極を使用することで、スピンコート法等の簡便な塗布方法を用いながら、異なる色を発光する第1、第2有機発光層が第1、第2電極上に自己整合的に塗り分けられる。
【0034】
なお、上記の第1電極及び第2電極として、共に磁性導電膜と非磁性導電膜との積層膜を使用し、且つ、第1電極における非磁性導電膜の厚さを第2電極における非磁性導電膜の厚さよりも厚くすることで、第1電極と第2電極との発熱量を励磁周波数によって異ならせることが可能となる。
【0035】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
(1)第1の実施の形態
最初に、図1(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0037】
まず、ガラス等の絶縁体よりなる基板1上に、陰極形状の開口が形成されたレジストマスク(不図示)を形成し、そのレジストマスクをマスクに使用する電子ビーム蒸着法によりFe、Co、Ni、Gd、Tb等の磁性金属を基板1上に蒸着して、その後レジストマスクを除去することにより、上記磁性金属を陰極形状の磁性導電膜3aとして基板上に残す。その磁性導電膜3aの厚さは、約50〜500nm程度である。なお、磁性導電膜3aは、上記の金属に限定されず、鉄族元素、希土類元素、及び磁性金属酸化物のいずれかからなる膜であってよい。このうち、磁性金属酸化物としては、EuOやCrO2等がある。
【0038】
次いで、陰極形状の開口が形成されたシャドウマスク(不図示)を使用し、電子ビーム蒸着法により、基板1の一部領域上と磁性導電膜3a上とに別々にアルミニウム膜等の非磁性導電膜を厚さ約20〜1000nm程度に選択的に形成し、その非磁性導電膜を第1陰極2及び被覆膜3bとして使用し、更に被覆膜3bと磁性導電膜3aとの積層膜を第2陰極3とする。なお、非磁性導電膜としては、アルミニウム合金膜、マグネシウム膜、及びマグネシウム合金膜のいずれかをアルミニウム膜に代えて使用しても良い。
【0039】
被覆膜3bとしてアルミニウム等の仕事関数が小さい金属を使用することで、その上に後で形成される有機発光層と被覆膜3bとの間の電子注入のためのポテンシャルバリアを小さくできるので、第2陰極3から有機発光層に電子を効率良く注入することができる。
【0040】
次に、図1(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0041】
まず、水やアセトン等の溶媒中に有機発光層の前駆物質を溶解させてなる溶液を作製し、その溶液を第1陰極2上、第2陰極3上、及び基板1上にスピンコートし、その後溶媒成分を乾燥させて厚さが約50〜1000nm程度の第1有機発光層用の第1塗膜4とする。
【0042】
そのような第1塗膜4としては、ある温度(不溶化温度)以上に加熱すると溶媒に不溶化するものを使用する。以下、この第1塗膜4の不溶化温度をT1とし、上述の前駆物質として、不溶化温度T1が約150〜300℃のポリpフェニレンビニレン(PPV)の前駆物質であるスルホニウム塩高分子を使用する。このポリpフェニレンビニレンは、黄緑色の発光層となるものである。
【0043】
次に、図1(c)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、第1陰極2と第2陰極3とを、図3に示す交番磁界発生部により発生する交番磁界Bに曝す。その交番磁界発生部は、励磁回路70とそれに接続されたコイル8とを有し、励磁回路70が供給する交流電流の大きさを変えることにより、交番磁界Bの強さが任意に可変となる。
【0044】
このように各陰極2、3(図1(c))が交番磁界Bに曝されると、それらは電磁誘導により発熱することになるが、その発熱の機構はヒステリシス損失によるものと渦電流の抵抗損失によるものとの二種に分けられる。
【0045】
ヒステリシス損失による発熱は、磁性金属(鉄族元素、鉄族元素、及び希土類元素等)や磁性金属酸化物が交番磁界中に置かれたときに生じ、その発熱量Phは経験的に次式で示される。
【0046】
Ph∝(最大磁束密度)1.6×(磁性金属の体積)×(励磁周波数)・・・(1)
一方、抵抗損失による損失は、任意の導体が交番磁界中に置かれたときに生じ、その発熱量Prは次式で示される。
【0047】
Pr∝(透磁率)2×(導電率)×(導体の面積)2×(導体の厚さ)3×(励磁周波数)2×(コイル8に流れる電流)2 ・・・(2)
なお、(2)式は、コイル8中に円筒形の非磁性金属を置き、その金属の内部の磁界が一様であると近似した場合の結果である。今の場合、各陰極2、3の形状は四角柱であるが、発熱量は(2)式によって近似して構わない。
【0048】
磁性金属においては上記PhとPrとの和が全発熱量になり、一方、非磁性金属においてはPrが即ち全発熱量になる。
【0049】
今の場合、第1陰極2は、非磁性金属であるアルミニウムにより構成されているので、その全発熱量P(1)は抵抗損失による発熱量Pr(1)と等しい。
【0050】
一方、第2陰極3は、磁性金属よりなる磁性導電膜3aを有しているので、ヒステリシス損失による発熱量Ph(2)と抵抗損失による発熱Pr(2)との和Ph(2)+Pr(2)が全発熱量P(2)となる。
【0051】
各電極の全発熱量P(1)、P(2)の周波数依存性は図4のようになる。P(1)は、抵抗損失による発熱量だけからなり、(1)式よりそれは励磁周波数の二乗の項だけからなる。一方、P(2)は、励磁周波数の二乗の項に加え、(2)式における励磁周波数の一乗の項をも含む。よって、(1)式及び(2)式中の励磁周波数以外のパラメータを適当に設定すれば、P(1)とP(2)とは図示の如く交点を有し、その交点の周波数f0(以下、境界周波数と言う)を境にして、各陰極2、3の発熱量が反転し、一方が他方よりも優勢に発熱するようになる。
【0052】
そのような性質を利用して、図1(c)の工程では、その境界周波数f0より高い第1の励磁周波数f1を用いることにより、第1塗膜4の不溶化温度T1よりも低い温度に第2陰極3の加熱温度を抑えながら、第1陰極2をT1よりも高温に加熱する(第1不溶化工程)。その結果、第1陰極2上では第1塗膜4が選択的に不溶化されて第1有機発光層4aとなる一方、第2陰極3上では塗膜4が不溶化しない。
【0053】
従って、その第1塗膜4を水やアセトン等の液に曝すと、図1(d)に示すように、第1有機発光層4aを第1陰極2上に選択的に残しながら、第1塗膜4が除去されることになる。
【0054】
なお、第1有機発光層4aは、酸素や水分に触れるとその特性が劣化するので、上述の第1不溶化工程(図1(c))は、真空中(圧力約0.1Torr以下)や窒素等の不活性ガスの雰囲気中(大気圧)で行うのが好ましい。
【0055】
また、(2)式のように、Prは導電率に比例しているので、第1陰極2の発熱を優勢にするには、第1陰極の材料の抵抗率(導電率の逆数)をできるだけ小さくするのが好ましい。実用的には、抵抗率が1mΩcm以下の非磁性金属を第1陰極2に使用するのが好ましい。
【0056】
更に、交番磁界Bの周波数としては3kHz〜400kHzのものを使用するのが好ましい。周波数の上限を400kHzとしたのは、これより大きい周波数では、放射されるノイズが大きくなるためである。また、周波数の下限を3kHzとしたのは、これより低い周波数では加熱効率(各陰極2、3における磁束の吸収)が低下するためである。一般的な目安としては、10kHz以下ではヒステリシス損失による発熱Phを利用し、それより高い周波数では抵抗損失による発熱Prを利用するのが好ましい。
【0057】
次に、図2(a)に示すように、第1塗膜4の形成方法と同じ方法を用いて、第1有機発光層4a、第2陰極3上、及び基板1上に第2塗膜5を形成する。この第2塗膜5としては、第1塗膜4と同様に、不溶化温度以上の温度に加熱すると溶媒に不溶化するものを使用する。但し、その第2塗膜5としては、その不溶化温度T2が第1塗膜4の不溶化温度T1よりも低い(T2<T1)ものを使用する。この理由は後述する。そのような第2塗膜5用の前駆物質としては、例えば、ポリpフェニレンビニレン(PPV)の前駆物質であるスルホニウム塩高分子中のベンゼン環の2、5位をエトキシ基で置換したものがある。この前駆物質は、不溶化温度が約50〜150℃程度であり、赤橙色の発光層となるものである。
【0058】
次に、図2(b)の断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、既述の交番磁界発生部(図3参照)により交番磁界Bを発生させ、その交番磁界Bに各陰極2、3を曝す。
【0059】
このとき、励磁周波数f0(図4参照)よりも低い第2の励磁周波数f2を使用することで、第1陰極2の加熱温度を第2塗膜5の不溶化温度T2よりも低く抑えながら、第2陰極3をT2よりも高く加熱し、該第2陰極3上の第2塗膜5を選択的に不溶化して第2有機発光層5aとする(第2不溶化工程)。
【0060】
ところで、第1有機発光層4aは有機物よりなるので、不溶化後にその不溶化温度T1より高温に加熱されるのは好ましく無い。
【0061】
そこで、本実施形態では、上記のように不溶化温度が高い塗膜から順に、即ち最初に第1塗膜4(不溶化温度T1)を不溶化して第1発光層4aにし、その後に第2塗膜5(不溶化温度T2<T1)を不溶化するようにした。こうすると、第2塗膜5を不溶化する際、第1陰極2の加熱温度はT2以下に抑えられているから、該第1陰極2がT1より高温に加熱されることがなく、その上の第1有機発光層4aがT1より高温の加熱されるのを防止することができる。
