JP4228958B2 - 乗員離脱装置 - Google Patents

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本発明は、モータ等の電動駆動力により移動する電動シートにおいて、エアバッグが作動した非常時に、電動シートを容易に移動させることが可能な乗員離脱装置に関する。
近年普及の著しい自動車等の電動シートは、通常、モータにより駆動されており、その駆動エネルギーをバッテリー電源に依存している。たとえば、衝突時には、バッテリーが破損したり、配線系統のワイヤが噛み込んだりし、地絡故障、断線故障などが発生することがある。そのため、衝突後には、バッテリー電源が寸断され、電動シートを動かすことができなくなる場合がある。
電動シートは、一般に、電動モータで発生した回転駆動力をギア等により減速して駆動方向を変えて、シート本体をスライド移動させている。通常、モータ側から一方向に駆動力が伝わる仕組みになっているので、たとえば、駆動力を受ける側のシート本体を動かしても、電動モータを空転させることはできず、結果として、電力の供給無しではシート本体の位置を変えられない。
そのため、衝突時に車体がつぶれ、乗員がダッシュボードやエアバッグとシートとの間に挟まれた場合に、シート本体の位置を簡単に移動させたいという要求がある。
ところで、特許文献1および特許文献2には、車両が衝突して、仮に電源ケーブルが切断された場合でも、衝突後にドアロックが解除できるドアロック制御装置が開示されている。この他にも特許文献2には、非常時の二次災害を防ぐための消火装置や、電源遮断装置、事故を外部に通報する通報装置等が開示されている。したがって、電動シート装置に関しても、上記問題点を解消するための手段が必要である。
そこで、特許文献3では、シートを固定している止め具を外して、シートを後方に移動させるアクチュエータを有する乗員離脱装置を開示している。しかしながら、特許文献3の乗員離脱装置では、アクチュエータとシートとが常に連動するため、アクチュエータを作動させる電力が尽きた場合には、シートの移動が困難となる場合が考えられる。
特開平07−269208号公報 特開平06−234342号公報 特開平06−055985号公報
本発明は、上記問題点を解決するために、非常時などに確実に移動させることができ、乗員が迅速にシートから離脱できる乗員離脱装置を提供することを目的とする。
本発明の乗員離脱装置は、車両内に前後方向に移動可能に設置されたシート本体と、電力の供給により作動する電動駆動源と、前記シート本体と該電動駆動源とを連結して該シート本体を移動させる駆動力伝達手段と、該駆動力伝達手段の伝達を解除する伝達解除手段と、からなる電動シート装置と、前記シート本体の前方に装備されたエアバッグと、前記車両の状態を検出する検出手段と、該検出手段の検出結果に応じて前記エアバッグを展開させ、該エアバッグが展開した後に前記伝達解除手段を作動させる制御手段と、を有することを特徴とする。
本発明の乗員離脱装置において、前記制御手段は、バックアップ電源を有するのが望ましい。また、前記電動駆動源は、電動モータであるのが望ましい。
前記駆動力伝達手段は、前記電動モータに回転駆動されるウォームホイールと、該ウォームホイールと嵌合し該ウォームホイールの回転により前記シート本体を移動させるウォームギアと、からなるギア部を有するのが好ましい。この際、前記伝達解除手段は、前記ウォームギアと前記ウォームホイールとの嵌合を解除するアクチュエータを有するのが好ましい。また、前記アクチュエータは、前記ウォームギアまたは前記ウォームホイールの中心軸を移動させるソレノイドであるのが好ましい。
本発明の乗員離脱装置は、シート本体と電動駆動源とを連結して駆動力を伝達させてシート本体を移動させる駆動力伝達手段の伝達を解除する伝達解除手段を有するため、電動駆動源からの駆動力を用いずに電動シートを移動させることができる。
また、検出手段の検出結果に応じてエアバッグを展開させ、エアバッグが展開した後に伝達解除手段を作動させる制御手段を有するため、衝突から適切な時間差をもたせて伝達解除手段を作動させることができる。さらに、バックアップ電源を有する制御手段であれば、電動駆動源を駆動する電力の供給が絶たれた場合であっても確実に電動シートを移動させることができる。
以下に、本発明の乗員保護装置を実施するための最良の形態を、図1を用いて説明する。
本発明の乗員離脱装置は、電動シート装置と、エアバッグと、検出手段と、制御手段と、を有する。以下に、それぞれの形態を説明する。
本発明の乗員離脱装置において、電動シート装置は、シート本体と、電動駆動源と、駆動力伝達手段と、伝達解除手段と、からなる。
