JP6357366B2 - 水平移動拘束方法 - Google Patents
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Description
この基礎免震レトロフィット工事は、既存建物の基礎の直下を掘削し、この掘削した部分に支保工を架設して、掘削した部分の底面に反力をとって基礎を仮支持する。その後、積層ゴムなどの免震装置を基礎の直下に取り付けて、その後、ジャッキを取り外す。これにより、免震装置で基礎を支持して、既存建物を免震化する。
すなわち、既存建物の外側に山留壁を構築し、この山留壁と既存建物の外壁面との間の地盤を掘削して、既存建物の基礎よりも深い位置まで掘り下げる。これにより、既存建物の側方に掘削空間を形成する。その後、この側方の掘削空間の底面付近から水平方向に掘り進んで、この既存建物の基礎の直下に掘削空間を形成する。
このとき、既存建物の側方の掘削空間にて、既存建物と山留壁との間に、鋼材やスラブなどの水平移動拘束材を架設して、既存建物の水平移動を拘束する(特許文献1参照)。
また、鋼材やスラブなどの水平移動拘束材は、両端で山留壁および既存建物に支持される。そのため、水平移動拘束材自体の剛性を確保したり、水平移動拘束材を山留壁や既存建物に強固に接合したりする必要があり、施工コストが増大する、という問題があった。
本発明は、既存建物の外周を十分に掘削できない場合であっても、作業効率を低下させることなく、低コストで、工事期間中における建物の水平移動を拘束して、水平保有耐力を確保できる既存建物の水平移動拘束方法を提供することを目的とする。
また、水平移動拘束材を、既存建物の外周の掘削空間つまり建設資材の上下方向の搬送作業空間ではなく、耐圧盤上に設けたので、建設資材を搬送する際に水平移動拘束材を容易に回避できるから、作業効率が低下するのを防止できる。
また、水平移動拘束材は、上面で既存建物に接合され、下面で耐圧盤に接合されるので、従来のように水平移動拘束材自体の剛性を確保したり、既存建物や耐圧盤と強固に接合したりする必要がないから、水平移動拘束材が簡易な構造となって、施工コストを低減できる。
すなわち、水平移動拘束材による既存建物と耐圧盤との間の水平抵抗力は、水平移動拘束材を構成する複数の部材同士を接合するボルト単体のせん断強度に、ボルトの本数を乗ずることで求められる。したがって、この水平抵抗力が既存建物の必要保有耐力を上回るように、ボルトの配置を決定すればよい。
また、ボルト孔を高さ方向に長孔として、施工段階において、壁状部材同士の相対高さを調整可能としてもよい。
また、H形鋼のフランジ同士を所定本数のボルトで締結することにより、必要な水平移動拘束力を容易に確保できる。
また、H形鋼は、再利用可能な仮設材であるので、転用可能であり、コストを低減できる。
〔第1実施形態〕
本発明は、免震改修工事中における既存建物の水平保有耐力の確保手段であり、かつ既存建物の水平移動拘束方法に係る発明である。
本発明では、既存建物1の水平移動拘束方法として、既存建物1とマットスラブ21との間に、基礎82、H形鋼81、84、およびL字鋼板83、85を積層して配置し、連結手段(ボルト834、854、855、アンカーボルト821、815、845)で接合している。この水平移動拘束方法により、工事期間中における既存建物1の必要保有耐力を、簡単な構成で確保する。
既存建物1は、地下躯体2を有しており、この地下躯体2は、既存杭4を有する基礎3と、この基礎3から上方に延びる複数本の柱5と、を備えている。
上述の柱5は、フーチング10の中心部から上方に延びている。
具体的には、以下のような構造となる。
設置スペース20の底面には、全面に亘って、鉄筋コンクリート造の耐圧盤としてのマットスラブ21が構築されている。このマットスラブ21のうちフーチング10の直下には、鋼管杭22が打ち込まれている。