【0062】
次に、第2塗膜5を水やアセトン等の液に曝すことにより、図2(c)に示すように、第2有機発光層5aを第2陰極3上に残しながら、第2塗膜5を除去する。
【0063】
なお、第1有機発光層4aの場合と同様に、第2有機発光層5aも酸素や水分に触れるととの特性が劣化するので、上述の第2不溶化工程(図2(b))は真空中や窒素等の不活性ガスの雰囲気中で行うのが好ましい。
【0064】
次いで、図2(d)に示すように、陽極形状の開口が形成されたシャドウマスク(不図示)を使用する電子ビーム蒸着法により、第1、第2陰極2,3上に、透明導電膜としてITO膜を約80nmの厚さに形成し、それらを第1、第2陽極6、7とする。
【0065】
ここまでの工程により、本実施形態に係る有機EL素子が完成する。この有機EL素子は、第1有機発光層4aが黄緑色に発光し、第2有機発光層5aが赤橙色に発光して、その二色の光が基板1の上方に発光するトップエミッション型の素子である。
【0066】
以上説明した本実施形態によれば、パターニング用のレジストを使用せずに、第1、第2有機発光層4a、5aを第1、第2陰極2、3上に選択的に残すことができるので、従来のようにレジストと発光層とが混ざり合ってパターニングができないという不都合が生じない。
【0067】
しかも、電磁誘導による加熱温度の上下関係が境界周波数f0を境にして反転する第1陰極2と第2陰極3とを使用することで、簡便なスピンコート法を用いながら、異なる色を発光する第1、第2有機発光層4a、5aを各陰極上に自己整合的に塗り分けることができる。そのため、各色の有機発光層を対応する陰極上に選択的に塗り分ける場合のように、有機発光層と陰極との位置合わせを行う必要が無い。
【0068】
更に、電磁誘導を使用することにより、導電体よりなる各陰極2、3を選択的に加熱できる一方、絶縁体よりなる基板1の温度上昇を防止することができるので、基板1が熱により変形する恐れが無い。よって、各有機発光層4a、5aを形成した後の工程において、基板1の熱変形による位置合わせズレを考慮する設計が不要となる。
【0069】
そのうえ、電磁誘導を使用することで、各陰極2、3が交番磁界Bに曝された時点からすぐさま加熱を開始することができ、加熱に時間的な遅延を伴うことが無い。しかも、加熱の具合は実質的に交番磁界Bだけによって定まるので、各陰極2、3を再現性良く加熱することができる。
【0070】
更に、第2陰極3に磁性導電膜3aを使用したが、磁性導電膜3aはそのキュリー温度以上に加熱されると磁性を失って非磁性導電膜となるので、発熱量における(1)式の寄与が無くなり、(2)式だけが発熱量に寄与するようになる。よって、キュリー温度を境にして第2陰極3の温度上昇が鈍るので、キュリー温度を第2陰極3の実質的な温度上限とすることができ、第2陰極3の温度コントロールが容易になる。これにより、第2陰極3が過剰に加熱されてその上の第2塗膜5が劣化するのを防ぐことができる。この利点は、以下の全ての実施形態において、磁性導電膜を電磁誘導により加熱する場合にも同様にして得ることができる。
【0071】
なお、キュリー温度は、磁性導電膜3aの組成を連続的に変えることにより、連続的に調整することが可能である。例えば、Niのキュリー温度は358℃であるが、Ni40%−Fe60%(パーマロイ)では300℃となる。
【0072】
また、上記では、第1陰極2を一層の非磁性導電膜(アルミニウム膜)で構成したが、第2陰極3と同様に、第1陰極2を非磁性導電膜と磁性導電膜との二層構造にしてもよい。その場合は、第1陰極2における非磁性導体膜の厚さを、第2陰極3における非磁性導電膜の厚さよりも厚くすることで、図4と同じ傾向の(励磁周波数)−(発熱量)特性が得られるので、上記と同様の利点を得ることができる。
【0073】
(2)第2の実施の形態
上記した第1実施形態の有機EL素子はトップエミッション型であったが、本発明によればボトムエミッション型のものも作製可能である。ボトムエミッション型を作製するには、次のようなプロセスに従う。
【0074】
まず、図5(a)に示すように、ガラス等の光学的に透明な絶縁体よりなる基板1上に透明導電膜としてITOを約150〜300nmの厚さに形成し、それをフォトリソグラフィによりパターニングして第1透明導体パターン10、第2透明導体パターン11とする。
【0075】
次に、図5(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、フォトリソグラフィにより、第2透明導体パターン11の全体を覆い、且つ第1透明導体パターン10の上面を覆うレジストパターン14を形成する。第1透明導体パターン10の側面は、レジストパターン14で覆わず、露出するようにする。
【0076】
次いで、基板1と第1導体パターン10とを硫酸銅浴(硫酸銅200g/l、硫酸50g/l、塩化物90ppm)等のめっき液中に浸し、電解めっきにより、電流密度0.5A/dm2で第1導体パターン10に給電を行いながらその側壁にCuよりなる非磁性導電膜12を厚さ約200〜500nm程度に形成して、それを第1導体パターン10と共に第1陽極13として使用する。このとき、フォトリソグラフィにおける位置合わせ誤差を考慮して、レジストパターン14を第1透明導体パターン10の上面よりも小さく形成しておく。この場合、非磁性導電膜12は、第1透明導体パターン10の側面だけでなく、その上面の縁部にも形成されることになる。
【0077】
次に、図5(c)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、フォトリソグラフィにより、第1陽極13の全体を覆い、且つ、第2透明導体パターン11の上面を覆うレジストパターン15を形成する。第2透明導体パターン11の側面は、レジストパターン15で覆わず、露出するようにする。この際、既述のように、レジストパターン15を第2透明導体パターン11の上面よりも小さく形成するのが好ましい。
【0078】
次いで、基板1と第2導体パターン11とをニッケル−リン浴(硫酸ニッケル30g/l、次亜リン酸ナトリウム30g/l、ピロリン酸ナトリウム60g/l、トリエタノールアミン100g/l)等のめっき液中に浸し、無電解めっきにより、第2導体パターン11の側壁にNiよりなる磁性導電膜16を形成して、それを第2導体パターン11と共に第2陽極17として使用する。
【0079】
上記によって、第1陽極13と第2陽極17とが形成されたが、このうち第1陽極13は非磁性導電膜12を有し、一方、第2陽極17は磁性導電膜16を有しているので、各陽極13、17は異なる材料からなる。よって、電磁誘導におけるこれらの陽極13、17の(励磁周波数)−(発熱量)特性は図4と略同じ傾向を示し、境界周波数f0を境にして加熱温度が反転するので、第1実施形態で説明した有機発光層の色分けを行うことが可能となる。
【0080】
そこで、次の工程より、第1実施形態で説明した有機発光層の色分けの工程に移る。
【0081】
最初に、図5(d)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、既述のポリpフェニレンビニレン(PPV)の前駆体であるスルホニウム塩高分子を水やアセトン等の溶媒中に溶かしてなる溶液を作製し、それをスピンコートにより全面に塗布する。塗布後、その溶液を乾燥させて、第1有機発光層用の第1塗膜18(不溶化温度T1)とする。
【0082】
次いで、図6(a)に示すように、境界周波数f0よりも高い第1の励磁周波数を使用する電磁誘導により、第2陽極17が不溶化温度T1よりも高温になるのを抑えつつ、第1陽極13を不溶化温度T1よりも高温に加熱して、第1陽極13上の第1塗膜18を選択的に不溶化して第1有機発光層18aとする。この第1有機発光層18aは、黄緑色の光を発光するものである。
【0083】
続いて、第1塗膜18を水やアセトン等の液に曝すことにより、図6(b)に示すように、不溶化していない部分の第1塗膜18を除去すると共に、第1有機発光層18aを第1陽極13上に選択的に残す。
【0084】
次に、図6(c)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、ポリpフェニレンビニレン(PPV)の前駆体であるスルホニウム塩高分子中のベンゼン環の2、5位をエトキシ基で置換した高分子を水やアセトン等の溶媒中に溶かしてなる溶液を作製する。次いで、その溶液を、第1有機発光層18a上、第2陽極17上、及び基板1上にスピンコートし、その後乾燥させ、第2有機発光層用の第2塗膜19(不溶化温度T2<T1)とする。
【0085】
次いで、図6(d)に示すように、境界周波数f0よりも低い第2の励磁周波数を使用する電磁誘導により、第1陽極13が不溶化温度T2よりも高温になるのを抑えつつ、第2陽極17を不溶化温度T2よりも高温に加熱して、第2陽極17上の第2塗膜19を選択的に不溶化して第2有機発光層19aとする。この第2有機発光層19aは、赤橙色の光を発光するものである。
【0086】
続いて、第2塗膜19を水やアセトン等の液に曝すことにより、図7(a)に示すように、不溶化していない部分の第2塗膜19を除去すると共に、第2有機発光層19aを第2陽極17上に選択的に残す。
【0087】