シート本体は、車両内に前後方向に移動可能に設置されたシート本体であれば限定はないが、スライド機構により前後方向に移動する形式のものが好ましい。また、本発明において、電動シート装置とは特にフロントシートに関する装置であるが、フロントシート以外のシート(2列目以降のシート等)に適用してもよい。
電動駆動源は、電力の供給により作動するものであれば特に限定はなく、電動モータであるのが望ましい。そして、電動駆動源は、車両のバッテリー電源により作動するのがよい。
駆動力伝達手段は、シート本体と電動駆動源とを連結してシート本体を移動させる。駆動力伝達手段は、シート本体と電動駆動源とを連結することにより、電動駆動源からの駆動力をシート本体に伝達させることができれば、その構成に特に限定はない。たとえば、電動モータに回転駆動されるウォームホイールと、ウォームホイールと嵌合しウォームホイールの回転によりシート本体を移動させるウォームギアと、からなるギア部を有するのが好ましい。ギア部は、ウォームホイールとウォームギアとの嵌合を解除する(詳しくは後述)ことにより、駆動力の伝達を機械的に断絶することが容易にできるため、本発明の乗員離脱装置に適した構成である。また、ウォームホイールとウォームギアにより、電動モータの回転を減速させるとともに、駆動力の方向を変化させることができる。駆動力の方向を車両の前後方向に変化させれば、前述のスライド機構に適用できる。
伝達解除手段は、駆動力伝達手段の伝達を解除する。通常、電動シート装置は、電力が供給されないと作動しない。また、一般的な電動シート装置では、駆動力は一方向に伝達されるのみである。したがって、たとえば、非常時に電力の供給が絶たれた場合には、電動駆動源を作動させることはできないし、たとえばシート本体の前後方向に力を加えてシートを移動させようとしても、電動駆動源を電力の供給無しで移動させることは通常不可能である。本発明の乗員離脱装置では、シート本体と電動駆動源とを連結してシート本体を移動させる駆動力伝達手段の伝達を解除することにより、電力の供給無しでもシート本体を移動することができる。
なお、「駆動力伝達手段の伝達を解除する」とは、シート本体と電動駆動源との連結を機械的に解除することである。たとえば、駆動力伝達手段がウォームホイールとウォームギアとからなるギア部を有するものであれば、伝達解除手段は、ウォームギアとウォームホイールとの嵌合を解除するアクチュエータを有するのが好ましい。ウォームギアとウォームホイールとの嵌合を解除することにより、駆動力の伝達を機械的に断絶することが容易にできる。そして、ウォームギアは、電動モータの回転駆動力無しで(たとえばシート本体を人為的に押し戻す)シート本体を前後方向に移動させることができる。
アクチュエータは、車両のバッテリー電源が供給されない場合でも作動する必要があるため、バックアップ電源などからの短時間の通電により作動するものが好ましい。たとえば、ウォームギアまたはウォームホイールの中心軸を移動させるソレノイドであるのが好ましい。ウォームギア、ウォームホイールのうち少なくともどちらかの中心軸を移動させることにより、互いの嵌合を簡単に解除することができる。
また、伝達解除手段は、アクチュエータを作動させるバックアップ電源を有してもよい。バックアップ電源は一般的に用いられているものであればよく、その種類を問わない。そして、バックアップ電源は、制御手段(後述)が有するものを用いてもよい。
エアバッグおよび検出手段は、通常のエアバッグ装置の構成であれば、特に限定はない。また、検出手段は、車両に発生した衝撃(加速度)を検出するGセンサや車速を検出する車速センサ、車両のシートに加えられる重量を検出する重量センサ等の一般的なセンサであればよい。
制御手段は、検出手段の検出結果に応じてエアバッグを展開させ、エアバッグが展開した後に伝達解除手段を作動させる。すなわち、制御手段から、エアバッグを展開させる展開信号と、伝達解除手段を作動させる解除信号と、が送出される。
ところで、エアバッグ装置では、エアバッグECUなどの制御手段において、検出手段からの検出結果を処理情報として演算処理を行い、その演算結果が閾値を超えたか否かによりエアバッグの展開の要否を判定する。そのため、時間の情報を加えた演算処理を行うことにより、エアバッグの展開から適切な時間差をもたせて伝達解除手段を作動させることが容易にできる。
そして、制御手段は、バックアップ電源を有するのが望ましい。バックアップ電源により、バッテリー電源からの電力の供給が断たれた場合でも、制御手段から展開信号と解除信号とを送出することができる。
