JP4228257B2 - 基礎免震構造物の構築方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基礎免震構造物を構築するに際して、免震化完了までの間、上部構造物に作用する水平力を支承して工事の安全性を確保するための基礎免震構造物の構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、既存の構造物の基礎部分に免震装置を介装して基礎免震構造物にする場合には、先ず上記構造物の外周に山留杭を構築し、この山留杭と構造物との間を掘削して擁壁を設け、次いで構造物を仮設部材によって基礎上に仮支持した後に、既存の軸力材を切断して免震装置を挿入・取付け、上記仮設部材を撤去する方法が採用されている。
このような、既存構造物の基礎免震化工事においては、構造物外周の掘削後から免震装置の取付けが完了するまでの間においては、上部構造物が水平外力に対して不安定になるために、万一発生する地震等に対して安全性を確保することができない。また、新築の基礎免震構造物を構築する場合においては、基礎部分に免震ピットを形成するために、予め上部構造の周囲が掘削されている。このため、基礎部分に免震装置を設置した後、順次上部構造物を構築するに際しても、同様に水平外力に対して当該上部構造物が不安定になる。
【0003】
そこで、従来、基礎免震化構造物を構築するに際しては、図15に示すように、基礎構造物(基礎部分)1と上部構造物2との間に、免震装置3を設置するとともに鋼製のパネルやブレース4を仮設して、一旦上部構造物2を基礎構造物1に仮固定しておいたり、あるいは図16に示すように、基礎構造物1における免震ピット側壁1aと上部構造物2との間に、切梁5を仮設して、免震化が完了するまでの間、両構造物1、2を互いに緊結することにより、万一工事途上に地震等が発生して上部構造物2に水平外力が作用した場合においても、当該上部構造物2の安定を保持する方法が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一方の図15に示した従来の基礎免震構造物の構築方法にあっては、想定される地震力に対向するためには、鋼製のブレース4が大型となり、よって重量のある鋼材を地下の免震ピット内に搬入して組み立て、上部構造物2および基礎部分1と多本数のアンカーボルトで接合しなければならず、さらに免震化工事が完了した後においては、上記ブレース4を解体して、免震ピット内から搬出する必要があるため、これらの作業に多大の手間を有するという問題点があった。
【0005】
また、他方の図16に示した構築方法にあっては、上記切梁5を現場打ちの鉄筋コンクリートによって仮設することにより、上部構造物2の周囲における作業となり、よって鉄筋や型枠の組み立て、コンクリートの打設等の工程が、図15に示した仮設ブレース4の設置と比較して、さほど困難ではないという利点を有するものの、免震化が完了した後に、上部構造物2に地震発生時における十分な水平変位を許容する空間を確保するために、上記切梁5を切断して除去する必要があり、この作業に多くの手間を要するうえに、騒音や振動が発生するという問題点があった。
【0006】
このように、上述したいずれの構築方法においても、ブレース4や切梁5が免震化完了後に解体すべき仮設部材であるために、それぞれの設置および解体に多大の手間を要し、この結果、工事費の上昇と施工工期の長期化を招くとともに、資源の浪費化をも招来するという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記従来の基礎免震構造物の構築方法が有する課題を解決すべくなされたもので、施工コストの低減化および工期の短縮化を図ることができるとともに、大きな騒音や振動を発生することなく、かつ資源の節約にも資することができる基礎免震構造物の構築方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明に係る基礎免震構造物の構築方法は、基礎部分と上部構造物との間に免震装置が介装された基礎免震構造物を構築するに際して、上記免震装置による上部構造物の免震化が完了する前に、上部構造物と当該上部構造物を囲繞する側壁に、それぞれ互いの対向方向に突出するスラブ状の受け部を一体的に形成し、これら受け部間に、当該受け部との境界面に形成されたシアーコッターを介して歯合するスラブ状の連結部材を介装して上記受け部と接続することにより、上部構造物に作用する水平力を側壁によって支承するとともに上記上部構造物と上記側壁との間に発生する剪断力に対して上記受け部と上記連結部材との噛合いによって抵抗し、免震化が完了した後に、上部構造物の水平方向変位が可能となるように、受け部と連結部材との接続を解除することを特徴とするものである。
【0012】
請求項1に記載の基礎免震構造物の構築方法においては、免震装置による上部構造物の免震化が完了する前に、先ず上部構造物とこれを囲繞する免震ピットや擁壁等の側壁に、互いの対向方向に突出する受け部を一体的に形成し、次いでこれら受け部間に連結部材を介装して受け部と接続することにより、上部構造物に作用する水平力を側壁によって支承しているので、工事途上の地震が発生した場合においても、上部構造物が安定的に保持されて安全性が確保される。