次に、図7(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、陰極形状の開口が形成されたシャドウマスク(不図示)を使用する電子ビーム蒸着法により、第1、第2有機発光層18a、19aの上にアルミニウムとリチウムとの合金膜(Al-Li膜)を厚さ約50nm程度に形成する。次いで、そのAl-Li膜の上に、シャドウマスクを使用する電子ビーム蒸着法によりアルミニウム膜を厚さ約250nm程度に形成する。そして、上記のAl-Li膜とアルミニウム膜との積層膜を、第1陰極20及び第2陰極21として使用する。各陰極20、21にAl-Liのような仕事関数の小さい金属を使用することで、各陰極20、21と各有機発光層18a、19aとの間のポテンシャルバリアを小さくすることができ、有機発光層18a、19aに電子を効率良く注入することができる。
【0088】
ここまでの工程により、本実施形態に係る有機EL素子が完成する。
【0089】
上記した本実施形態によれば、各発光層18a、19aからの光を各透明導体パターン10、11及び光学的に透明な基板1を通して外部へ取り出すことができる、ボトムエミッション型の素子を提供することができる。
【0090】
また、非磁性導電膜12や磁性導電膜16は、正孔の注入電極として使用されないから、その仕事関数が小さい必要がなく、その材料の選定が比較的自由となる。
【0091】
更に、透明導体パターン10、11としては、ITOのように通常の導体よりも電気抵抗が二桁程度大きいものが使用されるが、その側壁に抵抗の小さい非磁性導電膜12や磁性導電膜16を設けることで、各陽極13、17を低抵抗化することができる。従って、単純マトリックス表示装置のように陽極13、17がバスラインとして機能する場合には、そのバスラインが低抵抗化されることから、バスラインを延長しても、該バスラインにおける信号の遅延が防止されてその信号波形の変形が極力防がれるので、表示領域を拡大することが可能となる。
【0092】
(3)第3の実施の形態
上記した第2実施形態では、二色発光のボトムエミッション型の有機EL素子を製造した。本発明では、二色発光の素子の他に、単色発光のボトムエミッション型の有機EL素子も製造し得る。以下、それについて説明する。
【0093】
最初に、図8(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、ガラス等の光学的に透明な絶縁体よりなる基板1上に透明導電膜としてITOを厚さ約300nmの厚さに形成し、その上にレジストパターン23を形成する。そして、このレジストパターン23をエッチングマスクにし、シュウ酸を使用するウエットエッチングにより、透明導電膜をパターニングして複数の透明導体パターン22とする。
【0094】
次に、図8(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、レジストパターン23が残存する状態の透明導体パターン22をニッケル−リン浴等のめっき液中に浸し、無電解めっきにより、各透明導体パターン22の側壁にNiよりなる導電膜24を形成して、それを透明電極パターン22と共に陽極25として使用する。本実施形態では、有機発光層の塗り分けを行わないので、各陽極25の導電膜24に共通の材料を使用してよい。
【0095】
このめっきにおいては、透明導体パターン22の形成時に使用したレジストパターン23がめっきレジストとして機能するので、第2実施形態のようにめっき用に新たにレジストを形成する必要が無く、しかもレジストパターン23によって透明導体パターン22の側壁に導電膜24をセルフアライン的に形成することができる。
【0096】
次に、図8(c)に示すように、有機発光層用の塗布液をスピンコートにより全面に塗布し、それを乾燥させて塗膜26とする。そのような塗膜26用の塗布液としては、第1実施形態で説明した、pフェニレンビニレン(PPV)の前駆体であるスルホニウム塩高分子や、該高分子のベンゼン環の2、5位をエトキシ基で置換したPPV誘導体の前駆体であるスルホニウム塩高分子等を既述の溶媒に溶解したものが挙げられる。
【0097】
なお、本実施形態では、有機発光層の塗り分けを行わないから、この塗膜26の不溶化温度について特に気にする必要は無い。
【0098】
次いで、図8(d)に示すように、既述の交番磁界発生部(図3)により発生した磁界Bに各陽極25を曝し、電磁誘導により陽極25を塗膜26の不溶化温度以上の温度に加熱する。その結果、陽極25上の塗膜26が選択的に加熱されて不溶化し、有機発光層26aとなる。
【0099】
既述の如く、この不溶化工程を真空中や不活性ガスの雰囲気中で行うことで、有機発光層26aの特性が酸素や水分により劣化するのを防ぐことができる。
【0100】
続いて、塗膜26を記述の水等の液に曝すことにより、図9(a)に示すように、不溶化されていない部分の塗膜26を溶解して除去すると共に、有機発光層26aを各陽極25上に残す。
【0101】
次に、図9(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、陰極形状の開口が形成されたシャドウマスク(不図示)を使用する電子ビーム蒸着法により、各有機発光層26aの上にアルミニウムとリチウムとの合金膜(Al-Li膜)を厚さ約50nm程度に形成する。次いで、そのAl-Li膜の上に、上記と同じシャドウマスクを使用する電子ビーム蒸着法によりアルミニウム膜を厚さ約250nm程度に形成する。そして、上記のAl-Li膜とアルミニウム膜との積層膜を、陰極27として使用する。
【0102】
ここまでの工程により、本実施形態に係る単色発光の有機EL素子が完成する。
【0103】
本実施形態によれば、第2実施形態と同様にボトムエミッション型の有機EL素子を製造することができ、第2実施形態と同様の利点を得ることができる。しかも、本実施形態では、有機発光層26aの色分けを行わないので、透明導体パターン22をパターニングするのに使用したレジストパターン23をそのままめっきレジストとして使用することができる。よって、透明導体パターン22の側壁に導電膜24を形成するための新たなレジストが不要となるので、工程数の増加やプロセスの煩雑化を防止することができる。
【0104】
(4)第4の実施の形態
次に、本発明の第4の実施の形態に係る有機EL素子の製造方法について説明する。
【0105】
最初に、図10(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、ガラス等の絶縁体よりなる基板1上に透明導電膜としてITOを約150nmの厚さに形成し、それをフォトリソグラフィによりパターニングして、赤色用陽極30R、青色用陽極30B、及び緑色用陽極30Gとする。
【0106】
次に、図10(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、各陽極30R〜30G上と基板1上とに、赤色有機発光層用の塗布液をスピンコートにより厚さ約500nm程度に塗布し、それを乾燥させて赤色用塗膜31(不溶化温度T1)とする。そのような塗膜31の塗布液としては、例えば、既述したポリpフェニレンビニレン(PPV)のスルホニウム塩高分子中のベンゼン環の2、5位をエトキシ基で置換したPPV誘導体の前駆体を既述の溶媒中に溶かしたものがある。
【0107】
また、これとは別に、ガラス等の絶縁体よりなる加熱用基板32の上に、例えば厚さ約1μmのアルミニウム膜を形成し、それをパターニングすることで導体パターン33を形成する。その導体パターン33は、同色の陽極(例えば赤色用陽極30R)のピッチと同じ間隔を置いて複数形成される。
【0108】
次に、図10(c)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、導体パターン33が赤色用陽極30Rと対向するように加熱用基板32と基板1とを位置合わせする。その後、加熱用基板32を基板1に向けて降ろし、導体パターン33を赤色用塗膜31に当接させる。
【0109】
続いて、交番磁界発生部(図3参照)において発生した第1の励磁周波数の交番磁界Bに導体パターン33を曝すことにより、電磁誘導によってその導体パターン33を発熱させる。発熱温度は、第1の励磁周波数によって調整することができ、今の場合赤色用塗膜31の不溶化温度T1以上とする。これにより、導体パターン33が当接する部分の赤色用塗膜31が選択的に不溶化され、赤色有機発光層31Rとなる。
【0110】
なお、導体パターン33が赤色用塗膜31に当接することで該赤色用塗膜31に傷がつく恐れがある場合は、図14のように、導体パターン33を覆う緩衝膜36を加熱用基板32上に形成するのが好ましい。そのような緩衝膜36としては有機膜を使用するのが好ましく、例えば、厚さ約1μmのレジストを使用し得る。この点は、後の工程でも同様である。
【0111】
また、上記では導体パターン33を赤色用塗膜31に当接させて赤色用塗膜31を直接的に加熱したが、導体パターン33を赤色用塗膜31に近接させることによっても、導体パターン33からの輻射熱等によって赤色用塗膜31を加熱することができる。この場合、赤色用陽極30Rの短辺幅以下の距離、例えば5μm以下の距離に導体パターン33を赤色用塗膜31に近接させることで、赤色用塗膜31を効果的に加熱することができる。これについては、後の工程でも同様である。
【0112】
その後、この赤色用塗膜31を記述の液に曝すことにより、図11(a)に示すように、不溶化されていない部分の赤色用塗膜31が選択的に除去されて、赤色有機発光層31Rが赤色用陽極30R上に残る。