このマットスラブ21の上面でかつフーチング10の直下には、鉄筋コンクリート造である下部免震基礎31が設けられている。また、基礎3の下面でかつフーチング10の直下には、鉄筋コンクリート造である上部免震基礎32が設けられている。上述の免震装置30は、これら免震基礎31、32の間に設けられている。
すなわち、地下躯体2の周囲には、擁壁41が形成されており、免震ピット40は、この擁壁41と地下躯体2との間の空間となっている。この免震ピット40は、設置スペース20に連続する空間である。
これにより、既存建物1は、免震ピット40の範囲内で水平移動可能となっている。つまり、既存建物1が水平移動しても、擁壁41には衝突しないようになっている。
また、オイルダンパ52は、既存建物1が水平方向に揺れると、この揺れに抵抗して減衰させる。
ステップS1では、既存建物1の外周を掘削する。
すなわち、図4に示すように、既存建物1の外側に山留壁61を構築し、この山留壁61と既存建物1の地下躯体2の外壁面との間の地盤6を掘削して、外周切梁62を架設しながら、既存建物1の基礎3よりも深い位置まで掘り下げる。これにより、既存建物の側方に掘削空間60を形成する。
すなわち、図4に示すように、掘削空間60の底面付近から水平方向に地盤6を掘り進んで、この既存建物1の基礎3の直下に掘削空間63を形成し、この掘削空間63の底面に、捨てコンクリート23を打設する。
すなわち、図5および図6に示すように、捨てコンクリート23上で、既存建物1の柱5の直下あるいはその近傍に、鋼管杭22を圧入する。具体的には、基礎3の下面に油圧ジャッキ64を設置し、この油圧ジャッキ64により、基礎3を反力として鋼管杭22を地盤6に圧入する。
この鋼管杭22は、本設の支持杭となる。また、この鋼管杭22の杭頭部は、掘削空間63の底面から露出している。
すなわち、図7に示すように、鋼管杭22の杭頭部の外周面、および、既存杭4の外周面に、スタッド24を打設する。
そして、掘削空間63の底面に配筋して、コンクリートを打設し、マットスラブ21を構築する。これにより、鋼管杭22および既存杭4のスタッド24を打設した部分がマットスラブ21に打ち込まれて、鋼管杭22、既存杭4、およびマットスラブ21は、強固に一体化される。
すなわち、図7に示すように、マットスラブ21の上で既存建物1の柱5の直下近傍の位置に、仮受支柱70を設置する。
仮受支柱70は、マットスラブ21の上に設けられた油圧ジャッキ71と、この油圧ジャッキ71の上から鉛直方向に延びて基礎3の下面に至る鉛直部材72と、を備える。
次に、仮受支柱70の油圧ジャッキ71を駆動することで、仮受支柱70は、マットスラブ21に反力をとって基礎3を下から仮支持する。
水平移動拘束材80は、既存建物1の長辺方向および短辺方向に沿ってそれぞれ配置される。
この水平移動拘束材80は、マットスラブ21上に設けられて第1のH形鋼81が打ち込まれた第1の壁状部材としての基礎82と、この基礎82から上方に延びる第1の壁状部材としての第1のL字鋼板83と、既存建物1の基礎3の下面に設けられた第2の壁状部材としての第2のH形鋼84と、この第2のH形鋼84から下方に延びて第1の壁状部材83に重なって配置された第2の壁状部材としての第2のL字鋼板85と、を備える。
H形鋼81は、下フランジ811、ウエブ812、および上フランジ813を有し、長さ方向に沿って所定間隔置きにスチフナ814が設けられている。
また、H形鋼81の上部は、基礎82の上面から露出しており、このH形鋼の上フランジ813と基礎82の上面との間には、グラウト材816が充填されている。
H形鋼84の上フランジ843は、複数本のアンカーボルト845で基礎3の下面に接合されている。
また、H形鋼84の上フランジ843と基礎3の下面との間には、グラウト材846が充填されている。
すなわち、既存杭4の杭頭部のうちマットスラブ21から露出した部分を切断して撤去して、既存杭4と既存建物1の基礎3との縁を切る。これにより、既存建物1の荷重は、仮受支柱70を介してマットスラブ21に伝達され、既存建物1の水平移動は、水平移動拘束材80により拘束される。