【0013】
また、免震化が完了した後には、上部構造物の水平方向変位が可能となるように、受け部と連結部材との間の接続を解除したり、さらには連結部材を取り外して、受け部と連結部材との間に間隙を形成することにより、地震時に上部構造物が免震装置によって水平方向に変位自在となり、よって期待される免震効果を発揮することが可能となる。
【0014】
このように、本発明に係る基礎免震構造物の構築方法によれば、連結部材の介装・接続作業と、接続解除あるいは連結部材の取り外し作業といった、上部構造物の周囲における容易かつ短時間の作業によって、工事途上においては上部構造物の安定性を保持して安全性を確保し、かつ免震化完了後においては上部構造物の水平変位を確保して免震効果を発揮させることができる。この結果、従来のように仮設のブレースや切梁を設置したり、あるいはこれらを解体して搬出したりする大掛かりな作業が不要となり、騒音や振動を発生すること無く、しかも施工コストの低減化と工期の短縮化とを図ることができ、かつ資源の節約にも資することができる。
【0017】
特に、上記受け部および連結部材を、上部構造物の外周を覆うスラブ状に形成するとともに、互いをシアーコッターによって噛み合わせているために、上部構造物に作用する水平力を側壁によって支承するとともに上記上部構造物と上記側壁との間に発生する剪断力に対して上記受け部と上記連結部材との噛合いによって抵抗することができ、よって高い強度によって上記安全性を向上させることができるという効果が得られる
【0018】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1〜図7は、本発明に係る基礎免震構造物の構築方法の第1の実地形態およびその変形例を示すもので、図15および図16に示したものと同一構成部分については、同一符号を付して、その説明を簡略化する。
図1〜図3に示すように、この構築方法においては、基礎部分1を構築し、免震装置3を設置するとともに、上部構造物2を構築して当該上部構造物2の免震化が完了する前に、上部構造物2と上部構造物を囲繞する基礎部分1における免震ピット側壁1aに、それぞれ全周にわたって互いの対向方向に突出する受け部10を一体的に形成する。この際に、受け部10間の空隙は、地震時に想定される上部構造物2と側壁1aとの最大相対変位を吸収するのに十分な寸法となるように設定しておく。
【0019】
また、受け部10の基端部と上部構造物2または側壁1aとは、アンカーボルト、鉄筋、接続金物等の接合部材12によって緊結することにより一体化する。さらに、受け部10の先端部に、上面側から底面側に向けて漸次先端側に突出する傾斜面10aを形成しておく。そして、これら受け部10間に連結部材11を介装する。ここで、連結部材11の両側面にも、上記傾斜面10aと一致する傾斜面11aを形成しておく。これにより、連結部材11は、受け部10の傾斜面10aに乗った状態で、その自重が支えられる。
【0020】
なお、これら受け部10および連結部材11を形成する方法としては、受け部10を現場打ちコンクリート造とし、連結部材11をプレキャスト鉄筋コンクリート造とする方法、受け部10および連結部材11を、共にプレキャスト鉄筋コンクリート造または現場打ち鉄筋コンクリート造とする方法、あるいは連結部材11を鉄骨造とし、受け部10を鉄筋コンクリート造とする方法や、受け部10および連結部材11の全てを鉄骨造とする方法等の多様の形態が適用可能である。特に、受け部10および連結部材11を共に現場打ち鉄筋コンクリートによって形成する場合には、互いの傾斜面10a、11a間を絶縁して、相互の変位を拘束しないように、これら傾斜面10a、11a間に間隙材13を介装しておく。
【0021】
次いで、受け部10と連結部材11とを、互いの上面に跨るように複数箇所に配設された接続板(接続部材)14をボルト15によって受け部10および連結部材11に固定することにより、一体的に接続する。これにより、上部構造物2と側壁1aとの間が、受け部10と連結部材11とによりスラブ状に覆われ、上部構造物2に作用する水平力が側壁1aによって支承される。この結果、万一工事途上の地震が発生した場合においても、上部構造物2が安定的に保持されて安全性が確保される。
【0022】
そして、上部構造物2の構築が完了して免震装置3による免震化が終了した後に、上記ボルト15を緩めて接続板14と共に受け部10および連結部材11から取り外す。
この結果、地震が発生して、上部構造物2に水平方向の相対変位が発生した場合には、図4(a)、(b)に示すように、当該上部構造物2の水平変位に対して連結部材11が両受け部10との傾斜面10a、11b間においてすべりを生じることにより追従することができる。この際に、現場打ちコンクリートの場合に限らず、両傾斜面10a、11a間に摩擦係数の小さい間隙材13を介装しておけば、一層相互のすべりを円滑化することができて好適である。