【0113】
次に、図11(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、青色有機発光層用の塗布液をスピンコートにより基板1上に厚さ約500nm程度に塗布し、それを乾燥させて青色用塗膜34(不溶化温度T2)とする。この場合に使用される塗布液としては、例えば、ポリパラフェニレン(ppp)の前駆物質を既述の溶媒に溶解したものがある。
【0114】
そして、これとは別に、既述の導体パターン33が形成された加熱用基板32を用意する。その加熱用基板32は、赤色用塗膜31を加熱した場合(図10(b))よりも1ピッチ(隣接する陽極31R〜31G間の距離)だけ横方向にシフトされ、各導体パターン33が青色用陽極30Bと対向するように基板1と位置合わせされる。
【0115】
次に、図11(c)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、導体パターン33が青色用陽極30Bと対向した状態で加熱用基板32を基板1に向けて降ろし、導体パターン33を青色用塗膜34に当接させる。
【0116】
続いて、交番磁界発生部(図3参照)において発生した第2の励磁周波数の交番磁界Bに導体パターン33を曝すことにより、電磁誘導によってその導体パターン33を発熱させ、その温度を青色用塗膜34の不溶化温度T2よりも高温にする。これにより、導体パターン33が当接する部分の青色用塗膜34が選択的に不溶化され、青色有機発光層34Bとなる。
【0117】
その後、この青色用塗膜34を記述の液に曝すことにより、図12(a)に示すように、不溶化されていない部分の青色用塗膜34が選択的に除去されて、青色有機発光層34Bが青色用陽極30B上に残る。
【0118】
次に、図12(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、緑色有機発光層用の塗布液をスピンコートにより基板1上に厚さ約500nm程度に塗布し、それを乾燥させて緑色用塗膜37(不溶化温度T3)とする。この場合に使用される塗布液としては、例えば、既述したポリpフェニレンビニレン(PPV)誘導体の前駆体であるスルホニウム塩高分子を既述の溶媒に溶解したものが使用される。
【0119】
また、これとは別に、既述の導体パターン33が形成された加熱用基板32を用意する。その加熱用基板32は、青色用塗膜34を加熱した場合(図11(b))よりも1ピッチだけ横方向にシフトされ、各導体パターン33が緑色用陽極30Gと対向するように基板1と位置合わせされる。
【0120】
次に、図12(c)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、導体パターン33が緑色用陽極30Gと対向した状態で加熱用基板32を基板1に向けて降ろし、導体パターン33を緑色用塗膜37に当接させる。
【0121】
続いて、交番磁界発生部(図3参照)において発生した第3の励磁周波数の交番磁界Bに導体パターン33を曝すことにより、電磁誘導によってその導体パターン33を発熱させ、その温度を緑色用塗膜37の不溶化温度T3よりも高温にする。これにより、導体パターン33が当接する部分の緑色用塗膜37が選択的に不溶化され、緑色有機発光層37Gとなる。
【0122】
その後、この緑色用塗膜37を記述の液に曝すことにより、図13(a)に示すように、不溶化されていない部分の青色用塗膜37が選択的に除去されて、緑色有機発光層37Gが緑色用陽極30G上に残る。
【0123】
次に、図13(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
【0124】
まず、陰極形状の開口が形成されたシャドウマスク(不図示)を使用する電子ビーム蒸着法により、各色の有機発光層31R、34B、37Gの上にアルミニウムとリチウムとの合金膜(Al-Li膜)を厚さ約50nm程度に選択的に形成する。次いで、そのAl-Li膜の上に、上記と同じシャドウマスクを使用する電子ビーム蒸着法によりアルミニウム膜を厚さ約250nm程度に選択的に形成する。そして、上記のAl-Li膜とアルミニウム膜との積層膜を、赤色用陰極38R、青色用陰極38B、緑色用陰極38Gとして使用する。
【0125】
ここまでの工程により、本実施形態に係る有機EL素子が完成する。この有機発光素子は、ボトムエミッション型であり、更に赤色有機発光層31R、青色有機発光層34B、緑色有機発光層37Gが形成されているので、フルカラー表示が可能となる。
【0126】
本実施形態によれば、第1〜第3の実施形態と異なり、基板1上の各陽極30R〜30Gを発熱させるのではなく、それらに対向して設けられた導体パターン30を電磁誘導により所望の温度に発熱させ、各色用の塗膜31、34、37を選択的に加熱する。このように、陽極30R〜30Gは、各塗膜31、34、37を加熱する役割を担わないので、それらの形状や大きさ、材料等に制限が生じず、各陽極30R〜30Gの設計の自由度が大きく、それらを思いのままの形状に設計することができる。
【0127】
よって、第2〜第3実施形態のようにITOよりなる各陽極30R〜30Gの側壁に導体膜や磁性導電膜を形成すること無しに、それらの上に有機発光層31R、34B、37Gを形成することができるようになる。
【0128】
また、陽極30R〜30Gと陰極との形成順序も逆にすることができ、陽極30R〜30Gの代わりに陰極を先に基板1上に形成することもできる。
【0129】
しかも、加熱温度は、第1〜第3の励磁周波数のみを変えることにより所望に制御することができ、温度設定が容易となる。
【0130】
更に、導体パターン30が形成された加熱用基板32は、何度も使用することができるので経済的である。
【0131】
そして、各塗膜31、34、37における加熱領域の境界、すなわち、導体パターン30の縁部が当接する部位を高精度に決める必要が無いので、導体パターン30と陽極30R〜30Gとの位置合わせが容易であり、その位置合わせを実行する装置として簡便なものを使用できる。
【0132】
なお、上記では、各色の有機発光層31R、34B、37Gを基板1の上方に間隔を置いて交互に形成したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、基板1を色毎に三つの領域に分け、各領域にその色の有機発光層を集積形成することで、エリアカラーも実現することができる。
【0133】
(5)第5の実施の形態
次に、本発明の第5の実施の形態に係る有機EL素子の製造方法について説明する。
【0134】
上記第1〜第4実施形態では、有機発光層用の塗膜をスピンコートにより形成した。本実施形態では、これに代えて、印刷法により有機発光層用の塗膜を形成する。
【0135】
最初に、図15(a)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、陰極形状の開口が形成されたシャドウマスク(不図示)を使用する電子ビーム蒸着により、ガラス等の絶縁体よりなる基板1上に、アルミニウム合金よりなる赤色用陰極40Rを厚さTHRに形成する。厚さTHRは、アルミニウムの蒸着時間を調節することにより任意に制御可能である。
【0136】
次いで、上記のシャドウマスクを横方向に1ピッチだけずらし、電子ビーム蒸着により、基板1上にアルミニウムよりなる青色用陰極40Bを厚さTHBに形成する。更に、このシャドウマスクを横方向にもう1ピッチだけずらし、電子ビーム蒸着により、基板1上にアルミニウムよりなる緑色用陰極40Gを厚さTHGに形成する。
【0137】
このように、各陰極40R〜40Gに対して一つのシャドウマスクを共通に使用すると共に、アルミニウムの蒸着時間を陰極40R〜40G毎に変えることで、電極の厚みを陰極40R〜40G毎に変えることができる。
【0138】
次に、図15(b)に示すように、オフセット印刷用の平版45を用意し、その平版45の印刷面上に、塗布装置を使用して赤色有機発光層用の塗布液46を塗布する。塗布液46としては、例えば、既述したポリpフェニレンビニレン(PPV)のスルホニウム塩高分子中のベンゼン環の2、5位をエトキシ基で置換したPPV誘導体の前駆体を既述の溶媒中に溶かしたものがある。
【0139】
なお、平版45の印刷面には、赤色用陰極40Rに対応した凸部45aが形成されている。
【0140】
続いて、この平版45の印刷面を基板1に押圧することにより、塗布液46を赤色用陰極40R上に選択的に印刷する。印刷が終了後、図15(c)に示すように、赤色用陰極40R上の塗布液46を乾燥させて、赤色用塗膜41(不溶化温度T1)とする。
【0141】
その後、上記と同様の印刷工程を青色用陰極40Bと緑色用陰極40Gに対しても行うことで、図16(a)に示すように、これらの陰極40B、40G上に青色用塗膜42(不溶化温度T2)と緑色用塗膜43(不溶化温度T3)を選択的に印刷する。このうち、青色用塗膜42の塗布液としては、例えば、ポリパラフェニレン(ppp)の前駆物質を既述の溶媒に溶解したものが使用される。また、緑色用塗膜43の塗布液としては、例えば、既述したポリpフェニレンビニレン(PPV)の前駆体であるスルホニウム塩高分子を既述の溶媒に溶解したものが使用される。
【0142】