すなわち、図9に示すように、マットスラブ21の上でかつ既存建物1の柱5の直下に、下部免震基礎31を構築し、この下部免震基礎31の上に免震装置30を設置する。続いて、免震装置30の上に上部免震基礎32を構築する。
すなわち、図10に示すように、仮受支柱70の油圧ジャッキ71を駆動してジャッキダウンし、仮受支柱70による仮支持を解除して、その後、この仮受支柱70を撤去する。これにより、既存建物1の基礎3は、免震装置30により支持される。
すなわち、図10に示すように、既存建物1の基礎3の下面に補強躯体50を構築する。また、マットスラブ21上にダンパ基礎51を構築し、補強躯体50とダンパ基礎51との間にオイルダンパ52を設置する。
(1)新設のマットスラブ21と既存建物1の下面との間に、既存建物1のマットスラブ21に対する移動を拘束する水平移動拘束材80を設けた。これにより、工事期間中における既存建物1の水平移動を拘束して、水平保有耐力を確保できる。
また、水平移動拘束材80を、既存建物1の外周の掘削空間つまり建設資材の上下方向の搬送作業空間ではなく、マットスラブ21上に設けたので、建設資材を搬送する際に水平移動拘束材80を容易に回避できるから、作業効率が低下するのを防止できる。
また、水平移動拘束材80は、上面で既存建物1に接合され、下面でマットスラブ21に接合されるので、従来のように水平移動拘束材自体の剛性を確保したり、既存建物や耐圧盤と強固に接合したりする必要がないから、水平移動拘束材80が簡易な構造となって、施工コストを低減できる。
本発明では、既存建物1の水平移動拘束方法として、既存建物1とマットスラブ21との間に、基礎91、93および山留主材92を積層して配置し、連結手段(ボルト927、928、アンカーボルト911、931、925、926)で接合している。この水平移動拘束方法により、工事期間中における既存建物1の必要保有耐力を、簡単な構成で確保する。
本実施形態では、水平移動拘束材80の代わりに水平移動拘束材90を設けた点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、水平移動拘束材90は、下部基礎91と、この下部基礎91の上に横置きして4段に積層された複数のH形鋼としての山留主材92と、この山留主材92の上に設けられた上部基礎93と、を備える。
上部基礎93は、鉄筋コンクリート造であり、複数本のアンカーボルト931で基礎3の下面に接合されている。
最下段の山留主材92の下フランジ921は、複数本のアンカーボルト925で下部基礎91に接合されている。
最上段の山留主材92の上フランジ923は、複数本のアンカーボルト926で上部基礎93に接合されている。
水平方向の山留主材92は、端部プレート924同士で、ボルト928で接合されている。
(5)水平移動拘束材90を、横置きして積層した複数の山留主材92を含んで構成した。よって、水平移動拘束材90を同一形状の山留主材92のみで構成できるので、異なる形状の鋼材を組み合わせた場合に比べて、製作が容易であり、コストを低減できる。
また、山留主材92のフランジ921、923同士を所定本数のボルトで締結することにより、必要な水平移動拘束力を容易に確保できる。
また、山留主材92は、転用可能な仮設材であるので、コストを低減できる。
図12は、本発明の第3実施形態に係る水平移動拘束材94の正面図および側面図である。
本実施形態では、水平移動拘束材80の代わりに水平移動拘束材94を設けた点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、水平移動拘束材94は、マットスラブ21上に設けられた第1の壁状部材としての基礎95と、この基礎95から上方に延びる第1の壁状部材としての第1のL字鋼板96と、既存建物1の基礎3の下面から下方に延びて第1の壁状部材96に重なって配置された第2の壁状部材としての第2のL字鋼板97と、を備える。
また、第2のL字鋼板97の接合プレート971と基礎3の下面との間には、グラウト材975が充填されている。