また、通常、エアバック装置の制御手段(エアバッグECU)には、衝突時にバッテリー電源からの電力の供給が途絶えることを想定し、少なくとも一定時間の制御手段の作動と一回のエアバッグの展開(展開信号の送出)に要する電力を蓄えるバックアップ電源を有する。そこで、このバックアップ電源の電力をエアバッグと電動シート装置(伝達解除手段)とで兼用して、同一のバックアップ電源の電力によりエアバッグの展開と伝達解除手段の解除とを行うことも可能である。
なお、本発明の乗員離脱装置は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、他の構成を追加してもよい。
以下に、本発明の乗員保護装置の実施例を、図2〜図5を用いて説明する。なお、図2は、本実施例の乗員離脱装置を示すブロック図である。また、図3〜図5は、電動シート装置を説明するための模式図である。
本実施例の乗員離脱装置において、電動シート10は、車両内に前後方向に移動可能に設置されたシート本体11と、電力の供給により作動する電動モータ12と、シート本体11と電動モータ12とを連結してシート本体11を移動させるギア部13と、ギア部13の伝達を解除するソレノイド14と、からなる。
シート本体11は、クッション111,バックパッド112,ヘッドレスト113の3部に大きく分かれている(図3)。そのうち、クッション111の下部に固定されたクッションフレーム111’がスライド機構(後述)と連動することにより、車両の前後方向に移動可能となる。
電動モータ12は、固定具121を介して車両のフロアFに固定されている(図4)。なお、電動モータ12は、車両のバッテリー電源から電力を供給されて駆動する。電動モータ12は、電動モータ12の両端部から延出し回転可能に固定された2本の駆動シャフト16を回転駆動する。駆動シャフト16の一端部は、屈曲自在のユニバーサルジョイント15を介して電動モータ12と同軸的に固定されている。駆動シャフト16の他端部は、解除軸141を介してソレノイド14(後述)が固定されている。駆動シャフト16は、解除軸141に回転可能に固定されている。また、駆動シャフト16の中央部には、ウォームホイール131が固定されている。ウォームホイール131は、電動モータ12の回転駆動により回転する。なお、ウォームホイール131は、ギアボックス130(後述)に収納されている。
ギア部13は、歯車であるウォームホイール131と、ウォームホイール131と嵌合部135で噛み合うらせん状の歯137を有するウォームギア136と、からなり、ギアボックス130に収納されている(図5)。なお、図5では、ウォームホイール131の歯132は、ウォームホイール131の全周にわたって形成されているが、その一部のみを示している。
そして、ウォームホイール131とウォームギア136との組み合わせにより、電動モータ12からの回転駆動は、減速されるとともに駆動方向が変化されてウォームギア136に伝達される。つまり、ウォームホイール131が電動モータ12の回転駆動により図5のA−B方向に回転されると、ウォームギア136は図5のA’−B’方向に移動する。
電動モータ12の駆動力でウォームギア136が図5のA’−B’方向に移動することにより、ウォームギア136の移動方向と同方向に伸びるスライド機構17(図4)が連動する。スライド機構17は、クッションフレーム111’に固定されているため、シート本体11は、電動モータ12の駆動力により前後移動する。したがって、ギア部13により、電動モータ12側とシート本体11側が連結され、駆動力が伝達される。
ソレノイド14は、解除軸141を介して駆動シャフト16の他端部に固定されている。ソレノイド14の作動により、ギア部13の伝達が機械的に解除される。ソレノイド14は、解除軸141を嵌合部135の嵌合面に対して略垂直方向(図4の矢印X)に移動させることにより、駆動シャフト16の回転中心を移動(図4および図5の矢印Y)させる。これにより、ウォームホイール131は嵌合部135から離れ(図5の矢印Z)、ギア部13の伝達が解除される。また、駆動シャフト16はユニバーサルジョイント15により電動モータ12と連結されているため、ソレノイド14が作動する際に電動モータ12がフロアFに固定されていても支障はない。
仮に、本実施例において、電動モータ12と駆動シャフト16とが直接連結されている場合は、電動モータ12を移動可能に設置することにより、駆動シャフト16と電動モータ12の回転中心をともに移動させてもよい。
なお、ギア部13,ソレノイド14,ユニバーサルジョイント15,駆動シャフト16は、電動モータ12に対して対称的に配設されている(図4)。そして、ソレノイド14の作動後には、ギアボックス130および駆動シャフト16,ユニバーサルジョイント15は、図4の点線で示した状態となる。