次に、図16(b)に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。まず、各塗膜41〜43を加熱して不溶化すべく、既述の交番磁界発生部(図3参照)により交番磁界Bを発生させ、各陰極40R〜40Gをその交番磁界Bに曝すことで、各陰極40R〜40Gを電磁誘導により一括して発熱させる。ここで、塗膜41〜43の不溶化温度T1〜T3は通常は塗膜毎に異なるので、各陰極40R〜40Gを同じ温度に発熱させる訳にはいかず、不溶化温度T1〜T3に応じて個々の陰極40R〜40Gの発熱温度を変える必要がある。なお、不溶化温度T1〜T3の中の最高温度以上に全ての陰極40R〜40Gを発熱させることも考えられるが、これでは、その最高温度以下で不溶化する塗膜が過度に加熱されてその特性が劣化してしまうので好ましくない。
【0143】
そこで、本実施形態では、陰極40R〜40Gが導電体(アルミニウム合金)よりなり、その発熱量がその厚さに依存する(第1実施形態の式(2)参照)ことに着目し、陰極40R〜40Gの形成工程(図15(a))において、陰極40R〜40Gの各々の厚さTHR〜THGを塗膜41〜43の不溶化温度T1〜T3に応じて変えるようにする。
【0144】
第1実施形態の式(2)によれば、発熱量Prは厚さの3乗に比例しているので、不溶化温度が低い塗膜の陰極の厚さを薄くし、不溶化温度が高い塗膜の陰極の厚さを厚くすればよいことになる。
【0145】
例えば、不溶化温度がT1<T2<T3の場合は、各陰極40R〜40GをそれぞれTHR<THB<THGとすることで、各々の塗膜41〜43を過剰に加熱すること無しに、最適な温度で不溶化することができる。
【0146】
この工程により、各塗膜41〜43は不溶化され、それぞれ赤色有機発光層41R、青色有機発光層42B、及び緑色有機発光層43Gとなる。各色の有機発光層41R、42B、43Gは、印刷法により各陰極40R〜40G上に予め選択的に印刷されているので、不溶化されていない塗膜を除去する工程をこの後に行う必要は無い。
【0147】
次に、図16(c)に示すように、陽極形状の開口が形成されたシャドウマスク(不図示)を使用する電子ビーム蒸着法により、各有機発光層41R、42B、43Gの上に透明導電膜としてITO膜を約80nmの厚さに選択的に形成し、それらを赤色用陽極44R、青色用陽極44B、及び緑色用陽極44Gとする。
【0148】
本実施形態によれば、印刷法により、各色用の陰極40R〜40G上に各色用の塗膜41〜43を選択的に印刷するので、第1〜第4実施形態のように各色の塗膜毎に不溶化工程を行う必要がなく、1回の不溶化工程で全ての塗膜41〜43を一括して不溶化することができるので、プロセスの煩雑化が防止される。
【0149】
しかも、塗膜41〜43の不溶化温度に応じて各陰極40R〜40Gの厚さを変えることで、電磁誘導における各陰極40R〜40Gの発熱量を異ならせることができるため、塗膜41〜43がそれぞれに最適な温度で不溶化され、それらを過剰に加熱してその特性を劣化させてしまうのを防ぐことができる。
【0150】
なお、上記では、陰極40R〜40Gとして非磁性金属であるアルミニウムを使用したが、これに代えて、Fe、Co、Ni、Gd、及びTb等の磁性金属を使用してもよい。その場合は、陰極の総発熱量はヒステリシス損失によるもの(Ph)と抵抗損失によるもの(Pr)との和になるが、Phが陰極の体積に依存する(第1実施形態の式(1))ことから、結局Phも陰極の厚さに依存すると言える。よって、陰極40R〜40Gとして上述のような磁性金属を使用する場合であっても、その厚さを塗膜41〜43毎に変えることで上記の利点を得ることができる。
【0151】
更に、上記では塗膜40R〜40Gの不溶化温度に応じて陰極40R〜40Gの厚さを個別に変えたが、第1実施形態の式(1)、(2)によれば、厚さの他に、陰極の材料、面積、等を変えてもよいことが分かる。
【0152】
なお、本実施形態においては、塗膜41〜43を加熱して各色の有機発光層41R、42B、43Gにしてから各陽極44R〜44Gを形成したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、各塗膜41〜43を形成し、その上に各陽極44R〜44Gを形成した後に、塗膜41〜43を加熱して有機発光層41R、42B、43Gにしてもよい。
【0153】
(6)その他の実施の形態
第1実施形態の式(1)、(2)により、励磁周波数が高いほど電磁誘導による発熱量が大きくなるのが理解される。よって、大きな発熱量が望ましい場合は、励磁周波数を高くすることで対応すればよいことになる。
【0154】
しかしながら、高い励磁周波数を発生するには、高価な交番磁界発生部を必要とし、しかもその交番磁界発生部の回路構成が煩雑になり、更には周辺に高周波の交番磁界が漏れ出して周囲の電子機器に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0155】
そこで、上述の第1〜第5実施形態においては、電磁誘導による加熱を行う前やその最中に、補助加熱手段を用いて、電極を予め室温よりも高い温度に加熱するのが好ましい。
【0156】
そのような補助加熱手段としては、例えば、図17(a)に示すような抵抗加熱を利用したホットプレート50がある。そのホットプレート50上に基板1を載置することで、基板1とその上の電極(不図示)を約100℃程度に加熱する。
【0157】
或いは、ホットプレートに代えて、図17(b)に示すように、レーザ加熱やランプ加熱により電極を加熱してもよい。
【0158】
そのような補助加熱手段を使用することで、高周波の交番磁界を使用しなくとも電極を所望の温度にまで加熱することができる。
【0159】
【実施例】
以下、本発明者が実際に行った実施例について説明する。
【0160】
(1)第1実施例
本実施例は、既述の第1実施形態を単純マトリックスの二色エリアカラーの表示装置に適用したものである。
【0161】
まず、図18の平面図に示すように、帯状の第1陰極2と第2陰極3とが電気的に接続してなるデータバスライン60を基板1上に間隔を置いて複数形成した。基板1としては、平面サイズが30mm×30mmの正方形のガラス基板を使用した。また、データバスライン60の幅は30μmとし、それを10μmの間隔を隔てながら全部で200本形成した。
【0162】
図18のI−I線断面図とII−II線断面図をそれぞれ図19(a)、(b)に示す。
【0163】
図19(a)に示すように、第2陰極3は既述の磁性導電膜3aと被覆膜3bとの二層構造を有する。磁性導電膜3aは、シャドウマスクを使用する電子ビーム蒸着により形成され、その厚さを250nmとし、その材料としてパーマロイ(40Ni−60Fe)を使用した。また、被覆膜3bとして厚さが30nmのAl層を使用した。
【0164】
一方、図19(b)に示す第1陰極2としては、厚さが300nmのAl層を使用した。この第1陰極2と被覆層3bとは、同一のシャドウマスクを使用する電子ビーム蒸着により形成された。
【0165】
次に、図20に示す平面構造を得るまでの工程について説明する。まず、ポリpフェニレンビニレン(PPV)誘導体の前駆体であるスルホニウム塩高分子(不溶化温度:150〜300℃)を水に溶解してなる塗布液をスピンコートにより厚さ120nmに全面に形成した後、それを窒素の雰囲気中30℃で30分間乾燥させ、第1塗膜とした。
【0166】
その後、既述の第1不溶化工程を行い、第1陰極2上の第1塗膜を選択的に不溶化して、第1有機発光層4aとした。この第1有機発光層4aは、−[C6H4-CH(S+Et2Br-)CH2]n−なる高分子により構成され、黄緑色に発光するものである。
【0167】
この第1不溶化工程は、大気圧の窒素雰囲気中で行われ、交番磁界発生部(図3参照)のコイル8に100kHzの交流電流を流し、100kHzの交番磁界Bを発生させ、第1陰極2を約200℃に加熱した。
【0168】
その後、全体を水に浸し、不溶化されていない部分の第1塗膜を除去した。
【0169】
なお、図20のI−I線断面図及びII−II線断面図は、それぞれ図21(a)、(b)の通りである。
【0170】
次に、図22に示す平面構造を得るまでの工程について説明する。まず、上記PPV誘導体の前駆体におけるベンゼン環の2、5位をエトキシ基で置換したものを水に溶解してなる塗布液をスピンコートにより厚さ120nmに全面に形成した後、それを窒素の雰囲気中30℃で30分間乾燥させ、第2塗膜(不溶化温度:50〜150℃)とした。
【0171】
その後、既述の第2不溶化工程を行い、第2陰極3上の第2塗膜を選択的に不溶化し、第2有機発光層5aとした。この第2有機発光層5aは、−[C6H2(OC2H5)2−CH(S+Et2Br-)CH2]n−なる高分子により構成され、赤橙色の光を発光するものである。
【0172】
この第2不溶化工程においては、既述の第1不溶化工程と同じ交番磁界発生部を使用し、コイル8(図3参照)への入力電流の周波数を10kHz、そのパワーを100wとして、大気圧の窒素雰囲気中で第2陰極3を80℃に加熱した。
【0173】
その後、全体を水に浸し、不溶化されていない部分の第2塗膜を除去した。
【0174】
なお、図22のI−I線断面図及びII−II線断面図は、それぞれ図23(a)、(b)のようになる。
【0175】
次に、図24の平面図に示すように、陽極形状の開口が形成されたシャドウマスク(不図示)を使用する電子ビーム蒸着により、ITOを厚さ約80nmに形成し、幅30μmの帯状の走査バスライン(陽極)61とする。その走査バスライン61は、データバスライン60と直交する方向に延在し、10μmの間隔を置きながら全部で120本形成された。