図13は、本発明の第4実施形態に係る水平移動拘束材94および水平力伝達部材73の正面図である。
本実施形態では、水平移動拘束材94に加えて水平力伝達部材73を設けた点が、第3実施形態と異なる。
水平力伝達部材73は、水平移動拘束材94の基礎95と下部免震基礎31との間に設けられた山留主材74と、水平移動拘束材94の基礎95と上部免震基礎32との間に設けられた山留主材75と、山留主材74、75を連結する鋼製の連結部材76と、を備える。
山留主材75と基礎95との隙間、および、山留主材75と上部免震基礎32との隙間には、無収縮モルタル751が充填されている。
連結部材76は、山留主材74、75にボルト761で連結されている。
また、上述の第1実施形態では、第1のH形鋼81および第2のH形鋼84を設けたが、これに限らず、第1のH形鋼81および第2のH形鋼84を用いずに、第1のL字鋼板83を基礎82に直接接合してもよいし、第2のL字鋼板85を既存建物1の下面に直接接合してもよい。
2…地下躯体
3…基礎
4…既存杭
5…柱
6…地盤
10…フーチング
11…基礎梁
12…耐圧盤
20…設置スペース
21…マットスラブ(耐圧盤)
22…鋼管杭
23…捨てコンクリート
24…スタッド
30…免震装置
31…下部免震基礎
32…上部免震基礎
40…免震ピット
41…擁壁
50…補強躯体
51…ダンパ基礎
52…オイルダンパ
60…掘削空間
61…山留壁
62…外周切梁
63…掘削空間
64…油圧ジャッキ
70…仮受支柱(仮受け材)
71…油圧ジャッキ
72…鉛直部材
73…水平力伝達部材
74…山留主材
75…山留主材
76…連結部材
80…水平移動拘束材
81…第1のH形鋼(第1の壁状部材)
82…基礎(第1の壁状部材)
83…第1のL字鋼板(第1の壁状部材)
84…第2のH形鋼(第2の壁状部材)
85…第2のL字鋼板(第2の壁状部材)
90…水平移動拘束材
91…下部基礎
92…山留主材(H形鋼)
93…上部基礎
94…水平移動拘束材
95…基礎(第1の壁状部材)
96…第1のL字鋼板(第1の壁状部材)
97…第2のL字鋼板(第2の壁状部材)
Claims (3)
- 既存建物を免震化する際に、当該既存建物の水平移動を拘束する水平移動拘束方法であって、
前記既存建物の下方の地盤を掘削して掘削空間を形成する工程と、
当該掘削空間の底面上に耐圧盤を構築する工程と、
当該耐圧盤の上に、前記既存建物を仮支持する仮受け材を設けるとともに、前記耐圧盤と前記既存建物との間に、前記既存建物の前記耐圧盤に対する相対移動を拘束する水平移動拘束材を、前記耐圧盤および前記既存建物のそれぞれにアンカーボルトで接合する工程と、を備え、
前記水平移動拘束材は、前記耐圧盤上から上方に延びる第1の壁状部材と、前記既存建物の下面から下方に延びて前記第1の壁状部材に重なって配置される第2の壁状部材と、を備え、
前記第1の壁状部材と前記第2の壁状部材とは、ボルト接合されていることを特徴とする水平移動拘束方法。 - 既存建物を免震化する際に、当該既存建物の水平移動を拘束する水平移動拘束方法であって、
前記既存建物の下方の地盤を掘削して掘削空間を形成する工程と、
当該掘削空間の底面上に耐圧盤を構築する工程と、
当該耐圧盤の上に、前記既存建物を仮支持する仮受け材を設けるとともに、前記耐圧盤と前記既存建物との間に、前記既存建物の前記耐圧盤に対する相対移動を拘束する水平移動拘束材を、前記耐圧盤および前記既存建物のそれぞれにアンカーボルトで接合する工程と、を備え、
前記水平移動拘束材は、横置きして積層された複数のH形鋼を含んで構成され、
当該複数のH形鋼同士は、ボルトで接合されていることを特徴とする水平移動拘束方法。 - 免震装置を設けた後、前記水平移動拘束材と前記免震装置の基礎との間に、水平力を伝達する水平力伝達部材を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の水平移動拘束方法。
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