また、本実施例の乗員離脱装置は、エアバッグ20と、センサ30と、エアバッグECU40と、を有する。
エアバッグ20は、シート本体11の前方に装備されている。エアバッグ20は、インフレータ(図示せず)の点火により、必要に応じて展開される。また、センサ30は、車両の状態を常時検出する。センサ30は、加速度を検出するGセンサ、車速を検出する車速センサ、シート本体11に加えられる重量を検出する重量センサからなる。
エアバッグECU40は、センサ30の検出結果に応じてエアバッグ20を展開させ、エアバッグ20が展開してから所定の時間が経過した後にソレノイド14を作動させる。エアバッグECU40には、センサ30から検出結果が入力される。エアバッグECU40は、センサ30から入力された検出結果に基づいて、衝突の判定およびエアバッグ20の展開とソレノイド14の作動を制御する。
また、エアバッグECU40は、コンデンサ41を有する。コンデンサ41には、一定時間のエアバッグECU40の作動とインフレータの点火およびソレノイド14の作動ができる電力が蓄えられている。
次に、本実施例の乗員離脱装置の作用を説明する。
本実施例の乗員離脱装置において、エアバッグECU40では、センサ30の検出結果に基づき演算処理を行い、エアバッグ20の作動条件の要否を判定する。エアバックECU40は、エアバッグ20の展開が必要と判断すると、展開信号を送出する。展開信号は、コンデンサ41からエアバッグ20のインフレータ(図示せず)に電流が送られることにより送出され、エアバッグ20が展開する。
次に、エアバッグECU40は、エアバッグ20が展開してから所定の時間が経過したか否かを判定する。エアバックECU40は、展開から所定の時間が経過したと判断すると、解除信号を送出する。解除信号は、コンデンサ41からソレノイド14に電流が送られることにより送出され、ソレノイド14が作動する。
そして、ソレノイド14の作動により、駆動シャフト16が上方へ突き上げられるため、ギア部13においてウォームホイール131とウォームギア136との嵌合(135)が解除される。そのため、乗員自らがシート本体11に体重をかけて後方に押すか、または、第三者がシート本体11を後方へ押し付けることにより、シート本体11は後方へ容易に移動する。
本発明の乗員離脱装置の概略を表すブロック図である。 実施例の乗員離脱装置を表すブロック図である。 実施例の乗員離脱装置のシート本体の斜視図である。 実施例の乗員離脱装置を模式的に示す斜視図である。 実施例の乗員離脱装置のギアボックス内(ギア部)を模式的に示す斜視図である。
符号の説明
10:電動シート装置
11:シート本体
12:電動モータ(電動駆動源)
13:ギア部(駆動力伝達手段)
131:ウォームホイール
136:ウォームギア
14:ソレノイド(伝達解除手段)
20:エアバッグ
30:センサ(検出手段)
40:エアバッグECU(制御手段)
41:コンデンサ(バックアップ電源)

Claims (6)

  1. 車両内に前後方向に移動可能に設置されたシート本体と、電力の供給により作動する電動駆動源と、前記シート本体と該電動駆動源とを連結して該シート本体を移動させる駆動力伝達手段と、該駆動力伝達手段の伝達を解除する伝達解除手段と、からなる電動シート装置と、
    前記シート本体の前方に装備されたエアバッグと、
    前記車両の状態を検出する検出手段と、
    該検出手段の検出結果に応じて前記エアバッグを展開させ、該エアバッグが展開した後に前記伝達解除手段を作動させる制御手段と、
    を有することを特徴とする乗員離脱装置。
  2. 前記制御手段は、バックアップ電源を有する請求項1記載の乗員離脱装置。
  3. 前記電動駆動源は、電動モータである請求項1または2記載の乗員離脱装置。
  4. 前記駆動力伝達手段は、前記電動モータに回転駆動されるウォームホイールと、該ウォームホイールと嵌合し該ウォームホイールの回転により前記シート本体を移動させるウォームギアと、からなるギア部を有する請求項3記載の乗員離脱装置。
  5. 前記伝達解除手段は、前記ウォームギアと前記ウォームホイールとの嵌合を解除するアクチュエータを有する請求項4記載の乗員離脱装置。
  6. 前記アクチュエータは、前記ウォームギアまたは前記ウォームホイールの中心軸を移動させるソレノイドである請求項5記載の乗員離脱装置。
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