【0176】
以上により、本実施例に係る有機EL表示装置が完成する。この表示装置は、第1陰極2が配列された領域では黄緑色に発光し、第2陰極3が配列された領域では赤橙色に発光する、二色エリアカラーのトップエミッション型の表示装置である。
【0177】
(2)第2実施例
本実施例は、記述の第4実施形態を単純マトリックス型の二色エリアカラーの表示装置に適用したものである。
【0178】
まず、図26の平面図に示すように、第1実施形態と同じ基板1の全面にITOを厚さ150nmに形成し、それをフォトリソグラフィによりパターニングして、帯状の走査バスライン65(陽極)を幅30μmに形成した。この走査バスライン65の上半分は赤色用陽極30Rとして機能し、下半分は緑色用陽極30Gとして機能する。このバスライン65は、10μmの間隔を置いて220本形成された。
【0179】
なお、図26のI−I線断面図とII−II線断面図は、それぞれ図27(a)、(b)のようになる。
【0180】
次いで、図28の平面構造を得るまでの工程について説明する。まずポリpフェニレンビニレン(PPV)の前駆体であるスルホニウム塩高分を水に溶解してなる塗布液をスピンコートにより厚さ120nmに全面に形成した後、それを窒素の雰囲気中30℃で30分間乾燥させ、緑色用塗膜37(不溶化温度:150〜300℃)とした。
【0181】
また、これと共に、図29に示す加熱用基板32を用意した。この加熱用基板32としてはガラス基板を使用し、不図示のシャドウマスクを用いる電子ビーム蒸着により、加熱用基板32の表面上にアルミニウムよりなる厚さ1μmの導体パターン33を形成した。この導体パターン33は、走査バスライン65(図26参照)の下半分、すなわち緑色用陽極30Gと同じパターン形状を有する。
【0182】
次に、この加熱用基板32と基板1とを対向させ、その後それぞれの導体パターン33と緑色用陽極30Gとを位置あわせした後、導体パターン33を緑色用塗膜37に当接させる。当接後の図29のI−I線断面図とII−II線断面図は、それぞれ図30(a)、(b)のようになる。なお、この図30(a)、(b)は、それぞれ図28のI−I線断面図及びII−II線断面図にも対応する。
【0183】
その後、第1実施例で使用したのと同じ交番磁界発生部(図3参照)を使用し、そのコイル8に100kHz、100Wの交流電流を流し、100kHzの交番磁界Bを発生させた。そして、大気圧の窒素雰囲気中で導体パターン33をこの交番磁界Bに曝すことにより、電磁誘導により導体パターン33を200℃に約30分間加熱した。
【0184】
その結果、導体パターン33と対向する緑色用陽極30G上の緑色用塗膜37が選択的に加熱され不溶化し、緑色有機発光層37Gとなる。なお、この緑色有機発光層37Gは、−[C6H4-CH(S+Et2Br-)CH2]n−なる高分子により構成されるものである。
【0185】
その後、全体を水に浸し、不溶化されていない部分の緑色用塗膜37を除去した。
【0186】
これにより、図31の平面図に示すように、緑色用陽極30G上にのみ緑色有機発光層37Gが残ることになる。なお、図31のI−I線断面図及びII−II線断面図は、それぞれ図32(a)、(b)のようになる。
【0187】
次いで、図33に示す平面構造を得るまでの工程について説明する。まず、PPVの中間体におけるベンゼン環の2、5位をエトキシ基で置換したPPVの誘導体であるスルホニウム塩高分子を水に溶解してなる塗布液をスピンコートにより厚さ120nmに全面に形成した後、それを窒素の雰囲気中30℃で30分間乾燥させ、赤色用塗膜(不溶化温度:50〜150℃)とした。
【0188】
その後、上記と同じ交番磁界発生部を使用し、コイル8(図3参照)への入力電流の周波数を10kHz、そのパワーを100wとして、導体パターン33を80℃に約30分間加熱した。これにより、赤色用陽極30R上の赤色用塗膜が選択的に不溶化され、赤色有機発光層31Rとなった。なお、この赤色有機発光層31Rは、−[C6H2(OC2H5)2−CH(S+Et2Br-)CH2]n−なる高分子により構成されるものである。
【0189】
その後、全体を水に浸し、不溶化されていない部分の赤色用塗膜を除去した。
【0190】
なお、図33のI−I線断面図及びII−II線断面図は、それぞれ図34(a)、(b)のようになる。
【0191】
次に、図35の平面構造を得るまでの工程について説明する。まず、データバスライン形状の開口が形成されたシャドウマスクを使用する蒸着法により、基板1上と各発光層37G、31R上とにアルミニウムとリチウムとの合金膜(Al-Li膜)を厚さ約50nm程度に選択的に形成した。次いで、そのAl-Li膜の上に、上記と同じシャドウマスクを使用する蒸着法によりアルミニウム膜を厚さ約250nm程度に選択的に形成した。そして、上記のAl-Li膜とアルミニウム膜との積層膜をデータバスライン(陰極)66として使用した。このデータバスライン66は、幅が約30μmであり、走査バスライン65と直交する方向に延在して、10μmの間隔を置きながら全部で120本形成された。
【0192】
なお、図35のI−I線断面図とII−II線断面図は、それぞれ図36(a)、(b)のようになる。
【0193】
以上により、本実施例に係る有機EL表示装置が完成する。この表示装置は、緑色用陽極30G配列された領域では黄緑色に発光し、赤色用陽極30Rが配列された領域では赤橙色に発光する、二色エリアカラーのボトムエミッション型の表示装置である。
【0194】
以下に、本発明の特徴を付記する。
【0195】
(付記1) 絶縁性基板上に電極を形成する工程と、
有機発光層用の塗膜を前記電極上と前記絶縁性基板上とに形成する工程と、
電磁誘導により前記電極を発熱させ、該発熱によって前記電極上の前記塗膜を選択的に加熱して不溶化する不溶化工程と、
前記不溶化工程後、前記塗膜を液に曝し、不溶化されていない部分の前記塗膜を選択的に溶解して除去すると共に、不溶化された部分の前記塗膜を有機発光層として前記電極上に残す工程と、
を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法。(1)
(付記2) 前記電極として、抵抗率が1mΩcm以下の非磁性導電膜又は該非磁性導電膜を含む積層膜を使用することを特徴とする付記1に記載の有機EL素子の製造方法。
【0196】
(付記3) 前記非磁性導電膜として、アルミニウム膜、アルミニウム合金膜、マグネシウム膜、及びマグネシウム合金膜のいずれかを使用することを特徴とする付記2に記載の有機EL素子の製造方法。
【0197】
(付記4) 前記電極として、磁性導電膜又は該磁性導電膜を含む積層膜を使用することを特徴とする付記1に記載の有機EL素子の製造方法。
【0198】
(付記5) 前記磁性導電膜として、鉄族元素、希土類元素、及び磁性金属酸化物のいずれかよりなる膜を使用することを特徴とする付記4に記載の有機EL素子の製造方法。
【0199】
(付記6) 前記磁性金属酸化物として、EuO又はCrO2を使用することを特徴とする付記5に記載の有機EL素子の製造方法。
【0200】
(付記7) 前記電極を形成する工程は、
前記絶縁性基板上に透明導体パターンを形成する工程と、
前記透明導体パターンの上面よりも小さいレジストパターンを該透明導体パターンの上面上に形成する工程と、
前記レジストパターンが残存する状態で前記透明導体パターンをめっき液に浸し、めっきにより、前記透明導体パターンの側壁と上面の縁部とに導電膜を形成して、該導電膜と前記導体パターンとを前記電極として使用する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程とを有すると共に、
前記絶縁性基板として光学的に透明なものを使用することを特徴とする付記1に記載の有機EL素子の製造方法。
【0201】
(付記8) 前記電極を形成する工程は、
前記絶縁性基板上に透明導電膜を形成する工程と、
前記透明導電膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをエッチングマスクに使用しながら前記透明導電膜をエッチングして透明導体パターンにする工程と、
前記レジストパターンが残存する状態で前記透明導体パターンをめっき液に浸し、めっきにより前記透明導体パターンの側壁に導電膜を形成して、該導電膜と前記透明導体パターンとを前記電極として使用する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程とを有すると共に、
前記絶縁性基板として光学的に透明なものを使用することを特徴とする付記1に記載の有機EL素子の製造方法。
【0202】
(付記9) 絶縁性基板上に電極を形成する工程と、
有機発光層用の塗膜を前記電極上と前記絶縁性基板上とに形成する工程と、
前記電極と対向する導体パターンを前記塗膜に近接若しくは当接させる工程と、
前記導体パターンを電磁誘導により発熱させ、該発熱によって該導体パターンに対向する前記電極上の前記塗膜を選択的に加熱して不溶化する不溶化工程と、
前記不溶化工程後、前記塗膜を液に曝し、不溶化されていない部分の前記塗膜を選択的に溶解して除去すると共に、不溶化された部分の前記塗膜を有機発光層として前記電極上に残す工程と、
を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法。(2)