【0023】
なお、免震化が完了した後に、接続板14と共に、連結部材11を取り外してもよく、この場合には、図5(a)、(b)に示すように、両受け部10間には、地震時に想定される上部構造物2と側壁1aとの最大相対変位を吸収するのに十分な間隙が形成されているために、当該間隙によって互いの相対変位を吸収することができる。したがって、いずれの場合においても、免震装置3によって期待される免震効果を発揮することができる。
【0024】
以上のように、上記構成からなる基礎免震構造物の構築方法によれば、連結部材11の介装および接続板14による接続作業と、この接続板14あるいは接続板14および連結部材11の取り外し作業といった、上部構造物2の周囲における容易かつ短時間の作業によって、工事途上においては上部構造物2の安定性を保持して安全性を確保し、かつ免震化完了後においては上部構造物2の水平変位を確保して免震効果を発揮させることができる。したがって、従来のように仮設のブレースや切梁を設置したり、あるいはこれらを解体して搬出したりする大掛かりな作業が不要となるために、施工コストの低減化と工期の短縮化とを図ることができ、かつ資源の節約にも資することができるとともに、大きな騒音や振動を発生することも無いという効果が得られる。
【0025】
また、受け部10間に連結部材11を介装するに際して、連結部材11を受け部10の上方から受け部10の傾斜面10a上に載置し、互いの上面に跨る接続板14をボルト15を介して連結部材11と受け部10とを接続しているので、連結部材11の取付けおよび接続を、全て地上側から行うことができ、よって一層の作業性の向上を図ることができる。加えて、受け部10と連結部材11とに、それぞれ傾斜面10a、11aを形成しているので、免震化が完了した後は、接続板14を取り外して互いの接続を解くのみで、地震時における上部構造物2の水平変位に対して追従することができ、よって施工がより簡易になる。
【0026】
さらに、受け部10および連結部材11を、上部構造物2の外周を覆うスラブ状に形成しているので、上部構造物2を高い強度で支承することができるとともに、免震化が完了した後は、これらを免震ピットの塞ぎ板として機能させることもでき、経済的である。
なお、上記第1の実施形態において、受け部10と上部構造物2または側壁1aとの接合部分の強度や剛性が十分でない場合には、図6に示すように、受け部10を支柱16によって基礎部分1から支持したり、あるいは図7に示すように、当該受け部10の下隅部にブラケット17を設けて、ボルト17aによって上部構造物2または側壁1aから支える等の方法を採ればよい。
【0027】
(実施の形態2)
図8〜図12は、本発明の第2の実施形態およびその変形例を示すもので、同様に図1〜図7に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してある。
図8〜図10に示す第2の実施形態は、上部構造物2を構築して当該上部構造物2の免震化が完了する前に、上部構造物2および側壁1aに第1の実施形態と同様にして受け部20を一体的に形成し、これら受け部20間に連結部材21を載置したもので、受け部20と連結部材21との境界面に、互いの係合する凹凸を形成し、受け部20が凹となる部分に、シアーコッター部22を形成したものである。そして、免震化が完了した後には、上記連結部材21を取り外すことにより、免震装置による免震効果が発揮される。
【0028】
上記基礎免震構造物の構築方法によれば、上部構造物2と側壁1aとの間に発生する剪断力に対しては、シアーコッタ−部22における受け部20と連結部材21との噛合いによって抵抗する。また、上部構造物2に発生する側壁1a側へ接近する水平変位に対しては、これによって生じる圧縮力を受け部20と連結部材21との間の接触によって伝達し、側壁1aにおいて支承する。他方、上部構造物2の側壁1aから離間する方向への水平変位に対しては、連結部材21による抵抗は期待しない。一般に、基礎部分1の一部を形成する上記側壁1aは、面外方向への曲げに対する抵抗力が弱いので、このような構成であっても問題はないが、剪断力および圧縮力に加えて引張方向の抵抗も期待する場合には、図2に示した場合と同様に、受け部20と連結部材21とを、互いの上面に跨るように複数箇所に配設された接続板14をボルト15によって受け部20および連結部材21に固定することにより、一体的に接続すればよい。
【0029】
また、図11および図12に示す第2の実施形態の変形例においては、同様に上部構造物2の免震化工事が完了する前に、上部構造物2および側壁1aに受け部25を一体的に形成し、これら受け部25間に連結部材26を載置したもので、受け部25と連結部材26との境界面に、同方向に接離する凹凸を形成することにより、これらの上面間に間欠的に6角形状の凹部27を形成し、これら凹部27に、シアーコッター28を係合させたものである。そして、免震化が完了した後には、先ずシアーコッター28を取り除いた後に、連結部材26を取り外すことにより、免震装置による免震効果が発揮される。