(付記10) 前記導体パターンを前記塗膜に近接若しくは当接させる工程において、前記導体パターンを前記塗膜に対し前記電極の短辺幅以下の距離に近接させることを特徴とする付記9に記載の有機EL素子の製造方法。
【0203】
(付記11) 前記不溶化工程の最中又はその前に、補助加熱手段を用いて、前記電極を室温よりも高い温度に加熱することを特徴とする付記1乃至付記10のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【0204】
(付記12) 前記補助加熱手段として、ホットプレート、レーザ加熱、及びランプ加熱のいずれかを使用することを特徴とする付記11に記載の有機EL素子の製造方法。
【0205】
(付記13) 前記不溶化工程を真空中又は不活性ガスの雰囲気中で行うことを特徴とする付記1乃至付記12のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【0206】
(付記14) 絶縁性基板上に電極を形成する工程と、
有機発光層用の塗膜を前記電極上に選択的に印刷する工程と、
前記電極を電磁誘導により発熱させ、該発熱によって前記電極上の前記塗膜を加熱して有機発光層にする工程と、
を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法。(3)
(付記15) 絶縁性基板上に第1電極を形成する工程と、
電磁誘導の際に前記第1電極よりも高温に発熱する第2電極を前記絶縁性基板上に形成する工程と、
第1有機発光層用の第1塗膜を前記第1電極上に選択的に印刷する工程と、
前記第1塗膜よりも不溶化温度が高い第2有機発光層用の第2塗膜を前記第2電極上に選択的に印刷する工程と、
前記第1電極及び前記第2電極に対して電磁誘導により、前記第1電極よりも高温に前記第2電極を発熱させ、該発熱によって前記第1電極上の前記第1塗膜を加熱して第1有機発光層にすると共に、前記第2電極上の前記第2塗膜を加熱して第2有機発光層にする工程と、
を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0207】
(付記16) 第1電極を絶縁性基板上に形成する工程と、
第1の励磁周波数に対しては前記第1電極よりも低温に発熱し、第2の励磁周波数に対しては前記第1電極よりも高温に発熱する第2電極を前記絶縁性基板上に形成する工程と、
第1有機発光層用の第1塗膜を前記第1電極上、前記第2電極上、及び前記絶縁性基板上に形成する工程と、
前記第1の励磁周波数の磁界中に前記絶縁性基板を置いて電磁誘導により前記第1電極を前記第2電極よりも高温に発熱させ、該発熱によって前記第1電極上の前記第1塗膜を加熱して選択的に不溶化する第1不溶化工程と、
前記第1不溶化工程後、前記第1塗膜を液に曝し、不溶化されていない部分の前記第1塗膜を選択的に溶解して除去すると共に、不溶化された部分の前記第1塗膜を前記第1有機発光層として前記第1電極上に残す工程と、
第2有機発光層用の第2塗膜を前記第2電極上、前記第1有機発光層上、及び前記絶縁性基板上に形成する工程と、
前記第2の励磁周波数の磁界中に前記絶縁性基板を置いて電磁誘導により前記第2電極を前記第1電極よりも高温に発熱させ、該発熱によって前記第2電極上の前記第2塗膜を加熱して選択的に不溶化する第2不溶化工程と、
前記第2不溶化工程後、前記第2塗膜を液に曝し、不溶化されていない部分の前記第2塗膜を選択的に溶解して除去すると共に、不溶化された部分の前記第2塗膜を前記第2有機発光層として前記第2電極上に残す工程と、
を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【0208】
(付記17) 前記第1電極及び前記第2電極として共に磁性導電膜と非磁性導電膜との積層膜を使用し、且つ、前記第1電極における前記非磁性導電膜の厚さを前記第2電極における前記非磁性導電膜の厚さよりも厚くすることを特徴とする付記16に記載の有機EL素子の製造方法。
【0209】
(付記18) 絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に形成された陰極と、
前記陰極上に形成された有機発光層と、
前記有機発光層上に形成された陽極と、
を備え、
前記陰極が、磁性導電膜又は該磁性導電膜を含む積層膜からなることを特徴とする有機EL素子。(4)
(付記19) 絶縁性基板と、
前記絶縁性基板上に形成された透明導体パターンと、
前記透明導体パターンの側壁に形成されて該透明導体パターンと共に陽極を構成する導電膜と、
前記陽極上に形成された有機発光層と、
前記有機発光層上に形成された陰極と、
を備えたことを特徴とする有機EL素子。
【0210】
(付記20) 前記導電膜が、前記透明導体パターンの前記側壁の他に、該透明導体パターンの上面の縁部にも形成されたことを特徴とする付記19に記載の有機EL素子。
【0211】
(付記21) 付記18乃至付記20のいずれかに記載の前記有機EL素子を複数配列してなる有機EL表示装置。(5)
【0212】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電磁誘導により電極を加熱することで電極上の塗膜を不溶化して有機発光層にし、その後、不溶化されていない部分の塗膜を溶解して除去するので、有機発光層を電極上に選択的に形成することができ、従来例のようにレジストを使用して有機発光層をパターニングする必要が無い。
【0213】
そのような電磁誘導においては、絶縁体よりなる絶縁基板は加熱されないので、絶縁基板が熱により変形する恐れが無い。また、電極が電磁誘導用の磁界に曝された時点からすぐさま加熱を開始することができるので、加熱に時間的な遅延が伴わない。更に、加熱の具合が実質的に磁界と電極との相互作用によってのみ定まるので、電極を再現性良く加熱することができる。
【0214】
なお、電極として、磁性導電膜又は該磁性導電膜を含む積層膜を使用すると、磁性導電膜のキュリー温度を境にして電極の温度上昇が鈍るので、電極の温度コントロールが容易となる。
【0215】
更に、透明導体パターンとその側壁の導電膜により電極を構成し、その導電膜を電磁誘導により発熱させることで、電極上の塗膜を不溶化して有機発光層にしても良い。この場合は、絶縁性基板として光学的に透明なものを使用することで、ボトムエミッション型の有機EL素子を作製することができる。
【0216】
また、このように透明導体パターンの側壁に導電膜を形成することで電極を低抵抗化することもできる。
【0217】
上記のような導電膜を透明導体パターンの側壁に形成する場合、該透明導体パターンの上面よりも小さいレジストを該上面上に形成することで、めっきにより、透明導体パターンの上面の縁部と側壁とに確実に導電膜を形成することができる。
【0218】
或いは、透明導体パターンをパターニングするのに使用されたレジストを導電膜用のめっきレジストとして使用することで、プロセスの煩雑化を防ぐことができる。
【0219】
また、電極を電磁誘導により加熱するのではなく、その電極に対向する導体パターンを塗膜に当接若しくは近接させ、その導体パターンを電磁誘導により加熱して塗膜を不溶化することで、電極の設計に制約が無くなり、電極を思いのままに設計することができる。
【0220】
更に、電極の上に塗膜を選択的に印刷しても、レジストを使用して塗膜をパターニングする必要が無くなる。
【0221】
また、第1電極と、第1の励磁周波数に対しては第1電極よりも低温に発熱し、第2の励磁周波数に対しては第1電極よりも高温に発熱する第2電極とを形成することで、異なる色を発光する第1、第2有機発光層を第1、第2電極上に自己整合的に塗り分けることができる。
【0222】
なお、上記いずれの発明においても、電磁誘導で塗膜を不溶化する工程の最中に、補助加熱手段を用いて電極を予め室温よりも高い温度に加熱することで、高い周波数の交番磁界を使用しなくても電極を所望の温度にまで加熱することができる。
【0223】
また、そのように塗膜を不溶化する工程を、真空中又は不活性ガスの雰囲気中で行うことで、有機発光層が酸素や水に触れてその特性が劣化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その1)である。
【図2】 本発明の第1の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その2)である。
【図3】 本発明の各実施形態で使用される交番磁界発生部の構成図である。
【図4】 本発明の第1の実施の形態における、第1陰極及び第2陰極の各発熱量と、励磁周波数との関係について示すグラフである。
【図5】 本発明の第2の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その1)である。
【図6】 本発明の第2の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その2)である。
【図7】 本発明の第2の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その3)である。
【図8】 本発明の第3の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その1)である。
【図9】 本発明の第3の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その2)である。
【図10】 本発明の第4の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その1)である。
【図11】 本発明の第4の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その2)である。
【図12】 本発明の第4の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その3)である。
【図13】 本発明の第4の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その4)である。
【図14】 本発明の第4の実施の形態で使用される加熱用基板の別の例を示す断面図である。
【図15】 本発明の第5の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その1)である。
【図16】 本発明の第5の実施の形態に係る有機EL素子の製造工程について示す断面図(その2)である。
【図17】 本発明のその他の実施の形態に係る補助加熱手段について示す断面図である。
【図18】 本発明の第1実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す平面図(その1)である。
【図19】 本発明の第1実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す断面図(その1)である。
【図20】 本発明の第1実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す平面図(その2)である。
【図21】 本発明の第1実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す断面図(その2)である。
【図22】 本発明の第1実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す平面図(その3)である。
【図23】 本発明の第1実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す断面図(その3)である。
【図24】 本発明の第1実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す平面図(その4)である。
【図25】 本発明の第1実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す断面図(その4)である。
【図26】 本発明の第2実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す平面図(その1)である。
【図27】 本発明の第2実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す断面図(その1)である。
【図28】 本発明の第2実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す平面図(その2)である。
【図29】 本発明の第2実施例で使用される加熱用基板の平面図である。
【図30】 本発明の第2実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す断面図(その2)である。
【図31】 本発明の第2実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す平面図(その3)である。
【図32】 本発明の第2実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す断面図(その3)である。
【図33】 本発明の第2実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す平面図(その4)である。
【図34】 本発明の第2実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す断面図(その4)である。
【図35】 本発明の第2実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す平面図(その5)である。
【図36】 本発明の第2実施例に係る有機EL表示装置の製造工程について示す断面図(その5)である。
【符号の説明】
1・・・基板、2・・・第1陰極、3・・・第2陰極、3a・・・磁性導電膜、3b・・・被覆膜、4・・・第1塗膜、4a・・・第1有機発光層、5・・・第2塗膜、5a・・・第2有機発光層、6・・・第1陽極、7・・・第2陽極、8・・・コイル、10・・・第1透明導体パターン、11・・・第2透明導体パターン、12・・・非磁性導電膜、13・・・第1陽極、14、15・・・レジストパターン、16・・・磁性導電膜、17・・・第2陽極、18・・・第1塗膜、18a・・・第1有機発光層、19・・・第2塗膜、19a・・・第2有機発光層、20・・・第1陰極、21・・・第2陰極、22・・・透明導体パターン、23・・・レジストパターン、24・・・導電膜、25・・・陽極、26・・・塗膜、26a・・・有機発光層、27・・・陰極、30R・・・赤色用陽極、30B・・・青色用陽極、30G・・・緑色用陽極、31・・・赤色用塗膜、31R・・・赤色有機発光層、32・・・加熱用基板、33・・・導体パターン、34・・・青色用塗膜、34B・・・青色有機発光層、37・・・緑色用塗膜、37G・・・緑色有機発光層、38R・・・赤色用陰極、38B・・・青色用陰極、38G・・・緑色用陰極、36・・・緩衝膜、40R・・・赤色用陰極、40B・・・青色用陰極、40G・・・緑色用陰極、41・・・赤色用塗膜、41R・・・赤色有機発光層、42・・・青色用塗膜、42B・・・青色有機発光層、43・・・緑色用塗膜、43G・・・緑色有機発光層、44R・・・赤色用陽極、44B・・・青色用陽極、44G・・・緑色用陽極、50・・・ホットプレート、60、66・・・データバスライン、61、65・・・走査バスライン、70・・・励磁回路。

Claims (5)

  1. 絶縁性基板上に第1電極を形成する工程と、
    電磁誘導の際に前記第1電極よりも高温に発熱する第2電極を前記絶縁性基板上に形成する工程と、
    第1有機発光層用の第1塗膜を前記第1電極上に選択的に印刷する工程と、
    前記第1塗膜よりも不溶化温度が高い第2有機発光層用の第2塗膜を前記第2電極上に選択的に印刷する工程と、
    前記第1電極及び前記第2電極に対して電磁誘導により、前記第1電極よりも高温に前記第2電極を発熱させ、該発熱によって前記第1電極上の前記第1塗膜を加熱して第1有機発光層にすると共に、前記第2電極上の前記第2塗膜を加熱して第2有機発光層にする工程と、
    を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  2. 第1電極を絶縁性基板上に形成する工程と、
    第1の励磁周波数に対しては前記第1電極よりも低温に発熱し、第2の励磁周波数に対しては前記第1電極よりも高温に発熱する第2電極を前記絶縁性基板上に形成する工程と、
    第1有機発光層用の第1塗膜を前記第1電極上、前記第2電極上、及び前記絶縁性基板上に形成する工程と、
    前記第1の励磁周波数の磁界中に前記絶縁性基板を置いて電磁誘導により前記第1電極を前記第2電極よりも高温に発熱させ、該発熱によって前記第1電極上の前記第1塗膜を加熱して選択的に不溶化する第1不溶化工程と、
    前記第1不溶化工程後、前記第1塗膜を液に曝し、不溶化されていない部分の前記第1塗膜を選択的に溶解して除去すると共に、不溶化された部分の前記第1塗膜を前記第1有機発光層として前記第1電極上に残す工程と、
    第2有機発光層用の第2塗膜を前記第2電極上、前記第1有機発光層上、及び前記絶縁性基板上に形成する工程と、
    前記第2の励磁周波数の磁界中に前記絶縁性基板を置いて電磁誘導により前記第2電極を前記第1電極よりも高温に発熱させ、該発熱によって前記第2電極上の前記第2塗膜を加熱して選択的に不溶化する第2不溶化工程と、
    前記第2不溶化工程後、前記第2塗膜を液に曝し、不溶化されていない部分の前記第2塗膜を選択的に溶解して除去すると共に、不溶化された部分の前記第2塗膜を前記第2有機発光層として前記第2電極上に残す工程と、
    を有することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  3. 前記第1電極及び前記第2電極として共に磁性導電膜と非磁性導電膜との積層膜を使用し、且つ、前記第1電極における前記非磁性導電膜の厚さを前記第2電極における前記非磁性導電膜の厚さよりも厚くすることを特徴とする請求項2に記載の有機EL素子の製造方法。
  4. 絶縁性基板と、
    前記絶縁性基板上に形成された複数の透明導体パターンと、
    前記透明導体パターンの側壁に形成されて該透明導体パターンと共に陽極を構成する導電膜と、
    前記陽極上に形成されたと共に、前記透明導体パターンの間で分離された有機発光層と、
    前記有機発光層上に形成された陰極と、
    を備えたことを特徴とする有機EL素子。
  5. 請求項4に記載の前記有機EL素子を複数配列してなる有機EL表示装置。
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