【0030】
なお、第1または第2の実施形態において、受け部10、20、25および連結部材11、21、26の断面形状については、各種形状のものが適用可能であり、例えば図13に示すように、受け部30の先端に受け台状の段部30aを形成し、連結部材31の両側に鍔状の段部31aを形成することにより連結部材31を受け部30間に載置するようにしたり、あるいは図14に示すように、受け部35を平板状に形成し、両側部に鍔部36aが形成された連結部材36を、当該鍔部36aが受け部35の上面に当接するように落とし込んだりしてもよい。いずれの場合においても、連結部材31、36を受け部30、35の上方から吊持してこれらの間に載置することができ、かつ連結部材31、36の自重を両受け部30、35によって支持することができるため、施工状能率的であるという効果が得られる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の基礎免震構造物の構築方法によれば、連結部材の介装・接続作業と、接続解除あるいは連結部材の取り外し作業といった、上部構造物の周囲における容易かつ短時間の作業によって、工事途上においては上部構造物の安定性を保持して安全性を確保し、かつ免震化完了後においては上部構造物の水平変位を確保して免震効果を発揮させることができる。この結果、基礎免震構造物を新築する場合や、あるいは既存の建物を基礎免震構造物とする場合において、その施工コストの低減化と工期の短縮化とを図ることができ、かつ資源の節約にも資することができるとともに、騒音や振動の発生も大幅に低減化させることができる。
【0032】
特に、上記受け部および連結部材を、上部構造物の外周を覆うスラブ状に形成するとともに、互いをシアーコッターによって噛み合わせているために、上部構造物に作用する水平力を側壁によって支承するとともに上記上部構造物と上記側壁との間に発生する剪断力に対して上記受け部と上記連結部材との噛合いによって抵抗することができ、よって高い強度により上記安全性を向上させることができるという効果が得られる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態において連結部材を受け部に接続した状態を示す縦断面図である。
【図2】図1の受け部および連結部材の拡大図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】第1の実施形態において免震化完了後に上部構造物が水平変位した状態を示す縦断面図で、(a)は側壁に接近した場合、(b)は側壁から離間した状態である。
【図5】図4の連結部材を取り除いた際の上部構造物の水平変位を示す縦断面図で、(a)は側壁に接近した場合、(b)は側壁から離間した状態である。
【図6】第1の実施形態の変形例を示す縦断面図である。
【図7】第1の実施形態の他の変形例を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態において連結部材を受け部に接続した状態を示す平面図である。
【図9】図8のA−A線視断面図である。
【図10】図8のB−B線視断面図である。
【図11】第2の実施形態の変形例において連結部材を受け部に接続した状態を示す平面図である。
【図12】図11のC−C線視断面図である。
【図13】第1または第2の実施形態の他の変形例を示す要部の縦断面図である。
【図14】第1または第2の実施形態のその他の変形例を示す要部の縦断面図である。
【図15】従来の基礎免震構造物の構築方法における免震化完了前の状態を示す縦断面図である。
【図16】従来の他の構築方法における免震化完了前の状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 基礎部分
1a 免震ピット側壁
2 上部構造物
3 免震装置
10、20、26、30、35 受け部
11、21、26、31、36 連結部材
10a、11a 傾斜面
14 接続板(接続部材)
15 ボルト

Claims (1)

  1. 基礎部分と上部構造物との間に免震装置が介装された基礎免震構造物を構築するに際して、上記免震装置による上記上部構造物の免震化が完了する前に、上記上部構造物と当該上部構造物を囲繞する側壁に、それぞれ互いの対向方向に突出するスラブ状の受け部を一体的に形成し、これら受け部間に、当該受け部との境界面に形成されたシアーコッターを介して歯合するスラブ状の連結部材を介装して上記受け部と接続することにより、上記上部構造物に作用する水平力を上記側壁によって支承するとともに上記上部構造物と上記側壁との間に発生する剪断力に対して上記受け部と上記連結部材との噛合いによって抵抗し、上記免震化が完了した後に、上記上部構造物の水平方向変位が可能となるように、上記受け部と連結部材との接続を解除することを特徴とする基礎免震構造物の構築方法。
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